JP7135054B2 - 非水電解液二次電池とそのための正極シート - Google Patents

非水電解液二次電池とそのための正極シート Download PDF

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Description

本発明は非水電解液二次電池とそのための正極シートに関し、詳しくは、重量エネルギ
ー密度と重量出力密度共にすぐれ、更に、サイクル特性にもすぐれる非水電解液二次電池
、好ましくは、リチウム二次電池と、そのための正極シートに関する。
近年、携帯型PC、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等における電子技術の進歩、発
展に伴い、これら電子機器の蓄電デバイスとして、繰り返し充放電することができる二次
電池が広く用いられている。
二次電池のなかでも、電極活物質として正極にマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウ
ムのようなリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極にリチウムイオンを挿入、脱離し得
る炭素材料を用いることによって、その充放電時に電解液中のリチウムイオン濃度が実質
的に変化しない所謂ロッキングチェア型のリチウムイオン二次電池は、所謂リザーブ型の
二次電池に比べて、電解液量を低減することができることから、小型化することができ、
しかも、高エネルギー密度を有するので、上述した電子機器の蓄電デバイスとして広く用
いられている。
しかし、リチウムイオン二次電池は、電気化学反応によって電気エネルギーを得る蓄電
デバイスであって、上記電気化学反応の速度が小さいために、出力密度が低いという重要
な問題があり、更に、電池の内部抵抗が高いので、急速な充放電は困難である。また、上
記正極活物質の比重が大きいので、単位重量当りの容量密度には尚、改善の余地があり、
そのうえ、充放電に伴う電気化学反応によって電極や電解液が劣化するので、一般に寿命
、即ち、サイクル特性もよくない。
そこで、ドーパントを有するポリアニリンのような導電性ポリマーを正極活物質に用い
る非水電解液二次電池も知られている(特許文献1参照)。しかし、一般に、導電性ポリ
マーを正極活物質として有する二次電池においては、充電時にはポリマーにアニオンがド
ープされ、放電時にはそのアニオンがポリマーから脱ドープされるアニオン移動型である
ので、負極活物質にリチウムイオンを挿入、脱離し得る炭素材料を用いたときは、前述し
たようなロッキングチェア型の二次電池を構成することができず、多量の電解液を必要と
するので、電池の小型化に寄与することができない。このような問題を解決するために、
ドーパントとしてポリビニルスルホン酸のようなポリマーアニオンをドーパントとして有
する導電性ポリマーにて正極を構成し、負極にリチウム金属を用いて、カチオン移動型と
し、かくして、電解液中のイオン濃度が実質的に変化しないようにした二次電池も提案さ
れているが(特許文献2参照)、電池性能は未だ、十分ではない。
一方、最近になって、大気汚染や、更には、地球の温暖化の問題についても、真剣にこ
れを解決する方策が研究されており、その一つとして、ハイブリッド車や電気自動車が既
に実用化の段階に入っており、これらのための蓄電デバイスとしても、リチウムイオン二
次電池が一部で実用化されている。
しかし、ハイブリッド車や電気自動車のための蓄電デバイスは、特に、回生ブレーキに
よる急速充電や加速時に高い出力密度が求められるところ、リチウムイオン二次電池は、
エネルギー密度は高いが、上述したように、出力密度は低いという問題がある。
そこで、電気二重層キャパシタが注目されている。電気二重層キャパシタは、通常、粉
末活性炭や繊維状活性炭等の比表面積の大きい導電性多孔性炭素材料を用いて形成された
分極性電極を用い、電解液中の支持電解質イオンの物理吸着特性を利用して、電気を貯蔵
するデバイスであるので、出力密度が高く、急速充電も可能であり、しかも、その寿命も
著しく長い。しかし、一方において、電気二重層キャパシタは、リチウムイオン二次電池
に比べて、そのエネルギー密度が非常に小さいことから、ハイブリッド車や電気自動車の
ための蓄電デバイスとしての実用化には問題がある。
例えば、電気二重層キャパシタは、リチウムイオン二次電池に比較して、サイクル寿命
が約10~100倍、出力密度が約5倍とすぐれている反面、重量エネルギー密度が約1
/10~1/2、体積エネルギー密度が約1/50~1/20であるといわれている(特
許文献3参照)。
特開平3-129679号 特開平1-132052号公報 特開2008-16446号公報
本発明は、従来の二次電池や電気二重層キヤパシタのような蓄電デバイスにおける上述
した問題を解決するためになされたものであって、電気二重層キャパシタのように重量出
力密度とサイクル特性にすぐれると共に、従来の電気二重層キャパシタの重量エネルギー
密度を遥かに超える高い重量エネルギー密度を有する新規な非水電解液二次電池を提供す
ることを目的とする。更に、本発明は、上述した非水電解液二次電池に用いる正極シート
を提供することを目的とする。
本発明によれば、電解質層と、これを挟んで対向して設けられた正極と負極を有する非
水電解液二次電池において、正極が(a)導電性ポリマーと、(b)ポリカルボン酸及び
その金属塩から選ばれる少なくとも1種を含み、負極が卑金属又は卑金属イオンを挿入、
脱離し得る材料を含むことを特徴とする非水電解液二次電池が提供される。
また、本発明によれば、(a)導電性ポリマーと、(b)ポリカルボン酸及びその金属
塩から選ばれる少なくとも1種とを含む正極活物質層を集電体上に有する複合体からなる
ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極シートが提供される。
本発明によれば、上記非水電解液二次電池は、好ましくは、リチウム二次電池であり、
従って、上記非水電解液二次電池用正極シートは、好ましくは、リチウム二次電池用正極
シートである。
本発明による非水電解液二次電池は、重量出力密度とサイクル特性にすぐれるという電
気二重層キャパシタのようなすぐれた特性を有するうえに、従来の電気二重層キャパシタ
の重量エネルギー密度を遥かに超える高い重量エネルギー密度を有する。即ち、本発明に
よる非水電解液二次電池はキャパシタ的特性を有する二次電池である。
また、本発明による正極シートを用いると共に、卑金属又は卑金属イオンを挿入、脱離
し得る材料を負極として用いて得られる非水電解液二次電池は、上述したように、重量出
力密度とサイクル特性にすぐれるという電気二重層キャパシタのようなすぐれた特性を有
するうえに、従来の電気二重層キャパシタの重量エネルギー密度と比べても、遥かに高い
重量エネルギー密度を有する。
テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする導電性ポリアニリン粉末のFT-IRスペクトルである。 上記導電性ポリアニリン粉末のESCAスペクトル(ワイドスキャン)である。 上記導電性ポリアニリン粉末の20000倍の走査型電子顕微鏡写真である。 テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする導電性ポリアニリンを正極に含む本発明によるリチウム二次電池の一実施例を充放電したときのサイクル数と重量容量密度との関係を示すグラフである。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例を充放電したときのサイクル数と重量エネルギー密度との関係を示すグラフである。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例において、種々のレートで充放電したときの重量容量密度と電圧との関係を示すグラフ(充放電曲線)である。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例の8.3Cという高レートでの充放電サイクルとエネルギー密度維持率との関係を示すグラフである。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例と比較例としてのリチウム二次電池の充放電レートと重量エネルギー密度との関係を示すグラフである。 テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする導電性ポリアニリンを正極に含む本発明によるリチウム二次電池の別の一実施例を充放電したときのサイクル数と重量エネルギー密度との関係を示すグラフである。 テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする導電性ポリアニリンを中和処理した後、還元処理して得られた還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末のFT-IRスペクトルである。 上記還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末を正極に含む本発明によるリチウム二次電池の一実施例を充放電したときのサイクル数と重量容量密度との関係を示すグラフである。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例を充放電したときのサイクル数と重量エネルギー密度との関係を示すグラフである。 テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする導電性ポリ(o-トルイジン)粉末のFT-IRスペクトルである。 上記テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする導電性ポリ(o-トルイジン)粉末を正極に含む本発明によるリチウム二次電池の一実施例を充放電したときのサイクル数と重量容量密度との関係を示すグラフである。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例を充放電したときのサイクル数と重量エネルギー密度との関係を示すグラフである。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例を定電流放電したときの充放電サイクル数と重量容量密度との関係を示すグラフである。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例を定電流放電したときの充放電サイクル数と重量エネルギー密度との関係を示すグラフである。 アントラキノン-2-スルホン酸アニオンをドーパントとする導電性ポリピロール粉末のFT-IRスペクトルである。 アントラキノン-2-スルホン酸アニオンをドーパントとする導電性ポリピロールを正極に含む本発明によるリチウム二次電池の一実施例の初期活性化の過程を示すグラフである。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例のレート特性を示すグラフである。 本発明による上記リチウム二次電池の一実施例の充放電サイクル数と重量容量密度の関係を示すグラフである。 還元脱ドープ状態ポリアニリンのルテニウム酸染色後のTEM画像である。 導電性ポリアニリンを含む正極シートの面方向の断面のTEM画像である。 還元脱ドープ状態のポリ(o-トルイジン)粉末のKBrディスク法によるFT-IRスペクトルである。 上記還元脱ドープ状態のポリ(o-トルイジン)粉末を正極に含む本発明によるリチウム二次電池の一実施例を充放電したときのサイクル数と重量容量密度との関係を示すグラフである。 スチレン-ブタジエン共重合体ゴム/ポリ(N-ビニルピロリドン)混合物からなるバインダと還元脱ドープ状態のポリアニリンを含む正極シートを備えた比較例としてのリチウム二次電池のレート試験の結果を示すグラフである。
