JP4314333B2 - インクジェット記録紙及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトグレード用のインクジェット記録紙及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ファクシミリ、ワードプロセッサー、パーソナルコンピューター等のプリンターには、液体のインクを特殊構造のノズルからジェット状に噴射し、その飛跡を制御して用紙に付着させて印字するインクジェットプリンターが広く利用されている。また、これに使用する用紙としては、インクジェット用インクの定着性や吸収性、印字濃度、ドット形状の真円性、ドツト周辺のシャープ性、光沢度、白色度、耐水性及び吸脱湿による寸法安定性等の諸特性を保持させたインクジェット記録紙が用いられている。
【0003】
しかし、前記インクジェット記録紙にあって、特にフォトグレード用としては、その記録面の特性として、高い光沢度、写真に近い光沢平滑感、高い印字濃度、優れたインクジェット用インクの定着性や吸収性等を保持したインクジェット記録紙が要求されている。
【0004】
このようなより高度な特性を付与する方法としては、通常に用いられているアート紙やキャストコート紙のような高光沢印刷用紙の表面に、表面処理剤としてPVA、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリビニルアセタール等のような水系の樹脂やエマルジョンを直接に塗被する方法や、ポリエステルフィルムの表面に前記水系の樹脂やエマルジョンを直接に塗被し、該塗被面が半乾燥の湿潤状態の時に、上質紙等を重ね合わせてそのまま乾燥し、乾燥後ポリエステルフィルムを剥がして、上質紙等の表面に前記水系の樹脂やエマルジョンの皮膜を形成すると同時に、ポリエステルフィルムの表面光沢と平滑性とを写し取るフイルム転写法や、キャストコート紙のキャストコート層の塗被組成物を改良して、キャストコート紙そのものに特性を付与する方法等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記水系の樹脂やエマルジョンを直接に塗被する方法では、樹脂を選択することによって、ある程度までの光沢度や平滑性は得られるが、インクジェットインクの吸収性が遅くなってインクジェットインクのブロッキングを起こしたり、インクジェットインクの重ね部分やインクジェットインク同士の境界面でインクジェットインクの滲みが生じたり、インクジェットインクの吸収不良によるプリンター内で走行中に擦れが起こったりして満足なものが得られていない。
【0006】
また、前記フイルム転写法では、ポリエステルフィルムの表面の状態を写し取るもので、これもある程度までの光沢度や平滑性は得られるが、フイルム自体が持つ光沢度や平滑性に左右されて、転写させた表面に部分的なムラやボコ付き感を生じ易く、写真のような光沢平滑感を得ることは難しい。
【0007】
更に、前記キャストコート層の塗被組成物の改良としては、顔料の選択、接着剤の選択、各種の添加剤の選択等に対して種々検討されているが、未だ十分な品質のものが得られていない。
【0008】
そこで発明者らは、特にキャストコート塗被組成物の内、顔料に対する再検討を行うと同時に、キャストコート紙の層形成についても再検討を試みたものである。
【0009】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、インクジェット記録紙の記録面に高い光沢度、写真に近い光沢平滑感、高い印字濃度、優れた印字耐水性および優れたインクジェットインクの定着性・吸収性等を保持したインクジェット記録紙及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するために、第1に、基紙の一方の面に形成したインクジェット下塗り層を介して、γーアルミナを顔料として含むインクジェットキャストコート塗料を塗被して設けたインクジェットキャストコート層がキャストコート処理され、該キャストコートされたインクジェットキャストコート層の上に、コロイダルシリカを顔料として含むインクジェットキャスト光沢塗料を塗被して設けたインクジェットキャスト光沢層がキャストコート処理され、その最表面のJIS−Z−8741による60度鏡面光沢度を60〜80%としたこと、第2に、インクジェット下塗り層を構成する顔料がシリカ及び/又はアルミナ水和物であって、添加剤としてカチオン化剤を含有すること、第3に、基紙の一方の面に、顔料としてシリカ及び/又はアルミナ水和物が、添加剤としてカチオン化剤が含有するインクジェット下塗り塗料をドライ換算で5〜20g/m2 