JP4516419B2 - 米飯の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、米飯及び米飯の製造方法に関する。
米を炊飯した米飯は、時間の経過とともに硬くなり、食感が損なわれる。これは澱粉の老化によるもので、炊飯により澱粉の分子間の水素結合がゆるみ吸水膨潤して糊化(α化)した澱粉の分子が、時間の経過とともに再結合(β化)して硬く、もろくなる。
特許文献1は、炊飯した後の米飯に糖化型アミラーゼの水溶液を噴霧添加することを特徴する米飯の老化防止方法を開示している。また、特許文献2は、炊飯前又は炊飯中にα-アミラーゼを添加することを特徴とする難老化性米飯類の製造方法を開示している。
特開昭60−199355号公報 特開平6−141794号公報
特許文献1の方法により炊飯した後に糖化型アミラーゼの水溶液を噴霧添加した米飯は、澱粉の老化をむらなく防止することができず、特に、長期間保存すると食感の硬い部分と柔らかい部分とが生じる。また、特許文献2に開示されるように炊飯前又は炊飯中にα-アミラーゼを添加しても、それだけでは澱粉の老化を十分に防止することはできない。すなわち、米粒の表面付近の老化は抑制できるが、米粒の中心部分の老化を抑制することができない。
本発明者が上記の問題について検討したところ、その原因は次のように考えられる。すなわち、(1)アミラーゼは水を媒体として米粒の中に浸透するが、(2)炊飯中に米粒の中から溶出する澱粉等の固形分が米粒の吸水を妨げることから、アミラーゼは米粒の中心にまで十分に浸透せず、(3)その結果、米粒の中心部分の老化を抑制することができない。
そこで、本発明の目的は、アミラーゼを利用して、長期間に亘り澱粉の老化をむらなく防止することのできる米飯の製造方法及び米飯を提供することにある。
また、本発明の目的は、米粒の表面が糊状にねっとりとし、また、過度に柔らかい食感となることを防止し、かつ、長期間に亘り澱粉の老化を防止することのできる米飯の製造方法及び米飯を提供することにある。
かかる技術的課題は、本発明の第一の観点によれば、 アミラーゼを添加した水を米に吸水させた後、炊飯することを特徴とする米飯の製造方法により達成される。
また、本発明の第二の観点によれば、 米に吸水処理を施す第1吸水工程と、前記第1吸水工程後の米に加熱処理を施す加熱工程と、前記加熱工程後の米に吸水処理を施す第2吸水工程と、前記第2吸水工程後の米に炊飯処理を施す炊飯工程とを含み、前記第2吸水工程で、米にアミラーゼを添加した水を吸水させることを特徴とする米飯の製造方法により達成される。
また、本発明の第三の観点によれば、米に加熱処理を施す第1加熱工程と、前記第1加熱工程後の米に吸水処理を施す第1吸水工程と、前記第1吸水工程後の米に加熱処理を施す第2加熱工程と、前記第2加熱工程後の米に吸水処理を施す第2吸水工程と、前記第2吸水工程後の米に炊飯処理を施す炊飯工程とを含み、前記第2吸水工程で、米にアミラーゼを添加した水を吸水させることを特徴とする米飯の製造方法により達成される。
更に、本発明の第四の観点によれば、 粳米を炊飯した米飯であって、水分含量が62〜75%であり且つ澱粉の分解率が固形分当たり5〜33%であることを特徴とする米飯により達成される。
更に、本発明の第五の観点によれば、 糯米を炊飯した米飯であって、水分含量が57〜70%であり且つ澱粉の分解率が固形分当たり5〜33%であることを特徴とする米飯により達成される。
本発明は、アミラーゼを添加した水を米に吸水させた後、炊飯することを特徴とする米飯の製造方法を提供する。これにより、アミラーゼを含む水を米の中に均質に吸水させ、アミラーゼを効果的に作用させることができ、長期間に亘り澱粉の老化をむらなく防止することのできる米飯を提供することができる。また、このようにしてアミラーゼを効果的に作用させて得られる米飯は、澱粉の分解率が固形分当たり5〜33%、より好ましくは6〜30%、更に好ましくは7〜27%となる。
