JPWO2002076594A1 - 複合半透膜、その製造方法、及びそれを用いた水処理方法 - Google Patents
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Abstract
本発明により、実用的な透水性と優れた塩阻止性および耐酸化剤性を併せ持つ複合半透膜、その製造方法、及びそれを用いた水処理方法を提供するすることができる。
Description
本発明は、液状混合物の成分を選択的に分離するための複合半透膜、その製造方法、及びその複合半透膜を用いた水処理方法に関し、詳しくは、多孔性支持体上にポリアミドを主成分とする薄膜を備えた実用的な透水性と塩阻止性および耐久性を有した複合半透膜及びその複合半透膜を用いた水処理方法に関する。
技術背景
上記の如き用途に使用される半透膜としては、相分離法等により非対称構造が同一素材で形成された非対称膜と、多孔性支持体上に選択分離性を有する薄膜を異なる素材で形成してなる複合半透膜とが知られている。
現在、後者の半透膜として、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなる薄膜が、多孔性支持体上に形成されたものが多く提案されている(例えば、特開昭55−147106号、特開昭62−121603号、特開昭63−218208号、特開平2−187135号公報など)。また、多官能芳香族アミンと多官能脂環式酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなる薄膜が多孔性支持体上に形成されたものも提案されている(例えば特開昭61−42308号公報など)。
また、上記複合半透膜の水透過性をさらに向上させるための添加剤が提案されており、水酸化ナトリウムやリン酸三ナトリウムなど、界面反応にて生成するハロゲン化水素を除去しうる物質や、公知のアシル化触媒、また界面反応時の反応場の界面張力を減少させる化合物などが知られている(例えば特開昭63−12310号、特開平6−47260号、特開平8−224452号公報など)。
これらの半透膜は、造水プラントなどをはじめ各種水処理におけるより安定した運転性や簡易な操作性および膜寿命の長期化による低コストの追求から、各種の酸化剤、特に塩素による洗浄に耐えうる耐久性が求められている。上記に例示したポリアミド系の半透膜は実用的な耐酸化剤性を有するとされているが、いずれも定常的あるいは間欠的な塩素殺菌に対して長期的に耐え得るだけのレベルの耐性を有しているとはいえない。このため、より高い耐酸化剤性と実用レベルの透水性および塩阻止性を合わせ持つ半透膜が望まれている。
これらの目的に対して、2級アミノ基のみを有するジアミンから得た複合膜(特開昭55−139802号公報)、脂肪族ジアミンもしくは脂環式ジアミンを用いて得た複合膜(特開昭58−24303号、特開昭59−26101号 、特開昭59−179103号、特開平1−180208号、特開平2−78428号公報)、ジフェニルスルホン構造を有する複合膜(特開昭62−176506号、特開昭62−213807号、特開昭62−282603号公報)、さらには後処理によって耐塩素性を付与したもの(特開平5−96140号公報)などが提案されている。
しかしながら、これらの膜も実用的な半透膜に要求される透水性、塩阻止性および耐酸化剤性を十分に合わせ持つものではなく、より高い特性が望まれている。つまり、ポリアミド系の逆浸透膜において、主鎖に芳香環を有さない脂肪族系ジアミンを用いて得られたポリアミドが前述したように耐酸化剤性に優れることは知られていたが、半透膜の塩阻止率と透水性の面から十分に満足できるものではなかった。
なお、上記の特開平1−180208号には、多官能芳香族アミンと脂肪族ジアミンを併用して得られたポリアミド系複合半透膜を、pH6〜13の塩素含有水溶液に浸漬する工程を含む製造方法が開示されているが、この方法が他の如何なる複合半透膜に適用できるのかは全く示唆されていない。
そこで、本発明の目的は、実用的な透水性と優れた塩阻止性および耐酸化剤性を併せ持つ複合半透膜、その製造方法、及びそれを用いることで実用的な透水性と優れた塩阻止性および耐酸化剤性を発現できる水処理方法を提供することにある。
発明の開示
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、薄膜を形成するポリアミド系樹脂に関し、アミド結合の窒素原子の置換基中に芳香環を有することにより、かかる置換基がアルキル基のものや未置換のものよりも高い塩阻止率を有し得ることを見いだした。また、そのような薄膜を有する複合半透膜を酸化剤水溶液と接触させることにより、各種溶質の阻止性能を低下させることなく透水性を飛躍的に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の複合半透膜は、薄膜とこれを支持する多孔性支持膜とからなる複合半透膜において、前記薄膜が下記の一般式(I)及び/又は(II)で表される構成単位を有するポリアミド系樹脂を含むことを特徴とする。
(但し、R11は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R12およびR13はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または水素原子であり、かつR12またはR13の少なくともどちらか一方は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。R14は2価の有機基を示す。)
(但し、R21は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R22およびR23はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または水素原子であり、かつR22またはR23の少なくともどちらか一方は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。R24は3価の有機基を示す。)
