JP6102716B2 - 断熱層の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、断熱層の形成方法に関し、特に、中空状粒子を含む断熱層の形成方法に関する。
近年、エンジンの熱効率を高めるために、吸気行程では表面温度が低く、燃焼行程では表面温度が高くなるように燃焼室内の温度に追随可能な高応答性の断熱層を燃焼室の壁面に設けて、冷損を低減させることが研究・開発されている。
例えば、特許文献1には、断熱層が設けられる母材よりも低い熱伝導率及び母材よりも低い単位体積当たりの熱容量を有する中空状の材料である第1の断熱材と、母材以下の熱伝導率を有し、第1の断熱材を燃焼室内の燃焼ガスから保護するための第2の断熱材とを含む内燃機関の断熱層が提示されている。特許文献1の断熱層において、第1の断熱材は、第2の断熱材よりも低い単位体積当たりの熱容量を有しており、その第1の断熱材として、中空のセラミックビーズ、ガラスビーズ、シリカを主成分とする微細多孔構造の断熱材、又はシリカエアロゾル等が例示されている。また、第2の断熱材としては、ジルコニア、シリコン、チタン若しくはジルコニウム等の中実のセラミックや、炭素、酸素、ケイ素等を含んだ有機ケイ素化合物、又は高強度且つ高耐熱性のセラミック繊維等が例示されている。
再公表特許WO2009/020206号
上記特許文献1の断熱層のように、中空状の粒子材である第1の断熱材を第2の断熱材中に分散含有させると、中空状粒子内の空気が断熱性を向上するため、断熱層の低熱伝導率化に有効であると考えられる。
しかしながら、特許文献1に第1の断熱材として例示されている中空状のセラミックビーズ、ガラスビーズ又はシリカを主成分とする微細多孔構造の断熱材等は、そのシェル(殻)の厚みが薄いため、中実のセラミック等である第2の断熱材と混合する工程において、割れてしまうおそれがある。そうすると、第1の断熱材の中空部に第2の断熱材が侵入してしまうため、断熱性を向上するための上記空気の量が低減することとなる。その結果、所望の低熱伝導性を有する断熱層が得られないこととなる。
また、中空状の第1の断熱材の割れは、第2の断熱材との混合工程のみならず、基材へのコーティング工程における基材との物理的な接触や、焼成工程における第2の断熱材の熱収縮によっても生じ、さらに、割れのみならず中空状粒子が破砕状態となることも考えられる。これらが原因となり、上記の通り、低熱伝導性を有する断熱層が得られないおそれがある。
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、断熱層に含まれる中空状粒子の割れや破砕を防ぎ、低熱伝導性の断熱層を得られるようにすることにある。
前記の目的を達成するために、本発明は、断熱層に含有される中空状粒子の外表面に保護膜を設けるようにした。
具体的に、本発明に係る断熱層の形成方法は、基材上に、中空状粒子とバインダ材とを含む断熱層を形成する方法であって、中空状粒子の外表面を、保護膜前駆体を含む溶液に接触させる接触工程と、溶液に接触させた前記中空状粒子を熱処理により乾燥して、該中空状粒子の外表面に保護膜を形成する保護膜形成工程と、外表面に保護膜が形成された中空状粒子と、バインダ材を含む溶液とを混合して混合溶液を調製する混合工程と、混合溶液を前記基材の表面に塗布する塗布工程と、基材表面に塗布された混合溶液を、保護膜形成工程における熱処理よりも高温で焼成する焼成工程とを備えていることを特徴とする。
本発明に係る断熱層の形成方法によると、断熱層に含まれる中空状粒子の外表面に保護膜が形成されて、その保護膜が中空状粒子同士の接触や中空状粒子と基材との接触、又はバインダ材の熱収縮等により受ける外力から中空状粒子を保護するため、中空状粒子が断熱層の形成工程中に割れたり破砕したりすることを防止、又は大幅に低減できる。このため、割れた中空状粒子内にバインダ材が侵入して断熱層中の空気の量が低減することを防止でき、その結果、断熱層の熱伝導率が増大することを防止できる。すなわち、本発明の方法によって断熱性が高い断熱層を得ることができる。
