JP5928419B2 - 遮熱膜とその形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム系の部材の壁面に形成される遮熱膜とその形成方法に係り、たとえば内燃機関の燃焼室に臨む壁面の一部もしくは全部に形成される遮熱膜とその形成方法に関するものである。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関は、主にエンジンブロックとシリンダヘッドから構成されており、その燃焼室は、シリンダブロックのボア面と、このボアに組み込まれたピストン頂面と、シリンダヘッドの底面と、シリンダヘッド内に配設された吸入および排気バルブの頂面から画成されている。昨今の内燃機関に要求される高出力化にともなってその冷却損失を低減することが重要になってくるが、この冷却損失を低減する方策の一つとして、燃焼室の内壁にセラミックスからなる遮熱膜を形成する方法を挙げることができる。
しかし、上記するセラミックスは一般に低い熱伝導率を有し、かつ高い熱容量を有することから、定常的な表面温度上昇による吸気効率の低下やノッキング(燃焼室内に熱が篭ることに起因する異常燃焼)が発生するために燃焼室の内壁への被膜素材として普及していないのが現状である。
このことから、燃焼室の壁面に形成される遮熱膜は、耐熱性と断熱性は勿論のこと、低熱伝導率と低熱容量の素材から形成されるのが望ましい。さらに、この低熱伝導率および低熱容量であることに加えて、燃焼室内での燃焼時の爆発圧や噴射圧、熱膨張と熱収縮の繰り返しに追随できる変形性能を有する被膜であること、およびシリンダブロック等の母材との間で熱変形量に起因する界面剥離の生じ難い被膜であることが望ましい。
ここで、従来の公開技術に目を転じるに、特許文献1,2には、内燃機関の燃焼室を形成する母材よりも低い熱伝導率を有し、かつ母材と同等もしくは母材よりも低い熱容量を有する材料の内部に気泡が形成された断熱用薄膜を有する内燃機関が開示されている。
このように、特許文献1,2には内燃機関の燃焼室の内壁に低熱伝導率で低熱容量の被膜を形成する技術が開示されており、上記するように性能に優れた断熱膜(遮熱膜)となり得る。
しかし、これらの断熱膜構造は、セラミックス等からなる断熱材の内部に気泡が形成されたものであることから、断熱膜に良好な変形性能を期待し難い。そのため、この断熱膜が燃焼室内での熱膨張と熱収縮の繰り返し応力を受ける過程で熱疲労による損傷が齎され、さらには、アルミ母材の基材との間で熱変形差が大きくなり易く、断熱膜と基材の界面で剥離が生じ易いという課題が生じ得る。
特開2009−243355号公報 特開2010−185291号公報
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、低熱伝導率かつ低熱容量であって、しかも、熱膨張と熱収縮の繰り返しに追随できる変形性能を有するとともに、シリンダブロック等のアルミニウム系の部材の壁面との間で熱変形差に起因する界面剥離の生じ難い遮熱膜と、この遮熱膜を壁面に形成する方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による遮熱膜は、アルミニウム系の部材の壁面に形成される遮熱膜であって、前記遮熱膜は前記壁面に拡散接合しており、前記遮熱膜は、常温〜200℃の温度範囲における線膨張係数が15〜25×10-6/Kで、ホーロー材からなるマトリックス層と、該マトリックス層内に分散されている中空粒子とからなるものである。
本発明の遮熱膜が形成される壁面の部材はアルミニウムやその合金からなり、この壁面用途としては、内燃機関の燃焼室に臨む壁面のほか(この場合、部材は燃焼室を構成するピストンやシリンダヘッドなどとなり、壁面は、ピストンの頂面やシリンダヘッドの底面となる)、車両の吸排気ラインを構成する壁面、タービンブレードを構成する壁面、内燃機関や家屋、スペースシャトル等を収容するハウジングの外壁など、低熱伝導率と低熱容量が要求される様々な用途壁面を挙げることができる。そして、この遮熱膜が内燃機関に適用される場合において、この内燃機関はガソリンエンジンやディーゼルエンジンのいずれを対象としたものであってもよい。
本発明の遮熱膜は、そのマトリックス層にホーロー材を適用したものであり、より具体的には、常温〜200℃の温度範囲における線膨張係数が15〜25×10-6/Kのホーロー材から形成されている。さらに、このマトリックス層内には中空粒子が分散しており、マトリックス層と中空粒子から遮熱膜が構成されている。そして、この遮熱膜はアルミニウム系の部材の壁面に拡散接合している。
ここで、「常温」とは、15〜25℃程度の温度を意味している。