本発明の複合半透膜は、薄膜とこれを支持する多孔性支持膜とからなる複合半透膜において、前記薄膜が下記の一般式(Ia)及び/又は(IIa)で表される構成単位を有するポリアミド系樹脂を含むものが好ましい。
(但し、R31は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R32およびR33はそれぞれ独立にフェニル基または水素原子であり、かつR32またはR33の少なくともどちらか一方はフェニル基である。R34は2価の有機基を示す。)
(但し、R41は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R42およびR43はそれぞれ独立にフェニル基または水素原子であり、かつR42またはR43の少なくともどちらか一方はフェニル基である。R44は3価の有機基を示す。)
また、本発明の複合半透膜は、薄膜とこれを支持する多孔性支持膜とからなる複合半透膜において、前記薄膜が下記の一般式(III)で表されるジアミン成分と、2価以上の多官能酸ハロゲン化物との縮合反応によって得られる構成単位を有するポリアミド系樹脂を含むことを特徴とする。
(但し、R51は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R52およびR53はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または水素原子であり、かつR52またはR53の少なくともどちらか一方は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。)
一方、本発明の複合半透膜の製造方法は、上記いずれかに記載の複合半透膜を、酸化剤水溶液と接触させる接触工程を含むものである。また、本発明の別の複合半透膜は、当該製造方法により得られるものである。
他方、本発明の水処理方法は、塩及び/又は有機物を含有する水を原水として複合半透膜により膜分離処理し、前記塩及び/又は有機物が実用上十分に除去された透過水を得る水処理方法において、前記複合半透膜として前記いずれかに記載の複合半透膜を用いると共に、前記原水中に殺菌剤を添加することを特徴とする。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
〔複合半透膜〕
本発明の複合半透膜は、薄膜とこれを支持する多孔性支持膜とからなり、前記薄膜が前記一般式(I)〜(IIa)で表される構成単位を有するポリアミド系樹脂を含むことを特徴とする。また、前記一般式(III)〜(IIIa)で表されるジアミン成分と、2価以上の多官能酸ハロゲン化物との縮合反応によって得られる構成単位を有するポリアミド系樹脂を含むことを特徴とする。
一般式(I)〜(IIIa)におけるR11、R21、R31、R41、R51、及びR61は、炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基(炭素数1〜4))を含んでいてもよいアルキレン基を示す。具体的には、−C2H4−、−C3H6−、−C4H8−、−C5H10−、−C6H12−、−C7H14−、−C8H16−、−C9H18−、−C10H20−、−CH2OCH2−、−CH2OCH2OCH2−、−C2H4OCH2−、−C2H4OC2H4−、−CH2SCH2−、−CH2SCH2SCH2−、−C2H4SCH2−、−C2H4SC2H4−、−C2H4NHC2H4−、−C2H4N(CH3)C2H4−などがあげられる。なかでも、耐酸化剤性をさらに向上させること、膜形成時の反応性、成膜の塩阻止性などの観点から、複素原子を含まないアルキレン基が好ましい。
また、R12、R13、R22、R23、R32、R33、R42、R43、R52、R53、R62およびR63はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または水素原子である。但しR12またはR13の少なくともどちらか一方は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、これは他の組合せについても同様である。具体的には、H、−C6H5、−CH2C6H5、−C6H4OH、−C6H4CH3、−C6H4NO2、−C6H4Clなどがあげられ、成膜の透水性や塩阻止性などの観点から、置換基を有していてもよいフェニル基が好ましく、特に−C6H5が好ましい。従って、R32又はR33の少なくともどちらか一方が−C6H5であることが好ましく、一方だけが−C6H5であることがより好ましい。これはR42又はR43についても同様である。
本発明において、前記ジアミン成分が下記の一般式(IIIa)で表される化合物であることが好ましい。
(但し、R61は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R62およびR63はそれぞれ独立にフェニル基または水素原子であり、かつR62またはR63の少なくともどちらか一方はフェニル基である。)
一方、一般式(I)〜(IIa)におけるR14、R24、R34、及びR44は、2価又は3価の有機基であり、上記の如き一般式(III)又は(IIIa)で表されるジアミン成分と縮合反応により本発明の薄膜を形成する2価以上の多官能酸ハロゲン化物の残基に相当するものである。当該多官能酸ハロゲン化物としては、特に限定されるものではなく、例えばプロパントリカルボン酸クロライド、ブタントリカルボン酸クロライド、ペンタントリカルボン酸クロライド、グルタリルハライド、アジポイルハライド、シクロプロパントリカルボン酸クロライド、シクロブタンテトラカルボン酸クロライド、シクロペンタントリカルボン酸クロライド、シクロペンタンテトラカルボン酸クロライド、シクロヘキサントリカルボン酸クロライド、テトラハイドロフランテトラカルボン酸クロライド、シクロペンタンジカルボン酸クロライド、シクロブタンジカルボン酸クロライド、シクロヘキサンジカルボン酸クロライド、テトラハイドロフランジカルボン酸クロライドなどがあげられる。但し、反応性、成膜の塩阻止性や透水性などの観点から、多官能芳香族酸ハロゲン化物であることが好ましく、このような多官能芳香族酸ハロゲン化物としては、トリメシン酸クロライド、トリメリット酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ピロメリト酸クロライド、ビフェニルジカルボン酸クロライド、ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライドなどがあげられる。
