JPWO2002034541A1 - インクジェット用記録材料 - Google Patents

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Abstract

本発明によれば、支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を塗設したインクジェット用記録材料において、支持体に近いインク受容層(A)が気相法シリカを含有し、支持体から離れたインク受容層(B)がアルミナ、またはアルミナ水和物を含有するインクジェット用記録材料が提供される。

Description

技術分野
本発明は、インクジェット用記録材料に関し、特に高光沢でインク吸収性が高く、高印字濃度で、発色性に優れ、表面強度に優れたインクジェット用記録材料に関する。
背景技術
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の親水性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
例えば、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を親水性バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
また、特公平3−56552号、特開平2−188287号、同平8−132728号、同平10−81064号、同平10−119423号、同平10−175365号、同10−203006号、同10−217601号、同平11−20300号、同平11−20306号、同平11−34481号公報には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いた記録材料が開示されている。しかし、インク吸収性と光沢性を両立させることが難しかった。
また、特開昭62−174183号、特開平2−276670号、特開平5−32037号、特開平6−199034号公報等にアルミナやアルミナ水和物を用いた記録材料が開示されている。しかし、光沢性は良好であるがインク吸収性が不十分であった。
また、特開平10−86509号には、1次粒子が3〜40nmで2次凝集粒子の平均粒径が10〜200nmの非晶質シリカまたはアルミナシリケートを用い、且つインク受容層のヘイズ度が4〜65%であるインクジェット記録体が開示されている。
しかしながら、平均一次粒子径が3〜40nmの非晶質シリカ又はアルミナシリケートを単独で使用してインク吸収性を改良すると印字濃度や発色性が低下するために両者を満足させることが出来なかった。
また、上層に光沢発現層を設ける提案が特開平3−215080号、特開平7−89220号、特開平7−117335号、特開2000−37944号公報等でなされている。
特開平6−55829号公報には下層にシリカ多孔質層を設け、上層にアルミナまたはアルミナ水和物含有層を有する記録シートが開示されており、また特開平7−89216号公報には下層に吸水性顔料含有層、最表層に擬ベーマイトを配した記録材料が提案されている。しかしながら、これらの下層に使用される顔料は平均粒径が数μm以上と粗く、十分な光沢性が得られない。また充分な光沢性を得ようとすると上層のアルミナやアルミナ水和物の塗布量を多くする必要があり、その結果インク吸収性が低下する。このように光沢性とインク吸収性の両者を十分には満足できなかった。
従来はインクジェット記録用インクに使用する色材としては専ら水性染料が用いられてきたが、水性染料は耐光性や耐水性に劣る欠点が有るために、近年、耐光性、耐水性に優れる顔料インクが用いられるようになった。しかし、顔料インクは水に不溶な顔料粒子を分散し、安定に保つ必要がある。また、顔料インクは印字後のインクの乾燥性及び耐擦過性において、水性染料に比べ低下しやすいという問題がある。更に水性染料に比べ顔料インクは概してインク吸収性が劣る。
一方、上記した気相法シリカ、アルミナあるいはアルミナ水和物のように超微細粒子を用いた空隙構造を有するインクジェット用記録材料は、表面の平滑性が高く、高い光沢性が得られるが、その反面、表面強度が比較的弱く、製造や加工時のロール等との接触による擦れ、あるいは複数枚重ねて給紙して印字する場合に表面に傷が発生しやすいという欠点を有している。
本発明の目的は、高光沢でインク吸収性及び印字濃度、発色性に優れ、表面強度の良好なインクジェット用記録材料を提供することにある。本発明の他の目的は、特に顔料インクを使用する場合でも十分なインク吸収性を有し、印字部の光沢むらがなく、かつ耐擦過性に優れたインクジェット用記録材料を提供することにある。
発明の要旨
本発明の上記目的は、支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を塗設したインクジェット用記録材料において、支持体に近いインク受容層(A)が気相法シリカを含有し、支持体から離れたインク受容層(B)がアルミナ、またはアルミナ水和物を含有することを特徴とするインクジェット用記録材料によって基本的に達成された。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる支持体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチック樹脂フィルム、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した樹脂被覆紙等の耐水性支持体、あるいは上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の吸水性支持体が用いられる。好ましくは耐水性支持体が用いられる。これらの支持体の厚みは、約50〜250μm程度のものが好ましく使用される。
