JP7129759B2 - 遮熱被膜層形成方法、および、遮熱被膜層を備えるエンジン部品 - Google Patents

遮熱被膜層形成方法、および、遮熱被膜層を備えるエンジン部品 Download PDF

Info

Publication number
JP7129759B2
JP7129759B2 JP2017069106A JP2017069106A JP7129759B2 JP 7129759 B2 JP7129759 B2 JP 7129759B2 JP 2017069106 A JP2017069106 A JP 2017069106A JP 2017069106 A JP2017069106 A JP 2017069106A JP 7129759 B2 JP7129759 B2 JP 7129759B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
resin
thermal barrier
coating layer
barrier coating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017069106A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018168836A (ja
Inventor
貴芳 寺門
秀次 谷川
直之 森
一敏 野村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Heavy Industries Ltd filed Critical Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority to JP2017069106A priority Critical patent/JP7129759B2/ja
Publication of JP2018168836A publication Critical patent/JP2018168836A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7129759B2 publication Critical patent/JP7129759B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T50/00Aeronautics or air transport
    • Y02T50/60Efficient propulsion technologies, e.g. for aircraft

Landscapes

  • Cylinder Crankcases Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本開示は、遮熱被膜層形成方法、および、遮熱被膜層を備えるエンジン部品に関する。
現在、自動車等の移動体や施設の動力としては、主に、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、ガスエンジン等のエンジン(内燃機関)が使用されており、エンジンの低燃費率化(効率向上)は、顧客メリットや環境負荷低減の観点から重要となっている。エンジンの低燃費化のためには、エンジンの筒内燃焼に起因する熱損失の低減が大きな役割を果たすことから、例えば特許文献1~4では断熱材を燃焼室の壁面に塗布することにより熱損失の低減を図っている。
具体的には、特許文献1には、燃焼室の壁面(触火面)を形成するエンジン部品の基材の表面に、熱伝導率の低いセラミック等の低熱伝導率体層を溶射によって形成することが開示されている。特許文献2には、燃焼室に臨むアルミニウム系壁面に陽極酸化被膜(遮熱膜)を形成することが開示されている。この特許文献2には、陽極酸化被膜に一般に形成される表面亀裂(第1のミクロ孔、ナノ孔)を封止物で封止し、内部欠陥(第2のミクロ孔)の少なくとも一部は封止しないことにより、低熱伝導率かつ低熱容量であって、断熱性およびスイング特性に優れた薄い陽極酸化被膜を形成することも開示されている。なお、上記のスイング特性については、断熱性能を具備しながらも、燃焼室内のガス温度に陽極酸化被膜の温度が追随する特性であると説明されている。
また、特許文献3~4には、内燃機関の燃焼室など、高温ガスに晒される金属部材の基材の表面に形成される断熱膜(断熱層)に中空粒状体を分散させることで、高い断熱効果をえることが開示されている。特許文献3では、シリカガラスの殻で囲まれた中空部を有する中空粒状体を含むバインダをスプレイで基材上に塗布した後に焼成することで、遮熱性及び耐久性の高い遮熱膜を形成している。特許文献4では、ポリマー粒子をセラミック前駆体に分散させた分散材を、ポリマー粒子の炭化温度以上で焼成することにより、ポリマー粒子を炭素粒子に変化させることで、断熱特性を高めている。
特開2005-146925号公報 特開2015-31226号公報 特開2013-177693号公報 特開2014-101258号公報
例えば燃焼室の壁面に、低熱伝導率かつ高熱容量のセラミックなどの断熱層に形成すると、断熱層によって定常的な燃焼室表面温度の上昇が生じて、体積効率の低下を招く可能性がある。また、特にガスエンジンにおいては、給気が壁面によって温められることでノッキングが発生し易い状態となり、燃焼の悪化を引き起こす可能性もある。この点、特許文献2では、エンジン部品の表面に形成される陽極酸化被膜(遮熱膜)が低熱伝導率かつ低熱容量であることから、体積効率の低下やノッキングの発生の抑制を図れる。
しかしながら、エンジン部品の表面への陽極酸化被膜の形成はその基材がアルミニウムやチタンなどである必要があり、例えば鋳鉄材には形成できないなど、陽極酸化処理を適用可能な材料が限定される。この点、鋳鉄製のエンジン部品の表面にアルミニウムをメッキした後、陽極酸化処理を行うことで、エンジン部品の表面に陽極酸化被膜を形成する方法も考えられるが、コストが増大する。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、幅広い基材材料に適用可能な、低熱伝導率かつ低熱容量の遮熱被膜層を形成する遮熱被膜層形成方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る遮熱被膜層形成方法は、
エンジンを構成するエンジン部品の遮熱被膜層を形成する遮熱被膜層形成方法であって、
セラミックおよび樹脂を含有するコーティング材を前記エンジン部品の基材に溶射する溶射ステップと、
前記溶射ステップによって前記エンジン部品の基材に溶射された前記コーティング材からなる樹脂含有セラミック層に含有される前記樹脂を加熱により除去することにより、複数の空孔を有する多孔質セラミック層を有する前記遮熱被膜層を形成する樹脂除去ステップと、を備える。
