JP4041031B2 - ラケットフレーム - Google Patents
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Description
特公昭61−29613号公報では、自己接着性が高められてはいるものの、軽量性や耐久性を維持しながら効率良く振動減衰性を高めることができないという問題がある。
特開2002−45444号では、部分的に介在させる粘弾性材の影響でラケットフレームの剛性が低下して反発係数が低下することがあり、剛性や強度と、軽量性や振動減衰性の各性能を、さらにバランス良く向上させることが要求されている。
エポキシ当量が250〜350、分子量が500〜700であるエポキシ樹脂に活性剤が配合され、温度0℃〜10℃の条件下で周波数10Hzで測定された損失係数tanδを0.5以上3.0以下とした改質樹脂組成物がマトリクス樹脂である改質繊維強化樹脂層が少なくとも1層積層されると共に、上記改質繊維強化樹脂層以外の繊維強化樹脂層は、上記改質樹脂組成物のエポキシ樹脂よりエポキシ当量が小さく、分子量も小さいエポキシ樹脂を用いて、温度0℃〜10℃の条件下で周波数10Hzで測定された損失係数tanδを0.01以上0.5未満とした通常樹脂組成物をマトリクス樹脂とし、
上記改質繊維強化樹脂層の重量は、該改質繊維強化樹脂層以外の繊維強化樹脂層の重量の1%以上10%以下としていることを特徴とするラケットフレーム。
を提供している。
このように、振動減衰材等の他の材料を繊維強化樹脂層中に介在させたりすることなく、マトリクス樹脂の損失係数を調整した上記少量の改質繊維強化樹脂層のみで振動減衰性を向上できるため、重量増加を招くことがなく、軽量性を維持することができる。
上記のような活性剤を配合することにより、エポキシ樹脂が軟化され損失係数を高めることができると共に、組成物中の双極子モーメント量を増加することができる。双極子を持った活性剤が組成物中に分散し相溶化されると、通常の状態では、±の双極子は、電荷が引き付け合って安定した状態で、樹脂と電気的に結合して存在している。この材料に振動が加わった場合、双極子が変位し双極子同士が一旦離れるが、その後、再び互いに引きつけ合おうとする復元作用が働く。その際に、双極子がベースとなる樹脂の高分子鎖や他の双極子と接触し、摩擦熱として振動エネルギーが大量に熱エネルギーに変換される。上記作用により振動エネルギーを吸収することができる。
特に、ポリプロピレン−エーテル系エポキシ樹脂とG−グリシジルエーテル系エポキシ樹脂との混合物が好ましく、その他、種々のエポキシ樹脂を1種又は2種以上組み合わせて用いても良い。活性剤の配合量により損失係数を調整することができるが、樹脂成分100重量部に対して、活性剤を10〜200重量部の範囲とするのが好ましい。
上記厚み範囲は、ラケットフレームに衝撃が加わったときに最も剪断力が大きい部分であり、その部分に振動減衰性の良い改質繊維強化樹脂層を配置することで、ラケットフレームに生じる振動を効率的に減衰させることができる。
特に、上記厚み範囲内に、改質繊維強化樹脂層の50%以上、さらには100%が配置されていることが好ましい。
上記打球面を時計面と見てトップ位置を12時とすると、11時〜1時の範囲の第1位置、3時〜5時(9時〜7時)の範囲の第2位置、左右スロート部の第3位置から選択される1箇所又は2箇所以上の位置に、上記改質繊維強化樹脂層が配置されていることが好ましい。
このように、面外1次、面外2次の各振動モードの振動を最も励起する位置に効果的に配置することにより、効率良く振動減衰性を向上させることができる。
なお、ラケットの操作性やバランスの点より、左右対称位置に配置することが好ましい。また、ラケットフレームの断面において、断面周方向を全周するように配置することが好ましいが、一部あるいは複数個所に断続的に配置することもできる。
