JP4444442B2 - ラケットフレーム及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はテニス、バトミントン、スカッシュ等のスポーツ用のラケットフレームに関し、特に、繊維強化樹脂からなり、軽量でありながら高反発性と耐久性を備え、テニスラケットとして好適に用いられるラケットフレームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ラケットフレームは繊維強化樹脂製のものが、その軽量性、高剛性、高強度、耐久性等の特徴を生かして主流となっている。それは、近年のカーボン繊維の高強度、高弾性率化の発展により、カーボン繊維を主体とした強化繊維が、軽量ラケット実現に大きく貢献しているためである。具体的には、カーボン繊維で強化された熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)から一体的に中空パイプ状に成形されるものである。しかし、軽量化により反発するボールへのエネルギーが低減するため、ボールの反発速度の低下という問題がある。
【0003】
そのため、反発性を高めるものとして、従来より下記の提案がなされている。
例えば、特公平5−33071号では、ラケットフレームのメカニカルインピーダンスを、ボールのメカニカルインピーダンスに一致させることにより、高反発化するものが提案されている。しかし、実際には、このラケットフレームのメカニカルインピーダンスを一致させるだけでは、高反発化を実現することは困難である。
【0004】
また、特開平11−290485号において、フレームの中空部の断面内に打球面(ガット張架面)方向と並列、即ち、打球面と平行にリブを架橋した状態に配置したラケットフレームが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記フレームの断面内に設けるリブは打球面と平行に配置されているため、面内剛性(側圧剛性)は大きくなるが、面外剛性、特にガット張架部の打球面剛性を大きくすることはできない。前記特公平5−33071号にも記載されているように、面外方向のメカニカルインピーダンスは反発性能に関与し、よって、反発性能には面外方向の剛性が寄与すると考えられる。また、反発性能が好ましいラケットフレームは、面内剛性(側圧剛性)を通常よりも小さく維持しながら、面外剛性(打球面剛性)を高くすることが良いことが、本発明者の鋭意研究の結果より判明している。
【0006】
即ち、本発明者が反発性能について鋭意研究したところ、反発性能を高めるためには、面外方向の剛性の中でも、打球面(フレームのガット張架部の面外方向)の剛性を従来よりも増加させることが必要であることを見いだした。この剛性を増加する手法として、フレームの断面形状を変化させる方法もあるが、フレームの周長を増加させると、重量増を招き軽量化の要請に反することとなる。また、フレームの一部の断面形状を変更する方法では、断面形状が変化する部分で実打時に発生する応力が集中し、破損しやすいという問題がある。
【0007】
また、ラケットフレームを用いてプレーする場合には、ストリング(ガット)を張架した状態で使用するが、このストリングテンションにより反発性能は大きく変動することが確認されている。通常は、約50lbのストリングテンションにてストリングを張架しているが、このストリングテンションでは反発性能は最大にならない。ストリングを張架していない状態での面内2次固有振動数が270〜320Hzである一般的なラケットにおいて、30〜40lb程度の通常より緩いストリングテンションにした場合に、反発性能が最高となることが実験結果より判明した。このストリングを張架した状態での面内2次固有振動数は650〜720Hzの範囲となる。尚、ストリングテンションは面内固有振動数に影響を及ぼすが、面外固有振動数には影響は少ないことも確認できた。
【0008】
しかし、反発性能を最大とするためにストリングテンションを緩くすると、打球時にストリングが簡単に移動してしまうことがあり、またストリング振動が励起され、不快な振動や音が残るといった問題がある。
【0009】
従って、通常のストリングテンションである50lbの場合でも、ストリングを張架した状態でのラケットフレームの面内2次固有振動数が650〜720Hzの範囲で、ストリング無しの面内固有振動数が180〜250Hzになるような、低い振動数のフレームが、反発性能に優れることが判明した。この固有振動数に相当する面内方向の剛性値(側圧剛性)は、フレーム重量が180〜280gの時、40〜120kgf/cmとなる。
【0010】
しかしながら、反発性能を高めるために、ラケットフレームの面内方向の剛性値および面外方向の剛性値を所要範囲に制御するには非常に難しく、強化繊維樹脂の繊維角度、配置を工夫することで、ある程度調整が可能であるが、それぞれの目標剛性値を満足するものは得ることは困難である。例えば、ガット張架部の両側部に、繊維角度が0°(ラケットフレームの軸方向と平行)の強化繊維の補強を配置した場合、打球面剛性は増加するものの、同時に側圧剛性も大きくなることが認められている。
【0011】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたもので、第1に、反発性能を高めることができる目標範囲に面内固有振動数、面内剛性(側圧剛性)、面外剛性(特に打球面剛性)を容易に設定することができるラケットフレームを提供することを課題としている。第2に、反発性能の向上と共に、耐久性、振動減衰性を低下させず、かつ軽量化を実現するラケットフレームを提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1の発明として、繊維強化樹脂から成形した中空部を有するパイプ状で、ガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を順次備えるフレーム本体にヨークを取り付けているラケットフレームにおいて、