上記(1)の構成によれば、溶射によってコーティング材を基材に堆積させた後、堆積されたコーティング材(樹脂含有セラミック層)に含有されている樹脂を加熱によって除去する。このように、溶射によって、一般に低熱伝導率、高熱容量であり断熱性に優れるセラミックの内部に空孔を形成することにより、断熱性に加えて、低熱伝導率、低熱容量の性質を有する多孔質セラミック層を備える遮熱被膜層をエンジン部品の基材上に低コストで形成することができる。よって、例えば、燃焼室の壁面を形成するエンジン部品の表面に遮熱被膜層を形成することにより、燃焼行程時には断熱効果による熱損失の低減を図ることができると共に、給気行程時には壁面温度の上昇が抑制されることによる体積効率の向上、ノッキングの発生の抑制を図ることができ、エンジンの燃費性能(効率)の向上を図ることができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記樹脂除去ステップは、前記エンジンの燃焼行程で発生する熱により前記加熱を行う。
上記(2)の構成によれば、エンジンの運転時における燃焼による熱を利用して、樹脂除去ステップが行われる。これによって、樹脂除去ステップを行うための加熱工程を、エンジン(エンジン部品)の製造工程における一工程として個別に設ける必要がなく、製造時間、製造コストの抑制を図ることができる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)~(2)の構成において、
前記樹脂含有セラミック層または前記多孔質セラミック層の厚さは50μm~200μmであり、かつ、前記コーティング材または前記樹脂含有セラミック層に含有される前記樹脂の最大径は1μm~80μmである。
多孔質セラミック層が厚すぎると、給気行程時に給気の温度に追従した温度低下の程度が小さくなるなど、ガス温度の変化への追従性が悪化する。また、樹脂の最大径が大きすぎると、空孔がその分大きくなり、多孔質セラミック層の耐久性などを低下させる一方で、樹脂の最大径が小さすぎると、ガス温度の変化への追従性が悪化する。
上記(3)の構成によれば、ガス温度の変化への良好な追従性および耐久性を有する遮熱被膜層を形成することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の構成において、
前記コーティング材における前記セラミックに対する前記樹脂の混合比は、5重量%~40重量%である。
上記(4)の構成によれば、混合比を上記のように制御することにより、遮熱被膜層が備える多孔質セラミック層の気孔率を30%~60%にすることができ、性能、信頼性の面から燃焼室などに適した遮熱被膜層を形成することができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の構成において、
前記溶射ステップの後に、前記樹脂含有セラミック層または前記多孔質セラミック層の表面を覆うための表面緻密層を形成する表面緻密層形成ステップを、さらに備える。
コーティング材の溶射により堆積された樹脂含有セラミック層の表面に樹脂が達している場合には、樹脂含有セラミック層から樹脂を除去した後にできる空孔へ、未燃の燃料や排ガスが侵入することによる遮熱被膜層の耐久性や遮熱性などが低下する可能性が考えられる。
上記(5)の構成によれば、表面緻密層によって遮熱被膜層の表面を封止することができ、上述した耐久性や遮熱性の低下などの防止を図ることができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記表面緻密層形成ステップは、前記表面緻密層を形成する材料を溶射することにより、前記表面緻密層を形成する。
上記(6)の構成によれば、表面緻密層の形成を、樹脂含有セラミック層の堆積方法と同じ方法となる溶射により行うことによって、製造コストを抑制することができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記表面緻密層形成ステップは、前記樹脂含有セラミック層または前記多孔質セラミック層の表面を溶融することにより、前記表面緻密層を形成する。
上記(7)の構成によれば、例えば、樹脂含有セラミック層または多孔質セラミック層の表面にレーザ溶融処理を行うなど、その表面の溶融処理によって表面緻密層を形成できるので、製造コストを抑制することができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)~(7)の構成において、
前記表面緻密層の気孔率は20%以下である。
上記(8)の構成によれば、遮熱被膜層の空孔を確実に封止することが可能な表面緻密層を、その強度を確保しつつ、形成することができる。
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)~(8)の構成において、
前記遮熱被膜層の表面を研磨する表面平滑処理ステップを、さらに備える。
遮熱被膜層の表面が粗いと、エンジンの摺動部における摩擦抵抗の増大や、ガス流れを阻害するなど、エンジンの効率を低下させる可能性がある。
上記(9)の構成によれば、遮熱被膜層によって、エンジンの摺動部における摩擦抵抗の増大や、ガス流れの阻害が生じるのを防止することができる。なお、遮熱被膜層の表面は、表面緻密層を有する場合には表面緻密層の表面であり、表面緻密層を有しない場合には樹脂含有セラミック層または多孔質セラミック層の表面となる。
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)~(9)の構成において、
前記基材は、コーティング層を有している。
上記(10)の構成によれば、コーティング材と基材との密着性、耐酸化性等を向上することができる。
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係るエンジン部品は、
エンジンを構成するエンジン部品であって、
基材と、
前記基材の表面に形成された、複数の球状の空孔を有する多孔質セラミック層を含む遮熱被膜層と、を備え、
前記多孔質セラミック層の気孔率は30~60%である。
上記(11)の構成によれば、エンジン部品は、その基材の表面に形成された気孔率が30~60%である多孔質セラミック層を有する遮熱被膜層を備える。また、上述した溶射を用いた遮熱被膜層形成方法によって多孔質セラミック層の空孔は、柱状ではない、球状の形状を有する。これによって、エンジン部品の表面を断熱化しつつ、低熱伝導率、低熱容量の性質を備えるものにすることができる。換言すれば、エンジン部品の表面を断熱化しつつ、給気や排ガスのガス温度の変化に良好に追従するものとすることができる。よって、例えば燃焼室を形成するエンジン部品が遮熱被膜層を備えることで、燃焼行程や排気工程においては、燃焼熱や排ガスの温度に追従して壁温が上昇されるので、熱損失を抑制することができる。また、給気行程や圧縮工程においては、給気の温度に追従して壁温が低下されるので、体積効率の向上およびノッキングの抑制を図ることができる。したがって、このようなエンジン部品をエンジンが備えることにより、燃費性能を向上させることができる。
