JP4511334B2 - 米飯及び米飯の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、糯米を使用した米飯及び米飯の製造方法に関するものである。
米を炊飯した米飯は、時間の経過とともに硬くなり、食感が損なわれる。これは澱粉の老化によるもので、炊飯により澱粉の分子間の水素結合がゆるみ吸水膨潤して糊化(α化)した澱粉の分子が、時間の経過とともに再結合(β化)して硬く、もろくなる。
非特許文献1には、老化防止剤として、糖質、グリセロール、ソルビトール、界面活性剤を添加することにより、澱粉の老化を抑制することができることが記載されている。また、特許文献1は、炊飯前又は炊飯中にαアミラーゼを添加することを特徴とする難老化性米飯類の製造方法を開示している。また、特許文献2は、炊飯時の浸漬水にトレハロースを添加する米飯食品の製造方法を開示している。しかし、これらの老化防止剤を添加するだけでは、澱粉の老化を十分に防止することはできない。
一方、特許文献3は、低温下で保存しても硬くなりにくく、かつ粘りを維持した炊飯米を用いた米飯食品を提案している。この特許文献3は、低温温度帯での食感変化を抑制することに関して、米飯食品の加水量を増加させることが最も効果が高いことを明らかにしている。具体的には、一般的な加水量である1.20倍加水炊飯(水分含量58%)では、低温保存時に時間経過と共にすぐに硬くなって食用に適さなくなるのに対し、飯の水分含量を58%から60%、62%と増やすことで品質保持期間が長くなることを開示している。
また、特許文献4は、米を多加水により炊飯することにより、製造されてから比較的低温に保存された米飯類の食味低下を抑制する方法を提案している。この方法は、米を炊飯する際、トランスグルタミナーゼを米に作用させ、さらに炊飯時の加水量を一般的加水量より多めに、洗米後の生米重量に対し1.5倍量以上の炊飯水にて炊飯することにより、御飯の経時的な食味変化を抑制するものである。
編集代表 五十嵐修等,「食品総合辞典」,平成10年3月25日,丸善株式会社発行,第1172頁 特開平6―141794号公報 特開平8―168350号公報 特開平11―75732号公報 特開平7―147917号公報
特許文献3と特許文献4は、米を炊飯する際に、加水量を増加させることが澱粉の老化を防止するのに有効であることを開示している。しかし、本発明者が加水量を増加させて炊飯したところ、次のような問題のあることが分かった。すなわち、加水量を増加させて炊飯した米飯は、炊飯後間もないうちは米粒の表面が糊状にねっとりとし、また、過度に軟らかい食感となる。他方、この米飯は、時間が経過すると米粒の表面付近の老化は抑制できるが、米粒の中心部分の老化を十分に抑制することができない。
本発明者が上記の問題について検討したところ、次のことが分かった。すなわち、(1)米粒の表面が糊状にねっとりとなる原因は、炊飯中に米粒から比較的多量に溶出する澱粉等の固形分であること、(2)炊飯中、米粒の表面に溶出した固形分が米粒の吸水を妨げることから、米粒の表面付近に吸水が偏り、米粒の表面付近は過度に水分含量が高く、一方、米粒の中心部分は水分含量が低くなること、(3)その結果、炊飯後間もないうちは米粒の表面付近は過度に軟らかい食感となり、時間が経過すると米粒の中心部分の老化を十分に抑制できないことが分かった。
本発明の目的は、糯米を使用した米飯を対象として、米粒の表面が糊状にねっとりとし、また、過度に軟らかい食感となることを防止し、かつ、長期間に亘り澱粉の老化を防止することのできる米飯の製造方法及び米飯を提供することにある。
かかる技術的課題は、本発明の第一の観点によれば、
水分含量が57〜70%となるように糯米に吸水させた後、炊飯することを特徴とする米飯の製造方法により達成される。
また、本発明の第二の観点によれば、
糯米に吸水処理を施す第1吸水工程と、前記第1吸水工程後の糯米に加熱処理を施す加熱工程と、前記加熱工程後の糯米に吸水処理を施して米の水分含量を57〜70%に調整する第2吸水工程と、前記第2吸水工程後の糯米に炊飯処理を施す炊飯工程とを含むことを特徴とする米飯の製造方法により達成される。
また、本発明の第三の観点によれば、
