JP6067712B2 - エンジンおよびピストン - Google Patents

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Description

本発明は、燃焼室の断熱性を高めたエンジンおよびピストンに関する。
エンジンは、ボアを有するシリンダブロックと、燃焼室を形成するようにボアに往復移動可能に嵌合されたピストンと、燃焼室を閉じ且つ燃焼室に連通するバルブ孔をもつシリンダヘッドと、バルブ孔を開閉させるバルブとを有する。燃費を向上させるためには、燃焼室の断熱性を高めることが好ましい。特に、ハイブリッド車両、または、アイドリングストップ機能付きの車両等のように、燃費向上を図る車両では、車両の走行中または一時停車中においてエンジンの駆動を一時的に停止させることがある。この場合、エンジンの燃焼室の温度が低下する傾向があるため、エンジンの燃費の向上には限界がある。
特許文献1は、ピストン本体の頂面に低熱伝導部材を被覆させたピストンを開示する。このものでは、低熱伝導部材は、ピストン本体を形成するアルミニウム材料よりも熱伝導率が低い金属材料(チタン等)で形成されており、ピストン本体の頂面との間に断熱用の空気膜を形成している。特許文献2、3は、ピストンの頂面にセラミックス溶射によって断熱材を形成したエンジンを開示する。特許文献4は、平均粒子径5〜27μmの中空粒子を有する断熱塗装層を金属板表面に形成してなる塗装金属板を開示する。特許文献5は、エンジン燃焼室の内面に、空孔率が20%以上である陽極酸化被膜を形成する技術を開示する。特許文献6は、平均粒子径5〜15ナノメートルの中空粒子と樹脂材料を配合する断熱膜の記載がある。
しかし、特許文献1では、ピストンに用いられるアルミニウムは、比重が2.7、熱伝導率が130W/mK、熱膨張率が23×10−6/℃であり、断熱材に用いられるチタンは、比重が4.5、熱伝導率が17W/mK、熱膨張率が8.4×10−6/℃である。チタンからなる断熱材で十分な断熱を発揮させるには、断熱材をミリオーダーの厚みとする必要がある。その反面、チタンは、アルミニウムに対して重い。チタンを断熱材に用いると、高速で往復運動するピストンにとっては重量増となり、燃費向上を妨げる。また、断熱材の重量と厚み、断熱材とピストンとの熱膨張率の違いにより、断熱材とピストンとの間の接合面の強度を維持することができない。
特許文献2,3では、セラミックス溶射からなる断熱材が用いられているが、溶射処理前よりも溶射処理後に面が荒れてしまう。セラミックス溶射からなる断熱材をピストンの頂面に形成した場合、表面粗さの微細な凸部が点火要因となるヒートスポットになり、エンジンにノッキングの原因となり易い。また、セラミックス溶射からなる断熱材は硬質であるため、後加工が困難である。
特許文献4で開示する塗装金属板を内燃機関に用いた場合、金属板表面に形成された塗装膜中の中空粒子の配合量に限界がある。
特許文献5は、陽極酸化処理による断熱膜の記載があるが、処理前よりも処理後に面が荒れてしまい、ピストン頂面に陽極酸化処理を施した場合、表面粗さの微細な凸部が、点火要因となるヒートスポットになり、エンジンにノッキングが生じる原因となり易い。特許文献6に開示された中空粒子と樹脂材料とからなる断熱膜は、成膜性を維持するために断熱性や被膜強度に限界がある。断熱膜の耐熱性が不十分である。
そこで、発明者は、高い断熱性および高い表面平滑性を備える断熱コーティング膜を形成するべく、鋭意探求した。近年、圧縮比の高いエンジンに対応することが求められている。かかる状況の中、断熱膜の表面平滑性及び断熱性を高めることが益々必要とされている。
特開2005−76471号公報 特開2009−30458号公報 特開2010−71134号公報 特開2010−228223号公報 特開2010−249008号公報 特開2012−172619号公報(特願2011−036501)
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、ノッキングを抑え、高い断熱性および高い表面平滑性を備える断熱コーティング膜を有することにより燃費の向上に貢献できるエンジンおよびピストンを提供することを課題とする。
(1)本発明に係るエンジンは、ボアを有するシリンダブロックと、燃焼室を形成するように前記ボアに往復移動可能に嵌合されたピストンと、前記燃焼室を閉じ且つ前記燃焼室に連通するバルブ孔をもつシリンダヘッドと、前記バルブ孔を開閉させるバルブとを具備するエンジンであって、
前記ピストン、前記シリンダヘッド、前記バルブのうちいずれか一つ以上は、前記燃焼室に対向する壁面と、前記壁面を被覆する断熱コーティング膜とを有し、
前記断熱コーティング膜は、前記壁面の表面に形成された断熱層と、前記断熱層の表面に形成された無機系被膜層とを有し、
前記断熱層は、樹脂と、前記樹脂埋設され前記断熱層の厚みよりも小さい平均粒子径をもつ第1の中空粒子とを有し、
前記無機系被膜層は、無機化合物と、前記無機系被膜層の厚みよりも小さい平均粒子径をもつ第2の中空粒子とを有し、
前記無機系被膜層は、最表層部と、前記最表層部よりも厚み方向で内側であって且つ前記断熱層と対面している内部とを有し、
前記最表層部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径は、前記内部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径よりも小さい
断熱コーティング膜は、壁面の表面に形成された断熱層と、断熱層の表面に形成された無機系被膜層とからなる。断熱層は、樹脂と第1の中空粒子とを有する。第1の中空粒子は、樹脂の内部に埋設されている。第1の中空粒子の平均粒子径は、断熱コーティング膜の厚みよりも小さい。断熱コーティング膜は高い空隙率を備えており、高い断熱性を有するため、燃焼室の断熱性を高めることができ、エンジンの燃費向上に貢献できる。ここで、第1の中空粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡観察における単純平均とする。
無機系被膜層は、無機化合物を有するため、耐熱性が高い。無機系被膜層により断熱層の表面を被覆することで、燃焼室から断熱層に伝達する熱を緩和することができる。
また、断熱層に含まれる中空粒子の配合量を増やしたときに、断熱層にクラックが発生するおそれがある。しかし、断熱層にクラックが発生したとしても、断熱層表面を無機化合物からなる無機系被膜層により被覆することで、断熱層を維持することができる。そのため、断熱層の断熱性や被膜強度の低下を防止することができる。
エンジンにおいて、ピストンのうち燃焼室に対面する壁面に相当する頂面にセラミックス溶射膜が被覆されている場合には、セラミックス溶射膜の表面粗さの改善には限界がある。セラミックス溶射膜を微視的にみれば、溶射膜のうち燃焼室に対面する表面には微視的な凸部が多数形成されている。このような凸部は、ヒートスポットになり、エンジンの燃焼工程を誘発させる要因ともなり、エンジンにノッキングが発生する確率が増加するおそれがある。この点について本願発明によれば、断熱コーティング膜は、高い表面平滑性を備えている。しかも、断熱層を無機系被膜により被覆することで、断熱コーティング膜の断熱性を更に向上させることができ、エンジンの耐ノッキング性が高まる。
本発明に係るエンジンによれば、断熱コーティング膜は、樹脂の内部に中空粒子を埋設させた断熱層と、断熱層の表面を被覆する無機系被膜層とを有する。断熱層は、樹脂と共に、樹脂の内部に埋設され断熱層の厚みよりも平均粒子径が小さな複数の第1の中空粒子を有するため、樹脂と第1の中空粒子との複合作用を期待できる。即ち、第1の中空粒子はナノサイズであるため破壊されにくい性質をもつ。爆発工程における燃焼室の圧力を断熱コーティング膜の表面が受圧するとき、樹脂と中空粒子との総合作用を期待できる。断熱コーティング膜の強度を保ちながら樹脂が受圧した圧力を第1の中空粒子の僅かな弾性変形で緩和することを期待できる。このため断熱層の樹脂に亀裂が発生しにくくなる。なお本発明者が実施した試験例によれば、断熱層が樹脂のみで形成されており、第1の中空粒子を含有していないときには、断熱層に亀裂が発生し易かった。
更に、本発明によれば、断熱層の表面が無機系被膜層により被覆されている。無機系被膜層による被覆により、断熱層に更なる耐熱性が付与され、且つ断熱層にクラックが発生していても、断熱性及び被膜強度の低下を防止できる。
本発明に係るエンジンにおいて、無機系被膜層は、無機化合物と、第2の中空粒子とを有する。この場合には、断熱層だけでなく無機系被膜層の断熱性も高くなり、断熱コーティング膜全体の断熱効果が向上する。
本発明に係るエンジンにおいて、無機系被膜層の最表層部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径は、無機系被膜層の最表層部よりも厚み方向で内側の内部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径よりも小さい。無機系被膜層の表面平滑性を更に向上させることができる。
