JP6424842B2 - 遮熱膜形成方法および遮熱膜形成装置 - Google Patents

遮熱膜形成方法および遮熱膜形成装置 Download PDF

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Description

この発明は遮熱膜形成方法および遮熱膜形成装置に関し、より詳細には、溶射法を用いた遮熱膜の形成方法および形成装置に関する。
従来、外部の熱が基材に入り込まないように、当該基材の表面に遮熱膜を形成することがある。また、このような遮熱膜を、プラズマ溶射、フレーム溶射といった溶射法によって形成することがある。溶射法では、基材表面に向けて噴射される高温フレーム(プラズマ溶射ではプラズマフレーム、フレーム溶射では燃焼フレーム)に、金属、セラミックス等の微粒子を含んだ遮熱膜の材料(溶射材)が導入される。この溶射材は、高温フレームの熱によって少なくとも一部が溶融状態となり、尚且つ、高温フレームによって運搬されて基材表面に噴き付けられ、これにより遮熱膜(溶射膜)が形成される。
溶射材を構成するセラミックス等の膜材料には通常、室温、大気圧雰囲気下で凝集して数10μmの二次粒子となるナノ粒子が使用される。但し、膜材料に使用できるナノ粒子の粒径には下限がある。何故なら、ナノ粒子の粒径が下限値(例えば25μm)を下回ることはナノ粒子のそれぞれの質量が小さくなることを意味し、故に、高温フレームの中心部にナノ粒子自体を導入することが難しくなるからである。このような問題に関し、特開2015−045068号公報には、セラミックス等のナノ粒子と、光硬化性または熱硬化性の樹脂とを複合した溶射材の製造方法、および、この複合材料を用いた溶射膜の形成方法が開示されている。
この複合材料は、具体的に次のように製造される。先ず、光硬化性または熱硬化性の液状樹脂中に、セラミックス等のナノ粒子を分散させて混合物を調製する。次いで、得られた混合物を光または熱により硬化させる。次いで、得られた硬化物を粉砕する。次いで、得られた粉砕物を分級し、上記ナノ粒子の平均粒径よりも大きい粒度範囲のものを上記複合材料とする。このような複合材料であれば、当該複合材料の各粒子の質量を、上記ナノ粒子のそれぞれの質量よりも大きくすることができる。従って、高温フレームへの導入の際に上記複合材料の各粒子を高温フレームの中心部に到達させて、少なくとも一部を溶融状態にして基材表面に噴き付けることができる。
特開2015−045068号公報 特開2011−256465号公報 特開平8−111307号公報
ところで、溶射膜の遮熱性能は熱伝導率により評価されることが一般的であり、当該溶射膜の熱伝導率が低いほど遮熱性能が高くなる。この熱伝導率について、本発明者らが上述した溶射膜の評価を行ったところ、目標とする熱伝導率に遠く及ばないことが判明した。また、成膜効率を高める目的で樹脂中のナノ粒子の密度を高めると、得られた溶射膜の熱伝導率が上昇する傾向となることも判明した。このような結果が得られた理由は、高温フレームによって運搬される間に、少なくとも一部が溶融状態となる上記複合材料の粒子同士が結合し、基材表面に噴き付けられるときには既に当該複合材料の粒径が拡大したためであることが予想された。
本発明は、上述した課題の少なくとも1つに鑑みてなされたものであり、その目的は、得られる溶射膜の熱伝導率を低くすることのできる方法および装置を提供することにある。
本発明に係る遮熱膜形成方法は、エンジンの燃焼室または当該エンジンの排気系統の内壁を構成する基材の表面に、当該基材よりも低い熱伝導率を有する遮熱膜を形成する遮熱膜の形成方法であって、前記表面に向けて噴射される高温フレームに、前記高温フレームの熱により少なくとも一部が溶融状態となる膜材料と、前記高温フレームの熱によりガスを発生するガス発生材料と、前記膜材料と前記ガス発生材料を結合するバインダと、を含む複合材料であって、前記複合材料の平均粒径が10〜200μmであり、前記膜材料の平均粒径が1〜10μmであり、前記ガス発生材料の平均粒径が1〜20μmであり、前記複合材料における前記膜材料と前記ガス発生材料の容積比率が、60〜80:40〜20である複合材料を導入することを特徴としている。
本発明に係る遮熱膜形成方法において、前記遮熱膜が、前記基材よりも低い体積熱容量を有するものである場合、前記表面が、前記燃焼室の内壁構成面または前記排気系統の内壁構成面であってもよい。
本発明に係る遮熱膜形成装置は、エンジンの燃焼室または当該エンジンの排気系統の内壁を構成する基材の表面に、当該基材よりも低い熱伝導率を有する遮熱膜を形成する遮熱膜の形成装置であって、噴射手段と導入手段とを備えている。前記噴射手段は、前記表面に向けて高温フレームを噴射する。前記導入手段は、前記高温フレームの熱により少なくとも一部が溶融状態となる膜材料と、前記高温フレームの熱によりガスを発生するガス発生材料と、前記膜材料と前記ガス発生材料を結合するバインダと、を含む複合材料を、前記高温フレームに導入する。前記複合材料の平均粒径は、10〜200μmである。前記膜材料の平均粒径は、1〜10μmである。前記ガス発生材料の平均粒径は、1〜20μmである。前記複合材料における前記膜材料と前記ガス発生材料の容積比率は、60〜80:40〜20である。
本発明に係る遮熱膜形成装置において、前記遮熱膜が、前記基材よりも低い体積熱容量を有するものである場合、前記表面が、前記燃焼室の内壁構成面または前記排気系統の内壁構成面であってもよい。
本発明に係る遮熱膜形成方法または遮熱膜形成装置によれば、膜材料とガス発生材料とバインダとを含む複合材料であって、当該複合材料の平均粒径が10〜200μmであり、当該膜材料の平均粒径が1〜10μmであり、当該ガス発生材料の平均粒径が1〜20μmであり、当該複合材料における当該膜材料と当該ガス発生材料の容積比率が60〜80:40〜20である複合材料を高温フレームに導入できるので、高温フレームの中心部に複合材料を到達させることができる。また、高温フレームの熱によってガス発生材料からガスを発生させて複合材料を解砕することもできるので、高温フレームによる運搬中に複合材料の粒子同士が結合するのを抑制することもできる。従って、熱伝導率に優れた遮熱膜を基材表面に形成することができる。


