JP2004008520A - ストリング保護材及びストリング保護材を装着したラケット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ストリングSが挿通される筒状部21と、筒状部21が突設された基底部22とを備えたストリング保護材20を、少なくとも一部が、微小中空粉体を配合したプラスチック材料を用いて成形する。ストリング保護材20は、微小中空粉体を配合したプラスチック材料により一体的に成形され、保護材自体の真密度が0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下であることが好ましい。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストリング保護材及びストリング保護材を装着したラケットに関し、詳しくは、高強度、高振動減衰性を有し、軽量化されたストリング保護材及びラケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ラケットフレームは、軽量性、高剛性、高強度、耐久性等の性能が要求されており、女性やシニア層といった比較的少ない力で飛び性能を要求する層にも対応するためには、さらに操作性や反発性が重要視されている。このため、さらなる軽量化と高反発化が望まれている。
【0003】
よって、ラケットフレームは繊維強化樹脂製が主流となっている。通常ラケットフレームにおいては、炭素繊維のような高強度、高弾性率の繊維で強化された熱硬化性樹脂から形成されており、剛性が高く優れている。しかし、近年のラケットフレームは、強度と軽量化の両立が問題となっている。
【0004】
また、軽量化を実現しながら、高反発のための高剛性設計を考えた場合、補強による重量増あるいは高弾性糸の使用割合の増加による強度低下を引き起こす可能性がある。従って、軽量ラケットにおいて、強度を低下させずに、より高い剛性を得るには、成形後に塗布する塗料・ポリパテあるいはアッセンブルパーツ等の軽量化が有効であり、種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、実開平5−35161号では、ストリング保護材の基底部内に中空部を設けることにより、軽量化並びにストリングの振動吸収性を高めたフレーム用保護体が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実開平5−35161号のフレーム用保護材は、保護材自体に中空部が設けられているため、保護材全体の表面積が大きくなり、軽量化を図るには肉厚を薄くしなければならない。肉厚が薄い場合には、その部分の強度が低下することとなり、地面等との接触により破損しやすくなったり、また、容易に変形することになるのでフレームと保護材の間に砂等の異物が入りやすく不快な振動を発生させるという問題がある。また、中空部を維持するにはストリングテンションに耐え得るだけの剛性が必要となるため、肉厚を厚くせざるを得ず、現実には高強度、高振動減衰を維持しながら軽量化を図れないという問題がある。さらに、保護材自体に中空部を設けるには成形が困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、保護材自体の強度を維持しながら、高振動減衰性、軽量化を実現したストリング保護材の提供、及び軽量でかつ振動減衰性に優れたラケットの提供を課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ストリングが挿通される筒状部と、該筒状部が突設された基底部とを備えたストリング保護材であって、
少なくとも一部が、微小中空粉体を配合したプラスチック材料を用いて成形されてなることを特徴とするストリング保護材を提供している。
【0009】
このように、ストリング保護材を成形するプラスチック材料に微小中空粉体を配合しているため、微小粉体中の中空部の存在により、ストリング保護材の軽量化を図ることができる。また、中空部を有する微小粉体が保護材全体に分散されているため、この中空部により保護材全体でストリングの振動を吸収することができると共に、適度な弾性を有することができる。よって高い振動減衰性と高反発性を実現することができる。
【0010】
また、ストリング保護材自体の形状を変更し中空部を成形するのではなく、中空部を有する微小な粉体を配合することで、ストリング保護材に中空部を存在させているため、成形が容易である上に、十分な強度を保持することができる。
【0011】
本発明のストリング保護材の真密度が0.70g/cm3以上1.00g/cm3以下であるのが好ましい。上記範囲としているのは、0.70g/cm3より小さいとストリング保護材の体積が大きくなりすぎるためであり、1.00g/cm3より大きいと軽量化を実現しにくいためである。なお、さらに好ましくは0.80g/cm3以上1.00g/cm3以下である。
【0012】
また、本発明のストリング保護材は、上記微小中空粉体を配合したプラスチック材料により一体的に成形されてなることが好ましい。これにより成形がより容易となる上に強度も向上させることができる。