(2)本発明に係るエンジンにおいて、第1の中空粒子の平均粒子径は、1μm〜100μmであることが好ましい
(3)本発明に係るエンジンにおいて、無機系被膜層の厚みは、10μm〜300μmであることが好ましい。無機系被膜層が厚いほど、燃焼室内の高温が無機系被膜層を通じて断熱層に伝達しにくくなる。このため、無機系被膜層が厚いほど、断熱コーティング膜の耐熱性が向上する。無機系被膜層の厚みが10μm〜300μmである場合には、無機系被膜層による耐熱性の効果を高く維持しつつ、成膜性を確保できる。
(4)本発明に係るエンジンにおいて、無機系被膜層を構成する無機化合物は、シリカ、ジルコニア、アルミナ、及びセリアの中から選ばれる1種以上からなることが好ましい。これらの材料から構成された無機系被膜層は、耐熱性に優れる。
(5)本発明に係るエンジンにおいて、前記無機系被膜層は、シリカを有する塗膜であることが好ましい。
(6)本発明に係るエンジンにおいて、前記内部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径は、1μm〜500μmであることがよく、更に、100μm以下であることが好ましい。
(7)本発明に係るエンジンにおいて、無機系被膜層の最表層部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径は、10nm〜500nmあることが好ましい。無機系被膜層の表面平滑性を更に向上させることができる。ここで、第2の中空粒子の平均粒子径は、子顕微鏡観察における単純平均とする。
(8)本発明に係るエンジンにおいて、断熱層の厚みは10μm〜2000μmであり、第1の中空粒子の平均粒子径は1μm〜100μmであることが好ましい。第1の中空粒子を断熱コーティング膜に分散させる分散性を高めることができ、第1の中空粒子を断熱コーティング膜の樹に効率よく埋設させることができる。
(9)本発明に係るエンジンにおいて、断熱層の見掛け体積を100%とするとき、断熱層空隙率は、5%以上90%以下であることが好ましい。断熱層の断熱効果が更に向上する。
(10)本発明に係るエンジンにおいて、断熱コーティング膜の無機系被膜層の前記最表層部の表面粗さは、前記壁面の表面粗さよりも小さいことが好ましい。即ち、断熱コーティング膜の被覆後の壁面の表面粗さは、被覆前の表面粗さよりも小さいことが好ましい。壁面の表面粗さにより形成された凸部は、ヒートスポットになり、エンジンの燃焼工程を誘発させる要因ともなり、エンジンにノッキングが発生する確率が増加する不具合が発生するおそれがある。そこで、断熱コーティング膜の被覆後の壁面の表面粗さは、被覆前の表面粗さよりも小さいことにより、断熱コーティング膜は、高い表面平滑性を備えることができ、エンジンの耐ノッキング性が高まる。
(11)本発明に係るピストンは、燃焼室を形成するようにボアに往復移動可能に嵌合されるピストンであって、
前記ピストンは、前記燃焼室に対向する壁面と、前記壁面を被覆する断熱コーティング膜とを有し、
前記断熱コーティング膜は、前記壁面の表面に形成された断熱層と、前記断熱層の表面に形成された無機系被膜層とを有し、
前記断熱層は、樹脂と、前記樹脂埋設され前記断熱層の厚みよりも小さい平均粒子径をもつ第1の中空粒子とを有し、
前記無機系被膜層は、無機化合物と、前記無機系被膜層の厚みよりも小さい平均粒子径をもつ第2の中空粒子とを有し、
前記無機系被膜層は、最表層部と、前記最表層部よりも厚み方向で内側であって且つ前記断熱層と対面している内部とを有し、
前記最表層部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径は、前記内部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径よりも小さい。
断熱コーティング膜は、壁面表面に形成された断熱層と、断熱層の表面に形成された無機系被膜層とからなる。断熱層は、樹脂と、樹脂の内部に埋設され断熱コーティング膜の厚みよりも小さな平均粒子径をもつ第1の中空粒子を有する。断熱コーティング膜は高い空隙率を備えており、高い断熱性を有する。このため、燃焼室の断熱性を高めることができ、エンジンの燃費向上に貢献できる。
無機系被膜層は、無機化合物を有する。このため、耐熱性が高い。無機系被膜層により断熱層の表面を被覆することで、燃焼室から断熱層に伝達する熱を緩和することができる。
また、断熱層に含まれる第1の中空粒子の配合量を増やしたときにクラックが発生するおそれがある。しかし、断熱層表面を無機化合物を有する無機系被膜層により被覆することで、断熱層にクラックが発生したとしても、断熱層を維持することができる。そのため、断熱層の断熱性や被膜強度の低下を防止することができる。
本発明に係るピストンにおいて、無機系被膜層は、無機化合物と、第2の中空粒子とを有する。この場合には、断熱層だけでなく無機系被膜層の断熱性も高くなり、断熱コーティング膜全体の断熱効果が向上する。
本発明に係るピストンにおいて、無機系被膜層の最表層部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径は、無機系被膜層の最表層部よりも厚み方向で内側の内部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径よりも小さい。無機系被膜層の表面平滑性を更に向上させることができる。
(12)本発明に係るピストンにおいて、断熱コーティング膜の無機系被膜層の前記最表層部の表面粗さは、前記壁面の表面粗さよりも小さいことが好ましい。断熱コーティング膜は、高い表面平滑性を備えることができ、エンジンの耐ノッキング性が高まる。
(13)前記無機系被膜層は、シリカを有する塗膜であることが好ましい。
本発明によれば、燃焼室に対面する壁面が、高い断熱性および高い表面平滑性を備える断熱コーティング膜で被覆されているため、燃焼室の断熱性を高めことができ、エンジンの燃費の向上に貢献できる。更に、ピストンの頂面側の表面平滑性を高めることができるため、エンジンのノッキングを抑制させることができる。
本発明によれば、断熱コーティング膜が、断熱層と、断熱層の表面を被覆する無機系被膜層とを有する。このため、燃焼室から断熱層に伝達する熱を緩和することができる。また、断熱層にクラックが発生したとしても、断熱層表面を被膜状の無機化合物からなる無機系被膜層により被覆することで、断熱層を維持することができる。そのため、断熱層の断熱性や被膜強度の低下を防止することができる。ゆえに、高圧縮比のエンジンにも十分に対応することができる。
本発明によれば、前述したようにエンジンの燃焼室の断熱性を高めることができるため、エンジンの冷間始動時における熱効率が向上し、エンジンの燃費が向上する。一般的には、エンジンの冷間始動時には燃料の気化が悪いため、通常よりも多くの燃料(ガソリン等)を燃焼室に送り込んでいる。しかし本発明のように燃焼室に対面する壁面を断熱コーティング膜により被覆することで、エンジンの燃焼室を効果的に断熱することでき、燃料の気化が改善され、燃費が向上する。特に、近年増えているハイブリッド車両、または、アイドリングストップ付きの車両においては、エンジンの断続運転によりエンジンが充分に暖まらないことが多い。このようなとき、本発明に係る断熱コーティング膜が効果を発揮し、エンジンの燃焼室を高温に維持させ易い。また、燃焼室における燃焼熱がピストン、シリンダブロック、シリンダヘッド等に逃げにくくなるため、燃焼室における燃焼温度が上昇し、ひいては排気ガス中に含まれるHC(ハイドロカーボン)を低減する効果も期待できる。
実施形態1に係り、エンジンの燃焼室付近を模式的に示す断面図である。 実施形態1に係り、ピストンの頂面に形成されている断熱コーティング膜付近を模式的に示す断面図である。 実施形態1に係り、ピストンの頂面に形成されている断熱コーティング膜の断熱層の内部を模式的に示す断面図である。 実施形態2に係り、エンジンの燃焼室付近を模式的に示す断面図である。 実施形態2に係り、エンジンの燃焼室に対面する頂面を被覆する断熱コーティング膜付近を模式的に示す断面図である。 実施形態2に係り、バルブのうちエンジンの燃焼室に対面するバルブ面を被覆する断熱コーティング膜付近を模式的に示す断面図である。 実施形態6に係り、ピストンの頂面に形成されている断熱コーティング膜付近を模式的に示す断面図である。 実施例1のピストンの頂面側の斜視説明図である。 実施例1と比較例3の断熱コーティング膜の耐熱性試験の結果を示すグラフである。 実施例2及び比較例1のエンジンのエンジントルクと熱効率との関係を示す線図である。
本発明のエンジンは、ピストン、シリンダヘッド、及びバルブのうちいずれか1つ以上において、燃焼室に対面する壁面に,断熱コーティング膜が被覆されている。断熱コーティング膜は、壁面表面を被覆する断熱層と、断熱層の表面を被覆する無機系被膜層とからなる。
