JP2005022334A - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Abstract
【課題】インクジェット記録用シートに関し、高光沢であり、像鮮明度に優れ、印字濃度が高く、更に、ビーディングを生じないインクジェット記録用シートを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【選択図】なし
【解決手段】基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用シートに関し、詳しくは、高光沢であり、像鮮明度に優れ、印字濃度が高く、更に、ビーディングを生じないインクジェット記録用シートを提供する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
インクジェットプリンタによる記録は、騒音が少なく、高速記録が可能であり、かつ、多色化が容易なために多方面で利用されている。インクジェット記録用シートとしては、インク吸収性に富むように工夫された上質紙や、表面に多孔性顔料を塗工した塗工紙等が適用されている。ところで、これらの用紙はすべて表面光沢の低い、いわゆるマット調のインクジェット記録用シートが主体であるため、表面光沢の高い、優れた外観を持つインクジェット記録用シートが要望されている。
【0003】
表面光沢を有するインクジェット記録用シートとしては、水溶性樹脂を主成分としたインクジェット記録層を形成したポリマーコート光沢紙がある。しかし、この記録用シートは、水溶性樹脂を用い、顔料を殆ど配合していないので、高光沢を有するものの、インクの吸収性が悪く、また、耐水性が劣るので、高濃度のインクジェット記録を行なうことに適していない。
また、電子線硬化型の樹脂を用いて高光沢の記録用紙を提供することも発案されているが、この場合もインクの吸収性が悪く、高濃度のインクジェット記録を行なうことができない。
【0004】
上記、樹脂を主成分としたインクジェット記録用シートとは別に、顔料を主成分とし、キャスト法により製造されたインクジェット記録用シートがある。
キャスト法は、光沢性を有する印刷用紙の製造方法として知られている。支持体の表面に板状顔料を有する塗工液を塗工し、湿潤状態或いは再湿潤状態の塗工層を、鏡面を有する加熱ドラム面に圧着、乾燥することにより、その鏡面を写し取る方法である。得られた印刷用紙は他の塗工紙に比較して高い表面光沢とより優れた表面平滑性を有し、優れた印刷効果が得られることから、高級印刷物等の用途に専ら利用されている。
【0005】
しかし、印刷用紙で使用されているキャスト法をインクジェット記録用シートに利用した場合、種々の難点を抱えている。すなわち、従来の印刷用のキャスト塗工紙は、その塗工層を構成する顔料組成物中の接着剤等の成膜性物質がキャストコーターの鏡面ドラム表面を写し取ることにより高い光沢を得ている。しかし、この成膜性物質の存在によって塗工層の多孔性が失われ、インクジェット記録時のインクの吸収を極端に低下させる等の問題を抱えている。そして、このインク吸収性を改善するには、キャスト塗工層がインクを容易に吸収できるようにポーラスにしてやることが重要であり、そのためには成膜性を減ずることが必要となるが、成膜性物質の量を減らすことにより、結果として白紙光沢が低下する。以上の如く、キャスト塗工紙の表面光沢とインクジェット記録適性の両方を同時に満足させることが極めて困難であった。
【0006】
この問題を解決する方法として、顔料および接着剤を主成分とする記録層を設けた原紙上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる40℃以上のガラス転移温度を有する共重合体を主成分とする塗工液を塗工してキャスト用塗工層を形成せしめ、該キャスト用塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げることにより、優れた光沢とインク吸収性を兼ね備えるインクジェット記録用キャスト紙が得られること、および記録層にカチオン樹脂を配合することにより耐水性や印字発色濃度が優れることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
近年、インクジェット記録の高速化、記録画像の高精細化、フルカラー化といった用途の拡大に伴い、さらに強光沢かつ高画質、高記録濃度の品質が望まれている。このような要求を達成するために、基材に2次粒子の平均粒子径が1μm以下である凝集体微細粒子および接着剤を含有するインクジェット記録層を少なくとも2層設け、且つインクジェット記録層の表層がキャスト塗工層であるインクジェット記録用シートが提案され、またキャスト塗工層に離型剤としてポリエチレンワックスを配合できることも開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかし、上記技術では、視覚的に、銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な高光沢、記録品質が十分達成されていない。例えば、特許文献2で得られるインクジェット記録用紙は、75°観察の光沢は高い値を示すものの、視覚的にみると、写真用印画紙と比べると劣るものであった。
このような課題に鑑み、本発明者らは、下塗り層、記録層、光沢層の三層構造を有し、光沢層にコロイダルシリカを含有するインクジェット記録用紙が写真用印画紙に近い記録用紙となることを見出し、先に出願した(特願平2002−366457号)。
発明者等は、更に研究を進めた結果、ビーディングという記録部分の濃度ムラが発生する場合があることを見出した。
【0009】
一方、ポリエチレンワックスは、インクジェット記録用シートの滑り性やブロッキングを防止するために使用することは知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。しかし、これらには、ポリエチレンワックスを用いることにより、高光沢性が得られること、像鮮明度が高くなること、およびビーディングと呼ばれる印字濃度むらを改善されることについて開示するものではない。
【0010】
【特許文献1】
特開平7−89220号公報(2頁、5頁
【0011】)
【特許文献2】
特開2001−10220号公報(
【0012】)
【特許文献3】
特開平9−300811号公報(
【0013】、比較例4)
【特許文献4】
特開2002−172853号公報(特許請求の範囲)
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意研究を行なった結果、記録層上に、平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を形成することにより、高光沢であり、像鮮明度も高く、且つビーディングを防止すること見出したのである。
【0015】
本発明は、次のとおりである。
(1)基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルシリカの凝集防止剤、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
コロイダルシリカの凝集防止剤は、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
(2)基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、融点100℃以上、平均粒子径500nm以下の有機微粒子、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
上記有機微粒子は、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
(3)基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
(4)ポリエチレンワックスを、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有する(3)記載のインクジェット記録用シートである。
【0016】
(5)光沢層の接着剤は、ガラス転移温度が45℃以上である(1)〜(4)のいずれかの一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(6)光沢層が光沢ロールにより形成されている(1)〜(5)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(7)光沢層が、光沢ロールとプレスロールのニップにより塗工されている(1)〜(6)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
【0017】
(8)記録層の顔料が、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下である(1)〜(7)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(9)前記基材と前記記録層の間に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の下塗り層を設けた(1)〜(8)のいずれかに一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(9)光沢層表面の20°光沢度(JIS−P8142)が35%以上である(1)〜(8)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(10)離型剤が、アルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩である(1)〜(9)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
【0018】
更に、本発明は、次のような実施態様も包含する。
(11)基材と、前記基材上に、カチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を有し、該光沢層は、光沢層塗液の塗布および乾燥を、光沢ロールと、光沢ロールに接するように設けられたプレスロールによりプレスして行なうこと、を特徴とするインクジェット記録用シートの製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本第1発明は、基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に、(1)平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、(2)コロイダルシリカの凝集防止剤、(3)接着剤、および(4)離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
本第2発明は、基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に、(ア)平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、(イ)融点100℃以上、平均粒子径500nm以下の有機微粒子、(ウ)接着剤、および(エ)離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
本第3発明は、基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に、(a)平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、(b)ポリエチレンワックス、(c)接着剤、(d)離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【0020】
本第1発明、本第2発明、および本第3発明(以下、まとめて単に本発明ともいう。)において、基材と記録層の間に、下塗り層を形成してもよい。
本発明でいう下塗り層は、主にインクジェットインク成分中の溶媒を速やかに吸収する層である。記録層は、インクジェットインク成分中の着色剤すなわち染料を定着させる層である。インク量が多くなると、着色剤の一部は下塗り層あるいは基材中に定着される場合もありうる。光沢層は、インクジェットインクを速やかに通過させると共に、光沢を発現する層であり、好ましくは銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な光沢を発現する層である。
【0021】
「基材」
本発明で用いる基材としては、特に限定されるものではなく、透気性支持体、非透気性支持体が使用できる。透気性支持体としては、一般の塗工紙に使用される酸性紙、あるいは中性紙等の紙基材が適宜使用される。また透気性を有する樹脂シート類も用いることができる。
【0022】
紙基材は、木材パルプと必要に応じ含有する顔料を主成分として構成される。木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS P−8121)程度である。紙送り歯車の傷を軽減するには叩解度を進めるほうが望ましいが、用紙に記録した場合にインク中の水分によって起こる用紙のボコツキや記録画像のにじみは、叩解を進めないほうが良好な結果を得る場合が多い。従ってフリーネスは300〜500ml程度が好ましい。
【0023】
顔料は不透明性等を付与したり、インク吸収性を調整する目的で配合し、炭酸カルシウム、焼成カオリン、シリカ、酸化チタン等が使用できる。特に焼成カオリン、シリカ、ゼオライトは、インク中の溶媒を吸収するため、好適に使用される。この場合、配合量は1〜20質量%程度が好ましい。多すぎると紙力が低下するおそれがある。また、前述の紙送り歯車の傷も付き易くなる。従って灰分として3〜15質量%程度がさらに好ましい。
【0024】
助剤としてサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂等を塗布・含浸させ、表面強度、サイズ度等を調整できる。サイズ度(100g/m2の紙として)は1〜250秒程度が好ましい。サイズ度が低いと、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる場合があり、高いとインク吸収性が低下したり、印字後のカールやコックリングが著しくなる場合がある。より好ましいサイズ度の範囲は4〜230秒、更に好ましくは30〜210秒である。基材の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m2程度である。
【0025】
