JP2004209684A - インクジェット記録用紙およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の下塗り層、下塗り層上に顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の中間層、中間層上に顔料および接着剤を含有する光沢層、を順次設けたインクジェット記録用紙において、中間層の顔料は、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下であるカチオン性微細顔料、光沢層の顔料は平均粒子径が3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、下塗り層がカチオン性化合物を含有し、光沢層はカチオン性化合物を含有しない、とする。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録適性に優れ、かつ、耐水性に優れたインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタによる記録は、騒音が少なく、高速記録が可能であり、かつ、多色化が容易なために多方面で利用されている。インクジェット記録用紙としては、インク吸収性に富むように工夫された上質紙や、表面に多孔性顔料を塗工した塗工紙等が適用されている。ところで、これらの用紙はすべて表面光沢の低い、いわゆるマット調のインクジェット記録用紙が主体であるため、表面光沢の高い、優れた外観を持つインクジェット記録用紙が要望されている。一般に、表面光沢の高い用紙としては、表面に板状顔料を塗工し、さらに必要に応じてキャレンダー処理を施した高光沢を有する塗工紙、あるいは湿潤塗工層を鏡面を有する加熱ドラム面に圧着、乾燥することにより、その鏡面を写し取ることによって得られる、いわゆるキャスト塗工紙が知られている。このキャスト塗工紙はスーパーキャレンダー仕上げされた通常の塗工紙に比較して高い表面光沢とより優れた表面平滑性を有し、優れた印刷効果が得られることから、高級印刷物等の用途に専ら利用されているが、インクジェット記録用紙に利用した場合、種々の難点を抱えている。
【0003】
特開平5−59688号公報(特許文献1参照)および特開平5−78995号公報(特許文献2参照)には、原紙上に顔料および接着剤を主成分とする塗工層を設け、その塗工層に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合してなる重合体、平均粒子径が5〜100nmコロイダルシリカおよび離型剤を含有する再湿潤液を付与してキャスト紙を得る製造方法が記載されている。前記塗工層中の接着剤等の成膜性物質がキャストコーターの鏡面ドラム表面を写し取ることにより高い光沢を得ているが、この成膜性物質の存在により塗工層の多孔性が失われ、インクジェット記録時のインクの吸収を極端に低下させる等の問題を抱えている。インク吸収性を改善するには、キャスト塗工層がインクを容易に吸収できるようにポーラスにすることが重要であり、そのためには成膜性を減ずることが必要となるが、成膜性物質の量を減らすことにより白紙光沢が低下するという問題がり、表面光沢とインクジェット記録適性の両方を同時に満足させることが極めて困難であった。
【0004】
特開平7−89220号公報(特許文献3参照)には、顔料および接着剤を主成分とする記録層を設けた原紙上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる40℃以上のガラス転移点を有する共重合体を主成分とする塗工液を塗工してキャスト塗工層を形成せしめ、前記キャスト塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げることにより、優れた光沢とインク吸収性を兼ね備えるインクジェット記録用キャスト紙が得られることが記載されている。しかし、近年インクジェット記録の高速化、記録画像の高精細化、フルカラー化といった用途の拡大に伴い、さらに強光沢かつ高画質、高記録濃度の品質が望まれてきており、例えば銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な光沢、記録品質が求められているが、このような要求を満たすには、不十分であった。
【0005】
特開2001−10220号公報(特許文献4参照)には、顔料および接着剤を含有する下塗り層、前記下塗り層上に平均2次粒子径が1μm以下のシリカ微細粒子、カチオン性化合物および接着剤を含有するインク定着層下層、前記下層上に平均2次粒子径が1μm以下のシリカ微細粒子、カチオン性化合物および接着剤を含有するキャスト層を順次設けたインクジェット記録用紙が記載されている。しかし、昨今のプリンタの技術進歩は著しく、従来のプリンタに比較して印字解像度が向上しいるが、このようなプリンタでの印字物の保存性、特に耐水性が不十分であった。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−59688号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平5−78995号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開平7−89220号公報(第2頁)
【特許文献4】
特開2001−10220号公報(第2、9および10頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インク乾燥性、印字濃度、および目視外観等のインクジェット記録適性に優れ、かつ、耐水性に優れたインクジェット記録用紙を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するため、下記の構成を採用する。
すなわち、本発明は、
[1]基材と、前記基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の下塗り層、前記下塗り層上に顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の中間層、前記中間層上に顔料および接着剤を含有する光沢層、を順次設けたインクジェット記録用紙において、
(1)前記中間層の顔料が、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下であるカチオン性微細顔料であり、
(2)前記光沢層の顔料が、平均粒子径が3nm以上100nm以下のコロイダルシリカであり、
(3)前記下塗り層がカチオン性化合物を含有し、前記光沢層がカチオン性化合物を含有しない、
ことを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0009】
本発明は、以下の態様を含む。
[2]前記中間層の顔料が、シリカである[1]記載のインクジェット記録用紙。
[3]前記シリカが、ヒュームドシリカである[2]記載のインクジェット記録用紙。
[4]前記カチオン性微細顔料中のカチオン性化合物が、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩、ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体および5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]記載のインクジェット記録用紙。
[5]前記下塗り層のカチオン性化合物が、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩およびジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
[6]前記下塗り層のカチオン性化合物のカチオン当量が、4.0〜8.0m当量/gである[5]記載のインクジェット記録用紙。
[7]前記光沢層の顔料が、真球状アニオン性コロイダルシリカを含有する[1]〜[6]のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
[8]前記下塗り層の顔料が、平均2次粒子径が1μm以上10μm以下のシリカである[1]〜[7]のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