本発明において使用することのできる米としては、その精米の程度などについては特に制限はないが、澱粉の老化を防止する上で、アミロース含量の少ないものが望ましい。具体的には、粳米の場合は、アミロース含量が17%以下の米、具体的には、はなぶさ、あやひめ、ミルキークイーン、スノーパールといった品種の米が挙げられる。また、糯米の場合は、アミロペクチンの側鎖が短いものが望ましく、品種としては、はくちょうもちが挙げられる。
また、本発明において使用することのできるアミラーゼとしては、EXO−型のアミラーゼ、ENDO−型のアミラーゼの何れをしてもよいが、米飯に適度な硬さを付与する上で、EXO−型のアミラーゼを使用するのがよい。また、EXO-型のアミラーゼとしては、β−アミラーゼを使用するのがよい。また、β−アミラーゼを使用する場合、好ましくはα−アミラーゼの夾雑が少ない大豆由来のものがよい。
本発明において「澱粉の分解率」とは、アミラーゼで分解された澱粉の比率のことをいう。また、米飯粒の「澱粉の分解率(%)」は、次の方法により測定することができる。例えば、β-アミラーゼを作用させると、マルトースが生成される。その場合、(1)ソモギーネルソン法(「澱粉・関連糖質実験法」,(株)学会出版センター,第12〜13頁参照)により、米飯粒の還元力を求めて、マルトース含量(g/100g)を算出する。(2)秤量缶(口の内径55mm、底の内径50mm、深さ35mmのもので、恒量を求めたもの)に、米飯を約3g秤量し、これを105℃で16時間乾燥し、得られた乾燥物の重量(g/100g)を測定し、次の式により、米飯粒の澱粉の分解率を求めることができる。澱粉の分解率(%)=マルトース含量(g/100g)/乾燥物の重量(g/100g)
また、本発明において、米又は米飯の「水分含量(%)」とは、秤量缶(口の内径55mm、底の内径50mm、深さ35mmのもので、恒量を求めたもの)に、米又は米飯を約3g秤量し、これを105℃で16時間乾燥し、これにより蒸発した水分量(g/100g)を測定したものをいう。また、「炊飯」とは、米粒内の澱粉を、おいしく食べられる状態にまで十分にα化させることをいう。
本発明を適用した米飯の製造方法は、以下に開示する好ましい態様により具体的に実施することができる。先ず、その第一の態様について、図1を参照しながら説明する。この第一の態様は、図1に示すように、第1吸水工程(101)と、加熱工程(102)と、第2吸水工程(103)と、炊飯工程(104)とを含む。以下、第一の態様について詳しく説明する。
第一の態様は、先ず、第1吸水工程(101)で、米に吸水処理を施して水を含ませる。この第1吸水工程(101)では、米の水分含量を、好ましくは25〜50%、より好ましくは28〜42%に調整するのがよい。このような水分含量となるまで吸水させることにより、後述する第二吸水工程で、アミラーゼを添加した水を米に十分に含ませることができる。
第1吸水工程(101)の吸水処理は、例えば、米を水に浸漬すればよい。具体的には、米を室温(25℃)の水に30〜120分間程度浸漬すると、米の水分含量を前記範囲に調整することができる。但し、この吸水処理は、水温が60℃を超えない条件下で行うべきである。水温が60℃を超えるような条件下で吸水処理を行うと、澱粉の糊化が進行し易くなるからである。すなわち、この吸水処理は、澱粉を糊化させないように米に水を吸水させるのがよい。
吸水処理を施した米の表面に水が多く付着している場合には、次工程の加熱工程(102)の前に、その付着している水を除去するのがよい。この水の除去は、例えば、浸漬水から引き上げた米を篩の上に載せて放置するか、又は篩を振るなどして水切りすればよい。あるいは、浸漬水から引き上げた米に送風して米の表面を乾燥させたり、遠心分離して水切りすることもできる。
次に、加熱工程(102)で、第1吸水工程(101)後の米に加熱処理を施す。これにより、次工程の第2吸水工程(103)で、後述する水分含量にまで米に吸水させることができるようになる。この加熱工程(102)は、できるだけ澱粉を糊化させないように、第1吸水工程(101)後の米に対し、実質的に水を加えることなく加熱処理を施すのがよい。尚、ここで、実質的に水を加えることなく加熱処理を施すとは、米粒が水中に浸るような程度にまで水を加えることなく加熱処理を施すことを意味する。