非透気性支持体としては、樹脂フィルム、不織布等、あるいは樹脂フィルムをコート紙や上質紙等と接着剤を介して貼合せたもの、または紙に樹脂をラミネートしたもの等の樹脂被覆紙が使用される。中でも、樹脂フィルムあるいは樹脂をラミネートした紙を使用することが、耐水性に優れる。
【0026】
樹脂フィルムとしては、熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、ナイロン等が例示できる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリシクロヘキセンテレフタレート等が、またオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体からなるもの、またはこれらを主成分とするものを例示できる。また、これらの熱可塑性樹脂を1種または2種以上適宜選択して使用でき、他の熱可塑性樹脂としてポリスチレン、アクリル酸エステル共重合体等を混合して使用することもできる。
【0027】
これら熱可塑性樹脂を縦方向および/または横方向に延伸して成形したフィルムも使用できる。この他、この熱可塑性樹脂中に無機質微細粉末を混合してフィルムを形成し、これを例えば1軸延伸処理または2軸延伸処理して紙状の層としてもよい。本発明においては、このようなフィルムを複数層積層して得られた多層フィルムを支持体として使用し、例えば、基材層と両面または片面に紙状の層を設けた2〜3層フィルム、または更にその少なくとも片面の紙状の層上に表面層を形成した3〜5層フィルム等を使用してもよい。このように熱可塑性樹脂を紙状の層としたものは一般に合成紙として知られている。
【0028】
また、樹脂をラミネートした紙としては、熱可塑性樹脂を押出しラミネートした紙が例示でき、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂が例示できる。熱可塑性樹脂中には、二酸化チタンなどの顔料をはじめ、染料や紫外線吸収剤などを適宜配合することができる。
【0029】
基材は、その上に形成される記録層、光沢層の形成方法、或いは、使用される用途などに応じて、上記例示の基材の中から適宜選択使用できる。勿論、蛍光染料、蛍光顔料などにより色目を調節したり、帯電防止層、アンカー層、バリヤー層を付与してもよく、コロナ処理などを施しても構わない。
【0030】
「下塗り層」
本発明でいう下塗り層は、主にインクジェットインク成分中の溶媒を速やかに吸収する層である。
基材上に設けられる下塗り層は、顔料と接着剤を主成分として含有する。下塗り層中の顔料は、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料を1種もしくはそれ以上、併用することができる。これらの中でも、インク吸収性の高い無定形シリカ、アルミナ、ゼオライトを主成分として含有させるのが好ましい。
【0031】
これらの顔料の平均粒子径(凝集顔料の場合は凝集粒子径)は1〜10μm程度が好ましく、より好ましくは2〜10μmである。1μm未満であるとインク吸収速度向上の効果に乏しくなり、10μmを超えて大きいと光沢層を設けた後での平滑性や光沢が不十分となるおそれがある。異なる平均粒子径を併用することも可能である。
なお、インク吸収性を調整したり、下塗り層上に塗工する塗工液の浸透を制御する目的で、副成分として平均粒子径の小さい顔料を配合することができる。この様な顔料としてはコロイダルシリカ、アルミナゾルが挙げられる。
【0032】
下塗り層の接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等、一般に塗工紙用として用いられている従来公知の接着剤が単独、あるいは併用して用いられる。
【0033】
顔料と接着剤の配合割合は、その種類にもよるが、一般に顔料100質量部に対し接着剤1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で調節される。その他、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。下塗り層中には、蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
【0034】
下塗り層中にはカチオン性化合物が実質的に存在しないのが良い。実質的に存在しないとは、カチオン性界面活性剤等を助剤的に微量添加することは除外される。記録層のみにカチオン性化合物を配合し、光沢層および下塗り層には実質的にカチオン性化合物を含有させない態様では光沢が極めて優れ、かつ、印字濃度が高くなる。
【0035】
下塗り層中には、コロイダルシリカ及び/またはエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂、或いは、コロイダルシリカとエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂との複合体を含有させると、光沢がより発揮される。この理由は必ずしも明らかではないが、前記重合体樹脂或いは複合体の存在が、下塗り層のインク吸収性を維持したまま、記録層用塗工液の下塗り層への浸透を抑制するためと推定される。更にその理由は不明であるがキャスト方式により光沢層を設ける際に、鏡面ドラムからの離型性が向上する傾向がある。
【0036】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のメタクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレン、ブタジエン等のエチレン性モノマーを重合して得られる重合体が挙げられる。なお、重合体は、必要に応じて2種類以上のエチレン性モノマーを併用した共重合体であっても良いし、さらに、これら重合体あるいは共重合体の置換誘導体でも良い。因みに、置換誘導体としては、例えばカルボキシル基化したもの、またはそれをアルカリ反応性にしたもの等が例示される。
【0037】
コロイダルシリカとの複合化は、上記のエチレン性モノマーをシランカップリング剤等とコロイダルシリカの存在下で重合させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体にする、あるいは必要に応じシラノール基等で変性した重合体樹脂とコロイダルシリカを反応させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体にする方法が挙げられる。上記複合体の重合体成分のガラス転移温度(Tg)は40℃以上が好ましく、50〜100℃の範囲がより望ましい。ガラス転移温度が低いと乾燥の際に成膜が進みすぎるためか、インクの吸収が遅くなりにじみが発生するおそれがある。さらに、その理由は必ずしも明らかではないが、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の場合、キャスト方式により光沢層を設ける際の鏡面ドラムからの離型性がより向上する傾向がある。
【0038】
上記材料をもって構成される下塗り層用塗工液は、一般に固形分濃度を5〜50質量%程度に調整し、紙基材上に乾燥質量で2〜100g/m2 、好ましくは5〜50g/m2 程度、更に好ましくは10〜20g/m2 程度になるように塗工する。塗工量が少ないと、インク吸収性改良効果が充分に得られなかったり、光沢層を設けた際に光沢が十分に出ないおそれがあり、多いと、印字濃度が低下したり、光沢層用塗工層の強度が低下し粉落ちや傷が付き易くなる場合がある。
【0039】
下塗り層用塗工液は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知公用の塗工装置により塗工、乾燥される。さらに、必要に応じて下塗り層の乾燥後にスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。
【0040】
「記録層」
本発明は、基材上に、或いは基材上に設けた上記した顔料と接着剤を含有する下塗り層上に記録層を設ける。記録層は、インクジェットインク成分中の着色剤すなわち染料を定着させる層である。インクジェット記録用インクの着色剤は、通常アニオン性であるため、記録層には、インク中の着色剤成分を定着させる目的で、カチオン性化合物を配合する。本発明の記録層は、カチオン性化合物の他に、顔料と接着剤を少なくとも含有する層である。
【0041】
本発明は、記録層に使用するカチオン性化合物としては、インクジェット記録用シートで染料耐水化のために用いられる公知のカチオン性化合物が使用できる。例えば、1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、2)第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、3)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、7)ジアリルジメチルアンモニウム−S02重縮合体、8)ジアリルアミン塩・S02重縮合体、9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、11)アリルアミン塩の共重合体、12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等のカチオン性化合物等が例示できる。
【0042】
記録層に使用する顔料としては、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等の中から1種もしくはそれ以上、併用することができる。
中でも、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下である顔料の使用が好ましく、気相法シリカがより好ましい。
【0043】
シリカとしては、窒素吸着法による比表面積が300m2/g〜1000m2/gで、細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gであるシリカ微粒子がコロイド状に分散した液をシード液とし、該シード液に対しアルカリの存在下、活性ケイ酸水溶液及び/又はアルコキシシランからなるフィード液を少量ずつ添加してシリカ微粒子を成長させて、窒素吸着法による比表面積が100m2 /g〜400m2/g、平均二次粒子径が20nm〜300nm、かつ細孔容積が0.5ml/g〜2.0ml/gのシリカ微粒子がコロイド状に分散したシリカ微粒子分散液を用いても良い。
【0044】
前記顔料は、1次粒子が凝集した2次粒子である。前記顔料の平均2次粒子径は、好ましくは10nm以上1000nm以下であり、より好ましくは10nm以上800nm以下、更に好ましくは10nm以上500nm以下、なお好ましくは10nm以上300nm以下、最も好ましくは15nm以上150nm以下である。
平均2次粒子径が1000nmを越えると、記録層の透明性が低下し、記録層中に定着された着色剤の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られない場合いがある。また、平均2次粒子径が10nm未満であると、インク吸収性が低下し、にじみ等が発生し、所望とする画像品位を得ることができないおそれがある。
【0045】
2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径は3nm以上40nm以下が好ましい。より好ましくは5nm以上30nm以下、さらに好ましくは7nm以上20nm以下である。記録層の顔料粒子径が小さいため透明性に優れ、発色濃度が極めて高い画像が得られる。
平均1次粒子径が3nm未満になると1次粒子間の空隙が著しく小さくなり、インク中の溶剤や着色剤を吸収する能力が低下し、所望とする画像品位を得ることが出来ないおそれがある。また、平均1次粒子径が40nmを越えると、凝集した2次粒子が大きくなり、記録層の透明性が低下し、記録層中に定着された着色剤の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られないおそれがある。
【0046】
前記顔料と前記カチオン性化合物の配合比は、質量比で顔料100質量部に対してカチオン性化合物が1〜30質量部が好ましく、さらに好ましくは、3〜20質量部である。カチオン性化合物が1質量部より少ないと、印字濃度向上の効果が得られにくく、30質量部より多いと、余分なカチオン性化合物が空隙を塞いでしまい、インク吸収性が阻害され、画像のにじみやムラが発生するおそれもある。
【0047】
カチオン性化合物と顔料を配合する際、前記顔料に混合すれば良いが、特に顔料が微細シリカの場合は、微細シリカは一般にアニオン性であり、混合の際に微細シリカ粒子の凝集が起こる場合がある。
この場合、一般的に市販されている非晶質シリカ(数ミクロンの2次粒子径を有する)を機械的手段により強い力を与えて微細粒子に粉砕する際、粉砕処理前の非晶質シリカにカチオン性物質を一緒に混合分散してから機械的手段により分散・粉砕するか、あるいは微細化したシリカ2次粒子分散体にカチオン性物質を混合し、一旦増粘・凝集させた後、再度機械分散・粉砕する方法等をとることにより、前記特定の粒子径に調整することができる。このようにして処理した顔料はカチオン性物質が一部結合した構造をとり、安定して分散したスラリーとなっているためか、更に別途カチオン性化合物を追加配合しても凝集し難いという特徴を有する。本発明では、このようなカチオン性物質で処理した微細顔料をカチオン性微細顔料という。
【0048】
前記顔料と前記カチオン性物質の混合物、もしくは凝集物を分散あるいは粉砕するには、ホモミキサー、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、アルティマイザー、ナノマイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー、クレアミックス等が用いられる。
平均2次粒子径が1000nmを超える場合は、ホモミキサーなどの弱い機械力で処理すれば十分分散するが、平均2次粒子径を1000nm以下に粉砕するにはより強い機械力を加えることが効果的であり、圧力式分散方法を用いることが好ましい。
【0049】
本発明において圧力式分散方法とは、原料粒子のスラリー状混合物をオリフィス中、高圧で連続的に通過させて高圧粉砕する方法であり、処理圧力は19.6×106 〜343.2×106 Pa(200〜3500kgf/cm2 )、より好ましくは49.0×106 〜245.3×106 Pa(500〜2500kgf/cm2 )、さらに好ましくは、98.1×106 〜196.2×106 Pa(1000〜2000kgf/cm2 )である。上記高圧粉砕により処理することで良好な分散あるいは粉砕が達成できる。さらに高圧でオリフィスを通過したスラリー状混合物を対向衝突させることによる分散、或いは粉砕方式を用いることがより好ましい。対向衝突による方法は、分散液を加圧することによって入口側に導き、分散液を二つの通路に分岐してさらに流路をオリフィスにより狭めることによって流速を加速して対向衝突させて粒子を衝突させて粉砕する。分散液を加速したり衝突させたりする部分を構成する材料としては、材料の摩耗を抑えるなどの理由からダイヤモンドが好ましく用いられる。