糯米に加熱処理を施す第1加熱工程と、前記第1加熱工程後の糯米に吸水処理を施す第1吸水工程と、前記第1吸水工程後の糯米に加熱処理を施す第2加熱工程と、前記第2加熱工程後の糯米に吸水処理を施す第2吸水工程と、前記第2吸水工程後の糯米に炊飯処理を施す炊飯工程とを含むことを特徴とする米飯の製造方法により達成される。
更に、本発明の第四の観点によれば、
糯米を炊飯した米飯であって、水分含量が57〜70%であり且つ米飯粒の溶出固形分量が2.4%以下であることを特徴とする米飯により達成される。
本発明によれば、糯米を使用した米飯を対象として、米粒の表面が糊状にねっとりとし、また、過度に軟らかい食感となることを防止し、かつ、長期間に亘り澱粉の老化を防止することのできる米飯の製造方法及び米飯を提供することができる。
本発明は、水分含量が57〜70%、より好ましくは58〜68%、更に好ましくは58〜67%となるように糯米に吸水させた後、炊飯することを特徴とする米飯の製造方法を提供する。そして、これにより得られる米飯は、米飯粒の溶出固形分量が2.4%以下、より好ましくは0.3〜2.4%、更に好ましくは0.5〜2.2%となる。
ここで、本発明において、米又は米飯の「水分含量(%)」とは、秤量缶(口の内径55mm、底の内径50mm、深さ35mmのもので、恒量を求めたもの)に、米又は米飯を約3g秤量し、これを105℃で16時間乾燥し、これにより蒸発した水分量(g/100g)を測定したものをいう。また、「炊飯」とは、米粒内の澱粉を喫食できる状態にまで十分にα化させることをいう。
また、本発明において、米飯粒の「溶出固形分」とは、米飯粒から溶出する固形分のことをいう。また、米飯粒の「溶出固形分量(%)」は、次の方法により測定することができる。すなわち、(1)電子レンジを用いて米飯を品温70℃以上に温める。(2)乾燥させないように、この米飯を室温(25℃)の密閉下に放置して品温を25℃に調整する。(3)200ml容のビーカーに、この米飯約25gと蒸留水(25℃)100mlとを入れる。(4)できるだけ米飯粒を潰さないように、箸を用いてビーカー内の米飯を丁寧に解す。(5)ビーカー内の米飯と蒸留水との混合物を1mmメッシュの篩を通過させて、米飯粒と水相部とに分離する。(6)秤量缶に、この分離された水相部を約10g秤量し、これを105℃で16時間乾燥し、得られた乾燥物の重量を測定し、次の式により米飯粒の溶出固形分量(%)を求めることができる。
米飯粒の溶出固形分量(%)=乾燥物の重量(g)×水相部の重量(g)/米飯の重量(g)×100%
本発明において原料として使用することのできる糯米は、その精米の程度などについては特に制限はないが、澱粉の老化を防止する上で、アミロペクチンの側鎖が短い品種のものを使用するのが望ましい。具体的な品種としては、はくちょうもちが挙げられる。
本発明を適用した米飯の製造方法は、以下に開示する好ましい態様により具体的に実施することができる。先ず、その第一の態様について、図1を参照しながら説明する。この第一の態様は、図1に示すように、第1吸水工程(101)と、加熱工程(102)と、第2吸水工程(103)と、炊飯工程(104)とを含む。以下、第一の態様について詳しく説明する。
第一の態様は、先ず、第1吸水工程(101)で、糯米に吸水処理を施して水を含ませる。この第1吸水工程(101)では、米の水分含量を、好ましくは25〜50%、より好ましくは28〜42%に調整するのがよい。このような水分含量となるまで吸水させることにより、後述する第二吸水工程で水を十分に含ませることができる。
第1吸水工程(101)の吸水処理は、例えば、米を水に浸漬すればよい。具体的には、糯米を室温(25℃)の水に30〜120分間程度浸漬すると、米の水分含量を前記範囲に調整することができる。但し、この吸水処理は、水温が60℃を超えない条件下で行うべきである。水温が60℃を超えるような条件下で吸水処理を行うと、澱粉の糊化が進行し易くなるからである。すなわち、この吸水処理は、澱粉を糊化させないように糯米に水を吸水させるのがよい。
吸水処理を施した糯米の表面に水が多く付着している場合には、次工程の加熱工程(102)の前に、その付着している水を除去するのがよい。この水の除去は、例えば、浸漬水から引き上げた糯米を篩の上に載せて放置するか、又は篩を振るなどして水切りすればよい。あるいは、浸漬水から引き上げた糯米に送風して米の表面を乾燥させたり、遠心分離して水切りすることもできる。
