JP4213947B2 - ラケットフレーム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明はラケットフレームに関し、詳しくは、繊維強化樹脂層を積層して成形したラケットフレームにおいて、強化繊維に含浸する樹脂を改良して、振動減衰性に優れ、軽量でありながら強度、剛性を低下させないものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、テニスプレーにおいて、打球時に生じる振動と手に加わる衝撃はプレーヤーにとって不快であり、また、肘が痛むテニスエルボー等の原因の一つとも考えられている。そのために、従来よりラケットの打球時に生じる振動を抑制するために様々な工夫がなさられている。その代表的な方法として、繊維強化樹脂からなるラケットフレームにおいて、マトリクス樹脂に振動減衰性の高い熱可塑性樹脂が使用することが知られている。
【0003】
例えば、特公平5−33645号(特許文献1)において、マトリクス樹脂に振動減衰性の高いナイロン樹脂からなる熱可塑性樹脂を用いるラケットが提案されている。熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂にすると、体積割合が同一である繊維で強化された熱硬化性樹脂 (例えばエポキシ樹脂)をマトリクス樹脂としたラケットと比較した場合、振動減衰比が約2倍になることされている。
【0004】
また、特開平10−290851号(特許文献2)において、ゴム状重合体成分を含む(メタ)アクリル系重合体微粒子が分散したエポキシ樹脂組成物を硬化してなるラケットフレームが提案されている。このラケットフレームは、剛性および強度を低下させずに振動減衰性を向上させると共に、環境の変化による変動が小さいとされている。
【0005】
さらに、特公昭61−29613号(特許文献3)において、エポキシ樹脂と相溶性のよい液状ゴムを用い、エポキシ樹脂と液状ゴムとを均一に相溶した形で硬化させて、エポキシ樹脂とゴムの海島構造とするゴム変性エポキシをマトリクス樹脂としてプリプレグが提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特公平5−33645号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平10−290851号公報
【0008】
【特許文献3】
特公昭61−29613号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記特公平5−33645号において、マトリクス樹脂とするナイロン樹脂が振動減衰性に優れているのは、水が可塑剤となりガラス転移温度が大きく低下するためである。絶乾状態ではガラス転移温度は約60度であるが、吸水するに従い低下し、3%の吸水量でガラス転移温度は室温付近の約20度になる。従って、ラケットの振動減衰比も絶乾状態では0.005であるが、吸水量が飽和状態では0.020という具合に湿度が変わるとラケットの性能が変わり、振動減衰性を高めることができるが、環境依存性が多い問題がある。かつ、軽量化も余り図れない問題もある。
【0010】
また、特開平10−290851号のラケットフレームでは、ゴム状重合体成分を含む(メタ)アクリル系重合体微粒子が分散したエポキシ樹脂組成物は、粘度が高いことから、成形性が悪く、軽量化も困難であるという問題がある。
【0011】
また、特公昭61−29613号公報に開示されたゴム変性エポキシをマトリクス樹脂としたプリプレグからラケットフレームを成形すると、環境に左右されることなく一定の振動減衰性を得ることができる。しかし、ゴム変性エポキシの配合量が少ないと振動減衰性を高めることができず、逆にゴム変性成分が多すぎると耐熱性が低下するという問題がある。
例えば、このゴム変性エポキシを配合したラケットフレームで、ゴム変性エポキシの配合を10%以上とすると、ラケットフレームの振動減衰性を向上させることができるが、10%以上とすると耐熱性が低下するため、ゴム変性エポキシの配合を10%以上にすることができない。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、振動減衰性に優れ、かつ、軽量でありあがら剛性、強度および耐熱性を低下させいラケットフレームを提供することを課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、繊維強化樹脂層を積層して成形したラケットフレームであって、
上記積層構造とした繊維強化樹脂層の層数の20〜75%の層を改質繊維強化樹脂層とし、該改質繊維強化樹脂層では樹脂中の30〜70重量部は、液状ゴムとエポキシ樹脂とが均一に相溶され硬化時にはエポキシ樹脂と液状ゴムの海島構造となるゴム変性エポキシとし、残りはエポキシ樹脂とし