なお、改質繊維強化樹脂層の強化繊維としては、高強度と低比重との両立の点からカーボン繊維が好適であり、全繊維強化樹脂層の50%以上の層で、さらに75%以上の層で、さらには100%の層で、カーボン繊維(炭素繊維)を用いることが特に好ましい。
特に、繊維強化樹脂層をプリプレグとすることにより、ラケットフレームの剛性を低下させることなく、反発性能を維持したまま、振動減衰性を向上することができる。
他に、一般的な硬化促進剤、可塑剤、安定剤、乳化剤、充填剤、強化剤、着色剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤など必要に応じて加えてもよい。
(1)炭素繊維を、エポキシ樹脂を主成分とし損失係数が0.5以上3.0以下の改質樹脂組成物又はエポキシ樹脂を主成分とし損失係数が0.01以上0.5未満通常樹脂組成物に浸漬しながら、ドラムに一定の繊維方向となるように巻き付け、一定量巻き付けた後にドラムから切り取り、約80〜100℃の熱をかけて疑似硬化状態のプリプレグを作成し、このプリプレグを適当な繊維角度になるように重ねて切断する。次いで、適宜の太さのマンドレルにナイロン製やシリコン製のチューブを通し、このチューブ上に上記プリプレグを適宜な角度及び繊維量となるように所定の位置に巻き付けた後、マンドレルからチューブごと抜き取る。このプリプレグを巻き付けたチューブをラケットフレームの金型内にセットし、この後、チューブ内に適当な圧力をかけ、チューブと繊維が金型に沿うようにした後、150℃で15分加熱してプリプレグを硬化成形している。
(2)マンドレルに通したチューブ上にフィラメントワインティング法により改質樹脂組成物又は通常樹脂組成物を適当量付着させた繊維を適当な角度で巻き付けた後、マンドレルからチューブごと抜き取り、繊維を巻き付けたチューブをラケットフレームの金型内にセットし、次いで、上記(1)と同様の加熱成形を行う。
(3)繊維を編んで作ったブレードを改質樹脂組成物又は通常樹脂組成物に浸漬し、これを適当な太さのマンドレルに通したナイロン製やシリコン製のチューブ上に積層して巻き付けて円筒状の繊維成形体(レイアップ)を作成した後、この繊維成形体(レイアップ)をチューブごとマンドレルから抜き取り、ラケットフレームの金型内にセットする。
図1及び図2は本発明の第1実施形態のラケットフレーム10を示す。
ラケットフレーム10は繊維強化樹脂層を2層以上積層した中空パイプ状の積層体からなり、打球面の輪郭を形成するヘッド部12、ヘッド部12に接合される二股状のスロート部13A,13B、シャフト部14、グリップ部15を連続して一体的に形成している。両側のスロート部13にヨーク17の両端を連結して、ヘッド部12と共に打球面Fを囲むガット張架部Gを形成し、ガット張架部Gには、ストリング張設用のガット穴(図示せず)を設けている。
カーボン繊維を、改質樹脂組成物又は通常樹脂組成物に浸漬しながら、ドラムに一定の繊維方向となるように巻き付け、一定量巻き付けた後にドラムから切り取り、約80〜100℃の熱をかけて疑似硬化状態のプリプレグとし、このプリプレグを適当な繊維角度になるように重ねて切断する。
次いで、マンドレルにナイロン製のチューブを通し、このチューブ上に上記プリプレグの強化繊維が所定の角度及び繊維量となるように、プリプレグを所定の積層位置に巻き付ける。ついで、マンドレルからチューブごと抜き取り、プリプレグを巻き付けたチューブをラケットフレームの金型内にセットする。この後、チューブ内に適当な圧力をかけ、チューブと繊維が金型に沿うようにした後、150℃で15分加熱してプリプレグを硬化成形して、ラケットフレーム10としている。
なお、上記位置以外に改質繊維強化樹脂層20を配置することもできる。
実施例、比較例ともフレーム本体は繊維強化樹脂の中空形状であり、ラケットの全長は27.5インチ、最大厚み24mm、幅12mm、打球面積は110平方インチとし、以下に示す方法によりラケットフレームを成形した。
上記第1実施形態と同様のラケットフレームとした。