このような観点から、加熱工程(102)の加熱処理としては、例えば、米に飽和水蒸気を接触させて加熱する方法が挙げられる。別の方法としては、米に対し過熱水蒸気を接触させて加熱することもできる。更に別の方法としては、米を容器に収容密封し、容器に熱水を接触させるなどして容器内の米を加熱することもできる。
この加熱工程(102)における加熱条件としては、例えば、60〜130℃で30秒間〜120分間、好ましくは100〜110℃で10分間〜60分間の条件を挙げることができる。特に、好ましい条件で加熱処理を施した場合には、米の色調や風味を変質させることなく、次工程の第2吸水工程(103)で後述する水分含量にまで米に吸水させることができる。
次に、第2吸水工程(103)で、アミラーゼを添加した水を米に吸水させる。この第2吸水工程(103)により、水を媒体としてアミラーゼを米粒の中に均質に浸透させることができる。この第2吸水工程は、粳米を使用する場合には、米の水分含量を62〜75%、より好ましくは64〜72%、更に好ましくは65〜70%に調整するのがよい。また、糯米を使用する場合には、米の水分含量を56〜70%、より好ましくは58〜68%、更に好ましくは59〜67%に調整するのがよい。
すなわち、本発明では、この第2吸水工程(103)で、米の炊飯に必要な水分を実質的にすべて米に吸水させる。したがって、次工程の炊飯工程(105)では、米に対して水を加える必要はない。これにより、米粒の表面から中心部分にまで均質に吸水させることができ、この水を媒体としてアミラーゼを米粒の中に均質に浸透させることができる。
第2吸水工程(103)の吸水処理は、例えば、加熱工程(102)後の米に対し、上記水分含量となる量の水を加え一定時間保持することにより行うことができる。この場合の一定時間としては、30〜180分間程度を例示できる。また、第2吸水工程(103)の吸水処理は、例えば、加熱工程(102)後の米を多量の水に一定時間浸漬させてもよい。但し、この吸水処理は、澱粉の糊化を進行させないように、水温が60℃を超えない条件下で行うのがよい。
また、米を多量の水に浸漬させ、その表面に水が多く付着している場合には、次工程の炊飯工程(104)の前に、その付着している水を除去するのがよい。この水の除去は、前述のように、例えば、浸漬水から引き上げた米を篩の上に載せて放置するか、又は篩を振るなどして水切りすればよい。
本発明においては、第2吸水工程(103)の後、炊飯工程(104)に移行する前に、アミラーゼを効果的に作用させるために、アミラーゼ活性化工程(図示せず)を加えてもよい。アミラーゼ活性化工程は、例えば、第2吸水工程(103)後の米を、0℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃の温度下に10分から24時間、好ましくは30分から12時間保持すればよい。また、このアミラーゼ活性化工程は、吸水させた米から水分が蒸散しないように、密閉下で行うのが好ましい。
次に、炊飯工程(104)で、第2吸水工程(103)後又はアミラーゼ活性化工程後の米に炊飯処理を施す。このように、第2吸水工程(103)で、アミラーゼを添加した水を米に吸水させた後、炊飯することにより、米飯粒の澱粉の分解率が高い米飯を得ることができる。その原理は定かではないが、次のように考えられる。
すなわち、従来、米を炊飯する場合には、米を炊飯する前に、第2吸水工程(103)のように炊飯に必要な水分をすべて米に吸水させることは行われない。すなわち、従来は、炊飯するときに、炊飯に必要な量の水(いわゆる炊き水)を米に加えて炊飯する。この場合、米粒は水中に浸った状態で、加熱により吸水しながら澱粉の糊化が進行する。そうすると、澱粉の糊化とともに、澱粉等の固形分が米粒の周りの水相を介して米粒の表面に溶出し、この溶出した固形分が米粒の中心部分へのアミラーゼを含む水の吸水を妨げる。そのため、特許文献2に開示されるように炊飯前又は炊飯中にアミラーゼを添加しても、アミラーゼを米粒の中心部分にまで浸透させることができないため、アミラーゼを効果的に作用させることができない。