上記改質繊維強化樹脂層以外の繊維強化樹脂層は、樹脂中で上記ゴム変性エポキシが10〜0重量部とした通常繊維強化樹脂層としていることを特徴とするラケットフレームを提供している。
【0015】
即ち、マトリクス樹脂中にゴム変性エポキシを30〜70%と多量に配合した改質繊維強化樹脂層と、ゴム変性エポキシを10%〜0%としているマトリクス樹脂からなる通常繊維強化樹脂層とを設けている。
上記のように、改質繊維強化樹脂層を、繊維強化樹脂層中の2〜7%とし、かつ、1層中におけるマトリクス樹脂中のゴム変性エポキシを30〜70%することで、ラケットフレームの振動減衰性および耐衝撃性を向上させることができる。一方、通常繊維強化樹脂層中のゴム変性エポキシを0〜10%に押さえることで、耐熱性を維持することができる。
【0016】
上記改質繊維強化樹脂層のマトリクス樹脂中におけるゴム変性エポキシを30%〜70%、全繊維強化樹脂中の改質繊維強化層を25〜75%としているのは、ラケットフレームに成形した状態における振動吸収性と耐熱性のバランスの点から設定したものである。
上記改質繊維強化樹脂層のマトリクス樹脂中におけるゴム変性エポキシは30%〜70%の範囲であるが、好ましくは40〜60%である。
また、全繊維強化樹脂中の改質繊維強化層は25〜75%の範囲であるが、好ましくは、40〜60%の範囲である。
【0017】
上記改質繊維強化樹脂層を、積層構造の中間層に配置することが好ましい。
積層構造の中間部は、ラケットフレームに衝撃が加わったときに最も剪断力が大きい部分であり、その部分に振動減衰性の良い改質繊維強化樹脂層を配置することで、ラケットフレームに生じる振動を効率的に減衰させることができる。
【0018】
上記変性エポキシを構成するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシン、水素化ビスフェノールAなどのグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル型、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などのグリシジルエステル型、グリシジルアミン型、線状脂肪族エポキシド型、ヒダントイン系、ダイマー酸系、エポキシ変性NBRなどが挙げられる。特に、低粘度のものがよく、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、低粘度ビスフェノールF型エポキシ樹脂、低粘度グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。また、pアミノフェノール樹脂は保存安定性がよい点から好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
また、エポキシ樹脂の粘度が高くなる場合には、メチルエチルケトン(MEK)溶剤を希釈剤として使用してもよい。
【0019】
また、エポキシ樹脂を硬化させるために配合する、所謂、エポキシ樹脂用潜在型硬化剤としては、例えばジシアンジアミド、4, 4´−ジアミノジフェニルスルホン、2−n−ヘプタンデシルイミダゾールのようなイミダゾール誘導体、イソフタル酸ジヒドラジド、N, N−ジアルキル尿素誘導体、N, N−ジアルキル尿素誘導体、N, N−ジアルキルチオ尿素誘導体、テトラヒドロ無水フタル酸のような酸無水物、イソホロンジアミン、m−フェニレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、メラミン、グアナミン、三フッ化ホウ素錯化合物、トリスジメチルアミノメチルフェノールなどを挙げることができ、これらは1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他に、一般的な硬化促進剤、可塑剤、安定剤、乳化剤、充填剤、強化剤、着色剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤など必要に応じて加えてもよい。
【0020】
上記エポキシ樹脂と均一に相溶する上記液状ゴムは、分子量が1000程度のブタジエン−アクリルニトリルゴム(NBR)あるいは、カルボキシル基末端NBR(CTBN)とすることが好ましい。
上記ゴム変性エポキシとしてCTBN変性エポキシを用い、他のエポキシとしてビスフェノールA型エポキシを用い、
上記改質繊維強化樹脂層ではゴム変性エポキシとビスフェノールA型エポキシとを樹脂中で略同一重量部で配合する一方、上記通常繊維強化樹脂層では、ゴム変性エポキシをビスフェノールA型エポキシの1/8〜1/10の割合で配合することが好ましい。
【0021】