上記損失係数を1.3とした改質樹脂組成物をマトリクス樹脂とする改質繊維強化樹脂層を1層積層した。改質繊維強化樹脂層を構成するプリプレグ(6cm×8cm×0.2mm)を左右スロート部に計2g挿入配置した。
改質繊維強化樹脂層は、上記損失係数を0.2とした通常樹脂組成物をマトリクス樹脂とする通常繊維強化樹脂層の層間に積層した。具体的には、通常繊維強化樹脂層を構成する10枚のプリプレグの4層目と5層目の層間に改質繊維強化樹脂層を配置した。
通常樹脂組成物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828を用いた。
カーボン繊維の引張弾性率は200〜500GPaとした。
改質繊維強化樹脂層の挿入位置を、ヘッド部の4時と8時の位置とした。その他は実施例1と同様とした。
(実施例3)
改質繊維強化樹脂層の挿入位置を、ヘッド部のトップ位置(12時)とした。その他は実施例1と同様とした。
(実施例4)
改質繊維強化樹脂層を3層積層した。具体的には、通常繊維強化樹脂層を構成する10枚のプリプレグの3層目と4層目の層間、4層目と5層目の層間、5層目と6層目の層間に改質繊維強化樹脂層を配置し、計6gとした。その他は実施例1と同様とした。
(実施例5)
改質繊維強化樹脂層の挿入位置を、左右のスロート部、及び、ヘッド部の4時と8時の位置とし、計4g配置した。その他は実施例1と同様とした。
(実施例6)
改質繊維強化樹脂層の挿入位置を、ヘッド部のトップ位置から左右の各スロート部までの範囲とし、計20g配置した。その他は実施例1と同様とした。
改質繊維強化樹脂層を配置せず、通常繊維強化樹脂層を構成する10枚のプリプレグのみとした。その他は実施例1と同様とした。
(比較例2)
実施例1の改質繊維強化樹脂層に代わり、上記損失係数を0.2とした通常樹脂組成物をマトリクス樹脂とする通常繊維強化樹脂層を左右スロート部に計2g挿入配置した。その他は実施例1と同様とした。
(比較例3)
改質繊維強化樹脂層の挿入位置を、ヘッド部のトップ位置から左右の各スロート部を通りグリップまでの範囲とし、計26g配置した。その他は実施例1と同様とした。
図6(A)(B)に示すように、実施例及び比較例のラケットフレーム10にストリングを張架したテニスラケットを水平に配置し、ヘッド部12のトップ位置を受け治具61(R15)で支持するとともに、トップ位置から340mm離れた位置で、スロート部13の両側からヨーク17にかけた位置を受け治具62(R15)で支持した。この状態で、受け治具62より受け治具61の方向へ170mm離れた位置に対して、加圧具63(R10)により上方より80kgfの力を加えて変位量(たわみ量)を測定し、加えた荷重値である80kgfを変位量(cm)で割って、その値を打球面の面外方向の剛性値とした。
図7に示すように、実施例及び比較例のラケットを横向きで打球面Fを垂直方向として、ラケットを保持している。この状態で上方のヘッド部12のサイド12bに対して、平板Pにより、80kgfの荷重を加えて変位量(たわみ量)を測定し、加えた荷重値である80kgfを変位量(cm)で割って、その値をヘッド部12の側面の面内方向の剛性値とした。
実施例及び比較例のラケットを図8(A)に示すようにヘッド部12の上端を紐51で吊り下げ、ヘッド部12とスロート部13との一方の連続点に加速度ピックアップ計53をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、図8(B)に示すように、ヘッド部12とスロート部13の他方の連続点をインパクトハンマー55で加振した。インパクトハンマー55に取り付けられたフォースピックアップ計で計測した入力振動(F)と加速度ピックアップ計53で計測した応答振動(α)をアンプ56A、56Bを介して周波数解析装置57(ヒューレットパッカード社製、ダイナミックシングルアナライザーHP3562A)に入力して解析した。解析で得た周波数領域での伝達関数を求め、テニスラケットの振動数を得た。振動減衰比(ζ)は下式より求め、面外1次振動減衰率とした。実施例及び比較例のラケットについて測定された平均値を上記表1に示す。