本発明に係る断熱層の形成方法は、接触工程の前に、中空状粒子を水中に投入し、水面又は水中で浮遊する中空状粒子を回収する選択工程をさらに備え、選択工程において回収された中空状粒子のみを選択工程後の工程に用いることが好ましい。
このようにすると、割れている中空状粒子は水中において沈降し、割れていない中空状粒子は水面又は水中で浮遊するため、割れていない中空状粒子のみを回収できる。このため、既に割れている中空状粒子を除去でき、割れていない中空状粒子のみを用いることができて、低熱伝導性の断熱層を得るのに有利となる。
本発明に係る断熱層の形成方法において、保護膜前駆体としてシランカップリング剤を用いることが好ましい。
シランカップリング剤は、有機官能基及びアルコキシ基を有していて種々の物質の表面に結合可能であり、例えば中空状粒子が無機酸化物からなる場合、その表面に存在する水酸基を介して水素結合等によって効率良く結合できる。また、シランカップリング剤は、比較的に大きい分子量を有し、さらに互いに重合することもできるため、中空状粒子の割れを防ぐための保護膜として良好な強度が得られる。上記の理由からも、用いるシランカップリング剤の分子量は145以上、さらには200以上であることが好ましい。
また、本発明に係る断熱層の形成方法では、保護膜の前駆体として大気圧における沸点が180℃以下であるシランカップリング剤を用いることが好ましい。
このようにすると、焼成工程において、180℃以下といった低温の熱処理で、バインダ材の熱硬化と共に中空状粒子に結合していないシランカップリング剤を除去することができる。また、断熱層を設ける基材がアルミ合金製のピストン等である場合、通常、180℃程度で熱処理するT6処理等が施されているため、焼成工程で180℃を超える熱処理を施すと、基材の硬さや強度が低減し、耐久性が低減してしまう。このため、焼成工程を180℃以下の低温で行うことにより、上記基材の耐久性の低減を防止できる。また、用いるシランカップリング剤の大気圧における沸点が180℃を超える場合、上記焼成工程を、用いるシランカップリング剤の沸点が180℃以下となる減圧下で行ってもよい。このようにすると、上記と同様に焼成工程を180℃以下の低温で行って、基材の耐久性を低減させることなく、中空状粒子に結合していないシランカップリング剤を除去することが可能となる。
本発明に係る断熱層の形成方法において、バインダ材としてSiを含む化合物を用いることができる。
例えば、シリコーン樹脂やケイ酸ガラスといったSiを主体とする材料をバインダ材に用いることで、熱伝導率が低い良好な断熱性を有する断熱層を得ることができ、さらに上記シランカップリング剤にもSiが含まれていることから保護膜との親和性が良いという利点を有する。
また、本発明に係る断熱層の形成方法において、断熱層を形成する基材は、エンジン燃焼室に臨む部材、吸気ポート面及び排気ポート面から選択される少なくとも1つであってもよい。
エンジン燃焼室に臨む部材や吸気ポート面に上記のような断熱性能が高い断熱層を形成することにより、エンジンの熱効率を向上でき、燃費の向上が可能となる。また、排気ポート面に上記のような断熱性能が高い断熱層を形成することにより、燃焼室から排出される排気ガスの温度を維持できて、排気ガスを浄化するために排気ガス通路に設けられた触媒を効率良く活性させることができて、触媒性能を十分に発揮させるのに有利となる。
本発明に係る断熱層の形成方法によると、断熱層に含まれる中空状粒子が割れたり破砕したりすることを防止、又は大幅に低減できるため、中空状粒子内にバインダ材が侵入して断熱層内の空気量が低減することを防止できる。このため、断熱層の熱伝導率が増大して断熱性が低下することを防止でき、その結果、断熱性が高い断熱層を得ることができる。
本発明の実施形態に係るエンジン構造を示す断面図である。 本発明に係るエンジン燃焼室に臨む部材表面に設けられた断熱層を示す断面図である。 本発明に係るエンジン燃焼室に臨む部材表面に設けられた断熱層を示す拡大断面図である。 (a)〜(d)は本発明の実施形態に係る断熱層の形成方法を説明するための図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものでない。