【0013】
上記微小中空粉体の真密度が0.20g/cm3以上0.70g/cm3以下であるのが好ましい。上記範囲としているのは、0.20g/cm3より小さいと耐圧強度が低下し成形しにくいためであり、0.70g/cm3より大きいと軽量化を実現しにくいためである。なお、さらに好ましくは0.30g/cm3以上0.60g/cm3以下である。
【0014】
上記プラスチック材料中の微小中空粉体の体積%が5%以上50%以下であるのが好ましい。上記範囲としているのは、5%より小さいと軽量化等の本発明の効果を実現しにくいためであり、50%より大きいと耐圧強度が低下し成形しにくいためである。なお、さらに好ましくは10%以上40%以下である。
【0015】
周波数が10Hzで測定された−5℃における動的粘弾性の複素弾性率E*が0.60×108dyn/cm2以上2.00×1010dyn/cm2以下としているのが好ましい。これにより、ストリングの振動吸収性を高め、かつストリング保護材として適度な弾性を保ち、反発性能を向上させることができる。ストリング保護材としては、打球時のストリングにより加わる荷重を分散する硬さが必要であり、さらにはスプリング効果が得られるような柔らかさが必要であるためである。
上記範囲としているのは、上記範囲より小さいとストリングを張架した時点での変形が大きく、打球時のスプリング効果を得にくいためであり、上記範囲より大きいと打球時の変形量が小さくスプリング効果が得にくいためである。なお、好ましくは1.00×108dyn/cm2以上2.00×1010dyn/cm2以下、さらに好ましくは5.00×108dyn/cm2以上5.00×109dyn/cm2以下である。
【0016】
硬さの指数は、ボール打球時のストリング及びフレームの振動数(150〜1000Hz)に合わせた設計が好ましい。具体的には、動的粘弾性測定の10Hzで測定した特性値において、温度と周波数の変換法則(換算則)が利用される。即ち、周波数が10Hzであって温度が−5℃の条件で測定された動的粘弾性複素弾性率E*は、常温において発生するストリング及びフレームの振動の周波数の条件下で測定した場合と同等となる。
【0017】
上記プラスチック材料のベース材は熱可塑性樹脂とされ、上記微小中空粉体は無機系のバルーン粉体とされ、上記微小中空粉体の表面はシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。これにより、強度と成形性をより高めることができる。
【0018】
上記熱可塑性樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂を用いることができるが、特に、ナイロン11、ナイロン12、ポリエーテルブロックアミドが好ましい。その他、66ナイロン等のアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、エーテル系樹脂等を1種又は複数種を組み合わせて用いることもできる。なお、プラスチック材料のベース材としては、熱可塑性樹脂以外のエラストマーや合成樹脂等の可塑性を有する高分子材料を用いることができる。
【0019】
上記無機系のバルーン粉体としては、特に、ソーダ石灰硼珪酸ガラスバルーン、アルミノシリケートバルーンが好ましく、その他シリカバルーン、カーボンバルーン、シラスバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン等を用いることができる。本発明の微小中空粉体は、比重が小さく耐圧強度の高いものが好ましい。
【0020】
上記微小中空粉体の表面がシランカップリング剤で処理されることにより、微小中空粉体と、プラスチック材料に用いられるベース材との結合を強固にすることができ、ストリング保護材の強度を高めることができる。
シランカップリング剤としては、下式で表されるものが挙げられる。なお、下式中、Xは有機反応基でアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、メタクリル基、ビニル基等が挙げられる。Yは無機反応基であり、一般式(−OR)からなる反応基で、Rは同一または異なる炭素数1〜3の飽和アルキル基である。なお、nは1〜3の整数である。
【0021】
また、シランカップリング剤としては、具体的に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフェン等が挙げられ、特に、γ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0022】
上記微小中空粉体の粒子径は15μm以上110μm以下であるのが好ましく、プラスチック材料中に均一に分散していることが好ましい。上記範囲としているのは、15μmより小さいと軽量化を図りにくくなるためであり、110μmより大きいとストリング保護材の強度が低下しやすいためである。なお、好ましくは30μm以上80μm以下である。
【0023】