本発明のインク受容層Aには気相法シリカを含有する。合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがある。通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、▲1▼ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または▲2▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、▲3▼シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数μmから10μm位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には▲4▼シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。
本発明に用いられる気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されており入手することができる。一般的には気相法シリカは凝集して適度な空隙を有する二次粒子となっており、50〜300nm程度の二次粒子になる迄超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕、分散させたものがインク吸収性と光沢性が良好であり好ましい。
本発明のインク受容層Bに含有されるアルミナ、及びアルミナ水和物は、酸化アルミニウムやその含水物であり、結晶質でも非晶質でもよく、不定形や、球状、板状等の形態を有しているものが使用される。両者の何れかを使用してもよいし、併用してもよい。特にアスペクト比2以上で平均一次粒径が5〜30nmの平板状アルミナ水和物が好ましい。アルミナ水和物の一次粒子のアスペクト比は平均厚みに対する平均粒径の比で得られる。
本発明において、インク受容層Bにアスペクト比が2以上の平板状アルミナ水和物を含有させた系においては、インク受容層Bに平均粒径が3μm以下の紡錘状あるいは球状の微粒子を組み合わせて用いるのが好ましい。上記紡錘状あるいは球状の微粒子の好ましい平均粒径は1μm以下で、下限は0.1μm程度である。この場合、インク受容層Bの厚みは1μm以上とするのが好ましい。こうすることによって表面の耐傷性が良好で高い光沢性を有するインクジエット用記録材料が得られる。特に平均粒径3μm以下の紡錘状あるいは球状の微粒子を平板状アルミナ水和物の0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%含有させることで光沢の低下を抑えて耐傷性、搬送性が良好となる。平板状アルミナ水和物の平均厚さに対する紡錘状あるいは球状粒子の平均粒径の比を1/1以上、より好ましくは2/1〜80/1とすることで平板状のアルミナ水和物から効果的に紡錘状あるいは球状の微粒子が凸状に出るようになり光沢性を維持しながら耐傷性が改良される。
本発明のアルミナとしては酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で50〜300nm程度まで粉砕したものが好ましく使用出来る。
本発明のアルミナ水和物はAl・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。
本発明の気相法シリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物の一次粒子の平均粒径とは、分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒径として求めることができる。本発明で使用される気相法シリカの一次粒子の平均粒径は5〜50nmであり、好ましくは5〜30nmである。本発明のアルミナ、及びアルミナ水和物の一次粒子の平均粒径は10〜50nmであり、好ましくは10〜30nmである。
尚、本発明の気相法シリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物の二次粒子の平均粒径は希薄分散液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定することができる。
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、乳酸、ギ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
本発明においてインク受容層Bで使用されるアルミナまたはアルミナ水和物の二次粒子での平均粒径の範囲が140〜250nmであることが好ましく、より好ましくは150〜200nmである。140nmより小さいとインク吸収性が低下傾向にあり、250nmより大きいと表面光沢が低下傾向である。
本発明において、インク受容層Aで使用される気相法シリカの総量の範囲は8〜30g/mが好ましく、より好ましくは10〜28g/mである。上記範囲は、インク吸収性及びインク受容層の強度の面で好ましい。
本発明において、インク受容層Bで使用されるアルミナまたはアルミ水和物の総量の範囲は、0.5〜18g/mであり、好ましくは1〜14g/mである。上記範囲は光沢及びインク吸収性の面で好ましい。
本発明において、インク受容層Aの気相法シリカとインク受容層Bのアルミナ、又はアルミナ水和物の重量の合計は12〜35g/mであり、好ましくは15〜30g/mである。この範囲にすることによって、十分なインク吸収性が得られ、かつインク受容層の強度の面でも好ましい。
本発明では支持体に近い下層のインク受容層Aに気相法シリカを使用し、上層のインク受容層Bにアルミナ、またはアルミナ水和物を使用することで良好な光沢性を有し、表層に印字されたインクが速やかに下層へ吸収され、滲みやビーディングのない、良好な印字画像が得られる。特に顔料インクを使用する場合でもインク吸収性が良好であり、高い印字濃度と発色性が得られる。
下層の気相法シリカの一次粒子の平均粒径が50nmより大きいと光沢が低下しやすく、加えて下層のインク吸収が速すぎるので上層にインク中の色剤や接着剤が定着しにくいので印字部が傷つきやすく、印字部の光沢が低下し、印字濃度が低いくすんだ色彩となる。逆に下層の気相法シリカの一次粒子の平均粒径が小さすぎると上層にインクが溜まりやすく、その結果滲みやビーディングが発生しやすくなる。従って気相法シリカの好ましい平均一次粒径は5〜50nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
