JP3832478B2 - インクジェット記録用紙の製造方法 - Google Patents
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〔1〕基材に顔料および接着剤を含有する下塗り層を少なくとも1層設け、さらに下塗り層上にシリカ微細粒子および接着剤を含有するキャスト塗工層を設けたインクジェット記録用紙の製造方法において、下塗り層上に、キャスト塗工層用塗工液を塗工し、該塗工液を、該塗工液固形分100重量部に対し水分が20〜400重量部であって、流動性がほとんどなくなるまで半乾燥した後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥してキャスト仕上げを行うものであり、且つ上記シリカ微細粒子が、その1次粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、2次粒子の平均粒子径が10nm以上400nm以下であることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
〔3〕キャスト塗工層用塗工液が、カチオン性化合物を含有する上記〔1〕または〔2〕記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
〔4〕下塗り層が、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂とコロイダルシリカとの複合体を含有することを特徴とする上記〔1〕、〔2〕または〔3〕記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
〔5〕下塗り層の顔料が、非晶質シリカ、アルミナ、ゼオライトの少なくとも一種を含有することを特徴とする上記〔1〕、〔2〕、〔3〕または〔4〕記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
紙基材は、木材パルプと必要に応じ顔料を主成分として構成される。木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができ、これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、250〜550ml(CSF:JISP−8121)程度である。
顔料は、不透明性等を付与したり、インク吸収性を調整する目的で配合し、炭酸カルシウム、焼成カオリン、シリカ、酸化チタン等が使用できる。この場合、配合量は1〜20%程度が好ましい。多すぎると紙力が低下するおそれがある。助剤としてサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。
また、本発明の製造方法は、上記のキャスト塗工層用塗工液を基材に設けた下塗り層上に塗工して、このキャスト塗工層を冷風により乾燥し、半乾燥の状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げるものである。
また、本発明の製造方法は、上記のキャスト塗工層用塗工液を基材に設けた下塗り層上に塗工して、このキャスト塗工層をある程度乾燥し、半乾燥の状態にある間に、湿潤液を付与することなく加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げるものである。
このように、半乾燥の状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げると、均一な塗工層が形成されやすく、印字濃度が高く、光沢の優れたキャスト塗工層が得られる。ここで半乾燥とは、塗工層の流動性はほとんど無くなっているが、水分は多く含んでいる状態を意味し、塗工層絶乾重量に対して20〜400%(即ち塗工層の絶乾重量100重量部に対し20〜400重量部の水分を含む)程度とするのが好ましく、より好ましくは50〜200%の範囲で調整される。水分が少ないと鏡面ドラムに圧接した際の鏡面の転写が不十分となり、十分に光沢が発揮されにくい。多いと鏡面ドラムに圧接した際、塗工層が押しつぶされ均一で十分な塗工量の塗工層が得られず、印字濃度や光沢が不十分となり易い。さらに、塗工層が鏡面ドラムに転移付着して光沢が低下したり、鏡面ドラムが汚れて操業上問題となるおそれが生じる。
キャスト塗工層用塗工組成物と同様の組成物を、下塗り層上に塗工し乾燥または半乾燥した後、該塗工層上にさらにキャスト塗工層用塗工組成物を塗工し、半乾燥後、キャストドラム上で乾燥することもできる。
キャスト塗工層の塗工量は、乾燥固形分で1〜30g/m2、好ましくは1.5〜20g/m2、より好ましくは、3〜15g/m2である。ここで、1g/m2未満では印字濃度や光沢が十分に出ない場合があり、30g/m2を越えて多いと効果は飽和し、乾燥に負担がかかり操業性が低下する恐れがある。キャスト塗工層をキャスト仕上げにより設けた後で、さらにスーパーカレンダー等により平滑化処理を行うこともできる。