上記グリップ部を除く、シャフト部からガット張架部のヘッド頂点までの全長に対して2%以上90%以下の範囲で、ラケットフレームの中空状断面内に、打球面と略垂直方向のリブが設けられ、該リブの中に、粘弾性材からなる振動減衰材が挿入されているラケットフレームを提供している。
【0013】
上記のように、リブの方向は打球面(ストリング面)と平行でなく、ストリング面と垂直に配置している。これにより、面内剛性(側圧剛性)を増加することなく、打球面剛性を増加させることが容易となる。
【0014】
本発明では、上記したリブを設けることにより、打球面を囲むガット張架部が、トップ側からヨーク側にかけて幅方向に拡縮をする面内振動モードにおける面内2次固有振動数が、180Hz以上250Hz以下の範囲としている。前記したように、本発明者が鋭意研究した結果に基づき、ラケットフレームが上記面内2次振動モードによる挙動を示す際の振動数である面内2次固有振動数を180Hz以上250Hz以下とすることで、高反発を得ることができる。
【0015】
また、第2の発明として、繊維強化樹脂から成形した中空部を有するパイプ状で、ガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を順次備えるフレーム本体にヨークを取り付けているラケットフレームにおいて、
上記グリップ部を除く、シャフト部からガット張架部のヘッド頂点までの全長に対して2%以上90%以下の範囲で、ラケットフレームの中空状断面内に、打球面と略垂直方向のリブが設けられ、
内剛性40kgf/cm以上120kgf/cm以下の範囲で、かつ、打球面の面外剛性150kgf/cm以上300kgf/cm以下の範囲としているラケットフレームを提供している。
即ち、面内剛性(側圧剛性)は、従来ラケットよりも小さい40kgf/cm以上120kgf/cm以下の範囲とし、打球面剛性(打球面の面外剛性)は従来ラケットよりも大きい150kgf/cm以上300kgf/cm以下の範囲としている。
これにより、ラケットフレームの反発性能を高めることができる。
【0016】
上記リブの配置範囲を、グリップを除く部分における全長に対して2%以上90%以下の範囲としているのは、2%未満ではリブの効果が小さく、本来の目的である打球面剛性の増加効果が得られないためであり、90%を越える場合、重量増加や剛性設計の自由度が低下するからである。
【0017】
例えば、打球面剛性を大きく増加し、スロート剛性を低下させる設計も考えられるが、リブを配置した領域が大きくなりすぎると、上記のような設計が困難となる。なお、リブの配置をラケットフレームのグリップを除く部分としているのは、一般的ラケット製法において、グリップ部分は2本の筒状積層体が重なる部分であり、その部分には必然的にリブが配置されるためである。本発明のリブはは、グリップ以外の断面内に配置するものであり、このリブは通常の製法では成形できないものである。
【0018】
上記リブは、フレーム本体を構成する繊維強化樹脂と同一の繊維強化樹脂からなり、フレーム本体と一体に成形しており、かつ、フレーム本体の中空部を囲む周壁の少なくとも最大距離をあけた対向面より突出し、これら突出部が連結されて中空部を分割する形状、互いに近接する方向に2mm以上突出する形状、あるいは、対向面の一面側より他面近傍まで突出する形状としている。
即ち、リブによりフレーム内を完全に分割する必要はなく、高さが2mm以上とすると、打球面剛性向上に寄与することができる。また、同一断面内に設けるリブの本数は限定されないが、成形加工性や内圧チューブを抜き取る場合を考慮すると、リブの本数は1本等、少ないほうが好ましい。
【0019】
打球面剛性を増加するために、上記リブは少なくともガット張架部の最大幅部分の2時〜3時付近(ガット張架面、即ち、フェイス面を時計面とみなしトップの位置を12時とする)に配置することが好ましい。しかしながら、他の部分に配置しても良く、また、数カ所に分割して配置しても良い。具体的には、振動モードの剪断変形が大きい部分、即ち、ガット張架部のトップおよび3〜4時、スロート部分のうち少なくとも1カ所にリブを設けることが好ましい。
【0020】
また、上記したように、第1の発明では上記リブの中に、粘弾性材からなる振動減衰材を挿入している。
このように振動減衰材を挿入すると、反発性能の向上ばかりでなく、軽量ラケットにおいて問題となる振動減衰性を改善することができる。特に、プレーヤーがラケット使用時に不快に感じるラケットフレームの挙動である面外1次振動モード(2節曲げモード)、即ち、ラケットフレームが、そのトップ部とグリップ端部の2点を節とし、円弧状に撓みを繰り返す振動モードの減衰性が高まり、使用時に発生する不快な振動を抑制することができる。
【0021】
なお、従来、フレームの中空部分に発泡ウレタン等の振動減衰材を充填して減衰性を向上させる提案がなされているが、増加する重量(8〜25g)に対して得られる減衰性は低い。これに対して、本発明のように、繊維強化樹脂からなるリブ中に振動減衰材を配置すると、打球時に発生する面外方向の荷重に対し振動減衰材の部分でせん断変形が大きくなり、振動減衰性が高めることができる。よって、少量の減衰材でも振動減衰効果を発生させることができる。
【0022】
さらに、リブの中に粘弾性材を挿入すると、振動減衰性を向上するばかりでなく、ボール打球時の衝撃力(衝撃加速度)を低減させることもできる。即ち、ボールの衝撃力でリブの部分が上記のように剪断変形して衝撃力を低減させる。
【0023】
上記振動減衰材となる粘弾性材は、周波数が10Hzであって温度が15℃の条件で測定された動的粘弾性損失係数tanδが、0.08以上、2.3以下であるものが好適に用いられる。
