JP4869388B2 - ラケットフレーム - Google Patents

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Description

本発明は、ラケットフレームに関する。
FRP(繊維強化プラスチック)を用いたラケットフレームが公知である。繊維強化プラスチックは、繊維とマトリクスとを有している。マトリクスは、通常、樹脂である。
上記マトリクスにゴム成分が配合されたラケットフレームが開示されている。このゴム成分は、振動吸収性を向上させうる。
特許第3401163号公報に記載のラケットフレームでは、マトリクス樹脂が(メタ)アクリル系重合体微粒子を含み、この(メタ)アクリル系重合体微粒子がゴム状重合体成分を含む。この(メタ)アクリル系重合体微粒子は、エポキシ樹脂に混合されている。
特許第4213947号公報及び特許第4252397号公報は、上記マトリクス樹脂に液状ゴムが配合されたラケットフレームを開示する。特許第4213947号公報のラケットフレームでは、上記マトリクス樹脂が、エポキシ樹脂と液状ゴムとの海島構造であるゴム変性エポキシを含む。特許第4252397号公報では、上記マトリクス樹脂が、液状ゴム及びエポキシ樹脂をあらかじめ混合反応させたゴム変性エポキシと、ゴム成分を含まないエポキシ樹脂との混合物を含む。
特許第3738276号公報は、超軽量で、反発及び打球フィーリングに優れたラケットフレームを開示する。この特許第3738276号公報では、フレーム重量、バランス、(頂圧剛性/打球面剛性)、(打球面剛性/スロート部剛性)などが規定されている。
特許第4253072号公報は、扱いやすく反発性能に優れたラケットフレームを開示する。この特許第4253072号公報では、重量とバランスとの積、ヘッド部側部の面内方向剛性値Gh、スロート部の面外方向剛性値Gs、比(Gh/Gs)、フレーム重量、バランスなどが規定されている。
特許第3401163号公報 特許第4213947号公報 特許第4252397号公報 特許第3738276号公報 特許第4253072号公報
上記ゴム成分は、強度の低下や、製品の均一性の低下を招来しうる。上記文献の技術により、これらの問題が抑制されうる。しかし、ゴム成分の配合により、強度は低下する傾向である。強度がより高いのが好ましい。
ゴム成分の割合が抑制された場合、強度が向上しうる。しかし、この場合、振動吸収性が低下し、打球フィーリングが低下しやすい。また、低い振動吸収性は、テニスエルボーの原因となりうる。
本発明者は、ゴム成分を有しつつ、強度と打球フィーリングとを向上させる技術について検討し、本発明に至った。
本発明の目的は、強度と打球フィーリングとに優れうるラケットフレームの提供にある。
本発明に係るラケットフレームは、繊維強化樹脂層を備えている。この繊維強化樹脂層の少なくとも一つは、ゴム成分を含む層(L1)である。ラケットフレーム全体でのマトリクスの総重量がWm(g)とされ、ラケットフレーム全体でのゴム成分の総重量がWg(g)とされるとき、重量Wgの、重量Wmに対する割合Rg(%)が、2.5(%)以上17.5(%)以下である。平圧剛性Rh(kgf/cm)の、スロート剛性Rs(kgf/cm)に対する比[Rh/Rs]は、0.05以上0.2以下である。
好ましくは、上記平圧剛性Rhが、30(kgf/cm)以上70(kgf/cm)以下である。好ましくは、上記スロート剛性Rsが、250(kgf/cm)以上800(kgf/cm)以下である。
好ましくは、上記繊維強化樹脂層として、ゴム成分を含む上記層(L1)と、ゴム成分を含まない層(L2)とが併用されている。
好ましくは、上記ゴム成分は、コアシェルポリマーである。好ましくは、上記層(L1)のマトリクスにおいて、このコアシェルポリマーが、一次粒子の状態で分散している。
ゴム成分を有しつつ、強度と打球フィーリングとが向上されうる。
図1は、本発明の一実施形態に係るラケットフレームの正面図である。 図2は、平圧剛性Rhの測定方法を示す図である。 図3は、スロート剛性Rsの測定方法を示す図である。 図4は、振動減衰率Rvの測定方法を示す図である。 図5は、振動減衰率Rvの測定装置の概略構成を示す図である。 図6は、振動減衰率Rvの算出に関するグラフである。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態にかかるラケットフレーム10が示された正面図である。このラケットフレーム10は、ヘッド部12、2つのスロート部14、シャフト部16及びグリップ部18を備えている。ヘッド部12は打球面の輪郭を形成している。ヘッド部12の横断面形状は略楕円である。
2つのスロート部14のそれぞれは、その一端がヘッド部12から伸びており、その他端が互いに合流している。シャフト部16は、2つのスロート部14が合流する箇所から伸びている。シャフト部16は、スロート部14と連続的にかつ一体的に形成されている。グリップ部18は、シャフト部16と連続的にかつ一体的に形成されている。ヘッド部12のうち2つのスロート部14に挟まれた部分は、ヨーク部20である。
このラケットフレームは、繊維強化樹脂層を備えた成形体から構成されている。繊維強化樹脂層のマトリクス樹脂は、エポキシ樹脂である。繊維強化樹脂層の強化繊維は、カーボン繊維である。ラケットフレーム10は、その内部に空洞を有している。即ちラケットフレーム10は、中空である。このラケットフレーム10にストリングが張設され、グリップテープ、エンドキャップ等が取り付けられることにより、硬式テニス用のラケットとなる。
上記繊維強化樹脂層の少なくとも一つは、ゴム成分が配合されている層(L1)である。このゴム成分が配合されている層(L1)は、強化繊維とマトリクスとを有する。典型的な強化繊維は、カーボン繊維である。このマトリクスは、エポキシ樹脂組成物である。このマトリクスは、エポキシ樹脂と、ゴム成分とを含む。