このように、遮熱膜がアルミニウム系の部材の壁面に拡散接合していることで双方の界面の接合強度が高くなる。また、遮熱膜は常温〜200℃の温度範囲における線膨張係数が15〜25×10-6/Kのホーロー材で形成されていることから、アルミニウム系の部材(合金種にもよるが、線膨張係数が19〜23×10-6/K)とほぼ同等の線膨張係数となっており、したがって双方の熱変形差はほとんど生じない。このように、遮熱膜とアルミニウム系の部材の壁面との接合強度が拡散接合によって高いことと、遮熱膜と部材の熱変形差がほとんどないことが相俟って界面剥離防止効果が高くなる。
本発明者等の検証により、アルミニウム系の壁面に形成される遮熱膜を構成するホーロー材の材料として、バナジウム系のガラスフリットと釉薬を混合した材料が好適であることが特定されている。
また、本発明による遮熱膜の好ましい実施の形態として、前記ホーロー材のガラス転移温度が400℃以下であり、耐熱温度が450℃以上の形態を挙げることができる。
ここで、遮熱膜によるスイング効果について説明する。
内燃機関のシリンダ内における熱損失Q(W)に関し、シリンダ内の圧力やガス流に起因する熱伝達係数h(W/(m2K))、シリンダ内の表面積A(m2)、シリンダ内のガス温度Tg(K)、およびシリンダ内に面する壁面の温度Twall(K)を用いて、(式1)Q=A×h×(Tg−Twall)と表すことができる。内燃機関のサイクルにおいては、シリンダ内ガス温度Tgが時々刻々変化するが、壁面温度Twallをシリンダ内ガス温度Tgに追従させるように時々刻々変化させることにより、式1における(Tg−Twall)の値を小さくすることができ、熱損失Qを低減することができる。
ここで、燃焼室壁面温度Twallの変動幅をスイング幅と称し、シリンダ内のガス温度に対する燃焼室壁面の温度追随性をスイング特性、スイング効果などと称することができる。温度追随性が良好であれば壁温とシリンダガス温度の温度差が小さくなり、熱損失を低減することができ、燃費の改善を図ることができる。スイング幅が大きい程、燃費改善効果が大きくなるが、このスイング幅を大きくするには遮熱膜の熱物性を低熱伝導で低体積比熱のものにする必要がある。
遮熱膜のスイング効果に関し、遮熱膜内にはスイング幅(250〜500℃)に応じた温度勾配が生じ、従来の遮熱膜のようにヤング率の大きなセラミックス素材(たとえばアルミナのヤング率は360GPa)の遮熱膜では遮熱膜内の応力が大きくなり、膜内破壊が生じる可能性がある。
燃費性能を示すスイング幅に関する閾値(目標値)として、250℃を規定することができる。たとえばスイング幅を250℃とした場合に、この250℃が壁面と遮熱膜の表面の間の温度差(もしくは温度勾配)となる。そして、エンジン始動時に壁面の温度を200℃程度まで上昇することから、壁面の温度が200℃とした場合に、遮熱膜の表面温度は200+250=450℃となる。この遮熱膜の表面温度を450℃以下の温度、より好ましくは450℃よりも50℃低い400℃をガラス転移点とするホーロー材を適用することで、エンジン昇温時に遮熱膜が軟化し易くなり、該エンジン昇温時において遮熱膜の膜内に亀裂が生じる等の膜内破壊を抑止することができる。すなわち、上記する250℃の温度勾配に起因して遮熱膜の内外表面に温度ストレスが生じ得るが、遮熱膜が軟化していることでこの温度ストレスに起因する膜内破壊が抑制される。
一方、上記する450℃の温度雰囲気下で遮熱膜の表面が熱変質しないこと(耐熱性)が望ましい。本発明者等の検証によれば、上記するバナジウム系のホーロー材からなる遮熱膜を適用することで、400℃以下のガラス転移温度を有し、かつ450℃程度かそれ以上の耐熱性を有する遮熱膜が形成されることが特定されている。
また、本発明による遮熱膜の好ましい実施の形態として、前記ホーロー材がシリカを含んでおり、前記中空粒子がシリカ系の外殻を有し、その表面に親水基が修飾されている形態を挙げることができる。
遮熱膜の形成に際しては、ガラスフリットと釉薬を混合し、さらに中空粒子を含有させて水で粘度調整を図った材料を壁面にたとえばスプレー塗布等し、加熱してホーロー材を焼成して遮熱膜が形成される。ホーロー材の材料として上記バナジウム系のガラスフリット(酸化バナジウム)を適用した場合、この酸化バナジウムとシリカの混合材料からガラスフリットが形成されている場合やさらに釉薬にシリカを含んでいる場合には、中空粒子がシリカ系の外殻を有していることでホーロー材との密着性が良好となる。さらに、中空粒子の表面に親水基が修飾されていることにより、ホーロー材と中空粒子を水で溶いた際に水中で中空粒子を均一に分散させることができ、結果として形成される遮熱膜内に中空粒子を均一に分散させることができる。なお、「親水基」としてはカルボキシル基が挙げられる。