繊維強化樹脂に用いられる強化繊維としては、一般に高性能強化繊維として用いられる繊維が使用できる。例えば、カーボン繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、超高分子ポリエチレン繊維等が挙げられる。また金属繊維を用いてもよい。軽量で高強度であることからカーボン繊維が好ましい。これらの強化繊維は、長繊維、短繊維の何れであっても良く、これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。強化繊維の形状や配列については限定されず、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物(クロス)状、組み紐状などいずれの形状・配列でも使用可能である。
【0022】
上記繊維強化樹脂層は、プリプレグを積層した積層構造、上記樹脂に含浸した繊維をFW法(フィラメントワインデイング法)で積層した積層構造あるいは、繊維をFW法で積層構造とした後に上記樹脂に含浸させて形成している。
【0023】
具体的には、本発明のラケットフレームは、例えば、以下の▲1▼〜▲3▼の方法により成形している。
▲1▼炭素繊維をゴム変性エポキシ、希釈剤、硬化剤を所定の配合としたエポキシ樹脂に浸漬しながら、ドラムに一定の繊維方向となるように巻き付け、一定量巻き付けた後にドラムから切り取り、約80〜100℃の熱をかけて疑似硬化状態のプリプレグを作成し、このプリプレグを適当な繊維角度になるように重ねて切断する。次いで、適宜の太さのマンドレルにナイロン製やシリコン製のチューブを通し、このチューブ上に上記プリプレグを適宜な角度及び繊維量となるように巻き付けた後、マンドレルからチューブごと抜き取る。このプリプレグを巻き付けたチューブをラケットフレームの金型内にセットし、この後、チューブ内に適当な圧力をかけ、チューブと繊維が金型に沿うようにした後、150℃で15分加熱してプリプレグを硬化成形している。
▲2▼マンドレルに通したチューブ上にフィラメントワインティング法により変性エポキシ樹脂組成物を適当量付着させた繊維を適当な角度で巻き付けた後、マンドレルからチューブごと抜き取り、繊維を巻き付けたチューブをラケットフレームの金型内にセットし、次いで、上記▲1▼と同様の加熱成形を行う。
▲3▼繊維を編んで作ったブレードを変性エポキシ樹脂組成物に浸漬し、これを適当な太さのマンドレルに通したナイロン製やシリコン製のチューブ上に積層して巻き付けて円筒状の繊維成形体(レイアップ)を作成した後、この繊維成形体(レイアップ)をチューブごとマンドレルから抜き取り、ラケットフレームの金型内にセットする、または、繊維を編んで作ったブレードをマンドレルに通したナイロン製やシリコン製のチューブ上に積層して巻き付けて円筒状の繊維成形体(レイアップ)を作成した後、この繊維成形体(レイアップ)をチューブごとマンドレルから抜き取ってエポキシ樹脂組成物に浸漬し、ラケットフレームの金型内にセットし、次いで、上記▲1▼と同様の加熱成形を行っている。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2は本発明の実施形態を示し、図1に示すように、ラケットフレーム10は、繊維強化樹脂製のパイプからなり、該ラケットフレーム10によりヘッド部12、スロート部13、シャフト部14、グリップ部15を連続して形成し、両側のスロート部13にヨーク17の両端を連結して、ヘッド部12と共に打球面Fを囲むガット張架部Gを形成している。
また、ガット張架部Gには、ストリング張設用のガット穴(図示せず)を設けている。
【0025】
上記ラケットフレーム10は、図2に示すように、7層の積層構造を有しており、内周側から1、2、6、7層目を通常繊維強化樹脂層20とし、3、4、5層目を改質繊維強化樹脂層30により構成している。
上記通常繊維強化樹脂層20および改質繊維強化樹脂層30は、マトリクス樹脂は、カルボキシル基端末NBR(CTBN)をエポキシ樹脂と均一に相溶した形で硬化させてエポキシ樹脂とCTBNの海島構造とするゴム変性エポキシを50重量部配合している。
一方、上記通常繊維強化樹脂層20のマトリクス樹脂は、CTBNをエポキシ樹脂と均一に相溶した形で硬化させてエポキシ樹脂とCTBNの海島構造とするゴム変性エポキシを10重量部配合している。
また、上記通常繊維強化樹脂層20および改質繊維強化樹脂層30はいずれも、引張弾性率200〜500GPaのカーボン繊維を強化繊維として用い、該強化繊維の配向角度をラケットフレームとするパイプのシャフト軸線に対して0°、90°、30°、22°、45°となるように設定している。
【0026】