これに対して、本発明においては、第2吸水工程(103)で、炊飯する前に、米にアミラーゼを添加した水を吸水させる。この場合、炊飯によって澱粉が糊化する前、すなわち澱粉等の固形分が米粒の表面に溶出する前に米にアミラーゼを添加した水を吸水させるので、米粒の中心部分へのアミラーゼを含む水の吸水が妨げられない。したがって、米粒の中心部分にまでアミラーゼを浸透させることができ、米粒の表面部分から中心部分までアミラーゼを均質かつ十分に含ませることができる。したがって、アミラーゼを効果的に作用させることができ、米飯粒の澱粉の分解率を高めることができると考えられる。
炊飯工程(105)の炊飯処理としては、具体的には、例えば、第2吸水工程(103)後の米に対し、飽和水蒸気を接触させて直接蒸煮する方法が挙げられる。また、別の方法としては、第2吸水工程(103)後もしくはアミラーゼ活性化工程後に、又はこれらの工程を兼ねて、米を容器に収容密封し、容器ごと加熱する方法が挙げられる。また、炊飯工程(104)では、炊飯処理と併せて加熱殺菌処理を施すこともできる。この場合、所定の殺菌価が達成される加熱条件で炊飯処理を施せばよい。これにより、常温で長期保存できる米飯を提供することができる。
そして、このようにして炊飯工程(105)の完了した米飯は、澱粉の分解率が5〜33%、より好ましくは6〜30%、更に好ましくは7〜27%のものとなる。また、この米飯は、澱粉の老化を効果的に抑制する上で、比較的高い水分含量であるのが好ましい。具体的には、粳米を炊飯した米飯である場合には、水分含量が62〜75%、より好ましくは64〜72%、更に好ましくは65〜70%であるのが好ましい。また、糯米を炊飯した米飯である場合には、水分含量が57〜70%、より好ましくは58〜68%、更に好ましくは59〜67%であるのが好ましい。
続いて、図2を参照しながら、第二の態様について説明する。この第二の態様は、第1吸水工程の前に加熱工程を含む点で、第一の態様と異なる。以下、第1吸水工程の前に行う加熱工程のことを「第1加熱工程」といい、第1吸水工程の後に行う加熱工程のことを「第2加熱工程」という。したがって、第二の態様は、図2に示すように、第1加熱工程(201)と、第1吸水工程(202)と、第2加熱工程(203)と、第2吸水工程(204)と、炊飯工程(205)とを含む。以下に、第二の態様について詳しく説明する。尚、第二の態様について、第一の態様と重複する部分の説明については適宜省略する。
第二の態様では、図2に示すように、第1吸水工程(202)の前に、米に加熱処理を施す第1加熱工程(201)を採用する。この第1加熱工程(201)は、できるだけ澱粉の糊化を進行させないように、米に実質的に水を加えることなく加熱処理を施すのがよい。
このような観点から、加熱処理の方法としては、例えば、米に飽和水蒸気を接触させて加熱する方法が挙げられる。また、別の方法としては、米に過熱水蒸気を接触させて加熱することもできる。更に、別の方法としては、米を容器に収容密封し、容器に熱水を接触させるなどして容器内の米を加熱することもできる。
この第1加熱工程(201)の加熱条件としては、例えば、60〜130℃で30秒間〜120分間、好ましくは100〜110℃で10分間〜60分間の条件を挙げることができる。
次に、第1吸水工程(202)で、米に吸水処理を施して水を含ませる。第1加熱工程(201)を採用した場合には、第1加熱工程(201)を採用しない場合(第一の態様の場合)よりも多くの水分を第1吸水工程(202)で米に含ませることができる。したがって、この第1吸水工程(202)では、米の水分含量を、好ましくは30〜55%、より好ましくは33〜53%に調整するのがよい。