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記遮熱被膜層の厚さは50μm~200μmであり、かつ、前記球状の空孔の最大径は1μm~80μmである。
上記(12)の構成によれば、上記(3)と同様の効果を奏することができる。
(13)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記遮熱被膜層は、前記多孔質セラミック層の表面を覆う表面緻密層を有する。
上記(13)の構成によれば、上記(5)と同様の効果を奏することができる。
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記表面緻密層の気孔率は20%以下である。
上記(14)の構成によれば、さらに、上記(8)と同様の効果を奏することができる。
(15)幾つかの実施形態では、上記(11)~(14)の構成において、
前記基材は、コーティング層を有している。
上記(15)の構成によれば、さらに、上記(10)と同様の効果を奏することができる。
(16)幾つかの実施形態では、上記(11)~(15)の構成において、
前記エンジン部品の基材は鋳鉄で形成される。
上記(16)の構成によれば、陽極酸化被膜処理などができない鋳鉄材を基材とするエンジン部品であっても、その表面に、複数の球状の空孔を有する多孔質セラミック層を含む遮熱被膜層が形成されたエンジン部品を提供することができる。
(17)幾つかの実施形態では、上記(11)~(16)の構成において、
前記多孔質セラミック層は、セラミックおよび樹脂を含有するコーティング材を前記基材に溶射した後、加熱によって、溶射された前記コーティング材から前記樹脂を除去することにより、前記基材の表面に形成されている。
上記(17)の構成によれば、溶射により、球状の空孔を形成することができる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、幅広い基材材料に適用可能な、低熱伝導率かつ低熱容量の遮熱被膜層を形成する遮熱被膜層形成方法が提供される。
本発明の一実施形態に係る遮熱被膜層形成方法のフローを示す図である。 本発明の一実施形態に係るエンジンの構成を概略的に示す図である。 本発明の一実施形態に係るエンジン部品の表面に形成された遮熱被膜層を概略的に示す図であり、例えば図2のAの拡大図に対応する。 本発明の一実施形態に係る遮熱被膜層形成方法のフローを示す図であり、遮熱被膜層は表面緻密層を有する。 本発明の一実施形態に係る遮熱被膜層による効果を説明する図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る遮熱被膜層形成方法のフローを示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係るエンジン7の構成を概略的に示す断面図である。図3は、本発明の一実施形態に係るエンジン部品6の表面に形成された遮熱被膜層1を概略的に示す図であり、例えば図2のAの拡大図に対応する。図4は、本発明の一実施形態に係る遮熱被膜層形成方法のフローを示す図であり、遮熱被膜層1は表面緻密層4を有する。図5は、本発明の一実施形態に係る遮熱被膜層1による効果を説明する図である。
図1に示す遮熱被膜層形成方法は、エンジン部品6の遮熱被膜層1を形成する方法である。換言すれば、遮熱被膜層1を備えるエンジン部品6を製造する製造方法でもある。図2に示すように、上記のエンジン部品6はエンジン7を構成する部品である。図2に示すエンジン7は副室式ガスエンジンであり、例えば、エンジン本体を構成するシリンダブロック71およびシリンダヘッド72はエンジン部品6である。また、エンジン本体の内部においてシリンダを形成するシリンダ壁7wを覆うように設置されているシリンダライナ73や、シリンダと共に主燃焼室Rmを画定するピストン74、主燃焼室Rmに面する給気バルブ75i、排気バルブ75e、噴孔により主燃焼室Rmと連通する副室を有する副室形成部材76も、エンジン部品6である。さらに、エンジン本体に接続される給気管77iおよび排気管77e、排気管77e側に設置されるタービンTおよび給気管77i側に設置されるコンプレッサCを有する過給機78もエンジン部品6である。
このように複数のエンジン部品6のなかで、遮熱被膜層1は、例えば主燃焼室Rmの壁面(触火面)などの、エンジン7の燃焼によって高熱にさらされるような部分を含むエンジン部品6の表面に形成するのが望ましい。このようなエンジン部品6としては、例えば、図2に示すように、主燃焼室Rmの壁面を形成するシリンダのシリンダ壁7wやシリンダ壁7wの少なくとも一部を覆うシリンダライナ73、ピストン74の他、副室形成部材76の主燃焼室Rmに面する部分、バルブ(75i、75e)、過給機78のタービンハウジングなどのハウジングの排ガスeと接触する面、などが挙げられる。ただし、これらには限定されず、遮熱被膜層1は、上記以外のエンジン部品6に形成されても良い。また、遮熱被膜層1は、個々のエンジン部品6の表面の少なくとも一部に形成される。
他方、上記の遮熱被膜層1は、図3に示すように、複数の空孔Sを内部に有するセラミック層(多孔質セラミック層3)を備えている。そして、下記で説明する遮熱被膜層形成方法によってエンジン部品6の基材5の表面に形成されることにより、空孔Sは球状の形状を有する。幾つかの実施形態では、図3および図4に示すように、遮熱被膜層1は、多孔質セラミック層3と、多孔質セラミック層3の表面(基材5と接する側の反対側となる面)を覆うように形成された表面緻密層4と、を備えている。他の幾つかの実施形態では、図1に示すように、遮熱被膜層1は、表面緻密層4を備えておらず、多孔質セラミック層3からなっていても良い。
よって、エンジン部品6は、基材5と、この基材5の表面に形成された、複数の球状の空孔を有する多孔質セラミック層3を少なくとも含む遮熱被膜層1と、を有することになる。例えばエンジン本体が鋳鉄を主成分とする鋳鉄製であれば、基材5は鋳鉄で形成されることになる。幾つかの実施形態では、図1、図4に示すように、基材5は、コーティング層52を有していても良い。図1、図4に示す実施形態では、コーティング層52は、例えば、Ni-Crなどの金属材料による金属コーティング層となっている。この場合には、基材5は、表面のコーティング層52と、コーティング層52以外を形成する部分(以下、バルク部51)とから形成される。このコーティング層52は基材5と遮熱被膜層1との密着性等の向上を目的とするものであり、バルク部51と異なる材料からなっても良いし、同一の材料であっても良い。コーティング層52は、金属以外の材料を含んでいても良いし、金属以外の材料からなっていても良い。バルク部51と同一の材料である場合には製造方法が異なるなどによって、バルク部51とは特性が異なるものとされる。
以下、上述したようなエンジン部品6の遮熱被膜層1を形成する遮熱被膜層形成方法について、図1、図4を用いて詳細に説明する。図1、図4に示すように、遮熱被膜層形成方法は、溶射ステップ(S1)と、樹脂除去ステップ(S2)と、を備える。
