JP5457640B2 - 内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に関し、特に、燃焼室を形成する母材の少なくとも一部の、燃焼室内に臨む壁面に、断熱膜が形成された内燃機関に関する。
内燃機関の熱効率を向上させるために、内燃機関の燃焼室を形成する母材の少なくとも一部の、燃焼室内に臨む壁面に、断熱膜を形成する技術が提案されている(例えば下記非特許文献1,2)。非特許文献1,2においては、熱伝導率の低いセラミック(ジルコニア)からなる単一材料の断熱膜をピストンの頂面上に形成することで、燃焼室内の燃焼ガスからピストンへの熱伝達を低下させて熱効率の向上を図っている。
国際公開第89/03930号パンフレット 米国特許第4495907号明細書 米国特許第5820976号明細書 Gerhard Woschni他,"Heat Insulation of Combustion Chamber Walls - A Measure to Decrease the Fuel Combustion of I.C. Engines?",SAE Paper 870339,Society of Automotive Engineers,1987 Victor W.Wong他,"Assessment of Thin Thermal Barrier Coatings for I.C. Engines",SAE Paper 950980,Society of Automotive Engineers,1995
内燃機関のシリンダ内における熱損失Q[W]については、シリンダ内の圧力やガス流に起因する熱伝達係数h[W/(m2・K)]、シリンダ内の表面積A[m2]、シリンダ内のガス温度Tg[K]、及びシリンダ内に面する(シリンダ内の燃焼ガスと接触する)壁面の温度Twall[K]を用いて、以下の(1)式で表すことができる。
Q=A×h×(Tg−Twall) (1)
内燃機関のサイクルにおいては、シリンダ内ガス温度Tgが時々刻々変化するが、壁面温度Twallをシリンダ内ガス温度Tgに追従させるよう時々刻々変化させることで、(1)式における(Tg−Twall)の値を小さくすることができ、熱損失Qを低減することができる。
壁面温度Twallをシリンダ内ガス温度Tgに追従させるよう変化させるためには、燃焼室内に臨む壁面に形成する断熱膜については、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量が低いことが望ましい。ただし、セラミック(例えばジルコニア)からなる単一材料の断熱膜を燃焼室内に臨む壁面に形成しても、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量の低さが不十分である。その結果、壁面温度Twallのシリンダ内ガス温度Tgへの追従性が低下し、熱損失Qの低減効果も不十分となる。
セラミック(例えばジルコニア)よりも低い熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量を有する単一材料は存在するが、例えば樹脂や発泡体のように耐熱性及び強度の低い材料が多く、内燃機関のシリンダ内のように高温・高速のガス流や高圧力に耐えうるような耐熱性及び強度を持たない。
さらに、ピストンが往復運動するシリンダ内壁面に断熱膜を形成した場合は、ピストンに装着されたピストンリングがシリンダ内壁面の断熱膜に対し摺動することで、シリンダ内壁面の断熱膜にはピストンリングからのせん断力が作用する。そのため、シリンダ内壁面の断熱膜については、このせん断力に対する強度を十分に確保して耐久性を向上させることが要求されるが、一般的に、断熱膜の強度を高めると、断熱膜の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量も高くなる。断熱膜の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量が高くなると、壁面温度Twallのシリンダ内ガス温度Tgへの追従性が低下し、熱損失Qの低減効果も減少する。
本発明は、燃焼室内に臨む壁面に断熱膜が形成された内燃機関において、燃焼室壁面温度のシリンダ内ガス温度への追従性を向上させることで熱効率を向上させるとともに、断熱膜の耐久性を向上させることを目的とする。
本発明に係る内燃機関は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明に係る内燃機関は、燃焼室を形成する母材の少なくとも一部の、燃焼室内に臨む壁面に、断熱膜が形成された内燃機関であって、前記断熱膜は、母材よりも低い熱伝導率を有し且つ母材よりも低いまたは母材とほぼ同等の単位体積あたりの熱容量を有する材料の内部に気泡が多数形成された断熱材を含んで構成されており、前記断熱膜は、ピストンが往復運動するシリンダ内壁面と、当該シリンダ内壁面以外の燃焼室内に臨む壁面と、に形成されており、シリンダ内壁面に形成された断熱膜は、シリンダ内壁面以外の壁面に形成された断熱膜よりも気泡混入率が低く、シリンダ内壁面に形成された断熱膜は、膜厚が50μm以上200μm以下の範囲内であって、熱伝導率が0.5[W/(m・K)]以下であり、単位体積あたりの熱容量が1490×10[J/(m・K)]以下であり、排気行程にてシリンダ内壁面に形成された断熱膜へオイルを供給して当該断熱膜を冷却するオイル供給手段が設けられていることを要旨とする。
本発明の一態様では、シリンダ内壁面に形成された断熱膜には、当該断熱膜を補強するための補強用繊維材が混入されていることが好適である。この態様では、前記補強用繊維材は、シリンダ内壁面に形成された断熱膜に、その厚さ方向と略垂直方向に沿って延びる状態で混入されていることが好適である。
本発明の一態様では、燃料をシリンダ内に噴射する燃料噴射手段を備え、燃料噴射手段は、設定されたサイクル数に1回の割合で、シリンダ内壁面に形成された断熱膜に燃料が付着するように燃料を噴射することが好適である。