塗被し乾燥して下塗り層を形成し、該インクジェット下塗り層の上にキャスト塗工機によりウエット法で、顔料としてγ−アルミナを使用したインクジェットキャストコート塗料をドライ換算で4〜15g/m2 塗被し乾燥してインクジェットキャストコート層を形成し、次いで、該インクジェットキャストコート層の上にキャスト塗工機によりウエット法で、顔料としてコロイダルシリカを使用したインクジェットキャスト光沢塗料をドライ換算で0.5〜5g/m2 塗被し乾燥してインクジェットキャスト光沢層を形成し、最表面のJIS−Z−8741による60度鏡面光沢度を60〜80%としたことを要旨とするものである。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、インクジェットキャストコート層とインクジェットキャスト光沢層とで2層に形成したキャスト塗被層が相互に作用し合って、その最表面が、JIS−Z−8741による60度鏡面光沢度で60〜80%の高い光沢度、写真に近い光沢平滑感、高い印字濃度、優れた印字耐水性及び優れたインクジェットインクの定着性・吸収性等の特性を保持したインクジェット記録紙となる。
又、インクジェットキャスト光沢層の顔料にコロイダルシリカを使用したので、インクジェットキャスト光沢塗料をインクジェットキャストコート層の上に塗被した時に、インクジェットキャストコート層の微細な亀裂および凹凸に、微細粒子のコロイダルシリカが入り込んで、インクジェットキャストコート層をより平滑にすることと、インクジェットキャスト光沢塗料自体が持つ特性とが絡み合って高い光沢度や写真に近い光沢平滑感が得られると推定される。
【0012】
なお、インクジェットキャストコート層あるいはインクジェットキャスト光沢層のいずれか一層のキャスト塗被層を形成したのでは、前記のような特性を保持したインクジェット記録紙は得られない。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、基紙の表面の粗さを覆って平滑性にし、この上に形成するインクジェットキャストコート層及びインクジェットキャスト光沢層の平滑性を向上させる。また、カチオン化剤が含有することによってインクジェットインクの発色濃度を向上させる。更に、インクジェット下塗り層の形成によって、通気性のばらつきが小さくなり、この上に形成するインクジェットキャストコート層およびインクジェットキャスト光沢層を形成する時のキャスト作業性を一層向上させる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、インクジェットインクを確実に吸収して、擦れやブロッキングやベタツキ等を起こすことなく、この上に形成するインクジェットキャスト光沢層の特性の発揮をより効果的なものとする。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、ウエット法によりキャスト層を2層に形成したので、キャスト面の面形成がし易く、安定した作業性が得られると共に、品質面において前記のような諸特性を保持したインクジェット記録紙を容易に安価に製造することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のインクジェット記録紙及びその製造方法の実施の形態を説明する。図1は本発明のインクジェット記録紙の縦断側面図である。
【0018】
本発明のインクジェット記録紙は、図1に示すように、基紙1の一方の面に形成したインクジェット下塗り層2を介して、インクジェットキャストコート層3とインクジェットキャスト光沢層4との2層のキャスト層を順次積層して構成した4層体構造であって、その最表面のJIS−Z−8741による60度鏡面光沢度を60〜80%としたものである。
【0019】
基紙1は、上質紙、アート・コート紙用の原紙、キャストコート紙用の原紙及び微塗工紙等の内から適宜に選択して使用される。基紙1の坪量としては、通常30〜250g/m2 程度のものが使用される。
【0020】