本実施形態は、断熱層を図1に示すエンジンの燃焼室に臨む面に採用したものである。
<エンジンの特徴>
図1に示す直噴エンジンEにおいて、符号1はピストン、符号3はシリンダブロック、符号5はシリンダヘッド、符号7はシリンダヘッド5の吸気ポート9を開閉する吸気バルブ、符号11は排気ポート13を開閉する排気バルブ、符号15は燃料噴射弁である。エンジンの燃焼室は、ピストン1の頂面、シリンダブロック3、シリンダヘッド5、吸排気バルブ7,11のバルブヘッド面(燃焼室に臨む面)で形成される。ピストン1の頂面には、キャビティ17が形成されている。図1では、点火プラグ、及びシリンダライナの図示は省略している。
ところで、エンジンの熱効率は、理論的に幾何学的圧縮比を高めるほど、また、作動ガスの空気過剰率を大きくする(比熱比を高める)ほど、高くなることが知られている。しかし、実際には、圧縮比を大きくするほど、また、空気過剰率を大きくするほど、冷却損失が大きくなるため、圧縮比及び空気過剰率の増大による熱効率の改善は頭打ちになる。
すなわち、冷却損失は、作動ガスからエンジン燃焼室壁への熱伝達率、その伝熱面積、及びガス温と壁温との温度差に依存する。このため、エンジン燃焼室において、エンジン部品の金属製母材よりも熱伝導率が低い材料からなる断熱層が該金属製母材の表面に形成されている。
<断熱層の構成>
次に、エンジン部品の金属製母材(基材)に形成された断熱層の構成について図2及び図3を参照しながら説明する。本実施形態においては、エンジン部品の金属製母材として、エンジン燃焼室に臨む部材である上記ピストンの頂面に形成された断熱層について説明するが、シリンダブロック等の他のエンジン燃焼室に臨む部材表面に形成された断熱層も同様の構成とすることができる。また、エンジン燃焼室に臨む部材の他に、吸気ポート面又は排気ポート面にも断熱層を形成することができ、その断熱層も同様の構成とすることができる。
図2に示すように、エンジン部材としてのピストン本体(基材)19の頂面19a(エンジン燃焼室に臨む部材表面)に断熱層21が形成されている。ピストン本体19の頂面19aの中央には上記キャビティ17に対応する凹陥部が形成されており、断熱層21はその頂面19aの形状に倣うように略均一な厚さで形成されている。本実施形態のピストン本体19は、例えばT6処理を施してなるアルミ合金製である。また、ピストン本体19の断熱層21が形成される頂面19aは、ブラスト処理及び陽極酸化処理(アルマイト処理)等の粗面化処理が施されていてもよい。粗面化処理を施すことにより、ピストン本体19の頂面19aに凹凸が形成され、ピストン本体19と断熱層21との密着性を向上でき、その結果、断熱層21がピストン本体19から剥離することを防止できる。
図3に示すように、ピストン本体19の上に形成された本実施形態に係る断熱層21は、無機酸化物を主体とする中空状粒子23、及びSiを含有するバインダ材25を含む。また、中空状粒子23の外表面には、物理的接触等により中空状粒子23が割れたり破砕したりすることを防止するための保護膜27が形成されている。
断熱層21は、バインダ材25が中空状粒子23を覆うと共にそれらを結合することで層構造を成している。断熱層21は、内部に空気を含む中空状粒子23を含有するため、断熱層21の熱伝導率は低く、高い断熱性能を有する。
本実施形態において、無機酸化物を主体とする中空状粒子23としては、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、エアロゲルバルーン等のSi系酸化物成分(例えば、シリカ(SiO))又はAl系酸化物成分(例えば、アルミナ(Al))を含有するセラミック系中空粒子を採用することが好ましい。各々の材質及び粒径は表1の通りである。
Figure 0006102716