【0010】
[9]基材と、前記基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の下塗り層、前記下塗り層上に顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の中間層、前記中間層上に顔料および接着剤を含有する光沢層、を順次設けるインクジェット記録用紙の製造方法において、
(1)前記中間層の顔料が、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下であるカチオン性微細顔料であり、
(2)前記光沢層の顔料が、平均粒子径が3nm以上100nm以下のコロイダルシリカであり、
(3)前記下塗り層がカチオン性化合物を含有し、前記光沢層がカチオン性化合物を含有しない、
(4)前記光沢層の塗布および乾燥を、光沢ロールに接するようにプレスロールでプレスして行なうこと、
を特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
(基材)
本発明で用いる基材としては、特に限定されるものではなく、一般の塗工紙に使用される酸性紙、あるいは中性紙等の紙基材が適宜使用される。また透気性を有する樹脂シート類も用いることができる。紙基材は木材パルプと必要に応じ含有する顔料を主成分として構成される。木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができ、これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS P−8121)程度である。紙送り歯車の傷を軽減するには叩解度を進めるほうが望ましいが、用紙に記録した場合にインク中の水分によって起こる用紙のボコツキや記録画像のにじみは、叩解を進めないほうが良好な結果を得る場合が多い。従ってフリーネスは300〜500ml程度が好ましい。顔料は不透明性等を付与したり、インク吸収性を調整する目的で配合し、炭酸カルシウム、焼成カオリン、シリカ、酸化チタン等が使用できる。特に焼成カオリン、シリカ、ゼオライトは、インク中の溶媒を吸収するため、好適に使用される。この場合、配合量は1〜20質量%程度が好ましい。多すぎると紙力が低下するおそれがある。また、前述の紙送り歯車の傷も付き易くなる。従って灰分として3〜15質量%程度がさらに好ましい。助剤としてサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂等を塗布・含浸させ、表面強度、サイズ度等を調整できる。サイズ度(100g/m2の紙として)は1〜200秒程度が好ましい。サイズ度が低いと、塗工時に皺が発生する等の操業上問題となる場合があり、高いとインク吸収性が低下したり、印字後のカールやコックリングが著しくなる場合がある。より好ましいサイズ度の範囲は4〜120秒である。基材の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m2程度である。
【0012】
(層構成)
本発明においては、基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の下塗り層、前記下塗り層上に顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の中間層、前記中間層上に顔料および接着剤を含有する光沢層、を順次設ける。
光沢層は、インクジェットインクを速やかに通過させると共に、銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な光沢を発現する層である。中間層は、インクジェットインク成分中の着色剤すなわち染料を定着させる層である。インク量が多くなると、着色剤の一部は下塗り層あるいは基材中に定着される場合もありうる。下塗り層は、主にインクジェットインク成分中の溶媒を速やかに吸収する層であり、かつ、中間層で吸収しきれなかった染料を定着させる層である。
【0013】
(下塗り層)
基材上に設けられる下塗り層は、顔料、接着剤およびカチオン性化合物を主成分として含有する。
下塗り層中の顔料は、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料が1種もしくはそれ以上、併用することが出来る。これらの中でも、インク吸収性の高い無定形シリカ、アルミナ、ゼオライトを主成分として含有させるのが好ましい。
これらの顔料の平均粒子径(凝集顔料の場合は凝集粒子径)は1〜10μm程度が好ましく、より好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜8μmである。1μm未満であるとインク吸収速度向上の効果に乏しくなり、10μmを超えて大きいと光沢層を設けた後での平滑性や光沢が不十分となるおそれがある。ただし、インク吸収性を調整したり、下塗り層上に塗工する塗工液の浸透を制御する目的で、副成分として粒子径の小さい顔料を配合することができる。この様な顔料としてはコロイダルシリカ、アルミナゾルが挙げられる。
【0014】
下塗り層の接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、等一般に塗工紙用として用いられている従来公知の接着剤が単独、あるいは併用して用いられる。
顔料と接着剤の配合割合は、その種類にもよるが、一般に顔料100質量部に対し接着剤1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で調節される。
【0015】
インクジェット記録用インクの着色剤は、通常アニオン性であるため、下塗り層には、インク中の着色剤成分を定着させる目的で、カチオン性化合物を配合する。
カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂や低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤等)が例示できる。印字濃度向上の効果の点ではカチオン性樹脂が好ましく、水溶性樹脂あるいはエマルジョンとして使用できる。更にカチオン性樹脂を架橋等の手段により不溶化し粒子状の形態としたカチオン性有機顔料としても使用できる。このようなカチオン性有機顔料は、カチオン性樹脂を重合する際、多官能性モノマーを共重合し架橋樹脂とする、あるいは反応性の官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アセトアセチル基等)を有するカチオン性樹脂に必要に応じ架橋剤を添加し、熱、放射線等の手段により架橋樹脂としたものである。カチオン性化合物、特にカチオン性樹脂は接着剤としての役割を果たす場合もある。
【0016】
本発明で使用するカチオン性化合物としては、例えば1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、2)第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、3)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、7)ジアリルジメチルアンモニウム−S02重縮合体、8)ジアリルアミン塩・S02重縮合体、9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、11)アリルアミン塩の共重合体、12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等のカチオン性化合物等が挙げられ、単独あるいは併用することが出来る。
【0017】
前記カチオン性化合物の中でも、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩およびジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体は、印字濃度、印字の耐水性およびインク吸収性等のインクジェット記録適性や光沢性に優れ、好ましく用いられる。
なかでも、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体およびジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体は、より好ましく用いられる。