断熱層は、樹脂と第1の中空粒子とからなる。第1の中空粒子は樹脂に埋設されている。断熱層は、耐熱性の高い無機系被膜層により被覆されていて、燃焼室から受ける熱の影響が緩和されている。しかも、断熱層にクラックが生じたとしても,無機系被膜層により断熱層表面が被覆されているため、断熱層を維持でき、断熱性及び強度の低下を防止できる。これによりエンジンの熱効率が向上し、車両の燃費が向上する。
断熱層は、樹脂と第1の中空粒子とから構成されている。樹脂の材質としては、接着性、耐熱性、耐薬品性、強度のあるものが好ましい。
樹脂は、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミドのうちの少なくとも1種である。このような樹脂であれば、本発明に係る作用を効果的に期待できる。
耐熱温度および熱分解温度が高い樹脂が好ましい。更に、耐熱性および熱分解温度を考慮すると、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミドが好ましい。更に高温環境で用いられる場合には、ポリベンゾイミダゾール、熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミドがより好ましい。更に、好ましくは、熱可塑性ポリイミド、ピロメリット酸二無水物や耐熱性に優れるビフェニルテトラカルボン酸二無水物から得られる非熱可塑性ポリイミドが良い。これらの樹脂をバインダとして、ナノサイズ(1マイクロメール未満)の第1の中空粒子を配合することにより、断熱コーティング膜における空隙率を高め、断熱コーティング膜の断熱性を確保することができる。
樹脂としては、アミノ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂等としても良い。更に、耐熱性および熱分解温度を考慮すると、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミドが好ましい。更に高温環境で用いられる場合には、ポリベンゾイミダゾール、熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミドがより好ましい。更に、好ましくは、熱可塑性ポリイミド、ピロメリット酸二無水物や耐熱性に優れるビフェニルテトラカルボン酸二無水物から得られる非熱可塑性ポリイミドが良い。これらの樹脂をバインダとして用いて、第1の中空粒子を配合することにより、断熱コーティング膜における空隙率を高め、断熱コーティング膜の断熱性を確保することができる。
樹脂は無機材料(例えばアルミナ、チタニア、ジルコニアなど)を含んでいても良い。無機材料は例えば粉末粒子状または繊維状でも良い。無機材料のサイズとしては、第1の中空粒子と同程度の粒径、第1の中空粒子よりも小さな粒径が好ましい。
断熱層の見掛け体積を100%とするとき、断熱層における空隙率は体積比で5〜90%が好ましい。特に10〜85%、15〜80%が例示される。空隙率は第1の中空粒子の配合量に対応し、断熱層の断熱性に影響を与える。第1の中空粒子の配合量が多ければ、空隙率は高くなり、断熱層の断熱性が高くなる。ここで、空隙率が過剰に低いと、断熱層の断熱性が低下する。空隙率が過剰に高いと、樹脂に対して第1の中空粒子の割合が過多となり、第1の中空粒子を結合させるバインダが不足し、断熱層の成膜性が損われたり、断熱層の強度が低下するおそれがある。
第1の中空粒子の材質としては、セラミック系や有機系材料が好ましい。特に、耐熱性に優れるシリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)がより好ましい。場合によっては、第1の中空粒子の材質は樹脂でも良いし、金属でも良い。
第1の中空粒子の平均粒子径は、断熱層の厚みよりも小さい。このため、断熱層の表面が平滑化され、ヒートスポットとなり得る凹部が少なくなり、ノッキングを低減できる。断熱層に含まれる多くの第1の中空粒子の粒子径は、断熱層の厚みよりも小さいことがよい。断熱層に含まれるすべての第1の中空粒子を100%としたときに、その中の50%以上、更には70%以上、90%、95%以上が、断熱層の厚みよりも小さい粒子径をもつことが好ましい。断熱層の表面平滑性が向上する。
第1の中空粒子の平均粒子径は、500nm以下がよく、さらに10nm〜500nmがよく、好ましくは20nm〜300nm、30nm〜150nmとするとよい。断熱層表面は無機系被膜により被覆されているため、断熱層を構成する第1の中空粒子が脱落するおそれは極めて少ない。万が一、第1のナノ粒子が断熱層及び無機系被膜から脱落したとしても、ピストンのスカート部とシリンダボア壁面などへの影響を極力抑えるために、第1の中空粒子の平均粒子径は、スカート部とシリンダボア壁面との間に形成される油膜の厚みよりも小さい方が好ましい。
第1の中空粒子の殻の厚みとしては、第1の中空粒子の平均粒子径にもよるが、0.5nm〜50nm、1nm〜30nm、好ましくは、5nm〜15nmが例示できる。第1の中空粒子の形状としては真球状、疑似真球状、疑似楕円球状、疑似多角形状(疑似立方体形状、疑似直方体形状を含む)等にできる。第1の中空粒子を形成する殻の表面は平滑でもよく、微小凹凸があっても良い。
第1の中空粒子は、平均粒子径が1μm未満のナノ中空粒子であるとよい。ナノ中空粒子を断熱層に用いた場合は、数〜数百μmといった大きなサイズの中空粒子を用いた場合よりも、殻厚を薄くでき断熱性を確保できる。ナノ中空粒子は断熱層の表面近傍に表出しにくく、断熱層表面を被覆する無機系被膜の表面、即ち断熱コーティング膜の表面平滑性が高くなる。
500nm以下(例えば10〜500nm程度)といった極微小の平均粒子径の第1の中空粒子は、樹脂(バインダ)への充填量を多くできる。第1の中空粒子により樹脂の中に微小空孔を分散できる。断熱層が薄くても、断熱層の断熱性を確保することが可能である。また、第1の中空粒子をナノレベルの平均粒子径にすることによって、第1の中空粒子に起因する断熱コーティング膜の表面における凹凸が極めて小さくなり、バインダとなる樹脂のレベリング作用で断熱コーティング膜の表面平滑化が可能となり、エンジンのノッキング限界を高めることができる。
これに対して、平均粒子径1μm以上のマイクロメーターオーダーの第1の中空粒子は、断熱層の空隙率を高めることができる。断熱コーティング膜の断熱性能を更に向上させることができる。この場合にも、第1の中空粒子は、断熱層の厚みよりも小さいことが必要である。第1の中空粒子の平均粒子径は、断熱層の厚みよりも小さいことがよい。マイクロメーターオーダーの第1の中空粒子の平均粒子径は、1μm以上100μm以下であることがよく、更には、1μm以上50μm以下であることが好ましい。
断熱層の厚さは、断熱性、密着性、空隙率の確保等を考慮すると、10μm〜2000μm、20μm〜1000μmが好ましい。50μm〜700μm、もしくは、100μm〜500μmとすることもできる。断熱層の厚みの上限値としては2000μm、1000μm、800μm、500μm、300μmが例示される。断熱層の厚みの下限値としては20μm、30μm、40μmが例示される。同一単位で、断熱層の厚み/第1の中空粒子の平均粒子径の比率をαとすると、αは20万〜20の範囲内、50000〜20の範囲内、30000〜100の範囲内が例示できる。この場合、断熱層における第1の中空粒子の分散性を高めることができ、断熱層の断熱性を高めると共に断熱ムラを低減させるのに有利である。
断熱コーティング膜の断熱層は、樹脂及び第1の中空粒子の他に、必要に応じて添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、第1の中空粒子の分散性を高める分散剤、接着性や配合粉体への新和性の向上や接着性の向上を補助するシランカップリング剤、表面張力を調整するレベリング剤、界面活性剤、チクソトロピック特性を調整させる増粘剤等が必要に応じて挙げられる。
断熱層表面を被覆する無機系被膜層は、主として無機系材料からなり、無機化合物を有する。無機系被膜層を構成する無機化合物は、シリカ、ジルコニア、アルミナ、及びセリアの中から選ばれる1種以上からなることがよい。この中、シリカがよい。
無機系被膜層の厚みは、10〜300μmであることがよく、更には、30〜200μmであることが好ましく、50〜150μmであることが望ましい。燃焼室での高温が薄い無機系被膜層を通じて断熱層に伝わりにくく、成膜性が維持される。断熱層が高温に晒されず、断熱層の樹脂劣化を防止できる。断熱層表面を無機系被膜層で被覆することにより、2000℃程度以上まで耐えることができる。