高圧粉砕機としては、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、ナノマイザーが用いられ、特に高速流衝突型ホモジナイザーとしてマイクロフルイタイザー、ナノマイザ−が好ましい。
【0050】
このようにして処理されたカチオン性微細顔料は、一般に固形分濃度が5〜20質量%程度の水分散体(スラリーあるいはコロイド粒子)として得られる。本発明でいう平均粒子径とは、電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒子径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し、平均したもの。「微粒子ハンドブック」( 朝倉書店) のP52、1991年等に記載されている)。
【0051】
このようなカチオン性微細顔料を含有する記録層を設けること、インクがより均一に吸収される結果、にじみが少なく均一な発色が得られ、発色ムラの無い優れた画像が得られる。カチオン性微細顔料中の顔料としては、シリカ、アルミノシリケートが好ましく、より好ましくはシリカであり、さらに好ましくは、ヒュームドシリカである。
【0052】
カチオン性微細顔料に使用するカチオン性物質としては、特に限定するものではなく、例えば、1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、2)第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、3)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、7)ジアリルジメチルアンモニウム−S02重縮合体、8)ジアリルアミン塩・S02重縮合体、9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、11)アリルアミン塩の共重合体、12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等のカチオン性物質等が挙げられる。
【0053】
中でも、好ましいカチオン性物質としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩、ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体および5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが、発色性に優れ、にじみが少なく、均一な発色が得られ、発色ムラの無い優れた画像が得られるので好ましい。
【0054】
なお、カチオン性微細顔料を使用する場合、記録層中の全顔料中におけるカチオン性微細顔料の比率が50質量%以上であると、記録層の透明性が優れるので好ましい。全顔料中のカチオン性微細顔料の比率が50質量%未満になると記録層の透明性が低下し、印字濃度等の画像品位が低下する場合もある。
【0055】
記録層は、顔料とカチオン性化合物を配合すると塗料調節の際、凝集などの問題が生じ易く、上記カチオン性微細顔料と接着剤のみで形成すると、光沢層を形成する際に、光沢層が部分的にロールに残ってしまうという、いわゆるピックが生じ易くなるので、記録層は、カチオン性化合物とカチオン性微細顔料を併用することにより、色調も優れたインクジェット記録用シートが、安定して製造することができる。
【0056】
本発明の記録層には、カチオン性化合物を配合し、または、カチオン性化合物とカチオン性微細顔料を併用するので、記録層で使用する接着剤はカチオン性若しくはノニオン性のものが記録層塗工液の安定性が良いため好ましい。
接着剤の配合量は、顔料100質量部に対し1〜200質量部、より好ましくは5〜100質量部の範囲で調節される。接着剤の量が少ないと、記録層の強度が弱くなり、粉落ちが発生する場合がある。逆に接着剤の量が多いと、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる場合がある。ここで、光沢層用塗工液中の接着剤の配合量(顔料100質量部に対する)を記録層より多くすると、表面の強度とインク吸収性のバランスに優れたものが得られ易く、好ましい。
【0057】
接着剤としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(例えばカチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール)等のなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体等の水溶性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス等の水分散性樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が単独あるいは併用して使用される。水性ポリウレタン樹脂は、ウレタンエマルジョン、ウレタンラテックス、ポリウレタンラテックス等とも通称されている。ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応から得られるものである。比較的多数のウレタン結合および尿素結合を含む高分子化合物である。
【0058】
記録層用塗工液を、基材上に、或いは基材に設けた下塗り層上に塗工する場合は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗工装置が使用できる。
記録層の塗工量(合計)は、乾燥固形分で1〜50g/m2は好ましく、1〜30g/m2より好ましく、1〜10g/m2。がさらに好ましい。1g/m2 未満の場合は、印字の際にじみが発生しやすくなり、50g/m2を越える場合は、印字濃度が不十分となり易い。なお、記録層は複数層形成しても構わない。
【0059】
「光沢層」
本第1発明は、上記記録層上に、平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルシリカの凝集防止剤、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を設ける。
本第2発明は、上記記録層上に、平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、融点100℃以上、平均粒子径500nm以下の有機微粒子、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を設ける。
本第3発明は、上記記録層上に、平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を設ける。
【0060】
本発明の光沢層は、インクジェットインクを速やかに通過させると共に、銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な光沢を発現する層である。
本発明の光沢層で使用するコロイダルシリカは、平均粒子径が、3nm以上100nm以下であり、5nm以上90nm以下が好ましく、10nm以上80nm以下がより好ましく、20nm以上70nm以下がさらに好ましい。因みに平均粒子径が3nm未満の場合は、インクの吸収性が低下し、また、平均粒子径が100nmを超える場合は、光沢性および印字濃度が低下する。
【0061】
光沢層の接着剤は、例えば、ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル系重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂および水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で従来公知の各種接着剤が単独、あるいは併用して使用できる。
【0062】
光沢層に使用される接着剤のガラス転移温度は、−20℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上であり、得られる光沢層は、鏡面ドラムからの離型性に優れ、インクジェットプリンターのインクの吸収性も良好である。接着剤のガラス転移温度は45℃以上であることがさらに好ましい。このガラス転移温度に格別の上限はないが、一般に150℃以下であることが好ましい。150℃を超えると、鏡面ドラムからの離型性やインクの吸収性はいっそう優れたものになるが、逆に光沢が出にくくなり、また光沢層が脆くなるため、断裁時にダストが多くなったり、折り目から光沢層が欠けたりする、強度不足によるトラブルが発生する場合がある。したがって、ガラス転移温度の異なる、2種類以上の接着剤を組み合わせることも、求められる特性によっては、しばしば効果的である。この理由は定かではないが、ガラス転移温度の低い接着剤と高い接着剤が均一に混合されるのではなく、あたかも海/島構造を構成し、それぞれの接着剤の特徴を一層効果的に発揮するためと推測される。2種類以上の接着剤を組み合わせる場合、好ましくは少なくとも一方はガラス転移温度−20℃以上の樹脂とする。
【0063】
光沢層中の接着剤と顔料との組成比(固形分質量比)は、顔料100質量部に対して、好ましくは、3〜150質量部の範囲であり、より好ましくは、7〜100質量部の範囲であり、さらに好ましくは、10〜70質量部の範囲である。
接着剤の比率が150質量部を超えると、印字濃度が低下する傾向があり、3質量部未満では光沢性が低下する傾向にある。
【0064】
本第1発明は、光沢層にコロイダルシリカの凝集防止剤を配合する。コロイダルシリカの凝集防止剤を配合すると、画像を記録した際のビーディングを抑止するとともに、光沢性も向上する。
おそらく、ビーディングは、カチオン性化合物を含有する記録層上に、アニオン性であるコロイダルシリカを含有する塗液を塗布した際に、コロイダルシリカが部分的に凝集してしまうので、記録をした際に、均一にインクが記録層に浸透せず、結果として画像のムラであるビーディングが生じるものと推測される。コロイダルシリカの凝集防止剤を配合することにより、光沢層のコロイダルシリカの凝集を防ぎ、その結果ビーディングを無くすることができたもの思われる。
コロイダルシリカの凝集防止剤としては、カチオン性化合物を含有する記録層上に塗工した際にコロイダルシリカの凝集を防止する作用を有する材料であれば特に限定されず、例えばポリエチレンワックスが使用できる。コロイダルシリカの凝集防止剤は、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
【0065】
本第2発明は、光沢層に融点100℃以上且つ平均粒子径500nm以下の有機微粒子を配合する。このような有機微粒子を配合すると、画像を記録した際のビーディングを抑止するとともに、光沢性も向上する。
おそらく、ビーディングは、カチオン性化合物を含有する記録層上に、アニオン性であるコロイダルシリカを含有する塗液を塗布した際に、コロイダルシリカが部分的に凝集してしまうので、記録をした際に、均一にインクが記録層に浸透せず、結果として画像のムラであるビーディングが生じるものと推測される。
有機微粒子は融点が100℃以上なので、通常の塗工乾燥では溶融することはない。従って、コロイダルシリカと有機微粒子が共存の状態で光沢層に配置されると、コロイダルシリカの凝集を防いでいるのではないかと思われる。また、平均粒子径500nm以下の有機微粒子であるから、光沢性を妨げることも殆どない。
このような有機微粒子としては、特に限定されず、例えばポリエチレンワックスが使用できる。有機微粒子は、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
【0066】
本第3発明は、上記記録層上に平均粒子径が3nm以上100nm以下のコロイダルシリカとポリエチレンワックスと接着剤と離型剤を含有する光沢層を設ける。このようなポリエチレンワックスを配合すると、画像を記録した際のビーディングを抑止するとともに、光沢性も向上する。
おそらく、ビーディングは、カチオン性化合物を含有する記録層上に、アニオン性であるコロイダルシリカを含有する塗液を塗布した際に、コロイダルシリカが部分的に凝集してしまうので、記録をした際に、均一にインクが記録層に浸透せず、結果画像のムラであるビーディングが生じるものと推測される。ポリエチレンワックスを配合することにより、コロイダルシリカの凝集を防ぐためか、ビーディングが改善される。ポリエチレンワックスは、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
【0067】
光沢層用塗工液を記録層上に塗工する場合、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗工装置が使用できる。
【0068】
本発明において、光沢層はキャスト方式により形成された層である。キャスト方式とは、光沢層を、平滑性を有する鏡面ドラム(鏡面仕上げした金属、プラスチック、ガラス等のドラム)、鏡面仕上げした金属板、プラスチックシートやフィルム(フィルム転写キャスト法、フィルムキャスト法)、ガラス板等上で乾燥し、平滑面を光沢層上に写し取ることにより、平滑で光沢のある光沢層表面を得る方法である。
【0069】
鏡面ドラムを用いて光沢層を設ける方法としては、上記の光沢層用塗工液を記録層上に塗工して、光沢層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト法)、あるいは一旦乾燥後再湿潤した後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト法)等が例示できる。また加熱された鏡面ドラムに直接光沢層用塗工液を塗工した後、基材側の記録層面に圧接、乾燥して仕上げる方法(プレキャスト法)も採用することができる。
【0070】
尚、鏡面ドラムの表面温度は40〜200℃程度が好ましく、70〜150℃がより好ましい。40℃未満であると乾燥に時間がかかり、光沢が低下しやすく、生産性が著しく低下しやすい。200℃を超えて高いとインクジェット記録用シート表面が荒れたり光沢が低下する場合がある。
【0071】