さらに、キャスト塗工層にカチオン性化合物が含有される態様では、キャスト塗工層にインク中の染料成分が選択的に定着されるため上記の効果がより発現され好ましい。また、下塗り層の存在は、インクを速やかに吸収する働きをするが、キャスト塗工層にカチオン性化合物が含有され、且つ下塗り層中には実質的にカチオン性化合物が含有されない態様では、キャスト塗工層はインク中の染料成分を選択的に定着し、下塗り層はインク中の溶媒成分を速やかに吸収するためか、印字濃度と吸収性に優れる。
次に、光沢性が向上する理由について述べる。キャスト塗工層はキャスト方式により設けるため、キャストドラムの平滑性が転写され、光沢に優れたものとなるのに加え、キャスト塗工層に使用するシリカ微細粒子の2次粒子径が十分に小さいため、光の乱反射が少なくキャスト塗工層表面の光沢は一層高いものとなる。尚、75度光沢度は30%以上が好ましく、より好ましくは35%以上であり、最も好ましくは50%以上である。
木材パルプ(LBKP;ろ水度500mlCSF)100部、焼成カオリン(商品名:アンシレックス、エンゲルハードミネラル社製)10部、市販サイズ剤0.05部、硫酸バンド1.5部、湿潤紙力剤0.5部、澱粉0.75部よりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量120g/m2の紙基材を製造した。この紙基材のステキヒトサイズ度は10秒であった。本発明の実施例、比較例ではすべてこの紙基材を用いた。
[シリカ微細粒子A]
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシールX−45、平均2次粒子径4.5μm、平均1次粒子径15nm)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1)を用いて粉砕の操作を繰り返した(加圧500kg/cm2)。処理後の分散液中のシリカの平均2次粒子径は50nm、固形分濃度は12%であった(平均1次粒子径は15nmのまま)。
合成非晶質シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil LP、平均2次粒子径9μm、平均1次粒子径16nm)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1)を用いて粉砕の操作を繰り返した(加圧500kg/cm2)。処理後の分散液中のシリカの平均2次粒子径は500nm、固形分濃度は12%であった(平均1次粒子径は16nmのまま)。
以下の実施例、比較例で、上記したシリカ微細粒子AまたはBとカチオン性化合物を混合する際は、両者を混合分散後、さらに圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1)を用いて粉砕し(加圧500kg/cm2)、分散液中のシリカの平均2次粒子径が、それぞれもとのシリカ微細粒子の平均2次粒子径になるまで処理した(平均1次粒子径は処理前と同じ)。
紙基材上に、下記下塗り層用塗工液を、乾燥重量で12g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。次に、下記キャスト塗工層用塗工液を、上記の下塗り層上にエアーナイフコーターで塗工し、冷風で20秒乾燥し半乾燥状態にした後(塗工層絶乾量に対する水分率150%)、表面温度が90℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後、離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。このときのキャスト塗工層の塗工量は固形分重量で、5g/m2であった。鏡面ドラムは、鋼鉄ロール表面にニッケルをメッキし、更にその上にクロムをメッキし研磨して鏡面仕上げしたもの。表面粗さRaは0.03μmであった。
合成非晶質シリカ(ファインシールX−60;トクヤマ製、平均2次粒子径6.0μm、平均1次粒子径15nm)80部、ゼオライト(トヨビルダー;トーソー製、平均粒子径1.5μm)20部、シリル変性ポリビニルアルコール(R1130;クラレ製)20部、ガラス転移点75℃のスチレン−2メチルヘキシルアクリレート共重合体と粒子径30nmのコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(共重合体とコロイダルシリカは重量比で40:60、エマルジョンの粒子径は80nm)40部、蛍光染料(WhitexBPSH;住友化学製)2部。
シリカ微細粒子A100部、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(カチオン性化合物:日東紡績社製、商品名;PAS−J−81) 10部、カチオン性アクリル樹脂(XC−2010;星光化学製、四級アミン変性アクリル水性樹脂、Tg85℃)20部、シリル変性ポリビニルアルコール(R1130;クラレ製)10部、離型剤(レシチン)2部。
