JP2021080838A - 遮熱膜の形成方法 - Google Patents

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一陽 山本
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信司 角島
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Hiroyuki Koga
広之 古賀
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Abstract

【課題】エンジンの燃焼室を形成する部材1に、クラッの発生が抑制され、当該部材に対する密着強度が高い遮熱膜を形成する。【解決手段】部材1に遮熱膜用の熱硬化性の塗材によって塗膜15を形成するステップと、塗膜15を加熱硬化させて遮熱膜を形成するステップとを備え、塗膜15はその硬化を促進する触媒を含有し、塗膜15を形成するステップでは、上記加熱による温度の上昇度合いが高い部位に比べて、その温度の上昇度合いが低い部位の触媒濃度を高くする。【選択図】図5

Description

本発明はエンジンの燃焼室内壁面を形成する部材に遮熱膜を形成する方法に関する。
エンジンの燃焼室内壁面に遮熱膜を形成してエンジンの冷却損失を低減することが知られている。例えば、特許文献1には、エンジンの燃焼室を形成するピストンの頂面に、中空粒子を分散させたシリコーン系樹脂よりなる遮熱膜を形成することが記載されている。その形成方法は、中空粒子とシリコーン系樹脂の混合物をピストンの頂面に塗布し、その塗膜の加熱硬化処理を行なった後に、塗膜表面を火炎等で加熱して酸化させるというものである。
特開2014−1718号公報
ところで、エンジンの燃焼室を形成する部材にシリコーン系樹脂のような熱硬化性樹脂を塗布してその塗膜の加熱処理を行なった場合、塗膜全体が一様には加熱されず、加熱による温度の上昇度合いが相対的に高い部位と低い部位を生ずることがある。
例えば、塗膜をその表面側から加熱したとき、塗膜における加熱源から遠い部位は加熱源に近い部位に比べて温度の上昇が遅くなる。すなわち、塗膜の表面側は温度が速やかに上昇するが、燃焼室を形成する部材に接する塗膜の底面側は温度の上昇が遅くなる。特に、塗膜の底面側は当該部材に熱を奪われるため、温度の上昇が遅くなる。或いは、塗膜の表面側においても、加熱源から離れた部位は温度上昇が遅れる傾向がある。また、塗膜を形成した部材を加熱炉に入れて塗膜を加熱する場合でも、当該部材の熱容量が大きいときは、塗膜の表面側に比べて底面側の温度上昇が遅れる傾向になる。
その結果、塗膜における加熱による温度の上昇度合いが相対的に低い部位は、塗膜の硬化が不十分になる。これに対して、塗膜の硬化を促進する触媒の添加量を多くすると、例えば、塗膜における加熱源から遠い部位も比較的速やかに硬化するが、加熱源に近い部位では硬化が急になることから、得られる遮熱膜にクラックを発生しやすくなる。
そこで、本発明は、クラックの発生が抑制され、当該部材に対する密着強度が高い遮熱膜を燃焼室形成部材に形成することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、塗膜における加熱による温度の上昇度合い(上昇速度)が高い部位と低い部位とで、塗膜の硬化を促進する触媒の濃度を異ならせるようにした。
ここに開示するエンジンの燃焼室内壁面を形成する部材に遮熱膜を形成する方法は、
上記部材に遮熱膜用の熱硬化性の塗材によって塗膜を形成するステップと、
上記塗膜を硬化させて上記遮熱膜を形成するべく、上記塗膜を加熱するステップとを備え、
上記塗膜は、その硬化を促進する触媒を含有し、
上記塗膜を形成するステップでは、上記加熱による温度の上昇度合いが高い部位に比べて、その温度の上昇度合いが低い部位の触媒濃度を高くすることを特徴とする。