例えば、フライアッシュバルーンの化学組成は、SiO;40.1〜74.4%、Al;15.7〜35.2%、Fe;1.4〜17.5%、MgO;0.2〜7.4%、CaO;0.3〜10.1%(以上は質量%)である。シラスバルーンの化学組成は、SiO;75〜77%、Al;12〜14%、Fe;1〜2%、NaO;3〜4%、KO;2〜4%、IgLoss;2〜5%(以上は質量%)である。なお、中空粒子23のメディアン径(D50)は、5μm以上30μm以下程度であることが好ましい。中空粒子のメディアン径が5μm以上では、その粒子内に含まれる空気量を大きくすることができ、一方、30μm以下とすると、断熱層の厚さに対して含有できる粒子量を多くでき、高い断熱性能のために必要な空気量を得ることができる。さらに、中空粒子のメディアン径を30μm以下とすると断熱層の表面粗さを小さくでき、表面温度の局所的な上昇を防ぎ、エンジンの異常燃焼及び断熱層の熱損失を防ぐことができる。
また、中空状粒子23の外表面に形成される保護膜27は、中空状粒子23の外表面に結合できて、中空状粒子の割れや破砕を防止できる強度を有する材料からなる。保護膜27を形成するための材料(保護膜前駆体)として、シランカップリング剤を用いることが好ましい。特に、保護膜に好適な強度を具備させるために、分子量が145以上、さらには200以上のシランカップリング剤を用いることが好ましい。
本実施形態において、バインダ材25は、非粉末状であって、それ自体が緻密に構成されていることが好ましい。このようにすると、中空状粒子23同士の間やバインダ材25自体に燃料が通過可能な間隙がなく、その結果、エンジン燃焼室に噴射された燃料が断熱層21に浸み込むことを防止できる。また、バインダ材25は、Siを含む化合物から構成されていることが好ましい。そのようなバインダ材25の材料は、以下のものに限定されないが、例えばシリコーン系樹脂又はケイ酸を主体とするガラス質材を用いることができる。シリコーン系樹脂としては、例えばメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂に代表される、分岐度の高い3次元ポリマーからなるシリコーン樹脂を好適に用いることができ、具体例としては、例えばポリアルキルフェニルシロキサンを挙げることができる。
なお、本実施形態において、断熱層21の強度又は硬度を向上するために、断熱層21にフィラー材が含まれていてもよい。
<断熱構造体の製造方法>
次に、上記の断熱層をエンジン燃焼室に臨む部品表面であるピストンの頂面に形成する方法について図4(a)〜(d)を参照しながら説明する。図4(a)は割れていない中空状粒子を選択するための選択工程を説明するための図であり、図4(b)は選択された中空状粒子を示す断面図であり、図4(c)は保護膜形成工程において外表面に保護膜が形成された中空状粒子を示す断面図であり、図4(d)は、焼成工程により形成された断熱層を示す断面図である。なお、以下では、ピストン本体の頂面に断熱層を形成する方法を説明するが、シリンダブロックなど他のエンジン部材や、吸気ポート面又は排気ポート面においてもピストン本体の場合と同様の方法で断熱層を形成することができる。
まず、上記のシラスバルーン等の中空状粒子23を準備する。次に、図4(a)に示すように、準備した中空状粒子23を水が入った所定の容器30内に投入し、水面又は水中において浮遊する中空状粒子23のみを回収する(選択工程)。中空状粒子23は、薄い外殻の内部に空気を含んでいるため水に浮くが、外殻が割れている場合、内部に水が浸入するため沈んでしまう。このため、水面又は水中において浮遊する中空状粒子23のみを回収することにより、割れていない中空状粒子23のみを選択することができる。
図4(b)に示すように、回収した割れが生じていない中空状粒子23を乾燥した後、中空状粒子23の外表面に保護膜の前駆体を含む溶液を塗布する(接触工程)。塗布の方法としては、例えばスプレー塗布を用いてもよいし、保護膜前駆体を含む溶液が入っている容器に中空状粒子を投入する方法を用いてもよく、また、これらの方法に限られず、中空状粒子23の外表面に保護膜前駆体を含む溶液を塗布できれば他の方法を用いてもよい。保護膜の前駆体としてはシランカップリング剤を用いることができる。保護膜の前駆体材料としてのシランカップリング剤を、以下の表2に例示する。さらに、表2には、それらの構造式、分子量、並びに常圧(大気圧)での沸点及び減圧下での沸点を示す。