溶射ステップ(S1)は、セラミック2cおよび樹脂2rを含有するコーティング材Mをエンジン部品6の基材5に溶射する。本ステップにより、所定の径(以下、樹脂径Lr)を有する球状の樹脂2rが内部に複数分散された状態で存在するセラミック層(以下、樹脂含有セラミック層2)が基材5の表面に所定の厚さLで形成される。これは、粉末状の樹脂2rを構成する樹脂2rの各粒子が球状をしているためであり、粒子同士の凝集が少ないことや、粒子の流動性が良いことによる。ここで、球状とは、全体として柱状ではなく、球状に近いという意味であり、厳密に球であることを要しない。略球状であっても良い。例えば、全体として楕円体状や、球状で表面に突起や凹みが部分的にあっても、全体として球状(略球状)であれば、ここでいう球状に含まれる。なお、樹脂含有セラミック層2に存在する樹脂径Lrは、溶射ステップ(S1)の前にコーティング材Mに存在する樹脂2rの樹脂径Lrよりも、溶射時の高温の雰囲気によって樹脂径Lrが減少していても良い。
コーティング材Mは、例えば粉体のセラミック2cと粉体の樹脂2rとを混合して準備される。セラミック2cは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)であっても良い。あるいは、ジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrSiO4)、アルミナ(Al2O3)、コーディライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、フェライト(MeFe2O4)、二酸化ケイ素(SiO2)などのセラミックであっても良い。YSZは、熱伝導率の観点から優れている。他方、樹脂2rは、ポリエステル、ポリイミド、ABS、ナイロン、ポリカーボネート、ポリスチレンなどであっても良い。
また、溶射は、コーティング材Mを加熱により溶融または軟化させて微粒子状にし、加速させて基材5に衝突させることで、コーティング材Mを堆積させるコーティング技術である。溶射により、基材5の表面上に厚さLのコーティング材Mを堆積することが可能である。なお、コーティング材Mの溶射の際には基材5を予熱しても良く、この場合には、溶射により基材5に堆積されるコーティング材Mと基材5との間の歪みや残留応力が生じにくい。逆に、コーティング材Mの溶射の際には基材5を予熱しなくても良く、予熱によるコストを不要とできる。
溶射を用いてコーティング材Mを基材5の表面に堆積するによって、例えば陽極酸化被膜の形成ができない鋳鉄をバルク部51とするエンジン部品6であっても、溶射であれば物理的に表面に遮熱被膜層1を形成(成膜。以下同様。)することから、遮熱被膜層1を形成することが可能であると共に、製造効率が高い。さらに、セラミック2cとして熱伝導率の低いYSZを用いた場合、陽極酸化被膜に比べて膜厚を薄くすることが可能である。その他、溶射であれば、焼結により行う場合よりも、割れに対して強い多孔質セラミック層3を形成することが可能であること、常温での成膜も可能であるため真空蒸着のようにエンジン部品6を真空中に置くなどの必要がなく、大型のエンジン部品6に対しても容易に適用可能であること、めっき処理よりも、遮熱性および基材5との密着性に優れた層の形成が可能であること、といった利点が挙げられる。つまり、溶射によって、耐久性や質の良い層(膜)を低コストで形成(成膜)できる。
樹脂除去ステップ(S2)は、溶射ステップ(S1)によってエンジン部品6の基材5に溶射されたコーティング材Mからなる樹脂含有セラミック層2に含有される樹脂2rを加熱により除去することにより、複数の空孔Sを有する多孔質セラミック層3を有する遮熱被膜層1を形成する。換言すれば、加熱によって、樹脂含有セラミック層2に含有される樹脂2rを空孔Sに置き換える。本ステップによって、樹脂2rが気化する温度以上に加熱されることで、樹脂含有セラミック層2に存在していた樹脂2rが気化し、外部に抜け出だしていく。これによって、樹脂含有セラミック層2において気化する前の樹脂2rを取り囲んでいたセラミックにより、空孔Sが形成される。例えば、中空ガラス等の中空材の材料が多孔質セラミック層3には残存せず、多孔質セラミック層3の破損の可能性を低減でき、信頼性の向上を図ることができる。
この樹脂除去ステップ(S2)は、幾つかの実施形態では、エンジン部品6をエンジン7に組み込む前や、エンジン7の試験前の製造の一工程(加熱工程)として行っても良い。他の幾つかの実施形態では、エンジン7の燃焼行程で発生する熱により加熱を行っても良い。すなわち、エンジン7の燃焼行程は、燃焼サイクルの一工程であり、樹脂除去ステップ(S2)は、エンジン部品6を用いてエンジン7に組み立てた後、エンジン7で燃料を燃焼させてエンジン7を運転することにより行われる。本実施形態は、エンジン7の運転時に遮熱被膜層1の温度に樹脂2rが消失する温度に達するような場合に可能であり、エンジン7の運転時における燃焼による熱を利用して行われる。これによって、樹脂除去ステップ(S2)を行うための加熱工程を、エンジン7(エンジン部品6)の製造工程における一工程として個別に設ける必要がなく、製造時間、製造コストの抑制を図ることが可能となる。こうして、エンジン部品6の基材5の表面に、樹脂径Lrと同様の径を有する空孔Sが内部に複数分散された状態で存在する多孔質セラミック層3が、樹脂含有セラミック層2と同様の厚さで形成される。
次に、上述した2つのステップ(S1およびS2)を有する遮熱被膜層形成方法について、図1のフローに沿って説明する。なお、図4の同一のステップも以下の説明と同じである。なお、以下の説明では、コーティング層52を金属コーティング層52として説明する。
まず、図1のステップS0において、前準備として、表面に金属コーティング層52を有した基材5を形成するために、基材5のバルク部51の表面に金属コーティング層52を形成している。この金属コーティング層52は、バルク部51と、上述した遮熱被膜層1との密着性や耐酸化性の向上の目的で施工される。なお、本ステップは任意のステップであり、エンジン部品6の基材5の表面に金属コーティング層52が既に形成されている場合には、本ステップを改めて実行する必要がないことは言うまでもない。また、本ステップは、例えば、バルク部51が合金である場合などに行っても良い。
引き続くステップS1において、上述した溶射ステップを実行し、基材5の表面に樹脂含有セラミック層2を形成する。具体的には、加熱により溶融もしくは軟化した微粒子状のコーティング材MをノズルNから吹き付けて、コーティング材Mを基材5上に凝固・堆積させる。なお、基材5を500℃~600℃程度に予熱し、この状態で、ノズルNから吹き付けても良い。その後、ステップS2において、上述した樹脂除去ステップを実行し、樹脂含有セラミック層2に含有された樹脂2rを空孔Sに置き換えることで、多孔質セラミック層3を形成する。