一方、本発明におけるポリアミド系樹脂は、架橋構造を有することが好ましく、その場合、3価以上の多官能酸ハロゲン化物を使用することが好ましい。3価以上の多官能酸ハロゲン化物を使用する場合、架橋部分では一般式(II)で表される構成単位となるが、未架橋部分が存在する場合には、一般式(I)で表される構成単位となり、R14はカルボキシル基やその塩などが残存する2価の有機基となる。これは一般式(IIa)と一般式(Ia)の関係についても同様である。
上記薄膜を形成するポリアミド系樹脂は、単独重合体でもよいが、上記の如き構成単位の複数や他の構成単位を含む共重合体や、単独重合体を複数混合したブレンド体でもよい。例えば、一般式(I)で表される構成単位、及び一般式(II)で表される構成単位を有するポリアミド系樹脂が挙げられる。上記の他の構成単位としては、主鎖に芳香環を含むジアミン成分や側鎖に芳香環を含まないジアミン成分、その他ポリアミド系半透膜に使用されるジアミン成分などが挙げられる。
本発明におけるポリアミド系樹脂には、一般式(I)及び/又は(II)、あるいは一般式(Ia)及び/又は(IIa)で表される構成単位を50モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましい。50モル%未満であると、アミド結合の窒素原子の置換基中の芳香環の効果が小さくなり、実用的な透水性と優れた塩阻止性および耐酸化剤性を同時に満足しにくくなる傾向がある。
本発明における薄膜(分離活性層)の厚みは、薄膜の製法等にもよるが、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。当該厚みが薄い方が透過流束の面で優れるが、薄くなりすぎると薄膜の機械的強度が低下して欠陥が生じ易く、塩阻止性能に悪影響を及ぼす傾向があるからである。
本発明において上記薄膜を支持する多孔性支持膜は、薄膜を支持しうるものであれば特に限定されず、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンのようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ボリフッ化ビニリデンなど種々のものをあげることができるが、特に化学的、機械的、熱的に安定である点からポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンからなる多孔性支持膜が好ましく用いられる。かかる多孔性支持膜は、通常約25〜125μm、好ましくは約40〜75μmの厚みを有するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
また、多孔性支持膜は、対称構造でも非対称構造でもよいが、薄膜の支持機能と通液性を両立させる上で、非対称構造が好ましい。なお、多孔性支持膜の薄膜形成側面の平均孔径は、1〜1000nmが好ましい。
本発明における薄膜を多孔質支持膜上に形成させる際に、その方法については何ら制限なく、あらゆる公知の手法を用いることができる。例えば、界面縮合法、相分離法、薄膜塗布法などが挙げられる。中でも、多孔質支持膜上にジアミン成分を含有した水溶液を塗布した後に、かかる多孔質支持膜を多官能酸ハロゲン化物を含有した非水溶性溶液に接触させることにより多孔質支持膜上に薄膜を形成させる界面縮合法が好ましい。かかる界面縮合法の条件等の詳細は、特開昭58−24303号公報、特開平1−180208号公報等に記載されており、それらの公知技術を適宜採用することができる。
また、その反応場に、製膜を容易にし、あるいは得られる複合半透膜の性能を向上させるための目的で、各種の試薬を存在させることが可能である。これらの試薬として、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの重合体、ソルビトール、グリセリンなどのような多価アルコール、特開平2−187135号公報に記載のテトラアルキルアンモニウムハライドやトリアルキルアンモニウムと有機酸の塩などのアミン塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤、縮重合反応にて生成するハロゲン化水素を除去しうる水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、トリエチルアミン、カンファースルホン酸、あるいは公知のアシル化触媒、また、特開平8−224452号公報に記載の溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3)1/2の化合物などがあげられる。
〔複合半透膜の製造方法〕
次に、本発明の製造方法について説明する。本発明の複合半透膜の製造方法は、以上のような複合半透膜を酸化剤水溶液と接触させる接触工程を含むことを特徴とする。
用いられる酸化剤は、通常に酸化作用を有する物質であり、また一般的に水溶液として用いるものであれば何ら制限されるものではなく、たとえば過マンガン酸、過マンガン酸塩、クロム酸、クロム酸塩,硝酸、硝酸塩、過酸化水素などの過酸化物、硫酸、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩などがあげられる。上記酸化剤としてはコストや取り扱いなどの面から次亜塩素酸塩、特に次亜塩素酸ナリウムが好ましい。