光沢層用塗工液を記録層上に塗工して、光沢層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる場合、光沢層用塗工液の浸透を抑える目的で、光沢層用塗工液の不動化を促進する方法を採ることもできる。
この方法としては例えば、(1)記録層中に光沢層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を配合しておく、(2)記録層上に光沢層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を塗工・含浸させる、(3)光沢層用塗工液を塗工した後、光沢層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を表面に塗工・含浸させる、(4)光沢層用塗工液中に塗工液が乾燥する過程で不動化が促進されるようなゲル化剤を配合しておくことが挙げられる。この様なゲル化剤としては、光沢層用塗工液中の接着剤の架橋剤である、ほう酸、ぎ酸等およびそれらの塩、アルデヒド化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。上記の方式の内、ウェットキャスト法を採用する場合、記録層上に光沢層用塗工液を塗工し、鏡面ドラム上に圧接し乾燥するまでの時間をなるべく短くした方が、光沢層用塗工液の浸透が抑えられるため、光沢が発現しやすい。
【0072】
さらに、記録層面が鏡面ドラムに圧接される直前に、圧接ロール(プレスロール)上の記録層面と鏡面ドラム間に光沢層用塗工液を付与して直ちに圧接する方式(ニップキャスト方式と称する)が、光沢層用塗工液の浸透が極力抑えられ、少ない塗工量で良好な光沢、印字品位が得られ易く、特に好ましい。
【0073】
また、フィルムなどの平滑な面に、光沢層用塗工液を塗布、乾燥した後、記録層と貼り合せる方法も採用できる。この方法は、ウェットキャスト方式などが適さない非透気性支持体にも適用することができる。
【0074】
光沢層用塗工液中には白色度、粘度、流動性等を調節するために、一般の印刷用塗工紙やインクジェット用紙に使用されている顔料、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤及び分散剤、増粘剤等の各種助剤が適宜添加される。
【0075】
なお、光沢層用塗工液中には、鏡面ドラム等からの離型性を付与する目的で、離型剤を添加する。離型剤としては、ステアリルリン酸カリウム等の高級アルキルリン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモミウム等の高級脂肪酸アルカリ塩類、レシチン、シリコーンオイル、シリコーンワックス等のシリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物が挙げられる。中でも、高級アルキルリン酸エステルのアルカリ金属が好ましい。
離型剤の配合量は、顔料100質量部に対し0.1〜50質量部、好ましくは0.3〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部の範囲で調節される。ここで配合量が少ないと、離型性改善の効果が得られにくく、多いと逆に光沢が低下したり、インクのハジキや記録濃度の低下が生じる場合がある。
【0076】
光沢層の塗工量は、乾燥固形分で0.1〜20g/m2程度、好ましくは0.2〜10g/m2 、より好ましくは0.5〜5g/m2である。ここで、0.1g/m2 未満では、十分な光沢が得られ難く、20g/m2 を越えて多いと、印字の際にじみが発生しやすくなったり、印字濃度が不十分となりやすい。光沢層をキャスト仕上げにより設けた後で、さらにスーパーキャレンダー等により平滑化処理を行うこともできる。
【0077】
光沢層表面の20°光沢度(JIS−P8142)は、印画紙の風合いを付与するためには、30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、45%以上が最も好ましい。
【0078】
幅2.0mmの光学くしを使用した時の反射60度写像性は、55%以上が好ましく、57%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、65%以上が最も好ましい。
【0079】
「実施態様」
なお、本発明のインクジェット記録用シートは、裏面に粘着剤層と剥離シートとを積層した所謂粘着加工、裏面に磁気記録層を形成する所謂磁気加工、カード基材に積層する所謂カード加工等、公知の加工を施すことも可能である。また、紙もしくはフィルムの両面に本発明のインクジェット記録用シートを積層し、両面をインクジェット記録可能にすることも可能である。本発明のインクジェット記録用シートの裏面に、宛先などを記述可能にした葉書も可能である。また、例えば、ポスター、チラシ、看板、化粧合板用化粧紙、床材、自動車の内装材等にも有効である。
【0080】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部および%は特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を示す。
【0081】
[紙基材の作製]
木材パルプ(LBKP;ろ水度440mlCSF)100部、填料(炭酸カルシウム/タルク=75/25)15部、市販サイズ剤(サイズパインE−50、荒川化学社製)0.04部、硫酸バンド(北陸化成社製)0.45部、澱粉(リョウセイKH−1000、王子コーンスターチ社製)1.00部、歩留向上剤88ppmよりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量170g/m2の紙基材を製造した。この紙基材のステキヒトサイズ度は140秒であった。また、厚さは195μmであった。
【0082】
[カチオン性微細顔料の調製]
市販気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均1次粒子径15nm、比表面積300m2/g、トクヤマ社製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均2次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。前記分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均2次粒子径300nmからなる8%分散液を調製し、カチオン性微細顔料を得た(平均1次粒子径は15nmのまま)。
【0083】
[シリカスラリー]
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−45、平均2次粒子径4.5μm、平均1次粒子径10nm、トクヤマ社製)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1、SMT社製)を用いて粉砕の操作を繰り返し(加圧49×106Pa)、シリカスラリーを得た。処理後の分散液中のシリカの平均2次粒子径(平均凝集粒子径)は50nm、固形分濃度は12%であった(平均1次粒子径は15nmのまま)。
【0084】
実施例1
紙基材上に、下記下塗り層用塗工液を、乾燥質量で9g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。次に、エアナイフコーター、乾燥装置を有するキャスト塗工装置を用い、先ず上記の下塗り層上に下記記録層用塗工液を、乾燥質量で4g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工して、乾燥装置で乾燥した。続いて、下記光沢層用塗工液の塗布、乾燥が、光沢ロールに接するようにプレスロールでプレスしてなされ、インクジェット記録用シートを得た。このときの光沢層の塗工量は、固形分質量で2g/m2であった。
【0085】
[下塗り層用塗工液]
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−30、トクヤマ社製、平均2次粒子径3.2μm)100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA R1115、クラレ社製)20部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA145、クラレ社製)5部、蛍光染料(商品名:WhitexBPSH、住友化学社製)2部。塗液濃度は17.5%に調整した。
[記録層用塗工液]
上記カチオン性微細顔料100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)10部からなる塗工液を粘度が50〜300cpsになるように調整した。塗液濃度は11%に調整した。
[光沢層用塗工液]
ガラス転移温度100℃のアクリルエマルジョンとコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(商品名:アクアブリッド906、ダイセル社製、アクリルエマルジョンとコロイダルシリカは質量比で20:80、コロイダルシリカの平均粒子径20〜30nm、エマルジョン粒子径40nm)100部、上記シリカスラリー2.5部、ポリエチレンワックス(商品名:クリーテックスPN−144、粒子径500nm、融点110℃、日新化学研究所社製)、カゼイン5部、増粘剤(商品名:ビスマルYK−1S、東邦化学工業社製)6部、離型剤(ステアリン酸)5部。塗液濃度は6%に調整した。
【0086】
実施例2
実施例1の光沢層用塗工液において、離型剤(ステアリン酸)5部に代えて離型剤(ステアリルリン酸カリウム、商品名:ウーポール1800、松本油脂社製)2部に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0087】
比較例1
実施例1の光沢層用塗工液において、ポリエチレンワックス(商品名:クリーテックスPN−144、粒子径50nm、融点120℃、日新化学研究所社製)を用いなかった以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0088】
実施例および比較例で得られたインクジェット記録用紙のインクジェット記録適性として画像記録部のビーディング、インク乾燥性、印字濃度、印字のにじみと、光沢度、写像性および目視外観を以下に示す方法で評価した。評価結果は、表1に示した。
【0089】
[インクジェット記録適性]
(ビーディング)
インクジェットプリンタPM950C(エプソン社製)を用いて、シアンインクとマゼンタインクの2色混合の60%階調濃度(Adobe(R) photoshop.(R) ver5.0.1使用)の印字を行ない、濃淡ムラを目視にて評価した。
○:濃度ムラが確認できない。
△:印字ムラがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字ムラが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
【0090】
(インク乾燥性)
インクジェットプリンタPM950C(エプソン社製)を用いて、シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字を行ない、ベタ印字部につきインク乾燥性を評価した。
◎:印字直後に指で触れてもまったく汚れない。
○:印字直後に指で触れるとわずかに汚れるが問題とならないレベル。
△:印字直後に指で触れると若干汚れ、実用上やや問題となるレベル。
×:印字直後に指で触れると汚れが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
【0091】
(インクジェット記録後の印字濃度)
インクジェットプリンタPM950C(エプソン社製)を用いて、黒ベタ印字を行ない、黒ベタ印字部分の印字濃度をマクベス反射濃度計RD−914(マクベス社製)で測定。
【0092】
(印字のにじみ)
インクジェットプリンタBJS700(キヤノン社製)を用いて印字を行ない、印字のにじみを評価した。
◎:印字のにじみは全く認められず、優れたレベル。
○:印字のにじみがわずかに認められるが良好なレベル。
△:印字のにじみがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字のにじみが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
【0093】
〔光沢度〕
JIS−P8142に準じてインクジェット記録用紙表面の20°光沢を測定した。
【0094】
〔写像性〕
写像性測定機ICM−IDP(スガ試験機社製)を用いて、インクジェット記録用紙表面の幅2.0mmの光学くしを使用して反射60度写像性を測定した。
【0095】
〔目視外観〕
インクジェット記録用紙表面の光沢感、平滑感を目視により評価した。
◎:極めて優れる。
○:優れる。
△:やや劣る。
×:劣る。
【0096】
【表1】
【0097】
【発明の効果】
表1から明らかなように、本発明の構成により得られたインクジェット記録用紙は、ビーディング、インク乾燥性、印字濃度および印字のにじみ等のインクジェット記録適性に優れ、かつ、光沢度、写像性および目視外観等にも優れた極めて実用性の高いものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用シートに関し、詳しくは、高光沢であり、像鮮明度に優れ、印字濃度が高く、更に、ビーディングを生じないインクジェット記録用シートを提供する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
インクジェットプリンタによる記録は、騒音が少なく、高速記録が可能であり、かつ、多色化が容易なために多方面で利用されている。インクジェット記録用シートとしては、インク吸収性に富むように工夫された上質紙や、表面に多孔性顔料を塗工した塗工紙等が適用されている。ところで、これらの用紙はすべて表面光沢の低い、いわゆるマット調のインクジェット記録用シートが主体であるため、表面光沢の高い、優れた外観を持つインクジェット記録用シートが要望されている。
【0003】
表面光沢を有するインクジェット記録用シートとしては、水溶性樹脂を主成分としたインクジェット記録層を形成したポリマーコート光沢紙がある。しかし、この記録用シートは、水溶性樹脂を用い、顔料を殆ど配合していないので、高光沢を有するものの、インクの吸収性が悪く、また、耐水性が劣るので、高濃度のインクジェット記録を行なうことに適していない。
また、電子線硬化型の樹脂を用いて高光沢の記録用紙を提供することも発案されているが、この場合もインクの吸収性が悪く、高濃度のインクジェット記録を行なうことができない。