本発明による非水電解液二次電池は、電解質層と、これを挟んで対向して設けられた正
極と負極を有する非水電解液二次電池において、正極が(a)導電性ポリマーと、(b)
ポリカルボン酸及びその金属塩から選ばれる少なくとも1種を含み、負極が卑金属又は卑
金属イオンを挿入、脱離し得る材料を含む。
本発明による非水電解液二次電池用正極シートは、(a)導電性ポリマーと、(b)ポ
リカルボン酸及びその金属塩から選ばれる少なくとも1種とを含む正極活物質層を集電体
上に有する複合体からなる。
本発明において、導電性ポリマーとは、ポリマー主鎖の酸化反応又は還元反応によって
生成し、又は消失する電荷の変化を補償するために、イオン種がポリマーに挿入し、又は
ポリマーから脱離することによって、ポリマー自身の導電性が変化する一群のポリマーを
いい、このようなポリマーにおいて、イオン種がポリマーに挿入されて、導電性が高い状
態をドープ状態といい、イオン種がポリマーから脱離して、導電性が低い状態を脱ドープ
状態という。導電性を有するポリマーが酸化反応又は還元反応によって導電性を失い、絶
縁性(即ち、脱ドープ状態)となっても、そのようなポリマーは、酸化還元反応によって
再度、可逆的に導電性を有することができるので、このように、脱ドープ状態にある絶縁
性のポリマーも、本発明においては、導電性ポリマーの範疇に入れることとする。
従って、本発明において好ましい導電性ポリマーの1つは、無機酸アニオン、脂肪族ス
ルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、ポリマースルホン酸アニオン及びポリビ
ニル硫酸アニオンから選ばれる少なくとも1種のプロトン酸アニオンをドーパントとして
有するポリマーである。また、本発明において、好ましい別の導電性ポリマーは、上記導
電性ポリマーを脱ドープした脱ドープ状態のポリマーである。
本発明において、上記ポリカルボン酸とは、分子中にカルボキシル基を有するポリマー
をいう。本発明において、上記ポリカルボン酸は、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメ
タクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリマ
レイン酸、ポリフマル酸、ポリグルタミン酸及びポリアスパラギン酸、アルギン酸、カル
ボキシメチルセルロース、及びこれらポリマーの繰り返し単位の少なくとも2種を含む共
重合体から選ばれる少なくとも1種である。本発明において、上記共重合体は、グラフト
共重合体を含むものとする。
本発明において、上記ポリカルボン酸の金属塩は、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金
属塩から選ばれる少なくとも1種であり、アルカリ金属塩は、好ましくは、リチウム塩や
ナトリウム塩であり、上記アルカリ土類金属塩は、好ましくは、マグネシウム塩やカルシ
ウム塩である。
本発明において、上記導電性ポリマーを構成するポリマーとしては、例えば、ポリピロ
ール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリイソチアナ
フテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリアズレン、ポリ(3
,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセン等や、これらの種々の誘導体が用いら
れる。これらのなかでも、本発明において、好ましいポリマーの一つは、得られる導電性
ポリマーが単位重量当りの容量が大きいことから、ポリアニリン及びその誘導体から選ば
れる少なくとも1種である。
本発明において、上記ポリアニリンとは、アニリンを電解重合させ、又は化学酸化重合
させて得られるポリマーをいい、ポリアニリンの誘導体とは、アニリンの誘導体を電解重
合させ、又は化学酸化重合させて得られるポリマーをいう。ここに、アニリンの誘導体と
しては、アニリンの4位以外の位置にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリー
ル基、アリールオキシ基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキ
ル基等の置換基を少なくとも1つ有するものを例示することができる。好ましい具体例と
して、例えば、o-メチルアニリン、o-エチルアニリン、o-フエニルアニリン、o-
メトキシアニリン、o-エトキシアニリン等のo-置換アニリン、m-メチルアニリン、
m-エチルアニリン、m-メトキシアニリン、m-エトキシアニリン、m-フエニルアニ
リン等のm-置換アニリンを挙げることができる。
但し、本発明によれば、4位に置換基を有するものでも、p-フェニルアミノアニリン
は、酸化重合によってポリアニリンを与えるので、例外的に、アニリン誘導体として好適
に用いることができる。
本発明において、上記導電性ポリマーを構成するポリマーのうち、好ましい別のポリマ
ーは、ポリマーの繰り返し単位式量の値が 65.08と小さいため、単位重量当たりの
容量密度が高くなる可能性があることから、ポリピロール及びその誘導体から選ばれる少
なくとも1種である。
本発明において、上記ポリピロールとは、ピロールを化学酸化重合や電解酸化重合させ
て得られるポリマーをいい、ポリピロールの誘導体とは、ピロールの誘導体を化学酸化重
合や電解酸化重合させて得られるポリマーをいう。ここに、ピロールの誘導体としては、
ピロールの2位及び5位以外の位置にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリー
ル基、アリールオキシ基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキ
ル基等の置換基を少なくとも1つ有するものを例示することができる。好ましい具体例と
して、例えば、3-メチルピロール、3-エチルピロール、3-エテニルピロール、3-
メトキシピロール、3-エトキシピロール、3-フェニルピロール、3-フェノキシピロ
ール、3-p-トルイルピロール、3-ベンジルピロール、3-メトキシメチルピロール
、3-p-フルオロフェニルピロール、3,4-ジメチルピロール、3,4-ジエチルピ
ロール、3,4-ジエテニルピロール、3,4-ジメトキシピロール、3,4-ジエトキ
シピロール、3,4-ジフェニルピロール、3,4-ジフェノキシピロール、3,4-ジ
(p-トルイル)ピロール、3,4-ジベンジルピロール、3,4-ジメトキシメチルピ
ロール、3,4-ジ(p-フルオロフェニル)ピロール等を挙げることができる。
以下、本発明において、特に断らない限り「アニリン又はその誘導体」を単に「アニリ
ン」といい、また、「ポリアニリン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種」を単に
「ポリアニリン」という。また、本発明において、特に断らない限り「ピロール又はその
誘導体」を単に「ピロール」といい、また、「ポリピロール及びその誘導体から選ばれる
少なくとも1種」を単に「ポリピロール」という。従って、導電性ポリマーを構成するポ
リマーがアニリン誘導体又はピロール誘導体から得られる場合であっても、それぞれ「導
電性ポリアニリン」又は「導電性ポリピロール」ということがある。
本発明において、導電性ポリアニリンは、既によく知られているように、適宜の溶媒中
、アニリンをプロトン酸の存在下に電解重合し、又は酸化剤を用いて化学酸化重合させる
ことによって得ることができるが、好ましくは、適宜の溶媒中、プロトン酸の存在下にア
ニリンを酸化剤にて酸化重合させることによって得ることができる。上記溶媒としては、
通常、水が用いられるが、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒や、また、水と非極性有機溶
媒との混合溶媒も用いられる。この場合には、界面活性剤等を併用することもある。
水を溶媒としてアニリンを酸化重合する場合を例にとって、より詳しく説明すれば、ア
ニリンの化学酸化重合は、水中、プロトン酸の存在下に化学酸化剤を用いて行われる。用
いる化学酸化剤は、水溶性、水不溶性のいずれでもよい。
好ましい酸化剤として、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、重クロ
ム酸カリウム、過マンガン酸カリウム、塩素酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、
ヨウ素酸ナトリウム、塩化鉄等を挙げることができる。
アニリンの酸化重合のために用いる酸化剤の量は、生成する導電性ポリアニリンの収率
に関係し、用いたアニリンを定量的に反応させるには、用いたアニリンのモル数の(2.
5/n)倍モルの酸化剤を用いることが好ましい。但し、nは、酸化剤自身1分子が還元
されるときに必要とする電子の数を表す。従って、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウ
ムの場合には、下記の反応式から理解されるように、nは2である。
(NH4)228+2e → 2NH4 ++2SO4 2-
しかし、ポリアニリンが過酸化状態になるのを抑制するために、用いるアニリンのモル
数の(2.5/n)倍モルよりも若干少なくして、上記アニリンのモル数の(2.5/n
)倍モル量に対して、30~80%の割合を用いる場合もある。
導電性ポリアニリンの製造において、プロトン酸は、生成するポリアニリンをドーピン
グして、導電性にすると共に、アニリンを水中で塩にして水に溶解させるためと、重合反
応系のpHを好ましくは1以下の強酸性に保つために用いられる。従って、導電性ポリア
ニリンの製造において、用いるプロトン酸の量は、上記目的を達成することができれば、
特に限定されるものではないが、通常は、アニリンのモル数の1.1~5倍モルの範囲で
用いられる。しかし、用いるプロトン酸の量が多すぎるときは、アニリンの酸化重合の後
処理において、廃液処理のための費用が不必要に嵩むことから、好ましくは、1.1~2
倍モルの範囲で用いられる。かくして、プロトン酸としては、強酸性を有するものが好ま
しく、好ましくは、酸解離定数pKa値が3.0未満のプロトン酸が好適に用いられる。
このような酸解離定数pKa値が3.0未満のプロトン酸として、例えば、硫酸、塩酸
、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、フッ化水素酸、ヨウ
化水素酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン
酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸(又はアルカンスルホン