本発明の製造方法は、以上のような複合半透膜を金属塩類を含む酸化剤水溶液と接触させる工程を含むことが好ましく、金属塩類の触媒効果で酸化剤水溶液との接触時間を短縮化できるようになる。ここで用いる金属塩類は、アルカリ金属塩類、アルカリ土類金属塩類、遷移金属塩類などであり、たとえば塩化リチウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、塩化鉄、塩化銅、塩化カルシウムなどが挙げられる。好ましくは、塩化物金属塩である。
かかる水溶液中の金属塩類の濃度は、短時間の接触で透過流束を増加させる効果に鑑みて定められる。たとえば酸化剤に次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、その濃度は0.001〜50wt%、好ましくは0.05〜5wt%とすることができる。無機塩類濃度が0.001wt%未満であると、求める効果を得るために要する時間がかかりすぎ製造上実用的ではない。または製造上許容される時間内に求める効果を得ることができない。無機塩類濃度が50wt%を超えると複合膜の塩阻止性能が低下するなどの膜の劣化が生じるので好ましくない。
本発明において、複合膜に酸化剤水溶液を接触させる方法としては浸漬、加圧通水、噴霧、塗布、シャワーなどあらゆる方法が例示されるが、かかる接触による十分な効果を付与せしめるためには常圧浸漬または、加圧通水が好ましい。具体的には、複合半透膜を酸化剤水溶液に常圧で浸漬する方法や、複合半透膜を酸化剤水溶液を圧力を付与して透過させる方法にて行えばよい。
常圧浸漬および加圧通水法での酸化剤水溶液の接触をおこなう際、かかる水溶液中の酸化剤濃度は求める効果に鑑みて定めることが可能である。たとえば酸化剤に次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、その濃度は遊離塩素濃度1mg/L〜10%、好ましくは10mg/L〜1%とすることができる。遊離塩素濃度が1mg/L未満であると、求める効果を得るために要する時間がかかりすぎ製造上実用的ではない。または製造上許容される時間内に求める効果を得ることができない。遊離塩素濃度が10%を越えると複合膜の塩阻止性能が低下するなどの膜の劣化が生じるので好ましくない。
酸化剤水溶液の接触を行う際、接触温度も短時間の接触で透過流束を増加させる効果に鑑みて定められる。たとえば酸化剤に次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、その濃度は5℃〜60℃、好ましくは25℃〜60℃とすることができる。接触温度が5℃未満であると、求める効果を得るために要する時間がかかりすぎ製造上実用的ではない。または製造上許容される時間内に求める効果を得ることができない。接触温度が60℃を超えると複合膜の塩阻止性能が低下するなどの膜の劣化が生じるので好ましくない。
常圧浸漬および加圧通水法での酸化剤水溶液の接触をおこなう際、接触時間は求める効果を得、かつ製造上の制約が許容する範囲であれば何ら制限を受けるものではなく、任意の時間を設定することができる。
加圧通水法で酸化剤水溶液の接触をおこなう際、かかる水溶液を複合膜に供する圧力については複合膜および圧力付与のための部材や設備の物理的強度の許容する範囲においては何ら制限はなく、たとえば0.01MPa〜10MPaの範囲でおこなうことが可能である。
かかる処理、すなわち常圧浸漬および加圧通水をおこなう際に複合膜はその形状になんら制限を受けるものではない。すなわち平膜状、あるいはスパイラルエレメント状など、考えられるあらゆる膜形状において処理を施すことが可能である。
〔複合半透膜を用いた水処理方法〕
本発明における複合半透膜は、耐酸化剤性が大幅に向上されるという特徴を有し、そのためかかる複合膜を用いて塩及び/又は有機物を含有する原水を膜分離処理し、かかる塩及び/又は有機物が実用上十分に除去された透過水を得る方法において、原水中に殺菌剤としての効果を有する酸化剤を添加して水処理をおこなうことが可能である。更に、耐酸化剤性の大幅な向上によって、膜分離処理による透過水中にも、十分な殺菌能力を有する濃度で殺菌剤が存在する場合でも、水処理を好適に行うことができる。
かかる酸化剤の添加は複合膜による水処理運転中、常時おこなわれていてもよく、あるいは間欠的であってもよい。また、水処理運転を停止し、酸化剤を含有した原水で複合膜モジュールを一定時間封入することでおこなってもよい。
かかる酸化剤は、その殺菌効果によって膜の汚染が抑制される効果の期待できるものとして、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩や過酸化水素水、硫酸、硝酸などがあげられるが、殺菌効果や取り扱いの面から特に次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩が好ましく用いられる。また、このように原水に酸化剤を添加する場合、液のpH調整はおこなってもよいし行わなくてもよい。
本発明における水処理方法は、原水に殺菌効果のある酸化剤を含有せしめることにより膜の汚染が抑制されるなどの利点がもたらせる用途において、好適に利用することができる。例えば、無菌水システムの殺菌、飲料水製造システムからの脱活性炭化、食品産業における容器などの洗浄排水の処理、プールの水の浄化システムなどがその一例として挙げられるが、これらに限定されるわけではない。なかでも、水処理方法における原水が、飲料用容器を洗浄液で洗浄した後の排水である場合に、酸化剤による殺菌が膜による水処理の安定性を高める効果が大きいため、本発明は特に有効である。
本発明の水処理方法によると、本発明の複合半透膜を使用するため、実用的な透水性と優れた塩阻止性を発揮でき、しかも耐酸化剤性を併せ持つため、原水中に殺菌剤を添加して水処理できる。その際、殺菌剤の添加により、その殺菌効果によって膜の汚染が抑制され、膜分離の持続性やメンテナンス性が特に良好になる。
実施例
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
実施例1−1