ストリング保護材の筒状部の高さ・断面横断長さ(円筒の場合は直径)の値、基底部の長さ・幅・高さの値、基底部に設けられる筒状部の本数・間隔・配置位置等は、装着するラケットフレームの仕様等に応じて適宜設定することができ、ストリング保護材は、種々の形状とすることができる。また、複数の筒状部を基底部の長手方向に間隔をあけて配置し、筒状部は円筒状とすることが好ましい。なお、ストリング保護材には、装着状況等に応じて曲面部を設けたり、凹部、凸部を形成しても良い。
【0024】
また、本発明は、ストリング保護材がラケットフレームの打球面を囲むヘッド部に装着され、該ストリング保護材にストリングが挿通されてなるストリング保護材を装着したラケットであって、
上記ストリング保護材は、本発明のストリング保護材であることを特徴とするストリング保護材を装着したラケットを提供している。
【0025】
このように、軽量化と高強度、高振動減衰性を有する本発明のストリング保護材を装着しているため、ラケットフレームの物性を維持したままラケットフレームの軽量化、高振動減衰性を実現することができる。このため、ラケットフレーム自体に、性能改良の余地が増え、さらに高性能を有するラケットを得ることができる。よって、特に、硬式テニス用の軽量ラケットに好適に用いることができる。
【0026】
ストリング保護材は、ストリング保護材の筒状部が、ラケットフレームのヘッド部に穿設されたストリング孔に挿通されることにより装着され、ヘッド部の外周面側から装着されるのが好ましい。また、ストリング保護材は、ヘッド部のトップ位置周辺、両サイド周辺、ボトム(ヨーク)周辺等に、それぞれ分割して装着されることが好ましい。その他、ラケットフレームの形状に応じて1箇所又は複数箇所に装着することができる。
【0027】
また、ラケットフレームをストリング保護材を装着すると共に、各種の振動減衰材も合わせてラケットフレームに取り付けることもできる。
【0028】
上記ラケットフレームは、繊維強化プリプレグの積層体を中空パイプ状としたものから形成することが好ましい。繊維強化樹脂に用いられる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられるが、強度と剛性の点より、熱硬化性樹脂が好ましく、特にエポキシ系樹脂が好ましい。なお、強化繊維としてはカーボン繊維が好ましい。
【0029】
また、本発明は、繊維強化プリプレグの積層体からなるラケットフレームに限定されず、マンドレルにフィラメントワインデイングで強化繊維を巻き付けてレイアップを形成しておき、これを金型内に配置してリムナイロン等の熱可塑性樹脂を充填して形成したラケットフレームにも適用できる。その他、金属製、木製、樹脂と金属との組み合わせ等のラケットフレームにも適用可能である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図6は第1実施形態の硬式テニス用のラケットフレーム11からなるテニスラケット10を示す。ラケットフレーム11(以下、フレーム11とも称す)は、中空パイプ状の繊維強化樹脂の積層体からなり、打球面Fを囲むヘッド部13、スロート部14、シャフト部15、グリップ部(図示せず)を連続して構成している。ヘッド部13は、別部材からなるヨーク17をスロート側でラケットフレーム11と連続して打球面Fを囲む環状としている。また、ラケットフレーム11のヘッド部13にはストリング孔18が穿設されている。
【0031】
ラケットフレーム11のヘッド部13のトップ位置13aの周辺位置、ヘッド部13の両サイド13b、13cの周辺位置、ヘッド部13のボトム位置であるヨーク17の周辺位置には、それぞれストリング保護材20が装着されている。
【0032】
ラケットフレーム11は、カーボン繊維からなる強化繊維をマトリクス樹脂のエポキシ樹脂で含浸している繊維強化プリプレグの積層体からなり、フレームのみの重量は220gとしている。
【0033】
図2、図3に示すように、ラケットフレーム11に装着されるストリング保護材20は、ストリングSが挿通される複数の円筒形状の筒状部21と、筒状部21が突設された基底部22とを備えている。
【0034】
筒状部21の内孔21aの内径はストリングSの外径と同等かやや大きい程度の大きさとし、ストリング挿通時には、ストリングSと筒状部21の内孔21aの内周面は接触するようにしている。筒状部21の内孔21aは、ストリングSを挿通できるように基底部22においても連続して貫通されている。また、筒状部21の外径はストリング孔18の内径と同等かやや小さい程度の大きさとしている。このように、ストリング保護材20の筒状部21はラケットフレーム11のヘッド部13に穿設されたストリング孔18に挿入され、ストリングSはストリング保護材20の内孔21aに挿通される構成としている。
【0035】
筒状部21と基底部22は、ストリング保護材のラケットフレームへの装着箇所に応じて寸法を適宜変更しているが、基底部の幅W1を4mm〜28mmの範囲、高さH1を0.5mm〜5mmの範囲の帯状としている。筒状部21は、基底部22の長手方向に並列して配置され、基底部22より突出させている。筒状部21が基底部22より突出する長さH2は11mm〜32mmの範囲とし、筒状部21の外径L2は3mm〜5mmとし、筒状部21の断面積は一定としている。