【0018】
一般に、カチオン性化合物のカチオン当量は、カチオン性化合物の単位重量あたりのカチオン残基の数を示す値であり、通常、カチオン性化合物を形成する単量体中のカチオン残基の量に対応するが、重合による影響などがあるため、必ずしもこれに一致するものではない。本発明において使用するカチオン性化合物はカチオン当量が4.0〜8.0m当量/gのものが好ましい。カチオン当量が4m当量/gより未満の場合は、インク中の染料を定着させる作用が弱く、ドットの周囲への染料の滲み出しを抑える効果が弱いため、耐水性がおとる場合があり、一方、カチオン当量が8m当量/gを超える場合は、インク中の染料を定着させる作用が低下するため好ましくない。この理由は必ずしも明らかではないが、カチオン性化合物そのものがインクの有無に依らず周囲の下塗層を構成する材料に固着されてしまうために、インクを受理した時点で、染料に対する定着能力が失われ易いことによるものと推測される。
尚、カチオン性化合物のカチオン当量は、コロイド滴定法等によって測定された試料中のカチオン量と試料に含まれるカチオン性化合物の濃度から求めることが出来る。カチオン当量は、ポリビニル硫酸カリウム(PVSK)溶液を規定液、トルイジンブルーを指示薬とするコロイド滴定法により測定できる。この場合、指示薬の色が青色から赤紫色に変ったところを当量点とする。また指示薬を使わずに流動電位が0mVになったところを当量点とするイオン強度測定装置(例えばチャージアナライザII、製造:RANK BROTHERS LTD.)で測定できる。
【0019】
前記顔料と前記カチオン性化合物の配合比は、質量比で顔料100質量部に対してカチオン性化合物が1〜30質量部が好ましく、さらに好ましくは、3〜20質量部である。カチオン性化合物が1質量部より少ないと、耐水性向上の効果が得られにくく、30質量部より多いと、余分なカチオン性化合物が空隙を塞いでしまい、インク吸収性が阻害され、画像のにじみやムラが発生するおそれもある。カチオン性化合物は、印字に使用するインクジェット記録に使用するインクの種類により耐水性向上の効果に差がある場合があり、目的に応じて適宜使い分ける、或いは数種類のものを併用して使用することができる。
【0020】
その他、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。下塗り層中には、蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
【0021】
下塗り層中には、コロイダルシリカ及び/またはエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂、或いは、コロイダルシリカとエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂との複合体を含有させると、光沢がより発揮される。この理由は必ずしも明らかではないが、前記重合体樹脂或いは複合体の存在が、下塗り層のインク吸収性を維持したまま、中間層用塗工液の下塗り層への浸透を抑制するためと推定される。更にその理由は不明であるがキャスト方式により光沢層を設ける際に、鏡面ドラムからの離型性が向上する傾向がある。エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のメタクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレン、ブタジエン等のエチレン性モノマーを重合して得られる重合体が挙げられる。なお、重合体は、必要に応じて2種類以上のエチレン性モノマーを併用した共重合体であっても良いし、さらに、これら重合体あるいは共重合体の置換誘導体でも良い。因みに、置換誘導体としては、例えばカルボキシル基化したもの、またはそれをアルカリ反応性にしたもの等が例示される。
【0022】
コロイダルシリカとの複合化は、上記のエチレン性モノマーをシランカップリング剤等とコロイダルシリカの存在下で重合させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体にする、あるいは必要に応じシラノール基等で変性した重合体樹脂とコロイダルシリカを反応させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体にする方法が挙げられる。上記複合体の重合体成分のTg(ガラス転移点)は40℃以上が好ましく、50〜100℃の範囲がより望ましい。T
が低いと乾燥の際に成膜が進みすぎるためか、インクの吸収が遅くなりにじみが発生するおそれがある。さらに、その理由は必ずしも明らかではないが、Tgが40℃以上の場合、キャスト方式により光沢層を設ける際の鏡面ドラムからの離型性がより向上する傾向がある。
【0023】
上記材料をもって構成される下塗り層用塗工液は、一般に固形分濃度を5〜50質量%程度に調整し、紙基材上に乾燥質量で2〜100g/m2 、好ましくは5〜50g/m2 程度、更に好ましくは10〜20g/m2 程度になるように塗工する。塗工量が少ないと、インク吸収性改良効果が充分に得られなかったり、光沢層を設けた際に光沢が十分に出ないおそれがあり、多いと、印字濃度が低下したり、光沢層用塗工層の強度が低下し粉落ちや傷が付き易くなる場合がある。下塗り層用塗工液は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知公用の塗工装置により塗工、乾燥される。さらに、必要に応じて下塗り層の乾燥後にスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。
【0024】
(中間層)
本発明では、基材上に設けた上記した顔料と接着剤を含有する下塗り層上に中間層を設ける。前記中間層は、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下であるカチオン性微細顔料と接着剤を含有する。本発明では、中間層を設けることにより、インクがより均一に吸収される結果、にじみが少なく均一な発色が得られ、発色ムラの無い優れた画像が得られる。
カチオン性微細顔料中の顔料としては、好ましくはシリカ、アルミノシリケートであり、より好ましくはシリカであり、さらに好ましくは、ヒュームドシリカである。
シリカとしては、窒素吸着法による比表面積が300m2/g〜1000m2/gで、細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gであるシリカ微粒子がコロイド状に分散した液をシード液とし、該シード液に対しアルカリの存在下、活性ケイ酸水溶液及び/又はアルコキシシランからなるフィード液を少量ずつ添加してシリカ微粒子を成長させて、窒素吸着法による比表面積が100m2 /g〜400m2/g、平均二次粒子径が20nm〜300nm、かつ細孔容積が0.5ml/g〜2.0ml/gのシリカ微粒子がコロイド状に分散したシリカ微粒子分散液を用いても良い。
【0025】
前記顔料は、1次粒子が凝集した2次粒子である。前記顔料の平均2次粒子径は、好ましくは10nm以上1000nm以下であり、より好ましくは10nm以上800nm以下、更に好ましくは10nm以上500nm以下、なお好ましくは10nm以上300nm以下、最も好ましくは15nm以上150nm以下である。
平均2次粒子径が1000nmを越えると、中間層の透明性が低下し、中間層中に定着された着色剤の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られない場合いがある。また、平均2次粒子径が10nm未満であると、インク吸収性が低下し、にじみ等が発生し、所望とする画像品位を得ることが出来ないおそれがある。
【0026】
2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径は3nm以上40nm以下が好ましい。より好ましくは5nm以上30nm以下、さらに好ましくは7nm以上20nm以下である。中間層の顔料粒子径が小さいため透明性に優れ、発色濃度が極めて高い画像が得られる。
平均1次粒子径が3nm未満になると1次粒子間の空隙が著しく小さくなり、インク中の溶剤や着色剤を吸収する能力が低下し、所望とする画像品位を得ることが出来ないおそれがある。また、平均1次粒子径が40nmを越えると、凝集した2次粒子が大きくなり、中間層の透明性が低下し、中間層中に定着された着色剤の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られないおそれがある。