無機系被膜層は、無機化合物のほかに、第2の中空粒子を含んでいてもよい。第2の中空粒子は、無機系被膜層の厚さよりも小さい平均粒子径の中空粒子であることがよい。無機系被膜層に第2の中空粒子を含める場合、第2の中空粒子の材質としては、断熱層に含まれる第1の中空粒子と同様に、セラミック系や有機系材料が好ましい。特に、耐熱性に優れるシリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)がより好ましい。場合によっては、第2の中空粒子の材質は樹脂でも良いし、金属でも良い。好ましくは、第2の中空粒子の材質は、耐熱性の観点から、セラミック系が好ましい。
無機系被膜層に含まれることがある第2の中空粒子は、無機系被膜層の厚みよりも平均粒子径が小さい。第2の中空粒子の平均粒子径は500μm以下であることがよい。更には、100μm以下であるとよく、10nm〜50μmがよく、10nm〜500nm、20nm〜300nm、30nm〜150nmが好ましい。この場合には、無機系被膜層の平滑性を保持することができ、耐ノッキング性を高めることができる。
無機系被膜層に第2の中空粒子を含める場合には、第2の中空粒子の平均粒子径は、断熱層に含まれる第1の中空粒子の平均粒子径と同じであってもよいし、第1の中空粒子よりも小さくても良く、大きくてもよい。いずれの場合にも、第2の中空粒子の平均粒子径は、無機系被膜層の厚みよりも小さければよい。好ましくは、第2の中空粒子の平均粒子径は、第1の中空粒子の平均粒子径と同じかそれよりも小さいことがよい。
無機系被膜層に含まれるすべての第2の中空粒子を100%としたときに、その中の50%以上、更には70%以上、90%以上、95%以上が、無機系被膜層の厚みよりも小さい粒子径をもつことが好ましい。断熱コーティング膜の表面平滑性が向上する。
無機系被膜層の最表層部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径は、無機系被膜層の最表層部よりも厚み方向で内側の内部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。無機系被膜の平滑性を保持しつつ、断熱効果を高めることができる。
無機系被膜層の最表層部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径の上限は、100μmであるとよく、更に、50μm、500nm、300nm、150nmがよい。無機系被膜層の最表層部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径の下限は、10nm、20nm、30nmがよい。無機系被膜の平滑性を保持できる。
無機系被膜層の内部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径の上限は、500μmであることがよく、更に、100μm、50μm、500nm、300nm、150nmがよい。無機系被膜層の最表層部に含まれる第2の中空粒子の平均粒子径の下限は、10nm、20nm、30nmがよい。無機系被膜の平滑性を保持できる。
上記した特許文献1に示されるような、チタン等の低熱伝導部材を使用する場合は、構造上、ミリ単位の厚みが必要である。この場合、ピストンの重量増は避けられず、高速で動くピストンの動きを阻害し、燃費向上の妨げになり、好ましくない。これに対して、表1に示されるように、本発明に係る断熱層は樹脂を含み、アルミニウム合金よりも比重が軽い利点が得られる。ここで、仮に7ミリメートルの厚みを有するチタンで得られる断熱性は、ジルコニアの溶射膜(特許文献2,3)での1.65ミリメートルの厚みの断熱性に相当し、また、本発明に係る断熱コーティング膜では僅か0.012〜0.083mmの厚みに相当する。このように本発明に係る断熱コーティング膜では、断熱性を確保しつつ薄膜化できるため、断熱コーティング膜をピストンの頂面に形成したとしても、ピストンの頂面側の断熱性を高めつつ、ピストンの重量増はごく僅かであり、ピストンの動作には影響を与えない利点が得られる。
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また、特許文献4のように、通常の断熱系塗料では、数μm〜数百μmの中空粒子を配合しているが、このサイズの中空粒子が表面近傍に表出すると、表面の凹凸差が大きくなる。通常の断熱系塗料をエンジンに用いた際に、凸部がヒートスポットになり、ノッキングが生じるおそれがある。また、何らかの要因でバインダから中空粒子が脱落した場合、数μm〜数百μmの粒子は、エンジンの摺動部の油膜厚さ(およそ0.5〜1μm)より大きく、ピストンやシリンダ材よりも硬質である。このため、ピストンやシリンダを摩耗させてしまう。
特許文献2,3,5においては、成膜処理前よりも成膜処理後に面が荒れてしまい、ピストン頂面に適用した場合、表面粗さの微細な凸部がヒートスポットになり、ノッキングが生じる原因となる。
これに対して、本発明に係る断熱コーティング膜は、複数の中空粒子を埋設した断熱層を有し、表面は無機系被膜層が形成されている。このため、高い空隙率を確保しつつ、表面平滑性を有することができる。
更に、断熱層表面は無機系被膜層により被覆されている。無機系被膜層は、無機化合物を有するため、耐熱性が高い。無機系被膜層により断熱層の表面を被覆することで、燃焼室から断熱層に伝達する熱を緩和することができる。
また、断熱層に含まれる第1の中空粒子の配合量を増やしたときにクラックが発生するおそれがある。しかし、断熱層にクラックが発生したとしても、断熱層表面を無機系被膜層により被覆することで、断熱層を維持することができる。そのため、断熱層の断熱性や被膜強度の低下を防止することができる。
たとえクラックが発生したとしても、クラックにより断熱層の熱収縮を緩和することができる。更に、断熱層と無機系被膜層との間に微小な隙間が形成されることがある。この隙間により断熱性を高めることも可能である。また、断熱層の表面粗さを更に平滑化することができる。このため、断熱層だけを壁面に形成した場合よりも、断熱層の表面に無機系被膜層を形成することで更に表面平滑化を実現できる。ゆえに、燃焼室の壁面にヒートスポットが形成されにくくなり、ノッキングを効果的に抑制できる。
また、断熱層に多量の第1の中空粒子を配合することができるため、断熱層の断熱効果が更に高まり、かつ断熱層の比重も小さくすることができる。従って、燃焼室の断熱性を高めることができる。本発明に係る断熱コーティング膜を壁面(燃焼室に対面する壁面)に形成すれば、壁面における成膜が簡単で済む。更に、第1の中空粒子が平均粒子径1μm未満のナノサイズであるナノ中空粒子である場合には、ナノ中空粒子を樹脂に混ぜ込むことによって、塗料のレベリング作用を損なわず、塗布前のピストンの表面粗さに対し、塗布後の断熱コーティング膜の表面粗さが小さくなることで、ピストンの比表面積が小さくなり、ピストンからの伝熱が抑制され、ピストンの断熱性能をより向上させることが可能となる。
断熱コーティング膜の被覆後の壁面の表面粗さは、被覆前の表面粗さよりも小さいことが好ましい。ノッキング限界を考慮すると、断熱コーティング膜の表面粗さ、即ち無機系被膜層の表面粗さはRaで10.0以下、7.0以下が好ましい。5.0以下、3.0以下がより好ましい。更に、2.0以下が更に好ましい。更に、第1の中空粒子は、仮に樹脂から脱落したとしても、前述の油膜厚さより小さいサイズであるため、油膜に覆われ、ピストンのスカート部、シリンダブロックのボア壁面を損傷させるおそれが抑えられる。
本発明に係る断熱コーティング膜を形成する場合は、まず、断熱層を壁面表面に形成する。断熱層を形成するために、樹脂を溶剤に溶解させる等して低粘度化し、これに第1の中空粒子を混合させて分散させることにより塗料を形成する。分散にあたり、超音波分散機、湿式ジェットミル、ホモジナイザー、3本ロール、高速攪拌機等が挙げられる。燃焼室を形成する壁面に塗料を塗布して塗膜を形成し、塗膜を焼き付けて本発明に係る断熱コーティング膜を形成できる。塗布形態としては、スプレー塗り、刷毛塗り、ローラ塗り、ロールコータ、静電塗装、浸漬塗装、スクリーン印刷、パット印刷等の公知の塗装形態が挙げられる。
塗装後に、塗装膜を加熱保持して焼き付け、断熱層とすることができる。焼き付け温度としては、樹脂の材質に等に応じて設定でき、130〜220℃、150〜200℃、170〜190℃が挙げられる。焼き付き時間としては、0.5〜5時間、1〜3時間、1.5〜2時間が例示される。断熱コーティング膜を形成する前のピストン等の壁面に、ショットブラスト、エッチング、化成処理等の予備処理を行うことが好ましい。
次に、断熱層の表面に、無機化合物からなる無機系被膜層を形成する。無機系被膜層を形成するために、例えば、公知の技術を採用することができる。
更に、本発明に係る断熱コーティング膜は、ピストンの頂面のみに形成しても良いし、あるいは、シリンダーヘッドのうち燃焼室に対面する壁面に形成することもできる。更に、吸気用または排気用のバルブ孔を開閉させるバルブのうち燃焼室を形成する壁面にも、本発明に係る断熱コーティング膜を形成することができる。この場合にも、燃焼室の断熱性を高めることができる。なお、エンジンとしては内燃機関、レシプロエンジン等が挙げられる。エンジンの使用される燃料としては、ガソリン、軽油、LPG等が挙げられる。