この方法によれば、塗膜における加熱による温度の上昇度合いが低い部位は、触媒濃度が高いことにより、その硬化が促進される。一方、その温度の上昇度合いが高い部位は触媒濃度が相対的に低いことにより、塗膜の急激な硬化が抑制される。すなわち、塗膜における触媒濃度を加熱による温度の上昇度合いに応じて変えたことにより、塗膜全体を略均等に硬化させ、クラックの発生が抑制され、且つエンジンの燃焼室内壁面を形成する部材に対する密着強度が高い遮熱膜を得る上で有利になる。
一実施形態では、上記塗膜をその表面側から加熱し、上記塗膜の加熱源に近い部位に比べて、該加熱源から遠い部位の触媒濃度を高くする。すなわち、塗膜をその表面側から加熱する場合、当該塗膜の加熱源に近い部位に比べて、加熱源から遠い部位は温度の上昇度合いが低くなるから、この遠い部位の触媒濃度を相対的に高くするものである。
一実施形態では、上記塗膜をその表面側から加熱するケースにおいて、上記塗膜の表面側に比べて、該塗膜の上記部材に接する底面側の触媒濃度を高くする。塗膜の底面側は表面側に比べて加熱による温度の上昇度合いが低いから、この底面側の触媒濃度を相対的に高くするものである。
一実施形態では、上記塗膜をその表面側から加熱するケースにおいて、上記塗材として、上記触媒濃度が相異なる複数の塗材種を調製するステップを備え、上記塗膜を形成するステップでは、上記複数の塗材種を上記触媒濃度が高い塗材種から順に上記部材に層状に塗り重ねることによって上記塗膜を形成する。これにより、上記塗膜の表面側に比べて、該塗膜の底面側の触媒濃度を高くすることができる。
この場合、上記塗膜の最下層の触媒濃度は最上層の触媒濃度の、例えば、1.4倍以上2.5倍以下となるようにすればよい。なお、2層だけの塗り重ねの場合、その下層が最下層に相当し、上層が最上層に相当することになる。
一実施形態では、上記複数の塗材種を調製するステップでは、反応性シリコーン系樹脂の溶液と中空粒子とナノ粒子と上記触媒としての白金触媒を混合することによって粒子分散液を調製し、該粒子分散液を有機溶媒によって希釈することによって上記複数の各塗材種を調製し、
上記部材に接するように塗布する塗材種は、上記反応性シリコーン系樹脂100質量部に対して上記白金触媒が白金金属に換算して0.02質量部以下となるようにする。
上記塗材種の調製において、触媒濃度が高くなると、白金触媒による触媒反応によって粒子分散液の反応性シリコーン系樹脂溶液の硬化が進んでゲル化し、有機溶媒による希釈が難しくなりやすい。そのため、触媒濃度が高い塗材種を調製するとき、白金触媒の濃度の上限は反応性シリコーン系樹脂100質量部に対して0.02質量部程度にしておくことが好ましい。
本発明によれば、エンジンの燃焼室内壁面を形成する部材に熱硬化性の塗材によって塗膜を形成し、この塗膜を加熱硬化させて遮熱膜を形成する方法において、上記塗膜における加熱による温度の上昇度合いが高い部位に比べて、その温度の上昇度合いが低い部位の触媒濃度を高くするから、塗膜全体を略均等に硬化させて、クラックの発生が抑制され、且つエンジンの燃焼室内壁面を形成する部材に対する密着強度が高い遮熱膜を得る上で有利になる。
本発明の適用例であるエンジンの断面図。 上記エンジンのピストン頂面の遮熱膜を示す断面図。 上記遮熱膜の一部を拡大して示す断面図。 上記遮熱膜を形成する方法の流れを示す工程図。 上記遮熱膜を形成する塗膜の断面図。 エンジンを燃焼運転したときの塗膜の表面からの深さ方向各部の温度変化を示すグラフ図。 エンジンを燃焼運転したときの塗膜の表面から深さ方向各部の時間平均温度を示すグラフ図。 触媒添加量が異なる各塗材種による塗膜が焼成時間20分で鉛筆硬度3Bになるために必要な温度を示すグラフ図。 実施例及び比較例のエンジン運転後の遮熱膜残存率を示すグラフ図。 上記遮熱膜を形成する別の方法の流れを示す工程図。