インクジェット下塗り層2は、基紙1の一方の面にインクジェット下塗り塗料をドライ換算で5〜20g/m2 程度に塗被乾燥し、乾燥後に必要に応じて平滑化処理を行って形成される。このインクジェット下塗り塗料の組成は、顔料、接着剤及びカチオン化剤を主成分とし、これに分散剤、粘性調整剤及び架橋剤等が必要に応じて適宜に添加使用される。
【0021】
インクジェット下塗り層2を形成する目的は、基紙1の表面の粗さを覆って平滑にし、この上に形成するインクジェットキャストコート層3およびインクジェットキャスト光沢層4の平滑性を一層向上させること、インクジェットインクの印字発色濃度を一層向上させること、通気性のばらつきを小さくしてこの上に形成するインクジェットキャストコート層およびインクジェットキャスト光沢層を形成する時のキャスト作業性を向上させること等とによるものである。
【0022】
インクジェット下塗り層2の顔料としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ水和物、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト及び有機顔料等を単独又は併用して使用できるが、中でもシリカ、アルミナ水和物が好ましく使用される。
【0023】
インクジェット下塗り層2の接着剤としては、PVA、ポリビニルピロリドン、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉及びアルギン酸ナトリウム等の水溶性樹脂、更に、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、ポリウレタン、アクリル共重合体、マレイン酸共重合体等の合成樹脂のエマルジョンが使用される。これらは適宜に選択し単独又は併用して適量を用いる。
【0024】
インクジェット下塗り層2に添加するカチオン化剤としては、次のようなものが使用される。即ち、
第1級、第2級または第3級アミン等の塩・・・例えばラウリルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩等。
第4級アンモニウム塩型化合物・・例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルアンモニウムクロライド等。
カチオン性高分子化合物・・・・例えばポリアリルアミン塩酸塩、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジエチルアミノエチルアクリレート等。
カチオン性基を有するモノマー単独又は他の物質との共重合体・・・・・・・例えばジエチルアミノスチレン。
この他に、ポリアルキレンポリアミン類、第2級アミン、第3級アミンや第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジシアンジアミド系樹脂等を使用することができる。その使用量は選択する顔料によっても変わってくるが、通常は顔料に対して4〜20%程度に添加される。
【0025】
必要に応じて処理するインクジェット下塗り層2の平滑化処理としては、通常に用いられるスーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、サーモプラニッシャー等を用いて、ロールのニップ間を通すことによって塗被層の表面を平滑にする。
【0026】
次にインクジェットキャストコート層3は、前記インクジェット下塗り層2の上に積層してインクジェットキャストコート塗料をドライ換算で4〜15g/m2 程度に塗被乾燥して形成する。
このインクジェットキャスト塗料の組成は顔料、接着剤及び離型剤を主成分とし、これに分散剤、粘性調整剤および架橋剤等が必要に応じて適宜に添加使用される。
【0027】
インクジェットキャストコート層3を形成する目的は、インクジェットインクの優れた吸収性を保持させることと、この上に形成するインクジェットキャスト光沢層4によって高い光沢度、写真に近い光沢平滑感、高い印字濃度、優れたインクジェットインクの定着性等をより効果的に発揮させることとによるものである。因みにインクジェットキャストコート層3を形成しないで、インクジェット下塗り層2の上に、直接にインクジェットキャスト光沢塗料を塗被したのでは、JIS−Z−8741による60度鏡面光沢度は35%程度の光沢度しか得られず、当初の目的を達成することができない。
【0028】