Figure 0006102716
上記のように、保護膜前駆体として種々のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、表2の構造式で示すように、ビニル基やエポキシ基等の官能基と、アルコキシ基とを有しており、中空状粒子23の表面に存在する水酸基と水素結合等により結合することができる。なお、用いるシランカップリング剤の分子量は、145以上、さらには200以上であることが好ましい。このようにすると、分子量が高い材料からなる強度が高い保護膜を得ることができるため、中空状粒子23の割れ及び破砕の防止効果を向上することができる。また、用いるシランカップリング剤の沸点は、常圧又は減圧下で180℃以下であることが好ましい。このようにすると、後に行う焼成工程で低い焼成温度により中空状粒子23に結合していないシランカップリング剤を除去することが可能となる。この点に関しては、後の焼成工程の説明において詳説する。また、シランカップリング剤を含む溶液の溶媒としては、水、又は水とアルコールとの混合溶液を適宜選択することができる。さらに、溶解性が良好でない場合は、水に酢酸等を加えてpHを低減した酸性水溶液を適宜用いることもできる。
次に、図4(c)に示すように、外表面に上記溶液が塗布された中空状粒子23を乾燥することにより保護膜27を形成する(保護膜形成工程)。上記乾燥は、中空状粒子23に対して、例えば100℃程度で約30分間の熱処理を施すことにより行うことができる。
次に、上記中空状粒子23を、バインダ材、増粘剤及び希釈溶剤等と混合して混合溶液を調製する(混合工程)。続いて、得られた混合溶液を基材であるピストン19の頂面19aに塗布する(塗布工程)。混合溶液の塗布には、例えばスプレー又は刷毛等を用いることができる。
次に、図4(d)に示すようにピストン19の頂面19aに塗布された混合溶液に対して、熱処理(焼成)を施すことにより、バインダ材25を硬化させてピストン19の頂面19a上に断熱層21を形成する(焼成工程)。熱処理の時間及び温度は、塗布された混合溶液中のバインダ材25が硬化して断熱層21が形成されるのに十分な時間及び温度であり、特に熱処理温度は上記中空状粒子の乾燥の際の熱処理温度よりも高温であればよい。例えば、バインダ材25としてケイ酸ガラスを用いた場合は約150℃で30分程度であり、シリコーン樹脂を用いた場合は約180℃で50時間程度である。なお、熱処理温度は、保護膜前駆体として用いられたシランカップリング剤の沸点以上の温度であることが好ましい。このようにすると、焼成により断熱層21が形成されると共に、中空状粒子23と結合していないシランカップリング剤の分子を断熱層21から除去することができる。但し、断熱層21を設ける基材に悪影響が生じない程度の温度で行うことが好ましい。本実施形態において、基材としてアルミ合金製のピストン本体19を用いている場合、アルミ合金製ピストンは、通常、180℃程度で熱処理を行うT6処理等が施されており、このようなアルミ合金製ピストンに対して180℃を超える熱処理を行うと、ピストンの硬さや強度が低下するおそれがある。このため、基材としてアルミ合金製のピストン本体を用いている場合は、180℃以下で上記熱処理を行うことが好ましい。すなわち、保護膜形成工程において、中空状粒子に対して100℃程度の熱処理を施した場合、焼成工程では、100℃よりも高い温度で且つ180℃以下の熱処理を行うことが好ましい。このため、用いるシランカップリング剤は、180℃以下の沸点を有するものであることが好ましい。但し、180℃を超える沸点を有するシランカップリング剤を用いる場合、減圧下で熱処理を行うことで、中空状粒子に結合していないシランカップリング剤を180℃以下の温度で気化させて除去することができる。シランカップリング剤の減圧時の沸点は上記表2に例示している。
