JP2018145957A - 内燃機関用ピストン - Google Patents

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Abstract

【課題】遮熱性と放熱性に優れた内燃機関用ピストンを提供する。【解決手段】頂面2に形成された遮熱性溶射膜4と、内頂面3に形成された放熱被膜5とを有する内燃機関用ピストン1によって上記課題を解決する。遮熱性溶射膜4は、頂面2の全面又は一部分に設けられていることが好ましく、遮熱性のあるセラミック溶射膜又は遮熱性のある金属系溶射膜で構成されることが好ましい。放熱被膜5は、内頂面3を含むピストン内周面に設けられており、輻射性樹脂組成物の塗膜であることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、遮熱性と放熱性に優れた内燃機関用ピストンに関する。
自動車エンジン等の内燃機関の燃焼室は、シリンダヘッド面とシリンダブロックのボア面とピストンの頂面とで主に構成されている。こうした内燃機関では、燃焼熱が蓄積するとエンジンの動作不良を引き起こすので強制的に冷却しているが、内燃機関に要求される高出力化にともなって冷却損失の低減が要請されている。こうした課題に対し、例えば特許文献1では、断熱性と耐ノッキング性の双方に優れた内燃機関とその製造方法が提案されている。この技術は、シリンダヘッド面に陽極酸化皮膜からなる遮熱膜を形成し、その遮熱膜によって、点火プラグ近傍の断熱性能を高くし、点火プラグから遠ざかるにつれて断熱性能を漸次低減させるというものである。
一方、特許文献2では、燃焼熱を迅速にピストンリングやスカート部に逃がしてピストンヘッド部の強度低下を抑えることができるピストンが提案されている。この技術は、ピストンヘッド部に溶射皮膜が表面に形成され、さらに熱伝導度の高い純アルミニウム系合金で鋳ぐるむというものである。
また、特許文献3では、ピストンのヘッド部表面から受熱した熱の放熱の大部分がピストンリングからの放熱に依存しており、熱がピストン本体に蓄積し易いという課題を解決したピストンが提案されている。この技術は、ピストン本体のヘッド部の表面を除く表面のうちの少なくとも一部に、ピストン本体の材料よりも熱伝導率の高い物質の被膜を形成するというものである。
特開2012−159059号公報 特開平10−26225号公報 特開2005−351155号公報
内燃機関では、燃焼熱を有効利用して燃焼効率を上げて燃費向上を図るためには、燃焼熱を逃がしすぎないことが必要であるが、燃焼室内が高温のままだと吸気量が減少して燃焼効率が低下してしまう。したがって、燃焼熱を逃がしすぎない断熱性又は遮熱性を有するとともに、逃がす場合は速やかに逃がす放熱性を有することが要求される。なお、冷却損失とは、燃焼室を冷却しすぎて出力又は燃焼効率が低下することである。
特許文献1では、遮熱膜として陽極酸化皮膜(アルマイト)を形成しているが、遮熱性の観点では不十分であろうと考えられる。また、特許文献2では、ピストン頂面部に溶射皮膜を設けた後にアルミニウム合金で鋳ぐるんでいるので遮熱性は高いが、放熱性が不十分で燃焼室内が高温となって吸気量が減少し、燃焼効率が低下するものと考えられる。また、特許文献3では、ピストン頂面部以外の表面に熱伝導率の高い被膜を形成しているので放熱性は高いが、遮熱性は不十分であると考えられる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、遮熱性と放熱性に優れた内燃機関用ピストンを提供することにある。
本発明に係る内燃機関用ピストンは、頂面に形成された遮熱性溶射膜と、内頂面に形成された放熱被膜とを有することを特徴とする。
この発明によれば、頂面に設けられた遮熱性溶射膜の持つ遮熱性(断熱性ともいう。)により、燃焼熱がピストンを伝わるのを抑制して燃焼室温度の下がりすぎを防ぐことができる。また、その遮熱性によりピストンの温度が上がりにくくなって、シリンダボアの冷却損失(シリンダボアに熱が逃げて燃焼室が冷却されすぎて出力又は燃焼効率が低下すること)を抑制することができる。その結果、燃焼熱を有効利用して燃焼効率を上げ、燃費向上を図ることができる。また、内頂面に設けられた放熱被膜の持つ放熱性により、ピストンに伝わった熱を速やかに逃がすことができる。その結果、燃焼室内の温度を一定程度に迅速に下げることができるので、吸気量の減少による燃焼効率の低下を抑制することができる。こうした本発明により、内燃機関の燃費向上に貢献することができる。