【0036】
ストリング保護材20の筒状部21と基底部22とは、同一材料から一体成形され、熱可塑性樹脂である11ナイロンに、微小中空粉体であるガラス中空体を22体積%の割合で配合している。微小中空粉体の表面にはシランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)による表面処理が施されている。微小中空粉体の密度は0.38g/cm3であり、ストリング保護材自体の密度は0.91g/cm3であり、ストリング保護材の重量は21.5gである。また、ストリング保護材20は、周波数が10Hzで温度が−5℃以下の条件で測定された動的粘弾性複素弾性率E*が1.87×1010dyn/cm2である。
【0037】
図4乃至図6ストリング保護材20(20A、20B、20C)は、以下のようにしてラケットフレーム11に装着されている。なお、基底部22Aの長さは314mm、基底部22Bの長さは320mm、基底部22Cの長さは64mmとしている。
【0038】
図4に示すように、ラケットフレーム11のヘッド部13のトップ位置13aの周辺位置において、ストリング保護材20Aは、ヘッド部13の外周面側から筒状部21Aをストリング孔18に挿入し、基底部22Aをヘッド部13の外周面に接触させることで、ラケットフレームに装着されている。
【0039】
また、図5に示すように、ヘッド部13の両サイド13b、13cの周辺位置において、ストリング保護材20Bは、ヘッド部13の外周面側から筒状部21Bをストリング孔18に挿入し、基底部22Bをヘッド部13の外周面に接触させることで、ラケットフレームに装着されている。
【0040】
さらに、図6に示すように、ヘッド部13のボトム位置であるヨーク17の周辺位置において、ストリング保護材20Cは、ヘッド部13の外周面側から筒状部21Cをストリング孔18に挿入し、基底部22Cをヘッド部13の外周面に接触させることで、ラケットフレームに装着されている。
【0041】
上記構成よりなるストリング保護材は、微小中空粉体を配合した熱可塑性樹脂により一体的に成形されているため、微小粉体中の中空部の存在により、ストリング保護材の軽量化を図ることができる。また、中空部を有する微小粉体が保護材全体に分散されているため、この中空部により保護材全体でストリングの振動を吸収することができると共に、適度な弾性を有することができる。よって高い振動減衰性と高反発性を実現することができる。また、成形性にも優れ、十分な強度を有している。ストリング振動も減衰できるため。打球時にプレーヤーの肘に伝わる衝撃を緩和することができる。
【0042】
また、ストリング保護材20の動的粘弾性複素弾性率E*を1.87×1010dyn/cm2に設定しているため、フレーム10の振動数に合いやすく、振動減衰効果を十分に発揮することができる。
【0043】
また、上記構成よりなるフレーム10は、上記構成よりなるストリング保護材を装着しているため、フレーム自体の重量を増加させることなく、軽量化と高振動減衰、高反発を効率良く実現することができる。
【0044】
図7は、ストリング保護材30を装着したラケットの第2実施形態を示す。
ストリング保護材30は、基底部32の長手方向の中央部には筒状部を設けていない、即ち、装着時にヘッド部13のトップ位置13aに該当する部分に筒状部を設けておらず、基底部32の長手方向の両端部に筒状部31を設けている。ストリング保護材30の筒状部を設けていない部分には、筒体41と帯体42とからなる振動減衰材40を配置させ、振動減衰材40と共にストリング保護材30をヘッド部13の外周面側から装着している。
【0045】
以下、本発明のストリング保護材の実施例、比較例について詳述する。
以下の表1に示すとおり、ストリング保護材のベース材の材質、微小中空粉体の材質及び配合割合等を適宜変更し、実施例と比較例の各ストリング保護材をインジェクション成形により作製した。
実施例のストリング保護材は、溶融した11ナイロン(11−Nylon)に各微小中空粉体を混ぜ入れ、インジェクションにて成形した。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例および比較例のストリング保護材を装着したラケットフレームは、従来のラケットフレームと同様の製造方法で製造したもので、強化繊維として炭素繊維を用い、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いて含浸させたプリプレグ(東レ(株)製、T300、T700、T800、M46J)を積層してパイプ状のレイアップを形成した。プリプレグ角度は、0°、22°、30°、90°とした。内圧充填用のナイロンチューブに9kgf/cm2の空気を送り込み30分間加圧保持し、金型を150℃に昇温し、レイアップをヨーク材と共に金型で加熱硬化して成形した。
ラケットフレームの形状、長さ、打球面積は同一であり、フレーム厚み28mm、幅は16mm、打球面積114平方インチとした。
【0048】