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1において、1はエンジンのアルミニウム合金製ピストン、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はシリンダヘッド3の吸気ポート5を開閉する吸気バルブ、6は排気ポート7を開閉する排気バルブ、8は燃料噴射弁である。エンジンの燃焼室は、ピストン1の頂面、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、吸排気バルブ4,6の傘部前面(燃焼室に臨む面)で形成される。ピストン1の頂面には、キャビティ9が形成されている。なお、点火プラグの図示は省略している。
<遮熱膜について>
図2に示すように、エンジンの燃焼室内壁面を形成する部材としてのピストン1の頂面に遮熱膜11が形成されている。図3に示すように、遮熱膜11は、無機酸化物よりなる多数の中空粒子12と、この中空粒子12をピストン1に保持すると共に中空粒子12間を埋めて当該遮熱膜11の母材(マトリックス)を形成するシリコーン系のバインダ13とを備え、バインダ13にはナノ粒子14が分散している(図3では、ナノ粒子14を点々で表している。)。
遮熱膜11の厚さ(以下、「膜厚」という。)は、例えば、40μm以上125μm以下となるように、好ましくは40μm以上100μm以下となるようにする。中空粒子12としては、遮熱膜11の膜厚よりも小さいμmオーダの粒径のものを用いる。その平均粒径は、例えば30μm以下であることが好ましい。ナノ粒子13の平均粒径は、1nm以上200nm以下であることが好ましく、さらには、1nm以上100nm以下であることが好ましい。
但し、上記数値範囲はエンジンの燃焼室の壁面に遮熱膜11を設ける場合の好ましい範囲であって、限定的なものではない。また、燃焼室の壁面以外の機器等に遮熱膜を設ける場合は、中空粒子12の粒径及び遮熱膜11の膜厚は、さらに小さく、あるいは大きくすることもできる。
中空粒子12としては、ガラスバルーン、ガラスバブル、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン等のSi系酸化物成分(例えば、シリカ)又はAl系酸化物成分(例えば、アルミナ)を含有するセラミック系中空粒子を採用することが好ましい。特に、表面が滑らかな球状のガラスバルーンを好ましく採用することができる。
バインダ13としては、例えば、メチルシリコーン系樹脂、メチルフェニルシリコーン系樹脂に代表される、分岐度の高い3次元ポリマーからなるシリコーン系樹脂を好ましく用いることができる。シリコーン系樹脂の具体例としては、例えばポリアルキルフェニルシロキサンを挙げることができる。
ナノ粒子13としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア等の無機化合物よりなる無機ナノ粒子、Ti、Zr、Al等の金属ナノ粒子等を採用することができ、特に、シリカよりなるナノバルーンを好ましく採用することができる。
遮熱膜11は、ピストン1の頂面に限らず、エンジンの燃焼室内壁面を形成する部材としての、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、或いは吸排気バルブ4,6の傘部前面に形成することができる。
<遮熱膜の形成方法>
図4に遮熱膜11を形成する方法をステップ順で示す。
−塗材調製ステップ−
本実施形態では、触媒濃度が異なる複数の塗材種を調製する。すなわち、熱硬化性樹脂溶液としての反応性シリコーン系樹脂溶液と中空粒子とナノ粒子と当該樹脂の硬化を促進する触媒溶液とを混合することによって粒子分散液を調製する。この粒子分散液の調製において、触媒溶液の添加量を変えることにより、触媒濃度が異なる複数の粒子分散液を得る。