更に上層のインク受容層Bに正に帯電しやすいアルミナ、またはアルミナ水和物を用いることで、インク中の酸性染料や直接染料、顔料の定着性が良好となり、高い印字濃度や発色性が得られる。上層のアルミナ、またはアルミナ水和物の一次粒子の平均粒径が50nmより大きいと表面の光沢が低下する他、インク受容層の透明性に劣り、色剤が沈み込むためにか印字濃度が出にくくなる。逆に小さいとインク吸収性が低下しやすく特に顔料インクで問題になりやすい。従ってアルミナまたはアルミナ水和物の好ましい平均一次粒径は8〜50nmであり、より好ましくは10〜30nmである。好ましくは気相法シリカに対するアルミナ、またはアルミナ水和物の平均一次粒径の比が1/1〜5/1でる。これによって光沢性、インク吸収性が優れる。特に顔料インク使用の場合のインク定着性が向上し、印字画像が良好となる。
本発明の上層と下層の組み合わせで光沢性とインク吸収性が良好となる理由は不明であるが、以下のように推測される。即ち、インク受容層が単層で比較的微小なアルミナ、またはアルミナ水和物を使用する場合には、光沢性は良好であるが、得られる空孔が微細であるためにインク吸収性が低下しやすい。本発明では上層にアルミナ、及びアルミナ水和物を用いることで光沢性が良好であり、それらの形状が概略繊維状か板状に近く、下層で用いる気相法シリカの形状が球形に近いので両者の形状には大きな差異が有る。さらに、表面のイオン性も異なっており、上層と下層との界面では適度に層間の乱れが発生し、上下層の毛細管が連続的に繋がりやすいので下層の毛細管力により上層からのインクの浸透が速やかに行われると予想される。特に気相法シリカに対するアルミナ、またはアルミナ水和物の平均一次粒径の比が1/1〜5/1であれば更に光沢性及びインク吸収性に優れる。
本発明のインク受容層A、及びBには、皮膜としての特性を維持するためにバインダーを含有する。このバインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることができるが、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要である。この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載のような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
また、他の親水性バインダーも併用することができるが、ポリビニルアルコールに対して20重量%以下であることが好ましい。
本発明のインク受容層Aには気相法シリカ以外の無機微粒子を気相法シリカの30重量%程度以下を含有させてもよい。又、インク受容層Bにもアルミナ、及びアルミナ水和物の30重量%程度以下で他の無機微粒子を含有させてもよい。
本発明ではインク受容層の各層において、無機微粒子(気相法シリカ、アルミナあるいはアルミナ水和物)と親水性バインダーとの重量比は、60:40〜92:8の範囲が好ましく、更に好ましくは70:30〜90:10である。特に顔料インクに対してはインク吸収性から無機微粒子の比率は70%以上が好ましい。
本発明において、インク受容層Bには、平均粒径3〜10μmの微粒子を含有するのが好ましい。この微粒子としては、無機あるいは有機の微粒子を用いることができるが、好ましくは有機樹脂微粒子である。また、インク受容層Bの厚さに対する有機樹脂微粒子の平均粒径の比が2/3〜3/1の関係であることが好ましい。インク受容層Bに上記微粒子を含有させることによって、顔料インクで印字したときの光沢ムラが改善される。即ち、未印字部と印字部の間の光沢差、あるいは、印字濃度の違いによる印字部間での光沢差が改善される。また更に顔料インクでの印字部の耐擦過性が向上する効果がある。
上記した微粒子の含有量は、インク受容層Bのアルミナまたは、アルミナ水和物100重量部に対して0.1〜6重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。尚、本発明では、インク受容層Bの厚さ、及び平板状アルミナ水和物の厚さは電子走査顕微鏡による断面観察にて測定することができる。
上記した有機樹脂微粒子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、酸化ポリエチレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリスチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン単独または共重合体あるいはこれらの誘導体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、NBRゴム等を単独であるいは混合して用いられる。なお、ここで、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸、またはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
本発明では、インク受容層を塗布後、膜面温度を20℃以下、好ましくは15℃以下に冷却することで乾燥時の風による風紋の発生が防止出来、製造効率も向上し、インク吸収性も良化するので好ましい。
本発明のインクジェット用記録材料は、積層されたインク受容層のJIS−K−7105に規定されるヘーズ値が40%以下が好ましく、より好ましくは30%以下である。40%より高いと印字濃度が下がり、発色性も低下する。
本発明の各層のインク受容層は、耐水性改良目的等でカチオン性化合物を含有するのが好ましい。カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー、水溶性金属化合物が挙げられる。またカチオン性ポリマーは、気相法シリカと組み合わせて用いた場合、透明性を低下させる傾向にあり、水溶性金属化合物は逆に透明性が向上する。これは水溶性金属化合物は気相法シリカからなるインク受容層に発生する微細な亀裂を抑える為に透明性が向上すると推定される。