ゴム成分のゴムは、限定されない。振動吸収性の観点から、架橋ゴムが好ましい。このゴムの分子は、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。このゴムは、ジエン系ゴムであってもよいし、非ジエン系ゴムであってもよい。ジエン系ゴムとして、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ノルボルネンゴムなどが挙げられる。非ジエン系ゴムとして、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。他のゴムとして、熱可塑性エラストマーが挙げられる。好ましい熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントとを有する。この熱可塑性エラストマーとして、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
好ましくは、このゴム成分は、マトリクスにおいて、粒子状である。好ましくは、このゴム成分は、粒子状で分散している。
本願では、全ての繊維強化樹脂層におけるマトリクスの総重量がWm(g)とされ、全ての繊維強化層におけるゴム成分の重量がWg(g)とされる。総重量Wmは、ラケットフレーム全体におけるマトリクスの合計重量である。重量Wgは、ラケットフレーム全体におけるゴム成分の合計重量である。
打球フィーリングの観点から、重量Wgの、総重量Wmに対する割合Rg(%)は、2.5(%)以上が好ましく、4(%)以上がより好ましく、6(%)以上がより好ましい。この割合Rg(%)は、次の式により算出されうる。
Rg=(Wg/Wm)×100
強度の観点から、上記割合Rg(%)は、17.5(%)以下が好ましく、15(%)以下がより好ましく、12.5(%)以下がより好ましい。
ラケットフレームに含まれるゴム成分は、ラケットフレームの強度を低下させうる。打球時に応力が集中しやすい箇所は、スロート部である。スロート部の過度な変形は、ゴム成分を起点としたクラックをスロート部に生じさせうる。ゴム成分を有しつつ、フレーム強度を高める観点から、スロート剛性Rsを高くするのが有効である。
一方、スロート剛性Rsが高すぎる場合、打球フィーリングが悪化しやすい。特に、スロート剛性Rsが高すぎる場合、食いつき感が得られにくい。「食いつき感」は、良好な打球フィーリングを示す指標として知られている。高いスロート剛性Rsに起因する打球フィーリングの悪化は、平圧剛性Rhを低くすることによって抑制(緩和)されうる。即ち、平圧剛性Rhを低めに設定し且つスロート剛性Rsを高めに設定することにより、ゴム成分の存在下においてフレーム強度を高めることができ、且つ、打球フィーリングを向上させることができる。これらの観点から、比[Rh/Rs]は、0.2以下が好ましく、0.15以下がより好ましい。比[Rh/Rs]が過度に小さい場合、スロート部と他の部分との剛性の差異が過剰となり、ラケットフレームの変形のバランスが変化する。このバランスの変化に起因して、打球フィーリングが悪くなることがある。この観点から、比[Rh/Rs]は、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。
上記平圧剛性Rhは限定されない。平圧剛性Rhが過度に低い場合、フレーム強度が低下しやすい。この観点から、平圧剛性Rhは、30(kgf/cm)以上が好ましく、40(kgf/cm)がより好ましく、45(kgf/cm)がより好ましい。平圧剛性Rhが過大である場合、反発性能が過大となり、ボールがコート内に収まらずアウトとなる確率が高くなりやすい。即ち平圧剛性Rhが過大である場合、コントロール性能が低下しやすい。また、前述の通り、比[Rh/Rs]が小さい場合、打球フィーリングが向上しやすい。これらの観点から、平圧剛性Rhは、70(kgf/cm)以下が好ましく、60(kgf/cm)以下がより好ましく、55(kgf/cm)以下がより好ましい。
上記スロート剛性Rsは限定されない。スロート部の変形を抑制してフレーム強度を高める観点から、スロート剛性Rsは、250(kgf/cm)以上が好ましく、290(kgf/cm)以上がより好ましく、350(kgf/cm)以上がより好ましい。フレーム重量の抑制及び打球フィーリングの観点から、スロート剛性Rsは、800(kgf/cm)以下が好ましく、600(kgf/cm)以下がより好ましい。
平圧剛性Rhを小さくするために、以下の構成が採用されうる。
・フレーム全体の厚みを小さくする。
・フレーム全体に用いられている繊維の弾性率を低くする。
・フレーム全体において、繊維の重量割合を小さくし、樹脂の重量割合を大きくする。
平圧剛性Rhを大きくするために、以下の構成が採用されうる。
・フレーム全体の厚みを大きくする。
・フレーム全体に用いられている繊維の弾性率を高くする。
・フレーム全体において、繊維の重量割合を大きくし、樹脂の重量割合を小さくする。
スロート剛性Rsを小さくするために、以下の構成が採用されうる。
・スロート部の厚みを小さくする。
・弾性率の低い繊維をスロート部に配置する。
・スロート部において、繊維の重量割合を小さくし、樹脂の重量割合を大きくする。
・ラケットの正面視において、スロート部の曲率半径Ksを小さくする。
図1の正面図に示されているように、ラケットの平面視において、スロート部14は、内側に向かって凸に曲がっている。スロート部の上記曲率半径Ksが小さくされた場合、右側のスロート部14と左側のスロート部14とが近づき、2つのスロート部14とヨーク部20とで囲まれた部分の面積が小さくなる。スロート部の曲率半径Ksが小さくされると、スロート剛性Rsが小さくなりやすい。
スロート剛性Rsを大きくするために、以下の構成が採用されうる。
・スロート部の厚みを大きくする。