また、ストリング保護材の形状は、上記第1実施形態と同様とした。表中のストリング保護材の重量は、1つのラケットに装着した全てのストリング保護材の合計重量とした。
【0049】
(実施例1)
ストリング保護材のベース材として、熱可塑性樹脂である11ナイロン(東レ(株)製、BMN P40、密度1.06g/cm3)を用い、微小中空粉体としてソーダ石灰硼珪酸ガラス中空体(ガラス中空体)(住友3M社製、スコッチライトK46、密度0.46g/cm3)を用いた。微小中空粉体を10体積%の割合で配合した。
【0050】
(実施例2)
微小中空粉体としてガラス中空体(住友3M社製、スコッチライトS38、密度0.38g/cm3)を用いた。微小中空粉体を12体積%の割合で配合した。その他は実施例1と同様とした。
【0051】
(実施例3)
微小中空粉体を22体積%の割合で配合した。その他は実施例2と同様とした。
(実施例4)
微小中空粉体を36体積%の割合で配合した。その他は実施例2と同様とした。
(実施例5)
微小中空粉体を49体積%の割合で配合した。その他は実施例2と同様とした。
【0052】
(実施例6)
微小中空粉体の表面にシランカップリング剤(信越化学社製、商品名KBM603)で表面処理を施した。その他は実施例3と同様とした。
(実施例7)
微小中空粉体を58体積%の割合で配合した。その他は実施例2と同様とした。
【0053】
(比較例1)
熱可塑性樹脂である11ナイロン(東レ(株)製、BMN P40)のみでストリング保護材を成形した。微小中空粉体は配合しなかった。
【0054】
(比較例2)
熱可塑性エラストマーであるSEPTON2063番(クラレ(株)製)のみでストリング保護材を成形した。微小中空粉体は配合しなかった。
【0055】
(比較例3)
熱可塑性樹脂である6ナイロン(宇部興産(株)製、商品名UBEナイロン61011FB)のみでストリング保護材を成形した。微小中空粉体は配合しなかった。
【0056】
上記実施例及び比較例のストリング保護材を装着したテニスラケットに関し、それぞれ、後述する方法によりストリング振動の減衰率、ストリング振動音ついて測定し、反発係数と強度の評価も行った。
【0057】
(反発係数の測定)
反発係数は、図8に示すように、実施例及び比較例のテニスラケット1に、ガットを縦60ポンド、横55ポンドの張力で張架し、各テニスラケットを垂直状態でフリーとなるようにグリップ部を柔らかく固定し、その打球面にボール打出機から一定速度V1(30m/sec)でテニスボールを打球面に衝突させ、跳ね返ったボールの速度V2を測定した。反発係数は発射速度V1、反発速度V2の比(V2/V1)であり、反発係数が大きい程、ボールの飛びが良いことを示している。このような方法で、反発係数を測定した。
【0058】
(ストリング減衰率の測定)
テニスラケットを図9(A)(B)に示すように、ストリングを張架した状態でヘッド部3上端を紐51で吊り下げ、スロート部4とシャフト部5との連続点に加速度ピックアップ計53をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、ヘッド部3の中央部においてストリングをインパクトハンマー55で加振した。インパクトハンマー55に取り付けられたフォースピックアップ計で計測した入力振動(F)と加速度ピックアップ計53で計測した応答振動(α)をアンプ56A、56Bを介して周波数解析装置57(ヒューレットパッカード社製、ダイナミックシングルアナライザーHP3562A)に入力して解析した。解析で得た周波数領域での伝達関数を求め、テニスラケットのストリング固有振動数を得た。振動減衰比(ζ)は下式より求め、ストリング減衰率とした。
【0059】
ζ=(1/2)×(Δω/ωn)
To=Tn/√2
【0060】
(ストリング振動音評価)
実打時のストリングの振動音についてアンケート調査を行った。中・上級者(テニス歴10年以上、現在も週3日以上プレーする条件を満たす女性)66名にて実施した。音がしなかったものを「○」、音がしたものを「×」とした。
【0061】
(ストリング保護材の強度評価)
各仕様において、それぞれストリング保護材を装着したテニスラケットを10本用意し、70m/sの球速にてテニスボールを衝突させる耐久試験を行った。10本全てに強度が問題ないものを「◎」、10本中1〜2本でストリング保護材に亀裂が発生したものを「○」、10本中3本以上でストリング保護材に亀裂が発生したものを「×」とした。
【0062】
表1に示すように、実施例1〜7は、微小中空粉体を配合することにより、ストリング保護材自体の重量が軽くなり、さらに複素弾性率が向上し、それだけ反発係数も高かった。軽量化を図りながら反発性能の向上が図れるため、非常に効率良く反発性能の向上を実現していることが確認できた。また、ストリングの減衰率が向上し、ストリング振動音もないことが確認できた。なお、実施例7は、微小中空粉体の体積%が58%とやや大きいため、実施例1〜6に比べやや強度が小さかった。以上より、微小中空粉体の配合割合は、50体積%を越えない方が好ましく、ストリング保護材自体の密度は0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下であることが好ましい。