即ち、ラケットフレームの重要となる振動モードは、面外1次の固有振動数が、100〜200Hz程度であり、10Hzの動的粘弾性を測定した場合、温度換算則から室温(25℃)の約10℃低減した15℃の挙動に着目すべきであり、よって、15℃で測定された動的粘弾性損失係数で規定している。
【0024】
また、周波数が10Hzであって温度が15℃の条件で測定された、動的粘弾性の複素弾性率E*が、2.0×10dyn/cm以上1.0×1010dyn/cm以下である粘弾性材であることが好ましい。これは、複素弾性率E*が、小さすぎると、リブによる剛性増加の目的を達成できなくなるためであり、複素弾性率E*が、大きすぎると、上記のtanδを得る材料とならないためである。
【0025】
なお、上記粘弾性は粘弾性測定装置(島津製作所社の粘弾性スペクトロメーター「DVA200改良型」)によって測定している。測定条件は下記の通りであり、温度分散法である。
試料:幅4mm×長さ30mm×厚み2mm
試料における変形部位の長さ:20mm
(長さ30mmのうち両端5mmを挟持)
初期歪:10%(2mm)
振幅:0.25%(0.05mm)
周波数:10Hz
昇温速度:2℃/min
温度範囲:−100℃〜100℃
【0026】
上記粘弾性材として適する材料として、下記の(a)〜(l)が挙げられる。
(a) 熱可塑性エラストマーであるポリエーテルブロックアミド (ATOCHEM社のPEBAX、好ましいグレード:4033、5553等)
(b) 可塑剤を充填したナイロン11、ナイロン12(ATOCHEM社のリルサン BMN 0 P04、AMN 0 P04)
(c) ポリエステルエラストマー
(d) 熱可塑性ポリウレタン(ICI Polyurethanes社「Avalon 90AB」)
(e) スチレン系エラストマー
(f) アイオノマー(三井デュポン「ハイミラン1605」「ハイミラン1702」)
(g) 水添イソプレン−スチレン樹脂(クラレ「SEPTON2053」)
(h) ポリブチレンテレフタレート−ポリエーテルグリコール(デュポン社「ハイトレル」)
(i) 天然ゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエン等をベースとした配合ゴム: 具体的には、100部のゴム材に対し、ポリスチレンとビニルポリイソプレンが結合したブロック共重合体を5〜80部の範囲で添加する。このポリスチレンとビニルポリイソプレンが結合したブロック共重合体には、クラレ社の「ハイブラー」がある。このポリスチレンとビニルポリイソプレンが結合したブロック共重合体に限らず、その他にも各種の熱可塑性樹脂があり、例えばスミライトレジンのPR−12686がある。また、添加物としては他に、エチレンとシクロペンタジエンからノルボーネンを合成し、このノルボーネンを開環重合して得られる主鎖に五員環と二重結合を持ったポリマー構造に、多量の伸展油を加えたゴム状油展ポリマーを加えることもできる。
(j) ポリスチレンブロックとビニルポリイソプレンブロックとを有するトリブロック共重合体(クラレ社の「ハイブラー」)単体あるいはその混合物
(k) カシュー変性フェノール樹脂(住友ヂュレズ社「スミライトレジン PR−12687」)
(l) エステル系ポリマー、ハロゲン系ポリマーをはじめとする複数のポリマーからなる色々の機能を有したポリマーアロイ型の材料(東ソー「エラステージ」)
【0027】
より好適には、熱可塑性樹脂やゴムを改質した配合が好ましい。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢ビ共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、ポリイソプレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、NBR、SBR、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等の高分子材料、これらをブレンドしたものを、主成分としてこれらに、マイカ、ガラス片、クラスファイバー、カーボンファイバー、炭酸カルシウム、バーライト、沈降硫酸バリウム等の物質や腐食防止剤、染料、酸化防止剤、安定剤、湿潤剤などを必要に応じて、適時加えたもの。
【0028】
特に、上記主成分の母材を構成する成分に、双極子モーメント量を増加させる活性成分を配合したものが好ましい。活性成分とは、活性成分そのものが双極子モーメント量が大きいもの、あるいは活性成分そのものの双極子モーメントは小さいが活性成分を配合することで母材における双極子モーメントを飛躍的に増加させることができる成分である。活性成分として具体的には、シクロヘキサン、ベンゾチアゾール、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルアニリン、高級脂肪酸などを混合して使用する。具体的には、塩素化ポリエチレンの変性材料(シーシーアイ社「ユレナイン」「ダイポルギーフィルム」)が挙げられる。前記ダイポルギーフィルムの物性値は、10Hz、15℃の粘弾性特性 tanδ:0.71、E*:4.57×10,000,000である。
【0029】
また、本発明のラケットフレームでは、上記中空部を囲む周壁の内面には、内圧チューブが取り付けられていない。言い換えれば、成形時に必要な内圧チューブが成形後に抜き取られていることが好ましい。
内圧チューブの抜き取りは、内圧チューブの表面に離型剤処理を行うなどの方法により容易に行うことができる。中空部にリブを配置すると断面内の中空部分の面積が小さくなる。このため、チューブの余剰部分やチューブ同士が接触しやすくなり、打球時に不快な振動が発生する恐れがある。よって、内圧チューブを除去すると、不快な振動の発生を無くすことができる。なお、リブが無い部分においても、内圧チューブを除去しておくと、チューブ同志の接触による不快な振動を防止できるために好ましい。
【0030】
