JP5778506B2 - ラケット - Google Patents

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Description

本発明は、打球感が良く、かつ軽量で耐久性の高いテニス、バドミントン用などのラケットに関する。
近年テニスやバドミントン用のラケットとして、軽量で飛び性能の良いラケットが求められている。このため、ラケットのフレームは、高強度で軽量の炭素繊維などの繊維強化樹脂製が主流となっている。
しかしながら、例えばテニスラケットを軽量にすると、打球時にテニスラケットに負荷される衝撃が大きくなり、プレーヤーが不快な振動を感じると共に衝撃が肘に伝わりやすくテニスエルボーの原因となることがある。このため、軽量で、かつ振動吸収性の高いテニスラケットが望まれており、様々な工夫がなされている。
ガットが張られたラケットにボールやシャトルが衝突したときに発生する主な振動としては、面外1次振動、面外2次振動、面内1次振動および面内2次振動などがある。ここで面外とはガットを張った状態でガット面に垂直な方向をいい、面内とはガット面に平行な方向の振動をいう。このような振動に着目して、これらの振動の腹部(振動の大きな位置)に振動抑止材を装着することが提案されている(例えば特許文献1)。また、面外1次振動を減衰させるためにフレームの一部に振動吸収材を介在させ、面外2次振動を抑制するためフレームの一部に振動吸収剤と質量付加剤を積層したダイナミックダンパーを装着させ、1次と2次の振動減衰率と比率を所定範囲とすることが提案されている(例えば特許文献2)。
一方、面内振動の節部分に質量体を装着または組み込むことが提案されており(例えば特許文献3)、フレームのフェース部全体に発泡材料を充填することが提案されている(例えば特許文献4)。
しかしながら、従来これらの振動と打球感との関係は必ずしも明確ではなく、振動吸収性が良いラケットが必ずしも打球感が良いとは言えない問題があった。また、装着型の振動抑止材の場合には、ラケット重量が増加することや、ラケットの空気抵抗が増大するなどの欠点があった。
特開2000−157649号公報 特開2003−10362号公報 特開2001−269424号公報 特開2001−145711号公報
本発明は、前記従来の問題を解決するため、打球感が良く、軽量で耐久性の高いラケットを提供するものである。
本発明は、中空部を有するフレームを有するラケットにおいて、フェイス面を時計と見てトップ位置を12時とすると、12時、4時および8時の位置の前記中空部内に発泡樹脂からなる振動吸収材が配置され、3時および9時の位置の前記中空部内には配置されず、前記振動吸収材が配置される部分の長さ合計はフレームの中空部を有する長さの10〜35%であり、前記ラケットがテニスラケットの場合はフレームの中空部内に配置される前記振動吸収材の重量が4g〜10gであり、前記ラケットがバドミントンラケットの場合はフレームの中空部内に配置される前記振動吸収材の重量が1g〜6gであることを特徴とするラケットである。
本発明のラケットは、打球感が良く、かつ軽量で耐久性の高いテニス、バドミントン用などのラケットである。
図1Aは、本発明のラケットの一例の模式図である。 図1Bは、テニスラケットにおける中空部を示す図である。 図1Cは、バドミントンラケットにおける中空部を示す図である。 図2は、本発明のラケットの振動評価解析の方法を説明する図である。 図3Aは、面外振動評価解析において、テニスラケットをインパクトハンマーで打撃する位置と、テニスラケットに付ける加速度計ピックアップ計の位置を示す図である。 図3Bは、面外振動評価解析において、バドミントンラケットをインパクトハンマーで打撃する位置と、バドミントンラケットに付ける加速度計ピックアップ計の位置を示す図である。 図4Aは、面内振動評価解析において、テニスラケットをインパクトハンマーで打撃する位置と、テニスラケットに付ける加速度計ピックアップ計の位置を示す図である。 図4Bは、面内振動評価解析において、バドミントンラケットをインパクトハンマーで打撃する位置と、バドミントンラケットに付ける加速度計ピックアップ計の位置を示す図である。 