【0063】
一方、比較例1〜3はいずれも微小中空粉体を配合していないため、軽量化と高振動減衰性、高反発性、強度を満足することができなかった。比較例3は、保護材自体が柔らかすぎるため反発係数への効果が乏しかった。比較例4は、硬すぎて衝突時のエネルギーでは変形しないため効果が小さいことが確認できた。
【0064】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、ストリング保護材を成形するプラスチック材料に微小中空粉体を配合しているため、微小粉体中の中空部の存在により、ストリング保護材の軽量化を図れると共に、ストリングの振動を吸収することができ、よって高い振動減衰性と高反発性を実現することができる。また、ストリング保護材自体の形状を変更し中空部を成形するのではなく、中空部を有する微小な粉体を配合することで、ストリング保護材に中空部を存在させているため、成形が容易である上に、十分な強度を保持することができる。よって、特に軽量のテニスラケットに好適に用いることができる。
【0065】
また、ストリング保護材の動的粘弾性複素弾性率E*の値を上記のように規定しているため、フレームの振動数に合いやすく、振動減衰効果を十分に発揮することができる。
【0066】
また、本発明のストリング保護材を装着したラケットは、上記構成よりなるストリング保護材を装着しているため、フレーム自体の重量を増加させることなく、軽量化と高振動減衰、高反発を効率良く実現することができる。よって、ラケットの設計の自由度を向上させることができ、軽量ラケットの種々の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のストリング保護材を装着したテニスラケットを示す図である。
【図2】ストリング保護材の概略斜視図である。
【図3】(A)(B)はストリング保護材をラケットフレームに装着する状況を示す図である。
【図4】ラケットフレームのヘッド部のトップ位置周辺のストリング保護材の装着状況を示すである。
【図5】ラケットフレームのヘッド部のサイド位置周辺のストリング保護材の装着状況を示すである。
【図6】ラケットフレームのヨーク位置周辺のストリング保護材の装着状況を示すである。
【図7】ストリング保護材を装着したテニスラケットの第2実施形態を示す図である。
【図8】反発係数の測定方法を示す図である。
【図9】(A)(B)はストリングの振動減衰率の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
10 テニスラケット
11 ラケットフレーム
13 ヘッド部
17 ヨーク
20(20A、20B、20C) ストリング保護材
21(21A、21B、21C) 筒状部
22(22A、22B、22C) 基底部
F 打球面
S ストリング
Claims (6)
- ストリングが挿通される筒状部と、該筒状部が突設された基底部とを備えたストリング保護材であって、
少なくとも一部が、微小中空粉体を配合したプラスチック材料を用いて成形されてなることを特徴とするストリング保護材。 - 上記微小中空粉体を配合したプラスチック材料により一体的に成形されてなり、真密度が0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下である請求項1に記載のストリング保護材。
- 上記微小中空粉体の真密度が0.20g/cm3以上0.70g/cm3以下であり、上記プラスチック材料中の微小中空粉体の体積%が5%以上50%以下である請求項1または請求項2に記載のストリング保護材。
- 周波数が10Hzで測定された−5℃における動的粘弾性の複素弾性率E*が0.60×108dyn/cm2以上2.00×1010dyn/cm2以下としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のストリング保護材。
- 上記プラスチック材料のベース材は熱可塑性樹脂とされ、上記微小中空粉体は無機系のバルーン粉体とされ、
上記微小中空粉体の表面はシランカップリング剤で処理されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のストリング保護材。 - ストリング保護材がラケットフレームの打球面を囲むヘッド部に装着され、該ストリング保護材にストリングが挿通されてなるストリング保護材を装着したラケットであって、
上記ストリング保護材は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のストリング保護材であることを特徴とするストリング保護材を装着したラケット。
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- 2002-06-07 JP JP2002166853A patent/JP2004008520A/ja active Pending
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