酸)等が好ましく用いられる。また、分子中にスルホン酸基を有するポリマー、即ち、ポ
リマースルホン酸も用いることができる。このようなポリマースルホン酸としては、例え
ば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリ(ア
クリルアミドt-ブチルスルホン酸)、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂、ナフィオ
ン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸等を挙げることができる。本発明に
おいては、ポリビニル硫酸もプロトン酸として用いることができる。
しかし、上述した以外にも、例えば、ピクリン酸のようなある種のフェノール類、m-
ニトロ安息香酸のようなある種の芳香族カルボン酸、ジクロロ酢酸、マロン酸等のような
ある種の脂肪族カルボン酸も酸解離定数pKa値が3.0未満であるので、導電性ポリア
ニリンの製造において、プロトン酸として用いられる。
上述した種々のプロトン酸のなかでも、テトラフルオロホウ酸やヘキサフルオロリン酸
は、非水電解液二次電池における非水電解液の電解質塩の卑金属塩と同じアニオン種を含
むプロトン酸であり、例えば、リチウム二次電池の場合であれば、リチウム二次電池にお
ける非水電解液の電解質塩のリチウム塩と同じアニオン種を含むプロトン酸であるので、
好ましく用いられる。
また、導電性ポリピロールは、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのよう
なアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやアントラキノンスルホン酸ナトリウムのよう
な有機スルホン酸塩を含むピロールの水溶液中において、適当な化学酸化剤を用いてピロ
ールを化学酸化重合させることによって粉末として得ることができ、また、上記アルキル
ベンゼンスルホン酸ナトリウムや有機スルホン酸塩を含むピロールの水溶液中において、
ステンレス電極を用いるピロールの電解酸化重合によって、陽極に薄膜として得ることが
できる。このような製造方法において、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムや有機ス
ルホン酸塩は電解質として作用すると共に、アルキルベンゼンスルホン酸アニオンや有機
スルホン酸アニオンは、生成したポリピロールのドーパントとして機能して、ポリピロー
ルに導電性を付与する。
本発明においては、導電性ポリマーは、前述したように、プロトン酸アニオンにてドー
ピングされたポリマーであってもよく、また、このように上記プロトン酸アニオンにてド
ーピングされたポリマーを脱ドープ処理して得られる脱ドープ状態のポリマーであっても
よい。必要に応じて、上記脱ドープ状態のポリマーを更に還元処理してもよい。
導電性ポリマーを脱ドープ処理する方法として、例えば、プロトン酸アニオンにてドー
ピングされてなる導電性ポリマーをアルカリにて中和処理する方法を挙げることができ、
また、プロトン酸アニオンにてドーピングされてなる導電性ポリマーを脱ドープ処理した
後、還元処理する方法として、例えば、プロトン酸アニオンにてドーピングされてなる導
電性ポリマーをアルカリにて中和処理して脱ドープし、かくして、得られた脱ドープされ
たポリマーを還元剤にて還元処理する方法を挙げることができる。
プロトン酸アニオンにてドーピングされている導電性ポリマーをアルカリにて中和処理
する場合、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水等の
アルカリ水溶液中に導電性ポリマーを投入して、室温下に、又は必要に応じて、50~8
0℃程度の加温下に、攪拌すればよい。加温下にアルカリ処理することによって、導電性
ポリマーの脱ドープ反応を促進して、短時間で脱ドープすることができる。
一方、上述したように、脱ドープしたポリマーを還元処理するには、この脱ドープした
ポリマーをヒドラジン一水和物水溶液、フェニルヒドラジン/アルコール溶液、亜二チオ
ン酸ナトリウム水溶液、亜硫酸ナトリウム水溶液等の還元剤溶液中に投入し、室温下、又
は必要に応じて、50~80℃程度の加温下に攪拌すればよい。
本発明による非水電解液二次電池においては、正極シートは、このような導電性ポリマ
ーとポリカルボン酸及びその金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む固体の正極活物質
と導電助剤とからなる層を集電体上に有する複合体シートからなり、この正極活物質と導
電助剤を含む層は多孔性である。上記ポリカルボン酸及びその金属塩は、既に、説明した
とおりである。
本発明による非水電解液二次電池の好ましい一例として、正極が導電性ポリマーとして
導電性ポリアニリンを含むリチウム二次電池を例にとって、充放電におけるポリアニリン
の挙動を下記スキーム1及び2によって説明する。
プロトン酸アニオンにてドーピングされてなる導電性ポリアニリンをアルカリ処理して
脱ドープし、更に、還元剤にて還元処理して得られるポリアニリンは、下式(Ia)に示
すように、イミノ-p-フェニレン構造単位からなる。正極がこのようなイミノ-p-フ
ェニレン構造単位からなるポリアニリンを含むリチウム二次電池は、これを充電するとき
、ポリアニリン中の不対電子を有する窒素原子が一電子酸化され、その結果、生成するカ
チオンラジカルの対イオンとして、電解液中の電解質アニオン(例えば、テトラフルオロ
ホウ酸アニオン)又は電極内に存在するポリカルボン酸のアニオン(即ち、カルボキシレ
ートアニオン)がポリアニリンにドープして、ドープされた導電性ポリアニリン(Ib)
又は(B)を形成するものと考えられる。
一方、リチウム二次電池を放電するときは、下式に示すように、上記導電性ポリアニリ
ン(Ib)中のカチオンラジカルサイトは還元されて、非共有電子対を有する当初の電気
的に中性のポリアニリン(Ia)に戻る。このとき、上記カチオンラジカルサイトにおい
てクーロン相互作用していたアニオンが電解質アニオン(例えば、テトラフルオロホウ酸
アニオン)であれば、その電解質アニオンは、導電性ポリマーの近傍から電解液側に移動
する。
しかし、上記カチオンラジカルサイトにおいてクーロン相互作用していたアニオンが下
式に示すように、ポリカルボン酸、例えば、ポリアクリル酸のカルボキシレートアニオン
(IIIb)であるときは、そのカルボキシレートアニオンは、ポリマー性のアニオンであ
ることから、電解質アニオンのように、電解液側に移動することができず、上記ポリアニ
リン(IIa)の近傍にとどまっている。そこで、上記カルボキシレートアニオンを電気的
に中性とするために、電解液中からリチウムカチオンが導電性ポリマーの近傍に移動して
きて、上記カルボキシレートアニオンの対カチオンとして、塩(IIIa)を形成するもの
とみられる。
(スキーム1)
Figure 0007135054000001
(スキーム2)
Figure 0007135054000002
本発明によれば、非水電解液二次電池用正極シートは、導電性ポリマーとポリカルボン
酸及びその金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む固体の正極活物質と導電助剤とから
なる層を集電体上に有する複合体シートからなり、上記正極活物質と導電助剤を含む層は
固体の多孔性の層をなす。
このような非水電解液二次電池用正極シートは、例えば、前記ポリカルボン酸及びその
金属塩から選ばれる少なくとも1種を水に溶解させ、又は分散させ、これに導電性ポリマ
ー粉末と、必要に応じて、導電性カーボンブラックのような導電助剤を加え、これを十分
に分散させて、溶液粘度が0.05~50Pa・s程度である高粘性のペーストを調製し
、これを集電体上に塗布した後、水を蒸発させることによって、集電体上に上記導電性ポ
リマー粉末と前記ポリカルボン酸及びその金属塩から選ばれる少なくとも1種と(必要に
応じて、導電助剤と)の均一な正極活物質の層を有する複合体シートとして得ることがで
きる。
導電助剤は、導電性にすぐれると共に、電池の活物質間の電気抵抗を低減するために有
効であり、更に、電池の充放電時に印加する電位によって性状の変化しない導電性材料で
あることが望ましい。通常、上述したような導電性カーボンブラック、例えば、アセチレ
ンブラック、ケッチェンブラック等や、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノ
ファイバー等の繊維状炭素材料が用いられる。
本発明による非水電解液二次電池において、上記ポリカルボン酸及びその金属塩は、何
ら理論によって制約されるものではないが、正極の製造において、バインダとしての機能
を有すると共に、一方において、後述するように、正極の導電性ポリマーのドーパントと
しても機能して、本発明による非水電解液二次電池の特性の向上にも関与しているものと
みられる。
本発明による非水電解液二次電池用正極シートにおいて、このようなポリカルボン酸及
びその金属塩から選ばれる少なくとも1種は、導電性ポリマー100重量部に対して、通
常、1~100重量部、好ましくは、2~50重量部、最も好ましくは、5~30重量部
の範囲で用いられる。導電性ポリマーに対する上記ポリカルボン酸及びその金属塩から選
ばれる少なくとも1種の量が余りに少ないときは、重量出力密度にすぐれる非水電解液二
次電池を得ることができず、他方、導電性ポリマーに対する上記ポリカルボン酸及びその
金属塩から選ばれる少なくとも1種の量が余りに多いときは、正極活物質以外の部材重量
が増大することによる正極の重量の増大によって、電池全体の重量を考慮したとき、高重
量エネルギー密度の非水電解液二次電池を得ることができない。
本発明において、上記多孔性の正極活物質層は、電極として高い性能を有するように、
その空隙率は35~80%の範囲であることが望ましい。
本発明による非水電解液二次電池において、電解質層は、例えば、セパレータに電解液
を含浸させてなるシートや、固体電解質からなるシートが好ましく用いられる。固体電解
質からなるシートは、それ自体がセパレータを兼ねている。
このようにセパレータに含浸させると共に、電極にも含浸させるための電解液を構成す
る電解質としては、例えば、卑金属イオンとこれに対する適宜のカウンターイオン、例え
ば、スルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロ
リン酸イオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミ
ドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、ハロゲンイオン等を
組み合わせてなるものが好ましく用いられる。
本発明において、上記卑金属とは、イオン化傾向が水素よりも大きく、空気中で(加熱
すると、)容易に酸化される金属をいい、リチウム、ナトリウムやカリウムのようなアル
カリ金属、マグネシウムやカルシウムのようなアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、
鉛等がこれに属する。
従って、このような電解質の具体例としては、LiCF3SO3、LiClO4、LiB
4、LiPF6、LiAsF6、LiN(SO2CF3) 2、LiN(SO225)2、LiC