本発明に係る内燃機関用ピストンにおいて、前記遮熱性溶射膜は、前記頂面の全面又は一部分に設けられていることが好ましい。この発明によれば、燃焼熱がピストンを伝わるのをより一層抑制して燃焼室温度の下がりすぎを防ぐことができる。
本発明に係る内燃機関用ピストンにおいて、前記遮熱性溶射膜が、遮熱性のあるセラミック溶射膜又は遮熱性のある金属系溶射膜であることが好ましい。例えば、酸化ジルコニウム系溶射膜、酸化アルミニウム系溶射膜及びステンレス系溶射膜から選ばれることが好ましい。この発明によれば、それらの溶射膜は、良好な遮熱性を有するので好ましく適用できる。
本発明に係る内燃機関用ピストンにおいて、前記遮熱性溶射膜と前記ピストン頂面との間には、密着性を高めるボンドコート膜が設けられていてもよい。
本発明に係る内燃機関用ピストンにおいて、前記放熱被膜は、前記内頂面を含むピストン内周面に設けられていることが好ましい。この発明によれば、放熱被膜が内頂面を含むピストン内周面に設けられているので、ピストンに伝わった熱をより速やかに逃がすことができる。
本発明に係る内燃機関用ピストンにおいて、前記放熱被膜が、輻射性樹脂組成物の塗膜であることが好ましい。
本発明によれば、燃焼熱がピストンを伝わるのを抑制して燃焼室温度の下がりすぎを防ぐことができるとともに、ピストンの温度が上がりにくくなってシリンダボアの冷却損失を抑制することができるので、燃焼熱を有効利用して燃焼効率を上げ、燃費向上を図ることができる。また、ピストンに伝わった熱を速やかに逃がすことができるので、燃焼室内の温度を一定程度に迅速に下げることができ、吸気量の減少による燃焼効率の低下を抑制することができる。こうした本発明は、内燃機関の燃費向上に貢献することができる。
本発明に係る内燃機関用ピストンの一例を示す模式断面図である。 内燃機関の構造の説明図である。 内燃機関用ピストンの内頂面を示す模式図である。 内燃機関用ピストンの頂面に形成される遮熱性溶射膜とボンドコート膜の積層形態の断面図である。 実施例での試験時の温度プロファイルである。 実施例での試験方法を示す模式図である。
本発明に係る内燃機関用ピストンについて図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、その要旨の範囲内であれば、以下の実施形態に限定されない。
[内燃機関用ピストン]
内燃機関用ピストン1は、図1に示すように、上側の頂部11と、下側のスカート部12とで構成されている。頂部11の表面を頂面2といい、頂部11の裏面を内頂面3という。頂面2及び内頂面3を有する頂部11の構造や寸法等は、図1の例に限定されず、他の構造形態や寸法等であってもよいし、ピストン全体の形態や大きさも図1の例に限定されず、他の形態や大きさであってもよい。なお、頂部11の外周面には、複数のピストンリング溝が設けられている。ピストンリング溝としては、頂部11の側からスカート部12の側に向かって、例えば第1リング溝11a、第2リング溝11b、及びオイルリング溝11cが形成され、それぞれに応じたピストンリングが装着される。符号13はピン穴である。
自動車エンジン等の内燃機関20の燃焼室21は、図2に示すように、シリンダヘッド22とシリンダブロック26のボア面27とピストン1の頂面2とで構成されている。シリンダヘッド22には、吸気バルブ23と排気バルブ24と点火プラグ25が設けられている。ピストン1は、クランクシャフト28とコンロッド29で上下動している。