N−フェニルエチレンジアミン3重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン3重量%、カンファースルホン酸6重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.2重量%を含有するイソオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応をおこなわせ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめることにより複合半透膜を得た。
このようにして得られた複合半透膜を0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなったところ、食塩の阻止率は99.3%、透過流束は0.32m3/(m2・日)であった。同様の条件で硝酸アンモニウムの試験をおこなったところ、阻止率は95.0%であった。
この膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬し、100h後に同様の条件で試験を行ったところ、食塩の阻止率は99.0%、透過流束0.38m3/(m2・日)であった。また、硝酸アンモニウムの阻止率は94.0%であった。
実施例1−2
N−フェニルエチレンジアミン4重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン3重量%、カンファースルホン酸6重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.25重量%を含有するイソパラフィン系混合溶液(出光石油化学(株)製,IPソルベント)を接触させて界面縮重合反応をおこなわせ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめることにより複合半透膜を得た。
このようにして得られた複合半透膜を0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなったところ、食塩の阻止率は98.9%、透過流束は0.33m3/(m2・日)であった。同様の条件で硝酸アンモニウムの試験をおこなったところ、阻止率は95.3%であった。
この膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬し、100h後に同様の条件で試験を行ったところ、食塩の阻止率は99.5%、透過流束0.41m3/(m2・日)であった。また、硝酸アンモニウムの阻止率は95.7%であった。
比較例1−1
実施例1−1において、ジアミン成分をm−フェニレンジアミンとした以外はすべて同様にして複合半透膜を作製し、テストをおこなった。その結果を表1に示す。このようにm−フェニレンジアミンをアミン成分とした膜は次亜塩素酸ナトリウム水溶液への浸漬により著しく性能が低下した。
比較例1−2
実施例1−1において、ジアミン成分をエチレンジアミンとした以外はすべて同様にして複合半透膜を作製し、テストをおこなった。その結果を表1に示す。このようにエチレンジアミンをアミン成分とした膜は透過流束が不十分であった。
比較例1−3
実施例1−1において、ジアミン成分をN−メチルエチレンジアミンとした以外はすべて同様にして複合半透膜を作製し、テストをおこなった。その結果を表1に示す。このようにN−メチルエチレンジアミンをアミン成分とした膜は、食塩および硝酸アンモニウムの阻止率が不十分であった。
比較例1−4
実施例1−1において、ジアミン成分をN−エチルエチレンジアミンとした以外はすべて同様にして複合半透膜を作製し、テストをおこなった。その結果を表1に示す。このようにN−エチルエチレンジアミンをアミン成分とした膜は、食塩および硝酸アンモニウムの阻止率が不十分であった。
表1の結果における比較例1−2〜1−4と実施例1−1〜1−2との比較から分かるように、アミノ基の窒素の置換基として芳香環が存在すると、塩などの溶質の阻止率が非常に高くなることが示されている。
実施例1−3
N−フェニルエチレンジアミン2重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン2重量%、カンファースルホン酸4重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.15重量%を含有するイソオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応をおこなわせ、その後120℃で5分間乾燥させることにより多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめ複合半透膜を得た。
この複合膜を、遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウムを含有する原水で1.5MPaの操作圧力にて連続運転をおこなった。このときの複合膜の透過流束、食塩阻止率の推移を図1に示す。
比較例1−5
比較例1−1で得られた複合膜を、遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウムを含有する原水で1.5MPaの操作圧力にて連続運転をおこなった。このときの複合膜の食塩阻止率の推移を図1に示す。
図1の結果が示すように、本発明の実施例1−3では初期の阻止率を長期間維持できるのに対し、比較例1−5では次亜塩素酸ナトリウムによる膜の劣化が生じて、阻止率の急激な低下がみられた。
参考例1−1
N−ベンジルエチレンジアミン3重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン3重量%、カンファースルホン酸6重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.2重量%を含有するイソオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応をおこなわさせ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめることにより複合半透膜を得た。