l、NaCF3SO3、NaClO4、NaBF4、NaPF6、NaAsF6、Ca(CF3
3) 2、Ca(ClO4)2 、Ca(BF4)2、Ca(PF6)2、Ca(AsF6)2等を挙げるこ
とができる。
非水電解液を構成する溶媒としては、カーボネート類、ニトリル類、アミド類、エーテ
ル類等の少なくとも1種の非水溶媒、即ち、有機溶媒が用いられる。このような有機溶媒
の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネ
ート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、アセ
トニトリル、プロピオニトリル、N,N'-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピ
ロリドン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ-ブチロラクトン等を挙げることが
できる。
また、本発明による非水電解液二次電池においてセパレータを用いる場合、セパレータ
は、これを挟んで対向して配設される正極と負極の間の電気的な短絡を防ぐことができ、
更に、電気化学的に安定であり、イオン透過性が大きく、ある程度の機械強度を有する絶
縁性の多孔質シートであればよい。従って、例えば、紙、不織布や、ポリプロピレン、ポ
リエチレン、ポリイミド等の樹脂からなる多孔性のフィルムが好ましく用いられる。
本発明による非水電解液二次電池において、負極には、卑金属や、また、酸化還元時に
卑金属イオンを挿入、脱離し得る材料が好ましく用いられる。上記卑金属としては、金属
リチウムや金属ナトリウム等のアルカリ金属類、金属マグネシウム、金属カルシウム等の
アルカリ土類金属を挙げることができ、また、上記卑金属イオンとしては、上記卑金属の
イオンを挙げることができる。
本発明においては、好ましい非水電解液二次電池はリチウム二次電池であり、従って、
好ましい卑金属としてリチウムを、また、好ましい卑金属イオンとしてリチウムイオンを
挙げることができる。上記卑金属イオンを挿入、脱離し得る材料としては、好ましくは、
炭素材料が用いられるが、ケイ素やスズ等も用いることができる。
このような本発明による非水電解液二次電池は、電気二重層キャパシタのように、重量
出力密度とサイクル特性にすぐれるうえに、従来の電気二重層キャパシタの重量エネルギ
ー密度よりも非常に高い重量エネルギー密度を有し、従って、本発明による非水電解液二
次電池はキャパシタ的二次電池ということができる。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら
限定されるものではない。
尚、以下において、正極シートの正極活物質層の空隙率は次式により算出した。
正極シートの正極活物質層の空隙率P(%)=((ST-V)/ST)x100
ここに、Sは正極シートの面積(cm2)、Tは集電板の厚みを除いた正極シートの厚
み(cm)、Vは集電板を除いた正極シートの体積(cm3)である。集電板を除いた正
極シートの体積は、正極シートを構成する材料の重量割合とそれぞれの材料の真密度の値
を用いて、正極シートを構成する材料全体の平均密度を算出しておき、正極シートを構成
する材料の重量の総和をこの平均密度で除することによって求めた。用いた材料の真密度
は、ポリアニリンが1.2、アセチレンブラック(デンカブラック)が2.0、ポリアク
リル酸が1.18である。
実施例1
(テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする導電性ポリアニリン粉末の製造)
イオン交換水138gを入れた300mL容量のガラス製ビーカーに42重量%濃度の
テトラフルオロホウ酸水溶液(和光純薬工業(株)製試薬特級)84.0g(0.402
モル)を加え、磁気スターラーにて攪拌しながら、これにアニリン10.0g(0.10
7モル)を加えた。テトラフルオロホウ酸水溶液にアニリンを加えた当初は、アニリンは
、テトラフルオロホウ酸水溶液に油状の液滴として分散していたが、その後、数分以内に
水に溶解して、均一で透明なアニリン水溶液となった。このようにして得られたアニリン
水溶液は低温恒温槽を用いて-4℃以下に冷却した。
次に、酸化剤として二酸化マンガン粉末(和光純薬工業(株)製試薬1級)11.63g
(0.134モル)を上記アニリン水溶液中に少量ずつ加えて、ビーカー内の混合物の温
度が-1℃を超えないようにした。このようにして、アニリン水溶液に酸化剤を加えるこ
とによって、アニリン水溶液は直ちに黒緑色に変化した。その後、しばらく撹拌を続けた
とき、黒緑色の固体が生成し始めた。
このようにして、80分間かけて酸化剤を加えた後、生成した反応生成物を含む反応混
合物を冷却しながら、更に、100分間、撹拌した。その後、ブフナーロートと吸引瓶を
用いて、得られた固体をNo.2濾紙にて吸引濾過して、粉末を得た。この粉末を約2モ
ル/dm3のテトラフルオロホウ酸水溶液中にて磁気スターラーを用いて撹拌、洗浄し、
次いで、アセトンにて数回、攪拌、洗浄し、これを減圧濾過した。得られた粉末を室温で
10時間真空乾燥して、テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする導電性ポリア
ニリン12.5gを鮮やかな緑色粉末として得た。
(導電性ポリアニリン粉末の分析)
このようにして得られた導電性ポリアニリン粉末のFT-IRスペクトルを図1に示す
。2918cm-1はベンゼン環のC-H伸縮振動、1559及び1479cm-1はベンゼ
ン環の延伸伸縮振動、1297及び1242cm-1はC-N変角振動、1122及び10
84cm-1はポリアニリンにドープしているテトラフルオロホウ酸に由来するピークであ
る。
図2に上記導電性ポリアニリン粉末のESCA(光電子分光法)スペクトルのワイドス
キャンデータを示す。このESCAスペクトルにおいて、炭素、酸素、窒素、ホウ素及び
フッ素が観測されたが、硫黄及びマンガンは観測されなかった。
また、上記導電性ポリアニリン粉末のESCAスペクトルのナロースキャンデータ(図
示せず)に基づいて、導電性ポリアニリンにおける元素比率を求め、これに基づいて、導
電性ポリアニリンにおける窒素原子に対するフッ素の1/4と窒素原子に対するホウ素の
比率、即ち、ドーピング率を求めた結果、(F/4)Nは0.33であり、B/Nは0.
35であった。
更に、上記導電性ポリアニリ粉末は、20000倍の走査型電子顕微鏡写真(SEM)
を図3に示すように、直径約0.1μmの棒状粒子の凝集物であることが認められた。
(導電性ポリアニリン粉末の電導度)
上記導電性ポリアニリン粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測
定用KBr錠剤成形器を用い,300MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、厚み
720μmの導電性ポリアニリンのディスクを得た。ファン・デル・ポー法による4端子
法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は19.5S/cmであった。
(導電性ポリアニリン粉末を含む正極シートの製造)
ポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製重量平均分子量100万)0.1gをイオン交
換水3.9gに加え、一夜、静置して、膨潤させた。この後、超音波式ホモジナイザーを
用いて1分間処理して溶解させて、2.5重量%濃度の均一で粘稠なポリアクリル酸水溶
液4gを得た。
前記導電性ポリアニリン粉末0.8gを導電性カーボンブラック(電気化学工業(株)
製デンカブラック)粉末0.1gと混合した後、これを前記2.5重量%濃度のポリアク
リル酸水溶液4gに加え、スパチュラでよく練った後、超音波式ホモジナイザーにて1分
間分散処理を施して、流動性を有するペーストを得た。このペーストを更に真空吸引鐘と
ロータリーポンプを用いて脱泡した。
テスター産業(株)製卓上型自動塗工装置を用い、マイクロメーター付きドクターブレ
ード式アプリケータによって、塗布速度10mm/秒にて、上記脱泡ペーストを電気二重
層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉(株)製30CB)上に塗布した。次い
で、室温で45分間放置した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥した。この後、
真空プレス機(北川精機(株)製KVHC)を用いて、15cm角のステンレス板に挟ん
で、温度140℃、圧力1.49MPaで5分間プレスして、複合体シートを得た。
この複合体シートにおいて、ポリアクリル酸、導電性ポリアニリン粉末及び導電性カー
ボンブラックからなる正極活物質の空隙率は55%であった。
次に、上記複合体シートを直径15.95mmの打ち抜き刃が据え付けられた打ち抜き
治具にて円盤状に打ち抜いて正極シートとし、負極としては、金属リチウム(本城金属(
株)製コイン型金属リチウム)を用い、セパレータとしては、宝泉(株)製の空隙率68
%の不織布TF40-50を用いて、これらを宝泉(株)製の非水電解液二次電池実験用
のステンレス製HSセルに組み付けた。上記正極シートとセパレータは、HSセルへの組
み付けの前に真空乾燥機にて100℃で5時間、真空乾燥した。電解液には1モル/dm
3 濃度のテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)のエチレンカーボネート/ジメチ
ルカーボネート溶液(キシダ化学(株)製)を用いた。リチウム二次電池は、露点は-1
00℃のグローブボックス中、超高純度アルゴンガス雰囲気下に組み立てた。
組み立てたリチウム二次電池の特性は、電池充放電装置 (北斗電工(株)製SD8)を
用いて、定電流-定電圧充電/定電流放電モードにて行った。即ち、特に断らない限り、
充電終止電圧は3.8Vとし、定電流充電により電圧が3.8Vに到達した後は、3.8
Vの定電圧充電を電流値が定電流充電時の電流値に対して20%の値になるまで行い、こ
の後、放電終止電圧2.0Vまで定電流放電を行った。
上記リチウム二次電池について、充放電電流0.1mA(但し、29~48サイクルの
間は0.2mA)にて充放電サイクル試験を行った結果を図4及び図5に示す。図4は充
放電サイクル数と重量容量密度との関係を示し、図5は充放電サイクル数と重量エネルギ
ー密度との関係を示す。
図4及び図5から明らかなように、本発明によるリチウム二次電池は、重量容量密度と
重量エネルギー密度のいずれも、サイクル数と共に上昇し、62サイクル目で最高値に達
した。その時の重量容量密度は84.6Ah/kgであり、重量エネルギー密度は277
Wh/kgであった。
次に、上記リチウム二次電池について、そのレート特性を調べた。即ち、充放電レート
を0.5Cから110Cまで変化させて、重量容量密度、重量エネルギー密度及び重量出
力密度を測定した。結果を表1に示す。これらの特性値はすべて、正極活物質、即ち、テ
トラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとして有する導電性ポリアニリンの正味重量当
たりに換算したものである。
Figure 0007135054000003