本発明に用いられるカチオン性化合物としては、例えばカチオン性ポリマーや水溶性金属化合物が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、ポリアルキルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量(重量平均分子量;Mw)は、5,000〜10万程度が好ましい。
これらのカチオン性ポリマーの使用量は前記無機微粒子に対して1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%である。
本発明に用いられる水溶性金属化合物として、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、チタン、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、塩化チタン、硫酸チタン、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。中でも透明性、耐水性改良効果の高いジルコニウム系化合物が好ましい。
また、カチオン性化合物として、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が挙げられる。塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2又は3で示され、例えば[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n          ・・式1
[Al(OH)AlCl3           ・・式2
Al(OH)Cl(3n−m)  0<m<3n  ・・式3
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
本発明において、上記水溶性の金属化合物のインク受容層中の含有量は、0.1g/m〜10g/m、好ましくは0.2g/m〜5g/mである。
上記したカチオン性化合物は2種以上を併用することができる。例えば、カチオン性ポリマーと水溶性金属化合物を併用してもよい。
本発明における各層のインク受容層は、皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することが好ましいが、そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01重量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50重量%の範囲で用いることができる。
本発明において、各層のインク受容層には親水性バインダーの架橋剤(硬膜剤)を含有するのが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
上記硬膜剤の中でもほう酸またはほう酸塩が好ましい。本発明で使用されるほう酸は、オルトほう酸、メタほう酸、次ほう酸等が、ほう酸塩としてはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。ほう酸またはほう酸塩の含有量は、インク受容層Aではポリビニルアルコールに対して0.5〜80重量%で、インク受容層Bではポリビニルアルコールに対して0.5〜50重量%が好ましい。
本発明において、各層のインク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
本発明において、インク受容層A、B以外に層を設けてもよいが、その場合にはインク吸収性を損なわない層であることが必要である。本発明において、インク受容層Bの上に更にコロイダルシリカを含有する層Cを設けるのが好ましい。このコロイダルシリカを含有する層Cは、インク受容層Bの保護層としての役目を有する。擦れ傷が比較的生じやすいアルミナあるいはアルミナ水和物からなるインク受容層Bの表面にコロイダルシリカ層Cを設けることによって、インク受容層Bの表面が保護され、その結果、傷の発生が防止される。
コロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる二酸化珪素をコロイド状に水中に分散させたものである。本発明に用いられるコロイダルシリカは、平均一次粒径が5〜100nm程度である。コロイダルシリカは、日産化学工業社から各種粒径のものが市販されており入手することができる。例えば、ST−20L、ST−OL、ST−XL、ST−YL、ST−ZL、ST−OZL等がある。
コロイダルシリカ層Cには、平均一次粒子径が60nm未満のコロイダルシリカ(C−1)と平均一次粒子径が60nm以上のコロイダルシリカ(C−2)を組み合わせて含有するのが好ましい。60nm未満のコロイダルシリカとしては、20nm以上で60nm未満のものが好ましく、特に30nm以上で60nm未満のものが好ましい。60nm以上のコロイダルシリカとしては、60〜100nmのコロイダルシリカが好ましい。これによって、高いインク吸収性を維持しながらインク受容層Bの表面を保護することができる。上記した2種類のコロイダルシリカの平均一次粒子径の差は10nm以上が好ましく、特に20〜60nmが好ましい。
上記した2種類のコロイダルシリカの含有量の比率には好ましい範囲がある。即ち、コロイダルシリカ(C−1):(C−2)=95:5〜50:50である。コロイダルシリカ層Cの合計のコロイダルシリカの含有量は、0.3〜5g/mの範囲が好ましい。