次に、加熱工程(102)で、第1吸水工程(101)後の糯米に加熱処理を施す。これにより、次工程の第2吸水工程(103)で、後述する水分含量にまで糯米に吸水させることができるようになる。この加熱工程(102)は、できるだけ澱粉を糊化させないように、第1吸水工程(101)後の糯米に対し、実質的に水を加えることなく加熱処理を施すのがよい。尚、ここで、実質的に水を加えることなく加熱処理を施すとは、米粒が水中に浸るような程度にまで水を加えることなく加熱処理を施すことを意味する。
このような観点から、加熱工程(102)の加熱処理としては、例えば、糯米に飽和水蒸気を接触させて加熱する方法が挙げられる。別の方法としては、糯米に対し過熱水蒸気を接触させて加熱することもできる。更に別の方法としては、糯米を容器に収容密封し、容器に熱水を接触させるなどして容器内の糯米を加熱することもできる。
この加熱工程(102)における加熱条件としては、例えば、60〜130℃で30秒間〜120分間、好ましくは100〜110℃で10分間〜60分間の条件を挙げることが
できる。特に、好ましい条件で加熱処理を施した場合には、米の色調や風味を変質させることなく、次工程の第2吸水工程(103)で後述する水分含量にまで糯米に吸水させることができる。
次に、第2吸水工程(103)で、再度、糯米に吸水処理を施して更に吸水させる。この第2吸水工程では、糯米の水分含量を好ましくは57〜70%、より好ましくは58〜68%、更に好ましくは58〜67%に調整するのがよい。すなわち、この第2吸水工程(103)では、糯米の炊飯に必要な水分を実質的にすべて糯米に吸水させる。したがって、次工程の炊飯工程(104)では、糯米に対して水を加える必要はない。この第2吸水工程(103)により、米粒の表面付近にだけ偏って多量の水分を含ませるのではなく、米粒の表面付近から中心部分にまで水を均質かつ十分に含ませることができる。
第2吸水工程(103)の吸水処理は、例えば、加熱工程(102)後の糯米に対し、上記水分含量となる量の水を加え一定時間保持することにより行うことができる。この場合の一定時間としては、30〜180分間程度を例示できる。また、第2吸水工程(103)の吸水処理は、例えば、加熱工程(102)後の糯米を多量の水に一定時間浸漬させてもよい。但し、この吸水処理は、澱粉の糊化を進行させないように、水温が60℃を超えない条件下で行うのがよい。また、糯米を多量の水に浸漬させ、その表面に水が多く付着している場合には、次工程の炊飯工程(104)の前に、その付着している水を除去するのがよい。この水の除去は、前述のように、例えば、浸漬水から引き上げた糯米を篩の上に載せて放置するか、又は篩を振るなどして水切りすればよい。
次に、炊飯工程(104)で、第2吸水工程(103)後の糯米に炊飯処理を施す。このように、第2吸水工程(103)で炊飯に必要な水分をすべて糯米に吸水させてから、その後に炊飯処理を施すことにより、米飯粒の溶出固形分量が2.4%以下、より好ましくは0.3〜2.4%、更に好ましくは0.5〜2.2%の米飯を得ることができる。その原理は定かではないが、次のように考えられる。
すなわち、従来、米を炊飯する場合には、米を炊飯する前に、第2吸水工程(103)のように炊飯に必要な水分をすべて糯米に吸水させることは行われない。すなわち、従来は、例えば赤飯を作るときのように、炊飯に必要な量の水(いわゆる炊き水)を糯米に加えて炊飯する。この場合、米粒は水中に浸った状態で、加熱により吸水しながら澱粉の糊化が進行する。そうすると、澱粉の糊化とともに、澱粉等の固形分が米粒の周りの水相を介して米粒の表面に溶出し、この溶出固形分が米粒の中心部分への吸水を妨げる。その結果、米粒の表面部分だけが偏って多くの水分を吸収し、米粒の表面部分は水分含量が高く、他方、米粒の中心部分は水分含量が低くなっていると考えられる。