よく知られているように、電池容量がX(mAh)である場合、全容量を1時間かけて
放電するときの電流値はX(mA)であり、このときの放電レートが1Cである。Cは容
量を表わす「capacity」の頭文字をとったものである。従って、2C充放電の電流値は2
X(mA)であり、このとき、充放電は 1/2時間、即ち、30分で終了する。10C
充放電の電流値は10X(mA)となり、このとき、1/10時間、即ち、6分で充放電
が終了する。かくして、Cの大きい値まで充放電できることは、その電池の出力が非常に
大きいことを示し、急速充放電ができることを意味している。表1から明らかなように、
実施例1で組み立てたリチウム二次電池は、100C以上という極めて高い放電レートで
充放電できるので、非常に出力特性の高い電池である。
図6は、上記表1に対応して、0.5Cから110Cの範囲にわたって種々のレートで
充放電したときの重量容量密度と電圧との関係を示すグラフ(充放電曲線)であって、電
流値0.5Cから110Cへと220倍も変化させたにもかかわらず、容量は79Ah/
kgから45.6Ah/kgへと、約60%に低下しただけであって、実施例1で組み立
てたリチウム二次電池が出力特性に非常にすぐれていることを示している。従来、知られ
ているリチウムイオン二次電池であれば、3C程度のレートから容量が著しく低下する。
このように、本発明に従って、ポリアクリル酸と導電性ポリアニリンを含む正極シート
を備えたリチウム二次電池は、キャパシタのような高い重量出力密度とすぐれたサイクル
特性を有し、そのうえ、キャパシタよりも10倍以上もの高い重量エネルギー密度を有す
る。
図7には、前記リチウム二次電池を8.3Cという高い放電レートで6454回まで放
電したときのサイクル特性を示す。充電終止電圧は3.8Vとし、定電流充電により電圧
が3.8Vに到達した後は、3.8Vの定電圧充電を電流値が定電流充電時の電流値に対
して20%の値になるまで行い、この後、放電終止電圧3.0Vまで定電流放電を行った
この結果、サイクル数1000回目でも、初期の重量エネルギー密度の90%を維持し
ている。サイクル数3000回目でも初期の50%を維持しており、通常のリチウムイオ
ン電池に比べて、格段にすぐれたサイクル特性を有している。
比較例1
実施例1において、ポリアクリル酸を用いることなく、実施例1で得られた導電性ポリ
アニリン粉末をそのまま用いて、リチウム二次電池を組み立てた。即ち、宝泉(株)製H
Sセルに金属リチウム負極とセパレータを組み付け、このセパレータを電解液で湿らせた
後、このセパレータ上に所定量の導電性ポリアニリン粉末を付着させて、電池を組み立て
た。
このようにして得られたリチウム二次電池の充放電レートと重量エネルギー密度及び重
量出力密度との関係を表2に示す。また、このようにして得られたリチウム二次電池の充
放電レートと重量エネルギー密度との関係を前述した実施例1によるリチウム二次電池の
レート特性と共に図8に示す。
Figure 0007135054000004
前述した実施例1によるリチウム二次電池に比べて、この比較例1によるリチウム二次
電池は、同じ充放電レートで比較すると、重量エネルギー密度はいずれの充放電レートに
おいても低いことが認められた。
実施例2
負極として、金属リチウムに代えて、エアウォーター(株)製の低結晶性炭素材料であ
るハードカーボンにリチウムをプリドープしたハードカーボン電極を用いた以外はすべて
、実施例1と同様にして、電池を組み立てた。
即ち、グローブボックス中、前記と同じHSセルに直径15.5mmに打ち抜いた金属
リチウムを取り付け、これに不織布製セパレータを重ねた。この後、HSセルに電解液と
して1モル/dm濃度のテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)のエチレンカー
ボネート/ジメチルカーボネート溶液100μLを注入し、最後に直径15.95mmに
打ち抜いたハードカーボン電極を重ねて、リチウム二次電池を組み立てた。
次いで、このように組み立てたリチウム二次電池をグローブボックスから取り出し、ポ
テンショ・ガルバノスタット(北斗電工(株)製HZ-5000)に接続し、カーボン電
極側を作用極に接続し、対極と参照極電極は金属リチウム極に接続した。自然電位は約3
Vであった。
電流値を1mAとして定電流で作用極を還元していくと、作用極の電位は徐々に減少し
て、0.17Vに到達した。このまま、定電流で1時間通電して、ハードカーボン電極を
リチウムにてプリドープした。この後、1mAの定電流で放電すると、容量は195mA
h/gを示した。再度、1mAの定電流でリチウムプリドープを行った後、再度、グロー
ブボックス内にHSセルを移し、セルを分解して、カーボン電極を取り出した。
このようにして得られたリチウムをプリドープしたハードカーボン電極を負極とし、正
極には実施例1と同様にして作製したものを用いて得られたリチウム二次電池によれば、
結果を図9に示すように、実施例1と比較して、より短い15サイクル目で重量エネルギ
ー密度165Wh/kgという高い値に到達した。
実施例3
(還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末の製造)
実施例1における導電性ポリアニリンの製造を10倍スケールアップして行って、テト
ラフルオロホウ酸アニオンがドープされた導電性ポリアニリン粉末を黒緑色の粉末として
得た。
このようにして得たドープ状態の導電性ポリアニリン粉末を2モル/dm3水酸化ナト
リウム水溶液中に投入し、30分間攪拌して、上記導電性ポリアニリンを中和処理して、
ドーパントであるテトラフルオロホウ酸アニオンをポリアニリンから脱ドープした。
濾液が中性になるまで、この脱ドープしたポリアニリンを水洗した後、アセトン中で攪
拌、洗浄し、ブフナーロートと吸引瓶を用いて減圧濾過し、No.2濾紙上に脱ドープし
たポリアニリン粉末を得た。これを室温下、10時間真空乾燥して、脱ドープ状態のポリ
アニリンを茶色粉末として得た。
次に、このようにして得た脱ドープ状態のポリアニリン粉末をフェニルヒドラジンのメ
タノール水溶液中に入れ、攪拌下、30分間還元処理を行った。ポリアニリン粉末は、そ
の色が茶色から灰色に変化した。
このような還元処理の後、得られたポリアニリン粉末をメタノール、次いで、アセトン
で洗浄し、濾別した後、室温下、真空乾燥して、還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末を
得た。この還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末のKBrディスク法によるFt-IRス
ペクトルを図10に示す。
4.4重量%濃度のポリアクリル酸水溶液100gにこのポリアクリル酸の有するカル
ボキシル基の量の半分をリチウム塩化する量の水酸化リチウム粉末0.73gを加えて、
ポリアクリル酸の半リチウム塩水溶液を調製した。
上記還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末4.0gを導電性カーボンブラック(電気
化学工業(株)製デンカブラック)粉末0.5gと混合した後、これを上記ポリアクリル
酸の半リチウム塩水溶液20.4gに加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理した
。更に、この分散液をプライミックス(株)製分散機フィルミックス40-40型にて高
剪断力を用いるマイルド分散処理を行って、流動性を有するペーストを得た。このペース
トを更に真空吸引鐘とロータリーポンプを用いて脱泡した。
テスター産業(株)製卓上型自動塗工装置を用い、マイクロメーター付きドクターブレ
ード式アプリケータによって、塗工速度10mm/秒にて、上記ペーストを電気二重層キ
ャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉(株)製30CB)上に塗布した。次いで、
室温で45分間放置した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥した。この後、真空
プレス機(北川精機(株)製KVHC)を用いて、15cm角のステンレス板に挟んで、
温度140℃、圧力1.49MPaで5分間プレスして、複合体シートを得た。この複合
体シートにおいて、ポリアクリル酸の半リチウム塩、導電性ポリアニリン粉末及び導電性
カーボンブラックからなる正極活物質の空隙率は71%であった。
この複合体シートを直径15.95mmの打ち抜き刃が据え付けられた打ち抜き治具に
て円盤状に打ち抜いて正極シートとし、これを実施例1と同様にHSセルに組み込み、リ
チウム二次電池を組み立てて、電池性能を評価した。図11に充放電サイクル数に対する
重量容量密度の関係を示し、図12に充放電サイクル数に対する重量エネルギー密度の関
係を示す。
このように、テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとするドープ状態の導電性ポ
リアニリン粉末とポリアクリル酸を含む正極活物質に代えて、還元脱ドープ状態のポリア
ニリン粉末とポリアクリル酸の半リチウム塩を含む正極活物質を備えたリチウム二次電池
は、図4及び図5に示す前者のリチウム二次電池の特性と比較すれば明らかなように、充
放電サイクル数に対する重量容量密度と重量エネルギー密度のいずれもが上記テトラフル
オロホウ酸アニオンをドーパントとするドープ状態の導電性ポリアニリンを用いる場合の
約2倍もの高い値を示した。尚、還元脱ドープ状態のポリアニリンを用いる本実施例にお
いては、重量容量密度と重量エネルギー密度の計算には、ドーパント重量を含まない還元
脱ドープ状態ポリアニリン重量のみを用いて算出した。
実施例4~19
本実施例4~19において用いたポリアニリン粉末の製造について以下に説明し、それ
らのポリアニリンのODI(oxidation degree index)、即ち、酸化度指数を表3に示す
本実施例において用いたポリアニリン粉末は以下のようにして製造した。即ち、実施例
1で得られたテトラフルオロホウ酸アニオンによってドープされた導電性ポリアニリン粉
末を2モル/dm3水酸化ナトリウム水溶液中に投入し、マグネチックスターラーで30
分間攪拌した後、水洗、アセトン洗浄し、次いで、得られた中和物を室温下、真空乾燥し
て、脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。
この脱ドープ状態のポリアニリン粉末約0.5mgをN-メチル-2-ピロリドン(N
MP)200mLに溶解させて、青色の溶液を得た。この溶液を光路長1cmの石英製セ
ルに入れ、自記分光光度計にて紫外から可視領域にわたって電子スペクトルを測定した。
得られた電子スペクトルは、340nmと640nmに2つの吸収極大を有し、下式に示
すように、340nmの吸収はポリアニリンのアミン構造(IVb)に帰属されるピーク
であり、640nmの吸収はポリアニリンのキノンジイミン構造(IVa)に帰属される
ピークである。
Figure 0007135054000005
ここで、上記アミン構造に帰属される340nmの吸収極大の吸光度A340に対する上
記キノンジイミン構造に帰属される640nmの吸収極大の吸光度A640の比A640/A34
0としポリアニリンのODIを定義する。従って、ポリアニリンのODIは、ポリアニリ