第3の発明として、繊維強化樹脂から成形した中空部を有するパイプ状で、ガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を順次備えるフレーム本体にヨークを取り付け、上記グリップ部を除く、シャフト部からガット張架部のヘッド頂点までの全長に対して2%以上90%以下の範囲で、ラケットフレームの中空状断面内に、打球面と略垂直方向のリブが設けられているラケットフレームの製造方法であって、
2本のマンドレルを使用しそれぞれ内圧チューブを被せ、上記リブを配置する部分に繊維強化樹脂材を配置した後、2本のマンドレルを上記リブ配置部分を挟んで重ね合わせて1つのマンドレル状とし、その外周面に繊維強化樹脂材を積層してレイアップを作製し、この鉛直状の積層体からなるレイアップをマンドレルより抜き取って金型内に充填し、加熱加圧により成形して、パイプ状ラケットフレームの中空部断面内にリブを備えていることを特徴とするラケットフレームの製造方法を提供している。
【0031】
具体的には、予めラケット断面周長を考慮した平板形状のマンドレルを用意する。この平板マンドレルを2本用意し、2本のマンドレルと外側に巻き付ける繊維強化樹脂材料(プリプレグ)を重ね合わせた周長が、フレーム断面周長と一致するように調整する。2本のマンドレルには、内圧チューブをそれぞれ被覆する。これら2本のマンドレルの間で、リブの配置が必要な箇所に、プリプレグ(好ましくは、一方向プリプレグ)を積層する。その後、2本のマンドレルを重ね合わせて1つのマンドレル状とし、その外周面にプリプレグまで積層し、鉛直状の積層体からなるレイアップを作成する。2本のマンドレルを抜き取り、金型内に配置する。このとき、ヨークも金型内に配置する。金型を型締して、150℃、20分間の加熱を行うと同時に2本のナイロンチューブ内に6〜9kgf/cmの空気圧あるいは窒素圧力を付加する。成形後には内圧チューブを引き抜くことが好ましい。その場合、ナイロンチューブからなる内圧チューブには、離型剤のフレコートHSC−4(DEXTER Co.社製)を、ウエスにより薄く塗布した後に、50℃10分間にて硬化・乾燥しておく。このナイロンチューブを使用すると、成形後に容易に抜き取ることができる。
【0032】
また、第4の発明として、繊維強化樹脂から成形した中空部を有するパイプ状で、ガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を順次備えるフレーム本体にヨークを取り付け、上記グリップ部を除く、シャフト部からガット張架部のヘッド頂点までの全長に対して2%以上90%以下の範囲で、ラケットフレームの中空状断面内に、打球面と略垂直方向のリブが設けられているラケットフレームの製造方法であって、
金型成形時の加熱で発泡する芯材あるいは弾性部材からなる芯材に内圧チューブを被せ、該芯材に繊維強化樹脂材を巻き付けた後、リブを配置する部分に更に繊維強化樹脂材を配置し、このリブとなる繊維強化樹脂材を挟んで、内圧チューブを被せたマンドレルを配置して一体化し、その外周面に繊維強化樹脂材を積層してレイアップを作製し、この鉛直状の積層体からなるレイアップをマンドレルより抜き取って金型内に充填し、加熱加圧により成形し、パイプ状ラケットフレームの中空部断面内にリブを備えていることを特徴とするラケットフレームの製造方法を提供している。
該方法は、リブを配置する部分に、成形温度で発泡するあるいは膨張する材料を配置し、1本のマンドレルと組み合わせることでリブを成形している。この発泡材には、ポリスチレンなどの発泡材やトルエンとIPAを混合した溶媒などがある。これらの発泡材は、チューブ等により被覆され、また密封となるようにシールされる。上記チューブによりシールした発泡材をカーボン繊維プリプレグで被覆し、巻き付けることで、密封がより強固となる。その後、リブの配置が必要な箇所に、上記プリプレグで被覆した発泡材と、ナイロンチューブを被せた1本のマンドレルとを並列させ、その間にカーボン繊維が一方向のカーボン繊維プリプレグを積層して挿入する。その外周面にプリプレグを積層し、鉛直状の積層体からなるレイアップを作成する。その後、マンドレルを抜き取り、金型内に配置する。このとき、ヨークも金型内に配置する。金型を型締して、150℃、20分間の加熱を行うと同時にナイロンチューブ内に6〜9kgf/cmの空気圧あるいは窒素圧力を付加する。成形後には内圧チューブを引き抜くことが好ましい。その場合、ナイロンチューブからなる内圧チューブには、離型剤「フレコートHSC−4 DEXTER Co.社製」を、ウエスにより薄く塗布した後に、50℃10分間にて硬化・乾燥しておく。このナイロンチューブを使用すると、成形後に容易に抜き取ることができる。
【0033】
なお、当然、上記溶剤は、成形後に取り出し、再使用が可能である。ラケットフレームの場合、成形後に穴あけ加工があり、溶剤を取り出すことが用意である(穴加工と、垂直に配置するリブのため、容易に取り出しが可能となる)。また、ポリウレタンなどの発泡材を使用して、すでに発泡したものを芯材に用いても良い。しかし、発泡材がフレーム形状に追従してかつ、150℃の成形温度のチューブ内の高圧に負けない程度に圧力を保持するためには、ナイロンやウレタン発泡材に限定されてしまう。従って、成形時に発泡する発泡体や溶剤を使用することが好ましい。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1(A)(B)は第一実施形態のテニス用のラケットフレーム10を示し、該ラケットフレーム10のフレーム本体18は繊維強化樹脂製の中空パイプ状で、打球面Fを囲むガット張架部12、スロート部13、シャフト部14、グリップ部15を連続して構成している。上記ガット張架部12は、別部材からなるヨーク11をスロート側でフレーム本体18と連続して打球面Fを囲む環状としている。
【0035】