より詳細には、通常繊維強化樹脂層20と改質繊維強化樹脂層30の樹脂は共に、▲1▼ビスフェノールA型エポキシ樹脂、▲2▼CTBN変性エポキシ、▲3▼ジシアンジアミド硬化剤、▲4▼DCMU、▲5▼メチル・エチル・ケトンを配合したものからなる。通常繊維強化樹脂層20は▲1▼:▲2▼:▲3▼:▲4▼:▲5▼=90:10:6:4:130で配合する一方、改質繊維強化樹脂層30は▲1▼:▲2▼:▲3▼:▲4▼:▲5▼=50:50:6:4:130で配合し、CTBN変性エポキシの配合量を多くし、ビスフェノールA型エポキシの配合量を少なくしている。
【0027】
次に、上記通常繊維強化樹脂層20と改質繊維強化樹脂層30によるラケットフレームの成形方法について説明する。
カーボン繊維を変性エポキシ、ジシアンジアミド硬化剤、DCMU、メチル・エチル・ケトンを上記配合比で配合したビスフェノールA型エポキシ樹脂に浸漬しながら、ドラムに一定の繊維方向となるように巻き付け、一定量巻き付けた後にドラムから切り取り、約80〜100℃の熱をかけて疑似硬化状態のプリプレグとし、このプリプレグを適当な繊維角度になるように重ねて切断する。
次いで、マンドレルにナイロン製のチューブを通し、このチューブ上に上記プリプレグの強化繊維が所定の角度及び繊維量となるようにプリプレグを巻き付ける。ついで、マンドレルからチューブごと抜き取り、プリプレグを巻き付けたチューブをラケットフレームの金型内にセットする。この後、チューブ内に適当な圧力をかけ、チューブと繊維が金型に沿うようにした後、150℃で15分加熱してプリプレグを硬化成形して、ラケットフレームとしている。
【0028】
上記構成とすると、ラケットフレームを構成する積層構造の全7層のうち3層、即ち、約43%を改質繊維強化樹脂層30となり、残りの4層を通常繊維強化樹脂層20となる。かつ、改質繊維強化樹脂層30には、CTBNをエポキシ樹脂と均一に相溶した形で硬化させてエポキシ樹脂とCTBNの海島構造としたゴム変性エポキシを従来より多い約50%配合しているため、耐衝撃性、耐熱性を維持しながら振動減衰性を向上させることができる。
【0029】
また、ラケットフレームに衝撃が加わったときに最も剪断力が大きい部分である中間層を振動減衰性に優れた改質繊維強化樹脂層30としているので、ラケットフレームに生じる振動を効率的に減衰させることができる。
さらに、振動減衰性を向上させるために、樹脂配合を変更するだけであるので、重量を増加させることなく、操作性を損なうこともない。
【0030】
以下、本発明のラケットフレームの実施例1〜5および比較例1〜3について詳述する。
実施例、比較例ともフレーム本体は繊維強化樹脂の中空形状であり、ラケットの全長は27.5インチ、の最大厚みは24mm、打球面積は110平方インチとし、重量およびバランスは下記の表1に示す通り設定した。
また、実施例、比較例とも上記実施形態に示す方法によりラケットフレームを成形した。
【0031】
【表1】
Figure 0004213947
【0032】
(実施例1)
上記実施形態と同様のラケットとした。即ち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性エポキシ、ジシアンジアミド硬化剤、DCMU、メチル・エチル・ケトンを90:10:6:4:130の配合比重量部で配合した通常繊維強化樹脂層を内周側から1、2、6、7層目に設け、50:50:6:4:130の配合比重量部で配合した改質繊維強化樹脂層を内周側から3、4、5層目に設けた。
なお、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてジャパンエポキシレジン製のエピコート828(25℃で粘度130PS)、変性エポキシとして40℃で粘度1500PSである台湾ACR製のTK−2、ジシアンジアミド硬化剤としてジャパンエポキシレジン製のエピキュアDICY50、DCMUとして保土谷化学工業製のダイロンゾル、メチル・エチル・ケトンとしてシェルジャパン製のMEK、カーボン繊維として三菱レーヨン製のHR40、HR50及び東邦レーヨン製のIM600(繊維角度0°、90°、30°、22°、45°、引張弾性率200〜500GPa)を使用した。
【0033】
(実施例2)
実施例1と同様の通常繊維強化樹脂層を内周側から1、7層目に設け、実施例1と同様の改質繊維強化樹脂層を内周側から2、3、4、5、6層目に設けた。
他の構成は実施例1と同様とした。
【0034】
(実施例3)
実施例1と同様の通常繊維強化樹脂層を内周側から1,2、6、7層目に設け、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性エポキシ、ジシアンジアミド硬化剤、DCMU、メチル・エチル・ケトンを70:30:6:4:130の配合比重量部で配合した改質繊維強化樹脂層を内周側から3、4、5層目に設けた。
他の構成は実施例1と同様とした。
【0035】
(実施例4)