以下の実施形態1〜5は本発明の参考形態であり、実施形態6は本発明の実施形態である。
[実施形態1]
図1および図2A及び図2Bは実施形態1の概念を模式的に示す。図1はエンジン1の燃焼室10付近の断面を模式的に示す。エンジン1はピストン式内燃機関である。図1および図2A及び図2Bはあくまでも概念図であり、細部まで規定するものではない。エンジン1は、ボア20を有するシリンダブロック2と、頂面30側に燃焼室10を形成するようにボア20に矢印A1,A2方向に往復移動可能に嵌合されたピストン3と、燃焼室10を閉じ且つ燃焼室10に連通するバルブ孔40をもつシリンダヘッド4と、バルブ孔40を開閉させるバルブ5とを備えている。バルブ孔40は、燃焼室10に連通可能な吸気用バルブ孔40iと排気用バルブ孔40eとを備えている。シリンダヘッド4はガスケット47を介してシリンダブロック2に被着されている。シリンダブロック2、シリンダヘッド4、ピストン3は、鋳造系のアルミニウム合金で形成されている。アルミニウム合金としては、アルミニウム−シリコン系合金、アルミニウム−シリコン−マグネシウム系合金、アルミニウム−シリコン−銅系合金、アルミニウム−シリコン−マグネシウム−銅系合金、アルミニウム−シリコン−マグネシウム−銅−ニッケル系合金が好ましい。亜共晶組成、共晶組成、過共晶組成でも良い。場合によっては、シリンダブロック2、シリンダヘッド4、ピストン3のうちの少なくとも一つは、マグネシウム合金系、鋳鉄系(例えば片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄を含む)で形成しても良い。
図1および図2A及び図2Bに示すように、ピストン3のうち燃焼室10に対面する壁面である頂面30の全域またはほぼ全域に、第1断熱コーティング膜7f(厚み:20〜1000μm)が被覆されている。この場合、ピストン3の頂面30のみに第1断熱コーティング膜7fを形成することが好ましい。なお、摩滅等を考慮すると、ピストン3のスカート部の外壁面には形成しないことが好ましい。
第1断熱コーティング膜7fは、ピストン3の頂面30を被覆する断熱層71と、断熱層71の表面を被覆する無機系被膜層72とからなる。断熱層71は、樹脂と、樹脂に埋設された複数のナノ中空粒子70(第1のナノ中空粒子)とを有する。ナノ中空粒子70は、シリカバルーンやアルミナバルーン等のセラミックスバルーンを用いる。ナノ中空粒子70の平均粒子径は10〜500nm、殊に30〜150nmにできる。但しこれに限定されるものではない。ナノ中空粒子の粒子径の範囲は1μm未満とすることができ、好ましくは1〜500nm、5〜300nm、更に30〜150nmが好ましい。ナノ中空粒子70の殻の厚みは1〜50nm、5〜15nmにできる。平均粒子径は電子顕微鏡観察における単純平均とする。ナノ中空粒子70の平均粒子径の下限については、電子顕微鏡観察により、8nmまたは9nmにでき、上限については600nmまたは800nmにできる。
樹脂としては、場合によっては、アミノ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂等としても良い。更に、耐熱性および熱分解温度を考慮すると、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミドが好ましい。更に高温環境で用いられる場合には、ポリベンゾイミダゾール、熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミドがより好ましい。更に、好ましくは、熱可塑性ポリイミド、ピロメリット酸二無水物や耐熱性に優れるビフェニルテトラカルボン酸二無水物から得られる非熱可塑性ポリイミドが良い。
無機系被膜層72は、無機化合物からなる。無機系被膜層72の厚みは、10〜300μmである。無機化合物は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、及びチタニアの群から選ばれる1種以上からなる。この中、シリカがよい。
ピストン3のうち燃焼室10に対面する頂面30に第1断熱コーティング膜7fが形成されている。第1断熱コーティング膜7fの下層を構成する断熱層71は、500nm以下といった極微小サイズのナノ中空粒子70を含む。微小サイズのナノ中空粒子70は、樹脂(バインダ)への充填量を多くでき、ナノ中空粒子70による微小空孔を分散できる。よって、断熱層71が薄い層であっても、断熱層71の断熱性、ひいては燃焼室10の断熱性を確保することができる。断熱層71の厚みは10〜2000μmであるとよく、更には、20〜1000μm、50〜700μm、更には100〜500μmであることが好ましい。
無機系被膜層72の厚みは、断熱層71の厚みよりも薄く、10〜300μm、更には、50〜150μmであることが好ましい。このため、無機系被膜層72による被覆により、断熱層71に更なる耐熱性が付与され、且つ万が一クラックが発生しても成膜を維持でき、断熱性及び被膜強度の低下を防止できる。また、断熱層71の表面を更に平滑化することができ、ノッキングを効果的に抑制できる。
このため、燃焼室10の熱がピストン3を介してシリンダブロック2側に逃げることが抑制され、燃焼室10の断熱性が高まる。なお、ピストン3には連結ピン31を介してコネクティングロッド32が連結されている。燃焼室10に対面する点火部42をもつ点火プラグ43がシリンダヘッド4に設けられている。バルブ5は耐熱鋼で形成されており、棒状のバルブステム部50と、径方向に拡径した傘部51とを有する。傘部51は燃焼室10に対面するバルブ面53を有する。バルブ面53には肉盛膜が肉盛りされていても良い。肉盛膜は銅合金または鉄合金で形成できる。
本実施形態によれば、高い断熱性および高い表面平滑性を備える断熱コーティング膜を有することにより、燃焼室の断熱性を高めことができ、エンジンの燃費の向上に貢献できる。更に、ピストンの頂面側の表面平滑性を高めることができるため、エンジンのノッキングを抑制させることができる。エンジン1の爆発工程における燃焼室10の圧力Fは、断熱コーティング膜7fに作用する(図2B参照)。圧力Fは、複数のナノ中空粒子を分散状態に埋設させている断熱コーティング膜7fにより受圧されると考えられる。
本実施形態によれば、前述したようにエンジン1の燃焼室10の断熱性を高めることができるため、エンジン1の冷間始動時における熱効率が向上し、エンジン1の燃費が向上する。一般的には、エンジン1の冷間始動時には燃料の気化が悪いため、通常よりも多くの燃料(ガソリン等)を燃焼室に送り込んでいる。しかし本実施形態に係る断熱コーティング膜7fをピストン3の頂面30に積層させれば、エンジン1の燃焼室10を効果的に断熱することでき、燃料の気化が改善され、燃費が向上する。特に、近年増えているハイブリッド車両、または、アイドリングストップ付きの車両においては、エンジン1の断続運転によりエンジン1が充分に暖まらないことがある。このようなとき、本実施形態に係る断熱コーティング膜7fが効果を発揮し、エンジン1の燃焼室10を高温に維持させ易い。また、燃焼室10における燃焼熱がピストン3、シリンダブロック2、シリンダヘッド4等に逃げにくくなるため、燃焼室10における燃焼温度が上昇し、ひいては排気ガス中に含まれるHC(ハイドロカーボン)を低減できる効果も期待できる。なお、被覆後の断熱コーティング膜7fの表面粗さは、断熱コーティング膜7f被覆前の頂面30の表面粗さよりも小さい。
本実施形態に係る断熱コーティング膜7fを形成する一方法について説明する。まず、樹脂を溶剤に溶解させて低粘度化させ、これにナノ中空粒子を混合させて分散器により分散させることにより塗料を形成する。このような塗料をピストンの頂面にスプレー等で塗布して塗膜を形成する。その後、大気中雰囲気において、塗膜を所定の焼付温度(120〜400℃の範囲内の任意値)で所定の時間(0.5〜10時間の範囲内の任意値)焼き付け、断熱層71を形成することができる。
次に、断熱層71の表面に、金属化合物からなる無機系被膜層72を形成する。金属化合物がシリカである場合に無機系被膜層72を形成するにあたっては、例えば、金属アルコキシシランのアルコール溶液を断熱層71の表面に塗布し、その後脱アルコール反応で被膜化させる。脱アルコール反応の反応式は、
−Si−O−R + HO−Si− → −Si−O−Si− + ROH・・・(1)で表される(式(1)中、Rは、有機基を示す。)。
無機系被膜層72は、その他の反応機構により形成することもできる。これにより、網目状に連続して連なる被膜状のシリカからなる無機系被膜層72が形成されて、断熱層71と無機系被膜層72とからなる断熱コーティング層7fが形成される。
[実施形態2]