上記ガット張架部12の2時から4時部分及び8時から10時部分には、図1(B)に示すように、フレーム本体18の中空断面内を2分割するようにリブ20を設けている。なお、本実施形態及び下記の実施形態において、リブを配置している部分を図中クロス斜線で示している。
リブ20はフレーム本体18の周壁18aの対向面18bと18cの間に架橋しており、対向面18bと18cはフレーム厚さ方向の両端で最大距離をあけて対向する面であり、よって、リブ20はストリングが張架される打球面Fに対して垂直方向となっている。本実施形態でのリブ20の配置長は左右合計で360mmとしている。
【0036】
上記ラケットフレーム10は全長は28インチであり、フェイス面積は115平方インチとしている。該ラケットフレーム10のフレーム本体18はカーボン繊維を強化繊維とし、エポキシ樹脂をマトリクス樹脂とするカーボンプリプレグを積層して成形した繊維強化樹脂からなり、上記リブ20も同一のカーボンプリプレグからなる。
【0037】
上記ラケットフレーム10は、その面内方向の固有振動数が180Hz以上250Hz以下の範囲としている。また、面内剛性が40kgf/cm以上120kgf/cm以下の範囲で、かつ、打球面の面外剛性が150kgf/cm以上300kgf/cm以下の範囲としている。
【0038】
上記ラケットフレーム10は、図2に示す工程(第1の製造方法)で作成している。
まず、2本の略平板状のマンドレル21、22を用意し、それぞれ66ナイロン(厚さ約80μm)からなる内圧チューブ23、24を被せる。上記リブ20を配置する部分(本実施形態では、ガット張架部12の2時から4時部分及び8時から10時部分)では、2本のマンドレル21、22を並列し、その間にカーボン繊維が一方向のカーボン繊維プリプレグ25を積層して挿入し、2本のマンドレル21、22の間に挟みこんで重ね合わせ、1つのマンドレル状としている。所要のカーボン繊維プリプレグ26を積層後、マンドレル21、22を抜き出して、鉛直状の積層体からなるレイアップ28を作成する。
【0039】
上記レイアップ28を成形用金型30のキャビテイ30aに充填する。該キャビテイ30aの断面厚みは28mmである。ヨーク11もキャビテイ30aに配置する。金型を型締して、150℃、20分間の加熱を行うと同時に2本の内圧チューブ23、24内に6〜9kgf/cm2の空気圧あるいは窒素圧力を付加する。成形後には内圧チューブ23、24を引き抜いている。成形されたラケットフレーム10は、グリップ部分を除いて、その長さを1240mmとしている。
【0040】
図3(A)乃至(D)はリブ20の配置位置を変えた第一実施形態の変形例1〜4をそれぞれ示す。図3(A)の変形例1ではリブ20をガット張架部12のトップから4時及び8時まで連続的に配置し、その配置長を920mmとしている。図3(B)の変形例2では、リブ20をガット張架部12の3時及び9時部分に配置しその配置長を左右合計で70mmとしている。図3(C)の変形例3では、リブ20をガット張架部12のトップ部分に配置し、その配置長を20mmとしている。図3(D)の変形例4では、リブ20をガット張架部12のトップからスロート部分まで連続的に配置し、その配置長を1090mmとしている。
【0041】
図4(A)(B)(C)(D)は第二実施形態を示す。ガット張架部12の2時から4時部分及び8時から10時部分には、図4(B)に示すように、フレーム本体18の中空断面内に、断面内壁を完全に分割するのではなく、高さ7mmの突起となるリブ20’、20’を対向させて突設している。このリブ20’の配置長は360mmとしている。なお、リブ20’は、図4(C)に示すように、一方を長くし、他方を短くしても良いが、短い方のリブ20’は2mm以上としている。また、リブ20’は、図4(D)に示すように、対向面の一面側より他面近傍まで突出した形状としてもよい。
【0042】
図5(A)(B)は第三実施形態を示す。フレーム本体18のガット張架部12の2時から4時部分及び8時から10時には、図5(B)に示すように、中空を2分割する架橋状のリブ20”を設けると共に、リブ20”となる積層体の間に、振動減衰材23として、0.2mm厚の粘弾性材(本実施形態では、ダイボルギーフィルム(シーシーアイ社製))を挿入している。また、リブの配置長は360mmとしている。
【0043】
図6は、上記ラケットフレーム10の第2の製造方法を示す。
まず、成形温度で発泡あるいは膨張する材料としてポリスチレンからなる発泡材31を用意し、66ナイロン(厚さ約80μm)からなるチューブ32により被覆し、また密封となるようにシールする。チューブ32によりシールした発泡材31を、さらにカーボン繊維プリプレグ33で被覆し、巻き付け、密封をより強固にする。次に、カーボン繊維が一方向のカーボン繊維プリプレグ34を積層し、発泡材31を被覆したカーボン繊維プリプレグ33と重ね合わせる。両者を重ね合わせた後、リブを配置する部分(本実施形態では、ガット張架部12の2時から4時部分及び8時から10時部分)で、66ナイロン(厚さ約80μm)からなる内圧チューブ35を被せた1本の略平板状のマンドレル36と接触させる。この時、発泡材31を被覆したカーボン繊維プリプレグ33と内圧チューブ35を被せたマンドレル36との間に、カーボン繊維が一方向のカーボン繊維プリプレグ34が挟み込まれるようにする。
【0044】
その後、外層として所要のカーボン繊維プリプレグ37を積層後、マンドレル36を抜き取り、鉛直状の積層体からなるレイアップ38を作成する。上記レイアップ38を成形用金型30のキャビティ30aに充填し、第1の製造方法と同様の方法で加熱し、ラケットフレーム10を作成する。
【0045】
このようにリブを配置する部分に、発泡材31を被覆したカーボン繊維プリプレグ33とカーボン繊維が一方向のカーボン繊維プリプレグ34を重ね合わせ配置し、上記のように、ラケットフレーム10を成形することで任意の位置にリブを配置することができる。なお、マンドレルを全く使用せず、プリプレグで被覆した発泡材を2つ用いてラケットフレームを成形してもよい。