実施例1と同様の通常繊維強化樹脂層を内周側から1,2、6、7層目に設け、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性エポキシ、ジシアンジアミド硬化剤、DCMU、メチル・エチル・ケトンを30:70:6:4:130の配合比重量部で配合した改質繊維強化樹脂層を内周側から3、4、5層目に設けた。
他の構成は実施例1と同様とした。
【0036】
(実施例5)
実施例1と同様の通常繊維強化樹脂層を内周側から2、3、4、5、6層目に設け、実施例1と同様の改質繊維強化樹脂層を内周側から1、7層目に設けた。
他の構成は実施例1と同様とした。
【0037】
(比較例1)
全層を実施例1と同様の通常繊維強化樹脂層とした。
他の構成は実施例1と同様とした。
【0038】
(比較例2)
全層を実施例1と同様の改質繊維強化樹脂層とした。
他の構成は実施例1と同様とした。
【0039】
(比較例3)
実施例1と同様の通常繊維強化樹脂層を内周側から1、2、3、5、6、7層目に設け、実施例1と同様の改質繊維強化樹脂層を内周側から4層目に設けた。
他の構成は実施例1と同様とした。
【0040】
上記実施例1〜5および比較例1〜3のラケットフレームに関し、それぞれ、後述する方法により、打球面剛性、面外1次振動減衰率、面外2次振動減衰率、耐熱性能を測定した。また、振動について実打評価を行った。
【0041】
(打球面剛性の測定)
図3に示すように、実施例及び比較例のラケットフレーム10にストリングを張架したテニスラケットを水平に配置し、ヘッド部12のトップ部12aを受け治具61(R15)で支持するとともに、トップ部12aから340mm離れた位置で、スロート部13の両側からヨーク17にかけた位置を受け治具62(R15)で支持した。この状態で、受け治具62より受け治具61の方向へ170mm離れた位置に対して、加圧具63(R10)により上方より80kgfの力を加えて変位量(たわみ量)を測定し、加えた荷重値である80kgfを変位量(cm)で割って、その値を打球面の面外方向の剛性値とした。
【0042】
(側圧剛性の測定)
図4に示すように、実施例及び比較例のラケットを横向きで打球面Fを垂直方向として、ラケットを保持している。この状態で上方のヘッド部12のサイド12bに対して、平板Pにより、80kgfの荷重を加えて変位量(たわみ量)を測定し、加えた荷重値である80kgfを変位量(cm)で割って、その値をヘッド部12の側面の面内方向の剛性値とした。
【0043】
(面外1次振動減衰率の測定)
実施例及び比較例のラケットを図5(A)に示すようにヘッド部12の上端を紐51で吊り下げ、ヘッド部12とスロート部13との一方の連続点に加速度ピックアップ計53をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、図5(B)に示すように、ヘッド部12とスロート部13の他方の連続点をインパクトハンマー55で加振した。インパクトハンマー55に取り付けられたフォースピックアップ計で計測した入力振動(F)と加速度ピックアップ計53で計測した応答振動(α)をアンプ56A、56Bを介して周波数解析装置57(ヒューレットパッカード社製、ダイナミックシングルアナライザーHP3562A)に入力して解析した。解析で得た周波数領域での伝達関数を求め、テニスラケットの振動数を得た。振動減衰比(ζ)は下式より求め、面外1次振動減衰率とした。実施例及び比較例のラケットについて測定された平均値を上記表1に示す。
【0044】
ζ=(1/2)×(Δω/ωn)
To=Tn/√2
【0045】
(面外2次振動減衰率の測定)
ラケットを図5(C)に示すようにヘッド部12上端を紐51で吊り下げ、スロート部13とシャフト部14との連続点に加速度ピックアップ計53をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、加速度ピックアップ計53の裏側のフレームをインパクトハンマー55で加振した。そして、面外1次振動減衰率と同等の方法で減衰率を算出し、面外2次振動減衰率とした。実施例及び比較例のラケットについて測定された平均値を上記表1に示す。
【0046】
(耐熱性試験)
ストリングを張架したラケットを90℃のオーブンに2時間放置し、ラケットの変形を確認した。変形のなかったものを○、変形したものを×とした。
【0047】
(実打評価)
ラケットの振動吸収性についてアンケート調査を行った。5点満点(多い程良い)で採点し、中・上級者(テニス歴10年以上、現在も週3日以上プレーする条件を満たす女性)50名の採点結果の平均値をとった。
【0048】
表1に示す結果から明らかなように、ラケットフレームを構成する繊維強化樹脂層の全層数の20〜75%を改質繊維強化樹脂層とし、この改質繊維強化樹脂層のゴム変性エポキシ配合率を30〜70%とした実施例1〜5は、比較例1〜3と比較して、耐衝撃性、耐熱性を維持しながら振動減衰性に優れていることを確認できた。