【0004】
上記、樹脂を主成分としたインクジェット記録用シートとは別に、顔料を主成分とし、キャスト法により製造されたインクジェット記録用シートがある。
キャスト法は、光沢性を有する印刷用紙の製造方法として知られている。支持体の表面に板状顔料を有する塗工液を塗工し、湿潤状態或いは再湿潤状態の塗工層を、鏡面を有する加熱ドラム面に圧着、乾燥することにより、その鏡面を写し取る方法である。得られた印刷用紙は他の塗工紙に比較して高い表面光沢とより優れた表面平滑性を有し、優れた印刷効果が得られることから、高級印刷物等の用途に専ら利用されている。
【0005】
しかし、印刷用紙で使用されているキャスト法をインクジェット記録用シートに利用した場合、種々の難点を抱えている。すなわち、従来の印刷用のキャスト塗工紙は、その塗工層を構成する顔料組成物中の接着剤等の成膜性物質がキャストコーターの鏡面ドラム表面を写し取ることにより高い光沢を得ている。しかし、この成膜性物質の存在によって塗工層の多孔性が失われ、インクジェット記録時のインクの吸収を極端に低下させる等の問題を抱えている。そして、このインク吸収性を改善するには、キャスト塗工層がインクを容易に吸収できるようにポーラスにしてやることが重要であり、そのためには成膜性を減ずることが必要となるが、成膜性物質の量を減らすことにより、結果として白紙光沢が低下する。以上の如く、キャスト塗工紙の表面光沢とインクジェット記録適性の両方を同時に満足させることが極めて困難であった。
【0006】
この問題を解決する方法として、顔料および接着剤を主成分とする記録層を設けた原紙上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる40℃以上のガラス転移温度を有する共重合体を主成分とする塗工液を塗工してキャスト用塗工層を形成せしめ、該キャスト用塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げることにより、優れた光沢とインク吸収性を兼ね備えるインクジェット記録用キャスト紙が得られること、および記録層にカチオン樹脂を配合することにより耐水性や印字発色濃度が優れることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
近年、インクジェット記録の高速化、記録画像の高精細化、フルカラー化といった用途の拡大に伴い、さらに強光沢かつ高画質、高記録濃度の品質が望まれている。このような要求を達成するために、基材に2次粒子の平均粒子径が1μm以下である凝集体微細粒子および接着剤を含有するインクジェット記録層を少なくとも2層設け、且つインクジェット記録層の表層がキャスト塗工層であるインクジェット記録用シートが提案され、またキャスト塗工層に離型剤としてポリエチレンワックスを配合できることも開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかし、上記技術では、視覚的に、銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な高光沢、記録品質が十分達成されていない。例えば、特許文献2で得られるインクジェット記録用紙は、75°観察の光沢は高い値を示すものの、視覚的にみると、写真用印画紙と比べると劣るものであった。
このような課題に鑑み、本発明者らは、下塗り層、記録層、光沢層の三層構造を有し、光沢層にコロイダルシリカを含有するインクジェット記録用紙が写真用印画紙に近い記録用紙となることを見出し、先に出願した(特願平2002−366457号)。
発明者等は、更に研究を進めた結果、ビーディングという記録部分の濃度ムラが発生する場合があることを見出した。
【0009】
一方、ポリエチレンワックスは、インクジェット記録用シートの滑り性やブロッキングを防止するために使用することは知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。しかし、これらには、ポリエチレンワックスを用いることにより、高光沢性が得られること、像鮮明度が高くなること、およびビーディングと呼ばれる印字濃度むらを改善されることについて開示するものではない。
【0010】
【特許文献1】
特開平7−89220号公報(2頁、5頁
【0011】)
【特許文献2】
特開2001−10220号公報(
【0012】)
【特許文献3】
特開平9−300811号公報(
【0013】、比較例4)
【特許文献4】
特開2002−172853号公報(特許請求の範囲)
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意研究を行なった結果、記録層上に、平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を形成することにより、高光沢であり、像鮮明度も高く、且つビーディングを防止すること見出したのである。
【0015】
本発明は、次のとおりである。
(1)基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルシリカの凝集防止剤、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
コロイダルシリカの凝集防止剤は、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
(2)基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、融点100℃以上、平均粒子径500nm以下の有機微粒子、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
上記有機微粒子は、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
(3)基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
(4)ポリエチレンワックスを、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有する(3)記載のインクジェット記録用シートである。
【0016】
(5)光沢層の接着剤は、ガラス転移温度が45℃以上である(1)〜(4)のいずれかの一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(6)光沢層が光沢ロールにより形成されている(1)〜(5)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(7)光沢層が、光沢ロールとプレスロールのニップにより塗工されている(1)〜(6)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
【0017】
(8)記録層の顔料が、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下である(1)〜(7)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(9)前記基材と前記記録層の間に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層の下塗り層を設けた(1)〜(8)のいずれかに一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(9)光沢層表面の20°光沢度(JIS−P8142)が35%以上である(1)〜(8)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
(10)離型剤が、アルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩である(1)〜(9)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用シートである。
【0018】
更に、本発明は、次のような実施態様も包含する。
(11)基材と、前記基材上に、カチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を有し、該光沢層は、光沢層塗液の塗布および乾燥を、光沢ロールと、光沢ロールに接するように設けられたプレスロールによりプレスして行なうこと、を特徴とするインクジェット記録用シートの製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本第1発明は、基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に、(1)平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、(2)コロイダルシリカの凝集防止剤、(3)接着剤、および(4)離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
本第2発明は、基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に、(ア)平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、(イ)融点100℃以上、平均粒子径500nm以下の有機微粒子、(ウ)接着剤、および(エ)離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
本第3発明は、基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に、(a)平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、(b)ポリエチレンワックス、(c)接着剤、(d)離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【0020】
本第1発明、本第2発明、および本第3発明(以下、まとめて単に本発明ともいう。)において、基材と記録層の間に、下塗り層を形成してもよい。
本発明でいう下塗り層は、主にインクジェットインク成分中の溶媒を速やかに吸収する層である。記録層は、インクジェットインク成分中の着色剤すなわち染料を定着させる層である。インク量が多くなると、着色剤の一部は下塗り層あるいは基材中に定着される場合もありうる。光沢層は、インクジェットインクを速やかに通過させると共に、光沢を発現する層であり、好ましくは銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な光沢を発現する層である。
【0021】
「基材」
本発明で用いる基材としては、特に限定されるものではなく、透気性支持体、非透気性支持体が使用できる。透気性支持体としては、一般の塗工紙に使用される酸性紙、あるいは中性紙等の紙基材が適宜使用される。また透気性を有する樹脂シート類も用いることができる。
【0022】
紙基材は、木材パルプと必要に応じ含有する顔料を主成分として構成される。木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS P−8121)程度である。紙送り歯車の傷を軽減するには叩解度を進めるほうが望ましいが、用紙に記録した場合にインク中の水分によって起こる用紙のボコツキや記録画像のにじみは、叩解を進めないほうが良好な結果を得る場合が多い。従ってフリーネスは300〜500ml程度が好ましい。
【0023】
顔料は不透明性等を付与したり、インク吸収性を調整する目的で配合し、炭酸カルシウム、焼成カオリン、シリカ、酸化チタン等が使用できる。特に焼成カオリン、シリカ、ゼオライトは、インク中の溶媒を吸収するため、好適に使用される。この場合、配合量は1〜20質量%程度が好ましい。多すぎると紙力が低下するおそれがある。また、前述の紙送り歯車の傷も付き易くなる。従って灰分として3〜15質量%程度がさらに好ましい。
【0024】
助剤としてサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂等を塗布・含浸させ、表面強度、サイズ度等を調整できる。サイズ度(100g/m2の紙として)は1〜250秒程度が好ましい。サイズ度が低いと、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる場合があり、高いとインク吸収性が低下したり、印字後のカールやコックリングが著しくなる場合がある。より好ましいサイズ度の範囲は4〜230秒、更に好ましくは30〜210秒である。基材の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m2程度である。
【0025】
非透気性支持体としては、樹脂フィルム、不織布等、あるいは樹脂フィルムをコート紙や上質紙等と接着剤を介して貼合せたもの、または紙に樹脂をラミネートしたもの等の樹脂被覆紙が使用される。中でも、樹脂フィルムあるいは樹脂をラミネートした紙を使用することが、耐水性に優れる。
【0026】
樹脂フィルムとしては、熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、ナイロン等が例示できる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリシクロヘキセンテレフタレート等が、またオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体からなるもの、またはこれらを主成分とするものを例示できる。また、これらの熱可塑性樹脂を1種または2種以上適宜選択して使用でき、他の熱可塑性樹脂としてポリスチレン、アクリル酸エステル共重合体等を混合して使用することもできる。
【0027】
これら熱可塑性樹脂を縦方向および/または横方向に延伸して成形したフィルムも使用できる。この他、この熱可塑性樹脂中に無機質微細粉末を混合してフィルムを形成し、これを例えば1軸延伸処理または2軸延伸処理して紙状の層としてもよい。本発明においては、このようなフィルムを複数層積層して得られた多層フィルムを支持体として使用し、例えば、基材層と両面または片面に紙状の層を設けた2〜3層フィルム、または更にその少なくとも片面の紙状の層上に表面層を形成した3〜5層フィルム等を使用してもよい。このように熱可塑性樹脂を紙状の層としたものは一般に合成紙として知られている。
【0028】
また、樹脂をラミネートした紙としては、熱可塑性樹脂を押出しラミネートした紙が例示でき、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂が例示できる。熱可塑性樹脂中には、二酸化チタンなどの顔料をはじめ、染料や紫外線吸収剤などを適宜配合することができる。