【0046】
上記第一、第二、第三の実施形態のラケットフレームの物性等を評価するため、下記の実施例を作成し、かつ比較例のラケットフレームも作成した。
【0047】
(実施例1)
実施例1は第一実施形態に該当し、下記の手順で成形している。
まず、マンドレル厚み3mmの平板状のものを2本使用した。それぞれのマンドレルに66ナイロンチューブを被覆した。リブを配置する場所はラケットフレームの2時から4時部分及び8時から10時(フェイスサイド)に配置し、それぞれに180mmの長さ(配置長合計360mm)とした。リブとなる部分には上記カーボン繊維プリプレグをマンドレル間に配置するように積層した。このリブは中空部を完全に分割する架橋状とし、ストリング面と垂直となるように配置した。2つのマンドレルを合わせて、その外周にカーボン繊維プリプレグを積層配置した。使用するカーボン繊維プリプレグとしては、東レ(株)製のT700、M30、M40J、M46J、M50Jを組み合わせて使用し、プリプレグの繊維角度は、0、22、30、90゜としている。該カーボン繊維プリプレグの樹脂重量割合は43wt%である。該カーボン繊維プリプレグを巻き付けた後、マンドレルから引き抜いてレイアップを作成し、これを金型内に配置した。金型を150℃に昇温し、内層ナイロンチューブ内は9kgf/cmの空気により加圧保持した。その時間は20分間とした。成形後のローフレームは、バリとりを行い、ガット穴加工を施した。このガット穴加工時には、リブのある部分では、リブを貫通させて上記ガット穴を設けた。さらに、パテ塗り・ペイント塗装を行い、バンパー・グロメット・エンドキャップ・グリップレザー等の一般的部品を取り付け、ラケットフレームを完成させた。
【0048】
(実施例2)
上記第一実施形態の図3(A)に示す変形例1に該当し、リブをガット張架部の4時部分及び8時からトップまで連続的に配置し、配置長を920mmとした。作成方法は実施例1と同様とした。
【0049】
(実施例3)
上記第一実施形態の図3(B)に示す変形例2に該当し、リブをガット張架部の3時と9時に配置し、配置長をそれぞれ35mm、合計で70mmとした。作成方法は実施例1と同様とした。
【0050】
(実施例4)
上記第二実施形態に該当し、リブをガット張架部の2時から4時部分及び8時から10時に配置し、その配置長を合計360mmとした。また、リブの形状は、中空部を完全に分割するのではなく、図4(B)に示すように高さ7mmの突起となるリブを対向するように設けている。作成方法は実施例1と同様とした。
【0051】
(実施例5)
上記第三実施形態に該当し、リブをガット張架部の2時から4時部分及び8時から10時に配置し、その配置長を合計360mmとした。また、リブとなる積層体の間に、粘弾性材からなる振動減衰材として、0.2mm厚のダイポルギーフィルム(シーシーアイ社製)を挿入した。作成方法は実施例1と同様とした。ダイポルギーフィルムの物性値(10Hz、15℃の粘弾性特性 tanδ:0.71、E*:4.57×10,000,000)であった。
【0052】
(実施例6)
上記第一実施形態の図3(C)に示す変形例3に該当し、リブをガット張架部のトップに配置し、その配置長を20mmとした。作成方法は実施例1と同様とした。
【0053】
(実施例7)
上記第一実施形態の図3(D)に示す変形例4に該当し、リブをラケットフレームのガット張架部のトップからスロート部分まで連続的に配置し、その配置長を1090mmとした。作成方法は実施例1と同様とした。
【0054】
(比較例1)
従来の一般的なラケット構造とし、リブを配置させていない。リブを配置していないこと以外は、実施例1と同様の形態であり、実施例1と同様の方法で作成した。
【0055】
(比較例2)
図7に示す構造で、比較例1に対しフレーム本体18のガット張架部12の3時、9時の付近のフレーム周壁内面の上下に、繊維角度が0°(フレームの長さ方向と平行な方向)の補強層100を設けた。他の構成は比較例1と同様とした。
【0056】
(比較例3)
比較例1の周壁を構成するプリプレブの積層体のうち、繊維角度45°の1層のプリプレグを取り除いたものである。他の構成は比較例1と同様とした。
【0057】
上記実施例1乃至実施例7及び、比較例1乃至比較例3からなるラケットフレームに対して、それぞれ、重量、バランス(グリップエンドから重心位置までの距離)、フレーム断面厚み、反発性能、面内2次固有振動数、打球面剛性、側圧剛性、ラケットフレームの減衰率を測定し、かつラケットフレームの耐久性評価を行い、その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0004444442
【0059】
(反発性能の測定)
反発性能は、図8に示すように、実施例及び比較例のラケットフレーム10にガット(ストリング)を縦糸55lb、横糸50lbの張力で張架した。各ラケットを垂直状態でフリーとなるようにし、その打球面Fのフェイスセンターに、ボール打出機から一定速度Vx(30m/s)でボールBを衝突させ、跳ね返ったボールBの速度Veを速度検出用光電管40により測定した。なお、速度検出用光電管40の長さは100mm、ラケットと速度検出用光電管40との距離は300mmとした。反発性能INDEXは発射速度Vx、反発速度Veの比(Ve/Vx)であり、反発性能INDEXが大きい程、ボールの飛びが良いことを示している。
【0060】
(面内2次固有振動数の測定)
面内2次固有振動数の測定は、図9に示すように、ガットを張架したラケットフレーム10を、グリップ部15を上にして紐50で吊ってラケットを下向きで自由な状態とし、フェイス部の5時の外側位置をインパクトハンマー51で加振し、このインパクトハンマーに取り付けたフォースピックアップ52で計測した入力振動を計測すると共に、インパクトハンマー51で打撃する面と反対側の3時内側位置に固定した加速度ピックアップ53で計測した応答振動を測定し、その測定値をアンプを介して接続した周波数解析装置54により解析した。この解析で周波数領域での伝達関数を求めて、面内2次固有振動数を得た。