本発明の一態様では、オイル供給手段は、オイルが噴出するオイル噴出孔が多数形成された多孔ノズルを有し、多孔ノズルは、各オイル噴出孔から、シリンダ内壁面に形成された断熱膜のそれぞれ異なる箇所へ向けてオイルを噴出させることが好適である。
本発明の一態様では、ピストンに装着され且つシリンダ内壁面に形成された断熱膜に対し摺動するピストンリングに、低摩擦材による被膜が形成されていることが好適である。
また、本発明に係る内燃機関は、燃焼室を形成する母材の少なくとも一部の、燃焼室内に臨む壁面に、断熱膜が形成された内燃機関であって、前記断熱膜は、母材よりも低い熱伝導率及び母材よりも低い単位体積あたりの熱容量を有し、前記断熱膜は、ピストンが往復運動するシリンダ内壁面と、当該シリンダ内壁面以外の燃焼室内に臨む壁面と、に形成されており、シリンダ内壁面に形成された断熱膜は、シリンダ内壁面以外の壁面に形成された断熱膜と比較して、強度が高いとともに、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量が高く、シリンダ内壁面に形成された断熱膜は、膜厚が50μm以上200μm以下の範囲内であって、熱伝導率が0.5[W/(m・K)]以下であり、単位体積あたりの熱容量が1490×10[J/(m・K)]以下であり、排気行程にてシリンダ内壁面に形成された断熱膜へオイルを供給して当該断熱膜を冷却するオイル供給手段が設けられていることを要旨とする。
本発明によれば、燃焼室内に臨む壁面に断熱膜が形成された内燃機関において、燃焼室壁面温度のシリンダ内ガス温度への追従性を向上させることで熱効率を向上させることができるとともに、断熱膜の耐久性を向上させることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関1の概略構成を示す図であり、シリンダ11の軸線方向と直交する方向から見た内部構成の概略を示す。内燃機関(エンジン)1は、シリンダブロック9及びシリンダヘッド10を備え、シリンダブロック9及びシリンダヘッド10によりシリンダ11を形成する。シリンダ11内には、その軸線方向に往復運動するピストン12が収容されている。ピストン12の頂面12a、シリンダブロック9の内壁面9a、及びシリンダヘッド10の下面10aに囲まれた空間は、燃焼室13を形成する。シリンダヘッド10には、燃焼室13に連通する吸気ポート14、及び燃焼室13に連通する排気ポート15が形成されている。さらに、吸気ポート14と燃焼室13との境界を開閉する吸気弁16、及び排気ポート15と燃焼室13との境界を開閉する排気弁17が設けられている。
なお、図1は、本実施形態に係る内燃機関1がガソリンエンジン等の火花点火式内燃機関である例を示している。火花点火式内燃機関の場合は、点火時期にて点火栓18の火花放電により燃焼室13内の混合気に点火することで、燃焼室13内の混合気を火炎伝播燃焼させる。燃焼室13内の燃焼ガスは、排気行程にて排気ポート15へ排出される。ただし、後述するように、本実施形態に係る内燃機関1がディーゼルエンジン等の圧縮自着火式内燃機関であってもよい。
本実施形態では、燃焼室13を形成する母材の少なくとも一部の、燃焼室13内に臨む(面する)壁面上には、燃焼室13内の燃焼ガスから母材への伝熱を抑制するための断熱用薄膜20−1,20−2が形成されている。断熱用薄膜20−1,20−2は、母材よりも低い熱伝導率及び母材よりも低い単位体積あたりの熱容量を有する。ここでは、燃焼室13を形成する母材として、シリンダブロック(シリンダライナ)9、シリンダヘッド10、ピストン12、吸気弁16、及び排気弁17を挙げることができる。そして、燃焼室13内に臨む壁面として、シリンダブロック内壁面(シリンダライナ内壁面)9a、シリンダヘッド下面10a、ピストン頂面12a、吸気弁底面(傘部底面)16a、及び排気弁底面(傘部底面)17aのいずれか1つ以上を挙げることができる。図1では、ピストン12が往復運動するシリンダブロック内壁面9aに断熱用薄膜20−1を形成するとともに、シリンダヘッド下面10a、ピストン頂面12a、吸気弁底面16a、及び排気弁底面17aの各々に断熱用薄膜20−2を形成した例を示している。ただし、必ずしもシリンダヘッド下面10a、ピストン頂面12a、吸気弁底面16a、及び排気弁底面17aのすべてに断熱用薄膜20−2を形成する必要はない。つまり、断熱用薄膜20−2については、シリンダブロック内壁面9a以外の燃焼室13内に臨む壁面として、シリンダヘッド下面10a、ピストン頂面12a、吸気弁底面16a、及び排気弁底面17aのいずれか1つ以上に形成することができる。以下、断熱用薄膜20−1,20−2の構成例について説明する。
図2は、断熱用薄膜20−1,20−2の構成例を示す断面図である。図2(A)は断熱用薄膜20−1の構成例を示し、図2(B)は断熱用薄膜20−2の構成例を示す。燃焼室13を形成するシリンダブロック9(母材)の、燃焼室13内に臨むシリンダブロック内壁面9a上に形成された断熱用薄膜20−1は、図2(A)に示すように、シリンダブロック(シリンダライナ)9よりも低い熱伝導率を有し且つシリンダブロック(シリンダライナ)9よりも低いまたはシリンダブロック(シリンダライナ)9とほぼ同等の単位体積あたりの熱容量を有する材料の内部に気泡31−1が多数形成された断熱材(発泡断熱材)22−1を含んで構成されている。断熱材22−1は、シリンダブロック内壁面9a上にコーティングもしくは接合されており、燃焼室13内の燃焼ガスと接触する。断熱材22−1を形成する材料は、燃焼室13内の高温及び高圧の燃焼ガスに対する耐熱性及び耐圧性を有する。なお、図2(A)では図示を省略しているが、断熱用薄膜20−1(断熱材22−1)とシリンダブロック(シリンダライナ)9との間には、断熱用薄膜20−1(断熱材22−1)とシリンダブロック(シリンダライナ)9との接合やコーティングを強固にするための薄い中間材が形成されていても構わない。ここでの中間材は、断熱材22−1の材料と同程度の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量を有することが好ましい。