上述した溶射ステップ(S1)および樹脂除去ステップ(S2)を備える遮熱被膜層形成方法により主燃焼室Rmの壁面に遮熱被膜層1を形成した場合について、エンジン7の1燃焼サイクルにおける表面温度の変化を、図5を用いて説明する。図5には、比較例として、主燃焼室Rmが、その壁面に、上述した遮熱被膜層1が有するような空孔Sを有しないセラミック層(断熱層)を有する場合(細点線)と、上述した遮熱被膜層1および断熱層を有しない場合となる膜なしの場合(一点鎖線)の2つを記載している。ここで、図5では、太破線で示すように、主燃焼室Rmの給気aや排ガスeのガス温度は、4サイクルエンジンの1サイクルにおいて、燃焼行程での燃焼により最高温度は温度T7まで達する一方で、給気行程において給気a(新気)が導入されることにより、温度T0まで大きく低下している。なお、以下の説明では、温度はT7>T6>T5>T4>T3>T2>T1>T0である。
このようなガス温度(太破線)の変化に対して、図5に示すように、比較例である膜なしの場合(一点鎖線)では、1燃焼サイクルにおける表面温度(壁面温度)は、温度T1でほぼ一定となっている。この場合は、図示された他の場合と比較して断熱性が悪く、主燃焼室Rmでの燃焼により生じた熱は、シリンダ壁7w内部のウォータジャケット(不図示)を流れる冷却水で冷やされることで、比較的低温である温度T1で維持されている。
また、他の比較例として、主燃焼室Rmが断熱層を有している場合(細点線)では、断熱層により主燃焼室Rmの熱が逃げづらく、断熱層の表面温度(細点線)は温度T1よりも高い温度T3付近で上下に変動している。具体的には、クランク角度の変化に従って、燃焼行程においては一時的に温度T3より高い温度T4付近まで上昇し、その後はなだらかに低下するように推移しており、最終的には、給気行程の終了後に温度T3よりも低い温度T2にまで低下している。このように、断熱層の場合は、膜なしの場合(一点鎖線)よりも断熱性は向上される。その一方で、断熱層は高熱容量のため、特に給気行程において、ガス温度が温度T4よりも高い温度T5から温度T0まで急激に低下するのに比較して、なだらかにしか変化しておらず、ガス温度(太破線)への追従性が小さい。
これに対して、本発明の遮熱被膜層1の表面温度(太実線)は、燃焼行程において温度T6にまで上昇していたところから、給気行程では、温度T1を下回る温度T1と温度T0との間の温度にまで低下している。つまり、細破線で示す断熱層の比較例が給気行程においてなだらかに低下するのに比べて、ガス温度の低下に対してより良く追従している。よって、給気行程においてガス温度に追従して温度が低下されるので、主燃焼室Rmの温度が低下しており、体積効率の向上およびノッキングの発生の抑制がなされている。他方、図5に示す実施形態では、本発明の遮熱被膜層1の表面温度(太実線)は、燃焼行程における最高温度が、比較例の断熱層(細破線)の最高温度(温度T4)よりも高い温度T6にまで上昇しているなど、燃焼行程において温度がさらに逃げづらくなっており、断熱性が向上されることで、熱損失が低減されている。
上記の構成によれば、溶射によってコーティング材Mを基材5に堆積させた後、堆積されたコーティング材M(樹脂含有セラミック層2)に含有されている樹脂2rを加熱によって除去する。このように、溶射によって、一般に低熱伝導率、高熱容量であり断熱性に優れるセラミック2cの内部に空孔Sを形成することにより、断熱性に加えて、低熱伝導率、低熱容量の性質を有する多孔質セラミック層3を備える遮熱被膜層1をエンジン部品6の基材5上に低コストで形成することができる。よって、例えば、燃焼室の壁面を形成するエンジン部品6の表面に遮熱被膜層1を形成することにより、燃焼行程時には断熱効果による熱損失の低減を図ることができると共に、給気行程時には壁面温度の上昇が抑制されることによる体積効率の向上、ノッキングの発生の抑制を図ることができ、エンジン7の燃費性能(効率)の向上を図ることができる。
また、幾つかの実施形態では、樹脂含有セラミック層2または多孔質セラミック層3の厚さは50μm~200μmであり、かつ、コーティング材Mまたは樹脂含有セラミック層2に含有される樹脂2rの最大径は1μm~80μmである。ここで、多孔質セラミック層3が厚すぎると、給気行程時に給気aの温度に追従した温度低下の程度が小さくなるなど、給気aや排ガスeなどのガス温度の変化への追従性が悪化する。また、樹脂2rの最大の樹脂径Lrが大きすぎると、空孔Sがその分大きくなり、多孔質セラミック層3の耐久性などを低下させる一方で、樹脂2rの最大の樹脂径Lrが小さすぎると、ガス温度の変化への追従性が悪化する。そこで、上述したように、樹脂含有セラミック層2または多孔質セラミック層3の厚さを50μm~200μmとしている。なお、樹脂含有セラミック層2を50μm~200μmとすることにより、遮熱被膜層1の多孔質セラミック層3の厚さも50μm~200μmとなる。
また、コーティング材Mに混合される樹脂2rの樹脂径Lrは、大きすぎた場合には、樹脂2rの除去後に形成される空孔Sが多孔質セラミック層3を貫通する状態が生じる可能性などがあることから、樹脂含有セラミック層2の厚さLよりも小さくするのが良い(Lr<L)。樹脂含有セラミック層2または多孔質セラミック層3の厚さが50μm~200μmの場合には、コーティング材Mに混合される樹脂2rの樹脂径Lrは1μm~80μm程度であり、溶射時の高温の雰囲気によって樹脂径Lrが減少する場合にはその分(α)を付加した1μm~(80+α)μm程度となる。つまり、樹脂径Lrは1μm~80μm程度であって、かつ、樹脂含有セラミック層2または多孔質セラミック層3の厚さよりも小さいものとなる。好ましくは、樹脂径Lrは、多孔質セラミック層3(樹脂含有セラミック層2)の厚さLの1/2~1/10である。なお、樹脂2rの最大の樹脂径Lrを1μm~80μmとすることで、遮熱被膜層1の多孔質セラミック層3の空孔Sの最大径も1μm~80μmとなる。
上記の構成によれば、ガス温度の変化への良好な追従性および耐久性を有する遮熱被膜層1を形成することができる。
また、幾つかの実施形態では、コーティング材Mにおけるセラミックに対する樹脂の混合比は、5重量%~40重量%である。これによって、遮熱被膜層1が備える多孔質セラミック層3の気孔率を、例えば35%~45%といった40%前後など、30%~60%にすることができ、性能、信頼性の面から燃焼室などに適した遮遮熱被膜層1を形成することができる。なお、気孔率は、多孔質セラミック層3の内部に形成された空孔Sや内部欠陥などの空隙の体積をVr、空隙を含む多孔質セラミック層3の体積をVcとすると、Vr÷Vcとなる。
次に、遮熱被膜層1が表面緻密層4を有する実施形態について、図4を用いて説明する。
幾つかの実施形態では、遮熱被膜層形成方法は、図4に示すように、溶射ステップ(S1)の後に、樹脂含有セラミック層2または多孔質セラミック層3の表面を覆うための表面緻密層4を形成する表面緻密層形成ステップ(S11)を、さらに備える。例えば、表面緻密層4の材料4mは、断熱性の高いセラミックを材料としても良い。ここで、コーティング材Mの溶射により堆積された樹脂含有セラミック層2の表面に樹脂2rが達している場合には、樹脂含有セラミック層2から樹脂2rを除去した後にできる空孔Sへ未燃燃料や排ガスeが侵入することによって、遮熱被膜層1の耐久性や遮熱性などが低下する可能性が考えられる。