上記したコロイダルシリカ層Cには、有機バインダーをコロイダルシリカに対して1〜20重量%の範囲で含有するのが好ましい。有機バインダーとしては、各種の親水性バインダーやポリマーラテックス等が使用できる。好ましい有機バインダーは、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の親水性バインダーである。ポリマーラテックスとしては、例えば、アクリル系ラテックスとしては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシアルキル基等のアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル類、アクリルニトリル、アクリルアミド、アクリル酸及びメタクリル酸等の単独重合体または共重合体、あるいは上記モノマーと、スチレンスルホン酸やビニルスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、ビニルメチルエーテル、酢酸ビニル、スチレン、ジビニルベンゼン等との共重合体が挙げられる。オレフィン系ラテックスとしては、ビニルモノマーとジオレフィン類のコポリマーからなるポリマーが好ましく、ビニルモノマーとしてはスチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等が好ましく用いられ、ジオレフィン類としてはブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
コロイダルシリカ層Cには、有機バインダーの架橋剤(硬膜剤)を使用することで塗布、乾燥時に発生する表面欠陥の防止や耐傷性を向上することが可能となるので好ましい。硬膜剤としては特にほう酸またはほう酸塩が好ましい。硬膜剤の添加量は有機バインダーに対して、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%である。またコロイダルシリカ層Cには、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類等の公知の耐光性改良剤を添加することができる。その他、塗布性向上のための界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、着色剤等も添加可能である。
本発明において、インク受容層を構成している各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。
本発明では、スライドビード方式等のような多層を同時重層塗布できる方式が好ましい。インク受容層A及びBからなる少なくとも2層を同時重層塗布することにより各層に要求される特性が効率よく得られるので好ましい。即ち、各層を湿潤状態で積層することで各層に含有される成分が下層へ浸透しにくいので乾燥後も各層の成分構成が良く保たれるためと予想される。
プラスチック樹脂フィルムや樹脂被覆紙のような耐水性支持体にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等を施すのが好ましい。
本発明は、支持体、特に耐水性支持体であるプラスチック樹脂フィルムや樹脂被覆紙を使用する場合には、インク受容層を設ける面に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。該プライマー層の上に、本発明のインク受容層を塗布した後、冷却し、比較的低温で乾燥することによって、更にインク受容層の透明性が向上する。
支持体上に設けられるプライマー層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
上記プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
本発明における支持体には筆記性、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
実施例
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は重量部、重量%を示す。
実施例1
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン・スタンダード・フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5重量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0重量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0重量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5重量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100重量%の樹脂に対して、10重量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。もう一方の面には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70重量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30重量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成のプライマー層をゼラチンが50mg/mとなるように塗布乾燥して支持体を作成した。
<プライマー層>
石灰処理ゼラチン                       100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩          2部
クロム明ばん                          10部
上記支持体に下記2種類の組成のインク受容層A、B塗布液を同時にスライドビード塗布装置で塗布し乾燥した。下記に示す支持体に近い下層用のインク受容層A、上層用のインク受容層B塗布液は、無機微粒子を9重量%の固形分濃度になるように高圧ホモジナイザーで分散した後調製した。これらの塗布液を、インク受容層Aは気相法シリカが固形で16g/m、インク受容層Bの擬ベーマイトが6g/mになるように塗布、乾燥した。
<インク受容層A塗布液>
気相法シリカ                         100部
(平均一次粒径7nm)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー        4部
ほう酸                              4部