図3A、図3B、及び図3Cは実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成及び作用効果を有する。図3A、図3B、及び図3Cはエンジン1の燃焼室10付近の断面を模式的に示す。ピストン3のうち燃焼室10に対面する壁面である頂面30に、第1断熱コーティング膜7fが被覆されている。更に、シリンダヘッド4のうち燃焼室10に対面する壁面45に、第2断熱コーティング膜7sが被覆されている。燃焼室10に対面する頂面30及び壁面45は第1断熱コーティング膜7fおよび第2断熱コーティング膜7sにより被覆されているため、燃焼室10の断熱性が高まる。場合によっては、シリンダヘッド4の壁面45に第2断熱コーティング膜7sが形成されている限り、第1断熱コーティング膜7fを廃止しても良い。なお、断熱コーティング膜7f,7sの被覆後の壁面の表面粗さは、被覆前の表面粗さよりも小さい。
[実施形態3]
本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成及び作用効果を有するため、図1〜図3Cを準用できる。ピストン3のうち燃焼室10に対面する壁面である頂面30に、第1断熱コーティング膜7fが被覆されている。更に、シリンダヘッド4のうち燃焼室10に対面する壁面45に、第2断熱コーティング膜7sが被覆されている。加えて、バルブ5のうち燃焼室10に対面するバルブ面53にも第3断熱コーティング膜7tが形成されている。このようにピストン3の頂面30に第1断熱コーティング膜7fが形成され、シリンダヘッド4のうち燃焼室10に対面する壁面45に第2断熱コーティング膜7sが形成され、バルブ5のうち燃焼室10に対面するバルブ面53に第3断熱コーティング膜7tが形成されている。このため、燃焼室10の断熱性が更に高まる。なお、被覆された断熱コーティング膜7f,7s,7tの表面粗さは、断熱コーティング膜7f,7s,7tの被覆前の頂面30、壁面45、バルブ面53等の壁面の表面粗さよりも小さい。
第1断熱コーティング膜7fの厚みをt1とし、第2断熱コーティング膜7sをt2と、第3断熱コーティング膜7tの厚みをt3とするとき、t1=t2=t3、t1≒t2≒t3にできる(t1,t2,t3は図3において図示せず)。ピストン3からの逃熱抑制を考慮すると、t1>t2>t3、または、t1>t2≒t3としても良い。シリンダヘッド4からの逃熱抑制を考慮すると、t2>t1>t3、または、t2>t1≒t3としても良い。バルブ5の傘部51のバルブ面53をこれの垂直方向に投影した投影面積は、ピストン3の頂面30をこれの垂直方向から投影した投影面積よりも小さいため、第3断熱コーティング膜7tを廃止することもできる。
[実施形態4]
本実施形態は実施形態1〜3と基本的には同様の構成及び作用効果を有するため、図1〜図3Cを準用できる。特に図示はしないものの、ピストン3のうち燃焼室10に対面する壁面である頂面30に第1断熱コーティング膜7fが被覆されている。更に、シリンダヘッド4のうち燃焼室10に対面する壁面45に第2断熱コーティング膜7sが被覆されている。このため燃焼室10の断熱性が高まる。
[実施形態5]
本実施形態は、実施形態1〜4と基本的には同様の構成を有しており、図1〜図3Cを準用できる。特に図示はしないが、無機系被膜層72に、第2のナノ中空粒子としての中空粒子が含まれている。無機系被膜層72は、この中空粒子と、金属化合物としてのシリカ(バインダー)とからなる。無機系被膜層72の全体を100体積%としたときに、中空粒子の含有量は35体積%であり、シリカの含有量は65体積%である。無機系被膜層72の厚みは40μmである。
無機系被膜層72に含める中空粒子は、断熱層71に含めるナノ中空粒子70と同様である。即ち、無機系被膜層72に含める中空粒子は、シリカバルーンやアルミナバルーン等のセラミックスバルーンである。中空粒子の平均粒子径は10〜500nm、殊に30〜150nmにできる。但しこれに限定されるものではない。中空粒子の殻の厚みは1〜50nm、5〜15nmにできる。平均粒子径は電子顕微鏡観察における単純平均とする。中空粒子の平均粒子径の下限については、電子顕微鏡観察により、8nmまたは9nmにでき、上限については600nmまたは800nmにできる。
本実施形態では、断熱層71だけでなく無機系被膜層72にも中空粒子が含まれている。このため、断熱層71だけでなく無機系被膜層72の断熱性も高くなり、断熱コーティング膜全体の断熱効果が向上する。
[実施形態6]
本実施形態は、実施形態1と基本的には同様の構成を有しており、図1を準用できる。本実施形態のエンジンは、図4に示すように、ピストン3のうち燃焼室10に対面する壁面である頂面30のほぼ全域に、第1断熱コーティング膜7fが被覆されている。第1断熱コーティング膜7fは、頂面30を被覆する断熱層71と、断熱層71を被覆する無機系被膜層72とからなる。断熱層71は、樹脂と、樹脂に埋設されたマイクロメータオーダーの第1の中空粒子80とを有する。
樹脂としては、アミノ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂等としても良い。更に、耐熱性および熱分解温度を考慮すると、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミドが好ましい。更に高温環境で用いられる場合には、ポリベンゾイミダゾール、熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミドがより好ましい。更に、好ましくは、熱可塑性ポリイミド、ピロメリット酸二無水物や耐熱性に優れるビフェニルテトラカルボン酸二無水物から得られる非熱可塑性ポリイミドが良い。
第1の中空粒子80は、シリカバルーンやアルミナバルーン等のセラミックスバルーンを用いる。第1の中空粒子80は、平均粒子径1μm以上のマイクロメーターオーダーのマイクロ中空粒子である。第1の中空粒子80は、断熱層71の厚みよりも小さい。第1の中空粒子80の平均粒子径は、断熱層71の厚みよりも小さい。第1の中空粒子80の平均粒子径は、1μm以上100μm以下であることがよく、更には、1μm以上50μm以下であることが好ましい。第1の中空粒子80の粒子径の範囲は1μm以上とすることができ、好ましくは1〜300μm、1〜150μmが好ましい。
無機系被膜層72は、無機化合物と、無機化合物に埋設された第2の中空粒子80a、80bとを有する。無機系被膜層72の厚みは、10〜300μmである。無機化合物は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、及びチタニアの群から選ばれる1種以上からなる。第2の中空粒子80a、80bは、無機系粒子であり、シリカバルーンやアルミナバルーン等のセラミックスバルーンである。無機系被膜層72に含まれる第2の中空粒子80a、80bのうち一方の第2の中空粒子80aの平均粒子径は、他方の第2の中空粒子80bの平均粒子径よりも小さい。
無機系被膜層72は、無機系被膜層72の最表層部72aと、最表層部72aよりも厚み方向で内側であって且つ断熱層71と対面している内側の内部72bとからなる。最表層部72aの厚みは1〜100μmであり、内部72bの厚みは9〜290μmである。
第2の中空粒子80a、80bのうち、一方の第2の中空粒子80aは、最表層部72aに含まれ、他方の第2の中空粒子80bは、内部72bに含まれている。
無機系被膜層72の最表層部72aに含まれる第2の中空粒子80aは、平均粒子径1μm未満のナノ中空粒子である。第2の中空粒子80aの平均粒子径は、10〜500nm、殊に30〜150nmにできる。但しこれに限定されるものではない。ナノ中空粒子の粒子径の範囲は1μm未満とすることができ、更には1〜500nm、5〜300nm、更に30〜150nmが好ましい。中空粒子80aの殻の厚みは1〜50nm、5〜15nmにできる。平均粒子径は電子顕微鏡観察における単純平均とする。中空粒子80aの平均粒子径の下限については、8nmまたは9nmにでき、上限については600nmまたは800nmにできる。
無機系被膜層72の内部72bに含まれる第2の中空粒子80bは、平均粒子径1μm以上のマイクロ中空粒子である。中空粒子80bの平均粒子径は1μm〜500μm、殊に1μm〜100μmにできる。但し、これに限定されるものではない。平均粒子径は電子顕微鏡観察における単純平均とする。第2の中空粒子80bの粒子径の範囲は1μm以上とすることができ、好ましくは1μm〜300μm、更に1μm〜150μmが好ましい。中空粒子80bの殻の厚みは10nm〜30000nm、100nm〜15000nmにできる。中空粒子80bの平均粒子径の下限については1μm、上限については100μmまたは50μmにできる。
本実施形態の断熱層71には、実施形態1の第1のナノ中空粒子70に代えて、ミクロンオ−ダーの第1の中空粒子80が含まれている。断熱層71に含まれる第1の中空粒子80は、シリカバルーンやアルミナバルーン等のセラミックスバルーンである。第1の中空粒子80の平均粒子径は1μm〜500μm、殊に1μm〜100μmにできる。但し、これに限定されるものではない。第1の中空粒子80は、無機系被膜層72の内部72bに含まれる第2の中空粒子80bと同様のものを用いてもよく、または、異なるものを用いてもよい。その他は、実施形態1と基本的には同様の構成を有している。