この点、表面緻密層4は内部に小さな気孔(内部欠陥)が内在するが、表面緻密層4の材料は、樹脂含有セラミック層2のコーティング材Mとは異なり樹脂2rを含んでおらず、上述した空孔Sよりも気孔(内部欠陥)のサイズは小さく、多孔質セラミック層3よりも緻密となる。よって、空孔Sのサイズが大きく、多孔質セラミック層3を厚さ方向で貫通するよう空孔Sが存在している場合であっても、多孔質セラミック層3の表面に位置する空孔Sも含めて、表面緻密層4によってこれらの空孔への未燃燃料や排ガスeなどのガスの進入を防ぐことができ、高い遮熱効果および耐久性を得ることが可能となる。
なお、表面緻密層4は、エンジン部品6に形成された遮熱被膜層1の全体に形成されても良いし、エンジン部品6に形成された遮熱被膜層1の一部に形成されても良い。例えば、副室式ガスエンジンであれば噴孔から噴出するトーチ火炎が衝突する部分、ディーゼルエンジンであれば噴霧火炎が衝突する部分など、表面緻密層4を部分的に設けることで、遮熱被膜層1の信頼性を局所的に向上させることもできる。また、強度を確保する必要がある場合など、表面緻密層4の厚さLsが厚くなると、それだけ、遮熱被膜層1のガス温度への追従性が悪化する可能性があるが、表面緻密層4を必要な個所のみ部分的に形成することで、このような追従性が悪化する領域を最低限に留めることが可能となる。
上記の構成によれば、表面緻密層4によって遮熱被膜層1の表面を封止することができ、上述した耐久性や遮熱性の低下などの防止を図ることができる。
また、上述したように、表面緻密層4は、多孔質セラミック層3の表面の空孔Sを封止できる程度に密な膜である必要がある。また、気孔率は表面緻密層4の強度にも影響する。よって、幾つかの実施形態では、表面緻密層4の気孔率は20%以下に制御される。これによって、遮熱被膜層1の空孔Sを確実に封止することが可能な表面緻密層4を、その強度を確保しつつ、形成することができる。
また、表面緻密層4の厚さLsは、燃焼時の最大ガス圧に応じて決めても良く、一般的なエンジン(最大筒内圧10MPa~20MPa)に適用する場合には、気孔径が大きいほど厚さLsを厚くすることで、表面緻密層4の強度を保つことができる。例えば、多孔質セラミック層3のセラミックがYSZである場合には、表面緻密層4の厚さLsは、空孔Sの径(つまり、樹脂径Lr)の40%~60%程度であっても良い。
上述した表面緻密層形成ステップ(S11)は、幾つかの実施形態では、表面緻密層4を形成する材料4mを溶射することにより、表面緻密層4を形成しても良い(図4参照)。これによって、表面緻密層4の形成を、樹脂含有セラミック層2の堆積方法と同じ方法となる溶射により行うことによって、製造コストを抑制することができる。ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、表面緻密層形成ステップ(S11)は、樹脂含有セラミック層2または多孔質セラミック層3の表面を溶融することにより、表面緻密層4を形成しても良い。これによって、例えば、樹脂含有セラミック層2または多孔質セラミック層3の表面にレーザを照射することによりその表面を溶融するレーザ溶融処理などの溶融処理によって表面緻密層を形成できるので、製造コストを抑制することができる。その他の幾つかの実施形態では、表面緻密層形成ステップ(S11)は、蒸着などのめっき処理によって、表面緻密層4を形成しても良い。
また、幾つかの実施形態では、遮熱被膜層形成方法は、図4に示すように、遮熱被膜層1の表面を研磨する表面平滑処理ステップ(S12)を、さらに備える。遮熱被膜層1の表面が粗いと、エンジン7の摺動部における摩擦抵抗の増大や、給気aや排ガスeといったガスの流れを阻害するなど、エンジン7の効率(燃費)を低下させる可能性がある。よって、遮熱被膜層1の表面を滑らかに仕上げることにより、ガス流れの摩擦抵抗の低減を図ることができ、また、ピストン74やシリンダ壁7wなどのエンジン7の摺動部であれば摺動性や耐摩耗性の向上を図ることができる。また、表面緻密層4の材料の溶射の際の表面緻密層4の成膜時の条件や、レーザ照射条件などの溶融処理の際の条件により、表面緻密層4の表面の粗さを10μm程度に滑らかにした場合には、表面平滑処理ステップ(S12)は省略しても良い。
上述した表面緻密層形成ステップ(S11)および表面平滑処理ステップ(S12)をさらに備える遮熱被膜層形成方法を、図4のステップ順に説明する。
図4に示す実施形態では、上述した溶射ステップ(S1)の実行後であって、上述した樹脂除去ステップ(S2)の実行前のステップS11において、上述した表面緻密層形成ステップ(S11)を実行している。引き続く、ステップS12において、上述した表面平滑処理ステップ(S12)を実行し、表面緻密層4の表面の研磨を行う。その後、樹脂除去ステップ(S2)を、エンジン7の運転、あるいは、エンジン7の運転前の加熱工程で行っている。
ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、樹脂除去ステップ(S2)の実行後に、表面緻密層形成ステップ(S11)、表面平滑処理ステップ(S12)を、この順番で実行しても良い。なお、この場合には、樹脂除去ステップ(S2)は、エンジン7の運転ではなく加熱工程により行われる。
また、遮熱被膜層1は表面緻密層4を備えていない場合には、遮熱被膜層形成方法は、表面緻密層形成ステップ(S11)を備えていない。この場合には、表面平滑処理ステップ(S12)は、多孔質セラミック層3の表面を研磨あるいは溶融することになる。幾つかの実施形態では、遮熱被膜層形成方法は、溶射ステップ(S1)、樹脂除去ステップ(S2)、表面平滑処理ステップ(S12)の順で各ステップを実行しても良い。他の幾つかの実施形態では、遮熱被膜層形成方法は、溶射ステップ(S1)、表面平滑処理ステップ(S12)、樹脂除去ステップ(S2)、の順で各ステップを実行しても良い。
上記の構成によれば、遮熱被膜層1によって、エンジン7の摺動部における摩擦抵抗の増大や、ガス流れの阻害が生じるのを防止することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
1 熱被膜層
2 樹脂含有セラミック層
2c セラミック
2r 樹脂
3 多孔質セラミック層
4 表面緻密層
4m 表面緻密層4を形成する材料
5 基材
51 バルク部
52 コーティング層(金属コーティング層)
6 エンジン部品
7 エンジン
7w シリンダ壁
71 シリンダブロック
72 シリンダヘッド
73 シリンダライナ
74 ピストン
75e 排気バルブ
75i 給気バルブ
76 副室形成部材
77e 排気管
77i 給気管
78 過給機
C コンプレッサ
T タービン
Rm 主燃焼室
a 給気
e 排ガス
N ノズル
M コーティング材
Lr 樹脂径
S 空孔