図5は、比較例1の面外振動ボード線図を示す。 図6は、実施例1の面外振動ボード線図を示す。 図7は、比較例1の面内振動ボード線図を示す。 図8は、実施例1の面内振動ボード線図を示す。 図9は、比較例2の面外振動ボード線図を示す。 図10は、実施例2の面外振動ボード線図を示す。 図11は、比較例2の面内振動ボード線図を示す。 図12は、実施例2の面内振動ボード線図を示す。 図13Aは、テニスラケットにおける面内1次振動の腹および節の場所を示す図である。 図13Bは、テニスラケットにおける面内2次振動の腹および節の場所を示す図である。
本発明者は前記の問題に対し「打撃時の振動には抑制した方が良い不快な振動と、抑制しないほうが良い振動がある。不快な振動を選択的に除去すれば打球感の良いラケットが得られる」という仮説をたて、その仮説に基づき振動吸収性と打球感について種々検討した結果、新たな知見を見出し、本発明を完成した。
本発明において「打球感が良い」という意味を、「打球時にノイズとなる振動が少なく、ボールがラケット面のどこに当たったか。また、ボールがラケット面にどのように当たったか、つまり、ラケット面にボールが衝突する速度、ラケット面にボールが衝突する角度およびラケット面でボールの潰れる感触をグリップに伝わる振動で感じやすいこと」と定義する。なお、以下において、主にテニスラケットについて説明するが、バドミントンラケットについても、ボールをシャトルと置き換えて同様に理解することができる。
また、グリップに伝わるラケット面にボールが衝突する速度、ラケット面にボールが衝突する角度およびラケット面でボールの潰れる感触を感じるための振動から得られる情報を、「打球情報」と呼ぶ。
打球感が良いラケットは、競技者がショットをコントロールする上で、またプレーの技術を上達させる上で重要である。
本発明者は、競技者が打球感が良いまたは悪いと感じるラケットの統計を取った結果から、打球感については競技者の間で共通のものであることが分かった。この打球感の良いラケットについて、本発明者は、フェイス面の中心付近の数箇所を叩き、振動解析を行った。また、打球感が良いラケットと悪いラケットの振動モード解析結果を比較した。また、エラストマーダンパーを様々な方法で、打球感が良いラケットと悪いラケットに取り付けて、打球感の変化とそのときのモード解析結果を比較した。これらの結果から、「打球感が良い」ラケットにおいて、どの振動モードが打球情報を伝える上で重要であるか、どの振動モードが重要でないかが、以下のように判明した。
<面外1次振動>
ラケットのスウィートスポット付近から割りと大きくボールが離れて衝突したときに、大きな振動の違いが発生するため、大まかなボールの衝突位置を知るために必要な振動である。しかし、通常、この振動は大きいので、多少抑制しても打球情報を失うことは無く、むしろある程度抑制した方が競技者が面外2次振動を感じやすくなり打球感が向上する。また、この振動を抑制することにより、競技者の体への負担も少なくてすむ利点がある。
<面外2次振動>
ラケットのスウィートスポット付近にボールが衝突した時でも、わずかな衝突の仕方の違いで発生する振動の大きさが細かに変化する。どこにどのような角度で衝突したのか、細かい位置情報を知ることができるので、重要な振動である。
<面内1次振動および面内2次振動>
ボールがラケットのスウィートスポット付近のどこに衝突しても、同じような振動が発生するため、打球情報を伝える上であまり重要でない振動である。また、特に軟式テニスラケットおよび硬式テニスラケットにおいては、これらの周波数は、打球情報を伝える上で重要な面外1次振動および面外2次振動の周波数に近く、従って、面内1次振動と面内2次振動は、これらの「ノイズ」として感じる。
上記に基づき、「面外1次振動をある程度抑制し、面外2次振動を出来る限り抑制せず、面内1次振動および面内2次振動を出来る限り抑制する」ことによって、「打球感の良い」ラケットを製造することができることを、本発明者は見出した。