断熱層71だけでなく無機系被膜層72にも中空粒子が含まれている。このため、断熱層71だけでなく無機系被膜層72の断熱性も高くなり、断熱コーティング膜全体の断熱効果が向上する。無機系被膜層72の最表層部72aに含まれる第2の中空粒子80aは、無機系被膜層72の内部80bに含まれる第2の中空粒子80bの平均粒子径よりも小さい。このため、無機系被膜層の表面平滑性を更に向上させることができる。
以下、本発明をより具体化した実施例について説明する。以下の実施例1は本発明の参考例であり、実施例2は本発明の実施例である。
(実施例1)
実施例1として、図5に示すように、ピストン3のうち燃焼室に対面する頂面30に、本発明に係る断熱コーティング膜7fを塗布して評価を実施した。ピストン3の材質はアルミニウム−シリコン−マグネシウム−銅−ニッケル系合金(シリコン:11〜13質量%,JIS AC−8A)とした。断熱コーティング膜7fは、図5のメッシュ部分に示すように、ピストン3の頂面30の全体に形成した。
図2Aに示すように、断熱コーティング膜7fは、ピストン3の頂面30を被覆する断熱層71と、断熱層71表面を被覆する無機系被膜層72とからなる。断熱層71の厚みは200μmとした。バインダとして機能する樹脂としては、非熱可塑性ポリイミドを採用した。表2に示すように、樹脂100質量部に対してナノ中空粒子は25質量部配合させた。ナノ中空粒子としてはシリカバルーンを採用した。ナノ中空粒子としては、粒子径の範囲30〜150nmとし、平均粒子径を108nmとし、殻の厚み5〜15nmとした。
無機系被膜層72は、シリカからなる厚み20μmの被膜である。
実施例1に係る断熱コーティング膜を形成するにあたり、樹脂を溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に溶解させて低粘度化させ、これにナノ中空粒子を混合させて分散機(超音波分散機)により分散させることにより塗料を形成した。このような塗料をピストンの頂面にスプレー等で塗布して塗膜を形成した。その後、塗膜を電気炉により所定の焼付温度(170〜190℃)で所定の時間(0.5〜2時間)焼き付け、断熱層71を形成した。次に、断熱層71の表面に、シリカからなる無機系被膜層72を形成した。
断熱層71に含まれるナノ中空粒子の平均粒子径については、断熱コーティング膜をクロスセクションポリッシャーで研磨させた後に、電子顕微鏡(FE−SEM)で観察し、ナノ中空粒子の平均粒子径を測定した。測定数nを20とし、単純平均とした。断熱コーティング膜の中の断熱層の見掛け体積を100%とするとき、断熱層における空隙率が体積比で60%となるようにナノ中空粒子を配合させた。この場合、ナノ中空粒子の殻で区画された空隙が空隙率として演算される。
(実施例2)
実施例2として、実施例1と同様に、ピストン3のうち燃焼室に対面する頂面30に、本発明に係る断熱コーティング膜7fを塗布して評価を実施した。ピストン3の材質はアルミニウム−シリコン−マグネシウム−銅−ニッケル系合金(シリコン:11〜13質量%,JIS AC−8A)とした。断熱コーティング膜7fは、図5のメッシュ部分に示すように、ピストン3の頂面30の全体に形成した。
図4に示すように、断熱コーティング膜7fは、ピストン3の頂面30を被覆する断熱層71と、断熱層71表面を被覆する無機系被膜層72とからなる。断熱層71の厚みは100μmとした。バインダとして機能する樹脂としては、非熱可塑性ポリイミドを採用した。表2に示すように、樹脂100質量部に対して第1の中空粒子80は130質量部配合させた。第1の中空粒子80としては、シリカバルーンを採用した。第1の中空粒子80としては、粒子径の範囲を1μm〜100μmとし、平均粒子径を19760nmとし、殻の厚みを100nm〜5000nmとした。
無機系被膜層72は、シリカと第2の中空粒子80a、80bとからなる。無機系被膜層72は、最表層部72aと、最表層部72aよりも厚み方向で内側に位置する内部72bとからなる。最表層部72aは、シリカと、シリカに分散された第2の中空粒子80aとからなる。内部72bは、シリカと、シリカに分散された第2の中空粒子80bとからなる。第1、第2のマイクロ中空粒子80a、80bは、いずれもシリカバルーンからなる。最表層部72aに含まれる第2の中空粒子80aは、1μm未満のナノオーダーサイズのナノ中空粒子である。第2の中空粒子80aは、粒子径の範囲30〜150nmとし、平均粒子径を108nmとし、殻の厚み5〜15nmとした。内部72bに含まれる第2の中空粒子80bは、1μm以上のマイクロメーターサイズのマイクロ中空粒子である。第2の中空粒子80bの平均粒子径は、19760nmであり、粒子径の範囲は1μm〜100μmであり、殻の厚みは100nm〜5000nmである。
最表層部72aの厚みは20μmであり、内部72bの厚みは100μmである。最表層部72aの中のシリカを100質量部としたときに、最表層部72aの中の第2の中空粒子80aの含有量は7質量部である。内部72bの中のシリカを100質量部としたときに、内部72bの中の第2の中空粒子80bの含有量は95質量部である。
実施例2に係る断熱コーティング膜を形成するにあたり、樹脂を溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に溶解させて低粘度化させ、これにナノ中空粒子を混合させて分散機(超音波分散機)により分散させることにより塗料を形成した。このような塗料をピストンの頂面にスプレー等で塗布して塗膜を形成した。その後、塗膜を電気炉により所定の焼付温度(170〜190℃)で所定の時間(0.5〜2時間)焼き付け、断熱層71を形成した。次に、断熱層71の表面に、シリカ及び第2の中空粒子80bからなる内部72bを形成した。次に、内部72bの表面に、シリカ及び第2の中空粒子80aからなる最表層部72aを形成した。
断熱層71に含まれる中空粒子の平均粒子径を測定した。断熱コーティング膜をクロスセクションポリッシャーで研磨させた後に、電子顕微鏡(FE−SEM)で観察し、中空粒子の平均粒子径を測定した。測定数nを20とし、単純平均とした。断熱コーティング膜の中の断熱層の見掛け体積を100%とするとき、断熱層における空隙率が体積比で78%となるように中空粒子を配合させた。この場合、中空粒子の殻で区画された空隙が空隙率として演算される。
無機系被膜層72の最表層部72a及び内部72bの空隙率についても同様に測定したところ、最表層部72aの空隙率は、12%であり、内部72bの空隙率は80%であった。
実施例1、2について、断熱コーティング膜の熱伝導率、表面粗さ(Ra)、ノッキング性、燃費について評価し、表2に示した。燃費については、従来のエンジンの燃費を100と相対表示したときにおける燃費とした。燃費測定条件は次のようにした。
〔使用エンジン〕(i)エンジン諸元:直列4気筒,水冷式,DOHC,16バルブ,4サイクルエンジン排気量:1300cc(ii)ピストン:4個とも頂面(ピストンのうち燃焼室に面した壁面)に本発明に係る断熱コーティング膜(125μm)を塗布により形成した。〔燃費評価条件〕 エンジンが冷間状態において、エンジン水温が室温から88℃まで上昇する間の燃費を平均して測定した。この場合、回転数2500rpmの一定回転で、一定負荷を加えた。
同様に、比較例1,2、3についても評価し、結果を表2に示す。比較例1については、ピストンの頂面は無処理とし、断熱コーティング膜は形成されていない。比較例2については、ピストンの頂面にジルコニアを溶射し、溶射膜を形成した。
比較例3については、ピストン3の頂面30に断熱層71は形成するが、無機系被膜層を形成していない。断熱層71に含まれるナノ中空粒子の平均粒子径は108nmとし、ナノ中空粒子の含有量は、バインダーを100質量部としたときに、14質量部とした。断熱層71の空隙率は15%とした。断熱層71の厚みは125μmとした。
表2に示すように、比較例1では、熱伝導率は130(W/mk)であり、大きく、表面粗さはRaで4.82であった。ノッキングは発生しなかった。燃費は100として相対表示した。
比較例2では、ジルコニア溶射膜の熱伝導率は4.0(W/mk)であり、本実施例に比較すると約25倍(4.0W/mk/0.16W/mk)大きかった。溶射膜の表面粗さはRaで38であり、実施例1よりもかなり粗かった。比較例2では、エンジンにノッキングが発生し、燃費測定は測定不可に至った。
比較例3では、熱伝導率が比較例1,2よりも格段に小さかったが、実施例1に比べると若干高かった。断熱コーティング膜の表面粗さは、比較例1,2に比べると小さかったが、実施例1に比べると若干大きかった。これは、断熱層の表面の凹凸が、無機系被膜により平坦化されたためである。