このようにして得られた複合半透膜を0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなった。その結果、食塩の阻止率は50.4%、透過流束は0.25m3/(m2/日)であった。同様の条件で硝酸アンモニウムの試験をおこなったところ、阻止率は45.2%であった。
この膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬し、100h後に同様の条件で試験をおこなったところ、食塩の阻止率は61.1%、透過流束1.06m3/(m2/日)であった。また、硝酸アンモニウムの阻止率は60.1%であった。
参考例1−2
N,N’−ジフェニルエチレンジアミン2重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.10重量%、トリエチルアミン2重量%、カンファースルホン酸4重量%、アセトニトリル30重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.5重量%を含有するイソオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応をおこなわさせ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめることにより複合半透膜を得た。
このようにして得られた複合半透膜を0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなった。その結果、食塩の阻止率は67.7%、透過流束は0.25m3/(m2/日)であった。同様の条件で硝酸アンモニウムの試験をおこなったところ、阻止率は65.5%であった。
この膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬し、100h後に同様の条件で試験をおこなったところ、食塩の阻止率は61.3%、透過流束0.26m3/(m2/日)であった。また、硝酸アンモニウムの阻止率は61.8%であった。
参考例1−3
N,N’−ジベンジルエチレンジアミン3重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.10重量%、トリエチルアミン3重量%、カンファースルホン酸6重量%、アセトニトリル20重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.2重量%を含有するイソオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応をおこなわさせ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめることにより複合半透膜を得た。
このようにして得られた複合半透膜を0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなった。その結果、食塩の阻止率は80.8%、透過流束は0.15m3/(m2/日)であった。同様の条件で硝酸アンモニウムの試験をおこなったところ、阻止率は71.2%であった。
この膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬し、100h後に同様の条件で試験をおこなったところ、食塩の阻止率は80.2%、透過流束0.16m3/(m2/日)であった。また、硝酸アンモニウムの阻止率は69.6%であった。
実施例2−1
N−フェニルエチレンジアミン3重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン3重量%、カンファースルホン酸6重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.2重量%を含有するインオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応をおこなわせ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめることにより複合半透膜を得た。
このようにして得られた複合半透膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に50時間常温で浸漬させた後、かかる水溶液から取り出し、0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなった。その結果、食塩の阻止率は99.0%、透過流束は0.82m3/(m2・日) であった。
実施例2−2
N−フェニルエチレンジアミン3重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン3重量%、カンファースルホン酸6重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.2重量%を含有するイソオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応をおこなわせ、その後120℃の熱風乾燥機中で3分間保持させ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめ複合半透膜を得た。
このようにして得られた複合半透膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を1.5MPaの圧力にて15時間連続で供給し続けた後、0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなった。その結果、食塩の阻止率は98.8%、透過流束は0.88m3/(m2・日)であった。
実施例2−3