Claims (15)

  1. エンジンを構成するエンジン部品の遮熱被膜層を形成する遮熱被膜層形成方法であって、
    セラミックおよび樹脂を含有するコーティング材を前記エンジン部品の基材に溶射する溶射ステップと、
    前記溶射ステップによって前記エンジン部品の基材に溶射された前記コーティング材からなる樹脂含有セラミック層に含有される前記樹脂を加熱により除去することにより、複数の空孔を有する気孔率30~60%の多孔質セラミック層を有する前記遮熱被膜層を形成する樹脂除去ステップと、を備え、
    前記コーティング材または前記樹脂含有セラミック層に含有される前記樹脂の最大径は1μm~80μm(ただし、10μm以下、且つ、70μm以上を除く)であり、
    前記コーティング材における前記セラミックに対する前記樹脂の混合比は、5重量%~40重量%(ただし、7.7重量%以下を除く)であり、
    前記樹脂の最大径は、前記多孔質セラミック層の厚さの1/2~1/10である
    ことを特徴とする遮熱被膜層形成方法。
  2. 前記樹脂除去ステップは、前記エンジンの燃焼行程で発生する熱により前記加熱を行うことを特徴とする請求項1に記載の遮熱被膜層形成方法。
  3. 前記樹脂含有セラミック層または前記多孔質セラミック層の厚さは50μm~200μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の遮熱被膜層形成方法。
  4. 前記溶射ステップの後に、前記樹脂含有セラミック層または前記多孔質セラミック層の表面を覆うための表面緻密層を形成する表面緻密層形成ステップを、さらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の遮熱被膜層形成方法。
  5. 前記表面緻密層形成ステップは、前記表面緻密層を形成する材料を溶射することにより、前記表面緻密層を形成することを特徴とする請求項4に記載の遮熱被膜層形成方法。
  6. 前記表面緻密層形成ステップは、前記樹脂含有セラミック層または前記多孔質セラミック層の表面を溶融することにより、前記表面緻密層を形成することを特徴とする請求項4に記載の遮熱被膜層形成方法。
  7. 前記表面緻密層の気孔率は20%以下であることを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の遮熱被膜層形成方法。
  8. 前記遮熱被膜層の表面を研磨する表面平滑処理ステップを、さらに備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の遮熱被膜層形成方法。
  9. 前記基材は、コーティング層を有していることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の遮熱被膜層形成方法。
  10. エンジンを構成するエンジン部品であって、
    基材と、
    前記基材の表面に形成された、複数の球状の空孔を有する多孔質セラミック層を含む遮熱被膜層と、を備え、
    前記多孔質セラミック層の気孔率は30~60%であり、かつ、前記球状の空孔の最大径は1μm~80μm(ただし、10μm以下、且つ、70μm以上を除く)であり、
    前記多孔質セラミック層は、セラミックおよび樹脂を含有するコーティング材を前記基材に溶射した後、加熱によって、溶射された前記コーティング材から前記樹脂を除去することにより、前記基材の表面に形成されており、
    前記樹脂の最大径は、前記多孔質セラミック層の厚さの1/2~1/10である
    ことを特徴とするエンジン部品。
  11. 前記遮熱被膜層の厚さは50μm~200μmであることを特徴とする請求項10に記載のエンジン部品。
  12. 前記遮熱被膜層は、前記多孔質セラミック層の表面を覆う表面緻密層を有することを特徴とする請求項10に記載のエンジン部品。
  13. 前記表面緻密層の気孔率は20%以下であることを特徴とする請求項12に記載のエンジン部品。
  14. 前記基材は、コーティング層を有していることを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載のエンジン部品。
  15. 前記エンジン部品の基材は鋳鉄で形成されることを特徴とする請求項10~14のいずれか1項に記載のエンジン部品。
JP2017069106A 2017-03-30 2017-03-30 遮熱被膜層形成方法、および、遮熱被膜層を備えるエンジン部品 Active JP7129759B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017069106A JP7129759B2 (ja) 2017-03-30 2017-03-30 遮熱被膜層形成方法、および、遮熱被膜層を備えるエンジン部品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017069106A JP7129759B2 (ja) 2017-03-30 2017-03-30 遮熱被膜層形成方法、および、遮熱被膜層を備えるエンジン部品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018168836A JP2018168836A (ja) 2018-11-01
JP7129759B2 true JP7129759B2 (ja) 2022-09-02