【0027】
インクジェット記録用インクの着色剤は、通常アニオン性であるため、中間層には、インク中の着色剤成分を定着させる目的で、カチオン性化合物を配合する。
カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂や低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤等)が例示できる。印字濃度向上の効果の点ではカチオン性樹脂が好ましく、水溶性樹脂あるいはエマルジョンとして使用できる。更にカチオン性樹脂を架橋等の手段により不溶化し粒子状の形態としたカチオン性有機顔料としても使用できる。このようなカチオン性有機顔料は、カチオン性樹脂を重合する際、多官能性モノマーを共重合し架橋樹脂とする、あるいは反応性の官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アセトアセチル基等)を有するカチオン性樹脂に必要に応じ架橋剤を添加し、熱、放射線等の手段により架橋樹脂としたものである。カチオン性化合物、特にカチオン性樹脂は接着剤としての役割を果たす場合もある。
【0028】
本発明で使用するカチオン性化合物としては、例えば1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、2)第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、3)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、7)ジアリルジメチルアンモニウム−S02重縮合体、8)ジアリルアミン塩・S02重縮合体、9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、11)アリルアミン塩の共重合体、12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等のカチオン性化合物等が挙げられ、単独あるいは併用することが出来る。
【0029】
前記カチオン性化合物の中でも、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩、ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体および5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂は、印字濃度、印字耐水性およびインク吸収性等のインクジェット記録適性や光沢性に優れ、好ましく用いられる。
なかでも、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体および5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂は、より好ましく用いられる。
【0030】
前記顔料と前記カチオン性化合物の配合比は、質量比で顔料100質量部に対してカチオン性化合物が1〜30質量部が好ましく、さらに好ましくは、3〜20質量部である。カチオン性化合物が1質量部より少ないと、印字濃度向上の効果が得られにくく、30質量部より多いと、余分なカチオン性化合物が空隙を塞いでしまい、インク吸収性が阻害され、画像のにじみやムラが発生するおそれもある。カチオン性化合物は、印字濃度向上に特に効果があるものや、印字耐水性向上に特に効果があるもの等が存在し、それぞれを目的に応じて適宜使い分ける、或いは数種類のものを併用して使用することができる。
【0031】
カチオン性化合物の配合の方法は、前記顔料に混合すれば良いが、特に顔料が微細シリカの場合は、微細シリカは一般にアニオン性であり、混合の際に微細シリカ粒子の凝集が起こる場合がある。
この場合、一般的に市販されている非晶質シリカ(数ミクロンの2次粒子径を有する)を機械的手段により強い力を与えて微細粒子に粉砕する際、粉砕処理前の非晶質シリカにカチオン性化合物を一緒に混合分散してから機械的手段により分散・粉砕するか、あるいは微細化したシリカ2次粒子分散体に混合し、一旦増粘・凝集させた後、再度機械分散・粉砕する方法等をとることにより、前記特定の粒子径に調整することができる。この様にして処理した顔料はカチオン性化合物が一部結合した構造をとり、安定して分散したスラリーとなっているためか、更に別途カチオン性化合物を追加配合しても凝集し難いという特徴を有する。
【0032】
前記顔料と前記カチオン性化合物の混合物、もしくは凝集物を分散あるいは粉砕するには、ホモミキサー、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、アルティマイザー、ナノマイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー、クレアミックス等が用いられる。
平均2次粒子径が1000nmを超える場合は、ホモミキサーなどの弱い機械力で処理すれば十分分散するが、平均2次粒子径を1000nm以下に粉砕するにはより強い機械力を加えることが効果的であり、圧力式分散方法を用いることが好ましい。
【0033】
本発明において圧力式分散方法とは、原料粒子のスラリー状混合物をオリフィス中、高圧で連続的に通過させて高圧粉砕する方法であり、処理圧力は19.6×106 〜343.2×106 Pa(200〜3500kgf/cm2 )、より好ましくは49.0×106 〜245.3×106 Pa(500〜2500kgf/cm2 )、さらに好ましくは、98.1×106 〜196.2×106 Pa(1000〜2000kgf/cm2 )である。上記高圧粉砕により処理することで良好な分散あるいは粉砕が達成できる。さらに高圧でオリフィスを通過したスラリー状混合物を対向衝突させることによる分散、或いは粉砕方式を用いることがより好ましい。対向衝突による方法は、分散液を加圧することによって入口側に導き、分散液を二つの通路に分岐してさらに流路をオリフィスにより狭めることによって流速を加速して対向衝突させて粒子を衝突させて粉砕する。分散液を加速したり衝突させたりする部分を構成する材料としては、材料の摩耗を抑えるなどの理由からダイヤモンドが好ましく用いられる。
高圧粉砕機としては、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、ナノマイザーが用いられ、特に高速流衝突型ホモジナイザーとしてマイクロフルイタイザー、ナノマイザ−が好ましい。
【0034】
このようにして処理されたカチオン性微細顔料は、一般に固形分濃度が5〜20質量%程度の水分散体(スラリーあるいはコロイド粒子)として得られる。本発明でいう平均粒子径とは、電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒子径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し、平均したもの。「微粒子ハンドブック」( 朝倉書店) のP52、1991年等に記載されている)。
【0035】
尚、中間層にはカチオン性微細顔料を配合するので、接着剤はカチオン性若しくはノニオン性のものが中間層塗工液の安定性が良いため好ましい。接着剤の配合量は、顔料100質量部に対し1〜200質量部、より好ましくは5〜100質量部の範囲で調節される。接着剤の量が少ないと、中間層の強度が弱くなり、粉落ちが発生する場合がある。逆に接着剤の量が多いと、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる場合がある。ここで、光沢層用塗工液中の接着剤の配合量(顔料100質量部に対する)を中間層より多くすると、表面の強度とインク吸収性のバランスに優れたものが得られ易く、好ましい。
【0036】
中間層中の全顔料中におけるカチオン性微細顔料の比率は、中間層の透明性を維持するために、50質量%以上が望ましい。全顔料中のカチオン性微細顔料の比率が50質量%未満になると中間層の透明性が低下し、印字濃度等の画像品位が低下する場合もある。