具体的には、「面外1次振動をある程度抑制し、面外2次振動を出来る限り抑制せず、面内1次振動および面内2次振動を出来る限り抑制する」為に、フレームの面内1次振動および面内2次振動の腹に近い場所であり、かつ、面外2次振動の節(もしくは出来る限り節の近く)の場所に、振動吸収材を配置した。さらにフレームの面外1次振動をある程度抑制できる場所に振動吸収材を配置すれば、より好ましい。
硬式テニスラケットおよび軟式テニスラケットにおいて、面内および面外の振動の場所は、フェイス面を時計と見てトップ位置を12時とすると下記の場所である(図13Aおよび図13B参照)。
Figure 0005778506
以上から、中空部を有するフレームを有するラケットにおいて、フェイス面を時計と見てトップ位置を12時とすると、12時、4時および8時の位置の前記中空部内に振動吸収材が配置される本発明のラケットは、面外2次振動を抑制することなく、面外1次振動を抑制し、かつ、面内1次振動および面内2次振動を抑制できる。この4時および8時の位置は、抑制したい面内1次振動の腹に相当し、抑制したくない面外2次振動の節に相当する。12時の位置は、抑制したい面内2次振動の腹に相当する。その結果、打撃時に生じる不快な振動は軽減し、打球情報として有用な振動は残すことにより、打球感がよいという効果を奏する。また、本発明のラケットにおいては、振動吸収材はフレームの必要な箇所にのみ部分的に配置される。従って、振動吸収材が配置されていない中空部を有するフレームを有するラケットと比べて重量の増加は僅かである。さらに、本発明のラケットにおいては、振動吸収材はフレームの必要な箇所の中空部内にのみ配置される。従って、本発明のラケットは、振動吸収材が配置されていない中空部を有するフレームを有するラケットと比べて、空気抵抗の増加は無い。よって、本発明のラケットは、フレーム全体に振動吸収材が配置されているラケットと比べて、フレーム自体の材料の量を減らす必要が低く、その結果、フレーム強度の低下が小さくて済む。また、本発明のラケットは、振動吸収材が全く挿入されていないラケットに比べて、競技者が受ける振動に起因する負担は低下する。
さらに、前記振動吸収材は、フェイス面を時計と見てトップ位置を12時とすると、3時および9時の位置の前記中空部内には配置されないのが好ましい。この3時および9時の位置は、振動抑制をしたくない面外2次振動の腹に相当し、この位置に振動吸収材を配置すると、重要な打球情報となる面外2次振動を抑制してしまうためである。
また、前記振動吸収材は、さらに2時および10時の位置の前記中空部内に配置してもよい。このように12時、4時、8時、2時および10時の位置の前記中空部内に配置する場合、さらに面内1次振動を抑制することができる。
本発明のラケットは、テニスラケット(硬式もしくは軟式)またはバドミントンラケットであってもよい。
本発明のラケットにおいて、前記振動吸収材は、発泡樹脂または合成ゴムであるのが好ましい。前記発泡樹脂であれば、重量が軽く、その結果、本発明のラケットの重量増加が抑制できるからである。また、発泡樹脂であれば、フレームの中空部に配置するのが容易だからである。前記発泡樹脂の原料樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンおよびポリエステルからなる群から選択される一種以上の樹脂であるのが好ましい。前記発泡樹脂の原料樹脂は、フレームの材料との接着性が良く、かつ、樹脂の硬さを広い範囲で変更することができるため、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)およびポリウレタンがより好ましい。これらの原料樹脂は、抑制したい振動の種類、ラケットの種類、ラケットの形状により適宜、好適に選択することができる。なお、振動吸収材が発泡樹脂の場合、中空部内に配置された発泡樹脂の比重は、例えば0.1〜1.0である。この比重は、以下の式より求めることができる。
Figure 0005778506