以上のようにして、ピストン本体19の頂面19aに、外表面に保護膜27が形成された中空状粒子23、及びバインダ材25を含む断熱層21を形成することができる。このようにして得られた断熱層21では、中空状粒子23の外表面に保護膜27が形成されているため、中空状粒子23が割れたり破砕したりすることを防止できる。その結果、中空状粒子23の内部にバインダ材25が侵入して断熱層21の熱伝導率が増大することを防止できるため、断熱性能の高い断熱層21を得ることが可能となる。
以下に、本発明に係る断熱層の形成方法を詳細に説明するための実施例を示す。
本実施例では、上記の製造方法に従って、外表面に保護膜が形成された中空状粒子と、バインダ材とを含む断熱層を基材の表面上に形成し、形成された断熱層内に含まれる中空状粒子のうち破砕したものの割合と、断熱層の熱伝導率とを測定した。
実施例1では、中空状粒子としてシラスバルーンを用い、保護膜前駆体として3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを用い、バインダ材をケイ酸ガラスとした。具体的に、ケイ酸ガラスを形成するために、バインダ材の材料としてシリコンアルコキシド溶液である株式会社イズモ製G−90を用いた。実施例2は、実施例1と比較して、バインダ材をシリコーン樹脂としたことが異なる。具体的にシリコーン樹脂として、ポリアルキルフェニルシロキサンを用いた。実施例3は、実施例1と比較して、保護膜前駆体として3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランを用いたことが異なる。実施例4は、実施例2と比較して、保護膜前駆体として3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランを用いたことが異なる。実施例1〜4において、中空状粒子に保護膜前駆体を塗布した後に、中空状粒子に対して100℃で30分間の乾燥を行って保護膜を形成した。
実施例1〜4において、断熱層中の中空状粒子の含有率が60vol%となるように、上記バインダ材の材料及び保護膜が形成された中空状粒子との混合溶液を調製した。バインダ材にケイ酸ガラスを用いた実施例1及び3では、断熱層の形成のための焼成を150℃で30分間行い、バインダ材にシリコーン樹脂を用いた実施例2及び4では、断熱層の形成のための焼成を180℃で50時間行った。また、実施例1〜4において、焼成工程では、上記保護膜前駆体の沸点が180℃以下となるように、減圧下(0.67kPa)で行った。
また、中空状粒子に保護膜を形成しない断熱層を比較例として形成した。比較例1ではバインダ材をケイ酸ガラスとし、比較例2ではバインダ材をシリコーン樹脂とした。すなわち、比較例1は、実施例1及び3と比較して中空状粒子に保護膜が形成されていないことのみが異なり、比較例2は、実施例2及び4と比較して中空状粒子に保護膜が形成されていないことのみが異なる。
実施例1〜4及び比較例1,2の断熱層に対して、断熱層内における中空状粒子の破砕の割合と、断熱層の熱伝導率とを測定した。中空状粒子の破砕の割合は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断熱層の断面の写真を撮り、100個の中空状粒子のうち破砕した中空状粒子の数を計測することにより算出した。また、断熱層の熱伝導率は、熱拡散率(m/s)、密度(kg/m)及び重量比熱(kJ/kg・K)の測定結果から算出した。具体的に、熱拡散率はレーザフラッシュ法を用いて測定し、密度はアルキメデス法を用いて測定し、重量比熱は示差走査熱量法(DSC法)を用いて測定し、これらの測定結果に基づいて、熱伝導率(W/m・K)=熱拡散率×密度×重量比熱の式から算出した。なお、測定は25℃の条件下で行った。実施例1〜4及び比較例1,2の断熱層における中空状粒子の破砕の割合、及び熱伝導率の測定結果を表3に示す。
Figure 0006102716
表3に示すように、中空状粒子の外表面に保護膜が形成されている実施例1〜4では、断熱層内における破砕した中空状粒子の割合が5%以下であった。一方、中空状粒子の外表面に保護膜が形成されていない比較例1及び2では、断熱層内における破砕した中空状粒子の割合が10%以上であった。実施例1〜4では中空状粒子の外表面に保護膜が形成されているため、中空状粒子とバインダ材との混合工程や断熱層の塗布工程における物理的接触、及び焼成工程におけるバインダ材の熱収縮によって中空状粒子が割れたり破砕したりすることを防止できる。その結果、上記の通り、保護膜が形成されていない比較例1及び2と比較して、実施例1〜4では中空状粒子の破砕の割合が低くなった。