同様に、燃焼室13を形成する母材30の、燃焼室13内に臨む壁面30a上に形成された断熱用薄膜20−2は、図2(B)に示すように、母材30よりも低い熱伝導率を有し且つ母材30よりも低いまたは母材30とほぼ同等の単位体積あたりの熱容量を有する材料の内部に気泡31−2が多数形成された断熱材(発泡断熱材)22−2を含んで構成されている。ここでの母材30は、シリンダヘッド10であってもよいし、ピストン12であってもよいし、吸気弁16であってもよいし、排気弁17であってもよい。つまり、母材30の壁面30aは、シリンダヘッド下面10aであってもよいし、ピストン頂面12aであってもよいし、吸気弁底面16aであってもよいし、排気弁底面17aであってもよい。断熱材22−2は、母材30の壁面30a上にコーティングもしくは接合されており、燃焼室13内の燃焼ガスと接触する。断熱材22−2を形成する材料は、燃焼室13内の高温及び高圧の燃焼ガスに対する耐熱性及び耐圧性を有する。なお、図2(B)では図示を省略しているが、断熱用薄膜20−2(断熱材22−2)と母材30との間には、断熱用薄膜20−2(断熱材22−2)と母材30との接合やコーティングを強固にするための薄い中間材が形成されていても構わない。ここでの中間材は、断熱材22−2の材料と同程度の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量を有することが好ましい。
断熱材22−1,22−2を形成する材料の具体例としては、例えばセラミック(ジルコニア、ZrO2)、または高強度且つ高耐熱性のセラミック繊維等を挙げることができる。さらに、これらの材料を複数組み合わせて断熱材22−1,22−2に用いることもできる。気泡が形成されていない中実のセラミック(ジルコニア)においては、熱伝導率λは2.5[W/(m・K)]程度であり、単位体積あたりの熱容量ρCは2500×103[J/(m3・K)]程度であり、耐熱温度Tmは2700[℃]程度であり、強度(曲げ強度)σは1470[MPa]程度である。ここでのセラミックについては、ジルコニアの他に、コージェライト(気泡が形成されていない中実の状態で熱伝導率λは4[W/(m・K)]程度、単位体積あたりの熱容量ρCは1900×103[J/(m3・K)]程度)も用いることができ、さらに、アルミナ系やシリカ系や窒化珪素系のセラミック、もしくはその非晶質体も一部混合して用いることができる。また、ここでのセラミック繊維については、例えばシリコン、チタンまたはジルコニウム、炭素、及び酸素を含んで構成することができ、気泡が形成されていない中実の状態で、熱伝導率λは2.5[W/(m・K)]程度であり、単位体積あたりの熱容量ρCは1600×103[J/(m3・K)]程度であり、耐熱温度Tmは1300[℃]程度であり、強度(引張強度)σは3300[MPa]程度である。また、気泡31−1,31−2(空気)においては、熱伝導率λは0.02[W/(m・K)]程度であり、単位体積あたりの熱容量ρCは2.3×103[J/(m3・K)]程度である。
また、母材30及びシリンダブロック9を形成する材料の具体例としては、例えば鉄(鋼)、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、またはセラミック等を挙げることができる。鉄においては、熱伝導率λは80.3[W/(m・K)]程度であり、単位体積あたりの熱容量ρCは3500×103[J/(m3・K)]程度である。アルミニウムにおいては、熱伝導率λは193[W/(m・K)]程度であり、単位体積あたりの熱容量ρCは2400×103[J/(m3・K)]程度(ジルコニアとほぼ同等)である。例えば、母材30及びシリンダブロック9に鉄(鋼)、断熱材22−1,22−2を形成する材料にセラミック(ジルコニア)を用いる場合は、断熱材22−1,22−2を形成する材料の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量は、母材30及びシリンダブロック9よりも低くなり、且つ気泡31−1,31−2よりも高くなる。
本実施形態では、シリンダブロック内壁面9aに形成された断熱用薄膜20−1の気泡混入率(気孔率)が、母材30の壁面30a(シリンダブロック内壁面9a以外の燃焼室13内に臨む壁面)に形成された断熱用薄膜20−2の気泡混入率(気孔率)よりも低く設定されている。断熱用薄膜20−1の気泡混入率を低くして断熱用薄膜20−2の気泡混入率を高くすることで、断熱用薄膜20−1の強度は断熱用薄膜20−2の強度よりも高くなる。ただし、断熱用薄膜20−1の気泡混入率を低くして強度を高めると、断熱用薄膜20−1の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量も高くなる。そのため、気泡混入率の低い断熱用薄膜20−1の熱伝導率は、気泡混入率の高い断熱用薄膜20−2の熱伝導率よりも高くなり、断熱用薄膜20−1の単位体積あたりの熱容量も、断熱用薄膜20−2の単位体積あたりの熱容量よりも高くなる。例えば、断熱材22−1,22−2を形成する材料をセラミック(ジルコニア)とし、断熱用薄膜20−1の気泡混入率(全体の平均値)を50%、断熱用薄膜20−2の気泡混入率(全体の平均値)を80%に設定した場合は、断熱用薄膜20−1の熱伝導率は0.5[W/(m・K)]程度であり、断熱用薄膜20−1の単位体積あたりの熱容量は1490×103[J/(m3・K)]程度であり、断熱用薄膜20−2の熱伝導率は0.3[W/(m・K)]程度であり、断熱用薄膜20−2の単位体積あたりの熱容量は728×103[J/(m3・K)]程度である。その場合は、断熱用薄膜20−1の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量は、上記に挙げた具体例の材料を用いたシリンダブロック9の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量よりもそれぞれ低くなり、断熱用薄膜20−2の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量は、上記に挙げた具体例の材料を用いた母材30の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量よりもそれぞれ低くなる。また、断熱用薄膜20−1の厚さは、断熱用薄膜20−2の厚さよりも厚く設定されている。