これに対して、本発明においては、第2吸水工程(103)で、予め、必要な水分をすべて糯米に吸収させることにより、炊飯するときには、米粒の周りに水相が存在しないので、加熱により澱粉の糊化が進行しても、澱粉等の固形分の溶出が抑制されると考えられる。したがって、溶出固形分によって米粒の中心部分への吸水を妨げることなく、米粒の表面部分から中心部分まで水を均質かつ十分に含ませることができる。
そして、このようにして炊飯工程(104)の完了した米飯は、水分含量が57〜70%、より好ましくは58〜68%、更に好ましくは58〜67%となり、且つ、米飯粒の溶出固形分量が2.4%以下、より好ましくは0.3〜2.4%、更に好ましくは0.5〜2.2%のものとなる。この米飯は、炊飯後間もないうちでも米粒の表面が糊状にねっとりとすることがなく、また、米粒全体が適度な硬さを有する。しかも、この米飯は、長期間に亘り澱粉の老化を効果的に抑制することができる。
炊飯工程(104)の炊飯処理としては、具体的には、例えば、第2吸水工程(103)
後の糯米に対し、飽和水蒸気を接触させて直接蒸煮する方法が挙げられる。また、別の方法としては、第2吸水工程(103)後に糯米を容器に収容密封し、容器ごと加熱する方法が挙げられる。また、炊飯工程(104)では、炊飯処理と併せて加熱殺菌処理を施すこともできる。この場合、所定の殺菌価が達成される加熱条件で炊飯処理を施せばよい。これにより、常温で長期保存できる米飯を提供することができる。
続いて、図2を参照しながら、第二の態様について説明する。この第二の態様は、第1吸水工程の前に加熱工程を含む点で、第一の態様と異なる。以下、第1吸水工程の前に行う加熱工程のことを「第1加熱工程」といい、第1吸水工程の後に行う加熱工程のことを「第2加熱工程」という。したがって、第二の態様は、図2に示すように、第1加熱工程(201)と、第1吸水工程(202)と、第2加熱工程(203)と、第2吸水工程(204)と、炊飯工程(205)とを含む。以下に、第二の態様について詳しく説明する。尚、第二の態様について、第一の態様と重複する部分の説明については適宜省略する。
第二の態様では、図2に示すように、第1吸水工程(202)の前に、糯米に加熱処理を施す第1加熱工程(201)を採用する。これにより、第一の態様のよりも一層、米飯粒の溶出固形分量を少なくすることができる。この第1加熱工程(201)は、できるだけ澱粉の糊化を進行させないように、糯米に実質的に水を加えることなく加熱処理を施すのがよい。
このような観点から、加熱処理の方法としては、例えば、糯米に飽和水蒸気を接触させて加熱する方法が挙げられる。また、別の方法としては、糯米に過熱水蒸気を接触させて加熱することもできる。更に、別の方法としては、糯米を容器に収容密封し、容器に熱水を接触させるなどして容器内の糯米を加熱することもできる。
この第1加熱工程(201)の加熱条件としては、例えば、60〜130℃で30秒間〜120分間、好ましくは100〜110℃で10分間〜60分間の条件を挙げることができる。
次に、第1吸水工程(202)で、糯米に吸水処理を施して水を含ませる。第1加熱工程(201)を採用した場合には、第1加熱工程(201)を採用しない場合(第一の態様の場合)よりも多くの水分を第1吸水工程(202)で糯米に含ませることができる。したがって、この第1吸水工程(202)では、糯米の水分含量を、好ましくは30〜55%、より好ましくは33〜53%に調整するのがよい。
第1吸水工程(202)の吸水処理は、第一の態様の場合と同様に、糯米を水に浸漬すればよい。また、この吸水処理は、澱粉を糊化させないために、水温が60℃を超えない条件下で行うべきである。そして、第1吸水工程(202)後の糯米の表面に水が多く付着している場合には、次工程の第2加熱工程(203)の前に、その付着している水を除去する
のがよい。
次に、第2加熱工程(203)で、第1吸水工程(202)後の糯米に加熱処理を施す。この第2加熱工程(202)は、第一の態様の場合と同様である。したがって、第1吸水工程(202)後の糯米に対して実質的に水を加えることなく加熱処理を施すのがよい。また、このような観点から、加熱処理の方法および加熱条件も第一の態様の場合と同様である。