また、本発明による遮熱膜の他の実施の形態は、該遮熱膜が壁面側の下地層と上層の2層構造であり、下地層は中空粒子を含まないか上層よりも少ない量の中空粒子を含んでいるものである。
遮熱膜を壁面側の下地層と上層の2層構造とし、下地層は中空粒子を含まないか上層よりも少ない量の中空粒子を含んでいる構成としたことにより、次の効果が期待できる。なお、遮熱膜の機能を達成するには可及的に多くの中空粒子を含有させる必要があり、たとえば250℃スイング幅を実現する一つの構成として、遮熱膜の膜厚を100μm程度とし、2層の平均中空粒子含有量を3.5質量%程度にすればよいことが分かっている。たとえば、上層、下地層をそれぞれ50μmの膜厚とし、上層のみに全体の7質量%(遮熱膜全体の平均としては3.5質量%)の中空粒子を含有させる形態などが挙げられる。
一つ目の効果は、下地層が上層よりも焼成可能温度が低くなるため、焼成時の温度を上げていった際に下地層のガラスフリットが先行して溶けて流動を開始する。これは、たとえば中空粒子の存在しない層の焼成可能温度が550℃程度であるのに対して、中空粒子を5〜10質量%含有した層の焼成可能温度は630℃程度であり、中空粒子が含有されている場合は熱が中空粒子に取られて焼成温度が上がることがその理由である。下地層の流動が開始した際に、下地層には中空粒子が含有されていないか、上層よりも少ない量しか含有されていないことからその粘度は低く、たとえば上層に形成された割れ等の細かな隙間に入っていくことができ、結果として割れのない遮熱膜を形成することができる。
また、二つ目の効果は、下地層が中空粒子を含有していない、もしくは少ない量しか含有していないことから、下地層はホーロー材そのものの線膨張係数が16×10-6/Kのものか、これに近い線膨張係数を有するものとなり、したがって、アルミニウム系の部材の壁面と下地層と上層の各線膨張係数の大小関係は、部材>下地層>上層の関係となり、線膨張係数の相違が緩和される(傾斜効果)。このことにより、たとえば630℃程度の焼成時から常温へ温度変化した際の温度差によって生じる界面応力を低減することができ、割れを防止することができる。
また、本発明は遮熱膜の形成方法にも及ぶものであり、この形成方法は、中空粒子とガラスフリットと釉薬を混合した材料をアルミニウム系のプレートの表面に塗布し、加熱してガラスフリットを溶融させ、常温〜200℃の温度範囲における線膨張係数が15〜25×10-6/Kで、ホーロー材からなるマトリックス層と、該マトリックス層内に分散されている中空粒子とからなる遮熱膜をプレートの表面に形成してプレートとその表面の遮熱膜とからなる中間品を製造する第1のステップ、鋳型内に中間品を収容し、中間品のプレート側にアルミニウム系の溶湯を鋳込み、溶湯の硬化体とこの硬化体と一体となっているプレートとからなるアルミニウム系の部材の壁面に遮熱膜を形成する第2のステップからなるものである。
ホーロー材からなる遮熱膜をエンジンヘッド等の部材に成膜する場合、機械加工後の製品に中空粒子とガラスフリットと釉薬が混合した材料を塗布し、加熱して焼成する方法もあるが、成膜温度が650℃程度と高温であることから、全体加熱によって製品への影響が懸念される。そこで、機械加工前の鋳造段階でホーロー材からなる遮熱膜を形成する方法もあるが、本発明者等が検証した結果、遮熱膜中に巨大な気泡が発生し、膜強度の低下要因となることが分かっている。これは、鋳型中に溶湯を流し込むとホーロー材の材料からガスが発生するが、膜が溶湯と鋳型に囲まれているために発生したガスの逃げ場がなく、膜内に留まって巨大な気泡を形成するためである。
そこで、本発明の形成方法では、中空粒子とガラスフリットと釉薬が混合した材料を所望形状のアルミニウム系のプレートの表面に塗布し、加熱してガラスフリットを溶融させ、プレート表面に遮熱膜が形成された中間品を製造し、この中間品を鋳型にセットして溶湯を注入するものである。
溶湯の熱によって中間品のプレートの一部が溶け、この溶けた一部と溶湯がともに硬化して一体となってアルミニウム系の部材を形成する。そして、部材の一方面には既に遮熱膜が形成されていることから、遮熱膜内に巨大な気泡が生じることはない。
また、上記遮熱膜の形成方法において、前記プレートの厚みが1mm〜2mmの範囲となっているのが好ましい。
プレートの厚みが薄過ぎると、溶湯の熱でプレートが破れてしまう惧れがあり、本発明者等の検証によれば、プレートの厚みが1mm未満でその危険性があることが分かっている。