・弾性率の高い繊維をスロート部に配置する。
・スロート部において、繊維の重量割合を大きくし、樹脂の重量割合を小さくする。
・ラケットの正面視において、スロート部の曲率半径Ksを大きくする。
図1の正面図に示されているように、ラケットの平面視において、スロート部14は、内側に向かって凸に曲がっている。スロート部の上記曲率半径Ksが大きくされた場合、スロート部14が真っ直ぐに近くなり、右側のスロート部14と左側のスロート部14とが離れる。よってこの場合、2つのスロート部14とヨーク部20とで囲まれた部分の面積が大きくなる。したがって、スロート部の曲率半径Ksが大きくされると、スロート剛性Rsが大きくなりやすい。
比[Rh/Rs]を大きくするには、平圧剛性Rhを大きくするか、スロート剛性Rsを小さくする。平圧剛性Rhを大きくし且つスロート剛性Rsを小さくするのがより効果的である。
比[Rh/Rs]を小さくするには、平圧剛性Rhを小さくするか、スロート剛性Rsを大きくする。平圧剛性Rhを小さくし且つスロート剛性Rsを大きくするのがより効果的である。
通常、上記繊維強化樹脂層は、複数である。打球フィーリングの観点から、全ての上記繊維強化樹脂層がゴム成分を有する層(L1)とされてもよい。
上記割合Rgが同一である条件下で比較する場合、全ての層が上記層(L1)とされるよりも、上記層(L1)と層(L2)とが併用されるほうが、振動吸収性が向上しやすいことがわかった。この層(L2)は、ゴム成分が配合されていない層である。
全ての上記層(L1)におけるマトリクスの合計重量がMm(g)とされ、全ての上記層(L1)におけるゴム成分の合計重量がMg(g)とされる。振動吸収性を高める観点から、重量Mgの、重量Mmに対する割合RL1(%)は、5(%)以上が好ましく、10(%)以上がより好ましく、12.5(%)以上がより好ましい。この割合RL1(%)は、次の式により算出されうる。
RL1=(Mg/Mm)×100
耐熱性の観点から、上記割合RL1(%)は、50(%)以下が好ましく、40(%)以下がより好ましい。
ゴム成分の分散が不均一である場合、ゴム成分が偏在している部分に起因して、強度が低下しやすい。また、ゴム成分の分散が不均一である場合、製品性能のバラツキが生じやすい。これらの観点から、ゴム成分は、マトリクスにおいて、一次粒子の状態で分散しているのが好ましい。より好ましくは、ゴム成分はコアシェルポリマーに含まれている。より好ましくは、上記層(L1)のマトリクスにおいて、このコアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているのがよい。
複数の粒子が凝集している凝集体は、例えば、数十μmから数百μm程度の径を有する。この凝集体は、パウダーとして市販されている。この凝集体の分離を抑制するためには、通常、この凝集体とエポキシ樹脂とを念入りに混合することが必要である。即ち、この混合では、凝集体を10μm以下に微粉化したり、50℃から200℃程度の温度で加熱しながら攪拌したり、高速せん断攪拌を行ったり、混練機(熱ロール、インターミキサー、ニーダー等)を用いて長時間混合したり、といった工程が必要となる。また、これらの混合や混練が数時間行われた場合であっても、ゴム粒子は分離しやすい問題があった。コアシェルポリマーを一次粒子の状態で分散させることにより、均一性の高い分散が可能となる。
好ましくは、上記層(L1)のマトリクスは、エポキシ樹脂を主成分としている。この層(L1)のマトリクスは、好ましくは、ゴム成分の他、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む。層(L1)のマトリクスのエポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールA型及び/又はフェノールノボラック型である。層(L1)に含まれる樹脂の硬化剤は、好ましくは、ジシアンジアミド及び/又は芳香族尿素化合物である。
上記層(L2)は、ゴム成分を含まない。好ましくは、ゴム成分が配合されていない層(L2)のマトリクスは、エポキシ樹脂を主成分としている。この層(L2)のマトリクスは、好ましくは、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む。層(L2)のマトリクスのエポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールA型及び/又はフェノールノボラック型である。層(L2)のマトリクスの硬化剤は、好ましくは、ジシアンジアミド及び/又は芳香族尿素化合物である。
上記層(L2)のマトリクスのエポキシ樹脂2と、上記層(L1)のマトリクスのエポキシ樹脂1とは、同一であってもよいし、異なっていても良い。層(L1)と層(L2)との密着性の観点から、上記エポキシ樹脂1のうちの少なくとも1種類と、上記エポキシ樹脂2のうちの少なくとも1種類とが同一であるのが好ましい。また、層(L1)と層(L2)との密着性の観点から、上記層(L1)の硬化剤のうちの少なくとも1種類と、上記層(L2)の硬化剤のうちの少なくとも1種類とが、同一であるのが好ましい。
上記層(L2)に含まれる繊維と、上記層(L1)に含まれる繊維とは、同一であってもよいし、異なっていても良い。フレーム強度の観点から、上記層(L1)の繊維と、上記層(L2)の繊維とは、同じであるのが好ましい。
[コアシェルポリマー]
コアシェルポリマーは、コア部とシェル部とを有する。好ましくは、コア部は、エラストマー及び/又はゴム状のポリマーを主成分とするポリマーからなる。好ましくは、シェル部は、コア部にグラフト重合されたポリマー成分からなる。好ましいシェル部は、グラフト成分を構成するモノマーをコア成分にグラフト重合することにより形成される。シェル部は、コア部の一部又は全体を覆っている。