ポリビニルアルコール                      20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤                          0.3部
酢酸ジルコニウム                         2部
<インク受容層B塗布液>
擬ベーマイト                         100部
(平均一次粒径15nm、アスペクト比5の平板状)
ほう酸                              4部
ポリビニルアルコール                      20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤                          0.3部
酢酸ジルコニウム                         2部
塗布後の乾燥条件を下記に示す。
5℃で30秒間冷却後、全固形分濃度が90重量%までを45℃、10%RH(相対湿度)で乾燥し、次いで35℃、10%RHで乾燥した。
上記のようにして作成したインクジェット記録シートについて下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
<インク吸収性>
市販のインクジェットプリンター(ENCAD社製、NOVAJET)にてGOインクでシアン、マゼンタ、イエロー単色100%と、3重色300%をそれぞれ印字して、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察した。下記の基準で総合で評価した。
○:全く転写しない。
△:やや転写する。
×:転写が大きく実使用不可。
<印字濃度>
黒ベタ部の印字濃度をマクベス反射濃度計で測定し、5回測定の平均値で示した。
<光沢性>
記録材料の印字前の光沢感を斜光で観察し、下記の基準で評価した。
○:カラー写真並の高い光沢感が有る。
△:アート、コート紙並の光沢感が有る。
×:上質紙並の沈んだ光沢感が有る。
実施例2〜4
実施例1でインク受容層Aの気相法シリカ、インク受容層Bの擬ベーマイトの固形分重量を表1に示したように代えた以外は実施例1と同様にして実施例2〜4のインクジェット用記録材料を得た。評価結果を表1に示す。
実施例5
実施例1でインク受容層Aの気相法シリカを一次粒子の平均粒径が30nmのものに代えた以外は実施例1と同様にして実施例5のインクジェット用記録材料を得た。評価結果を表1に示す。
実施例6
実施例1でインク受容層Bの擬ベーマイトを平均一次粒径が13nmのγ−アルミナ(日本アエロジル社製、アエロジル酸化アルミニウムC)に代えた以外は実施例1と同様にして実施例6のインクジェット用記録材料を得た。評価結果を表1に示した。
実施例7
実施例1でインク受容層Bの擬ベーマイトの平均一次粒径が15nmから40nmのものに代えた以外は実施例1と同様にして実施例7のインクジェット用記録材料を得た、評価結果を表1に示した。
比較例1
実施例1でインク受容層Aのみの単層とし、気相法シリカの塗布量を22g/mとした以外は実施例1と同様にして比較例1のインクジェット用記録材料を得た。結果を表1に示す。
比較例2
実施例1でインク受容層Bのみの単層とし、擬ベーマイトの塗布量を22g/mとした以外は実施例1と同様にして比較例2のインクジェット用記録材料を得た。評価結果を表1に示す。
比較例3
実施例1でインク受容層Aで使用の気相法シリカに代えて湿式合成シリカ(日本シリカ工業社製、Nipsil E−1011、平均粒径2μm)を使用した以外は実施例1と同様にして比較例3のインクジェット用記録材料を得た。結果を表1に示す。
比較例4
実施例1でインク受容層Aとインク受容層Bの塗布液を固形分で16:6の比で混合した塗布液を単層で塗布して気相法シリカ16g/mと擬ベーマイト6g/mの塗布量とした以外は実施例1と同様にして比較例4のインクジェット用記録材料を得た。結果を表1に示す。
比較例5
実施例1で下層のインク受容層Aに擬ベーマイトを使用した上層用のインク受容層B塗布液を使用して、上層のインク受容層Bに気相法シリカを使用した下層用のインク受容層A塗布液を使用した以外は実施例1と同様にして比較例5のインクジェット用記録材料を得た。結果を表1に示す。
Figure 2002034541
結果;実施例1〜3は、インク吸収層Aの気相法シリカとインク吸収層Bの擬ベーマイトの塗布重量を変化させた場合であるが、気相法シリカを10g/mに減らした実施例2はインク吸収性が実施例1より低下したが実使用可能であった。気相法シリカと擬ベーマイトの塗布量が各々7g/mと15g/mとした実施例3はインク吸収性が若干低下したが実使用可能であり、光沢性は実施例1よりも優れていた。実施例1で気相法シリカと擬ベーマイトの塗布量をそれぞれ21.5g/mと0.5g/mにした実施例4は、インク吸収性は非常に良好であり、光沢性、印字濃度が若干低下したが実用可のレベルであった。実施例1でインク吸収層Aの気相法シリカの平均一次粒径が30nmの粗いものを使用した実施例5は実施例1より印字濃度と光沢性が若干低下したが実用可能であった。実施例1でインク受容層Bの擬ベーマイトをγ−アルミナに代えた実施例6はやや印字濃度が低下したが良好であった。実施例7は、実施例1でインク受容層Bの擬ベーマイトの平均一次粒径を40nmに代えた場合であるが、光沢性が若干低下したが実用可であった。
実施例1でインク受容層Aのみの単層で気相法シリカを22g/m塗布した比較例1は光沢性が低下し、印字濃度が大きく低下した。実施例1でインク受容層Bのみの単層で擬ベーマートを22g/m塗布した比較例2は、インク吸収性が大きく低下して実用不可であった。実施例1でインク受容層Aで使用の気相法シリカに代えて平均粒径2.5μmの湿式合成シリカを用いた比較例3はインク吸収性が低下し、印字濃度、光沢性が大きく低下し、実用不可であった。実施例1のインク受容層AとBの塗布液を混合して単層として塗布した比較例4は、インク吸収性、光沢性が低下し、印字濃度が大きく低下し、実用不可のレベルであった。実施例1で上層と下層の塗布液を交換して上層に気相法シリカを使用した比較例5は光沢性が低下し、インク吸収性と印字濃度が大きく低下し、実使用不可であった。