一方、鋳型に注入する溶湯の量は、溶湯の凝固時間の観点から一定量に制限される。すなわち、凝固時間が決まっていることから多量の溶湯を注入した場合には凝固が不十分な部位が生じてしまい、硬化体の品質を損なうことになる。そして、プレートの厚みが厚くなるとプレートに溶湯が接触した際の熱がプレート全体に逃げるためにプレートの表面を十分に溶かすことができなくなる。プレートの厚みが厚くても溶湯の量が多ければプレート表面を十分に溶かすことができるが、既述するように溶湯の量が一定量以下に制限されていることから厚過ぎるプレート表面を十分に溶かすことはできない。このように、鋳型に注入される溶湯の量が制限されていることと、プレートの厚みが厚過ぎる場合にプレート表面が十分に溶融しないことが相俟って、プレートの厚みが厚過ぎる場合にはプレートの表面が十分に溶解しないことに起因して該プレートの表面と溶湯が一体化されてなる硬化体の間に隙間が生じる惧れがある。本発明者等の検証によれば、プレートの厚みが2mmを超える範囲でその危険性があることが分かっている。
以上の検証結果より、厚みが1mm〜2mmの範囲のプレートの表面に予め遮熱膜が形成された中間品を用いて壁面に遮熱膜を形成することにより、遮熱膜と壁面の界面に巨大な気泡を形成することなく、界面強度の高い遮熱膜を具備するアルミニウム製品(エンジン等)を製造することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の遮熱膜によれば、アルミニウム系の部材の壁面に対して、アルミニウムの線膨張係数に近い線膨張係数のホーロー材からなり、中空粒子が分散したマトリックス層からなる遮熱膜が形成されていることにより、低熱伝導で低体積比熱であって、部材と遮熱膜の間の界面剥離防止効果の高い遮熱膜となる。また、本発明の遮熱膜の形成方法によれば、遮熱膜内や遮熱膜と部材の界面に気泡を生じさせることがなく、したがって膜強度と界面強度の高い遮熱膜を形成することができる。
本発明の遮熱膜の実施の形態1をアルミニウム系の部材とともに示した縦断面図である。 スイング幅を説明した図である。 本発明の遮熱膜の実施の形態2をアルミニウム系の部材とともに示した縦断面図である。 本発明の遮熱膜の形成方法の第1のステップを説明したフロー図である。 本発明の遮熱膜の形成方法の第2のステップを説明したフロー図である。 本発明の遮熱膜の形成方法にて形成された遮熱膜を説明した図である。 本発明の遮熱膜が内燃機関の燃焼室に臨む壁面に適用された例を示す縦断面図である。 アルミニウム系のホーロー材からなる遮熱膜、アルミナからなる遮熱膜、アルマイトからなる遮熱膜に関し、遮熱膜とアルミニウム系の部材の界面のせん断応力と遮熱膜内応力の関係を示した図である。 実施例の遮熱膜の熱物性測定結果を示した図である。 実施例の遮熱膜とアルミ系の部材の界面のSEM写真図とEPMAライン分析結果を示した図である。 遮熱膜の形成方法の実施例を説明した図である。 遮熱膜の形成方法の実施例の有効性を確認した実験結果であって、遮熱膜内の気泡の有無を確認した断面写真図である。 遮熱膜の形成方法の実施例の有効性を確認した実験結果であって、遮熱膜の表面の割れの有無を確認した平面写真図である。 プレートの厚みの最適範囲を特定する実験結果を示した図である。
以下、図面を参照して本発明の遮熱膜とその形成方法の実施の形態を説明する。なお、図示する遮熱膜が適用される実施例は内燃機関の燃焼室に臨む壁面であるが、遮熱膜が適用される壁面用途としては、この燃焼室に臨む壁面のほかに、車両の吸排気ラインを構成する壁面、タービンブレードを構成する壁面、内燃機関や家屋、スペースシャトル等を収容するハウジングの外壁など、低熱伝導率と低熱容量が要求される様々な用途の壁面を挙げることができる。
(遮熱膜の実施の形態1)
図1は遮熱膜の実施の形態1を示した縦断面図である。図示する遮熱膜100は、ホーロー材からなるマトリックス層10と、マトリックス層10内に分散されている中空粒子20とから構成されており、マトリックス層10の一部が拡散接合層10’を形成してアルミニウム系の部材Wの壁面に形成される。なお、遮熱膜100の膜厚tは100μm程度である。
遮熱膜100はアルミニウム系の部材Wの壁面に形成されることから、マトリックス層10を形成するホーロー材もアルミニウム系の部材Wと相性の良い素材が適用される。
ここで、このホーロー材は、バナジウム系のガラスフリットと釉薬を混合した材料から形成され、遮熱膜100は、常温〜200℃の温度範囲における線膨張係数が15〜25×10-6/Kであり、アルミニウム系の部材W(合金種にもよるが、線膨張係数が19〜23×10-6/K)とほぼ同等の線膨張係数となっており、したがって双方の熱変形差はほとんど生じない。
このように、遮熱膜100は拡散接合層10’を介して部材Wと接合していること、および遮熱膜100と部材Wの線膨張係数に大きな差異がなく、したがって双方の熱変形差がほとんど生じないことから、遮熱膜100と部材Wの界面における破壊や剥離が抑止される。