上記コア部を構成するポリマーは、架橋されている。コア部を構成するポリマーは、エポキシ樹脂に不溶であるのが好ましい。振動吸収性を高める観点から、上記コア部のポリマーは、ゴムとしての性質を有することが好ましい。この観点から、上記コア部のポリマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましい。
上記コア部を構成するポリマーは、以下のポリマー(Pa)、ポリマー(Pb)又はポリマー(Pc)であるのが好ましい。
(Pa):共役ジエン系モノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる群より選ばれる一種以上のモノマーを50重量%以上含有する単量体が重合されてなるポリマー
(Pb):ポリシロキサンゴム
(Pc):上記ポリマー(Pa)と上記ポリマー(Pb)との混合物
なお、本願において、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
上記共役ジエン系モノマーとして、例えば、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンが挙げられる。価格が安く、重合体の振動吸収性が良好であり、且つ重合が容易である観点から、ブタジエンが特に好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとして、例えば、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びラウリルメタクリレートが挙げられる。重合体の振動吸収性が良好であり、且つ重合が容易である観点から、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。
上記共役ジエン系モノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、1種が用いられても良いし、2種以上が組み合わされてもよい。共役ジエン系モノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの使用量は、コア部全体の重量に対して好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。50重量%未満の場合、上記マトリクスの靱性が低下する場合がある。この靱性は、ラケットフレームの強度を向上させうる。
上記コア部の原料ポリマーとして、上記共役ジエン系モノマー及び/又は上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが主成分とされる場合、これらと共重合可能な1種以上のビニルモノマーが共重合されてもよい。このビニルモノマーとして、例えば、上記アルキル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート((メタ)アクリレート系モノマー)、ビニル芳香族系モノマー及びビニルシアン系モノマーが挙げられる。上記(メタ)アクリレート系モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びブチルメタアクリレートが挙げられる。上記ビニル芳香族系モノマーとして、例えば、スチレン及びα−メチルスチレンが挙げられる。上記ビニルシアン系モノマーとして、例えば、(メタ)アクリロニトリル及び置換アクリロニトリルが挙げられる。これら共重合可能なモノマーは、1種又は2種以上用いられうる。これら共重合可能なモノマーの使用割合は、上記コア部全体の重量に対して、好ましくは50重量%未満であり、より好ましくは40重量%未満である。
上記コア部の原料ポリマーとして、多官能性モノマーが用いられても良い。この多官能性モノマーは、架橋度の調節に寄与しうる。この多官能性モノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(イソ)シアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリル及びフタル酸ジアリルが挙げられる。ラケットフレームの振動吸収性の観点から、これらの多官能性モノマーの使用割合は、上記コア部の全重量に対して、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
上記コア部には、上記ビニル重合性ポリマーに替えて、あるいはこれらと併用して、ポリシロキサンゴムが使用されてもよい。上記コア部にポリシロキサンゴムが使用される場合、このポリシロキサンの構成単位として、例えば、ジメチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ等の、アルキル2置換シリルオキシ又はアリール2置換シリルオキシが挙げられる。また、このポリシロキサンゴムを用いる場合、あらかじめ架橋構造を導入しておくのが好ましい。この導入の手法として、コア部の重合時に多官能性のアルコキシシラン化合物を併用すること、及び、ビニル反応性基を持ったシラン化合物をラジカル反応させることが挙げられる。
上記シェル部は、エポキシ樹脂に対して親和性のある基を有する。上記シェル部は、コアシェルポリマーに、エポキシ樹脂に対する親和性を付与している。この親和性により、コアシェルポリマーが、エポキシ樹脂中において、一次粒子の状態で分散しやすい。
上記シェル部を構成するポリマーは、上記コア部を構成するポリマーに、グラフト重合されているのが好ましい。上記シェル部を構成するポリマーは、上記コア部を構成するポリマーと結合しているのが好ましい。具体的には、上記シェル部を構成するポリマーの70重量%以上が上記コア部に結合しているのが好ましく、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。コアシェルポリマーを一次粒子の状態で安定的に分散させる観点から、上記シェル部は、後述される有機溶媒及びマトリクスのエポキシ樹脂に対して、膨潤性、相容性及び/又は親和性を有するものが好ましい。