接着剤としては、水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体)、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス等の水分散性樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が単独あるいは併用して使用される。水性ポリウレタン樹脂は、ウレタンエマルジョン、ウレタンラテックス、ポリウレタンラテックス等とも通称されている。ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応から得られるものである。比較的多数のウレタン結合および尿素結合を含む高分子化合物である。
【0037】
中間層用塗工液を、基材に設けた下塗り層上に塗工する場合は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗工装置が使用できる。
中間層の塗工量(合計)は、乾燥固形分で1〜50g/m2は好ましく、1〜30g/m2より好ましく、1〜10g/m2。がさらに好ましい。1g/m2 未満の場合は、印字の際にじみが発生しやすくなり、50g/m2を越える場合は、印字濃度が不十分となり易い。
【0038】
(光沢層)
前記キャスト層の顔料は、コロイダルシリカが好ましく、さらに好ましくは、真球状アニオン性コロイダルシリカである。
前記コロイダルシリカの平均粒子径は、3nm以上100nm以下であり、5nm以上90nm以下が好ましく、10nm以上80nm以下がより好ましく、20nm以上70nm以下がさらに好ましい。平均粒子径が3nm未満の場合は、インクの吸収性が低下し、また、平均粒子径が100nmを超える場合は、光沢性および印字濃度が低下する。
【0039】
光沢層の接着剤は、例えば、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル系重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂および水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で従来公知の各種接着剤が単独、あるいは併用して使用できる。
【0040】
光沢層に使用される接着剤のガラス転移温度は、−20℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上であり、得られる光沢層は、鏡面ドラムからの離型性に優れ、インクジェットプリンターのインクの吸収性も良好である。接着剤のガラス転移温度は60℃以上であることがさらに好ましい。このガラス転移温度に格別の上限はないが、一般に150℃以下であることが好ましい。150℃を超えると、鏡面ドラムからの離型性やインクの吸収性はいっそう優れたものになるが、逆に光沢が出にくくなり、また光沢層が脆くなるため、断裁時にダストが多くなったり、折り目から光沢層が欠けたりする、強度不足によるトラブルが発生する場合がある。したがって、ガラス転移点の異なる、2種類以上の接着剤を組み合わせることも、求められる特性によっては、しばしば効果的である。この理由は定かではないが、ガラス転移点の低い接着剤と高い接着剤が均一に混合されるのではなく、あたかも海/島構造を構成し、それぞれの接着剤の特徴を一層効果的に発揮するためと推測される。2種類以上の接着剤を組み合わせる場合、好ましくは少なくとも一方はガラス転移点−20℃以上の樹脂とする。
【0041】
光沢層中の接着剤と顔料との組成比(固形分質量比)は、顔料100質量部に対して、好ましくは、3〜150質量部の範囲であり、より好ましくは、7〜100質量部の範囲であり、さらに好ましくは、10〜70質量部の範囲である。接着剤の比率が150質量部を超えると、印字濃度が低下する傾向があり、3質量部未満では光沢性が低下する傾向にある。
【0042】
光沢層用塗工液を中間層上に塗工する場合、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗工装置が使用できる。
本発明において、光沢層はキャスト方式により形成された層である。キャスト方式とは、光沢層を、平滑性を有する鏡面ドラム(鏡面仕上げした金属、プラスチック、ガラス等のドラム)、鏡面仕上げした金属板、プラスチックシートやフィルム(フィルム転写キャスト法、フィルムキャスト法)、ガラス板等上で乾燥し、平滑面を光沢層上に写し取ることにより、平滑で光沢のある光沢層表面を得る方法である。鏡面ドラムを用いて光沢層を設ける方法としては、上記の光沢層用塗工液を中間層上に塗工して、光沢層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト法)、あるいは一旦乾燥後再湿潤した後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト法)等が例示できる。また加熱された鏡面ドラムに直接光沢層用塗工液を塗工した後、基材側の中間層面に圧接、乾燥して仕上げる方法(プレキャスト法)も採用することができる。
【0043】
尚、鏡面ドラムの表面温度は40〜200℃程度が好ましく、70〜150℃がより好ましい。40℃未満であると乾燥に時間がかかり、光沢が低下しやすく、生産性が著しく低下しやすい。200℃を超えて高いとインクジェット記録用紙表面が荒れたり光沢が低下する場合がある。
光沢層用塗工液を中間層上に塗工して、光沢層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる場合、光沢層用塗工液の浸透を抑える目的で、光沢層用塗工液の不動化を促進する方法を採ることもできる。
この方法としては例えば、(1)中間層中に光沢層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を配合しておく、(2)中間層上に光沢層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を塗工・含浸させる、(3)光沢層用塗工液を塗工した後、光沢層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を表面に塗工・含浸させる、(4)光沢層用塗工液中に塗工液が乾燥する過程で不動化が促進されるようなゲル化剤を配合しておくことが挙げられる。この様なゲル化剤としては、光沢層用塗工液中の接着剤の架橋剤である、ほう酸、ぎ酸等およびそれらの塩、アルデヒド化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。上記の方式の内、ウェットキャスト法を採用する場合、中間層上に光沢層用塗工液を塗工し、鏡面ドラム上に圧接し乾燥するまでの時間をなるべく短くした方が、光沢層用塗工液の浸透が抑えられるため、光沢が発現しやすい。さらに、中間層面が鏡面ドラムに圧接される直前に、圧接ロール(プレスロール)上の中間層面と鏡面ドラム間に光沢層用塗工液を付与して直ちに圧接する方式(ニップキャスト方式と称する)が、光沢層用塗工液の浸透が極力抑えられ、少ない塗工量で良好な光沢、印字品位が得られ易く、特に好ましい。
【0044】
光沢層用塗工液中には白色度、粘度、流動性等を調節するために、一般の印刷用塗工紙やインクジェット用紙に使用されている顔料、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤及び分散剤、増粘剤等の各種助剤が適宜添加される。
【0045】
また、光沢層用塗工液中には、鏡面ドラム等からの離型性を付与する目的で、離型剤を添加するのが好ましい。離型剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモミウム等の高級脂肪酸アルカリ塩類、レシチン、シリコーンオイル、シリコーンワックス等のシリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物が挙げられる。離型剤の配合量は、顔料100質量部に対し0.1〜50質量部、好ましくは0.3〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部の範囲で調節される。ここで配合量が少ないと、離型性改善の効果が得られにくく、多いと逆に光沢が低下したり、インクのハジキや記録濃度の低下が生じる場合がある。
【0046】