遮熱膜100の形成に際しては、バナジウム系(酸化バナジウム)のガラスフリット(シリカを含む)と釉薬(酸化チタンやシリカを含む)を混合し、さらに中空粒子20を含有させて水で粘度調整を図った材料を壁面Wにスプレー塗布し、加熱して材料を焼成してガラスフリットを溶融させ、硬化させることでマトリックス層10内に中空粒子が分散してなる遮熱膜100が形成される。
ここで、中空粒子20はシリカ系の外殻を有しており、シリカを含むホーロー材10との密着性が良好となる。さらに、中空粒子20の表面には親水基(カルボキシル基)が修飾されており、ホーロー材10と中空粒子20を水で溶いた際に水中で中空粒子20を均一に分散させることができ、形成されるマトリックス層10内に中空粒子20が均一に分散した遮熱膜100を形成できる。
さらに、マトリックス層10を形成するホーロー材のガラス転移温度は400℃以下であり、耐熱温度が450℃以上である。
ここで、図2で示すスイング幅の概念図を参照してスイング幅について概説する。燃焼室の壁面をシリンダガス温度に追従させるように変化させることで、壁温とシリンダガス温度の温度差を小さくすることができ、熱損失を低減させて燃費の改善を図ることができる。この燃焼室の壁面温度の変動幅をスイング幅と定義し、このスイング幅が大きい程、燃費改善効果が大きくなる。そしてスイング幅を大きくするには、遮熱膜の熱物性を低熱伝導でかつ低体積比熱のものにする必要がある。
燃費性能を示すスイング幅に関する遮熱膜100の閾値(目標値)として、250℃を規定することができ、このスイング幅である250℃が部材Wの壁面と遮熱膜100の表面(界面と反対側の面)の間の温度差、もしくは温度勾配となる。そして、エンジン始動時に壁面の温度は一般に200℃程度まで上昇することから、壁面の温度が200℃の場合に遮熱膜100の表面温度は200+250=450℃となる。この遮熱膜100の表面温度を450℃以下の温度、より好ましくは450℃よりも50℃低い400℃をガラス転移点とするホーロー材を適用することで、エンジン昇温時に遮熱膜100が軟化し易くなり、エンジン昇温時において遮熱膜100の膜内に亀裂が生じる等の膜内破壊を抑止することができる。すなわち、250℃の温度勾配に起因して遮熱膜100の内外表面に温度ストレスが生じ得るが、遮熱膜100が軟化していることでこの温度ストレスに起因する膜内破壊が抑制される。
また、バナジウム系のホーロー材からなる遮熱膜100は、450℃の温度雰囲気下で遮熱膜の表面が熱変質しないこと(耐熱性)が本発明者等の検証によって特定されており、したがって、上記する遮熱膜100の表面温度450℃の際の耐熱性を有する遮熱膜となっている。
このように、図示する遮熱膜100は、アルミニウム系の部材Wの壁面との界面における界面破壊もしくは界面剥離が抑制され、遮熱膜100内における膜内破壊が抑制され、さらにエンジン駆動時の高温雰囲気下における耐熱性を有する遮熱膜となっている。
(遮熱膜の実施の形態2)
図3は遮熱膜の実施の形態2を示した縦断面図である。図示する遮熱膜100Aは、部材Wの壁面側の拡散接合層10’および下地層10Bと上層10Aの2層構造(拡散接合層10’は下地層10Bに含まれる)であり、下地層10Bは中空粒子を含んでおらず、上層10Aのみが中空粒子20を含んでおり、上層10A、下地層10Bそれぞれの厚みt1、t2はともに50μm程度である。なお、他の実施の形態として、下地層も中空粒子を含むものの、相対的に上層の中空粒子含有量の多い形態が挙げられる。
遮熱膜100Aを壁面側の下地層10Bと上層10Aの2層構造とし、下地層10Bは中空粒子を含まない構成としたことにより、下地層10Bが上層10Aよりも焼成可能温度が低くなるため、焼成時の温度を上げていった際に下地層10Bのガラスフリットが先行して溶けて流動を開始する。これは、たとえば中空粒子20の存在しない層の焼成可能温度が550℃程度であるのに対して、中空粒子20を5〜10質量%含有した層の焼成可能温度は630℃程度であり、中空粒子20が含有されている場合は熱が中空粒子20に取られて焼成温度が上がることがその理由である。下地層10Bの流動が開始した際に、下地層10Bには中空粒子20が含有されていないことからその粘度は低く、たとえば上層10Aに形成された割れ等の細かな隙間に入っていくことができ、結果として割れのない遮熱膜100Aを形成することができる。また、二つ目の効果は、下地層10Bが中空粒子20を含有していないことから、下地層10Bはホーロー材そのものの線膨張係数が16×10-6/Kのものとなり、したがって、アルミニウム系の部材Wの壁面と下地層10Bと上層10Aの各線膨張係数の大小関係は、部材W>下地層10B>上層10Aの関係となり、線膨張係数の相違が緩和される(傾斜効果)。このことにより、たとえば630℃程度の焼成時から常温へ温度変化した際の温度差によって生じる界面応力を低減することができ、割れを防止することができる。