次に、第2吸水工程(204)で、糯米に吸水処理を施して水を更に含ませる。この第2吸水工程で、糯米の水分含量を好ましくは57〜70%、より好ましくは58〜68%、更に好ましくは58〜67%に調整するのがよい。すなわち、この第2吸水工程で、糯米の炊飯に必要な水分を実質的にすべて米に吸水させる。したがって、次工程の炊飯工程(205)では、糯米に対して水を更に加える必要はない。
第2吸水工程(204)の吸水処理は、第一の態様の場合と同様に、例えば、第2加熱工程(203)後の糯米に対し、上記水分含量となる量の水を加え一定時間保持することにより行うことができる。この場合の一定時間としては、30〜180分間程度を例示できる。また、第2吸水工程(103)の吸水処理は、例えば、第2加熱工程(203)後の糯米を多量の水に一定時間浸漬させてもよい。但し、この吸水処理は、澱粉の糊化を進行させないように、水温が60℃を超えない条件下で行うのがよい。また、糯米を多量の水に浸漬させ、その表面に水が多く付着している場合には、次工程の炊飯工程(205)の前に、その付着している水を除去するのがよい。
次に、炊飯工程(205)で、米に炊飯処理を施す。このように、第2吸水工程(204)で炊飯に必要な水分をすべて糯米に吸収させた後、炊飯処理を施すことにより、米飯粒の溶出固形分量が2.4%以下、より好ましくは0.3〜2.4%、更に好ましくは0.5〜2.2%の米飯を得ることができる。炊飯処理の方法は、第一の態様の場合と同様であり、また、炊飯工程(205)では、炊飯処理と併せて加熱殺菌処理を施すこともできる。
このようにして炊飯工程(205)の完了した米飯は、水分含量が57〜70%、より好ましくは58〜68%、更に好ましくは58〜67%となり、且つ、米飯粒の溶出固形分量が2.4%以下、より好ましくは0.3〜2.4%、更に好ましくは0.5〜2.2%のものとなる。この米飯は、炊飯後間もないうちでも米粒の表面が糊状にねっとりとすることがなく、また、米粒全体が適度な硬さを有する。しかも、この米飯は、長期間に亘り澱粉の老化を効果的に抑制することができる。
以上に説明した本発明は、白米に限らず、赤飯、おこわ、ちまき、おはぎ等の種々の米飯に適用することができる。その場合に味付けに必要な調味成分は、例えば、第2吸水工程や炊飯工程などの適当な工程で適宜添加することができる。また、前記工程の他に、味付けを施す工程を付加してもよい。また、最初の工程として、洗米工程を付加してもよいし、無洗米を使用してもよい。
また、本発明は、おにぎり等の成形米飯の製造にも適用することができる。例えば、炊飯工程で、糯米を容器に収容密封して炊飯処理を施す場合には、成形しようとする米飯の形状、大きさに合わせた容器を用意し、当該容器を成形型として用いることで、糯米を炊飯しながら成形米飯を製造することができる。
(第一の態様に対応する実施例)
(1)第1吸水工程
精米(品種:はくちょうもち)を25℃の水に120分間浸漬し、その後篩の上に置いて水切りして、水分含量が38%の糯米を得た。
(2)加熱工程
第1吸水工程後の糯米に対し、飽和水蒸気を用いて100℃、60分間の条件で加熱処理を施した。
(3)第2吸水工程
加熱工程後の糯米に対し、この糯米の水分含量が60%となる量の水(25℃)を加えて60分間保持して吸水させ、水分含量が60%の糯米を得た。
(4)炊飯工程
第2吸水工程後の糯米を容器に収容密封し、F0値が3.1以上となる熱量を加えて、炊飯処理とともに加熱殺菌処理を施して容器入り米飯を製造した。この容器入り米飯は、水分含量が60%、溶出固形分量が1.59%のものであった。
(第二の態様に対応する実施例)
(1)第1加熱工程
精米(品種:はくちょうもち)に対し、飽和水蒸気を用いて100℃、60分間の条件で加熱処理を施した。
(2)第1吸水工程
第1加熱工程後の糯米を25℃の水に180分間浸漬し、その後篩の上に置いて水切りして、水分含量が45%の米を得た。
(3)第2加熱工程
第1吸水工程後の糯米に対し、飽和水蒸気を用いて100℃、60分間の条件で加熱処理を施した。
(4)第2吸水工程
第2加熱工程後の糯米に対し、この米の水分含量が60%となる量の水(25℃)を加えて60分間保持して吸水させ、水分含量が60%の米を得た。
(5)炊飯工程
第2吸水工程後の糯米を容器に収容密封し、F0値が3.1以上となる熱量を加えて、炊飯処理とともに加熱殺菌処理を施して容器入り米飯を製造した。この容器入り米飯は、水分含量が60%、溶出固形分量が1.28%のものであった。