N−ベンジルエチレンジアミン3重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン3重量%、カンファースルホン酸6重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.2重量%を含有するイソオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応をおこなわさせ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめることにより複合半透膜を得た。
このようにして得られた複合半透膜を0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなった。その結果、食塩の阻止率は50.4%、透過流束は0.25m3/(m2/日)であった。同様の条件で硝酸アンモニウムの試験をおこなったところ、阻止率は45.2%であった。
この膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬し、100h後に同様の条件で試験をおこなったところ、食塩の阻止率は61.1%、透過流束1.06m3/(m2/日)であった。また、硝酸アンモニウムの阻止率は60.1%であった。
比較例2−1
実施例2−1において,次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬をおこなわずにテストをおこなった。その結果、食塩の阻止率は99.3%、透過流束は0.32m3/(m2・日)であった。実施例2−1との対比から、酸化剤処理によって塩阻止率を著しく低下させることなく透過流束が増大することが分かった。
比較例2−2
m−フェニレンジアミン3重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン3重量%、カンファースルホン酸6重量%を含有した水溶液を多孔性ポリスルホン支持膜(薄膜形成側平均孔径20nm、非対称膜)に接触させた後、余分の水溶液を除去した。ついでかかる支持膜の表面にトリメシン酸クロライド0.2重量%を含有するインオクタン溶液を接触させて界面縮重合反応をおこなわせ、多孔性支持膜上に重合体薄膜(厚み1μm)を形成せしめることにより複合半透膜を得た。
このようにして得られた複合半透膜を、0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなった。その結果、食塩の阻止率は99.5%、透過流束は1.1m3/(m2・日)であった。
また、上記のようにして得られた複合半透膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に50時間常温で浸漬させた後、かかる水溶液から取り出し、0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなった。その結果、食塩の阻止率は96.2%、透過流束は3.5m3/(m2・日)となった。このようにジアミン成分にm−フェニレンジアミンを用いた場合、同様の酸化剤処理では膜の塩阻止率が著しく低下することが示された。
比較例2−3
実施例2−1において、ジアミン成分をN−メチルエチレンジアミンとした以外はすべて同様にして複合半透膜を作製し、酸化剤処理を行わずに水処理テストをおこなった。その結果、食塩の阻止率は83.9%、透過流束は0.72m3/(m2・日)となった。このようにして得られた複合半透膜を遊離塩素濃度100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に100時間常温で浸漬させた後、かかる水溶液から取り出し、0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7、1.5MPaの圧力で試験をおこなった。その結果、食塩の阻止率は91.3%、透過流束は0.56m3/(m2・日)となった。このようにN−メチルエチレンジアミンを用いた場合、同様の酸化剤処理では、膜の塩阻止率は微増したものの、透水性は逆に低下した。
実施例2−4
実施例2−2で得られた複合半透膜を遊離塩素濃度1000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に塩化マグネシウムを0.5wt%添加し、40℃で3時間浸漬した後、かかる水溶液から取り出し、0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7.0、1.5MPaの圧力で試験を行った。その結果、食塩の阻止率は92.52%、透過流束は0.71m3/(m2・日)であった。
実施例2−5
実施例2−2で得られた複合半透膜を遊離塩素濃度1000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に硝酸マグネシウムを0.5wt%添加し、40℃で3時間浸漬した後、かかる水溶液から取り出し、0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7.0、1.5MPaの圧力で試験を行った。その結果、食塩の阻止率は92.28%、透過流束は0.65m3/(m2・日)であった。
実施例2−6
実施例2−2で得られた複合半透膜を遊離塩素濃度1000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に塩化カリウムを0.5wt%添加し、40℃で3時間浸漬した後、かかる水溶液から取り出し、0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7.0、1.5MPaの圧力で試験を行った。その結果、食塩の阻止率は91.86%、透過流束は0.62m3/(m2・日)であった。
実施例2−7
実施例2−2で得られた複合半透膜を遊離塩素濃度1000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に塩化カルシウムを0.5wt%添加し、40℃で3時間浸漬した後、かかる水溶液から取り出し、0.15%食塩水を原水として、25℃、pH7.0、1.5MPaの圧力で試験を行った。その結果、食塩の阻止率は92.21%、透過流束は0.65m3/(m2・日)であった。