また、実打評価からも同様の結果を得ることができた。
【0049】
また、実施例1〜4と実施例5とを比較することにより、ラケットフレームの積層構造の中間層を改質繊維強化樹脂層とすると、効率よく振動減衰性を向上することができることを確認できた。
【0050】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、繊維強化樹脂からなる積層構造の層数の20〜75%の層に、液状ゴムをエポキシ樹脂と均一に相溶した形で硬化させてエポキシ樹脂と液状ゴムの海島構造とするゴム変性エポキシを配合し、かつ、該ゴム変性エポキシを配合する繊維強化樹脂層に樹脂の30〜70%のゴム変性エポキシを配合することにより、剛性、強度および耐熱性を低下させることなく、振動減衰性に優れたラケットフレームとすることができる。
【0051】
また、ラケットフレームに衝撃が加わったときに最も剪断力が大きい部分である中間層にゴム変性エポキシを配合すると、ラケットフレームに生じる振動を効率的に減衰させることができる。
さらに、振動減衰性を向上させるために、樹脂配合を変更するだけであるので、重量を増加させることなく、操作性を損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ラケットフレームの概略正面図である。
【図2】 ラケットフレームの断面図である。
【図3】 打球面剛性の測定方法を示す概略図であり、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【図4】 側圧剛性の測定方法を示す概略図である。
【図5】 (A)(B)(C)はラケットフレームの振動減衰率の測定方法を示す概略図である。
【符号の説明】
10 ラケットフレーム
12 ヘッド部
13 スロート部
14 シャフト部
15 グリップ部
17 ヨーク
20 通常繊維強化樹脂層
30 改質繊維強化樹脂層

Claims (6)

  1. 繊維強化樹脂層を積層して成形したラケットフレームであって、
    上記積層構造とした繊維強化樹脂層の層数の20〜75%の層を改質繊維強化樹脂層とし、該改質繊維強化樹脂層では樹脂中の30〜70重量部は、液状ゴムとエポキシ樹脂とが均一に相溶され硬化時にはエポキシ樹脂と液状ゴムの海島構造となるゴム変性エポキシとし、残りはエポキシ樹脂とし
    上記改質繊維強化樹脂層以外の繊維強化樹脂層は、樹脂中で上記ゴム変性エポキシが10〜0重量部とした通常繊維強化樹脂層としていることを特徴とするラケットフレーム。
  2. 上記エポキシ樹脂と均一に相溶する上記液状ゴムは、ブタジエン−アクリルニトリルゴム(NBR)あるいは、カルボキシル基末端NBR(CTBN)としている請求項1に記載のラケットフレーム。
  3. 繊維強化樹脂層を積層して成形したラケットフレームであって、
    上記積層構造とした繊維強化樹脂層の層数の20〜75%の層を改質繊維強化樹脂層とし、該改質繊維強化樹脂層では樹脂中の30〜70重量部は、液状ゴムとエポキシ樹脂とが均一に相溶され硬化時にはエポキシ樹脂と液状ゴムの海島構造となるゴム変性エポキシとし、残りはエポキシ樹脂とし、
    上記エポキシ樹脂と均一に相溶する上記液状ゴムは、ブタジエン−アクリルニトリルゴム(NBR)あるいは、カルボキシル基末端NBR(CTBN)としていることを特徴とするラケットフレーム。
  4. 上記ゴム変性エポキシとしてCTBN変性エポキシを用い、他のエポキシとしてビスフェノールA型エポキシを用い、
    上記改質繊維強化樹脂層ではゴム変性エポキシとビスフェノールA型エポキシとを樹脂中で略同一重量部で配合する一方、上記通常繊維強化樹脂層では、ゴム変性エポキシをビスフェノールA型エポキシの1/8〜1/10の割合で配合している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のラケットフレーム。
  5. 上記改質繊維強化樹脂層を、積層構造の中間層に配置している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のラケットフレーム。
  6. 上記繊維強化樹脂層は、プリプレグを積層した積層構造、上記樹脂に含浸した繊維をFW法(フィラメントワインデイング法)で積層した積層構造あるいは、繊維をFW法で積層構造とした後に上記樹脂に含浸させて形成している請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のラケットフレーム。
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