本発明に係る内燃機関用ピストン1は、図1に示すように、頂面2に形成された遮熱性溶射膜4と、内頂面3に形成された放熱被膜5とを有している。頂面2に設けられた遮熱性溶射膜4の持つ遮熱性(断熱性ともいう。)により、燃焼熱がピストン1を伝わるのを抑制して燃焼室温度の下がりすぎを防ぐことができる。また、その遮熱性によりピストン1の温度が上がりにくくなって、シリンダボアの冷却損失を抑制することができる。その結果、燃焼熱を有効利用して燃焼効率を上げ、燃費向上を図ることができる。また、内頂面3に設けられた放熱被膜5の持つ放熱性により、ピストン1に伝わった熱を速やかに逃がすことができる。その結果、燃焼室内の温度を一定程度に迅速に下げることができるので、吸気量の減少による燃焼効率の低下を抑制することができる。こうした本発明により、内燃機関の燃費向上に貢献することができる。なお、シリンダボアの冷却損失とは、シリンダボアに熱が逃げて燃焼室が冷却されすぎて出力又は燃焼効率が低下することである。
以下、内燃機関用ピストンの構成要素を詳しく説明する。なお、内燃機関用ピストンを単に「ピストン」という。
(ピストンの構成材料)
ピストンの構成材料は特に限定されないが、例えば代表的なアルミニウム合金(例えばA4032やAC8A等)等のピストン用アルミニウム合金材料を好ましく挙げることができる。アルミニウム合金の種類によって、熱伝導性が相違するが、その場合は遮熱性溶射膜4の種類や厚さ、放熱被膜5の種類や厚さを任意に設定して、遮熱性と放熱性を調整することができる。ピストン1は、こうしたピストン用アルミニウム合金を鋳造、鍛造、熱処理、機械加工等する通常の方法によって製造される。なお、機械加工は従来公知の一般的な方法で加工され、例えば、ピストンピン用の穴明け加工、ピストン面削加工、オイルリング溝加工、その他の加工を施し、ピストン形状に仕上げられる。
(遮熱性溶射膜)
遮熱性溶射膜4は、図1に示すように、頂面2に設けられている。頂面2は、ピストン1の頂部11の表面であり、図1及び図2に示すように、内燃機関20では、燃焼室21側に位置する面である。こうした頂面2に設けられた遮熱性溶射膜4は、遮熱性(断熱性ともいう。)を有するので、その遮熱性により、燃焼熱がピストン1を伝わるのを抑制して燃焼室温度の下がりすぎを防ぐことができる。また、その遮熱性によりピストン1の温度が上がりにくくなって、シリンダボアの冷却損失を抑制することができる。その結果、燃焼熱を有効利用して燃焼効率を上げ、燃費向上を図ることができる。
遮熱性溶射膜4は、頂面2の一部に設けられていてもよいが、全面に設けられていることが好ましい。遮熱性溶射膜4が全面に設けられていることにより、燃焼熱がピストン1を伝わるのをより一層抑制して燃焼室温度の下がりすぎを防ぐことができる。
遮熱性溶射膜4としては、遮熱性を有する材質からなる溶射膜であれば特に限定されないが、例えば、遮熱性のあるセラミック溶射膜や遮熱性のある金属系溶射膜を好ましく挙げることができる。セラミック溶射膜としては、酸化ジルコニウム系溶射膜や酸化アルミニウム系溶射膜を例示でき、具体的には、酸化ジルコニウム系溶射膜としては、ZrO粉末に8%Y粉末を配合した混合粉を溶射してなる溶射膜が好ましく、酸化アルミニウム系溶射膜としては、Al粉末を溶射してなる溶射膜が好ましい。一方、金属系溶射膜としては、ステンレス系溶射膜、例えばSUS316粉末を溶射してなる溶射膜等が好ましい。
これらの遮熱性溶射膜4は、共通物性として熱伝導率が0W/m・K以上、30W/m・K以下の範囲内であればよく、上記した種々の溶射膜以外であってもその範囲内に含まれる溶射膜であれば同様の作用効果を生じることができる。
遮熱性溶射膜4の厚さは、本発明の効果を奏する範囲であれば特に限定されないが、例えば、50μm以上、1000μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、遮熱性溶射膜4の厚さが1000μmを超えると、厚すぎて剥離する場合があり、50μm未満では、薄すぎて十分な遮熱性を奏さないことがある。
遮熱性溶射膜4の形成手段は、溶射法であればよいが、プラズマ溶射法、特に高速フレーム溶射(HVOF)を好ましく用いることができる。プラズマ溶射法は、陰極とノズル陽極との間の直流アークによって送給される作動ガス(Ar、N、H又はそれらの混合ガス)が熱せられ、プラズマジェットとなってトーチのノズルから噴出して吹き付けられ、溶射膜となって形成される。なお、作動ガスにより、成膜速度をコントロールすることができる。