ンのキノンジイミン構造の割合、即ち、ポリアニリンの酸化状態の割合を示す尺度である
ODIの値が大きいほど、ポリアニリンの酸化度は高く、ODIの値が小さいほど、ポ
リアニリンの酸化度は低く、より還元された状態にある。ポリアニリンが完全に還元され
て、キノンジイミン構造がなく、アミン構造のみからなるときは、A640の値が0である
ので、ODIの値は0である。
上述したテトラフルオロホウ酸アニオンがドープされた導電性ポリアニリン粉末を2モ
ル/dm3水酸化ナトリウム水溶液で処理し、水洗、アセトン洗浄し、真空乾燥して得ら
れた脱ドープ状態のポリアニリンのODIの値は0.87であった。
一方、ポリアクリル酸溶液に関して、表3及び表4に示すように、先ず、重量平均分子
量100万又は2.5万のポリアクリル酸を水又はイソプロパノール(IPA)に溶解さ
せて、表3に示した濃度のポリアクリル酸溶液を調製し、その後、水酸化リチウムを表4
に示した量を加え、溶解させて、バインダ溶液とした。以下、この溶液をポリアクリル酸
(リチウム塩)溶液という。
前述したようにして得られた還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末を表3に示す量を用
いて、これを表3に示す量の導電性カーボンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラ
ック)と混合した後、これを上記ポリアクリル酸(リチウム塩)溶液に加え、超音波ホモ
ジナイザーを用いて分散処理した。ここに、ペースト粘度が高いときには、表4に記載の
希釈溶剤を所定量用いて、次のフィルミックス分散を行うに適切な粘度となるように希釈
した。希釈後の固形分濃度は表4にペースト濃度として記載されている。この後、更に、
プライミクス(株)製分散機フィルミックス40-40型にて高剪断力を用いるマイルド
分散処理を行って、流動性を有するペーストを得た。このペーストを更に真空吸引鐘とロ
ータリーポンプを用いて脱泡した。
ペーストの製造に用いたポリアニリン粉末の量とODI、ポリアクリル酸(リチウム塩
)/ポリアニリンモル比、導電助剤の量、ポリアクリル酸(リチウム塩)溶液中のポリア
クリル酸(リチウム塩)の量と濃度、ポリアクリル酸のリチウム化に用いた水酸化リチウ
ムの量及びポリアクリル酸のリチウム化率を表3と表4に示す。また、得られたペースト
の総重量、固形分、ペースト濃度、ポリアニリン固形分、導電助剤固形分及びポリアクリ
ル酸固形分と共に、集電体上への塗布厚み(ウェット)を表4と表5に示す。
実施例14~19においては、テスター産業(株)製卓上型自動塗工装置を用い、マイ
クロメーター付きドクターブレード式アプリケータによって、塗布速度10mm/秒にて
、上記脱泡ペーストを電気二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉(株)製
30CB)上に表4に示す塗布厚み(ウェット)にて塗布した。次いで、室温で45分間
放置した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥して、表5に示す空隙率を有する正
極活物質層を集電体上に有する複合体シートを得た。
実施例4~13においては、テスター産業(株)製卓上型自動塗工装置を用い、マイク
ロメーター付きドクターブレード式アプリケータによって、塗布速度10mm/秒にて、
上記脱泡ペーストを電気二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉(株)製3
0CB)上に表5に示す塗布厚み(ウェット)にて塗布した。次いで、室温で45分間放
置した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥し、この後、真空プレス機(北川精機
(株)製KVHC)を用いて、15cm角のステンレス板に挟んで、温度140℃、圧力
1.49MPaで5分間プレスして、表5に示す空隙率を有する正極活物質層を集電体上
に有する複合体シートを得た。
次に、このようにして得られた複合体シートを35mm×27mmの寸法に裁断し、複
合体シートの活物質層が27mm×27mmの面積になるように活物質層の一部を除去し
て、その一部の活物質層を除去した部分をタブ電極取り付け箇所として、正極シートを作
製した。この正極シートを用いて、ラミネートセルを組み立てた。負極活物質層の寸法は
、29mm×29mmとして、正極シートよりも僅かに大きくした。
上記正極シート1枚当たりの正極活物質層の構成物質、即ち、ポリアニリン、導電助剤
及びポリアクリル酸の重量をそれぞれ表5に示す。
厚み50μmのアルミニウム箔を正極集電体(アルミニウム箔)にスポット溶接機にて
接続して、正極の電流取り出し用タブ電極とした。このように、予め、タブ電極を取り付
けた正極と負極としてのステンレスメッシュ電極をセパレータと共に温度80℃で真空乾
燥した後、露点-100℃のグローブボックス内で金属リチウムを上記ステンレスメッシ
ュ電極に押し付け、減り込ませて、負極とした。次いで、この正極と負極の間に表5に示
すセパレータを挟み、これらを開口部を残して三縁がヒートシールされたラミネートセル
の中に挿入し、正極と負極が正しく対向するように、また、短絡しないように、セパレー
タの位置を調整し、更に、正極と負極のそれぞれのタブ電極にシール剤を適用した後、電
解液注液口を少し残して、タブ電極部をヒートシールした。
この後、所定量の電解液をラミネートセルの電解液注入口からマイクロピペットで注入
し、最後に、ラミネートセル上部の電解液注入口をヒートシールにて溶封して、ラミネー
トセルを得た。用いた電解液量を表5に示す。
このようにして得られたラミネートセルについて、その電池性能を評価した。表6にそ
の電池性能の評価条件と共に、1サイクル目の初期充電容量、初期放電容量、初期重量容
量密度及び初期重量エネルギー密度と、5サイクル目の放電容量、重量容量密度及び重量
エネルギー密度を示す。
Figure 0007135054000006
Figure 0007135054000007
Figure 0007135054000008
Figure 0007135054000009
実施例20
実施例1において、アニリン10.0gに代えて、o-トルイジン11.47gを用い
た以外は、実施例1と同様にして、テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする酸
化ドープ状態の導電性ポリ(o-トルイジン)を粉末として得た。これを用いて、実施例
1と同様にして、リチウム二次電池を組み立てて、その電池特性を評価した。
上記テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとする導電性の酸化ドープ状態のポリ
(o-トルイジン)のKBr法によるFT-IRスペクトルを図13に示す。また、上記
リチウム二次電池の充放電サイクル数に対する重量容量密度の関係を図14に示し、充放
電サイクル数に対する重量エネルギー密度の関係を図15に示す。但し、上記リチウム二
次電池の上記特性の測定に際しては、1から20サイクルまでは0.1mAの定電流で放
電し、21から40サイクルまでは0.2mAの定電流で放電し、41から60サイクル
までは0.5mAの定電流で放電した。
更に、その後、0.1mAの定電流で放電したときの1~12サイクルまでの充放電サ
イクル数に対する重量容量密度と重量エネルギー密度をそれぞれ図16及び図17に示す
ように、上記リチウム二次電池は安定したサイクル特性を示した。
実施例21
(アントラキノン-2-スルホン酸アニオンをドーパントとする導電性ポリピロール粉末
の製造)
ピロール25g(0.373モル)をイオン交換水430g に攪拌下に溶解して、5
.5重量%水溶液を調製し、これにアントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム1水和物
30.5g(0.093モル)を溶解した。
次いで、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムを含むピロール水溶液に室温下、
35重量%濃度のペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液243gを2時間かけて少量ずつ
滴下した。反応終了後、ブフナーロートと吸引瓶を用いて減圧濾過して、黒色粉末を得た
。これを水洗、アセトン洗浄した後、デシケータ中、室温で10時間真空乾燥して、アン
トラキノン-2-スルホン酸アニオンをドーパントとして有する導電性ポリピロール25
.5gを黒色粉末として得た。図18にこのようなドープ状態の導電性ポリピロール粉末
のFT-IRスペクトルを示す。
3455cm-1はピロール環のN-H伸縮振動、1670cm-1はアントラキノン-2
-スルホン酸アニオンのアントラキノン環のカルボニル基伸縮振動、1542cm-1はピ
ロール環のC-C二重結合伸縮振動、1453cm-1はピロール環のC-H変角振動、1
290cm-1はピロール環のC-N伸縮振動、1164cm-1はアントラキノン-2-ス
ルホン酸アニオンのS-O二重結合の伸縮振動である。
また、ESCA測定によって求めた上記導電性ポリピロール粉末のS/N原子比は0.
15であり、従って、アントラキノン-2-スルホン酸アニオンのドーピング率は0.1
5であった。
(導電性ポリピロール粉末の電導度)
上記導電性ポリピロール粉末130mgを錠剤成形器によって加圧成形して、直径13
mm、厚み700μmのディスク状成形物を得た。この成形物について、ファン・デル・
ポー法にて電導度を測定したところ、10S/cmであった。
(導電性ポリピロール粉末を含む正極シートの製造)
上記導電性ポリピロール粉末3gをカーボンブラック(電気化学工業(株)製デンカブ
ラック)0.44gと混合し、これをポリアクリル酸の有するカルボキシル基の半分をリ
チウム塩化したポリアクリル酸の半リチウム塩の4.5重量%濃度の水溶液24gに加え
、スパチュラで混合した後、超音波式ホモジナイザーにて分散処理して分散液を得た。こ
の分散液にイオン交換水5gを加えた後、更に超音波式ホモジナイザーにて分散処理して
、ペーストを得た。次いで、このペーストをプライミックス(株)製分散機フィルミック
ス40-40型を用いて、線速20m/秒で30秒間、高剪断力を用いるマイルド分散処
理を行って、粘性のあるペーストを得た。
次いで、実施例1と同様にして、テスター産業(株)製卓上型自動塗工機を用い、マイ
クロメーター付きドクターブレード型アプリケータによって、厚み30μmの電気二重層
キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉(株)製30CB)上に塗工速度10mm
/秒にて塗布し、室温で45分間風乾した後、温度100℃のホットプレート上で更に乾
燥して、複合体シートを得た。
この複合体シートにおいて、導電性ポリピロール粉末、ポリアクリル酸及び導電性カー
ボンブラックからなる正極活物質の空隙率は65.9%であった。
次に、上記複合体シートを直径15.95mmの打ち抜き刃が据え付けられた打ち抜き
治具にて円盤状に打ち抜いて正極シートとした。この正極シートと共に、負極として金属
リチウム(本城金属(株)製コイン型金属リチウム)を用い、セパレータとして宝泉(株
)製の空隙率68%の不織布TF40-50を用いて、これらを宝泉(株)製の非水電解