さらに、本実施形態では、図1に示すように、シリンダブロック内壁面9aに形成された断熱用薄膜20−1へオイルを供給するためのオイル供給手段としてオイルジェット(ボアジェット)32が設けられている。オイルジェット32は、排気行程にてオイルを断熱用薄膜20−1へ向けて噴出させる。オイルジェット32から断熱用薄膜20−1に供給されたオイルによって、断熱用薄膜20−1の冷却を行うことができる。排気行程中では、断熱用薄膜20−1上におけるピストン頂面12aの通り過ぎた箇所がオイルジェット32からのオイルによって冷却される。
前述したように、内燃機関のサイクルにおいては、シリンダ内ガス温度Tgが時々刻々変化するが、燃焼室壁面温度Twallをシリンダ内ガス温度Tgに追従させるよう変化させることで、(1)式における(Tg−Twall)の値を小さくすることができ、シリンダ内における熱損失Qを低減することができる。その結果、内燃機関の熱効率を向上させることができ、燃費を改善することができる。ここで、燃焼室壁面温度Twallの変動幅(スイング幅)ΔTに対する燃費の影響を調べた計算結果を図3,4に示す。図3は、燃焼室壁面温度Twallをクランク角(圧縮上死点が0°)に対して変化させた場合の波形の例を示し、1サイクルにおける燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTが500℃、1000℃、1500℃である場合の波形を燃焼室壁面温度Twallがほとんど変化しない場合(ベース条件)と対比させてそれぞれ示す。図3においては、ΔT=1500℃の波形が、シリンダ内ガス温度Tgにほぼ追従して燃焼室壁面温度Twallが変化した場合の波形に相当する。図4は、1サイクルにおける燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを図3に示すように500℃、1000℃、1500℃に変化させた場合の燃費改善効果を調べた計算結果を示す。図4において、丸印(○)は、吸気行程での燃焼室壁面温度(ベース壁温)がベース条件での壁面温度に対してほとんど上昇していない場合の結果を示し、三角印(△)は、吸気行程での燃焼室壁面温度(ベース壁温)がベース条件での壁面温度に対して100℃上昇した場合の結果を示す。図4に示すように、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを増大させることで、燃費改善効果を向上できることがわかる。ただし、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTが増大しても、ベース壁温が上昇すると燃費改善効果が減少する。そのため、燃費改善効果をより向上させるためには、ベース壁温をほとんど上昇させることなく、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを増大させることが好ましい。なお、図4の横軸の遮熱率[%]は、ベース条件での熱損失量Qb、及び壁面温度Twallを変化させた場合の熱損失量Qsを用いて、以下の(2)式で表される。
遮熱率=(Qb−Qs)/Qb×100[%] (2)
ベース壁温をほとんど上昇させることなく、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを増大させるためには、燃焼室内に臨む壁面に形成する断熱膜については、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量が低いことが望ましい。ただし、前述したように、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量が低い単一材料は、耐熱性及び強度の低い材料が多く、内燃機関のシリンダ内のように高温・高速のガス流や高圧力に耐えうるような耐熱性及び強度を持たない。一方、高温・高速のガス流や高圧力に耐えうるような高い耐熱性及び強度を有する単一材料では、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量の低さが不十分であり、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTが減少する。さらに、断熱膜に熱が伝わり蓄積しやすくなり、ベース壁温が上昇する。ベース壁温が上昇すると、以下の(1)〜(5)の弊害が生じる。
(1)吸気行程中に吸入気体が受熱して膨張することにより、充填効率が低下して出力が低下する。
(2)圧縮行程中に作動ガスが受熱してシリンダ内圧力が上昇することにより、圧縮行程での負の仕事が増大して燃費が低下する。
(3)吸気・圧縮行程中の受熱により平均ガス温度が上昇することで、シリンダ内ガスの比熱比が低下してサイクル効率が低下する。
(4)圧縮端ガス温度上昇によりシリンダ内のガス流れが層流化することで、混合気形成過程での燃料と空気との混合度が低下して煤の生成量が増加する。
(5)圧縮端ガス温度上昇により燃焼温度が上昇することで、窒素酸化物(NOx)の生成量が増加する。