シリコーン系樹脂溶液としては、メチル系シリコーン系樹脂、メチルフェニル系シリコーン系樹脂に代表される室温で液状である付加硬化性オルガノポリシロキサンを用いることができる。触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などを用いることができる。特に、白金錯体の溶液を好ましく用いることができる。
そうして、上記触媒濃度が異なる各粒子分散液を有機溶媒によって希釈することにより、触媒濃度が異なる塗布に適切な粘度の各塗材種を得る。粒子分散液はその調製後に保存しておいて、遮熱膜を形成する際に有機溶媒で希釈して塗材とすることができる。有機溶媒としては、限定する意味ではないが、トルエン又はキシレンを好ましく採用することができる。
塗材種の触媒濃度は、常温で触媒反応が進行して粒子分散液がゲル化することを抑制する必要がある。白金系触媒であれば、上記シリコーン系樹脂100質量部に対する触媒添加量を白金金属に換算して0.02質量部以下となるようにすることが好ましい。
次に説明する塗膜形成ステップにおいて3層塗り重ねを採用する場合は、触媒濃度が異なる3種(低濃度、中間濃度及び高濃度)の塗材種を調製することになる。その場合、低濃度塗材種の塗材種は、シリコーン系樹脂100質量部に対する触媒添加量(白金金属換算値)を例えば0.001質量部以上0.007質量部以下となるようにし、中間濃度塗材種は触媒添加量が低濃度塗材種の触媒添加量の例えば1.2倍以上1.6倍以下となり、高濃度塗材種は触媒添加量が中間濃度塗材種の触媒添加量の例えば1.2倍以上1.6倍以下となるようにすればよい。
−塗膜形成ステップ(塗材種の塗布)−
上記複数の塗材種を触媒濃度が高い塗材種から順にピストン1の頂面に全面にわたって層状に塗り重ねていって塗膜を形成する。この塗布は、スプレーを用いて行なうことができる。刷毛やへらを用いて塗布するようにしてもよい。図5は触媒濃度が異なる3種の塗材種を塗り重ねた例を示す。この場合、ピストン1の頂面に接する塗膜15の底面側である最下層16の触媒濃度が最も高く、塗膜15の表面側の最上層18の触媒濃度が最も低く、中間層17は中間の触媒濃度となっている。最下層16の触媒濃度は最上層18の触媒濃度の、例えば、1.4倍以上2.5倍以下となるようにする。
各塗布層16〜18の厚さは、例えば、10μm以上40μm以下とすることができる。なお、図5の例の3層塗り重ねに限らず、2層塗り重ねとすることができ、或いは4層以上の塗り重ねとすることもできる。
−塗膜加熱ステップ(遮熱膜の形成)−
塗膜15を加熱硬化させて遮熱膜11を形成する。すなわち、この加熱により、反応性シリコーン系樹脂が硬化して中空粒子及びナノ粒子を含有する遮熱膜11が得られる。このとき、塗膜15に含まれる触媒が塗膜15の硬化反応を促進する。
この塗膜15の加熱は、塗膜15を形成したピストン1を200℃前後の温度にした加熱炉に入れて行なうこともできるが、塗膜15の表面側に加熱源(火炎や赤外線ヒータ等)を配置して塗膜15を表面側から加熱する方式を採用することもできる。
また、塗膜15の表面側からの加熱は、塗膜15を形成したピストン1をエンジンのシリンダに組み込み、エンジンの燃焼運転によって実施することもできる。すなわち、エンジンを運転し、燃料の燃焼によって発生する熱で塗膜15を加熱する方式である。これによれば、ピストン1に塗膜15を形成した後、塗膜焼成工程を別に設けることなく、エンジンの例えば試験運転を利用して塗膜15を焼成することができ、遮熱膜11の形成に要する工数及び時間を削減することができる。
塗膜15をその表面側から加熱したとき、塗膜15は、その表面側は温度が速やかに上昇するが、底面側にいくほど温度の上昇が遅くなる。これに対して、塗膜15の底面側である最下層16の触媒濃度が最も高く、表面側の最上層18の触媒濃度が最も低く、中間層17は中間の触媒濃度となっている。従って、塗膜15は、底面側にいくほど温度の上昇が遅くなるものの、底面側にいくほど触媒濃度が高くなっているため、塗膜全体で略均等に硬化が進む。
<エンジンの燃焼運転による塗膜温度>