(遮熱膜の形成方法の実施の形態)
既述する遮熱膜の実施の形態1において、一般的な遮熱膜の形成方法を概説した。ここでは、形成方法自体に特徴のある遮熱膜の形成方法を説明する。すなわち、この形成方法は、機械加工前の鋳造段階でホーロー材からなる遮熱膜を形成する際に、遮熱膜中に巨大な気泡が発生し、膜強度の低下要因となるといった課題を解消することのできる形成方法である。
図4〜6はその順で遮熱膜の形成方法のフロー図となっており、より詳細には、図4は形成方法の第1のステップを説明した図であり、図5は形成方法の第2のステップを説明した図であり、図6はこの形成方法で形成された遮熱膜を示した図である。
まず、図4で示すように、中空粒子20とガラスフリットと釉薬を混合した材料をアルミニウム系のプレート30の表面に塗布し、加熱してガラスフリットを溶融させ、常温〜200℃の温度範囲における線膨張係数が15〜25×10-6/Kで、ホーロー材からなるマトリックス層10と、マトリックス層10内に分散されている中空粒子20とからなる遮熱膜100をプレート30の表面に形成してプレート30とその表面の遮熱膜100とからなる中間品200を製造する(第1のステップ)。
次に、図5で示すように、鋳型MのキャビティC内に中間品200をプレート30がキャビティCの空間に臨むようにして収容し、注入孔Hを介してアルミニウム系の溶湯YをキャビティC内に鋳込む。
溶湯Yによってプレート30の表面が溶け、溶湯Yがプレート30の溶けた表面と一体となって硬化し、図6で示すように、溶湯の硬化体とプレートからなる部材300の表面に遮熱膜100が形成された部材が製造される(第2のステップ)。
図示する形成方法によれば、溶湯の熱によって中間品200のプレート30の一部が溶け、この溶けた一部と溶湯がともに硬化して一体となってアルミニウム系の部材300を形成する。そして、部材300の一方面には既に遮熱膜100が形成されていることから、部材の壁面に直接遮熱膜を形成する際に遮熱膜内に巨大な気泡が生じるといった課題は生じ得ない。
(遮熱膜の内燃機関への適用例)
図7は、本発明の遮熱膜が内燃機関の燃焼室に臨む壁面に適用された例を示す縦断面図である。
図示する内燃機関Enはガソリンエンジンをその対象としたものであり、その内部に不図示の冷却水ジャケットが形成されたシリンダブロックCBと、シリンダブロックCB上に配設されたシリンダヘッドCHと、シリンダヘッドCH内に画成された吸気ポートMaと排気ポートMbにそれぞれ配設された吸気バルブVaおよび排気バルブVbと、シリンダヘッドCHの底面CHaの中央位置もしくは略中央位置で燃焼室NSに臨む点火プラグSpと、シリンダブロックCBの下方開口から昇降自在に形成されたピストンPとから大略構成されている。なお、本発明の内燃機関がディーゼルエンジンを対象としたものであってもよいことは勿論のことである。
内燃機関Enを構成する、シリンダブロックCBのボア面Boと、シリンダヘッドCHの底面CHaと、ピストンPの頂面Paから燃焼室NSが画成される。
同図で示す内燃機関Enにおいては、ピストンPの頂面Paと、シリンダヘッドCHの底面CHa、吸気バルブVaおよび排気バルブVbの底面のそれぞれをアルミニウム系の部材としてそれぞれの壁面に本発明の遮熱膜100が形成されている。なお、これらのいずれかにのみ遮熱膜100が形成されている形態や、これらに加えてボア面Boにも遮熱膜100が形成されている形態などであってもよいし、2層構造の遮熱膜100Aが形成されてもよいことは勿論のことである。
遮熱膜100がその内部に多数の中空粒子20を具備することで、低熱伝導率かつ低熱容量を有し、さらに、スイング特性(断熱性能を具備しながらも、燃焼室内のガス温度に被膜の温度が追随する特性)を有する遮熱膜となる。
このように、図示する内燃機関Enは、その構成要素であるピストンPの頂面PaやシリンダヘッドCHの底面CHa等において低熱伝導率かつ低熱容量を有する遮熱膜100を具備することにより、車両の定常走行時において高燃費かつ高効率なエンジン性能に寄与するものとなる。
[本発明の遮熱膜の効果を確認した各種実験とその結果]
本発明者等は、以下の方法で実施例にかかる遮熱膜を作成し、アルミナ素材の遮熱膜やアルマイト素材の遮熱膜(以上比較例)とともに、遮熱膜とアルミニウム系の部材の界面のせん断応力と遮熱膜内応力の関係を検証する実験をおこなった。さらに、実施例の遮熱膜の熱物性を測定し、実施例の遮熱膜とアルミ系の部材の界面のSEM写真を撮像するとともにEPMAライン分析をおこなった。
<実施例の製作方法>