実施例8
実施例1のインク受容層B塗布液の組成を下記に代えた以外は実施例1と同様にして記録材料を作製した。断面の電子顕微鏡観察によるインク受容層Bの平均厚さは7μmであった。
<インク受容層B塗布液>
擬ベーマイト                         100部
(平均一次粒径13nm、アスペクト比3の平板状)
酢酸                               1部
球状の微粒子                           3部
(平均粒径0.25μm、ポリエチレン球状粒子)
ほう酸                              4部
ポリビニルアルコール                      20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤                          0.3部
酢酸ジルコニウム                         2部
上記インク受容層Bにおいて、球状微粒子を含有するサンプル(8−1)と含有しないサンプル(8−2)を作成した。
上記のようにして作成したインクジェット記録シートについて下記の耐傷性以外は実施例1と同様にして評価を行った。
<耐傷性>
印字前の記録材料を、表を上にして2枚重ね、底面が直径2cmの円状で50gの重りを乗せ、上の記録材料をゆっくり引っ張った後、下の記録材料表面の傷を観察した。
試験の結果、耐傷性については、サンプル(8−1)はサンプル(8−2)より優れている。インク吸収性及び光沢性は両者とも○である。印字濃度はサンプル(8−1)は2.16でサンプル(8−2)は2.22で、両者とも高いレベルであった。
実施例9
実施例1と同様にプライマー層が塗布された支持体を用い、この支持体に下記のインク受容層A及びBの塗布液を同時にスライドビード塗布装置で塗布し乾燥した。下層用のインク受容層Aの塗布液、上層用のインク受容層Bの塗布液は、それぞれ10重量%の固形分濃度になるように調製した。これらの塗布液を、インク受容層Aは気相法シリカが18g/m、インク受容層Bの擬ベーマイトが6g/mになるように塗布、乾燥した。受容層Bの厚さは5.5μmであった。乾燥条件は実施例1と同じである。
<インク受容層A塗布液>
気相法シリカ                         100部
(平均一次粒径20nm)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー        4部
ほう酸                              4部
ポリビニルアルコール                      20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤                          0.3部
<インク受容層B塗布液>
擬ベーマイト                         100部
(平均一次粒径14nm、平均二次粒径160nm)
有機樹脂微粒子                          4部
(エチレン−酢酸ビニル共重合体;三井化学社製ケミパールV−200 平均粒径7μm)
ほう酸                            0.5部
ポリビニルアルコール                      10部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤                          0.3部
上記インク受容層Bにおいて、有機樹脂微粒子を含有するサンプル(9−1)と含有しないサンプル(9−2)を作成した。
上記のようにして作成した2種類のインクジェット記録シートについて、印字部の光沢差、インク吸収性、印字濃度、及び耐擦過性を下記の試験方法にて評価した。
<印字部の光沢差>
市販の顔料インク用インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、MC−2000)にてシアン、マゼンタ、イエローをそれぞれ100%と50%の設定でベタ印字を行い、50%ベタ印字部と100%ベタ印字部の光沢差を目視判定する。
<インク吸収性>
市販の顔料インク用インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、MC−7000)にてレッド、グリーン、ブルー、ブラックの重色パターンを印字して、印字直後のインクの吸収具合を目視で観察した。
<印字濃度>
市販の顔料インク用インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、MC−2000)にて100%黒ベタ部を印字し、マクベス反射濃度計で測定し、5回測定の平均値で示した。
<耐擦過性>
市販の顔料インク用インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、MC−2000)にて60%黒ベタ部を印字し、23℃50%RHの条件下で一晩乾燥後、水平な台上に固定して作成したポリオレフィン樹脂被覆紙支持体に印字面をあて20g/cmの荷重をかけた状態で水平に滑らせ印字面の傷の発生具合を目視で観察した。
試験の結果、印字部の光沢差及び耐擦過性については、サンプル(9−1)はサンプル(9−2)より優れている。インク吸収性は両者とも顔料インクが溢れることなく良好である。印字濃度は両者とも2.2と良好であった。
実施例10
実施例1と同様にして支持体、インク受容層A及びインク受容層Bを作製した。更に下記に示すコロイダルシリカ層Cを作製した。支持体上に、インク受容層A、インク受容層B及びコロイダルシリカ層Cをスライドビードコーターで同時に塗布した。インク受容層Aの気相法シリカの塗布量は16g/m、インク受容層Bの擬ベーマイトの塗布量は6g/m、コロイダルシリカ層のコロイダルシリカの塗布量は3g/mである。塗布後の乾燥条件は実施例1と同じである。
<コロイダルシリカ層Cの塗布液>
コロイダルシリカ                       100部