図6はエンジンを回転数1000rpm、IMEP400kPaで運転したときの、シミュレーションによるピストンの頂面に形成されている塗膜温度の予測結果を示す。同図の右側に付した0.0〜75.0の数値は塗膜の表面からの深さをμm単位で表したものである。クランク角度360度から膨張行程が始まる。同図右側の「炉200℃」は加熱炉で塗膜を焼成するときの温度例を示す。
同図によれば、エンジンの燃焼運転では、塗膜の厚さ方向における表面側は、その温度が炉温度よりも高くなるため、加熱炉で焼成するよりも、短時間で塗膜を焼成することができることがわかる。
一方、エンジンの燃焼運転の場合、塗膜の深さ方向各部の時間平均温度は図7に示すようになり、加熱炉とは違って、塗膜を表面側から加熱することになるため、塗膜はその表面から離れた底面側になるほど、温度が低く、硬化しにくい。これに対して、本発明に係る方法では、塗膜の底面側の触媒濃度を高くするから、塗膜の底面側でも、表面側と同等の硬化速度にすることが可能になる。
ここに、触媒濃度を異ならせた各塗材種による塗膜が焼成時間20分で鉛筆硬度3Bになるために必要な温度を調べたところ、図8に示す結果が得られた。同図では、触媒濃度をシリコーン系樹脂(メチルフェニル系シリコーン系樹脂)100質量部に対する触媒添加量で表しており、この触媒添加量は、白金錯体(カールステッド触媒)溶液の添加量を白金金属に換算した値である。
塗膜が焼成時間20分で鉛筆硬度3Bになる温度は、触媒添加量が0.005質量部であるときは121℃、触媒添加量が0.07質量部であるときは118℃、触媒添加量が0.01質量部であるときは112℃である。一方、図7によれば、塗膜の表面からの深さが30μmを超えた辺りの平均温度が121℃程度であり、深さ40μm付近の平均温度が118℃であり、深さ55μmを超えた辺りの平均温度が112℃である。
従って、図5に示す塗膜構成において、例えば、最下層16の厚さを20μm、中間層17の厚さを20μm、最上層18の厚さを35μmとするとき、最下層16の触媒添加量を0.01質量部、中間層17の触媒添加量を0.007質量部、最上層18の触媒添加量を0.005質量部とすれば、塗膜15の全体が略均等に硬化していくことが見込まれる。
<比較試験>
表1に塗膜構成(各層の厚さ及び触媒添加量)を示す実施例及び比較例各々のピストンをエンジンに組み込んでエンジンの燃焼運転を行ない、得られた遮熱膜の残存率を調べた。
塗膜の形成に使用した塗材種はいずれも、シリコーン系樹脂に中空粒子、ナノ粒子及び触媒を混合したものであり、触媒を除く各成分の配合量(焼成後の値)は表2に示すとおりである。ピストンはアルミニウム合金製であり、シリコーン系樹脂は付加硬化型のメチルフェニル系シリコーン系樹脂、中空粒子は平均粒径5μmのアルミノシリケート製微細バルーン、ナノ粒子は平均粒径100nmのシリカナノ粒子、触媒は白金錯体(カールステッド触媒)をトルエンに溶かしたものである。エンジンは、エンジン回転数2000rpmでの全負荷WOT運転とし、運転時間は1時間である。
Figure 2021080838
Figure 2021080838
結果を図9に示す。比較例では、遮熱膜の表面にクラックを生じており、遮熱膜の一部がピストン本体から剥離していた。これに対して、実施例では、遮熱膜の表面に微細なクラックが見られたものの、ピストン本体からの遮熱膜の剥離は認められなかった。
<遮熱膜形成方法の他の例>
図10に遮熱膜11を形成する他の方法をステップ順で示す。
−触媒溶液・塗材調製ステップ−
触媒をトルエン等の有機溶媒に溶かした触媒溶液、並びに触媒溶液を添加した塗材を調製する。触媒溶液の白金濃度は例えば0.1質量%以上1.0質量%以下程度にすればよい。塗材の調製は、先に説明した「塗材調製ステップ」と同様にして行なうことができる。塗材における触媒添加量(シリコーン系樹脂100質量部に対する添加量)は白金金属換算値で例えば0.001質量部以上0.007質量部以下となるようにすることができる。