光沢層の塗工量は、乾燥固形分で0.1〜20g/m2程度、好ましくは0.2〜10g/m2 、より好ましくは0.5〜5g/m2である。ここで、0.1g/m2 未満では、十分な光沢が得られ難く、20g/m2 を越えて多いと、印字の際にじみが発生しやすくなったり、印字濃度が不十分となりやすい。光沢層をキャスト仕上げにより設けた後で、さらにスーパーキャレンダー等により平滑化処理を行うこともできる。
【0047】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部および%は特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を示す。
【0048】
[紙基材の作製]
木材パルプ(LBKP;ろ水度440mlCSF)100部、填料(炭酸カルシウム/タルク=75/25)15部、市販サイズ剤(サイズパインE−50、荒川化学社製)0.04部、硫酸バンド(北陸化成社製)0.45部、澱粉(リョウセイKH−1000、王子コーンスターチ社製)1.00部、歩留向上剤88ppmよりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量170g/m2の紙基材を製造した。この紙基材のステキヒトサイズ度は140秒であった。また、厚さは195μmであった。
【0049】
[カチオン性微細顔料の調製]
(カチオン性微細顔料A)
市販気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均1次粒子径15nm、比表面積300m2/g、トクヤマ社製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均2次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。前記分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均2次粒子径300nmからなる8%分散液を調製し、カチオン性微細顔料Aを得た(平均1次粒子径は15nmのまま)。
【0050】
(カチオン性微細顔料B)
市販沈降法シリカ(商品名:ファインシールX−45、平均1次粒子径10nm、平均2次粒子径4.5μm、トクヤマ社製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均2次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。前記分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均2次粒子径250nmからなる8%分散液を調製し、カチオン性微細顔料Bを得た(平均1次粒子径は10nmのまま)。
【0051】
(カチオン性微細顔料C)
市販ゲル法シリカ(商品名:ニップジェルAZ600、平均1次粒子径10nm、比表面積300m2/g、日本シリカ社製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均2次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。前記分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均2次粒子径400nmからなる8%分散液を調製し、カチオン性微細顔料Cを得た(平均1次粒子径は10nmのまま)。
【0052】
(カチオン性微細顔料D)
市販気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均1次粒子径15nm、比表面積300m2/g、トクヤマ社製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均2次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。前記分散液にカチオン性化合物として、5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(商品名:SC−700、分子量:30万、ハイモ社製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均2次粒子径300nmからなる8%分散液を調製し、カチオン性微細顔料Dを得た(平均1次粒子径は15nmのまま)。
【0053】
[シリカスラリーA]
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−45、平均2次粒子径4.5μm、平均1次粒子径10nm、トクヤマ社製)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1、SMT社製)を用いて粉砕の操作を繰り返し(加圧49×106Pa)、シリカスラリーAを得た。処理後の分散液中のシリカの平均2次粒子径(平均凝集粒子径)は50nm、固形分濃度は12%であった(平均1次粒子径は15nmのまま)。
【0054】
[シリカスラリーB]
合成非晶質シリカ(商品名:Nipsil LP、平均2次粒子径9μm、平均1次粒子径16nm、日本シリカ工業社製)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1、SMT社製)を用いて粉砕の操作を繰り返し(加圧49×106Pa)、シリカスラリーBを得た。処理後の分散液中のシリカの平均2次粒子径は600nm、固形分濃度は12%であった(平均1次粒子径は16nmのまま)。
【0055】
実施例1
紙基材上に、下記下塗り層用塗工液を、乾燥質量で9g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。次に、エアナイフコーター、乾燥装置を有するキャスト塗工装置を用い、先ず上記の下塗り層上に下記中間層用塗工液を、乾燥質量で4g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工して、乾燥装置で乾燥した。続いて、下記光沢層用塗工液の塗布、乾燥が、光沢ロールに接するようにプレスロールでプレスしてなされ、インクジェット記録用紙を得た。このときの光沢層の塗工量は、固形分質量で2g/m2であった。
【0056】
[下塗り層用塗工液](部は固形分質量部を示す。)
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−30、平均2次粒子径3.2μm、トクヤマ社製)100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA R1115、クラレ社製)20部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA145、クラレ社製)5部、蛍光染料(商品名:WhitexBPSH、住友化学社製)2部、カチオン性化合物(商品名:ユニセンスCP103、センカ社製、カチオン当量6.2m当量/g)3部。
[中間層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
カチオン性微細顔料A100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)10部からなる塗工液を粘度が50〜300cpsになるように調整した。
[光沢層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
ガラス転移点100℃のアクリルエマルジョンとコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(商品名:アクアブリッド906、ダイセル社製、アクリルエマルジョンとコロイダルシリカは質量比で20:80、コロイダルシリカの平均粒子径20〜30nm、エマルジョン粒子径40nm)100部、シリカスラリーA2.5部、カゼイン5部、増粘剤(商品名:ビスマルYK−1S、東邦化学工業社製)6部、離型剤(ステアリン酸)5部。
【0057】
実施例2
下記中間層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[中間層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