参考例2−1
実施例2−4において無機塩類の添加をせずに40℃の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に3時間浸漬し、同様にテストを行った。その結果、食塩の阻止率は92%、透過流束は0.5m3/(m2・日)であった。実施例2−4との対比から、金属塩類を含む酸化剤水溶液による酸化剤処理によって、著しい塩阻止率の低下がなく、透過流束が増大することが分かった。
産業上の利用可能性
本発明の複合半透膜は、超純水の製造、かん水または海水の脱塩などに好適であり、また染色排水や電着塗料排水などの公害発生原因である汚れなどから、その中に含まれる汚染源あるいは有効物質を除去・回収し、排水のクローズ化に寄与することができる。また、食品用途などで有効成分の濃縮などにも用いることができる。特に、本発明における水処理方法は、原水に殺菌効果のある酸化剤を含有せしめることにより膜の汚染が抑制されるなどの利点がもたらせる用途において、好適に利用することができる。例えば、無菌水システムの殺菌、飲料水製造システムからの脱活性炭化、食品産業における容器などの洗浄排水の処理、プールの水の浄化システムなどがその一例として挙げられる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1−3及び比較例1−5における食塩阻止率の経時変化を示すグラフである。
Claims (19)
- 薄膜とこれを支持する多孔性支持膜とからなる複合半透膜において、前記薄膜が下記の一般式(I)及び/又は(II)で表される構成単位を有するポリアミド系樹脂を含むことを特徴とする複合半透膜。
(但し、R11は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R12およびR13はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または水素原子であり、かつR12またはR13の少なくともどちらか一方は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。R14は2価の有機基を示す。)
(但し、R21は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R22およびR23はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または水素原子であり、かつR22またはR23の少なくともどちらか一方は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。R24は3価の有機基を示す。) - 薄膜とこれを支持する多孔性支持膜とからなる複合半透膜において、前記薄膜が下記の一般式(Ia)及び/又は(IIa)で表される構成単位を有するポリアミド系樹脂を含むことを特徴とする複合半透膜。
(但し、R31は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R32およびR33はそれぞれ独立にフェニル基または水素原子であり、かつR32またはR33の少なくともどちらか一方はフェニル基である。R34は2価の有機基を示す。)
(但し、R41は炭素数2〜10の−O−、−S−、又は−NR−(Rは水素原子または低級アルキル基)を含んでいてもよいアルキレン基を示し、R42およびR43はそれぞれ独立にフェニル基または水素原子であり、かつR42またはR43の少なくともどちらか一方はフェニル基である。R44は3価の有機基を示す。) - 前記多官能酸ハロゲン化物が芳香族多官能酸ハロゲン化物である請求項3又は4に記載の複合半透膜。
- 請求項1〜5いずれかに記載の複合半透膜を、酸化剤水溶液と接触させる接触工程を含む複合半透膜の製造方法。
- 前記接触工程が、複合半透膜を酸化剤水溶液に常圧で浸漬することによって行うものである請求項6に記載の複合半透膜の製造方法。
- 前記接触工程が、複合半透膜を酸化剤水溶液を圧力を付与して透過させることによって行うものである請求項6に記載の複合半透膜の製造方法。
- 前記酸化剤水溶液が次亜塩素酸ナトリウム水溶液である請求項6記載の複合半透膜の製造方法。
- 前記酸化剤水溶液が金属塩類を含む請求項6記載の複合半透膜の製造方法。
- 請求項6〜10いずれかに記載の製造方法によって製造することができる複合半透膜。
- 塩及び/又は有機物を含有する水を原水として複合半透膜により膜分離処理し、前記塩及び/又は有機物が実用上十分に除去された透過水を得る水処理方法において、前記複合半透膜として請求項1〜5いずれかに記載の複合半透膜を用いると共に、前記原水中に殺菌剤を添加することを特徴とする水処理方法。
- 前記殺菌剤が次亜塩素酸塩である請求項12に記載の水処理方法。
- 前記膜分離処理による透過水中にも、十分な殺菌能力を有する濃度で前記殺菌剤が存在するものである請求項12に記載の水処理方法。
- 前記原水が、飲料用容器を洗浄液で洗浄した後の排水である請求項12に記載の水処理方法。
- 塩及び/又は有機物を含有する水を原水として複合半透膜により膜分離処理し、前記塩及び/又は有機物が実用上十分に除去された透過水を得る水処理方法において、前記複合半透膜として請求項11記載の複合半透膜を用いると共に、前記原水中に殺菌剤を添加することを特徴とする水処理方法。
- 前記殺菌剤が次亜塩素酸塩である請求項16に記載の水処理方法。
- 前記膜分離処理による透過水中にも、十分な殺菌能力を有する濃度で前記殺菌剤が存在するものである請求項16に記載の水処理方法。
- 前記原水が、飲料用容器を洗浄液で洗浄した後の排水である請求項16に記載の水処理方法。
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