【0029】
基材は、その上に形成される記録層、光沢層の形成方法、或いは、使用される用途などに応じて、上記例示の基材の中から適宜選択使用できる。勿論、蛍光染料、蛍光顔料などにより色目を調節したり、帯電防止層、アンカー層、バリヤー層を付与してもよく、コロナ処理などを施しても構わない。
【0030】
「下塗り層」
本発明でいう下塗り層は、主にインクジェットインク成分中の溶媒を速やかに吸収する層である。
基材上に設けられる下塗り層は、顔料と接着剤を主成分として含有する。下塗り層中の顔料は、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料を1種もしくはそれ以上、併用することができる。これらの中でも、インク吸収性の高い無定形シリカ、アルミナ、ゼオライトを主成分として含有させるのが好ましい。
【0031】
これらの顔料の平均粒子径(凝集顔料の場合は凝集粒子径)は1〜10μm程度が好ましく、より好ましくは2〜10μmである。1μm未満であるとインク吸収速度向上の効果に乏しくなり、10μmを超えて大きいと光沢層を設けた後での平滑性や光沢が不十分となるおそれがある。異なる平均粒子径を併用することも可能である。
なお、インク吸収性を調整したり、下塗り層上に塗工する塗工液の浸透を制御する目的で、副成分として平均粒子径の小さい顔料を配合することができる。この様な顔料としてはコロイダルシリカ、アルミナゾルが挙げられる。
【0032】
下塗り層の接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等、一般に塗工紙用として用いられている従来公知の接着剤が単独、あるいは併用して用いられる。
【0033】
顔料と接着剤の配合割合は、その種類にもよるが、一般に顔料100質量部に対し接着剤1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で調節される。その他、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。下塗り層中には、蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
【0034】
下塗り層中にはカチオン性化合物が実質的に存在しないのが良い。実質的に存在しないとは、カチオン性界面活性剤等を助剤的に微量添加することは除外される。記録層のみにカチオン性化合物を配合し、光沢層および下塗り層には実質的にカチオン性化合物を含有させない態様では光沢が極めて優れ、かつ、印字濃度が高くなる。
【0035】
下塗り層中には、コロイダルシリカ及び/またはエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂、或いは、コロイダルシリカとエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂との複合体を含有させると、光沢がより発揮される。この理由は必ずしも明らかではないが、前記重合体樹脂或いは複合体の存在が、下塗り層のインク吸収性を維持したまま、記録層用塗工液の下塗り層への浸透を抑制するためと推定される。更にその理由は不明であるがキャスト方式により光沢層を設ける際に、鏡面ドラムからの離型性が向上する傾向がある。
【0036】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のメタクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレン、ブタジエン等のエチレン性モノマーを重合して得られる重合体が挙げられる。なお、重合体は、必要に応じて2種類以上のエチレン性モノマーを併用した共重合体であっても良いし、さらに、これら重合体あるいは共重合体の置換誘導体でも良い。因みに、置換誘導体としては、例えばカルボキシル基化したもの、またはそれをアルカリ反応性にしたもの等が例示される。
【0037】
コロイダルシリカとの複合化は、上記のエチレン性モノマーをシランカップリング剤等とコロイダルシリカの存在下で重合させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体にする、あるいは必要に応じシラノール基等で変性した重合体樹脂とコロイダルシリカを反応させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体にする方法が挙げられる。上記複合体の重合体成分のガラス転移温度(Tg)は40℃以上が好ましく、50〜100℃の範囲がより望ましい。ガラス転移温度が低いと乾燥の際に成膜が進みすぎるためか、インクの吸収が遅くなりにじみが発生するおそれがある。さらに、その理由は必ずしも明らかではないが、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の場合、キャスト方式により光沢層を設ける際の鏡面ドラムからの離型性がより向上する傾向がある。
【0038】
上記材料をもって構成される下塗り層用塗工液は、一般に固形分濃度を5〜50質量%程度に調整し、紙基材上に乾燥質量で2〜100g/m2 、好ましくは5〜50g/m2 程度、更に好ましくは10〜20g/m2 程度になるように塗工する。塗工量が少ないと、インク吸収性改良効果が充分に得られなかったり、光沢層を設けた際に光沢が十分に出ないおそれがあり、多いと、印字濃度が低下したり、光沢層用塗工層の強度が低下し粉落ちや傷が付き易くなる場合がある。
【0039】
下塗り層用塗工液は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知公用の塗工装置により塗工、乾燥される。さらに、必要に応じて下塗り層の乾燥後にスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。
【0040】
「記録層」
本発明は、基材上に、或いは基材上に設けた上記した顔料と接着剤を含有する下塗り層上に記録層を設ける。記録層は、インクジェットインク成分中の着色剤すなわち染料を定着させる層である。インクジェット記録用インクの着色剤は、通常アニオン性であるため、記録層には、インク中の着色剤成分を定着させる目的で、カチオン性化合物を配合する。本発明の記録層は、カチオン性化合物の他に、顔料と接着剤を少なくとも含有する層である。
【0041】
本発明は、記録層に使用するカチオン性化合物としては、インクジェット記録用シートで染料耐水化のために用いられる公知のカチオン性化合物が使用できる。例えば、1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、2)第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、3)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、7)ジアリルジメチルアンモニウム−S02重縮合体、8)ジアリルアミン塩・S02重縮合体、9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、11)アリルアミン塩の共重合体、12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等のカチオン性化合物等が例示できる。
【0042】
記録層に使用する顔料としては、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等の中から1種もしくはそれ以上、併用することができる。
中でも、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む平均1次粒子径が3nm以上40nm以下である顔料の使用が好ましく、気相法シリカがより好ましい。
【0043】
シリカとしては、窒素吸着法による比表面積が300m2/g〜1000m2/gで、細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gであるシリカ微粒子がコロイド状に分散した液をシード液とし、該シード液に対しアルカリの存在下、活性ケイ酸水溶液及び/又はアルコキシシランからなるフィード液を少量ずつ添加してシリカ微粒子を成長させて、窒素吸着法による比表面積が100m2 /g〜400m2/g、平均二次粒子径が20nm〜300nm、かつ細孔容積が0.5ml/g〜2.0ml/gのシリカ微粒子がコロイド状に分散したシリカ微粒子分散液を用いても良い。
【0044】
前記顔料は、1次粒子が凝集した2次粒子である。前記顔料の平均2次粒子径は、好ましくは10nm以上1000nm以下であり、より好ましくは10nm以上800nm以下、更に好ましくは10nm以上500nm以下、なお好ましくは10nm以上300nm以下、最も好ましくは15nm以上150nm以下である。
平均2次粒子径が1000nmを越えると、記録層の透明性が低下し、記録層中に定着された着色剤の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られない場合いがある。また、平均2次粒子径が10nm未満であると、インク吸収性が低下し、にじみ等が発生し、所望とする画像品位を得ることができないおそれがある。
【0045】
2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径は3nm以上40nm以下が好ましい。より好ましくは5nm以上30nm以下、さらに好ましくは7nm以上20nm以下である。記録層の顔料粒子径が小さいため透明性に優れ、発色濃度が極めて高い画像が得られる。
平均1次粒子径が3nm未満になると1次粒子間の空隙が著しく小さくなり、インク中の溶剤や着色剤を吸収する能力が低下し、所望とする画像品位を得ることが出来ないおそれがある。また、平均1次粒子径が40nmを越えると、凝集した2次粒子が大きくなり、記録層の透明性が低下し、記録層中に定着された着色剤の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られないおそれがある。
【0046】
前記顔料と前記カチオン性化合物の配合比は、質量比で顔料100質量部に対してカチオン性化合物が1〜30質量部が好ましく、さらに好ましくは、3〜20質量部である。カチオン性化合物が1質量部より少ないと、印字濃度向上の効果が得られにくく、30質量部より多いと、余分なカチオン性化合物が空隙を塞いでしまい、インク吸収性が阻害され、画像のにじみやムラが発生するおそれもある。
【0047】
カチオン性化合物と顔料を配合する際、前記顔料に混合すれば良いが、特に顔料が微細シリカの場合は、微細シリカは一般にアニオン性であり、混合の際に微細シリカ粒子の凝集が起こる場合がある。
この場合、一般的に市販されている非晶質シリカ(数ミクロンの2次粒子径を有する)を機械的手段により強い力を与えて微細粒子に粉砕する際、粉砕処理前の非晶質シリカにカチオン性物質を一緒に混合分散してから機械的手段により分散・粉砕するか、あるいは微細化したシリカ2次粒子分散体にカチオン性物質を混合し、一旦増粘・凝集させた後、再度機械分散・粉砕する方法等をとることにより、前記特定の粒子径に調整することができる。このようにして処理した顔料はカチオン性物質が一部結合した構造をとり、安定して分散したスラリーとなっているためか、更に別途カチオン性化合物を追加配合しても凝集し難いという特徴を有する。本発明では、このようなカチオン性物質で処理した微細顔料をカチオン性微細顔料という。
【0048】
前記顔料と前記カチオン性物質の混合物、もしくは凝集物を分散あるいは粉砕するには、ホモミキサー、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、アルティマイザー、ナノマイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー、クレアミックス等が用いられる。
平均2次粒子径が1000nmを超える場合は、ホモミキサーなどの弱い機械力で処理すれば十分分散するが、平均2次粒子径を1000nm以下に粉砕するにはより強い機械力を加えることが効果的であり、圧力式分散方法を用いることが好ましい。
【0049】
本発明において圧力式分散方法とは、原料粒子のスラリー状混合物をオリフィス中、高圧で連続的に通過させて高圧粉砕する方法であり、処理圧力は19.6×106 〜343.2×106 Pa(200〜3500kgf/cm2 )、より好ましくは49.0×106 〜245.3×106 Pa(500〜2500kgf/cm2 )、さらに好ましくは、98.1×106 〜196.2×106 Pa(1000〜2000kgf/cm2 )である。上記高圧粉砕により処理することで良好な分散あるいは粉砕が達成できる。さらに高圧でオリフィスを通過したスラリー状混合物を対向衝突させることによる分散、或いは粉砕方式を用いることがより好ましい。対向衝突による方法は、分散液を加圧することによって入口側に導き、分散液を二つの通路に分岐してさらに流路をオリフィスにより狭めることによって流速を加速して対向衝突させて粒子を衝突させて粉砕する。分散液を加速したり衝突させたりする部分を構成する材料としては、材料の摩耗を抑えるなどの理由からダイヤモンドが好ましく用いられる。
高圧粉砕機としては、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、ナノマイザーが用いられ、特に高速流衝突型ホモジナイザーとしてマイクロフルイタイザー、ナノマイザ−が好ましい。
【0050】
このようにして処理されたカチオン性微細顔料は、一般に固形分濃度が5〜20質量%程度の水分散体(スラリーあるいはコロイド粒子)として得られる。本発明でいう平均粒子径とは、電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒子径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し、平均したもの。「微粒子ハンドブック」( 朝倉書店) のP52、1991年等に記載されている)。
【0051】
このようなカチオン性微細顔料を含有する記録層を設けること、インクがより均一に吸収される結果、にじみが少なく均一な発色が得られ、発色ムラの無い優れた画像が得られる。カチオン性微細顔料中の顔料としては、シリカ、アルミノシリケートが好ましく、より好ましくはシリカであり、さらに好ましくは、ヒュームドシリカである。
【0052】