実施例にかかる遮熱膜は図3で示す2層構造のものを製作した。下地層は、ホーロー材として日本フリット製のバナジウム系ホーロー材(フリットと釉薬の混合材)を使用した。ここで、フリットの成分は、V2O5 を5〜10%、TiO2 を10〜20%、SiO2を30〜40%であり、釉薬の成分は、TiO2 を10〜20%、SiO2 を30〜40%であり、これらフリットと釉薬を10:9の割合で水に溶いて混合し、この混合材料をスプレー塗布にてアルミ板(Al-Mg-Si系合金でφ80mm×厚さ2mm)に50μm程度の厚みで吹付けた。
一方、上層は、ホーロー材は下地層と同じ材料を使用し、中空粒子として、グランテックス社製のナノバルーン(親水基にて表面が修飾され、平均粒径100nm)を使用し、ホーロー材に対して中空粒子を7質量%混入させ、水で粘度調整を図った材料を下地層の上からスプレー塗布にて50μm程度の厚みで吹付けた。
その後、100℃の雰囲気下で水を飛ばし、乾燥させた後、電気炉にて630℃で10分加熱し、ホーロー材を溶かして遮熱膜を製作した。
<実施例と比較例の遮熱膜とアルミニウム系の部材の界面のせん断応力と遮熱膜内応力の関係について>
図8に、実施例と比較例の遮熱膜とアルミニウム系の部材の界面のせん断応力と遮熱膜内応力の関係を概算した結果を示す。
同図より、比較例にかかるアルミナやアルマイトからなる遮熱膜に比して実施例にかかるアルミ用ホーロー材からなる遮熱膜を適用した場合は、遮熱膜と部材との界面におけるせん断応力が格段に少なくなり、比較例に比して界面剥離の可能性が格段に低下することが分かる。なお、アルミ用ホーロー材はアルマイトに比してヤング率が高いことから、膜内応力はアルマイトよりも大きくなる結果となっている。
<熱物性測定とその結果>
次に、実施例にかかる遮熱膜の熱物性を測定した。ここで、熱物性の測定方法に関し、密度測定は作成試料の重量と寸法よりアルミ材の重量を差し引いて遮熱膜の密度を測定した。また、熱拡散率測定は、測定法としてレーザフラッシュ法(NETZSCH製LFA457)を適用し、測定用試料はφ10mm、厚さ2mm(上記作成試料より加工切り出し)の寸法を有したものを使用し、測定条件は300K(27℃)とした。また、比熱容量は、測定法としてDSC法(NETZSCH製DSC404C )を適用し、測定用試料は上記作成試料からφ6mm、厚さ1mmサイズに8個切り出し、アルミを塩酸で溶解して遮熱膜のみを取り出し、測定条件は300K(27℃)とした。ここで、熱伝導率は、λ = Cp ・ ρ ・ α(λ:熱伝導率、Cp:比熱容量、ρ:密度、α:熱拡散率)にて計算し、体積比熱は、ρC=ρ・C(ρC:体積比熱、ρ:密度、C:比熱)にて計算している。図9に実施例の遮熱膜の熱物性測定結果を示している。
同図より、実施例は本発明のスイング幅に関する閾値である250℃スイングラインに載っており、目標スイング幅を満足する遮熱膜となっている。
<界面のSEM観察とEPMAライン分析およびその結果>
本発明者等は作成した実施例にかかる試料を断面カットし、断面のSEM写真を撮像するとともにEPMAライン分析をおこなった。その結果を図10に示している。
同図より、遮熱膜とアルミニウム系の部材の界面には拡散接合層が形成されていることが確認された。
<界面破壊の有無を確認した実験とその結果>
本発明者等は、試料に常温−200℃の冷熱サイクルをかけ、界面のSEM写真を撮像するとともに、界面の観察をおこなった。
遮熱膜の端面から遮熱膜−部材界面に破壊箇所があるか否かを観察した結果、クラックは確認されなかった。
<膜内破壊の有無を確認した実験とその結果>
作成した資料の遮熱膜側からYAGレーザ(出力が1.4kW、照射面積がφ57mm)を5秒照射することで表面が500℃、遮熱膜−部材界面が200℃となり、遮熱膜内の温度差が300℃となる状態を繰り返し形成した。
照射された遮熱膜表面を顕微鏡で観察した結果、遮熱膜の表面にクラックは確認されなかった。なお、遮熱膜の表面が最も引き伸ばされることから、遮熱膜の表面にクラックが確認されなかったことをもって、遮熱膜内でクラックが生じていないことが推定できる。
(遮熱膜の形成方法の実施例の有効性を確認した実験とその結果)
本発明者等は、図4〜6で示す遮熱膜の形成方法の有効性を確認する実験をおこなった。この実験では、既述する実施例と同様の素材からなる遮熱膜を同様の素材のアルミ製のプレートに形成した試料を図11で示すように型内に収容し、型内に700℃のアルミの溶湯を充填し、冷却後に離型して試料を取り出した。そして、遮熱膜内の気泡の有無を確認し、さらに遮熱膜の表面の割れの有無を確認した。それらの結果を図12,13に示す。
膜内の気泡の有無の確認に際し、作成した試料を断面カット(直径80mmの部分)し、気泡の有無を顕微鏡で確認したところ、図12で示すように気泡は確認されなかった。
一方、作成した試料の表面を顕微鏡で拡大し、割れの有無を観察したところ、図13で示すように割れは確認されなかった。