カチオン性微細顔料B100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)10部からなる塗工液を粘度が50〜300cpsになるように調整した。
【0058】
実施例3
下記中間層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[中間層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
カチオン性微細顔料C100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)10部からなる塗工液を粘度が50〜300cpsになるように調整した。
【0059】
実施例4
下記中間層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[中間層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
カチオン性微細顔料D100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)10部からなる塗工液を粘度が50〜300cpsになるように調整した。
【0060】
実施例5
下記下塗り層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[下塗り層用塗工液](部は固形分質量部を示す。)
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−30、平均2次粒子径3.2μm、トクヤマ社製)100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA R1115、クラレ社製)20部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA145、クラレ社製)5部、蛍光染料(商品名:WhitexBPSH、住友化学社製)2部、カチオン性化合物(商品名:ユニセンスCP103とユニセンスCP95、センカ社製、ユニセンスCP103とユニセンスCP95を質量比で3:1)3部。
【0061】
実施例6
下記下塗り層用塗工液を用いた以外は、実施例4と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[下塗り層用塗工液](部は固形分質量部を示す。)
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−30、平均2次粒子径3.2μm、トクヤマ社製)100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA R1115、クラレ社製)20部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA145、クラレ社製)5部、蛍光染料(商品名:WhitexBPSH、住友化学社製)2部、カチオン性化合物(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製、カチオン当量5.9m当量/g)3部。
【0062】
比較例1
下記中間層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[下塗り層用塗工液](部は固形分質量部を示す。)
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−30、トクヤマ社製、平均2次粒子径3.2μm)100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA R1115、クラレ社製)20部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA145、クラレ社製)5部、蛍光染料(商品名:WhitexBPSH、住友化学社製)2部。
【0063】
比較例2
下記中間層用塗工液および光沢層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[中間層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
シリカスラリーB100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)10部からなる塗工液を粘度が50〜300cpsになるように調整した。
[光沢層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
ガラス転移点100℃のアクリルエマルジョンとコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(商品名:アクアブリッド906、ダイセル社製、アクリルエマルジョンとコロイダルシリカは質量比で20:80、コロイダルシリカの平均粒子径20〜30nm、エマルジョンの粒子径は40nm)100部、前記シリカスラリーA2.5部、カゼイン5部、増粘剤(商品名:ビスマルYK−1S、東邦化学工業社製)6部、離型剤(ステアリン酸)5部、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)10部。
【0064】
比較例3
下記中間層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[中間層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
シリカスラリーB100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)10部からなる塗工液を粘度が50〜300cpsになるように調整した。
【0065】
比較例4
紙基材上に、下記下塗り層用塗工液を、乾燥質量で15g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。次に、エアナイフコーター、乾燥装置、ロールコーターを有するキャスト塗工装置を用い、先ず上記の下塗り層上に下記中間層用塗工液を、乾燥質量で3g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工して、乾燥装置で乾燥した。続いて、光沢層用塗工液を、上記中間層上に、ロールコーターで塗工し、直ちに、表面温度が100℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後、離型させ、インクジェット記録用紙を得た。このときの光沢層の塗工量は、固形分質量で、2g/m2であった。
【0066】
[下塗り層用塗工液](固形分濃度20%、部は固形分質量部を示す。)
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−60、トクヤマ社製、平均2次粒子径6.0μm、平均1次粒子径15nm)80部、ゼオライト(商品名:トヨビルダー、トーソー社製、平均粒子径1.5μm)20部、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、クラレ社製)20部、ガラス転移点75℃のスチレン−2−メチルヘキシルアクリレート共重合体と粒子径30nmのコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(共重合体とコロイダルシリカは質量比で40:60、エマルジョンの平均粒子径は80nm)40部、蛍光染料(WhitexBPSH;住友化学社製)2部。
[中間層用塗工液](固形分濃度13%、部は固形分質量部を示す)
シリカ微細粒子A100部、カチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)10部、カチオン性水性ポリエーテルポリウレタン樹脂(商品名:F−8564D、第一工業製薬社製)30部
[光沢層用塗工液](固形分濃度10%、部は固形分質量部を示す)
シリカ微細粒子A100部、カチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)25部、カチオン性水性ポリエステルポリウレタン樹脂(商品名:F−8570D、第一工業製薬社製)60部、離型剤(ステアリン酸アミド)2部。
【0067】
比較例5