カチオン性微細顔料に使用するカチオン性物質としては、特に限定するものではなく、例えば、1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、2)第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、3)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、7)ジアリルジメチルアンモニウム−S02重縮合体、8)ジアリルアミン塩・S02重縮合体、9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、11)アリルアミン塩の共重合体、12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等のカチオン性物質等が挙げられる。
【0053】
中でも、好ましいカチオン性物質としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩、ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体および5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが、発色性に優れ、にじみが少なく、均一な発色が得られ、発色ムラの無い優れた画像が得られるので好ましい。
【0054】
なお、カチオン性微細顔料を使用する場合、記録層中の全顔料中におけるカチオン性微細顔料の比率が50質量%以上であると、記録層の透明性が優れるので好ましい。全顔料中のカチオン性微細顔料の比率が50質量%未満になると記録層の透明性が低下し、印字濃度等の画像品位が低下する場合もある。
【0055】
記録層は、顔料とカチオン性化合物を配合すると塗料調節の際、凝集などの問題が生じ易く、上記カチオン性微細顔料と接着剤のみで形成すると、光沢層を形成する際に、光沢層が部分的にロールに残ってしまうという、いわゆるピックが生じ易くなるので、記録層は、カチオン性化合物とカチオン性微細顔料を併用することにより、色調も優れたインクジェット記録用シートが、安定して製造することができる。
【0056】
本発明の記録層には、カチオン性化合物を配合し、または、カチオン性化合物とカチオン性微細顔料を併用するので、記録層で使用する接着剤はカチオン性若しくはノニオン性のものが記録層塗工液の安定性が良いため好ましい。
接着剤の配合量は、顔料100質量部に対し1〜200質量部、より好ましくは5〜100質量部の範囲で調節される。接着剤の量が少ないと、記録層の強度が弱くなり、粉落ちが発生する場合がある。逆に接着剤の量が多いと、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる場合がある。ここで、光沢層用塗工液中の接着剤の配合量(顔料100質量部に対する)を記録層より多くすると、表面の強度とインク吸収性のバランスに優れたものが得られ易く、好ましい。
【0057】
接着剤としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(例えばカチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール)等のなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体等の水溶性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス等の水分散性樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が単独あるいは併用して使用される。水性ポリウレタン樹脂は、ウレタンエマルジョン、ウレタンラテックス、ポリウレタンラテックス等とも通称されている。ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応から得られるものである。比較的多数のウレタン結合および尿素結合を含む高分子化合物である。
【0058】
記録層用塗工液を、基材上に、或いは基材に設けた下塗り層上に塗工する場合は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗工装置が使用できる。
記録層の塗工量(合計)は、乾燥固形分で1〜50g/m2は好ましく、1〜30g/m2より好ましく、1〜10g/m2。がさらに好ましい。1g/m2 未満の場合は、印字の際にじみが発生しやすくなり、50g/m2を越える場合は、印字濃度が不十分となり易い。なお、記録層は複数層形成しても構わない。
【0059】
「光沢層」
本第1発明は、上記記録層上に、平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルシリカの凝集防止剤、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を設ける。
本第2発明は、上記記録層上に、平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、融点100℃以上、平均粒子径500nm以下の有機微粒子、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を設ける。
本第3発明は、上記記録層上に、平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層を設ける。
【0060】
本発明の光沢層は、インクジェットインクを速やかに通過させると共に、銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な光沢を発現する層である。
本発明の光沢層で使用するコロイダルシリカは、平均粒子径が、3nm以上100nm以下であり、5nm以上90nm以下が好ましく、10nm以上80nm以下がより好ましく、20nm以上70nm以下がさらに好ましい。因みに平均粒子径が3nm未満の場合は、インクの吸収性が低下し、また、平均粒子径が100nmを超える場合は、光沢性および印字濃度が低下する。
【0061】
光沢層の接着剤は、例えば、ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル系重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂および水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で従来公知の各種接着剤が単独、あるいは併用して使用できる。
【0062】
光沢層に使用される接着剤のガラス転移温度は、−20℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上であり、得られる光沢層は、鏡面ドラムからの離型性に優れ、インクジェットプリンターのインクの吸収性も良好である。接着剤のガラス転移温度は45℃以上であることがさらに好ましい。このガラス転移温度に格別の上限はないが、一般に150℃以下であることが好ましい。150℃を超えると、鏡面ドラムからの離型性やインクの吸収性はいっそう優れたものになるが、逆に光沢が出にくくなり、また光沢層が脆くなるため、断裁時にダストが多くなったり、折り目から光沢層が欠けたりする、強度不足によるトラブルが発生する場合がある。したがって、ガラス転移温度の異なる、2種類以上の接着剤を組み合わせることも、求められる特性によっては、しばしば効果的である。この理由は定かではないが、ガラス転移温度の低い接着剤と高い接着剤が均一に混合されるのではなく、あたかも海/島構造を構成し、それぞれの接着剤の特徴を一層効果的に発揮するためと推測される。2種類以上の接着剤を組み合わせる場合、好ましくは少なくとも一方はガラス転移温度−20℃以上の樹脂とする。
【0063】
光沢層中の接着剤と顔料との組成比(固形分質量比)は、顔料100質量部に対して、好ましくは、3〜150質量部の範囲であり、より好ましくは、7〜100質量部の範囲であり、さらに好ましくは、10〜70質量部の範囲である。
接着剤の比率が150質量部を超えると、印字濃度が低下する傾向があり、3質量部未満では光沢性が低下する傾向にある。
【0064】
本第1発明は、光沢層にコロイダルシリカの凝集防止剤を配合する。コロイダルシリカの凝集防止剤を配合すると、画像を記録した際のビーディングを抑止するとともに、光沢性も向上する。
おそらく、ビーディングは、カチオン性化合物を含有する記録層上に、アニオン性であるコロイダルシリカを含有する塗液を塗布した際に、コロイダルシリカが部分的に凝集してしまうので、記録をした際に、均一にインクが記録層に浸透せず、結果として画像のムラであるビーディングが生じるものと推測される。コロイダルシリカの凝集防止剤を配合することにより、光沢層のコロイダルシリカの凝集を防ぎ、その結果ビーディングを無くすることができたもの思われる。
コロイダルシリカの凝集防止剤としては、カチオン性化合物を含有する記録層上に塗工した際にコロイダルシリカの凝集を防止する作用を有する材料であれば特に限定されず、例えばポリエチレンワックスが使用できる。コロイダルシリカの凝集防止剤は、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
【0065】
本第2発明は、光沢層に融点100℃以上且つ平均粒子径500nm以下の有機微粒子を配合する。このような有機微粒子を配合すると、画像を記録した際のビーディングを抑止するとともに、光沢性も向上する。
おそらく、ビーディングは、カチオン性化合物を含有する記録層上に、アニオン性であるコロイダルシリカを含有する塗液を塗布した際に、コロイダルシリカが部分的に凝集してしまうので、記録をした際に、均一にインクが記録層に浸透せず、結果として画像のムラであるビーディングが生じるものと推測される。
有機微粒子は融点が100℃以上なので、通常の塗工乾燥では溶融することはない。従って、コロイダルシリカと有機微粒子が共存の状態で光沢層に配置されると、コロイダルシリカの凝集を防いでいるのではないかと思われる。また、平均粒子径500nm以下の有機微粒子であるから、光沢性を妨げることも殆どない。
このような有機微粒子としては、特に限定されず、例えばポリエチレンワックスが使用できる。有機微粒子は、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
【0066】
本第3発明は、上記記録層上に平均粒子径が3nm以上100nm以下のコロイダルシリカとポリエチレンワックスと接着剤と離型剤を含有する光沢層を設ける。このようなポリエチレンワックスを配合すると、画像を記録した際のビーディングを抑止するとともに、光沢性も向上する。
おそらく、ビーディングは、カチオン性化合物を含有する記録層上に、アニオン性であるコロイダルシリカを含有する塗液を塗布した際に、コロイダルシリカが部分的に凝集してしまうので、記録をした際に、均一にインクが記録層に浸透せず、結果画像のムラであるビーディングが生じるものと推測される。ポリエチレンワックスを配合することにより、コロイダルシリカの凝集を防ぐためか、ビーディングが改善される。ポリエチレンワックスは、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
【0067】
光沢層用塗工液を記録層上に塗工する場合、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗工装置が使用できる。
【0068】
本発明において、光沢層はキャスト方式により形成された層である。キャスト方式とは、光沢層を、平滑性を有する鏡面ドラム(鏡面仕上げした金属、プラスチック、ガラス等のドラム)、鏡面仕上げした金属板、プラスチックシートやフィルム(フィルム転写キャスト法、フィルムキャスト法)、ガラス板等上で乾燥し、平滑面を光沢層上に写し取ることにより、平滑で光沢のある光沢層表面を得る方法である。
【0069】
鏡面ドラムを用いて光沢層を設ける方法としては、上記の光沢層用塗工液を記録層上に塗工して、光沢層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト法)、あるいは一旦乾燥後再湿潤した後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト法)等が例示できる。また加熱された鏡面ドラムに直接光沢層用塗工液を塗工した後、基材側の記録層面に圧接、乾燥して仕上げる方法(プレキャスト法)も採用することができる。
【0070】
尚、鏡面ドラムの表面温度は40〜200℃程度が好ましく、70〜150℃がより好ましい。40℃未満であると乾燥に時間がかかり、光沢が低下しやすく、生産性が著しく低下しやすい。200℃を超えて高いとインクジェット記録用シート表面が荒れたり光沢が低下する場合がある。
【0071】
光沢層用塗工液を記録層上に塗工して、光沢層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる場合、光沢層用塗工液の浸透を抑える目的で、光沢層用塗工液の不動化を促進する方法を採ることもできる。
この方法としては例えば、(1)記録層中に光沢層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を配合しておく、(2)記録層上に光沢層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を塗工・含浸させる、(3)光沢層用塗工液を塗工した後、光沢層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を表面に塗工・含浸させる、(4)光沢層用塗工液中に塗工液が乾燥する過程で不動化が促進されるようなゲル化剤を配合しておくことが挙げられる。この様なゲル化剤としては、光沢層用塗工液中の接着剤の架橋剤である、ほう酸、ぎ酸等およびそれらの塩、アルデヒド化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。上記の方式の内、ウェットキャスト法を採用する場合、記録層上に光沢層用塗工液を塗工し、鏡面ドラム上に圧接し乾燥するまでの時間をなるべく短くした方が、光沢層用塗工液の浸透が抑えられるため、光沢が発現しやすい。
【0072】
さらに、記録層面が鏡面ドラムに圧接される直前に、圧接ロール(プレスロール)上の記録層面と鏡面ドラム間に光沢層用塗工液を付与して直ちに圧接する方式(ニップキャスト方式と称する)が、光沢層用塗工液の浸透が極力抑えられ、少ない塗工量で良好な光沢、印字品位が得られ易く、特に好ましい。
【0073】
また、フィルムなどの平滑な面に、光沢層用塗工液を塗布、乾燥した後、記録層と貼り合せる方法も採用できる。この方法は、ウェットキャスト方式などが適さない非透気性支持体にも適用することができる。