ラケットフレームの強度の観点から、上記シェル部は、マトリクスのエポキシ樹脂又はこのエポキシ樹脂の硬化剤との反応性を有しているのが好ましい。ラケットフレームの強度の観点から、上記エポキシ樹脂又は上記硬化剤と、上記シェル部とが、化学反応により結合していてもよい。
価格、良好なグラフト重合性及びエポキシ樹脂に対する親和性の観点から、上記シェル部を構成するポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物より選ばれる1種以上の成分を重合して得られる重合体であることが好ましい。
エポキシ樹脂の硬化時における上記シェル部の化学反応性を高める観点からは、上記モノマーに加えて、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エポキシアルキル(メタ)アクリレート等の反応性側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類;エポキシアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド(N−置換物を含む);α,β−不飽和酸;α,β−不飽和酸無水物及びマレイミド誘導体からなる群より選ばれる1種以上のモノマーが共重合されるのが好ましい。このモノマーの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸無水物、マレイン酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは、1種が用いられても良いし、2種以上が組み合わされてもよい。
上記コア部と上記シェル部との質量比は限定されない。エポキシ樹脂の靱性を改善してラケットフレームの強度を高める観点、及び振動吸収性の観点から、比[コア部の質量/シェル部の質量]は、50/50以上が好ましく、60/40以上がより好ましい。コアシェルポリマーを一次粒子の状態で分散させる観点から、この比[コア部の質量/シェル部の質量]は、95/5以下が好ましく、90/10以下がより好ましい。
コアシェルポリマーの製造方法は限定されない。この製造方法として、例えば、乳化重合、懸濁重合及びマイクロサスペンジョン重合が挙げられ、乳化重合が好ましい。
コアシェルポリマーの体積平均粒子径は限定されない。ラケットフレームの強度の観点から、この体積平均粒子径は、1μm以下が好ましい。この体積平均粒子径が小さすぎる場合、一次粒子の状態で分散しにくい。この観点から、この体積平均粒子径は、0.03μm以上が好ましい。この体積平均粒子径は、マイクロトラックUPA(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
好ましいマトリクスは、エポキシ樹脂組成物である。このエポキシ樹脂組成物は、次の製造方法で得られたものであることが好ましい。この好ましい製造方法は、水性ラテックスの状態で得られるコアシェルポリマーを有機溶剤と混合してコアシェルポリマーを有機相中に取り出し、有機溶剤へコアシェルポリマーが分散した分散体を得る工程と、この分散体をエポキシ樹脂と混合する工程とを含む。
より好ましい製造方法の一例は、コアシェルポリマーを含有する水性ラテックスを有機溶剤と混合し、水相を分離除去して、コアシェルポリマーが有機溶剤中へ分散した分散体を得る工程を含む。この工程では、好ましくは、コアシェルポリマーの水性ラテックスと有機溶剤とを混合後、さらに水溶性電解質あるいは水性ラテックスに対して非混合性を有する有機溶剤を添加し、水相を分離除去することにより、コアシェルポリマーが有機溶剤へ分散した分散体を得る。この分散体をエポキシ樹脂と混合し、必要に応じて有機溶剤を含む揮発成分を除去することにより、上記エポキシ樹脂組成物が製造されうる。より好ましいエポキシ樹脂組成物の製造方法は、上記分散体を水或いは水溶性電解質水溶液と接触させた後、水相を分離除去する操作を1回以上行い、その後、エポキシ樹脂と混合する工程を含む。
コアシェルポリマーを含有する上記水性ラテックスと混合する上記有機溶剤として、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エタノール、(イソ)プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン及びクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類から選ばれる1種以上の有機溶媒或いはその混合物が挙げられる。この有機溶媒の、20℃における水に対する溶解度は、好ましくは5重量%以上、40重量%以下である。この溶解度が5重量%未満である場合、コアシェルポリマーを含有する水性ラテックスとの混合がやや困難になる傾向にある。この溶解度が40重量%を越える場合、水溶性電解質又は水性ラテックスに対して非混合性である有機溶剤を添加した後、水相を効率的に分離除去することが難しくなることがある。
また、水性ラテックスに対して非混合性である有機溶剤としては、公知の有機溶剤が使用可能であり、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;等から選ばれる1種又は2種以上の有機溶媒が挙げられる。この有機溶媒は、水に対する溶解度が5重量%未満であるものが好ましい。水に対する溶解度が5重量%以上である場合、コアシェルポリマーを含有する水性ラテックスと上記有機溶剤との混合物に添加した場合に、水相を効率的に分離する効果が少なくなりやすい。