(プレートの厚みの最適範囲を特定する実験とその結果)
本発明者等はさらに、上記する本発明の遮熱膜の形成方法で使用するプレートの厚みの最適範囲を特定する実験をおこなった。
アルミ製のプレートの厚みを種々変化させ、作成した試料を断面カット(直径80mmの部分)し、プレートと鋳込んだアルミの硬化体の界面に隙間があるか否かを顕微鏡で拡大し、観察した。
図14で示すように、厚さ0.5mmのプレートを使用した場合はプレートが膜やぶれを起こし、また、厚さ2.5mm以上のプレートを使用した場合は界面に隙間が観察された。一方、厚さ1〜2mmのプレートを使用した場合は、膜やぶれは生じず、界面に隙間は観察されなかった。この結果より、予め中間品を製作しておく本発明の遮熱膜の形成方法を適用する際に使用されるプレートの厚みは1〜2mmの範囲が最適であることが分かった。
(ホーロー材の材料選定についての検証実験とその結果)
本発明者等は、アルミニウム系の部材の表面に形成するホーロー材からなる遮熱膜の好適な材料を選定するべく、以下の表1で示す4種の材料を取り上げ、検証実験をおこなった。
Figure 0005928419
ビスマス系ガラス材料(シリカ系空孔材入り)は、空孔材(材質:シリカ)を混ぜると膜が脆くなり、脱落してしまう。空孔材との相性が悪くガラス材料と空孔材が密着していないためであり、空孔材の表面修飾を親水基だけでなく、メチル基修飾でも試作したが、同様の傾向であった。ここで、メチル基修飾した理由は、ビスマス系は材料塗布時に水で溶く方式ではなく、有機溶剤(ターピネオール)で希釈しており、分散性とガラス材料との相性を勘案したためである。
また、リン酸系ガラス材料(シリカ系空孔材入り)は、空孔材(材質:シリカ)を混ぜると、焼成温度が上昇してガラスが変質してしまう。これは、空孔材入りの焼成温度600℃(空孔材なしの場合は550℃)が耐熱温度600℃を超えたためである。
さらに、シリカ系ガラス材料(シリカ系空孔材あり)に関しては、既述する冷熱試験で界面クラックが発生した。これは、アルミとの間に熱応力が発生したためである。さらに、既述するYAGレーザ照射試験で表面割れが発生した。これは、ガラス転移温度が600℃と高く、軟化しない(ヤング率60GPa)ためである。
以上、各種検証実験の結果、アルミニウム系の部材の表面に形成するホーロー材からなる遮熱膜の素材としては、バナジウム系のホーロー材が好適であることが分かった。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
10…マトリックス層(ホーロー材)、10’…拡散接合層、10A…上層、10B…下地層、20…中空粒子、30…プレート、100,100A…遮熱膜、200…中間品、300…溶湯の硬化体とプレートからなる部材、W…部材(アルミニウム系の部材)、M…鋳型、Y…溶湯、C…キャビティ

Claims (6)

  1. 内燃機関の燃焼室を構成するアルミニウム系の部材の壁面に形成される遮熱膜であって、
    前記遮熱膜は前記壁面に拡散接合しており、
    前記遮熱膜は、常温〜200℃の温度範囲における線膨張係数が15〜25×10-6/Kで、ホーロー材からなるマトリックス層と、該マトリックス層内に分散されている中空粒子とからなる遮熱膜。
  2. 前記ホーロー材のガラス転移温度が400℃以下であり、耐熱温度が450℃以上である請求項1に記載の遮熱膜。
  3. 前記ホーロー材がシリカを含んでおり、
    前記中空粒子がシリカ系の外殻を有し、その表面に親水基が修飾されている請求項1または2に記載の遮熱膜。
  4. 前記遮熱膜は、壁面側の下地層と上層の2層構造であり、
    下地層は中空粒子を含まないか上層よりも少ない量の中空粒子を含んでいる請求項1〜3のいずれかに記載の遮熱膜。
  5. 中空粒子とガラスフリットと釉薬を混合した材料をアルミニウム系のプレートの表面に塗布し、加熱してガラスフリットを溶融させ、常温〜200℃の温度範囲における線膨張係数が15〜25×10-6/Kで、ホーロー材からなるマトリックス層と、該マトリックス層内に分散されている中空粒子とからなる遮熱膜をプレートの表面に形成してプレートとその表面の遮熱膜とからなる中間品を製造する第1のステップ、
    鋳型内に中間品を収容し、中間品のプレート側にアルミニウム系の溶湯を鋳込み、溶湯の硬化体とこの硬化体と一体となっているプレートとからなるアルミニウム系の部材の壁面に遮熱膜を形成する第2のステップからなる遮熱膜の形成方法。
  6. 前記プレートの厚みが1mm〜2mmの範囲である請求項5に記載の遮熱膜の形成方法。
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