これに対して本実施形態では、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量が極めて低い気泡31−1,31−2を、耐熱性及び強度の高い断熱材22−1,22−2の内部に多数混入することで、燃焼室13内の高温及び高圧の燃焼ガスに対する断熱用薄膜20−1,20−2の耐熱性及び強度を確保しつつ、断熱用薄膜20−1,20−2全体での熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量を十分に低くすることができる。これによって、ベース壁温の上昇を抑えながら燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを増大させることができ、燃焼室壁面温度Twallのシリンダ内ガス温度Tgへの追従性を向上させることができる。その結果、内燃機関1の熱損失Qを低減させて熱効率を向上させることができ、燃費を向上させることができる。さらに、断熱用薄膜20−1,20−2の気泡混入率の調整により断熱用薄膜20−1,20−2の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量を調整することで、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを調整することができる。さらに、排気温度も上昇させることができるので、エンジン下流に設置した触媒の活性を高めて排気エミッションを低減することができるとともに、ターボチャージャーによる過給エンジンにおいては排気エネルギーのさらなる有効利用を図ることができる。特に、排気エミッション低減・熱効率増加を目的とした高過給エンジンでは、燃焼温度の低下による排気温度の低下が顕著となるため、本実施形態による排気温度上昇の効果はさらに高まる。
そして、本実施形態では、シリンダ11内からの熱損失Qが低減するため、潤滑油温度も従来機関に比べて低く抑えられる。したがって、潤滑油として低粘度オイルを使用することができ、特に始動時のフリクション低減につながる。
ここで、本願発明者が行った解析(数値計算)の結果について説明する。内燃機関1が過給直噴ディーゼルエンジンの場合に、図2(B)に示す構成例を対象として断熱用薄膜20−2(断熱材22−2)の厚さt1を変化させながら、1サイクルにおける燃焼室壁面温度Twallの変化を計算して調べた。その計算結果を図5,6に示す。図5は、クランク角(圧縮上死点が0°)に対する燃焼室壁面温度Twallの波形を示し、断熱用薄膜20−2の厚さt1が10μm、50μm、100μm、200μm、500μmである場合の波形をそれぞれ示す。図6は、断熱用薄膜20−2の厚さt1に対する燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTの特性を示す。
さらに、断熱用薄膜が単一材料からなる構成を比較例として、断熱用薄膜(単一材料)の厚さt0を変化させながら、1サイクルにおける燃焼室壁面温度Twallの変化を計算して調べた。その計算結果を図7,8に示す。図7は、クランク角(圧縮上死点が0°)に対する燃焼室壁面温度Twallの波形を示し、断熱用薄膜の厚さt0が10μm、50μm、100μm、500μmである場合の波形をそれぞれ示す。図8は、断熱用薄膜の厚さt0に対する燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTの特性を示す。
なお、燃焼室壁面温度Twallの計算の際には、1気筒の排気量を550cc、圧縮比を16、機関回転速度を2000rpm、燃料噴射量を50mm3/st、図示平均有効圧力を1.6MPa相当とした。そして、図2(B)に示す構成例においては、断熱材22−2を形成する材料の熱伝導率λ及び単位体積あたりの熱容量ρCを、λ=2.5[W/(m・K)]、ρC=2520×103[J/(m3・K)](ジルコニア相当)、断熱用薄膜20−2の気泡混入率を80%とした。また、比較例においては、断熱用薄膜を構成する単一材料(断熱用薄膜全体)の熱伝導率λ及び単位体積あたりの熱容量ρCを、λ=2.5[W/(m・K)]、ρC=2520×103[J/(m3・K)](ジルコニア相当)とした。
比較例においては、図7,8に示すように、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTが最大でも125℃程度(t0=100μmの場合)にとどまり、燃費改善効果は最大でも2%程度(t0=100μmの場合)にとどまっている。断熱用薄膜の厚さt0が100μmよりも薄いと、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTが減少することで、燃費改善効果が減少してほとんど得られなくなる。一方、断熱用薄膜の厚さt0が100μmよりも厚いと、ベース壁温が上昇することで、燃費改善効果が減少してほとんど得られなくなる。
これに対して図2(B)に示す構成例においては、図5,6に示すように、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを550℃〜650℃程度に大幅に増大させることができ、燃費改善効果を7〜8%程度に大幅に増大させることができる。図5,6に示す計算結果においては、t1=50μm〜200μmの範囲で、ベース壁温をほとんど上昇させることなく550℃〜650℃程度のスイング幅ΔTが得られ、7〜8%程度の燃費改善効果が得られる。そして、t1=100μmの場合に、スイング幅ΔTが最大となる。このように、図2(B)の構成により、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを大幅に増大させることができ、7〜8%程度の燃費改善効果が得られることが確認された。