上記水溶性電解質は特に限定されない。この水溶性電解質の具体例として、水溶性のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩が挙げられ、より具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、硫酸アンモニウム等が例示され、さらに塩酸、硫酸などの無機酸が例示される。水性ラテックスと特定の有機溶剤との混合物に対して、水性ラテックスに対して非混合性である有機溶剤を添加せず、且つこの水溶性電解質を添加しない場合、水相を効率的に分離除去することが難しい場合がある。
上記マトリクスには、硬化剤、架橋剤、充填剤、顔料、カップリング剤、レベリング剤、酸化防止剤、溶剤、分散安定剤、反応性希釈剤、付着性付与剤、消泡剤、潤滑剤、香料、熱可塑性樹脂、プロモーター、揺変剤等の添加物が配合されてもよい。
上記コアシェルポリマーは、複数の一次粒子が集合した凝集体であってもよい。この凝集体として、鐘淵化学工業株式会社製の商品名「Kane Ace」、ロームアンドハース社製の商品名「Paraloid」などが挙げられる。この凝集体の体積平均粒子径は、例えば、10μm以上1000μm以下である。
好ましくは、上記マトリクスにおいて、上記コアシェルポリマーは、一次粒子の状態で分散している。この分散により、マトリクス中にゴム成分が均等に分散しやすくなる。この分散により、強度が向上しうる。この分散により、製品性能のバラツキが抑制される。
ラケットフレームの製造方法は限定されない。この製造方法として、次の[製造方法A]、[製造方法B]、[製造方法C]及び[製造方法D]が例示される。
[製造方法A]は、以下の[工程A1]、[工程A2]、[工程A3]、[工程A4]、[工程A5]及び[工程A6]を含む。
[工程A1]ゴム粒子と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を用意する工程。
[工程A2]炭素繊維(カーボン繊維)を、上記エポキシ樹脂組成物に浸漬しながらドラムに巻き付けて、巻回体を得る工程。
[工程A3]上記ドラムから上記巻回体を切り取り、80℃以上100℃以下の熱をかけて、半硬化状態のプリプレグを得る工程。
[工程A4]上記プリプレグを切断する工程。
[工程A5]マンドレルをチューブ(ナイロン製又はシリコーン製等)に通し、このチューブ上に切断された上記プリプレグを巻き付けた後、マンドレルをチューブから抜き取って、チューブにプリプレグが巻き付けられたプリプレグ中間体を得る工程。
[工程A6]上記プリプレグ中間体をラケットフレームの金型にセットし、上記チューブ内に圧力をかけて、上記プリプレグ中間体が金型に沿うようにした後、加熱してマトリクスを硬化させる成形工程。
[製造方法B]は、以下の[工程B1]、[工程B2]、[工程B3]、[工程B4]及び[工程B5]を含む。
[工程B1]ゴム粒子と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を用意する工程。
[工程B2]マンドレルが通されたチューブを用意する工程。
[工程B3]フィラメントワインディング(FW)法により、炭素繊維に上記エポキシ樹脂組成物を付着させながら、上記マンドレルが通されたチューブに炭素繊維を巻き付ける工程。
[工程B4]マンドレルをチューブから抜き取って、FW中間体を得る工程。
[工程B5]上記FW中間体をラケットフレームの金型にセットし、上記チューブ内に圧力をかけてチューブ等が金型に沿うようにした後、加熱してマトリクスを硬化させる成形工程。
[製造方法C]
[製造方法C]は、以下の[工程C1]、[工程C2]、[工程C3]、[工程C4]、[工程C5]及び[工程C6]を含む。
[工程C1]ゴム粒子と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を用意する工程。
[工程C2]編まれた繊維よりなるブレードを用意する工程。
[工程C3]マンドレルが通されたチューブを用意する工程。
[工程C4]上記ブレードに上記エポキシ樹脂組成物を付着させながら、上記マンドレルが通されたチューブに、上記ブレードを積層し、レイアップC(繊維成形体)を得る工程。
[工程C5]マンドレルをチューブから抜き取って、樹脂含侵レイアップCを得る工程。
[工程C6]上記樹脂含侵レイアップCをラケットフレームの金型にセットし、上記チューブ内に圧力をかけて上記樹脂含侵レイアップCが金型に沿うようにした後、加熱してマトリクスを硬化させる成形工程。
[製造方法D]
[製造方法D]は、以下の[工程D1]、[工程D2]、[工程D3]、[工程D4]、[工程D5]及び[工程D6]を含む。
[工程D1]ゴム粒子と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂及び/又は希釈剤を含んでいてもよいエポキシ樹脂組成物を用意する工程。
[工程D2]編まれた繊維よりなるブレードを用意する工程。
[工程D3]マンドレルが通されたチューブを用意する工程。
[工程D4]上記マンドレルが通されたチューブに、上記ブレードを積層し、レイアップD(繊維成形体)を得る工程。
[工程D5]マンドレルをチューブから抜き取った後、このチューブ付きレイアップDに樹脂を付着させて、樹脂含侵レイアップDを得る工程。
[工程D6]上記樹脂含侵レイアップDをラケットフレームの金型にセットし、上記チューブ内に圧力をかけて上記樹脂含侵レイアップDが金型に沿うようにした後、加熱してマトリクスを硬化させる成形工程。
なお、ゴム成分が配合されている層(L1)とゴム成分が配合されていない層(L2)とを併存させる場合は、例えば、上記[製造方法A]が採用されうる。この場合、上記[製造方法A]の[工程A1]、[工程A2]及び[工程A3]により、マトリクスにゴム成分が配合されているプリプレグPgと、マトリクスにゴム成分が配合されていないプリプレグPnとをそれぞれ別々に作製し、上記[工程A5]において、これらプリプレグPgとプリプレグPnとを併用すればよい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