第1吸水工程(202)の吸水処理は、第一の態様の場合と同様に、米を水に浸漬すればよい。また、この吸水処理は、澱粉を糊化させないために、水温が60℃を超えない条件下で行うべきである。そして、第1吸水工程(202)後の米の表面に水が多く付着している場合には、次工程の第2加熱工程(203)の前に、その付着している水を除去するのがよい。
次に、第2加熱工程(203)で、第1吸水工程(202)後の米に加熱処理を施す。この第2加熱工程(202)は、第一の態様の場合と同様である。したがって、第1吸水工程(202)後の米に対して実質的に水を加えることなく加熱処理を施すのがよい。また、このような観点から、加熱処理の方法および加熱条件も第一の態様の場合と同様である。
次に、第2吸水工程(204)で、アミラーゼを添加した水を米に吸水させる。この第2吸水工程(204)により、水を媒体としてアミラーゼを米粒の中に均質に浸透させることができる。この第2吸水工程(204)は、粳米を使用する場合には、米の水分含量を62〜75%、より好ましくは64〜72%、更に好ましくは65〜70%に調整するのがよい。また、糯米を使用する場合には、米の水分含量を57〜70%、より好ましくは58〜68%、更に好ましくは59〜67%に調整するのがよい。すなわち、この第2吸水工程(204)では、米の炊飯に必要な水分を実質的にすべて米に吸水させる。したがって、次工程の炊飯工程(205)では、米に対して水を加える必要はない。
第2吸水工程(204)の吸水処理は、例えば、加熱工程(203)後の米に対し、上記水分含量となる量の水を加え一定時間保持することにより行うことができる。この場合の一定時間としては、30〜180分間程度を例示できる。また、第2吸水工程(204)の吸水処理は、例えば、加熱工程(203)後の米を多量の水に一定時間浸漬させてもよい。但し、この吸水処理は、澱粉の糊化を進行させないように、水温が60℃を超えない条件下で行うのがよい。
また、米を多量の水に浸漬させ、その表面に水が多く付着している場合には、次工程の炊飯工程(205)の前に、その付着している水を除去するのがよい。この水の除去は、前述のように、例えば、浸漬水から引き上げた米を篩の上に載せて放置するか、又は篩を振るなどして水切りすればよい。
本発明においては、第2吸水工程(204)の後、炊飯工程(205)に移行する前に、アミラーゼを効果的に作用させるために、アミラーゼ活性化工程(図示せず)を加えてもよい。アミラーゼ活性化工程は、例えば、第2吸水工程(204)後の米を、0℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃の温度下に10分から24時間、好ましくは30分から12時間保持すればよい。また、このアミラーゼ活性化工程は、吸水させた米から水分が蒸散しないように、密閉下で行うのが好ましい。
炊飯工程(205)に移行する前に、アミラーゼ活性化工程(205)を加えてもよい。例えば、その条件としては、吸水させた米飯から水分が蒸散しないよう密閉して、0℃〜100℃で10分から24時間、好ましくは、20℃〜80℃で30分から12時間の条件を挙げることができる。
次に、炊飯工程(205)で、米に炊飯処理を施す。このように、第2吸水工程(204)で、米にアミラーゼを添加した水を吸水させた後、炊飯することにより、米飯粒の澱粉の分解率が5〜33%、より好ましくは7〜30%、更に好ましくは、7〜25%の米飯を得ることができる。また、炊飯工程(205)では、炊飯処理と併せて加熱殺菌処理を施すこともできる。
このようにして炊飯工程(205)の完了した米飯は、澱粉の分解率が5〜33%、より好ましくは6〜30%、更に好ましくは7〜27%のものとなる。また、この米飯は、澱粉の老化を効果的に抑制する上で、比較的高い水分含量であるのが好ましい。具体的には、粳米を炊飯した米飯である場合には、水分含量が62〜75%、より好ましくは64〜72%、更に好ましくは65〜70%であるのが好ましい。また、糯米を炊飯した米飯である場合には、水分含量が57〜70%、より好ましくは58〜68%、更に好ましくは59〜67%であるのが好ましい。