インクジェットキャストコート層3の顔料としては、アルミナ水和物、微粒子のシリカ等が用いられ、特にキャスト面の形成には、使用するキャスト塗料濃度を高濃度とした方が作業面および品質面から有利であることから、アルミナ水和物のγーアルミナが好ましく用いられる。
【0029】
インクジェットキャストコート層3の接着剤としては、前記インクジェット下塗り層2の形成に用いるインクジェット下塗り塗料の接着剤と同様なものが使用できる。これらの接着剤は適宜に選択し単独又は併用して適量を用いる。
【0030】
インクジェットキャストコート層3の離型剤は、塗被面がクロムメッキしたキャストドラムからスムーズに剥がれるようにする目的で添加するものであって、脂肪酸、脂肪酸塩、各種ワックスエマルジョン等が適宜に選択され、単独又は併用して使用される。しかし、これらの離型剤は多量に用いるとインクジェットインクの吸収性の低下を引き起こすので、塗被面の剥がれる状態とインクジェットインクの吸収性の低下の状態とを総合的に見て両者のバランスを採った適量を用いる。
【0031】
次にインクジェットキャスト光沢層4は、前記インクジェットキャストコート層3の上に積層してインクジェットキャスト光沢塗料をドライ換算で0.5〜5g/m2 塗被乾燥して形成する。このインクジェットキャスト光沢塗料の組成は顔料、接着剤及び離型剤を主成分とし、これに分散剤、粘性調整剤および架橋剤等が必要に応じて適宜に添加使用される。
【0032】
インクジェットキャスト光沢層4を形成する目的は、その最表面にJIS−Z−8741による60度鏡面光沢度で60〜80%の高い光沢度、写真に近い光沢平滑感、高い印字濃度、優れたインクジェットインクの定着性等を保持させることである。
【0033】
インクジェットキャスト光沢層4の顔料としては、微粒子のシリカ、500nm以下のコロイダルシリカ等が使用され、中でも500nm以下のコロイダルシリカが好ましく使用される。
【0034】
インクジェットキャスト光沢層4の接着剤としては、水溶性樹脂のPVAや酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、ポリウレタン、アクリル共重合体、マレイン酸共重合体等の合成樹脂のエマルジョンが使用される。これらは適宜に選択し単独又は併用して適量を用いる。
【0035】
インクジェットキャスト光沢層4の離型剤としては、前記インクジェットキャスト塗料に用いる離型剤と同様なものが使用され、適宜に選択し単独又は併用して、前記同様に、塗被面がキャストドラムから離型する状態とインクジェットインクの吸収性の阻害状態とを総合的に見て両者のバランスを採った適量を用いる。
【0036】
次に本発明のインクジェット記録紙の製造方法について説明する。
先ず、第1工程として、ロール状の基紙1の一方の面に、塗工機、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、リバースコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター等によって、前記組成のインクジェット下塗り塗料組成物をドライ換算で5〜20g/m2 になるように塗被し乾燥してインクジェット下塗り層2を形成しロール状に巻き取る。
【0037】
ここでインクジェット下塗り塗料の塗被は、1度塗被としても2度以上の塗被としても良く、多層に分けて塗被することはより平滑となるので好ましい。
また、必要に応じて、インクジェット下塗り塗料の塗被表面を平滑化処理機、例えば、スーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、サーモプラニッシャー等によって処理してより平滑にしてもよい。
【0038】
次いで第2工程として、ロール状に巻き取ったインクジェット下塗り層2の上に、キャスト塗工機でウエット法によって、前記インクジェットキャストコート塗料をドライ換算で4〜15g/m2 になるように塗被し、クロムメッキしたキャストドラムに圧着させ、乾燥させると同時に鏡面を転写させてインクジェットキャスト層3を形成しロール状に巻き取る。
【0039】
更に、第3工程として、キャスト塗工機でウエット法によって、前記インクジェットキャスト光沢塗料をドライ換算で0.5〜5g/m2 になるように塗被し、前記同様にクロムメッキしたキャストドラムに圧着させ、乾燥させると同時に鏡面を転写させて、インクジェットキャスト光沢層4を形成しロール状に巻き取って本発明のインクジェット記録紙が得られる。