本発明のラケットにおいて、前記振動吸収材が配置される部分の長さ合計は、フレームの中空部を有する長さの5〜40%であるのが好ましい。この割合が5%以上であると、所望の振動抑制効果が充分に得られるからである。また、この割合が40%以下であると、抑制したくない面外2次振動を抑制せずに、所望の振動抑制効果が得られ、かつ、ラケット全体の重量増加が顕著ではないからである。具体的には、本発明のラケットがテニスラケットの場合、前記振動吸収材が配置される部分の長さ合計は、フレームの中空部を有する長さの10〜35%であるのがより好ましい。本発明のラケットがバドミントンラケットの場合、前記振動吸収材が配置される部分の長さ合計は、フレームの中空部を有する長さの15〜35%であるのがより好ましい。なお、フレームの中空部を有する長さは、テニスラケットの場合、フェイス部、シャフト部およびグリップ部の合計からヨーク部分を除いた長さであり(図1B中、斜線部分が中空部である)、バドミントンラケットの場合は、フェイス部全体の長さを意味する(図1C中、斜線部分が中空部である)。
なお、本発明のラケットにおいて、所定の位置において、フレームの中空部の断面全体の50%以上、好ましくは100%に振動吸収材が配置されるのが好ましい。断面積全体の50%以上に振動吸収材が配置されれば、振動抑制効果が充分に得られ、かつ、配置された位置から剥がれにくいためである。
本発明のラケットにおいて、振動吸収材の量と位置は、フレームのバランスの点で左右均等であるのが好ましい。例えば、12時の位置に配置される振動吸収材の配置位置の中心は、12時地点になるのが好ましい。4時および8時の位置に配置される振動吸収材の配置位置の中心については、3時および9時の位置付近は振動吸収材が配置されない方が好ましい観点から、振動吸収材の配置位置の中心は、4時の場合は5時側、9時の場合は8時側に多少シフトしても、フレーム全体として左右均等であれば差し支えない。
振動吸収材の量としては、テニスラケットの場合は、好ましくは4〜15g、より好ましくは5〜10gである。振動吸収材の量が4g未満の場合、打球感の改善効果が低く、15gを超えると打球情報を得にくいためである。また、振動吸収材の量は、バドミントンラケットの場合は、好ましくは1〜6g、より好ましくは2〜4gである。振動吸収材の量が1g未満の場合、打球感の改善効果が低く、6gを超えると打球情報を得にくいためである。
本発明のラケットのフレームは、例えば、繊維強化樹脂から形成される。具体的には、本発明のラケットの中空部を有するフレームは、繊維強化プリプレグの積層体を中空パイプ状としたものから形成されたものが好ましく用いられる。また本発明のラケットにおける中空部を有するフレームは、他の公知の方法によって製造されたものも用いられる。前記繊維強化樹脂の繊維としては、炭素(カーボン)繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維、ポリアリレート繊維などが挙げられる。軽量で高強度であることから、前記繊維強化樹脂の繊維としては、炭素繊維が好ましく用いられる。前記繊維強化樹脂の樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、熱硬化型のエポキシ系樹脂が好ましい。また、繊維強化樹脂の形状や配列については、特に限定は無い。
図1Aに、本発明のラケット(テニスラケット)の一例の模式図を示す。図1Aにおいて、101はフェイス、102はシャフト、103はヨーク、104はグリップを指す。図1Aにおいて、フレームのトップ部分を12時として、1から12までの数字は1時から12時の位置を示す。図1Aにおいて、本発明のラケットは、12時、4時および8時の位置の中空部内に発泡樹脂A1、A2およびA3が、配置されているが、他の部分は配置されていない(中空のまま)。なお、図1において、フレームの中空部とは、フェイス101、シャフト102およびグリップ104の合計からヨーク103を除いた部分である。
本発明のラケットは、例えば、以下のようにして製造することができる。
<テニスラケットの場合>