−触媒溶液塗布ステップ−
先に調製した触媒溶液をピストン1の頂面に全面にわたって塗布する。この塗布は、スプレーを用いて行なうことができる。刷毛やへらを用いて塗布するようにしてもよい。
−塗膜形成ステップ(塗材の塗布)−
ピストン1の頂面に塗布された触媒溶液が乾燥する前に、先に調製した塗材を触媒溶液の塗布面に塗布して塗膜を形成する。この塗布は、スプレーを用いて行なうことができる。刷毛やへらを用いて塗布するようにしてもよい。先に塗布された触媒溶液が塗膜に浸透するため、塗膜の底面側は表面側に比べて触媒濃度が高くなる。
−塗膜加熱ステップ(遮熱膜の形成)−
前ステップで形成した塗膜を加熱硬化させて遮熱膜11を形成する。すなわち、この加熱により、反応性シリコーン系樹脂が硬化して中空粒子及びナノ粒子を含有する遮熱膜11が得られる。このとき、塗膜に含まれる触媒が塗膜の硬化反応を促進する。
塗膜をその表面側から加熱したとき、塗膜は底面側にいくほど温度の上昇が遅くなるものの、塗膜の底面側は表面側に比べて触媒濃度が高くなっているから、塗膜の底面側でも表面側と同様に塗膜の硬化が進む。塗膜の表面側からの加熱は先に説明した遮熱膜の形成方法の塗膜加熱ステップと同様に行なうことができる。
なお、以上で説明した遮熱膜の形成方法は、エンジンの燃焼室内壁面を形成する部材がピストンである例であるが、当該部材がシリンダブロック2、シリンダヘッド3、吸排気バルブ4,6であっても、同様の方法で遮熱膜を形成することができる。
1 ピストン(エンジンの燃焼室内壁面を形成する部材)
11 遮熱膜
15 塗膜
16 塗膜の最下層
17 塗膜の中間層
18 塗膜の最上層

Claims (6)

  1. エンジンの燃焼室内壁面を形成する部材に遮熱膜を形成する方法であって、
    上記部材に遮熱膜用の熱硬化性の塗材によって塗膜を形成するステップと、
    上記塗膜を硬化させて上記遮熱膜を形成するべく、上記塗膜を加熱するステップとを備え、
    上記塗膜は、その硬化を促進する触媒を含有し、
    上記塗膜を形成するステップでは、上記加熱による温度の上昇度合いが高い部位に比べて、その温度の上昇度合いが低い部位の触媒濃度を高くすることを特徴とする遮熱膜の形成方法。
  2. 請求項1において、
    上記塗膜を加熱するステップでは、該塗膜をその表面側から加熱し、
    上記塗膜を形成するステップでは、上記塗膜の加熱源に近い部位に比べて、該加熱源から遠い部位の触媒濃度を高くすることを特徴とする遮熱膜の形成方法。
  3. 請求項2において、
    上記塗膜を形成するステップでは、該塗膜の表面側に比べて、該塗膜の上記部材に接する底面側の触媒濃度を高くすることを特徴とする遮熱膜の形成方法。
  4. 請求項3において、
    上記塗材として、上記触媒濃度が相異なる複数の塗材種を調製するステップを備え、
    上記塗膜を形成するステップでは、上記複数の塗材種を上記触媒濃度が高い塗材種から順に上記部材に層状に塗り重ねることによって上記塗膜を形成することを特徴とする遮熱膜の形成方法。
  5. 請求項4において、
    上記塗膜の最下層の触媒濃度が最上層の触媒濃度の1.4倍以上2.5倍以下となるようにすることを特徴とする遮熱膜の形成方法。
  6. 請求項4又は請求項5において、
    上記複数の塗材種を調製するステップでは、反応性シリコーン系樹脂の溶液と中空粒子とナノ粒子と上記触媒としての白金触媒を混合することによって粒子分散液を調製し、該粒子分散液を有機溶媒によって希釈することによって上記複数の各塗材種を調製し、
    上記部材に接するように塗布する塗材種は、上記反応性シリコーン系樹脂100質量部に対して上記白金触媒が白金金属に換算して0.02質量部以下であることを特徴とする遮熱膜の形成方法。
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