To=Tn/√2
ラケットを図8(C)に示すようにヘッド部12上端を紐51で吊り下げ、スロート部13とシャフト部14との連続点に加速度ピックアップ計53をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、加速度ピックアップ計53の裏側のフレームをインパクトハンマー55で加振した。そして、面外1次振動減衰率と同等の方法で減衰率を算出し、面外2次振動減衰率とした。実施例及び比較例のラケットについて測定された平均値を上記表1に示す。
球速55m/sのボールを打球面のトップから18cmの部分に当て、フレームが破損するかどうか、インパクトによる耐久性を確認した。
ラケットの振動吸収性についてアンケート調査を行った。5点満点(多い程良い)で採点し、中・上級者(テニス歴10年以上、現在も週3日以上プレーする条件を満たす女性)50名の採点結果の平均値をとった。
12 ヘッド部
13A,13B スロート部
14 シャフト部
15 グリップ部
17 ヨーク
20 改質繊維強化樹脂層
30 通常繊維強化樹脂層
F 打球面
Claims (5)
- 繊維強化樹脂層を2層以上積層した積層体からなるラケットフレームであって、
エポキシ当量が250〜350、分子量が500〜700であるエポキシ樹脂に活性剤が配合され、温度0℃〜10℃の条件下で周波数10Hzで測定された損失係数tanδを0.5以上3.0以下とした改質樹脂組成物がマトリクス樹脂である改質繊維強化樹脂層が少なくとも1層積層されると共に、上記改質繊維強化樹脂層以外の繊維強化樹脂層は、上記改質樹脂組成物のエポキシ樹脂よりエポキシ当量が小さく、分子量も小さいエポキシ樹脂を用いて、温度0℃〜10℃の条件下で周波数10Hzで測定された損失係数tanδを0.01以上0.5未満とした通常樹脂組成物をマトリクス樹脂とし、
上記改質繊維強化樹脂層の重量は、該改質繊維強化樹脂層以外の繊維強化樹脂層の重量の1%以上10%以下としていることを特徴とするラケットフレーム。 - 上記改質繊維強化樹脂層は、上記積層体の全肉厚を100%として肉厚中心位置から肉厚方向の一方側と他方側のそれぞれに20%以内の厚み範囲内に、少なくとも1層積層されている請求項1に記載のラケットフレーム。
- 上記改質樹脂組成物のエポキシ樹脂は、ポリプロピレン−エーテル系エポキシ樹脂とG−グリシジルエーテル系エポキシ樹脂との混合物からなるエポキシ樹脂からなると共に、
上記通常繊維組成物のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が190〜200、分子量が380〜400のビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる請求項1または請求項2に記載のラケットフレーム。 - 上記改質樹脂組成物は、上記活性剤として、ベンゾトリアゾール基を持つ化合物及びジフェニルアクリレート基を持つ化合物から選択される1種以上の活性剤が上記エポキシ樹脂に配合された組成物とし、
上記改質繊維強化樹脂層の強化繊維の引張弾性率を150GPa以上600GPa以下としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のラケットフレーム。 - 打球面の輪郭を形成するヘッド部と、該ヘッド部に接合される二股状のスロート部を備え、
上記打球面を時計面と見てトップ位置を12時とすると、11時〜1時の範囲の第1位置、3時〜5時(9時〜7時)の範囲の第2位置、左右スロート部の第3位置から選択される1箇所又は2箇所以上の位置に、上記改質繊維強化樹脂層が配置されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のラケットフレーム。
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