【0061】
(打球面剛性の測定)
打球面剛性(面外方向の剛性)測定は、図10(A)(B)に示すように、ラケットフレーム10を水平に配置し、そのガット張架部12のトップ12aを受け治具61で支持すると共に、トップ12aから340mm離れた位置で、スロート部13の両側からヨーク11にかけた位置を受け治具62で支持した。この状態で、受け治具62より受け治具61の方向へ170mm離れた位置に対して、加圧具63により上方より80kgfの力を加えて測定した。
【0062】
(側圧剛性の測定)
側圧剛性の測定は、図11に示すように、支持台70にラケットフレーム10を横向きで打球面Fを垂直方向として、サイド垂直押さえ板71の間に挿入してラケットフレーム10を保持し、かつ、ガット張架部12のトップ12aを位置決めスペーサ72に当接させると共に、グリップ15を位置決めスペーサ73上に搭載している。この状態で上方のガット張架部12のサイドに対して、加圧具74により、80kgfの荷重を加えて剛性を測定した。
【0063】
(面外1次振動減衰率の測定)
各実施例及び比較例のラケットフレームについて、図12(A)に示すようにガット張架部12の上端を紐81で吊り下げ、ガット張架部12とスロート部13との一方の連続点に加速度ピックアップ計83をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、図12(B)に示すように、ガット張架部12とスロート部13の他方の連続点をインパクトハンマー85で加振した。インパクトハンマー85に取り付けられたフォースピックアップ計で計測した応答振動(F)と加速度ピックアップ計83で計測した応答振動(α)をアンプ86A、86Bを介して周波数解析装置87(ヒューレットパッカード社製、ダイナミックシングルアナライザーHP3562A)に入力して解析した。解析で得た周波数領域での伝達関数を求め、ラケットフレームの振動数を得た。振動減衰比(ζ)は下式より求め、面外1次振動減衰率とした。各実施例及び比較例の10個のラケットフレームについて、それぞれ測定を5回行い、その平均値を表1に示す。
【0064】
ζ=(1/2)×(Δω/ωn)
To=Tn/√2
【0065】
なお、上記振動減衰率の測定時には、ストリングを縦糸55lb×横糸48lbのテンションで張り上げた後に測定した。ストリングは、Babolat社製のVFインターナショナルツアーを使用した。ストリングを張架した状態で測定する理由は、ストリングを張架していない状態ではバンパー・グロメット等の部品がラケットに密着せず、異常な共振が発生しやすいためであり、これら異常な共振の発生を防いで本来の解析を妨げることがないようにするためである。
【0066】
(振動モード)
また、ここで、今回測定を行った、面内2次振動と面外1次振動の振動モードを、それぞれ図13(A)(B)に示す。面内2次振動モードでは、図13(A)に示すように、ラケットフレーム10の打球面Fを含む平面において、ラケットフレーム10がその長さ方向及び幅方向に対して、交互に伸縮を繰り返す挙動を示す。また、面外1次振動モードは、図13(B)に示すように、ラケットフレーム10の打球面Fと垂直で、かつ、ラケットフレーム10のグリップ部15とトップ部12aを通る直線を含む平面方向に生ずる振動である。ラケットフレーム10のグリップ部の最下端15aとトップ部12aが、それぞれ振動の節(振動振幅が0)となり、両者の中間点が振動の腹(振動振幅が最大)となる。これら振動の節と腹の関係を保ちながら、上記した平面の上下方向に円弧状の振動を繰り返す挙動を示すものである。
【0067】
(耐久テスト方法)
グリップ部分を、ゴムホースを介在し、固定し、ボール速度を75m/secのスピードで、トップから10cmの箇所に衝突させ、破損した回数を測定した。実際のテニスを行う時のボール速度よりも非常に高速としているが、少ない回数で、破断するまでの耐久評価を行うための条件である。ガット張りテンションは縦糸65lb×横糸60lbとした。2600回をクリアできないものはNGとした。
【0068】
上記表1に示すように、実施例1〜7は反発性能が0.427〜0.446であるのに対して、比較例1〜3は反発性能が0.410〜0.421であり本実施例の方が反発性能に優れることが確認できた。また、比較例2は反発性能が0.421であり、比較的反発性能に優れるが、重量が271gであり、軽量化の点で性能が劣る。また、実施例5はリブ中に振動減衰材として粘弾性材を挿入したため、振動減衰率が飛躍的に向上していた。また、耐久性テストにおいて、比較例3のラケットは破損が見られたが、実施例1〜7のラケットはいずれも破損は見られなかった。
【0069】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明に係わるラケットフレームによれば、ラケットフレームのグリップを除く部分において、その全長に対して2%以上90%以下の範囲の少なくとも一部に、ラケットフレーム断面内に打球面と垂直な方向のリブを配置することにより、面内方向の剛性を通常よりも小さく維持しながら面外剛性(特に、打球面剛性)を高めることが可能となり、反発性能の向上と共に、耐久性、振動減衰性を低下させず、かつ軽量化を実現するラケットフレームを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施形態のラケットフレームを示し(A)は概略平面図、(B)は要部拡大断面図である。
【図2】 第一実施形態のラケットフレームの第1の製造方法による作成工程を示す概略図である。
【図3】 (A)乃至(D)は第一実施形態の変形例1〜4を示す概略平面図である。