以上に説明した本発明は、白米に限らず、チャーハン、ピラフ、ドライカレー、赤飯、おこわ、ちまき、おはぎなどの種々の米飯に適用することができる。その場合に味付けに必要な調味成分は、例えば、第2吸水工程や炊飯工程などの適当な工程で適宜添加することができる。また、前記工程の他に、味付けを施す工程を付加してもよい。また、最初の工程として、洗米工程を付加してもよい。無洗米を使用してもよい。
(第一の態様に対応する実施例)(1)第1吸水工程 糯米の精米(品種:はくちょうもち)を25℃の水に2時間浸漬し、その後篩の上に置いて水切りして、水分含量が39%の米を得た。
(2)加熱工程 第1吸水工程後の米に対し、飽和水蒸気を用いて100℃、60分間の条件で加熱処理を施した。
(3)第2吸水工程 加熱工程後の米に対し、この米の水分含量が62%となるように、β-アミラーゼ(天野エンザイム製:「ビオザイムM5」)を0.1%の割合で添加した水を加えて25℃下で90分間保持して吸水させ、水分含量が62%の米を得た。
(4)アミラーゼ活性化工程 第2吸水工程後の米を容器に収容密封し、60℃下で90分間保持した。
(5)炊飯工程 活性化後、すぐに、F0値が3.1以上となる熱量を加えて、炊飯処理とともに加熱殺菌処理を施して容器入り米飯を製造した。この容器入り米飯は、水分含量が62%、澱粉の分解率が12.1%のものであった。
(第二の態様に対応する実施例)(1)第1加熱工程 糯米の精米(品種:はくちょうもち)に対し、飽和水蒸気を用いて100℃、60分間の条件で加熱処理を施した。
(2)第1吸水工程第1加熱工程後の米を25℃の水に3時間浸漬し、その後篩の上に置いて水切りして、水分含量が44%の米を得た。
(3)第2吸水工程 加熱工程後の米に対し、この米の水分含量が62%となるように、β-アミラーゼ(天野エンザイム製:「ビオザイムM5」)を0.1%の割合で添加した水を加えて25℃下で90分間保持して吸水させ、水分含量が62%の米を得た。
(4)アミラーゼ活性化工程 第2吸水工程後の米を容器に収容密封し、60℃下で90分間保持した。
(5)炊飯工程 活性化後、すぐに、F0値が3.1以上となる熱量を加えて、炊飯処理とともに加熱殺菌処理を施して容器入り米飯を製造した。この容器入り米飯は、水分含量が62%、澱粉の分解率が13.2%のものであった。
比較例1(アミラーゼを添加しない比較例
)家庭用の電気炊飯器に、糯米の精米(品種:はくちょうもち)と、炊飯後の米飯の水分含量が62%となる量の水とを入れて炊飯し、得られた炊飯米を容器に収容密封し、F0値が3.1以上となる熱量を加えて、加熱殺菌処理を施して容器入り米飯を製造した。この容器入り米飯は、水分含量が62%のものであった。尚、澱粉の分解率は検出できなかった。
比較例2(通常の炊飯過程でアミラーゼを添加する比較例)家庭用の電気炊飯器に、糯米の精米(品種:はくちょうもち)と、炊飯後の米飯の水分含量が62%となるように、β-アミラーゼを0.5%の割合で添加した水を入れて、室温下で2時間浸漬した後に炊飯してから、得られた炊飯米を容器に収容密封し、F0値が3.1以上となる熱量を加えて、加熱殺菌処理を施して容器入り米飯を製造した。この容器入り米飯は、水分含量が62%、澱粉の分解率が2.8%のものであった。
比較試験1 実施例1〜2及び比較例1〜2の米飯について、糊化(α化)した澱粉の分子が再結合(β化)しやすい5℃の雰囲気下に15日間保管した後に官能評価を行った。その結果を表1に示す。
比較試験2 実施例1〜2及び比較例1〜2の米飯について、製造直後の糊化度と、5℃の雰囲気下に15日間又は30日間保管した後の糊化度とを測定した。その結果を表2に示す。尚、ここで、糊化度は、澱粉が老化するに従って、吸水量が小さくなることを利用して、次のように測定した。つまり、(1)15日間保管した米飯粒 約25gを蒸留水200mlに浸漬する。(2)5℃の環境下で60時間吸水させる。(3) 米飯と蒸留水との混合物を1mmメッシュの篩を通過させて、吸水米と水相部とに分離する。(4) 秤量缶に、この分離された水相部を約10g秤量し、これを105℃で16時間乾燥し、吸水米の水分を求める。この吸水米の水分を糊化度とした。