このラケットフレームの作製では、上記[製造方法A]が用いられた。[工程A1]の「ゴム粒子を含むエポキシ樹脂」として、株式会社カネカ製の商品名「MX−156」が用いられた。この「MX−156」は、上記コアシェルポリマーを含む。この「MX−156」では、ゴム成分、即ち、上記コアシェルポリマーの重量が、25重量%を占めている。この「MX−156」を用いることにより、ラケットフレームのマトリクスにおいて、コアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散する。
なお、この「MX−156」に含まれるエポキシ樹脂の種類は、ビスフェノールA型である。「MX−156」に含まれているエポキシ樹脂は、後述の「エピコート828」である。また、この「MX−156」に含まれるコアシェルポリマーのゴム成分は、ポリブタジエンゴムである。このコアシェルポリマーの粒子径は、約0.1μmである。
商品名「エピコート828」は、ジャパンエポキシレジン(JER)社製のエポキシ樹脂である。商品名「EPICLON N−865」は、DIC株式会社製の、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂である。商品名「DICY」は、ジシアンジアミドであり、ジャパンエポキシレジン(JER)社製の硬化剤である。商品名「DCMU」は、保土谷化学社製の芳香族尿素化合物であり、硬化剤である。これらを表1に記載の重量比で混合し、上記[工程A1]のエポキシ樹脂組成物を得た。そして、上記[製造方法A]により、実施例1のラケットフレームを得た。フェイス面積は645cmとされ、全長は27インチとされ、フレーム重量は290(g)とされ、バランスは325(mm)とされた。また、ストリング(ガット)の張設及びグリップテープの装着を行い、実施例1のラケットを得た。
[実施例2から6]
エポキシ樹脂組成物の配合が表1に示された通りとされた他は実施例1と同様にして、実施例2から6のラケットフレーム及びラケットを得た。
[実施例7]
表1に記載されている層(L1)の配合により、ゴム成分を含むエポキシ樹脂組成物1を得た。このエポキシ樹脂組成物1を用いて、上記[工程A2]及び[工程A3]により、プリプレグ1を得た。このプリプレグ1を、上記[工程A4]により切断した。また、表1に記載されている層(L2)の配合により、ゴム成分を含まないエポキシ樹脂組成物2を得た。このエポキシ樹脂組成物2を用いて、上記[工程A2]及び[工程A3]により、プリプレグ2を得た。このプリプレグ2を、上記[工程A4]により切断した。
上記プリプレグ1と上記プリプレグ2とを用いて、上記[工程A5]を行った。プリプレグ1とプリプレグ2との積層順序は、プリプレグ2が内層とされ、プリプレグ1が外層とされた。プリプレグ2の積層厚みと、プリプレグ1の積層厚みとが同一とされた。炭素繊維の配向は、実施例1から6と同じとされた。その他は実施例1と同様にして、実施例7のラケットフレーム及びラケットを得た。
[比較例1から4]
エポキシ樹脂組成物の配合が表2に示される通りとされた他は実施例1と同様にして、比較例1から4のラケットフレーム及びラケットを得た。
実施例の仕様と評価結果とが下記の表1に示される。比較例の仕様と評価結果とが下記
の表2に示される。表1及び表2において、配合の単位は、重量部である。
なお、「バランス」とは、グリップエンドからフレーム重心点までの距離である。
[評価]
得られたラケットフレームについて、平圧剛性Rh、スロート剛性Rs及び振動減衰率が評価された。また得られたラケット(ストリング張設済み)について、強度、耐熱性及び打球フィーリングが評価された。評価方法は次の通りである。
[平圧剛性Rhの測定]
図2に示すように、ラケットフレームを水平に配置し、そのヘッド部12を治具31で下方から支持すると共に、グリップ部9を治具32で下方から支持した。グリップエンドから治具32の接点までの距離d1は、43mmとされた。治具31と治具32との距離は、600mmであった。治具31の上面の形状は、ラケット長手方向に沿った断面における曲率半径が15(mm)とされ、ラケット長手方向に対して垂直な方向(図2の紙面に対して垂直な方向)に沿った断面における曲率半径は無限大(即ち直線)とされた。治具32の上面の形状は、治具31と同じとされた。治具31と治具32との間の中央点に圧子34を設置し、この圧子34により、上方から下方へと向かう80kgfの力を加えた。圧子34の下面の形状は、ラケット長手方向に沿った断面における曲率半径が10(mm)とされ、ラケット長手方向に対して垂直な方向(図2の紙面に対して垂直な方向)に沿った断面における曲率半径は無限大(即ち直線)とされた。この圧子34が接している中間地点の鉛直方向における変位量で荷重を除して、平圧剛性(kgf/cm)を算出した。この結果が下記の表1及び表2に示されている。
[スロート剛性Rsの測定]
図3(A)は、スロート剛性Rsの測定の様子を側方から見た図であり、図3(B)は、スロート剛性Rsの測定の様子を上方から見た図である。図3に示すように、ラケットフレームを水平に配置し、そのヨーク部20近傍を治具40で下方から支持すると共に、グリップ部9を治具42で下方から支持した。グリップエンドから治具42の接点までの距離d2は、25mmとされた。治具40と治具42との距離は、340mmとされた。治具40の上面の形状は、ラケット長手方向に沿った断面における曲率半径が15mmとされ、ラケット長手方向に対して垂直な方向(図3の紙面に対して垂直な方向)に沿った断面における曲率半径は無限大(即ち直線)とされた。治具42の上面の形状は、治具40と同じとされた。治具40と治具42との間に圧子46を設置した。圧子46の接点と圧子42の接点との距離は、220mmとされた。この圧子46により、上方から下方へと向かう80kgfの力を加えた。圧子46の下面の形状は、ラケット長手方向に沿った断面における曲率半径が10mmとされ、ラケット長手方向に対して垂直な方向(図3の紙面に対して垂直な方向)に沿った断面における曲率半径は無限大(即ち直線)とされた。この圧子46が接している地点の鉛直方向における変位量で荷重を除して、スロート剛性Rs(kgf/cm)を算出した。この結果が下記の表1及び表2に示されている。