Family

ID=64018547

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017069106A Active JP7129759B2 (ja) 2017-03-30 2017-03-30 遮熱被膜層形成方法、および、遮熱被膜層を備えるエンジン部品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7129759B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009243355A (ja) 2008-03-31 2009-10-22 Toyota Central R&D Labs Inc 内燃機関
JP2012072746A (ja) 2010-09-30 2012-04-12 Mazda Motor Corp 断熱構造体
JP2013064388A (ja) 2011-09-20 2013-04-11 Mazda Motor Corp カーボン堆積判定方法及びカーボン除去方法並びに火花点火式直噴エンジン
JP2013213446A (ja) 2012-04-02 2013-10-17 Toyota Motor Corp 内燃機関とその製造方法
JP2017015053A (ja) 2015-07-06 2017-01-19 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07116583B2 (ja) * 1987-12-28 1995-12-13 トヨタ自動車株式会社 耐熱サイクル性溶射皮膜
JPH04147957A (ja) * 1990-10-09 1992-05-21 Toyota Motor Corp 断熱アルミニウム系部材
JPH0820857A (ja) * 1994-07-08 1996-01-23 Ishikawajima Harima Heavy Ind Co Ltd 多孔性セラミック膜の成膜方法
DE19542944C2 (de) * 1995-11-17 1998-01-22 Daimler Benz Ag Brennkraftmaschine und Verfahren zum Aufbringen einer Wärmedämmschicht

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009243355A (ja) 2008-03-31 2009-10-22 Toyota Central R&D Labs Inc 内燃機関
JP2012072746A (ja) 2010-09-30 2012-04-12 Mazda Motor Corp 断熱構造体
JP2013064388A (ja) 2011-09-20 2013-04-11 Mazda Motor Corp カーボン堆積判定方法及びカーボン除去方法並びに火花点火式直噴エンジン
JP2013213446A (ja) 2012-04-02 2013-10-17 Toyota Motor Corp 内燃機関とその製造方法
JP2017015053A (ja) 2015-07-06 2017-01-19 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018168836A (ja) 2018-11-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10995661B2 (en) Thermally insulated engine components using a ceramic coating
US11111851B2 (en) Combustion engine components with dynamic thermal insulation coating and method of making and using such a coating
EP2787207B1 (en) Engine combustion chamber structure, and inner wall structure of through channel
JP2014040820A (ja) エンジン燃焼室に臨む部材の断熱構造体及びその製造方法
WO2013125704A1 (ja) エンジン燃焼室構造、および流路の内壁構造
JP5910343B2 (ja) エンジン燃焼室部材の断熱構造体及びその製造方法
US10190533B2 (en) Internal combustion engine and method for coating internal combustion engine components
CN103890220A (zh) 具有热障涂层的汽缸衬垫
JP2010185291A (ja) 遮熱膜及びその形成方法
JP6065388B2 (ja) 断熱皮膜構造及びその製造方法
WO2019084370A1 (en) COMBUSTION ENGINE PARTS HAVING A DYNAMIC THERMO-INSULATING COATING AND METHOD FOR MANUFACTURING AND USING SUCH COATING
US20190194812A1 (en) Gap-filling sealing layer of thermal barrier coating
JP7129759B2 (ja) 遮熱被膜層形成方法、および、遮熱被膜層を備えるエンジン部品
JP6065389B2 (ja) 断熱構造体及びその製造方法
WO2018198786A1 (ja) 内燃機関のピストン及び内燃機関のピストン冷却制御方法
US20200141349A1 (en) Aluminum foam core piston with coaxial laser bonded aerogel/ceramic head
JP6451581B2 (ja) エンジン燃焼室の断熱構造
JP2013177693A (ja) 遮熱膜及びその形成方法
KR20230132480A (ko) 이식된 열 장벽 코팅 시스템
JPS61169241A (ja) 断熱部材
KR102429005B1 (ko) 다층 단열 코팅층 및 그 제조방법
CN211975136U (zh) 一种内燃机排气管
JP2019124189A (ja) 圧縮着火式エンジン
JP6424842B2 (ja) 遮熱膜形成方法および遮熱膜形成装置
Krishnamurthy Experimental Evaluation of Yttria Partially Stabilized

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191226

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20201117

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201201

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20210121

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210322

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210629

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210823

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220125

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220314

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220816

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220823

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7129759

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150