まず長さが短いナイロンチューブを用意し、その内部に発泡樹脂の原料樹脂(振動吸収材が発泡樹脂の場合)を挿入する。その後、ナイロンチューブの端を閉じて、発泡樹脂の原料樹脂が封入されたナイロンチューブを得る。通常用いられるカーボンラケットの製造方法の途中において、カーボンプリプレグシートのレイアップ時に、加圧ナイロンチューブの外側に前記発泡樹脂の原料樹脂が封入されたナイロンチューブを所定の位置に両面テープで貼り付ける。その後、通常のとおりレイアップし、ラケット金型にはめ込み、加熱および加圧する。この際、原料樹脂の発泡温度を考慮し、発泡が比較的ゆっくり進行する加熱温度および圧力条件を選択する。加熱および加圧により成形された中空フレームの所定の位置には、原料樹脂が発泡して、発泡樹脂(振動吸収材)が形成し、本発明のラケットを得ることができる。
または、通常の方法により中空部を有するフレームを有するラケットを作成し、中空部の開口部またはグロメット孔から、所定の位置に発泡樹脂の原料樹脂を所望の量注入し、その後、加熱して原料樹脂を発泡させて発泡樹脂(振動吸収材)が形成し、本発明のラケットを得ることもできる。
<バドミントンの場合>
発泡樹脂の原料樹脂のシートを複数枚、用意する。通常用いられるカーボンラケットの製造方法の途中において、カーボンプリプレグシートのレイアップ時に、加圧ナイロンチューブの外側に前記原料樹脂のシートを所定の位置に両面テープで貼り付ける。その後、通常のとおりレイアップし、ラケット金型にはめ込み、加熱および加圧する。この際、原料樹脂の発泡温度を考慮し、発泡が比較的ゆっくり進行する加熱温度および圧力条件を選択する。加熱および加圧により成形された中空フレームの所定の位置には、原料樹脂が発泡して、発泡樹脂(振動吸収材)が形成し、本発明のラケットを得ることができる。
なお、いずれの場合も、中空部内で原料樹脂は発泡する。中空部内における発泡は、開放された場所における発泡と比較して、抑制される傾向にある。従って、本発明のラケットを製造する際、原料樹脂の量と発泡樹脂の比重を充分に検討するのが好ましい。
また、本発明のラケットにおいては、12時、4時および8時の位置に振動吸収材が配置されるが、振動吸収材が発泡樹脂の場合、例えば12時の位置には加圧ナイロンチューブの外側に発泡樹脂の原料のシートを貼り付け、4時および8時の位置には、加圧ナイロンチューブの外側に発泡樹脂の原料樹脂が封入されたナイロンチューブなど、各位置において、異なる発泡樹脂の原料の配置を行ってもよい。
以下、実施例に基いて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
テニスラケット(フェイス面積97インチ2)に粉末状発泡EVAを12時、4時および8時の位置に配置する例。(加圧用ナイロンチューブを取り除かない場合)
まず、長さ8cmのナイロンチューブを3本用意した。そのナイロンチューブの内部に、粉末状のEVAを注射器で量(2g)を測って挿入した。そのナイロンチューブの端を閉じて、発泡樹脂の原料樹脂が封入されたナイロンチューブを得た。
通常用いられるカーボンラケットの製造途中において、カーボンプリプレグシートのレイアップ時に、加圧用ナイロンチューブの外側に前記発泡樹脂の原料樹脂が封入されたナイロンチューブを薄い両面テープで貼り付けた。具体的には、ラケットフェイスのトップ(12時)から、フェイスに沿って35cmのところ(4時および8時の位置)が中心となるように、前記発泡樹脂の原料樹脂が封入されたナイロンチューブを両面テープでカーボンプリプレグに貼り付けた。また、フェイストップ(12時の位置)が中心となるように前記発泡樹脂の原料樹脂が封入されたナイロンチューブを薄い両面テープで貼り付けた。
その後、通常通りレイアップし、ラケット金型に填め込み、160℃および6kgf/cm2で15分以上加熱および加圧して、12時、4時および8時の位置における中空部内に発泡樹脂が配置された、中空部を有する炭素繊維強化エポキシ樹脂製フレームを有するテニスラケットを得た。中空部内に配置された発泡樹脂の比重は、0.16であった。フレームの12時の位置に配置された発泡樹脂の長さは8.0cm、4時の位置に配置された発泡樹脂の長さは8.0cm、8時の位置に配置された発泡樹脂の長さは8.0cmであり、振動吸収材が配置される部分の長さ合計は、フレームの中空部を有する長さ(フェイス部、シャフト部およびグリップ部の合計からヨーク部分を除いた長さ)の15.4%であった。