【図4】 本発明の第二実施形態のラケットフレームを示し(A)は概略平面図、(B)(C)(D)は要部拡大断面図である。
【図5】 本発明の第三実施形態のラケットフレームを示し(A)は概略平面図、(B)は要部拡大断面図である。
【図6】 (A)(B)は第一実施形態のラケットフレームの第2の製造方法による作成工程を示す概略図である。
【図7】 比較例2のラケットフレームの要部拡大断面図である。
【図8】 反発係数の測定方法を示す概略図である。
【図9】 面内2次固有振動数の測定方法を示す概略図である。
【図10】 打球面剛性の測定方法を示す概略図である。
【図11】 側圧剛性の測定方法を示す概略図である。
【図12】 (A)(B)は面外1次振動減衰率の測定方法を示す概略図である。
【図13】 (A)(B)はラケットフレームにおける面内2次、面外1次の各振動モードを示す概略図である。
【符号の説明】
10 ラケットフレーム
11 ヨーク
12 ガット張架部
13 スロート部
14 シャフト部
15 グリップ部
18 フレーム本体
20 リブ

Claims (9)

  1. 繊維強化樹脂から成形した中空部を有するパイプ状で、ガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を順次備えるフレーム本体にヨークを取り付けているラケットフレームにおいて、
    上記グリップ部を除く、シャフト部からガット張架部のヘッド頂点までの全長に対して2%以上90%以下の範囲で、ラケットフレームの中空状断面内に、打球面と略垂直方向のリブが設けられ、該リブの中に、粘弾性材からなる振動減衰材が挿入されているラケットフレーム。
  2. 繊維強化樹脂から成形した中空部を有するパイプ状で、ガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を順次備えるフレーム本体にヨークを取り付けているラケットフレームにおいて、
    上記グリップ部を除く、シャフト部からガット張架部のヘッド頂点までの全長に対して2%以上90%以下の範囲で、ラケットフレームの中空状断面内に、打球面と略垂直方向のリブが設けられ、
    面内剛性が40kgf/cm以上120kgf/cm以下の範囲で、かつ、打球面の面外剛性が150kgf/cm以上300kgf/cm以下の範囲としているラケットフレーム。
  3. 上記リブは、フレーム本体を構成する繊維強化樹脂と同一の繊維強化樹脂からなり、フレーム本体と一体に成形しており、かつ、フレーム本体の中空部を囲む周壁の少なくとも最大距離をあけた対向面より突出し、これら突出部が連結されて中空部を分割する形状、互いに近接する方向に2mm以上突出する形状、あるいは、対向面の一面側より他面近傍まで突出する形状としている請求項1または請求項2に記載のラケットフレーム。
  4. 上記リブは、少なくともガット張架部の最大幅の部分に配置されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のラケットフレーム。
  5. 打球面を囲むガット張架部が、トップ側からヨーク側にかけて幅方向に拡縮をする面内振動モードにおける面内2次固有振動数が、180Hz以上250Hz以下の範囲としている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のラケットフレーム。
  6. 上記中空部を囲む周壁の内面には、内圧チューブが取り付けられていない請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のラケットフレーム。
  7. 繊維強化樹脂から成形した中空部を有するパイプ状で、ガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を順次備えるフレーム本体にヨークを取り付け、上記グリップ部を除く、シャフト部からガット張架部のヘッド頂点までの全長に対して2%以上90%以下の範囲で、ラケットフレームの中空状断面内に、打球面と略垂直方向のリブが設けられているラケットフレームの製造方法であって、
    2本のマンドレルを使用しそれぞれ内圧チューブを被せ、上記リブを配置する部分に繊維強化樹脂材を配置した後、2本のマンドレルを上記リブ配置部分を挟んで重ね合わせて1つのマンドレル状とし、その外周面に繊維強化樹脂材を積層してレイアップを作製し、この鉛直状の積層体からなるレイアップをマンドレルより抜き取って金型内に充填し、加熱加圧により成形して、パイプ状ラケットフレームの中空部断面内にリブを備えていることを特徴とするラケットフレームの製造方法
  8. 上記成形後に内圧チューブを抜き取っている請求項7に記載のラケットフレームの製造方法。
  9. 繊維強化樹脂から成形した中空部を有するパイプ状で、ガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を順次備えるフレーム本体にヨークを取り付け、上記グリップ部を除く、シャフト部からガット張架部のヘッド頂点までの全長に対して2%以上90%以下の範囲で、ラケットフレームの中空状断面内に、打球面と略垂直方向のリブが設けられているラケットフレームの製造方法であって、
    金型成形時の加熱で発泡する芯材あるいは弾性部材からなる芯材に内圧チューブを被せ、該芯材に繊維強化樹脂材を巻き付けた後、リブを配置する部分に更に繊維強化樹脂材を配置し、このリブとなる繊維強化樹脂材を挟んで、内圧チューブを被せたマンドレルを配置して一体化し、その外周面に繊維強化樹脂材を積層してレイアップを作製し、この鉛直状の積層体からなるレイアップをマンドレルより抜き取って金型内に充填し、加熱加圧により成形し、パイプ状ラケットフレームの中空部断面内にリブを備えていることを特徴とするラケットフレームの製造方法。
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