溶射法で成膜した遮熱性溶射膜4は、皮膜中の気孔率を制御することができ、気孔率を上げることで遮熱性能を向上させることができる。そうした例としては、例えば、溶射材料にポリエステル等の樹脂成分を混入して溶射することで、成膜後の熱で樹脂成分を除去すれば、気孔率を50%程度まで上げることができる。遮熱性溶射膜4の気孔率は、熱伝導率を考慮して任意に設計され、0%以上、50%以下の範囲内、好ましくは5%以上、50%以下の範囲内とすることができる。気孔率が50%を超えると、ピストンとの密着性が低下することがある。気孔率の下限は0%であってもよいが、遮熱性能向上の点では5%以上が好ましい。
なお、遮熱性溶射膜4は、その後に研磨や切削等の後加工をしてもしなくてもよく、後加工せずに溶射膜特有の表面粗さを利用してもよいし、後加工して表面粗さを小さくして、燃焼性能向上等に寄与させてもよい。
(ボンドコート膜)
ボンドコート膜6は、任意に設けられる溶射膜であり、図4に示すように、遮熱性溶射膜4とピストン頂面2との間の密着性を高めるために設けられていてもよい。遮熱性溶射膜4が酸化ジルコニウム系溶射膜である場合は、例えばCoNiCrAlY系の溶射膜を予めボンドコート膜6として設けた後に酸化ジルコニウム系溶射膜を設けることが好ましい。このCoNiCrAlY系の溶射膜は、例えば、質量%で、Cr:29.7%,Ni:10.6%,W:7.07%,Si:0.90%,Mn:0.51%,Fe:0.25%,C:0.25%,B:0.012%,S:0.003%,P:0.002%,Co:Bal.、の混合粉末を溶射してなるものである。また、遮熱性溶射膜4が酸化アルミニウム系溶射膜である場合は、例えば80質量%Ni−20質量%Cr系の溶射膜を予めボンドコート膜6として設けた後に酸化アルミニウム系溶射膜を設けることが好ましい。この80質量%Ni−20質量%Cr系の溶射膜は、具体的には、Ni粉末(80質量%)とCr粉末(20質量%)との混合粉末、又は80質量%Ni−20質量%Crの合金粉末を溶射してなるものである。
上記したボンドコート膜6とピストン材料であるアルミニウム合金との熱膨張係数の差は、5×10-6/℃〜10×10-6/℃の程度であり、遮熱性溶射膜4とピストン材料であるアルミニウム合金との熱膨張係数の差である10×10-6/℃〜15×10-6/℃よりも小さいので、遮熱性溶射膜4の密着性を向上させて剥離を抑制することができる。すなわち、ボンドコート膜6は、ピストン材料であるアルミニウム合金との熱膨張係数の差が5×10-6/℃以上、10×10-6/℃以下の範囲内となる溶射膜であれば、遮熱性溶射膜4のボンドコート膜6として好ましく適用することができるといえる。
ボンドコート膜6の厚さは、本発明の効果を奏する範囲であれば特に限定されないが、例えば、50μm以上、300μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、ボンドコート膜6の厚さが300μmを超えると、厚すぎて剥離する場合があり、50μm未満では、薄すぎて十分な密着性を奏さないことがある。
ボンドコート膜6の形成手段は、上記した遮熱性溶射膜4の形成手段と同様のプラズマ溶射法を好ましく用いることができる。溶射に際しては、ピストン1の頂面2の形状にあわせて溶射ノズルを操作して満遍なく溶射膜を成膜すればよい。
(放熱被膜)
放熱被膜5は、図1に示すように、内頂面3に設けられている。内頂面3は、ピストン1の頂部11の頂面2に対向位置にある裏面であって、図1及び図2に示すように、ピストン内部の開いた空洞部分の頂面側に位置する面(内頂面3)である。内頂面3に設けられた放熱被膜5は、放熱性を有しており、その放熱性により、ピストン1に伝わった熱を速やかに逃がすことができる。その結果、燃焼室内の温度を一定程度に迅速に下げることができるので、吸気量の減少による燃焼効率の低下を抑制することができる。