また、フレームの12時の位置に配置された発泡樹脂は、中空部の断面全体の100%、4時の位置に配置された発泡樹脂は、中空部の断面全体の100%、8時の位置に配置された発泡樹脂は、中空部の断面全体の100%を占めていた。また、フレームの12時の位置に配置された発泡樹脂は、ほぼ12時の地点を中心に配置され、4時の位置に配置された発泡樹脂は、ほぼ4時の地点を中心に配置され、8時の位置に配置された発泡樹脂は、ほぼ8時の地点を中心に配置されていた。従って、フレーム全体として発泡樹脂は、12時の位置を中心に左右ほぼ均等に配置されていた。さらに、フレームの3時および9時の位置には発泡樹脂は配置されていなかった。通常のカーボンラケット製造において、加熱および加圧は徐々に温度、圧力を上げていき、最終的には、160℃および6kgf/cm2を15分以上続けるが、ここで用いるEVAは160℃および6kgf/cm2の付近で比較的ゆっくりと発泡が完了するものであった。このような加熱および加圧を行うことにより、ラケットの先端部まで圧力が充分に行き届いてラケットの成形が完全に行われ、かつ、EVAの発泡を充分に完了させることができた。
<比較例1>
発泡樹脂の原料樹脂が封入されたナイロンチューブの貼り付けを行わない以外は、実施例1と同様にして、中空部内に発泡樹脂が配置されていない、中空部を有するフレームを有するテニスラケットを得た。なお、比較例1のテニスラケットは、実施例1のテニスラケットと重量およびバランスポイントが一致するようにレイアップを調整した。
バドミントンラケット(フェイス面積56インチ2)にシート状EVAを12時、4時および8時の位置に配置する例。
まず、長さ60mm、幅16mm、厚さ1mmのEVAシートを6枚用意した(合計:
3.6g)。
通常用いられるカーボンラケットの製造途中において、カーボンプリプレグシートのレイアップ時に、加圧用ナイロンチューブの外側の所定の位置に前記EVAシートを貼り付けた。ラケットフェイスのトップ(12時)から、フェイスに沿って25cmのところ(4時および8時の位置)が中心となるように、前記EVAシートを2枚に重ねて薄い両面テープでカーボンプリプレグに貼り付けた。また、フェイストップ(12時)が中心となるように前記EVAシートを2枚に重ねてカーボンプリプレグに薄い両面テープで貼り付けた。
その後、通常通りレイアップし、ラケット金型に填め込み、160℃および6kgf/cm2で15分以上加熱および加圧して、12時、4時および8時の位置における中空部内に発泡樹脂が配置された、中空部を有する炭素繊維強化エポキシ樹脂製フレームを有するバドミントンラケットを得た。中空部内に配置された発泡樹脂の比重は、1.0であった。フレームの12時の位置に配置された発泡樹脂の長さは6.0cm、4時の位置に配置された発泡樹脂の長さは6.0cm、8時の位置に配置された発泡樹脂の長さは6.0cmであり、振動吸収材が配置される部分の長さ合計は、フレームの中空部を有する長さの(フェイス部全体の長さ)26.0%であった。また、フレームの12時の位置に配置された発泡樹脂は、中空部の断面全体の100%、4時の位置に配置された発泡樹脂は、中空部の断面全体の100%、8時の位置に配置された発泡樹脂は、中空部の断面全体の100%を占めていた。また、フレームの12時の位置に配置された発泡樹脂は、ほぼ12時の地点を中心に配置され、4時の位置に配置された発泡樹脂は、ほぼ4時の地点を中心に配置され、8時の位置に配置された発泡樹脂は、ほぼ8時の地点を中心に配置されていた。従って、フレーム全体として発泡樹脂は、12時の位置を中心に左右ほぼ均等に配置されていた。さらに、フレームの3時および9時の位置には発泡樹脂は配置されていなかった。通常のカーボンラケット製造において、加熱および加圧は最終的には、160℃および6kgf/cm2を15分以上続けるが、ここで用いるEVAは160℃および6kgf/cm2で比較的ゆっくりと発泡が完了するものであった。このような加熱および加圧を行うことにより、ラケットの先端部まで圧力が充分に行き届いてラケットの成形が完全に行われ、かつ、EVAの発泡を充分に完了させることができた。