紙基材上に、実施例1と同様の下塗り層用塗工液を、乾燥重量で12g/m2になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。次に、実施例1と同様のキャスト塗工層用塗工液を、上記の下塗り層上にエアーナイフコーターで塗工し、直ちに表面温度が90℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後、離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。このときのキャスト塗工層の塗工量は固形分重量で、2g/m2であった。
実施例1と同様のキャスト塗工層用塗工液を、紙基材上に直接(下塗り層を設けず)、エアーナイフコーターで塗工し、冷風で20秒乾燥し半乾燥状態にした後(塗工層絶乾量に対する水分率150%)、表面温度が100℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。この時のキャスト層の塗工量は10g/m2であった。
実施例1で用いたキャスト層用塗工液において、シリカ微細粒子をAからBに変更した以外は、実施例1と同様にして光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。
実施例1の下塗り層上に、ロールコーターを用いて下記のキャスト塗工層用塗工液を塗工した後、直ちに表面温度が85℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。このときのキャスト塗工層の塗工量は固形分重量で、6g/m2であった。
ガラス転移点75℃のスチレン−2メチルヘキシルアクリレート共重合体と粒子径30nmのコロイダルシリカ(一次粒子の分散体であり凝集していない)との複合体エマルジョン(共重合体とコロイダルシリカは、重量比で40:60、エマルジョンの粒子径は80nm)100部、増粘・分散剤(アルキルビニルエーテル・マレイン酸誘導体共重合体)5部、離型剤(レシチン)3部。
実施例1において下塗り層まで設けたものを用いた(キャスト塗工層なし)。
紙基材をそのまま用いた。
インクジェットプリンターBJC600J(キヤノン(株)製)を用いて印字を行なった。
シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字部の印字ムラ(濃淡ムラ)を目視にて評価した。
○:印字ムラは全くなく優れたレベル。
○−:印字ムラは殆どなく良好なレベル。
△:印字ムラがあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字ムラが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字部につきインクの乾燥性を評価した。
○:印字直後に指で触れてもまったく汚れない。
×:印字直後に指で触れると汚れる。
黒ベタ印字部分の印字濃度をマクベスRD−914で測定。
JIS−P8142に準じて白紙部の75°光沢を測定した。
光沢感、平滑感を目視により評価
◎:極めて優れる。
○:優れる。
△:やや劣る。
×:劣る。
印字品位、光沢を総合的に評価
5:極めて優れる。
4:優れる。
3:普通。
2:やや劣る。
1:劣る。
Claims (3)
- 基材に顔料および接着剤を含有する下塗り層を少なくとも1層設け、さらに下塗り層上にシリカ微細粒子および接着剤を含有するキャスト塗工層を設けたインクジェット記録用紙の製造方法において、下塗り層上に、キャスト塗工層用塗工液を塗工し、該塗工液を、該塗工液固形分100重量部に対し水分が20〜400重量部であって、流動性がほとんどなくなるまで半乾燥した後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥してキャスト仕上げを行うものであり、且つ上記シリカ微細粒子が、その1次粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、2次粒子の平均粒子径が10nm以上400nm以下であることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
- 基材に顔料および接着剤を含有する下塗り層を少なくとも1層設け、さらに下塗り層上にシリカ微細粒子および接着剤を含有するキャスト塗工層を設けたインクジェット記録用紙の製造方法において、下塗り層上に、キャスト塗工層用塗工液を塗工し、該塗工液を、冷風により該塗工液固形分100重量部に対し水分が20〜400重量部であって、流動性がほとんどなくなるまで半乾燥した後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥してキャスト仕上げを行うものであり、且つ上記シリカ微細粒子が、その1次粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、2次粒子の平均粒子径が10nm以上400nm以下であることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
- キャスト塗工層用塗工液が、カチオン性化合物を含有する請求項1または2記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
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