放熱被膜5は、内頂面3に設けられていれば本発明の効果を奏することができるが、内頂面3を含むピストン内周面全てに設けられていてもよい。内周面の全てとは、頂部11の裏面である内頂面3のほか、スカート部12の内周面を含む全てである。放熱被膜5が内頂面3を含むピストン内周面全てに設けられることにより、ピストン1に伝わった熱をより速やかに逃がすことができる。なお、放熱被膜5は内頂面3に少なくとも設けられていれば、スカート部12の内周面は全面に設けられていてもよいし、その内周面のうち、内頂面3に連続する部分だけに設けられていてもよい。
放熱被膜5としては、輻射性(熱放射性)を有する樹脂組成物被膜を好ましく挙げることができる。輻射性を有する樹脂組成物被膜は、シリコーン樹脂や無機系樹脂からなるバインダー樹脂と、カーボンブラックやガラスパウダー等のフィラーと、添加剤と、溶剤とを成分組成とする塗料を塗布した塗膜を例示することができる。具体的には、オキツモ株式会社のクールテック(商品名:CT−600、CT−800等)で形成した塗膜、シリコーン樹脂やガラスパウダーで形成した塗膜を挙げることができる。
この放熱被膜5は、250℃〜350℃での放射率が80%〜100%のものであればよく、上記した樹脂組成物被膜以外であってもその範囲内に含まれるものであれば同様の作用効果を生じることができる。
放熱被膜5の厚さは、本発明の効果を奏する範囲であれば特に限定されない。厚膜ほど放熱性が向上するので望ましいが、厚すぎると塗料が液垂れして塗布が困難になることがあり、例えば、25μm以上、75μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、放熱被膜5の厚さが75μmを超えると、厚すぎて剥離する場合があり、25μm未満では、薄すぎて十分な遮熱性を奏さないことがある。こうした放熱被膜5は、溶剤を含む樹脂組成物塗料を、ピストン1の内頂面3に塗布して成膜される。
内頂面3に設けられた放熱被膜5の持つ放熱性により、ピストン1に伝わった熱を速やかに輻射(熱放射)によって逃がすことができるので、蓄積し易い熱の放熱性を高めて燃焼室内の温度を一定程度に迅速に下げることができる。その結果、吸気量の減少による燃焼効率の低下を抑制することができ、内燃機関の燃費向上に貢献することができる。また、熱による強度低下を考慮して高強度材料を使用したり、強度維持のために肉厚構造にしたり、又は、リング溝部に表面処理等の強化を施す必要もない。
実施例と比較例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
ピストン用アルミニウム合金材料(AC8A相当)を鋳造、熱処理、機械加工を順次行って製造されたピストン1を準備した。なお、機械加工は従来公知の一般的な方法で加工され、例えば、ピストンピン用の穴明け加工、ピストン面削加工、オイルリング溝加工、その他の加工を施し、ピストン形状に仕上げた。ピストン1の頂面2に、CoNiCrAlY合金粉末をプラズマ溶射装置にて溶射して厚さ100μmのボンドコート膜6を設けた。そのボンドコート膜6の上に、酸化ジルコニウム系粉末(92質量%ZrO−8質量%Y合金粉末)をプラズマ溶射装置にて溶射して厚さ300μmの遮熱性溶射膜4を設けた。また、ピストン1の内頂面3には、オキツモ株式会社のクールテックCT−600を塗布乾燥させて厚さ50μmの放熱被膜5を成膜した。こうして実施例1のピストン1を作製した。
なお、ボンドコート膜6の形成粉末であるCoNiCrAlY合金粉末の組成は、質量%で、Cr:29.7%,Ni:10.6%,W:7.07%,Si:0.90%,Mn:0.51%,Fe:0.25%,C:0.25%,B:0.012%,S:0.003%,P:0.002%,Co:Bal.、である。ピストン1に設けられたボンドコート膜6の気孔率は5%であり、遮熱性溶射膜4の気孔率も5%であった。
[実施例2]
ボンドコート膜6と遮熱性溶射膜4を変更した。ボンドコート膜6を、80質量%Ni−20質量%Crの合金粉末をプラズマ溶射装置にて溶射した厚さ100μmのボンドコート膜6とし、遮熱性溶射膜4を、酸化アルミニウム粉末をプラズマ溶射装置にて溶射して厚さ300μmの遮熱性溶射膜4とした。それ以外は実施例1と同じにして実施例2のピストン1を作製した。なお、ピストン1に設けられたボンドコート膜6の気孔率は5%であり、遮熱性溶射膜4の気孔率も5%であった。