ただし、ピストン12が往復運動するシリンダブロック内壁面9a上に断熱用薄膜20−1を形成した場合は、ピストン12に装着されたピストンリング42がシリンダブロック内壁面9a上の断熱用薄膜20−1に対し摺動することで、断熱用薄膜20−1にはピストンリング42からのせん断力が作用する。気泡31が形成された断熱用薄膜20−1は、燃焼ガス圧力には耐えるものの、気孔率を高めるとせん断力に対する強度が低下しやすくなる。そのため、シリンダブロック内壁面9a上の断熱用薄膜20−1については、ピストンリング42からのせん断力に対する強度を十分に確保して耐久性を向上させることが要求される。これに対して本実施形態では、断熱用薄膜20−1の気孔率を低くすることで、断熱用薄膜20−1の強度(せん断強度)を高めることができ、ピストンリング42からのせん断力に対する断熱用薄膜20−1の強度を十分に確保して、断熱用薄膜20−1の耐久性を向上させることができる。そして、摺動によるせん断力の作用しない断熱用薄膜20−2については、気孔率を高くすることで、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量をより低くすることができ、燃焼室壁面温度Twallのシリンダ内ガス温度Tgへの追従性をさらに向上させることができる。
しかし、断熱用薄膜20−1の気孔率を低くして強度を高めると、断熱用薄膜20−1の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量も高くなる。断熱用薄膜20−1の熱伝導率の増加に対して断熱効果を維持するためには、断熱用薄膜20−1の厚さを厚くする必要がある。ただし、断熱用薄膜20−1の気孔率を低くするとともに厚さを厚くすると、図9の計算結果に示すように、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTが減少する。ここで、図9は、クランク角(圧縮上死点が0°)に対する燃焼室壁面温度Twallの波形を示し、断熱用薄膜20−1の気孔率が80%で厚さが100μmである場合と、断熱用薄膜20−1の気孔率が50%で厚さが200μmである場合との波形をそれぞれ示す。さらに、断熱用薄膜20−1の厚さを厚くすると、断熱用薄膜20−1に熱が蓄積しやすくなり、吸気行程までに燃焼室壁面温度Twallが低下しにくくなる。オイルにより断熱用薄膜20−1の冷却を行わない場合(オイル冷却無しの場合)は、図9の燃焼室壁面温度Twallの計算結果に示すように、ベース壁温(吸気行程での燃焼室壁面温度Twall)が上昇する。ベース壁温が上昇すると、前述の(1)〜(5)の弊害が生じやすくなる。なお、図9に示す燃焼室壁面温度Twallの計算の際には、断熱材22−1を形成する材料の熱伝導率λ及び単位体積あたりの熱容量ρCを、λ=2.5[W/(m・K)]、ρC=2520×103[J/(m3・K)](ジルコニア相当)とし、その他の計算条件については、図5〜8に示す計算を行った場合と同様である。
これに対して本実施形態では、排気行程にてオイルジェット32から断熱用薄膜20−1にオイルを供給して断熱用薄膜20−1を冷却することで、図9におけるオイルによる強制冷却の場合に示すように、吸気行程までに燃焼室壁面温度Twallを十分低下させることができ、ベース壁温の上昇を抑えることができる。その結果、前述の(1)〜(5)の弊害が生じるのを防ぐことができ、熱損失Qの低減効果を向上させることができる。図9に示す計算結果においては、5%程度の燃費改善効果が得られることが確認された。
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
図10は、本実施形態に係る内燃機関1がディーゼルエンジン等の圧縮自着火式内燃機関である例を示す。内燃機関1が圧縮自着火式内燃機関の場合は、例えばピストン12が圧縮上死点付近に位置するときに燃料噴射弁19からシリンダ11内に燃料(例えば軽油)を直接噴射することで、燃焼室13内の燃料が自着火して燃焼する。そして、図10に示す構成例では、シリンダブロック内壁面9aに形成された断熱用薄膜20−1へオイルを供給するためのオイル供給手段として、オイルジェット(ボアジェット)32の他に、オイルジェット(ピストンジェット)33が設けられている。ピストン12には、オイルジェット33からのオイルが供給されるクーリングチャネル12bが形成されており、オイルジェット33は、排気行程にてオイルをクーリングチャネル12bへ向けて噴出させる。クーリングチャネル12bに供給されたオイルは、断熱用薄膜20−1へ向けて噴出する。排気行程中では、断熱用薄膜20−1上におけるピストン頂面12aの通り過ぎた箇所がオイルジェット32,33からのオイルによって冷却される。このように、図10に示す構成例では、オイルジェット32から断熱用薄膜20−1に供給されたオイルと、オイルジェット33からクーリングチャネル12bを介して断熱用薄膜20−1に供給されたオイルとによって、断熱用薄膜20−1の冷却を行うことができる。
さらに、本実施形態に係る内燃機関1が圧縮自着火式内燃機関の場合は、設定されたサイクル数に1回の割合で、シリンダブロック内壁面9aに形成された断熱用薄膜20−1に燃料が付着するように燃料噴射弁19から燃料を噴射することもできる。例えば図11に示すように、数サイクル〜数十サイクルに1回程度の割合で、燃焼前の圧縮行程にて燃料噴射弁19から噴射した燃料39を、シリンダブロック内壁面9a上部に形成された断熱用薄膜20−1に衝突させる。その際には、通常の圧縮上死点付近での燃料噴射の場合よりも燃料の噴射圧力を増大させることもできる。シリンダブロック内壁面9a上部に位置する断熱用薄膜20−1については、オイルジェット32,33からのオイルが供給されにくく、高温になりやすい。これに対して図11に示すように、数サイクル〜数十サイクルに1回程度の頻度で、燃料39をシリンダブロック内壁面9a上部の断熱用薄膜20−1に衝突させることで、シリンダブロック内壁面9a上部の断熱用薄膜20−1の冷却を行うことができる。その結果、シリンダブロック内壁面9a上部の断熱用薄膜20−1の高温化によるオイル切れ、ひいては焼き付きを防ぐことができる。さらに、シリンダブロック内壁面9a上部での潤滑性を向上させることができる。