液二次電池実験用のステンレス製HSセルに組み付けた。上記正極シートとセパレータは
、HSセルへの組み付けの前に真空乾燥機にて100℃で5時間、真空乾燥した。電解液
には1モル/dm3 濃度のテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)のエチレンカー
ボネート/ジメチルカーボネート溶液(キシダ化学(株)製)を用いた。リチウム二次電
池は、露点 は-100℃のグローブボックス中、超高純度アルゴンガス雰囲気下に組み
立てた。
組み立てたリチウム二次電池の特性の評価は、電池充放電装置(北斗電工(株)製SD
8)を用いて、定電流-定電圧充電/定電流放電モードにて行った。即ち、特に断らない
限り、充電終止電圧は3.8Vとし、定電流充電により電圧が3.8Vに到達した後は、
3.8Vの定電圧充電を電流値が定電流充電時の電流値に対して20%の値になるまで行
い、この後、放電終止電圧2.0Vまで定電流放電を行った。
上記リチウム二次電池について、充放電レート0.05Cにて行った充放電試験におけ
る重量容量密度の測定結果を図19にPALiDR=0.31(1)及び(2)の曲線で
示す。ここに、PALiDR=0.31は、正極活物質の調製において、ポリアクリル酸
の半リチウム塩の量(モル)をポリピロールの有する窒素原子(モル数)の0.31倍(
即ち、DR(ドーピング率)が0.31)としたことを示す。
正極が導電性ポリピロールを含むリチウム二次電池は、所定の容量が発現するまでにあ
る程度の充放電サイクルを行うこと、即ち、初期活性化が必要である。従って、図19は
、正極が導電性ポリピロールを含むリチウム二次電池の初期活性化の過程における充放電
サイクル数と重量容量密度の関係を示すグラフである。
ポリピロールのドーピング率は、これまで、通常、0.25といわれており、このとき
のポリピロールの重量当たりの理論重量容量密度は103mAh/g である。しかし、
図19に導電性ポリピロールとポリアクリル酸を含むリチウム二次電池の特性をPALi
DR=0.31の曲線で示したように、正極におけるポリピロール重量当たりの容量密度
は103mAh/gを超えて、120~130mAh/gという高い値を示す。この値は
ポリピロールのドーピング率に換算すると、0.3以上の値となり、従来、いわれている
0.25というドーピング率を超える高い値を示している。
バインダとして、ポリアクリル酸リチウムに代えて、スチレン-ブタジエン共重合体(
SBR)/カルボキシメチルセルロース(CMC)混合物からなるバインダを用いて作製
した正極シートを含むリチウム二次電池の充放電サイクル試験の結果も、SBR/CMC
(1)及び(2)の曲線として図19に示す。
次に、図20において、PPy-PALiは導電性ポリピロールとポリアクリル酸を含
む正極を備えたリチウム二次電池について、充放電電流値を0.05Cから100Cまで
増加させたときの重量容量密度をプロットしたもの、即ち、レート特性を示す。同様に、
PPy-SBR/CMCは導電性ポリピロールとSBR/CMCを含む正極を備えたリチ
ウム二次電池のレート特性を示す。いずれのリチウム二次電池も、10C以上の高い充放
電レートにおいて高い容量密度を維持しており、急速充放電特性にすぐれている。
図21は、上記導電性ポリピロールとポリアクリル酸を含む正極を備えたリチウム二次
電池(PPy-PALi0.5)と導電性ポリピロールとSBR/CMCを含む正極を備
えたリチウム二次電池(PPy-SBR/CMC)について、充放電レートが10Cとい
う高いレートでのサイクル特性を示し、400回という比較的長い充放電サイクルにおい
ても、85~90%という高い容量維持率を示している。
比較例2
実施例21において、バインダとしてポリアクリル酸とSBR/CMCのいずれをも用
いることなく、実施例21で得られた導電性ポリピロール粉末をそのまま用いて、リチウ
ム二次電池を組み立てた。即ち、宝泉(株)製HSセルに金属リチウム負極とセパレータ
を組み付け、このセパレータを電解液で湿らせた後、このセパレータ上に所定量の導電性
ポリピロール粉末を付着させて電池を組み立てた。
このようにして得られたリチウム二次電池の初期活性化過程の重量密度データと充放電
レート特性を図19において「バインダなし」(no binder)(1)及び(2)の曲線とし
てと、図20においてPPy-「バインダなし」(no binder) の曲線として示す。正極
がポリアクリル酸やSBR/CMCをバインダとして含まないときは、図19の「バイン
ダなし」の結果にみられるように、得られるリチウム二次電池の重量容量密度は理論容量
密度の103mAh/gを下回っており、本発明に従ってポリアクリル酸やSBR/CM
Cをバインダとして用いて得られるリチウム二次電池に比べて、明らかに容量が小さい。
また、レート特性においても、上記リチウム二次電池は、図20の「PPy-バインダ
なし」の結果にみられるように、本発明に従ってポリアクリル酸をバインダとして用いて
得られたリチウム二次電池に比べて劣っていることが明らかである。
実施例22
(導電性ポリアニリン粉末を含む正極シートの製造)
実施例1において得た導電性ポリアニリン粉末4.00gを導電性カーボンブラック(
電気化学工業(株)製デンカブラック)粉末0.45gと混合し、得られた混合物をポリ
マレイン酸水溶液(日油(株)製「ノンポールPMA-50W」、ポリマレイン酸50重
量%含有)1.43g及び蒸留水16.0gとスパチュラでよく混練した。得られた混練
物を超音波式ホモジナイザーにて5分間超音波処理を施した後、プライミックス(株)製
分散機フィルミックス40-40型を用い、周速20m/分で30秒間高速攪拌を行って
、流動性を有するペーストを得た。このペーストを3分間脱泡処理した。
テスター産業(株)製卓上型自動塗工装置を用いて、マイクロメーター付きドクターブ
レード式アプリケータで塗布速度10mm/秒として、上記脱泡処理したペーストを電気
二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉(株)製30CB)上に塗布した。
次いで、室温で45分間放置した後、温度100℃のホットプレート上で1時間乾燥して
、複合体シートを得た。
この複合体シートにおいて、導電性ポリアニリン粉末、導電性カーボンブラック及びポ
リマレイン酸からなる正極活物質層は、厚み44μm、空隙率56%であった。
この後、実施例4~19に示したのと同じ方法にてラミネートセルを作製した。正極シ
ートの活物質層の製造に用いた材料、ペースト配合、活物質層中の材料比率、ラミネート
セル作製条件及び電池特性データを表7から表10に示す。ポリマレイン酸をバインダと
して用いたラミネートセルは、ポリアクリル酸バインダを用いた場合と同様に、高い容量
密度とエネルギー密度を示した。
Figure 0007135054000010
Figure 0007135054000011
Figure 0007135054000012
Figure 0007135054000013
実施例23
(還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末を含む正極シートの製造)
ポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製重量平均分子量100万)4.4gをイオン交
換水95.6gに加え、一夜静置して膨潤させた。この後、超音波式ホモジナイザーを用
いて1分間処理して溶解させ、4.4重量%濃度の均一で粘稠なポリアクリル酸水溶液1
00gを得た。
得られたポリアクリル酸水溶液100gにポリアクリル酸の有するカルボキシル基の量
の半分をリチウム塩化する量の水酸化リチウム粉末0.73gを加えて、ポリアクリル酸
の半リチウム塩水溶液を調製した。
実施例3において得られた還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末4.0gを導電性カー
ボンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラック)粉末0.5gと混合し、得られた
混合物を上記4.4重量%濃度のポリアクリル酸の半リチウム塩水溶液20.4gに加え
、スパチュラでよく混練した。
得られた混練物に超音波式ホモジナイザーにて1分間超音波処理を施した後、プライミ
ックス(株)製分散機フィルミックス40-40型にて高剪断力を加えるマイルド分散処
理を行って、流動性を有するペーストを得た。このペーストを更に真空吸引鐘とロータリ
ーポンプを用いて脱泡した。
テスター産業(株)製卓上型自動塗工装置を用いて、マイクロメーター付きドクターブ
レ-ト゛式アプリケータで溶液塗工厚みを360μmに調整し、塗布速度10mm/秒に
て、上記脱泡ペーストを電気二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉(株)
製30CB)上に塗布した。
次いで、室温で45分間放置した後、温度100°Cのホットプレート上で乾燥した。
この後、真空プレス機(北川精機(株)製KVHC)を用いて、15cm角のステンレス
板に挟んで、温度140°C、圧力1.5MPaで5分間プレスして、複合体シートを得
、これを正極シートとした。
(ラミネートセルの作製)
セパレータとしては宝泉(株)より入手したポリプロピレン多孔質膜(セルガード社製
、Celgard 2400、厚さ25μm、空孔率38%、通気度620秒/100c
3)を2枚重ねて用いた。負極には本城金属(株)から入手した厚み50μmの金属リ
チウム箔を用いた。
次に、正極、負極及びセパレータを用いて積層体を組み立てた。より詳細には、上述し
た正極と負極の間にセパレータを介在させて積層して積層体を得た。この積層体をアルミ
ニウムラミネートパッケージに入れた後、80℃で2時間、真空乾燥した。
別に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを1:1の体積比で含む溶媒に
LiPF6を1mol/dm3の濃度で溶解させて電解液を調製し、これを上記真空乾燥し
たパッケージに注入した後、パッケージを封口して、本発明による非水電解液二次電池を
得た。尚、上記パッケージへの電解液の注入はグローブボックス中、超高純度アルゴンガ
ス雰囲気下にて行った。グローブボックス内の露点は-90℃以下であった。
このようにして組み立てた非水電解液二次電池の特性の評価は、セルを25℃の恒温槽
内に静置し、電池充放電装置(北斗電工(株)製SD8)を用いて、定電流-定電圧充電
/定電流放電モードにて行った。充電電流は0.174mAで測定した。充電終止電圧は
3.8Vとし、定電流充電により電圧が3.8Vに到達した後は、3.8Vの定電圧充電
を電流値が0.035mAに減衰するまで行い、得られた容量を充電容量とした。この後
、放電終止電圧2.0Vまで定電流放電を行った。放電電流は0.174mAで行った。
このようにして得られたラミネートセルについて、その電池性能を評価した。1サイク
ル目の充電容量は3.7mAh、放電容量は3.7mAh、重量容量密度は157Ah/
kg、重量エネルギー密度は502Wh/kgであり、3サイクル目の放電容量は3.5
mAh、重量容量密度は149Ah/kg、重量エネルギー密度は480Wh/kgであ
った。
ここで、本発明において用いるポリアニリン粒子の有する「ひだ状構造」について説明