[振動減衰率]
図4は振動減衰率の測定の様子を示す図であり、図5はこの測定に用いられた装置の概略構成を示す図である。図4が示すように、ヘッド部12の上端を紐50で吊り下げ、スロート部14とシャフト部16との境界部に加速度ピックアップ54を固定した。加速度ピックアップ54は、その測定方向がフレーム面に対して垂直となるように取り付けられた。この状態で、加速度ピックアップ54の裏側58をインパクトハンマー62で叩いて加振した。インパクトハンマー62には、フォースピックアップ計が取り付けられている。このフォースピックアップ計で計測された応答振動(F)と加速度ピックアップ54で計測された応答振動(α)とが、アンプ64、66を介して周波数解析装置68に入力され、解析された。上記応答振動(F)は、入力加振力である。上記応答振動(α)は、応答加速度である。この周波数解析装置68として、ヒューレットパッカード社製のダイナミックシングルアナライザーHP3562Aが用いられた。解析で得られた周波数領域での伝達関数を求め、ラケットフレームの振動数を得た。得られた伝達関数のグラフの一例が、図6に示される。図6のグラフでは、横軸が周波数(Hz)であり、縦軸が伝達関数である。伝達関数は、[応答振動(α)/応答振動(F)]である。上記の位置に加速度ピックアップ54を取り付け、この位置の裏側58を加振した場合、面外2次振動が測定される。よって、この伝達関数の1次の極大値は、面外2次振動における1次の極大値である。面外2次振動の減衰率である振動減衰率Rvは、以下の式(1)及び式(2)により計算された。
Rv= (1/2)× (Δω/ωn) ・・・(1)
T0=Tn/√2 ・・・(2)
ただし、図6のグラフが示すように、ωnは1次の極大値の周波数であり、Δω、Tn及びT0の意味は、図6のグラフに示す通りである。
各ラケットフレームのそれぞれについて5回の測定がなされた。この5回の振動減衰率Rvの平均値が、下記の表1及び表2に示される。
[強度]
ストリングが貼られたラケットのストリング面に、速度が50m/sであるボールを衝突させ、ラケットフレームにひび割れ等の破損が生じるまでの衝突回数N1がカウントされた。回数N1が100以下の場合が×とされ、回数N1が100を超えて200以下の場合が△とされ、回数N1が200を超える場合が○とされた。この評価結果が下記の表1及び表2に示される。
[耐熱性]
ストリングが張られたラケットを、庫内温度が90℃とされたオーブンに2時間放置し、ラケットフレームの変形を確認した。変形がない場合が○とされ、わずかに変形している場合が△とされ、変形がより大きい場合が×とされた。この評価結果が下記の表1及び表2に示される。
[打球フィーリング]
テニス歴が10年以上であり且つ現在週3日以上プレーしているテスター10名が、評価を行った。評価項目は、振動吸収性及び食いつき感の2項目とされた。いずれの項目も、1点から5点までの5段階で評価された。最も良好な場合が5点とされ、最も悪い場合が1点とされた。10名のテスターの評価値の平均点が、下記の表1及び表2に示される。
Figure 0004869388
Figure 0004869388
表1及び表2に示されるように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された方法は、硬式テニス用ラケットフレーム、軟式テニス用ラケットフレーム等に適用されうる。
10・・・ラケットフレーム
12・・・ヘッド部
14・・・スロート部
16・・・シャフト部
18・・・グリップ部
20・・・ヨーク部

Claims (4)

  1. 繊維強化樹脂層を備えており、
    この繊維強化樹脂層の少なくとも一つが、ゴム成分を含む層(L1)であり、
    ラケットフレーム全体でのマトリクスの総重量がWm(g)とされ、ラケットフレーム全体でのゴム成分の総重量がWg(g)とされるとき、重量Wgの、重量Wmに対する割合Rg(%)が、2.5(%)以上17.5(%)以下であり、
    平圧剛性Rh(kgf/cm)の、スロート剛性Rs(kgf/cm)に対する比[Rh/Rs]が、0.05以上0.2以下であるラケットフレーム。
    ただし、上記平圧剛性Rhとは、上記ラケットフレームを水平に配置し、ヘッド部及びグリップ部を下方から支持し、これらの支持点の中央点に下方への力を加えたときの剛性であり、
    上記スロート剛性Rsとは、上記ラケットフレームを水平に配置し、ヨーク部近傍及びグリップ部を下方から支持し、これら支持点の間に下方への力を加えたときの剛性である。
  2. 上記平圧剛性Rhが、30(kgf/cm)以上70(kgf/cm)以下であり、
    上記スロート剛性Rsが、250(kgf/cm)以上800(kgf/cm)以下である請求項1に記載のラケットフレーム。
  3. 上記繊維強化樹脂層として、ゴム成分を含む上記層(L1)と、ゴム成分を含まない層(L2)とが併用されている請求項1又は2に記載のラケットフレーム。
  4. 上記ゴム成分が、コアシェルポリマーであり、
    上記層(L1)のマトリクスにおいて、このコアシェルポリマーが、一次粒子の状態で分散している請求項1から3のいずれかに記載のラケットフレーム。
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