[実施例3]
ボンドコート膜6を設けず、遮熱性溶射膜4として、SUS316粉末をプラズマ溶射装置にて溶射した厚さ300μmの遮熱性溶射膜4とした。それ以外は実施例1と同じにして実施例3のピストン1を作製した。なお、ピストン1に設けられた遮熱性溶射膜4の気孔率も5%であった。
[遮熱効果と放熱効果の確認実験]
ピストン1の効果(遮熱効果と放熱効果)を確認するため、エンジンの燃焼を簡易化した図6に示す方法で実験を行った。図6に示す形態の円盤状の試料は直径78mmで厚さ15mmであり、熱源がONのときとOFFのときの熱源側のT1とその反対側のT2の温度差を測定した。熱源がONのときにT1とT2の温度差が大きいほど遮熱効果があるといえ、熱源がOFFのときに熱源側の温度T1が速く冷めるほど放熱効果があるといえる。具体的には、以下の方法で行った。
(供試材)
A4032相当のアルミニウム合金を直径78mmで厚さ15mmの円盤状に加工して基材とした。試料1は、その基材の一方の面に実施例1と同じボンドコート膜6(CoNiCrAlY合金溶射膜、厚さ100μm)と遮熱性溶射膜4(92質量%ZrO−8質量%Y合金溶射膜、厚さ300μm)とを順に積層し、他方の面に実施例1と同じ放熱被膜5(クールテックCT−600の塗膜、厚さ50μm)設けた。試料2は、その基材の一方の面に実施例2と同じボンドコート膜6(80質量%Ni−20質量%Crの合金溶射膜、厚さ100μm)と遮熱性溶射膜4(酸化アルミニウム溶射膜、厚さ300μm)とを順に積層し、他方の面に実施例2と同じ放熱被膜5(クールテックCT−600の塗膜、厚さ50μm)設けた。
比較試料1は、その基材の一方の面に実施例1と同じボンドコート膜6(CoNiCrAlY合金溶射膜、厚さ100μm)と遮熱性溶射膜4(92質量%ZrO−8質量%Y合金溶射膜、厚さ300μm)とを順に積層し、他方の面には何も設けなかった。比較試料2は、その基材の一方の面に実施例2と同じボンドコート膜6(80質量%Ni−20質量%Crの合金溶射膜、厚さ100μm)と遮熱性溶射膜4(酸化アルミニウム溶射膜、厚さ300μm)とを順に積層し、他方の面には何も設けなかった。
比較試料3は、その基材の一方の面に実施例1と同じボンドコート膜6(CoNiCrAlY合金溶射膜、厚さ100μm)と遮熱性溶射膜4(92質量%ZrO−8質量%Y合金溶射膜、厚さ300μm)とを順に積層し、さらにその遮熱性溶射膜4上には実施例1と同じ放熱被膜5(クールテックCT−600の塗膜、厚さ50μm)設けた。他方の面には何も設けなかった。比較試料4は、その基材の一方の面に実施例2と同じボンドコート膜6(80質量%Ni−20質量%Crの合金溶射膜、厚さ100μm)と遮熱性溶射膜4(酸化アルミニウム溶射膜、厚さ300μm)とを順に積層し、さらにその遮熱性溶射膜4上には実施例1と同じ放熱被膜5(クールテックCT−600の塗膜、厚さ50μm)設けた。他方の面には何も設けなかった。
比較試料5は、その基材の一方の面に実施例1と同じボンドコート膜6(CoNiCrAlY合金溶射膜、厚さ100μm)と遮熱性溶射膜4(92質量%ZrO−8質量%Y合金溶射膜、厚さ300μm)とを順に積層し、さらにその遮熱性溶射膜4上には実施例1と同じ放熱被膜5(クールテックCT−600の塗膜、厚さ50μm)設けた。他方の面にも、実施例1と同じ放熱被膜5(クールテックCT−600の塗膜、厚さ50μm)設けた。比較試料6は、その基材の一方の面に実施例2と同じボンドコート膜6(80質量%Ni−20質量%Crの合金溶射膜、厚さ100μm)と遮熱性溶射膜4(酸化アルミニウム溶射膜、厚さ300μm)とを順に積層し、さらにその遮熱性溶射膜4上には実施例2と同じ放熱被膜5(クールテックCT−600の塗膜、厚さ50μm)設けた。他方の面にも、実施例1と同じ放熱被膜5(クールテックCT−600の塗膜、厚さ50μm)設けた。
なお、試料1,2及び比較試料1〜6において、ボンドコート膜であるCoNiCrAlY合金溶射膜と、80質量%Ni−20質量%Crの合金溶射膜は、いずれも気孔率が5%であり、遮熱性溶射膜4である92質量%ZrO−8質量%Y合金溶射膜と、酸化アルミニウム溶射膜は、いずれも気孔率が5%であった。