【0040】
次にキャスト紙を製造するキャスト法を説明すると、一般にウエット法、ゲル化法及びリウエット法の3つの方法が知られている。
【0041】
即ち、ウエット法は、直接法とも呼ばれているもので、前記のように基紙にキャスト塗料を塗被し、湿潤状態のままでキャストドラムに圧着させ、乾燥と同時にキャストドラムの鏡面を写し取る方法である。
【0042】
ゲル化法は、凝固法とも呼ばれているもので、基紙にキャスト塗料を塗被し、湿潤状態の塗被層を酸や塩類の水溶液によって処理し、塗被層をゲル化させた状態でキャストドラムに圧着させ、乾燥と同時にキャストドラムの鏡面を写し取る方法である。
【0043】
リウエット法は、基紙にキャスト塗料を塗被し乾燥した後、スーパーキャレンダー等によって表面を平滑化した後、塗被層を再びリン酸塩等の水溶液によって湿潤し膨潤させ、膨潤した状態でキャストドラムに圧着させ、乾燥と同時にキャストドラムの鏡面を写し取る方法である。
【0044】
これ等の方法は広く認知されているものであり、それぞれの方法によって得られたキャスト紙の品質面には微妙な違いが保持されたものとなる。
本発明では、それぞれの方法によって試験した結果、特にウエット法がキャスト面の面形成がし易く、安定した作業性が得られると共に、得られる品質が最適にフォトグレード用インクジェット記録紙に適応できること等の理由から採用したものである。
【0045】
【実施例】
次に、実施例および比較例によって本発明を詳細に説明するが、これは本発明の効果を具体的に説明するためのものであって、これによって本発明が限定されるものではない。
【0046】
<実施例1>
基紙として113g/m2 のコート紙用の原紙を用い、第1工程として、塗工機にエアーナイフコーターを使用して、下記インクジェット下塗り塗料組成物をドライ換算で14g/m2 になるように塗被乾燥し、インクジェット下塗り層2を形成しロール状に巻き取った。乾燥後スーパーキャレンダーにより線圧150Kg/cmの条件で平滑化処理して、再びロール状に巻き取った。
<インクジェット下塗り塗料組成物> (表示はドライ重量部)
カープレックス BS304N (シリカ、塩野義製薬社製) 100重量部
パテラコール IJ50
(ウレタンエマルジョン、大日本インキ化学工業社製) 17重量部
パテラコール D302
(ウレタンエマルジョン、大日本インキ化学工業社製) 12重量部
PVA217 (PVA、クラレ社製) 10重量部
PAS−H−10L(カチオン化剤)
(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、日東紡績社製)7重量部
上記配合により塗料濃度20%のインクジェット下塗り塗料を作成した。
【0047】
次いで、第2工程として、表面を平滑化処理したインクジェット下塗り層2の上に、ウエット法のキャスト塗工機のエアーナイフコーターにより、下記インクジェットキャストコート塗料組成物をドライ換算で12g/m2 となるように塗被し、湿潤状態のままでクロムメッキしたキャストドラムに圧着させ、乾燥させると同時にキャストドラムの鏡面を転写させてインクジェットキャストコート層3を形成しロール状に巻き取った。
<インクジェットキャストコート塗料組成物> (表示はドライ重量部)
AKP−G015(γーアルミナ、住友化学社製) 100重量部
酢酸(市販の試薬品) 有姿で4重量部
PVA210(PVA、クラレ社製) 12重量部
ウルトラゾール SIX11(アクリルエマルジョン、ガンツ化成社製) 8重量部
セロゾール524(離型剤、カルナバワックス、中京油脂社製) 1重量部
上記配合により塗料濃度30%のインクジェットキャストコート塗料を作成した。
【0048】
更に、インクジェットキャストコート層3の上に、第3工程として、ウエット法のキャスト塗工機のエアーナイフコーターにより、下記インクジェットキャスト光沢塗料組成物をドライ換算で0.5g/m2 となるように塗被し、湿潤状態のままでクロムメッキしたキャストドラムに圧着させ、乾燥させると同時にキャストドラムの鏡面を転写させてインクジェットキャスト光沢層4を形成して巻き取りこれを所定の寸法に裁断して、本発明による坪量が139.5g/m2 の実施例1のインクジェット記録紙を得た。