<比較例2>
EVAシートの貼り付けを行わない以外は、実施例2と同様にして、中空部内に発泡樹脂が配置されていない、中空部を有するフレームを有するバドミントンラケットを得た。なお、比較例2のテニスラケットは、実施例2のテニスラケットと重量およびバランスポイントが一致するようにレイアップを調整した。
実施例1および2ならびに比較例1および2において得られたラケットの振動評価を解析した。その振動解析評価は、以下のようにして行った。
<振動評価解析>
各実施例と比較例のラケットにガットを張り上げ、そのラケットのグリップ部を紐で吊り下げた(図2参照)。図2において、1はラケットを、2はインパクトハンマーを、3はアンプを、4はFFT(高速フーリエ変換)アナライザを意味する。
(面外振動のボード線図の測定)
テニスラケットにおいては図3A中に示す加速度センサ取り付け位置1、バドミントンラケットにおいては図3B中に示す加速度センサ取り付け位置1に加速度ピックアップをラケット面に垂直に取り付け、インパクトハンマー2でラケット面(打撃箇所1)に垂直に加振した。インパクトハンマーに取り付けられているフォースピックアップ計で計測した応答関数と、加速度計ピックアップ計で計測した応答関数をそれぞれアンプ3を介してFFTアナライザ4に入力して解析した。それぞれの実施例と比較例のラケットにおいて、各5回加振し平均した結果を解析し、ボード線図を作成した。得られた比較例1の面外振動ボード線図を図5に、実施例1の面外振動ボード線図を図6に、比較例2の面外振動ボード線図を図9に、実施例2の面外振動ボード線図を図10に示す。各図において、縦軸はコンプライアンス[m/N]を、横軸は振動数[Hz]を示す。
(面内振動のボード線図の測定)
テニスラケットにおいては図4A中に示す加速度センサ取り付け位置2、バドミントンラケットにおいては図4B中に示す加速度センサ取り付け位置2に加速度ピックアップをラケット面に平行に取り付け、インパクトハンマー2でラケット面に平行に加振した(打撃箇所2)。インパクトハンマーに取り付けられているフォースピックアップ計で計測した応答関数と、加速度計ピックアップ計で計測した応答関数をそれぞれアンプ3を介してFFT(高速フーリエ変換)アナライザ4に入力して解析した。それぞれの実施例と比較例のラケットにおいて、各5回加振し平均した結果を解析し、ボード線図を作成した。得られた比較例1の面内振動ボード線図を図7に、実施例1の面内振動ボード線図を図8に、比較例2の面内振動ボード線図を図11に、実施例2の面内振動ボード線図を図12に示す。各図において、縦軸はコンプライアンス[m/N]を、横軸は振動数[Hz]を示す。
面外1次振動について実施例1(図6)と比較例1(図5)を比べると、振幅はほとんど変化無いが、山の傾斜がやや緩やかになり減衰率が上がっていることが分かる。面外2次振動について実施例1(図6)と比較例1(図5)を比べると、振幅がやや小さくなり、減衰率はほとんど変化していないことが分かる。
面内1次振動を実施例1(図8)と比較例1(図7)を比べると、振幅が小さくなり、また山の傾斜が緩やかになり減衰率が大きくなっていることが分かる。面内2次振動について実施例1(図8)と比較例1(図7)を比べると、振幅が小さくなり、減衰率が大きくなっていることが分かる。
以上の結果から、比較例のラケットと比べて、本発明のラケットにおいては、面外振動を抑えすぎることなく、面内振動を強く抑えられていることが分かる。
面外1次振動について実施例2(図10)と比較例2(図9)を比べると、振幅および減衰率共にほとんど変化がないことが分かる。面外2次振動について実施例2(図10)と比較例2(図9)を比べると、振幅、減衰率共にほとんど変化がないことが分かる。
面内1次振動について実施例2(図12)と比較例2(図11)を比べると、振幅がとても小さくなり、また山の傾斜が緩やかになり減衰率が大きくなっていることが分かる。すなわち、面内1次振動はとても強く抑えられている。面内2次振動について実施例2(図12)と比較例2(図11)を比べると、振幅が小さくなり、減衰率が大きくなっていることが分かる。