表2に示すように、アミラーゼを添加しない比較例1の米飯は、5℃−15日間保管した時点で、糊化度が製造直後の83.5%から63.1%にまで低下していた。また、通常の炊飯過程でアミラーゼを作用させた比較例2の米飯も、5℃−30日間保管した時点で、糊化度が製造直後の83.2%から68.4%に低下していた。他方、実施例1と実施例2は、5℃−30日保管した時点においても、糊化度が77.2%及び76.8%に保たれていた。
(第一の態様に対応する実施例) 米として、粳米の精米(品種:はなぶさ)を使用すること、第2吸水工程で、加熱工程後の米に対し、この米の水分含量が67%となる量のβ-アミラーゼを添加した水を加えて90分間保持して吸水させること以外は、実施例1と同様にして、容器入り米飯を製造した。この容器入り米飯は、水分含量が67%、澱粉の分解率が13.6%のものであった。 この容器入り米飯は、5℃の雰囲気下に15日間保管した後も、製造直後と同様の食感を有していた。
(第二の態様に対応する実施例) 米として、粳米の精米(品種:はなぶさ)を使用すること、第2吸水工程で、第2加熱工程後の米に対し、この米の水分含量が67%となる量のβ-アミラーゼを添加した水を加えて90分間保持して吸水させること以外は、実施例2と同様にして、容器入り米飯を製造した。この容器入り米飯は、水分含量が67%、澱粉の分解率が澱粉の分解率が15.2%のものであった。 この容器入り米飯は、5℃の雰囲気下に15日間保管した後も、製造直後と同様の食感を有していた。
本発明を適用した第一の態様のフロー図である。 本発明を適用した第二の態様のフロー図である。

Claims (4)

  1. 米に60℃を超えない条件で吸水処理を施す第1吸水工程と、 前記第1吸水工程後の米に実質的に水を加えることなく加熱処理を施す加熱工程と、 前記加熱工程後の米に60℃を超えない条件で吸水処理を施す第2吸水工程と、 前記第2吸水工程後の米に炊飯処理と併せて加熱殺菌処理を施す炊飯工程とを含み、 前記第2吸水工程で、米にアミラーゼを添加した水を吸水させることと、 第2吸水工程後、炊飯工程に移行する前に、密閉下で20℃〜80℃の温度下で30分間〜12時間保持するアミラーゼ活性化工程を設けることと、 前記炊飯工程では炊飯処理と併せて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする米飯の製造方法。
  2. 米に実質的に水を加えることなく加熱処理を施す第1加熱工程と、 前記第1加熱工程後の米に60℃を超えない条件で吸水処理を施す第1吸水工程と、 前記第1吸水工程後の米に実質的に水を加えることなく加熱処理を施す第2加熱工程と、 前記第2加熱工程後の米に60℃を超えない条件で吸水処理を施す第2吸水工程と、 前記第2吸水工程後の米に炊飯処理と併せて加熱殺菌処理を施す炊飯工程とを含み、 前記第2吸水工程で、米にアミラーゼを添加した水を吸水させることと、 第2吸水工程後、炊飯工程に移行する前に、密閉下で20℃〜80℃の温度下で30分間〜12時間保持するアミラーゼ活性化工程を設けることと、 前記炊飯工程では炊飯処理と併せて加熱殺菌処理を施すことを特徴とする米飯の製造方法。
  3. 請求項1又は2の方法によって得られた米飯が、粳米を炊飯した米飯であって、水分含量が62〜75%であり且つ澱粉の分解率が固形分当り5〜33%であることを特徴とする米飯。
  4. 請求項1又は2の方法によって得られた米飯が、糯米を炊飯した米飯であって、水分含量が57〜70%であり且つ澱粉の分解率が固形分当り5〜33%であることを特徴とする米飯。
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