また、本実施形態では、例えば図12に示すように、オイルジェット(ボアジェット)32のノズルを、オイルが噴出するオイル噴出孔52aが多数形成された多孔ノズル52にすることもできる。多孔ノズル52は、各オイル噴出孔52aから、シリンダブロック内壁面9aに形成された断熱用薄膜20−1のそれぞれ異なる箇所へ向けてオイルを噴出させる。この構成により、オイルジェット32(多孔ノズル52)からのオイルを断熱用薄膜20−1のより広い範囲に衝突させることができ、断熱用薄膜20−1のより広い範囲を冷却することができる。
また、本実施形態では、例えば図13に示すように、ピストン12に装着され且つシリンダブロック内壁面9aに形成された断熱用薄膜20−1に対し摺動するピストンリング42に、低摩擦材による被膜44を形成することもできる。ここでの被膜44については、ピストンリング42の少なくとも外周面に形成する。ここでの低摩擦材としては、例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)や窒化クロム等のセラミックを用いることができる。この構成により、断熱用薄膜20−1の高温化によりオイルが減少しても、焼き付きを防止することができる。
また、本実施形態では、例えば気泡31−1,31−2の径(大きさ)を不揃いにして、断熱用薄膜20−1,20−2の気孔率を断熱材22−1,22−2の内部の位置に応じて局所的に変化させる(分布を持たせる)こともできる。この構成によれば、断熱用薄膜20−1,20−2の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量に分布を持たせることができ、燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを燃焼室壁面の位置に応じて異ならせる(分布を持たせる)ことができる。
また、本実施形態では、例えば図14に示すように、シリンダブロック内壁面9aに形成された断熱用薄膜20−1に、この断熱用薄膜20−1を補強して強度を向上させるための高強度・高耐熱性の補強用繊維材23を多数混入させることもできる。ここでの補強用繊維材23は、断熱材22−1よりも高い強度を有し、断熱用薄膜20−1を繊維強化する機能を有する。補強用繊維材23は、断熱材22−1の内部に多数混入されており、燃焼室13内の燃焼ガスとは接触しない。ここでの補強用繊維材23の具体例としては、例えばSiC系セラミック繊維を挙げることができる。SiC系セラミック繊維においては、熱伝導率λは1.4〜2.5[W/(m・K)]程度であり、耐熱温度Tmは1300[℃]程度であり、強度(引張強度)σは2.8〜3.4[GPa]程度である。また、補強用繊維材23に炭素繊維を用いることもできる。炭素繊維においては、熱伝導率λは40[W/(m・K)]程度であり、耐熱温度Tmは無酸素雰囲気中で1600[℃]程度(酸素雰囲気中で500[℃]程度)であり、強度(引張強度)σは3.5[GPa]程度である。また、SiC系セラミック繊維と炭素繊維を組み合わせて補強用繊維材23に用いることもできる。図14に示す例では、補強用繊維材23は短繊維材であり、その繊維長さが断熱用薄膜20−1の厚さよりも短く設定され、例えば補強用繊維材23の繊維長さが断熱用薄膜20−1の厚さの1/2以下に設定される。これによって、断熱用薄膜20−1の厚さ方向の熱伝導率(膜表面20−1aからシリンダブロック9までの熱伝導率)が高くなるのを抑制することができる。図14に示す構成例によれば、断熱用薄膜20−1を繊維強化してその強度(せん断強度)をさらに向上させることができるので、ピストンリング42からのせん断力に対する断熱用薄膜20−1の耐久性をさらに向上させることができる。
また、本実施形態では、例えば図15,16に示すように、断熱用薄膜20−1(断熱材22−1)に混入する補強用繊維材23を長繊維材にすることもできる。ここで、図15はシリンダブロック内壁面9aに沿った断面図を示し、図16はシリンダブロック内壁面9aに直交する断面図を示す。図15,16に示す構成例では、長繊維材である補強用繊維材23が、断熱用薄膜20−1の厚さ方向と垂直方向、つまり断熱用薄膜20−1の面内方向(シリンダブロック内壁面9aと平行方向)に(ほぼ)沿って延びる状態で、断熱用薄膜20−1に多数混入されている。すなわち、補強用繊維材23の繊維方向は、断熱用薄膜20−1の厚さ方向とほぼ垂直である(シリンダブロック内壁面9aとほぼ平行である)。そのため、図15,16に示す構成例では、断熱用薄膜20−1の厚さ方向と垂直方向(補強用繊維材23が延びる繊維方向)の熱伝導率が、断熱用薄膜20−1の厚さ方向(補強用繊維材23が延びる繊維方向と垂直方向)の熱伝導率よりも高くなり、断熱用薄膜20−1の熱伝導率に異方性が生じる。例えば、補強用繊維材23を、少なくともシリンダ軸線方向にほぼ沿って延びるように(繊維方向がシリンダ軸線方向とほぼ平行になるように)配置することができる。なお、図15は、長繊維材である補強用繊維材23が格子状に形成された例を示している。
図15,16に示す構成例においても、ピストンリング42からのせん断力に対する断熱用薄膜20−1の耐久性をさらに向上させることができる。そして、図15,16に示す構成例によれば、断熱用薄膜20−1の熱を、シリンダブロック9に(断熱用薄膜20−1の厚さ方向に)伝わるのを抑制しながら、その厚さ方向と垂直方向(補強用繊維材23が延びる繊維方向)に逃がして均一化することができる。そのため、断熱用薄膜20−1におけるオイルが衝突しない箇所の温度も効率よく下げることができる。さらに、断熱用薄膜20−1に要求される耐熱温度を下げることができ、断熱用薄膜20−1(断熱材22−1)に用いる材料の選択性の自由度を高めることができる。