(遮熱・放熱試験)
本試験は、上記各試料30においてボンドコート膜6と遮熱性溶射膜4とが積層されている側(トップコート側ともいう。)がホットプレート32に当接するように下にして設置し、ホットプレート32を室温から500℃(実機の温度より100℃高温)まで温度を上昇させつつ加熱した。図5は試験時の温度プロファイルである。1800秒後に加熱を終了し、放熱を行った。遮熱性能は、ΔTrise、ΔTconstの2種類で評価した。ΔTriseは加熱開始から600秒後、まだ温度が上昇中のトップコート側の温度(T1)と基材側の温度(T2)の温度差である。ΔTconstは1800秒後、温度が平衡状態となったときの温度差である。加熱を終了してから200秒後(実験開始から2000秒後)にトップコート側の温度T1が低下した温度をΔTtopとし、放熱性能として評価した。
表1に実験結果を示した。温度上昇中の遮熱性を示すΔTrise、平衡状態の遮熱性のΔTconstを見ると、両者とも、トップコート側に遮熱性溶射膜4だけを設けた比較試料1,2と試料1,2が高い遮熱性を有していた。放熱被膜5には、高温化の雰囲気の熱を吸収し、外に逃がす熱交換器の性能を向上させる特性があることから、トップコート側に遮熱性溶射膜4だけを設けて放熱被膜5を設けない場合は、高い遮熱性(ΔTrise、ΔTconst)を示すものと考えられる。一方、トップコート側に放熱被膜5を塗布した比較試料3〜6の場合、熱を大きく吸収してしまい、その熱を逃がし切れず、放熱性を示すΔTtopが低下したと考えられる。
比較試料1,2と試料1,2とを比較すると、試料1,2の方が放熱性を示すΔTtopが大きかった。試料1,2では基材側に放熱被膜5を塗布することで放熱性が上手く活用され、塗布していない比較試料1,2に比べて放熱性が向上したものと考えられる。これらの実験より、試料1,2では、遮熱効果と放熱効果が両立し、冷却損失抑制効果によって燃焼室内を高温になりすぎないようにさせる効果があることがわかった。
Figure 2018145957

1 内燃機関用ピストン
2 頂面
3 内頂面
4 遮熱性溶射膜
5 放熱被膜
6 ボンドコート膜
11 頂部
11a 第1リング溝
11b 第2リング溝
11c オイルリング溝
12 スカート部
13 ピン穴
20 内燃機関
21 燃焼室
22 シリンダヘッド
23 吸気バルブ
24 排気バルブ
25 点火プラグ
26 シリンダブロック
27 ボア面
28 クランクシャフト
29 コンロッド
30 試料
31 遮熱性溶射膜又は放熱被膜
32 ホットプレート
33 加熱制御装置
T1 トップコート側の温度測定点
T2 基材側の温度測定点

Claims (6)

  1. 頂面に形成された遮熱性溶射膜と、内頂面に形成された放熱被膜とを有することを特徴とする内燃機関用ピストン。
  2. 前記遮熱性溶射膜は、前記頂面の全面又は一部分に設けられている、請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
  3. 前記遮熱性溶射膜が、遮熱性のあるセラミック溶射膜又は遮熱性のある金属系溶射膜である、請求項1又は2に記載の内燃機関用ピストン。
  4. 前記遮熱性溶射膜と前記ピストン頂面との間には、密着性を高めるボンドコート膜が設けられいてもよい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関用ピストン。
  5. 前記放熱被膜は、前記内頂面を含むピストン内周面に設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関用ピストン。
  6. 前記放熱被膜が、輻射性樹脂組成物の塗膜である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関用ピストン。
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