比較例1
(通常の水分含量の米飯に相当する比較例)
家庭用の電気炊飯器に、精米(品種:はくちょうもち)と、炊飯後の米飯の水分含量が55%となる量の水とを入れて炊飯し、得られた炊飯米を容器に収容密封し、F0値が3.1以上となる熱量を加えて、加熱殺菌処理を施して容器入り米飯を製造した。
比較例2
(通常よりも水分含量を高くした炊飯米に相当する比較例)
家庭用の電気炊飯器に、炊飯後の水分含量が60%となる量の水を入れて炊飯すること以外は比較例1と同様にして、容器入り米飯を製造した。この容器入り米飯は、水分含量が60%、溶出固形分量が2.64%のものであった。
比較試験
実施例1〜2及び比較例1〜2の米飯について製造直後に糊化度(α化度)を測定すると共に、官能評価を行った。また、実施例1〜2及び比較例1〜2の米飯を、糊化(α化)した澱粉の分子が再結合(β化)しやすい5℃の雰囲気下に7日間保管し、これらについて糊化度(α化度)を測定すると共に、官能評価を行った。これらの結果を表1に示す。尚、ここで、糊化度は、澱粉が老化するに従って、吸水量が小さくなることを利用して、次のように測定した。つまり、(1)15日間保管した米飯粒 約25gを蒸留水200mlに浸漬する。(2)5℃の環境下で60時間吸水させる。(3)
米飯と蒸留水との混合物を1mmメッシュの篩を通過させて、吸水米と水相部とに分離する。(4) 秤量缶に、この分離された水相部を約10g秤量し、これを105℃で16時間乾燥し、吸水米の水分を求める。この吸水米の水分を糊化度とした。
表1に示すように、通常の水分含量(55%)である比較例1の米飯は、餅米として適度な粘りと硬さを有するのに対し、高い水分含量(60%)である比較例2の米飯は、糊状にねっとりとしており、食感も柔らか過ぎるものであった。一方、実施例1の米飯は、高い水分含量(60%)であるにも拘わらず、比較例1の米飯と比べると粘りは少し弱いがねっとりとしておらず、食感も少し柔らかいが許容範囲であった。また、実施例2の米飯は、粘りは弱いがねっとりとしておらず、食感は比較例1の米飯と同様に適度な硬さであった。
また、表1に示すように、通常の水分含量である比較例1の米飯は、5℃の雰囲気下に7日間保管すると、糊化度が67.1%にまで低下し、ぼそぼそとして食べられるものではなくなっていた。また、高い水分含量である比較例2の米飯は、糊化度が78.6%に保たれており、米粒の周りは適度に柔らかいが、ぽそぽそとした米粒の小片が口に残った。これは、米粒の表面付近は十分に吸水して老化が抑制されているが、米粒の中心部分の吸水が不十分で老化を抑制できなかったものによるもとの考えられる。一方、実施例1の米飯は、糊化度が81.0%に保たれ、実施例2の米飯は、糊化度が80.5%に保たれ、製造直後に比べて食感が硬くなっているが、おいしく食べることができた。
本発明を適用した第一の態様のフロー図である。 本発明を適用した第二の態様のフロー図である。

Claims (2)

  1. 糯米に水温60℃を超えない条件下で吸水処理を施す第1吸水工程と、
    前記第1吸水工程後の糯米に実質的に水分を加えることなく加熱処理を施す加熱工程と、
    前記加熱工程後の糯米に水温が60℃を超えない条件下で吸水処理を施して米の水分含量を57〜70%に調製する第2吸水工程と、
    前記第2吸水工程後の糯米に、米粒の周りに水相が存在しない条件下で炊飯処理を施す炊飯工程とを含むことを特徴とする米飯の製造方法。
  2. 糯米に実質的に水分を加えることなく加熱処理を施す第1加熱工程と、
    前記第1加熱工程後の糯米に水温60℃を超えない条件下で吸水処理を施す第1吸水工程と、
    前記第1吸水工程後の糯米に実質的に水分を加えることなく加熱処理を施す第2加熱工程と、
    前記第2加熱工程後の糯米に水温が60℃を超えない条件下で吸水処理を施して糯米の水分含量を57〜70%に調製する第2吸水工程と、
    前記第2吸水工程後の糯米に、米粒の周りに水相が存在しない条件下で炊飯処理を施す炊飯工程とを含むことを特徴とする米飯の製造方法。

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