なお、断熱用薄膜20−1の厚さ方向と垂直方向(断熱用薄膜20−1の面内方向)にほぼ沿って延びる状態で断熱用薄膜20−1に混入する補強用繊維材23については、必ずしも格子状に形成する必要はなく、例えば図17に示すように一方向(例えばシリンダ軸線方向)にほぼ沿って並べることで、この一方向の熱伝導率を高めることもできる。ここで、図17は、シリンダブロック内壁面9aに沿った断面図を示す。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明の実施形態に係る内燃機関の概略構成を示す図である。 断熱用薄膜20−1,20−2の構成例を示す図である。 燃焼室壁面温度Twallをクランク角に対して変化させた場合の波形の例を示す図である。 燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTを変化させた場合の燃費改善効果を調べた計算結果を示す図である。 断熱用薄膜20−2の厚さt1を変化させながら、1サイクルにおける燃焼室壁面温度Twallの変化を調べた計算結果を示す図である。 断熱用薄膜20−2の厚さt1に対する燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTの特性を示す図である。 断熱用薄膜(単一材料)の厚さt0を変化させながら、1サイクルにおける燃焼室壁面温度Twallの変化を調べた計算結果を示す図である。 断熱用薄膜(単一材料)の厚さt0に対する燃焼室壁面温度Twallのスイング幅ΔTの特性を示す図である。 断熱用薄膜20−1の気孔率及び厚さを変化させながら、1サイクルにおける燃焼室壁面温度Twallの変化を調べた計算結果を示す図である。 本発明の実施形態に係る内燃機関の他の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る内燃機関の他の概略構成を示す図である。 オイルジェット32の構成例を示す図である。 ピストンリング42の構成例を示す図である。 断熱用薄膜20−1の他の構成例を示す図である。 断熱用薄膜20−1の他の構成例を示す図である。 断熱用薄膜20−1の他の構成例を示す図である。 断熱用薄膜20−1の他の構成例を示す図である。
符号の説明
1 内燃機関、9 シリンダブロック、9a シリンダブロック内壁面、10 シリンダヘッド、10a シリンダヘッド下面、11 シリンダ、12 ピストン、12a ピストン頂面、12b クーリングチャネル、13 燃焼室、14 吸気ポート、15 排気ポート、16 吸気弁、16a 吸気弁底面、17 排気弁、17a 排気弁底面、18 点火栓、19 燃料噴射弁、20−1,20−2 断熱用薄膜、22−1,22−2 断熱材、23 補強用繊維材、30 母材、30a 壁面、31−1,31−2 気泡、32,33 オイルジェット、42 ピストンリング、44 被膜、52 多孔ノズル、52a オイル噴出孔。

Claims (7)

  1. 燃焼室を形成する母材の少なくとも一部の、燃焼室内に臨む壁面に、断熱膜が形成された内燃機関であって、
    前記断熱膜は、母材よりも低い熱伝導率を有し且つ母材よりも低いまたは母材とほぼ同等の単位体積あたりの熱容量を有する材料の内部に気泡が多数形成された断熱材を含んで構成されており、
    前記断熱膜は、ピストンが往復運動するシリンダ内壁面と、当該シリンダ内壁面以外の燃焼室内に臨む壁面と、に形成されており、
    シリンダ内壁面に形成された断熱膜は、シリンダ内壁面以外の壁面に形成された断熱膜よりも気泡混入率が低く、
    シリンダ内壁面に形成された断熱膜は、膜厚が50μm以上200μm以下の範囲内であって、熱伝導率が0.5[W/(m・K)]以下であり、単位体積あたりの熱容量が1490×10[J/(m・K)]以下であり、
    排気行程にてシリンダ内壁面に形成された断熱膜へオイルを供給して当該断熱膜を冷却するオイル供給手段が設けられている、内燃機関。
  2. 請求項1に記載の内燃機関であって、
    シリンダ内壁面に形成された断熱膜には、当該断熱膜を補強するための補強用繊維材が混入されている、内燃機関。
  3. 請求項2に記載の内燃機関であって、
    前記補強用繊維材は、シリンダ内壁面に形成された断熱膜に、その厚さ方向と略垂直方向に沿って延びる状態で混入されている、内燃機関。
  4. 請求項1〜3のいずれか1に記載の内燃機関であって、
    燃料をシリンダ内に噴射する燃料噴射手段を備え、
    燃料噴射手段は、設定されたサイクル数に1回の割合で、シリンダ内壁面に形成された断熱膜に燃料が付着するように燃料を噴射する、内燃機関。
  5. 請求項1〜4のいずれか1に記載の内燃機関であって、
    オイル供給手段は、オイルが噴出するオイル噴出孔が多数形成された多孔ノズルを有し、
    多孔ノズルは、各オイル噴出孔から、シリンダ内壁面に形成された断熱膜のそれぞれ異なる箇所へ向けてオイルを噴出させる、内燃機関。
  6. 請求項1〜5のいずれか1に記載の内燃機関であって、
    ピストンに装着され且つシリンダ内壁面に形成された断熱膜に対し摺動するピストンリングに、低摩擦材による被膜が形成されている、内燃機関。
  7. 燃焼室を形成する母材の少なくとも一部の、燃焼室内に臨む壁面に、断熱膜が形成された内燃機関であって、
    前記断熱膜は、母材よりも低い熱伝導率及び母材よりも低い単位体積あたりの熱容量を有し、
    前記断熱膜は、ピストンが往復運動するシリンダ内壁面と、当該シリンダ内壁面以外の燃焼室内に臨む壁面と、に形成されており、
    シリンダ内壁面に形成された断熱膜は、シリンダ内壁面以外の壁面に形成された断熱膜と比較して、強度が高いとともに、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量が高く、
    シリンダ内壁面に形成された断熱膜は、膜厚が50μm以上200μm以下の範囲内であって、熱伝導率が0.5[W/(m・K)]以下であり、単位体積あたりの熱容量が1490×10[J/(m・K)]以下であり、
    排気行程にてシリンダ内壁面に形成された断熱膜へオイルを供給して当該断熱膜を冷却するオイル供給手段が設けられている、内燃機関。
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