【0074】
光沢層用塗工液中には白色度、粘度、流動性等を調節するために、一般の印刷用塗工紙やインクジェット用紙に使用されている顔料、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤及び分散剤、増粘剤等の各種助剤が適宜添加される。
【0075】
なお、光沢層用塗工液中には、鏡面ドラム等からの離型性を付与する目的で、離型剤を添加する。離型剤としては、ステアリルリン酸カリウム等の高級アルキルリン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモミウム等の高級脂肪酸アルカリ塩類、レシチン、シリコーンオイル、シリコーンワックス等のシリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物が挙げられる。中でも、高級アルキルリン酸エステルのアルカリ金属が好ましい。
離型剤の配合量は、顔料100質量部に対し0.1〜50質量部、好ましくは0.3〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部の範囲で調節される。ここで配合量が少ないと、離型性改善の効果が得られにくく、多いと逆に光沢が低下したり、インクのハジキや記録濃度の低下が生じる場合がある。
【0076】
光沢層の塗工量は、乾燥固形分で0.1〜20g/m2程度、好ましくは0.2〜10g/m2 、より好ましくは0.5〜5g/m2である。ここで、0.1g/m2 未満では、十分な光沢が得られ難く、20g/m2 を越えて多いと、印字の際にじみが発生しやすくなったり、印字濃度が不十分となりやすい。光沢層をキャスト仕上げにより設けた後で、さらにスーパーキャレンダー等により平滑化処理を行うこともできる。
【0077】
光沢層表面の20°光沢度(JIS−P8142)は、印画紙の風合いを付与するためには、30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、45%以上が最も好ましい。
【0078】
幅2.0mmの光学くしを使用した時の反射60度写像性は、55%以上が好ましく、57%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、65%以上が最も好ましい。
【0079】
「実施態様」
なお、本発明のインクジェット記録用シートは、裏面に粘着剤層と剥離シートとを積層した所謂粘着加工、裏面に磁気記録層を形成する所謂磁気加工、カード基材に積層する所謂カード加工等、公知の加工を施すことも可能である。また、紙もしくはフィルムの両面に本発明のインクジェット記録用シートを積層し、両面をインクジェット記録可能にすることも可能である。本発明のインクジェット記録用シートの裏面に、宛先などを記述可能にした葉書も可能である。また、例えば、ポスター、チラシ、看板、化粧合板用化粧紙、床材、自動車の内装材等にも有効である。
【0080】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部および%は特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を示す。
【0081】
[紙基材の作製]
木材パルプ(LBKP;ろ水度440mlCSF)100部、填料(炭酸カルシウム/タルク=75/25)15部、市販サイズ剤(サイズパインE−50、荒川化学社製)0.04部、硫酸バンド(北陸化成社製)0.45部、澱粉(リョウセイKH−1000、王子コーンスターチ社製)1.00部、歩留向上剤88ppmよりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量170g/m2の紙基材を製造した。この紙基材のステキヒトサイズ度は140秒であった。また、厚さは195μmであった。
【0082】
[カチオン性微細顔料の調製]
市販気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均1次粒子径15nm、比表面積300m2/g、トクヤマ社製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均2次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。前記分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均2次粒子径300nmからなる8%分散液を調製し、カチオン性微細顔料を得た(平均1次粒子径は15nmのまま)。
【0083】
[シリカスラリー]
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−45、平均2次粒子径4.5μm、平均1次粒子径10nm、トクヤマ社製)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1、SMT社製)を用いて粉砕の操作を繰り返し(加圧49×106Pa)、シリカスラリーを得た。処理後の分散液中のシリカの平均2次粒子径(平均凝集粒子径)は50nm、固形分濃度は12%であった(平均1次粒子径は15nmのまま)。
【0084】
実施例1
紙基材上に、下記下塗り層用塗工液を、乾燥質量で9g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。次に、エアナイフコーター、乾燥装置を有するキャスト塗工装置を用い、先ず上記の下塗り層上に下記記録層用塗工液を、乾燥質量で4g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工して、乾燥装置で乾燥した。続いて、下記光沢層用塗工液の塗布、乾燥が、光沢ロールに接するようにプレスロールでプレスしてなされ、インクジェット記録用シートを得た。このときの光沢層の塗工量は、固形分質量で2g/m2であった。
【0085】
[下塗り層用塗工液]
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−30、トクヤマ社製、平均2次粒子径3.2μm)100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA R1115、クラレ社製)20部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA145、クラレ社製)5部、蛍光染料(商品名:WhitexBPSH、住友化学社製)2部。塗液濃度は17.5%に調整した。
[記録層用塗工液]
上記カチオン性微細顔料100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)10部からなる塗工液を粘度が50〜300cpsになるように調整した。塗液濃度は11%に調整した。
[光沢層用塗工液]
ガラス転移温度100℃のアクリルエマルジョンとコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(商品名:アクアブリッド906、ダイセル社製、アクリルエマルジョンとコロイダルシリカは質量比で20:80、コロイダルシリカの平均粒子径20〜30nm、エマルジョン粒子径40nm)100部、上記シリカスラリー2.5部、ポリエチレンワックス(商品名:クリーテックスPN−144、粒子径500nm、融点110℃、日新化学研究所社製)、カゼイン5部、増粘剤(商品名:ビスマルYK−1S、東邦化学工業社製)6部、離型剤(ステアリン酸)5部。塗液濃度は6%に調整した。
【0086】
実施例2
実施例1の光沢層用塗工液において、離型剤(ステアリン酸)5部に代えて離型剤(ステアリルリン酸カリウム、商品名:ウーポール1800、松本油脂社製)2部に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0087】
比較例1
実施例1の光沢層用塗工液において、ポリエチレンワックス(商品名:クリーテックスPN−144、粒子径50nm、融点120℃、日新化学研究所社製)を用いなかった以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0088】
実施例および比較例で得られたインクジェット記録用紙のインクジェット記録適性として画像記録部のビーディング、インク乾燥性、印字濃度、印字のにじみと、光沢度、写像性および目視外観を以下に示す方法で評価した。評価結果は、表1に示した。
【0089】
[インクジェット記録適性]
(ビーディング)
インクジェットプリンタPM950C(エプソン社製)を用いて、シアンインクとマゼンタインクの2色混合の60%階調濃度(Adobe(R) photoshop.(R) ver5.0.1使用)の印字を行ない、濃淡ムラを目視にて評価した。
○:濃度ムラが確認できない。
△:印字ムラがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字ムラが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
【0090】
(インク乾燥性)
インクジェットプリンタPM950C(エプソン社製)を用いて、シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字を行ない、ベタ印字部につきインク乾燥性を評価した。
◎:印字直後に指で触れてもまったく汚れない。
○:印字直後に指で触れるとわずかに汚れるが問題とならないレベル。
△:印字直後に指で触れると若干汚れ、実用上やや問題となるレベル。
×:印字直後に指で触れると汚れが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
【0091】
(インクジェット記録後の印字濃度)
インクジェットプリンタPM950C(エプソン社製)を用いて、黒ベタ印字を行ない、黒ベタ印字部分の印字濃度をマクベス反射濃度計RD−914(マクベス社製)で測定。
【0092】
(印字のにじみ)
インクジェットプリンタBJS700(キヤノン社製)を用いて印字を行ない、印字のにじみを評価した。
◎:印字のにじみは全く認められず、優れたレベル。
○:印字のにじみがわずかに認められるが良好なレベル。
△:印字のにじみがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字のにじみが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
【0093】
〔光沢度〕
JIS−P8142に準じてインクジェット記録用紙表面の20°光沢を測定した。
【0094】
〔写像性〕
写像性測定機ICM−IDP(スガ試験機社製)を用いて、インクジェット記録用紙表面の幅2.0mmの光学くしを使用して反射60度写像性を測定した。
【0095】
〔目視外観〕
インクジェット記録用紙表面の光沢感、平滑感を目視により評価した。
◎:極めて優れる。
○:優れる。
△:やや劣る。
×:劣る。
【0096】
【表1】
【0097】
【発明の効果】
表1から明らかなように、本発明の構成により得られたインクジェット記録用紙は、ビーディング、インク乾燥性、印字濃度および印字のにじみ等のインクジェット記録適性に優れ、かつ、光沢度、写像性および目視外観等にも優れた極めて実用性の高いものである。
Claims (8)
- 基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルシリカの凝集防止剤、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
- 基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、融点100℃以上、平均粒子径500nm以下の有機微粒子、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
- 基材と、前記基材上にカチオン性化合物、顔料、および接着剤を含有する少なくとも1層の記録層と、前記記録層上に平均粒子径が3nm以上100nm以下のコロイダルシリカ、ポリエチレンワックス、接着剤、および離型剤を含有する光沢層とを有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
- ポリエチレンワックスを、コロイダルシリカ100質量部に対して15質量部以上50質量部以下含有する請求項3記載のインクジェット記録用シート。
- 光沢層の接着剤は、ガラス転移温度が45℃以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
- 光沢層が光沢ロールにより形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
- 光沢層が、光沢ロールとプレスロールのニップにより塗工されている請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
- 光沢層表面の20°光沢度(JIS−P8142)が35%以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
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---|---|---|---|---|
JP2010260334A (ja) * | 2009-04-08 | 2010-11-18 | Hokuetsu Kishu Paper Co Ltd | インクジェット記録用光沢紙及びその製造方法 |
JP2011201148A (ja) * | 2010-03-25 | 2011-10-13 | Mitsubishi Paper Mills Ltd | インクジェット記録材料の製造方法 |
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JP2013136177A (ja) * | 2011-12-28 | 2013-07-11 | Oji Holdings Corp | インクジェット記録体の製造方法 |
WO2019087979A1 (ja) * | 2017-10-31 | 2019-05-09 | 株式会社ユポ・コーポレーション | 熱可塑性樹脂フィルム及びインクジェット用紙 |
-
2003
- 2003-07-04 JP JP2003192125A patent/JP2005022334A/ja not_active Withdrawn
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