また、バインダ材としてケイ酸ガラスを用いた実施例1及び3の断熱層の熱伝導率と比較例1の熱伝導率とを比較すると、実施例1及び3の断熱層の熱伝導率の方が低かった。中空状粒子が破砕すると、中空状粒子の内部にバインダ材が侵入して、断熱層中の空気の量が低減するため断熱層の熱伝導率が増大することとなる。このため、中空状粒子の破砕割合が小さい実施例1及び3の断熱層の方が比較例1の断熱層よりも熱伝導率が低い結果となったと考えられる。同様に、バインダ材としてシリコーン樹脂を用いた実施例2及び4の断熱層の熱伝導率と比較例2の熱伝導率とを比較すると、実施例2及び4の断熱層の熱伝導率は比較例2よりも僅かではあるが低く、実施例2及び4の断熱層における中空状粒子の破砕割合が比較例2の断熱層よりも小さかったことに起因すると考えられる。
以上の通り、本発明に係る断熱層の形成方法は、断熱層に含まれる中空状粒子の外表面に保護膜を形成するため、中空状粒子の割れを防止することができる。その結果、中空状粒子の内部にバインダ材が侵入して断熱層中の空気の量が低減することを防止できるので、断熱性能が高い断熱層を得ることができる。
1 ピストン
3 シリンダブロック
5 シリンダヘッド
7 吸気バルブ
11 排気バルブ
19 ピストン本体(基材)
19a 頂面
21 断熱層
23 中空状粒子
25 バインダ材
27 保護膜

Claims (8)

  1. 基材上に、中空状粒子とバインダ材とを含む断熱層を形成する方法であって、
    前記中空状粒子の外表面を、保護膜前駆体を含む溶液に接触させる接触工程と、
    前記溶液に接触させた前記中空状粒子を熱処理により乾燥して、該中空状粒子の外表面に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
    前記外表面に保護膜が形成された中空状粒子と、前記バインダ材を含む溶液とを混合して混合溶液を調製する混合工程と、
    前記混合溶液を前記基材の表面に塗布する塗布工程と、
    前記基材表面に塗布された混合溶液を、前記保護膜形成工程における熱処理よりも高温で焼成する焼成工程とを備えていることを特徴とする断熱層の形成方法。
  2. 前記接触工程の前に、前記中空状粒子を水中に投入し、水面又は水中で浮遊する前記中空状粒子を回収する選択工程をさらに備え、
    前記選択工程において回収された前記中空状粒子のみを前記選択工程後の工程に用いることを特徴とする請求項1に記載の断熱層の形成方法。
  3. 前記保護膜前駆体としてシランカップリング剤を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱層の形成方法。
  4. 前記保護膜前駆体として分子量が200以上であるシランカップリング剤を用いることを特徴とする請求項3に記載の断熱層の形成方法。
  5. 前記保護膜の前駆体として大気圧における沸点が180℃以下であるシランカップリング剤を用いることを特徴とする請求項3又は4に記載の断熱層の形成方法。
  6. 前記焼成工程を前記シランカップリング剤の沸点が180℃以下となる減圧下で行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の断熱層の形成方法。
  7. 前記バインダ材としてSiを含む化合物を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の断熱層の形成方法。
  8. 前記基材がエンジン燃焼室に臨む部材、吸気ポート面及び排気ポート面から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の断熱層の形成方法。
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