<インクジェットキャスト光沢塗料組成物> (表示はドライ重量部)
カタロイドSI30(コロイダルシリカ、触媒化成工業社製) 30重量部
PVA205(PVA、クラレ社製) 10重量部
オレイン酸アンモニウム(離型剤、市販品) 6重量部
上記配合により塗料濃度3%のインクジェットキャスト光沢塗料を作成した。
【0049】
<実施例2>
実施例1で使用したインクジェットキャスト光沢塗料組成物の塗料濃度を12%とし、ウエット法のキャスト塗工機のバーコーターを使用し、インクジェットキャスト光沢塗料組成物の塗被量をドライ換算で5g/m2 としたことの他は実施例1と同様にして本発明による坪量が144g/m2 の実施例2のインクジェット記録紙を得た。
【0050】
<実施例3>
実施例1で使用したインクジェットキャスト光沢塗料組成物の配合を下記の配合としたことの他は、実施例1と同様にして本発明による坪量が139.5g/m2 の実施例3のインクジェット記録紙を得た。
<インクジェットキャスト光沢塗料組成物> (表示はドライ重量部)
スノーテックスO(コロイダルシリカ、日産化学工業社製) 20重量部
PVA205(PVA、クラレ社製) 5重量部
オレイン酸アンモニウム(離型剤、市販品) 5重量部
上記配合により塗料濃度3%のインクジェットキャスト光沢塗料を作成した。
【0051】
<比較例1>
実施例1で第2工程のインクジェットキャストコート層の形成までのものを比較例1のインクジェット記録紙とした。(坪量139g/m2 )
【0052】
<比較例2>
実施例1の第2工程で得たインクジェットキャストコート層の上に、実施例1と同じインクジェットキャストコート塗料組成物をその塗料濃度を5%とし、ウエット法のキャスト塗工機のバーコーターを使用し、塗被量をドライ換算で3g/m2 としたことの他は、実施例1と同様にして比較例2のインクジェット記録紙とした。(坪量142g/m2 )
【0053】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得たインクジェット記録紙を試験試料として、その各々に対して、次に示す各測定項目を対応して示した測定方法によって測定しその結果を表1にまとめた。
【0054】
<測定項目及び試験方法>
1.光沢度
最表面のJIS−Z−8741による60度の鏡面光沢度を測定する。単位は%で表示する。
【0055】
2.印字濃度
最表面にエプソン社製のプリンターPM−700Cを使用して、指定インクのブラックを使用し、印字モードとして専用光沢フイルムで標準テストチャートを印字し、印字24時間後マクベス濃度計RD915によって指定印字部分(ブラック)の濃度を測定する。
【0056】
3.印字耐水性
最表面にエプソン社製のプリンターPM−700Cを使用して、指定インクを使用し、印字モードとして専用光沢フイルムで標準テストチャートを印字し、印字24時間後、指定箇所に水滴を3滴滴下し、10秒後ティシュペーパーで軽く3回擦って、ティシュペーパーへのインクの溶出の有無を視覚で観察する。
(判定基準)
◎・・・非常に優れる。 ○・・・優れる。 △・・・普通。
×・・・劣る。 ××・・・非常に劣る。
【0057】
4.記録紙耐水性
最表面に水滴を1滴滴下し10秒後に指先で軽く10回擦って塗料の溶出の有無を視覚で観察する。
(判定基準)
◎・・・非常に優れる。 ○・・・優れる。 △・・・普通。
×・・・劣る。 ××・・・非常に劣る。
【0058】
5.インクの吸収性
最表面に前記エプソン社製のプリンターPM−700Cを使用して、指定インクを使用し、印字モードとして専用光沢フイルムで印字し、印字面の擦れ、重色部分のインクの滲みの有無を視覚で観察する。
(判定基準)
◎・・・非常に優れる。 ○・・・優れる。 △・・・普通。
×・・・劣る。 ××・・・非常に劣る。
【0059】
8.光沢平滑感
最表面の光沢平滑感を視覚により次の5段階により判定する。
(判定基準)
◎・・・非常に優れる。 ○・・・優れる。 △・・・普通。
×・・・劣る。 ××・・・非常に劣る。
【0060】
<試験の結果>
【表1】
【0061】