する。ポリアニリン粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察によれば、ポリアニリン粒子
の周辺部は、「ひだ状構造」と呼ぶことができる20~300nmの突起部からなる微細
な凹凸構造を有している。このような「ひだ状構造」は、ポリアニリン粉末をルテニウム
酸蒸気に曝して、重金属染色した後、TEM観察することによって確認される。重金属染
色をしない場合は、「ひだ状構造」は明瞭には観測されない。
ポリアニリン粉末の重金属染色は次のようにして行った。還元脱ドープ状態ポリアニリ
ン粉末をガラス製サンプル瓶に入れ、この容器とルテニウム酸の入った同じガラス製サン
プル瓶容器の口を向き合う形で合わせ、接合部をポリオレフィンフィルム「パラフィルム
」(3M製伸縮粘着性密閉シール用フィルム)でシールすることによって、ポリアニリン
粉末をルテニウム酸蒸気に曝して、重金属染色した。
この重金属染色したポリアニリン粉末を包埋樹脂(エポキシ樹脂)中に入れて硬化させ
た後、ミクロトームにて超箔切片を作製して、TEM観察に供した。図22に実施例3に
おいて得られた還元脱ドープ状態ポリアニリンのルテニウム酸染色後のTEM画像を示す
。白くみえる部分が包埋樹脂部であり、当初は空隙であった部分である。灰色にみえる部
分がポリアニリン部分であり、ポリアニリンの界面部分に黒くみえるのが「ひだ状構造」
の部分である。外部界面と内部界面の両面に発達していることが観察される。
上述したように、「ひだ状構造」はポリアニリン粒子の周辺部に20~300nmの突
起部からなるものとして観察される。ポリアニリン粒子は、このような「ひだ状構造」に
よって大きい比表面積を有する。従って、ポリアニリン粒子の有する「ひだ状構造」は、
本発明によるポリアニリンを含む正極を備えたリチウム二次電池の高入出力特性を支える
要因の1つである可能性がある。
実施例3に記載した還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末、導電助剤及びポリアクリル
酸からなる正極シートのTEM観察においても、上記「ひだ状構造」が確認される。実施
例3の正極シートの面方向の断面のTEM画像を図23に示す。このTEM画像において
、左上の黒い部分は包埋樹脂部分であり、当初は空隙であった部分である。左下の灰色部
分はポリアニリンの多い相であり、これに隣接して、ほぼ中央部にみられる白色部と灰色
部が微細に混じり合った部分は、導電助剤のカーボンブラックとポリアクリル酸の多い相
である。ポリアニリンの多い相の端部にみられる凹凸部が「ひだ状構造」である。
ポリアニリン粒子についてみられた「ひだ状構造」が正極シートの断面のTEM画像か
らも確認された。即ち、正極においても、ポリアニリン粒子表面に「ひだ状構造」が存在
することが確認された。
実施例24
実施例20において、導電性ポリ(o-トルイジン)の製造を10倍スケールアップし
て行って、テトラフルオロホウ酸アニオンがドープされた導電性ポリ(o-トルイジン)
粉末を黒緑色粉末として得た。
このようにして得たドープ状態の導電性ポリ(o-トルイジン)粉末を2モル/dm3
水酸化ナトリウム水溶液中に投入し、30分間攪拌して、導電性ポリ(o-トルイジン)
を中和処理し、かくして、ドーパントであるテトラフルオロホウ酸アニオンをポリ(o-
トルイジン)から脱ドープした。
上記脱ドープしたポリ(o-トルイジン)をその濾液が中性になるまで水洗した後、ア
セトン中で攪拌、洗浄し、次いで、ブフナーロートと吸引瓶を用いて減圧濾過して、No
.2濾紙上に脱ドープしたポリ(o-トルイジン)粉末を得た。このポリ(o-トルイジ
ン)粉末を室温下、10時間真空乾燥して、脱ドープ状態のポリ(o-トルイジン)を茶
色粉末として得た。
次に、このようにして得た脱ドープ状態のポリ(o-トルイジン)粉末をフェニルヒド
ラジンのメタノール水溶液中に入れ、攪拌下、30分間還元処理を行った。ポリ(o-ト
ルイジン)粉末は、その色が茶色から灰色に変化した。
このように還元処理したポリ(o-トルイジン)粉末をメタノール、次いで、アセトン
で洗浄し、濾別した後、室温下、真空乾燥して、還元脱ドープ状態のポリ(o-トルイジ
ン)粉末を得た。この還元脱ドープ状態のポリ(o-トルイジン)粉末のKBrディスク
法によるFT-IRスペクトルを図24に示す。
4.4重量%濃度のポリアクリル酸水溶液100gにこのポリアクリル酸の有するカル
ボキシル基の量の半分をリチウム塩化する量の水酸化リチウム粉末0.73gを加えて、
ポリアクリル酸の半リチウム塩水溶液を調製した。
上記還元脱ドープ状態のポリ(o-トルイジン)粉末3.0gを導電性カーボンブラッ
ク(電気化学工業(株)製デンカブラック)粉末0.375gと混合した後、これを上記
ポリアクリル酸の半リチウム塩水溶液13.3gに加え、超音波ホモジナイザーを用いて
分散処理した。得られた分散液をプライミックス(株)製分散機フィルミックス40-4
0型にて高剪断力を用いるマイルド分散処理を行って、流動性を有するペーストを得た。
このペーストを更に真空吸引鐘とロータリーポンプを用いて脱泡した。
テスター産業(株)製卓上型自動塗工装置を用い、マイクロメーター付きドクターブレ
ード式アプリケータで塗工速度10mm/秒にて、上記ペーストを電気二重層キャパシタ
用エッチングアルミニウム箔(宝泉(株)製30CB)上に塗布した。次いで、室温で4
5分間放置した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥して、複合体シートを得た。
この複合体シートにおいて、ポリアクリル酸の半リチウム塩、還元脱ドープ状態のポリ(
o-トルイジン)粉末及び導電性カーボンブラックからなる正極活物質の空隙率は72%
であった。
上記複合体シートを直径15.95mmの打ち抜き刃が据え付けられた打ち抜き治具に
て円盤状に打ち抜いて正極シートとし、これを実施例1と同様にHSセルに組み込み、リ
チウム二次電池を組み立てて、電池性能を評価した。図25に充放電サイクル数に対する
重量容量密度の関係を示す。
このように、テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとするドープ状態の導電性ポ
リ(o-トルイジン)に代えて、還元脱ドープ状態のポリ(o-トルイジン)を用いてな
るリチウム二次電池は、図14と比較すれば明らかなように、充放電サイクル数に対する
重量容量密度が上記テトラフルオロホウ酸アニオンをドーパントとするドープ状態の導電
性ポリ(o-トルイジン)を用いた場合の約2.5倍もの高い値を示すことが理解される
尚、還元脱ドープ状態のポリ(o-トルイジン)を用いる本実施例においては、重量容
量密度の計算には、ドーパント重量を含まない還元脱ドープ状態ポリ(o-トルイジン)
重量のみを用いて算出した。
比較例3
(スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)/ポリ(N-ビニルピロリドン)混合物
からなるバインダと還元脱ドープ状態のポリアニリンを含む正極シートを備えたリチウム
二次電池の特性)
実施例3において得られた還元脱ドープ状態ポリアニリン粉末4.8gと導電性カーボ
ンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラック)粉末0.6gを乾式混合した。別に
、SBRエマルジョン(JSR(株)製TRD2001、SBR含有量48重量%)0.
37gとポリ(N-ビニルピロリドン)溶液(日本触媒(株)製K-90W、含有量19
.8重量%)2.12gを混合し、よく攪拌して、白色水分散液を得た。
この分散液に上記還元脱ドープ状態ポリアニリン粉末と導電性カーボンブラックの混合
粉末を投入し、イオン交換水6.9gを加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理し
た。更に、この分散液をプライミックス(株)製分散機フィルミックス40-40型にて
高剪断力を用いるマイルド分散処理を行って、流動性を有するペーストを得た。このペー
ストを更に真空吸引鐘とロータリーポンプを用いて脱泡した。
この後、実施例3と同様にして、上記バインダを用いて正極シートを作製し、HSセル
に組み込んで、リチウム二次電池を組み立て、その電池特性を評価した。放電レート0.
05Cのときの初期重量容量密度は100Ah/kgであった。充放電電流値を変化させ
ながら測定したレート試験の結果を図26に示す。
図26に示す結果から明らかなように、上記リチウム二次電池の重量容量密度は100
Ah/kg程度であり、また、レート試験においても、5Cでほぼ容量が取り出せなくな
った。かくして、本発明に従って、ポリカルボン酸を含むバインダを用いて作製した正極
を備えたチウム二次電池に比べて、レート特性は極めて悪いものであった。
比較例4
(ポリスチレンスルホン酸からなるバインダと還元脱ドープ状態のポリアニリンを含む正
極シートを備えたリチウム二次電池の特性)
実施例3において、ポリアクリル酸の半リチウム塩水溶液20.4gに代えて、30重
量%濃度のポリスチレンスルホン酸溶液(シグマ-アルドリッチ製試薬)7.5gを用い
た以外は、同様にして、HSセルを作製して、リチウム二次電池の特性を評価した。
その結果、得られたリチウム二次電池の重量容量密度は極めて低く、充放電サイクル回
数と共に徐々に少しずつ増大してはいるが、50サイクル時点でも、精々、2.2mAh
/g程度であった。このように、スルホン酸基を有するポリマーをバインダとして用いて
得られる正極を備えたリチウム二次電池は、重量容量密度の値は極めて低く、電池特性は
劣るものであった。












Claims (4)

  1. (a)導電性ポリマーと、
    (b)導電性ポリマーのバインダーとしてのポリカルボン酸及びその金属塩から選ばれる少なくとも1種又はスチレン-ブタジエン共重合体とカルボキシメチルセルロースとの混合物を含む正極活物質層を集電体上に有する複合体からなる非水電解液二次電池用正極シートであって、
    上記導電性ポリマーが脱ドープ状態のポリマーであり、
    上記導電性ポリマーを構成するポリマーがポリアニリン、ポリ(o-トルイジン)及びポリピロールから選ばれる少なくとも1種であり、
    上記ポリカルボン酸がポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、及びこれらポリマーの繰り返し単位の少なくとも2種を含む共重合体から選ばれる少なくとも1種の分子中にカルボキシル基を有するポリマーであることを特徴とする非水電解液二次電池用正極シート。
  2. 導電性ポリマーを構成するポリマーがポリアニリン及びポリ(o-トルイジン)から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水電解液二次電他用正極シート。
  3. ポリカルボン酸金属塩がポリカルボン酸アルカリ金属塩及びポリカルボン酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の非水電解液二次電他用正極シート。
  4. 非水電解液リチウム二次電池用である請求項1~3のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極シート。
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