下記光沢層用塗工液を用いた以外は、比較例2と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[光沢層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
ガラス転移点100℃のアクリルエマルジョンとコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(商品名:アクアブリッド906、ダイセル社製、アクリルエマルジョンとコロイダルシリカは質量比で20:80、コロイダルシリカの平均粒子径20〜30nm、エマルジョン粒子径40nm)100部、シリカスラリーA2.5部、カゼイン5部、増粘剤(商品名:ビスマルYK−1S、東邦化学工業社製)6部、離型剤(ステアリン酸)5部。
【0068】
比較例6
下記光沢層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
[光沢層用塗工液](部は固形分質量部を示す)
ガラス転移点100℃のアクリルエマルジョン(商品名:BL936、ライオン社製)20部、上記シリカスラリーB80部、上記シリカスラリーA2.5部、カゼイン5部、増粘剤(商品名:ビスマルYK−1S、東邦化学工業社製)6部、離型剤(ステアリン酸)5部。
【0069】
実施例および比較例で得られたインクジェット記録用紙のインクジェット記録適性としてベタ印字部の均一性、インク乾燥性、印字濃度および印字のにじみと、光沢度、写像性および目視外観を以下に示す方法で評価した。評価結果は、表1に示した。
【0070】
[インクジェット記録適性]
(インク乾燥性)
インクジェットプリンタPM950C(エプソン社製)を用いて、シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字を行ない、ベタ印字部につきインク乾燥性を評価した。
◎:印字直後に指で触れてもまったく汚れない。
○:印字直後に指で触れるとわずかに汚れるが問題とならないレベル。
△:印字直後に指で触れると若干汚れ、実用上やや問題となるレベル。
×:印字直後に指で触れると汚れが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
【0071】
(インクジェット記録後の印字濃度)
インクジェットプリンタPM950C(エプソン社製)を用いて、黒ベタ印字を行ない、黒ベタ印字部分の印字濃度をマクベス反射濃度計RD−914(マクベス社製)で測定。
【0072】
(耐水性)
インクジェットプリンタPM950C(エプソン社製)を用いて印字を行ない、24時間放置後、印字部に水滴を落として1分後にふき取り、水滴を落とした部分の状態を目視で観察した。
◎:殆ど滲まず、極めて良いレベル。
○:多少の滲みは認められるが、実用可能レベル。
△:滲みが認められ、実用に問題あるレベル。
×:滲みが極めて悪い。
【0073】
〔目視外観〕
インクジェット記録用紙表面の光沢感、平滑感を目視により評価した。
◎:極めて優れる。
○:優れる。
△:やや劣る。
×:劣る。
【0074】
【表1】
【0075】
【発明の効果】
表1から明らかなように、本発明の構成により得られたインクジェット記録用紙は、インク乾燥性、印字濃度、および目視外観等のインクジェット記録適性に優れ、かつ、耐水性に優れた極めて実用性の高いものである。
Claims (9)
- 基材と、前記基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の下塗り層、前記下塗り層上に顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の中間層、前記中間層上に顔料および接着剤を含有する光沢層、を順次設けたインクジェット記録用紙において、
(1)前記中間層の顔料が、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下であるカチオン性微細顔料であり、
(2)前記光沢層の顔料が、平均粒子径が3nm以上100nm以下のコロイダルシリカであり、
(3)前記下塗り層がカチオン性化合物を含有し、前記光沢層がカチオン性化合物を含有しない、
ことを特徴とするインクジェット記録用紙。 - 前記中間層の顔料が、シリカである請求項1記載のインクジェット記録用紙。
- 前記シリカが、ヒュームドシリカである請求項2記載のインクジェット記録用紙。
- 前記カチオン性微細顔料中のカチオン性化合物が、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩、ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体および5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3記載のインクジェット記録用紙。
- 前記下塗り層のカチオン性化合物が、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩およびジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 前記下塗り層のカチオン性化合物のカチオン当量が、4.0〜8.0m当量/gである請求項5記載のインクジェット記録用紙。
- 前記光沢層の顔料が、真球状アニオン性コロイダルシリカを含有する請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 前記下塗り層の顔料が、平均2次粒子径が1μm以上10μm以下のシリカである請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 基材と、前記基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の下塗り層、前記下塗り層上に顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の中間層、前記中間層上に顔料および接着剤を含有する光沢層、を順次設けるインクジェット記録用紙の製造方法において、
(1)前記中間層の顔料が、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下であるカチオン性微細顔料であり、
(2)前記光沢層の顔料が、平均粒子径が3nm以上100nm以下のコロイダルシリカであり、
(3)前記下塗り層がカチオン性化合物を含有し、前記光沢層がカチオン性化合物を含有しない、
(4)前記光沢層の塗布および乾燥を、光沢ロールに接するようにプレスロールでプレスして行なうこと、
を特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
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JP2002379002A JP2004209684A (ja) | 2002-12-27 | 2002-12-27 | インクジェット記録用紙およびその製造方法 |
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JP (1) | JP2004209684A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006077858A1 (ja) * | 2005-01-18 | 2006-07-27 | Oji Paper Co., Ltd. | 光沢インクジェット記録用紙 |
US7935657B2 (en) | 2006-07-31 | 2011-05-03 | Samsung Electronics Co., Ltd. | Recording medium for thermal transfer printers |
JP2011529414A (ja) * | 2008-07-31 | 2011-12-08 | イーストマン コダック カンパニー | カチオン変性クレー粒子を有するインクジェット記録媒体 |
-
2002
- 2002-12-27 JP JP2002379002A patent/JP2004209684A/ja active Pending
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