比較例3では、ノッキングはなく、燃費も比較例1よりもよかった。しかし、実施例1よりも燃費は若干劣っていた。
これに対して実施例1では、断熱コーティング膜の熱伝導率は0.14(W/mk)と小さく、比較例1に比較すると約1.1×10−3倍(0.14W/mk/130W/mk)であり、比較例2に比較すると約0.035倍(0.14W/mk/4.0W/mk)であった。実施例1の断熱コーティング膜の表面粗さはRaで1.70であり、比較例1,2よりも小さかった。実施例1では、ノッキングは発生せず、燃費は102.8であった。
実施例2では、実施例1よりも熱伝導率が低く、燃費も向上した。これは、断熱層及び無機系被膜層に含まれる中空粒子の配合比が、実施例1よりも多く、実施例1よりも高い断熱性能を発揮したためであると考えられる。実施例2は、実施例1よりも、表面粗さが若干高くなった。これは、無機系被膜層にも中空粒子を添加したためであると考えられる。
Figure 0006067712
上記測定結果から、実施例1、2に係る断熱コーティング膜によりピストンの頂面側の熱伝導率が大幅に下がるだけでなく、表面粗さを低減させて、ノッキングを低減させる効果が確認できた。
次に、実施例1と比較例3の断熱コーティング膜の耐熱性試験を行った。耐熱性試験は、熱重量測定装置を用い、断熱コーティング膜が熱分解を開始する温度を調べた。
実施例1の断熱層と無機系被膜層とからなる断熱コーティング膜は、約800℃まで熱分解しなかった。一方、比較例3の断熱層のみからなる断熱コーティング膜は、約550℃で熱分解を開始した。断熱層のみからなる比較例3の熱分解温度を100%としたときに、無機系被膜層で断熱層を被覆してなる実施例1の断熱コーティング膜の熱分解温度は45%も高くなった。
このことから、無機系被膜で断熱層を被覆することで、断熱層の耐熱性を高めることができることがわかった。その理由は、以下のように考えられる。無機系被膜は、無機化合物から構成されていて有機成分を含まない。このため、高温下でも分解しにくい。無機系被膜層で断熱層が被覆されることにより、断熱層に加わる熱の影響が緩和され、断熱層の熱分解が抑えられた。断熱層に含まれる非熱可塑性ポリイミドは、樹脂の中でも耐熱性が高い樹脂である。断熱層は、無機系被膜層により被覆されているため、断熱層の中の樹脂成分の熱分解が更に抑制され、断熱層の耐熱性が上がった。
以上のように、無機系被膜層による断熱層の被覆により、断熱層の耐熱性が高まった。このため、表2に示す実施例1のように、断熱層を厚くすることができ、断熱効果を高めることができる。また、中空粒子の配合を多くすると、断熱層にクラックが生じやすくなる。しかし、実施例1では、断熱層にクラックが生じても無機系被膜で被覆されているため、中空粒子の脱落を抑制できる。ゆえに、断熱層内の中空粒子の配合を高めることができ、更に断熱性能を高めることができる。
(エンジントルクと熱効率)
実施例2と比較例1のエンジンのトルクと熱効率との関係を測定した。上記のように、実施例1は、ピストンの頂面に、断熱層と無機系被膜層とからなる断熱コーティング膜を形成しており、比較例1はピストンの頂面は無処理としている。
エンジンのトルクは、ピストンが燃焼室の圧力を受けてクランクシャフトを回転させる力で、クランクシャフトにプロペラシャフトを介し締結されたトルク計によって計測した。熱効率は、燃料が保有するエネルギー全体を100としたときの、エンジンが出力するエネルギーの比率をいう。図7は、エンジンのトルクと熱効率との関係を示している。
図7に示すように、実施例2は、比較例1に比べて、エンジントルクに対する熱効率が高かった。エンジントルクが小さい場合、燃焼室内の燃焼速度が遅くなる。この場合には、放熱の影響が大きい。このようなエンジントルクが小さい場合には、実施例2は比較例1に比べて、熱効率が格段に高くなった。このことから、エンジントルクが小さいときに、放熱を抑えられることがわかった。
[その他]実施形態1によれば、第1断熱コーティング膜7fはピストン3の頂面30の全域に形成するものの、頂面30のうちの一部に形成しても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態および実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
1はエンジン、10は燃焼室、2はシリンダブロック、20はボア、3はピストン、30は頂面、4はシリンダヘッド、40はバルブ孔、5はバルブ、7fは断熱コーティング膜を示す、70はナノ中空粒子(第1の中空粒子)、71は断熱層、72は無機系被膜層、72a:最表層部、72b:内部、80は第1の中空粒子、80a、80b:第2の中空粒子。

Claims (13)

  1. ボアを有するシリンダブロックと、燃焼室を形成するように前記ボアに往復移動可能に嵌合されたピストンと、前記燃焼室を閉じ且つ前記燃焼室に連通するバルブ孔をもつシリンダヘッドと、前記バルブ孔を開閉させるバルブとを具備するエンジンであって、
    前記ピストン、前記シリンダヘッド、前記バルブのうちいずれか一つ以上は、前記燃焼室に対向する壁面と、前記壁面を被覆する断熱コーティング膜とを有し、
    前記断熱コーティング膜は、前記壁面の表面に形成された断熱層と、前記断熱層の表面に形成された無機系被膜層とを有し、
    前記断熱層は、樹脂と、前記樹脂埋設され前記断熱層の厚みよりも小さい平均粒子径をもつ第1の中空粒子とを有し、
    前記無機系被膜層は、無機化合物と、前記無機系被膜層の厚みよりも小さい平均粒子径をもつ第2の中空粒子とを有し、
    前記無機系被膜層は、最表層部と、前記最表層部よりも厚み方向で内側であって且つ前記断熱層と対面している内部とを有し、
    前記最表層部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径は、前記内部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径よりも小さいエンジン。
  2. 前記第1の中空粒子の平均粒子径は、1μm〜100μmである請求項1記載のエンジン。
  3. 前記無機系被膜層の厚みは、10μm〜300μmである請求項1又は2に記載のエンジン。
  4. 前記無機化合物は、シリカ、ジルコニア、アルミナ、及びセリアの中から選ばれる1種以上からなる請求項1〜3のいずれかに記載のエンジン。
  5. 前記無機系被膜層は、シリカを有する塗膜である請求項1〜4のいずれかに記載のエンジン。
  6. 前記内部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径は、1μm〜500μmである請求項1、2、4及び5のいずれかに記載のエンジン(請求項4又は5に従属するときには、請求項4又は5が請求項3に従属する場合を除く。請求項4に従属する請求項5に従属するときには、当該請求項4が請求項3に従属する場合を除く。)
  7. 前記最表層部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径は、10nm〜500nmある請求項1〜6のいずれかに記載のエンジン。
  8. 前記断熱層の厚みは10μm〜2000μmであり、前記第1の中空粒子の平均粒子径は1μm〜100μmである請求項1〜7のいずれかに記載のエンジン。
  9. 前記断熱層の見掛け体積を100%とするとき、前記断熱層空隙率は、5%以上90%以下である請求項1〜8のいずれかに記載のエンジン。
  10. 前記断熱コーティング膜の前記無機系被膜層の前記最表層部の表面粗さは、前記壁面の表面粗さよりも小さい請求項1〜9のいずれかに記載のエンジン。
  11. 燃焼室を形成するようにボアに往復移動可能に嵌合されるピストンであって、
    前記ピストンは、前記燃焼室に対向する壁面と、前記壁面を被覆する断熱コーティング膜とを有し、
    前記断熱コーティング膜は、前記壁面の表面に形成された断熱層と、前記断熱層の表面に形成された無機系被膜層とを有し、
    前記断熱層は、樹脂と、前記樹脂埋設され前記断熱層の厚みよりも小さい平均粒子径をもつ第1の中空粒子とを有し、
    前記無機系被膜層は、無機化合物と、前記無機系被膜層の厚みよりも小さい平均粒子径をもつ第2の中空粒子とを有し、
    前記無機系被膜層は、最表層部と、前記最表層部よりも厚み方向で内側であって且つ前記断熱層と対面している内部とを有し、
    前記最表層部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径は、前記内部に含まれる前記第2の中空粒子の平均粒子径よりも小さいピストン。
  12. 前記断熱コーティング膜の前記無機系被膜層の前記最表層部の表面粗さは、前記壁面の表面粗さよりも小さい請求項11記載のピストン。
  13. 前記無機系被膜層は、シリカを有する塗膜である請求項12に記載のピストン。
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