上記試験の結果から読み取れるように、本発明のインクジェット記録紙の実施例1〜3の品質は、比較例1〜2の品質に比べていずれの項目においても極めて優れたものであることが判る。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように本発明のインクジェット記録紙及びその製造方法によれば、基紙の一方の面に形成したインクジェット下塗り層を介して、インクジェットキャストコート層とインクジェットキャスト光沢層とで2層に形成したキャスト塗被層が相互に作用し合って、その最表面が、JIS−Z−8741による60度鏡面光沢度で60〜80%の高い光沢度、写真に近い光沢平滑感、高い印字濃度、優れた印字耐水性及び優れたインクジェットインクの定着性・吸収性等の特性を保持したインクジェット記録紙となる。
【0063】
なお、インクジェットキャストコート層あるいはインクジェットキャスト光沢層のいずれか一層のキャスト塗被層を形成したのでは、前記のような特性を保持したインクジェット記録紙は得られない。
【0064】
また、インクジェット下塗り層は、基紙の表面の粗さを覆って平滑性にし、この上に形成するインクジェットキャストコート層及びインクジェットキャスト光沢層の平滑性を一層向上させる。また、カチオン化剤が含有することによってインクジェットインクの発色濃度を向上させる。
更に、インクジェット下塗り層の形成によって、通気性のばらつきが小さくなり、この上に形成するインクジェットキャストコート層およびインクジェットキャスト光沢層を形成する時のキャスト作業性を一層向上させる。
【0065】
また、インクジェットキャストコート層は、インクジェットインクを確実に吸収して、擦れやブロッキングやベタツキ等を起こすことなく、この上に形成するインクジェットキャスト光沢層の特性の発揮をより効果的なものとする。
【0066】
更に、インクジェットキャスト光沢層は、インクジェットキャスト光沢層の顔料にコロイダルシリカを使用したので、インクジェットキャスト光沢塗料をインクジェットキャストコート層の上に塗被した時に、インクジェットキャストコート層の微細な亀裂および凹凸に、微細粒子のコロイダルシリカが入り込んで、インクジェットキャストコート層をより平滑にすることと、インクジェットキャスト光沢塗料自体が持つ特性とが絡み合って高い光沢度や写真に近い光沢平滑感が得られると推定される。
【0067】
また、本発明のインクジェット記録紙の製造方法によれば、ウエット法によってキャスト層を2層に形成したので、キャスト面の面形成がし易く、安定した作業性が得られると共に、品質面において前記のような諸特性を保持したインクジェット記録紙を容易に安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録紙の縦断側面図である。
【符号の説明】
1…基紙
2…インクジェット下塗り層
3…インクジェットキャストコート層
4…インクジェットキャスト光沢層
Claims (3)
- 基紙の一方の面に形成したインクジェット下塗り層を介して、γーアルミナを顔料として含むインクジェットキャストコート塗料を塗被して設けたインクジェットキャストコート層がキャストコート処理され、該キャストコートされたインクジェットキャストコート層の上に、コロイダルシリカを顔料として含むインクジェットキャスト光沢塗料を塗被して設けたインクジェットキャスト光沢層がキャストコート処理され、その最表面のJIS−Z−8741による60度鏡面光沢度を60〜80%としたことを特徴とするインクジェット記録紙。
- インクジェット下塗り層を構成する顔料がシリカ及び/又はアルミナ水和物であって、添加剤としてカチオン化剤を含有する請求項1記載のインクジェット記録紙。
- 基紙の一方の面に、顔料としてシリカ及び/又はアルミナ水和物が、添加剤としてカチオン化剤を含有するインクジェット下塗り塗料をドライ換算で5〜20g/m2 塗被し乾燥して下塗り層を形成し、該インクジェット下塗り層の上にキャスト塗工機によりウエット法で、顔料としてγ−アルミナを使用したインクジェットキャストコート塗料をドライ換算で4〜15g/m2 塗被し乾燥してインクジェットキャストコート層を形成し、次いで、該インクジェットキャストコート層の上にキャスト塗工機によりウエット法で、顔料としてコロイダルシリカを使用したインクジェットキャスト光沢塗料をドライ換算で0.5〜5g/m2 塗被し乾燥してインクジェットキャスト光沢層を形成し、最表面のJIS−Z−8741による60度鏡面光沢度を60〜80%としたことを特徴とするインクジェット記録紙の製造方法。
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