以上の結果から、比較例のラケットと比べて、本発明のラケットにおいては、面外振動を抑えすぎることなく、面内振動を強く抑えられていることが分かる。
前記のようにして得られた、実施例1および2ならびに比較例1および2のラケットの振動評価および基本スペックを表2に示す。
Figure 0005778506
実施例1および2ならびに比較例1および2において得られたラケットの試打評価を解析した。その試打評価は、以下のようにして行った。
<試打評価解析>
(テニスラケットの試打評価)
実施例1および比較例1において得られたテニスラケットに、ポリエステルストリング(商品名「ポリブレイク17」、株式会社ゴーセン製)を45lbs(20.412kg)で張った。このテニスラケットを黒塗りの塗装にし、ラケットの構造の相違については言及せずに、5人に試打してもらった。具体的には、試打は、実施例1のテニスラケットと比較例1のテニスラケットとを交互に持ち替えて、ラリーを続けながら打球感の相違を確認してもらった。試打評価は打球感について、すなわち、「どちらのラケットがボール打撃の感触を感じやすいか?」についての評価である。なお、フレーム全体の中空部にポリウレタン樹脂を配置した別のラケットについても、試打評価を行った。得られた結果を表3に示す。
Figure 0005778506
<試打評価解析>
(バドミントンラケットの試打評価)
実施例2および比較例2において得られたバドミントンラケットに、ナイロンストリングス(商品名「R4X TSUYOSHI」、株式会社ゴーセン製)を27lbs(12.247kg)で張った。このバドミントンラケットを黒塗りの塗装にし、ラケットの構造の相違については言及せずに、38人に試打してもらった。具体的には、試打は、実施例2のバドミントンラケットと比較例2のバドミントンラケットとを交互に持ち替えて、クリアー、スマッシュ、ドライブなどの基礎練習ならびに試合形式を続けながら打球感の相違を確認してもらった。試打評価は打球感について、すなわち、「どちらのラケットがシャトル打撃の感触を感じやすいか?」についての評価である。
試打者38人中、34人は、比較例2のラケットと比較して実施例2のラケットのほうが打球感が良いと感じた。残り4人は、いずれのラケットも相違を感じなかった。また、実施例2のラケットについては、比較例2のラケットよりシャトル打撃の感触を感じやすい、シャトルの重みを感じやすい、スマッシュ時に予想よりシャトルが沈む感じを受ける等の意見もあった。
本発明のラケットは、レベルの高い競技者用としても有用である。また、本発明のラケットを用いることによりプレー技術を向上する上で必要な打球情報を得やすく、競技者への振動の負担が少ないため、子供、女性など入門者にも有用である。
101 フェイス
102 シャフト
103 ヨーク
104 グリップ
1 ラケット
2 インパクトハンマー
3 アンプ
4 FFTアナライザ

Claims (3)

  1. 中空部を有するフレームを有するラケットにおいて、フェイス面を時計と見てトップ位置を12時とすると、12時、4時および8時の位置の前記中空部内に発泡樹脂からなる振動吸収材が配置され、3時および9時の位置の前記中空部内には配置されず、
    前記振動吸収材が配置される部分の長さ合計はフレームの中空部を有する長さの10〜35%であり、
    前記ラケットがテニスラケットの場合はフレームの中空部内に配置される前記振動吸収材の重量が4g〜10gであり、
    前記ラケットがバドミントンラケットの場合はフレームの中空部内に配置される前記振動吸収材の重量が1g〜6gである
    ことを特徴とするラケット。
  2. 前記振動吸収材が、さらに2時および10時の位置の前記中空部内に配置される請求項1に記載のラケット。
  3. 前記発泡樹脂の樹脂成分が、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンおよびポリエステルからなる群から選択される一種以上の樹脂である請求項1又は2に記載のラケット。
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