ポリビニルアルコール                       5部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ほう酸                              2部
界面活性剤                          0.3部
上記コロイダルシリカ層Cにおいて、平均一次粒径が45nmコロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスOL−40)を用いたサンプル(10−1)、及び平均一次粒径が45nmコロイダルシリカを60部と平均一次粒子径が80nmのコロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスOZL)を40部とを併用したサンプル(10−2)を作製した。更に、コロイダルシリカ層を設けないサンプル(10−3)も作製した。
上記のようにして作成したインクジェット記録シートについて、耐傷性、光沢性、インク吸収性及び印字濃度を下記の方法で評価した。
<耐傷性>
印字していないインクジェット用記録材料を表面を上に2枚重ね、その上に100gの分銅を置いた状態で下側の記録材料を抜き出した後、インク受容層面の傷の発生状況を目視で観察した。
<光沢性>
記録材料の印字前の光沢感を斜光で観察した。
<インク吸収性>
セイコーエプソン社製インクジェットプリンターMJ−5100C(水性染料インクを使用)を用いて黒ベタ印字を行って、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察した。
<印字濃度>
黒ベタ部の印字濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
試験の結果、耐傷性は、サンプル(10−1)と(10−2)は、(10−3)より優れている。インク吸収性はサンプル(10−2)と(10−3)は優れており、(10−1)はそれに比べやや劣っているものの依然高いレベルである。光沢性及び印字濃度は、三者とも同レベルである。
産業上の利用可能性
上記結果から明らかなように、本発明のインクジェット記録材料は、インク吸収性、光沢性、及び耐傷性に優れている。更に、本発明のインクジェット記録材料は、顔料インクで印字してもインク吸収性が高く、高印字濃度で、光沢ムラがない。

Claims (17)

  1. 支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を塗設したインクジェット用記録材料において、支持体に近いインク受容層(A)が気相法シリカを含有し、支持体から離れたインク受容層(B)がアルミナ、またはアルミナ水和物を含有することを特徴とするインクジェット用記録材料。
  2. 前記気相法シリカの平均一次粒子径に対する前記アルミナ、またはアルミナ水和物の平均一次粒子径の比が1/1〜5/1である請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
  3. 前記インク受容層Aが気相法シリカを10〜28g/m、前記インク受容層Bがアルミナ、またはアルミナ水和物を1〜14g/m塗設されており、気相法シリカ、アルミナ及びアルミナ水和物の合計で15〜30g/m塗設されている請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
  4. 前記アルミナ水和物が擬ベーマイトである請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
  5. 前記アルミナがγ−アルミナである請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
  6. 前記アルミナ水和物の一次粒子が平板状である請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
  7. 前記アルミナ水和物の一次粒子がアスペクト比が2以上の平板状である請求の範囲第6項に記載のインクジェット用記録材料。
  8. 前記インク受容層Bがアスペクト比2以上の平板状アルミナ水和物を含有し、かつ平均粒径3μm以下の紡錘状あるいは球状の微粒子を含有する請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
  9. 前記インク受容層Bが平均厚さ1μm以上であり、紡錘状あるいは球状の微粒子の平均粒径が1μm以下である請求の範囲第8項に記載のインクジェット用記録材料。
  10. 前記平板状アルミナ水和物の一次粒子の平均厚さに対する紡錘状あるいは球状の微粒子の平均粒径の比が2/1〜80/1である請求の範囲第8項に記載のインクジェット用記録材料。
  11. 前記インク受容層Bの上に、コロイダルシリカを含有する層(C)を有する請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
  12. 前記コロイダルシリカを含有する層(C)が、平均一次粒子径が60nm未満のコロイダルシリカと平均一次粒子径が60nm以上のコロイダルシリカを組み合わせて含有する請求の範囲第11項に記載のインクジェット用記録材料。
  13. 前記インク受容層Bが平均粒径3〜10μmの微粒子を含有する請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
  14. 前記微粒子が有機樹脂微粒子である請求の範囲第13項に記載のインクジェット用記録材料。
  15. 前記インク受容層Bの厚みに対する前記微粒子の平均粒径の比が2/3〜3/1である請求の範囲第13項に記載のインクジェット用記録材料。
  16. 前記支持体が耐水性支持体である請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
  17. 前記少なくとも2層のインク受容層が同時に塗設された請求の範囲第1項に記載のインクジェット用記録材料。
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