エンジン燃焼室の内壁構成面に形成される遮熱膜に要求される遮熱性能と追従性能を説明するための図である。 エンジン燃焼室の内壁構成面に形成される遮熱膜に要求される遮熱性能と追従性能を説明するための図である。 熱伝導率と体積熱容量を、遮熱膜の種類に対応させて分類した図である。 表面粗さの異なる2種類の溶射膜の総括伝熱係数を示した図である。 平均粒径の異なる3種類の溶射材と、溶射膜の表面粗さとの関係を示した図である。 溶射法による遮熱膜形成装置の構成を示した図である。 膜材料の各粒子の質量が小さい場合に形成される溶射膜の断面組織の実験結果を示した図である。 事前の造粒・焼結により平均粒径を拡大させた造粒材料を使用した場合に形成される溶射膜の断面組織の実験結果を示した図である。 本実施の形態に係る方法において使用する造粒材料の構成を説明するための図である。 図9で説明した造粒材料を使用した場合に形成される溶射膜の断面組織の実験結果を示した図である。 図10に示した結果が得られた理由を説明するための図である。 図10に示した結果が得られた理由を説明するための図である。 図9で説明した造粒材料を使用したプラズマ溶射によってシリンダヘッドの底面に形成した溶射膜の物性(熱伝導率)の分析結果を示した図である。 図9で説明した造粒材料を使用したプラズマ溶射によってシリンダヘッドの底面に形成した溶射膜の物性(表面粗さ)の分析結果を示した図である。 図9で説明した造粒材料を使用したプラズマ溶射によってシリンダヘッドの底面に形成した溶射膜の物性(せん断強度)の分析結果を示した図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
1.遮熱膜の形成方法
本発明の実施の形態に係る方法は、車両等に搭載されるエンジンの燃焼室の内壁構成面、または、当該エンジンの排気系統の内壁構成面(以下、これらを区別しない場合は単に「内壁面」と称す。)に、溶射法を用いて遮熱膜(溶射膜)を形成する方法である。ここで、「エンジンの燃焼室」とは、シリンダブロックのボア面と、当該ボア面に収容されるピストンの頂面と、シリンダヘッドの底面と、当該シリンダヘッドに形成される吸気ポートおよび排気ポートにそれぞれ配設される吸気バルブおよび排気バルブの傘部の底面と、によって囲まれる空間として定義される。また、「エンジンの排気系統」には、上記排気ポートの他、上記排気ポートに接続される排気マニホルド、および、上記排気マニホルドに接続される排気管が含まれる。
エンジン燃焼室での冷却損失の低減は燃費の向上に繋がることから、当該エンジン燃焼室の内壁構成面に形成される遮熱膜には、当該エンジン燃焼室内で発生した熱がシリンダヘッド等の基材に入り込まないようにする性能(遮熱性能)だけでなく、当該エンジン燃焼室内の作動ガスの温度に膜表面の温度を追従させる性能(追従性能)が要求される。図1および図2は、エンジン燃焼室の内壁構成面に形成される遮熱膜に要求される遮熱性能と追従性能を説明するための図である。これらの図は何れも、エンジン燃焼室内の作動ガスの温度(ガス温度)と、当該エンジン燃焼室の内壁構成面の表面の温度(壁温)との関係を示した図である。但し、図1は、エンジン燃焼室の内壁構成面に遮熱膜を形成していない場合に相当し、図2は、セラミックス等の焼結体からなる遮熱膜を当該エンジン燃焼室の内壁構成面に形成した場合に相当する。
図1と図2を比較すると分かるように、エンジン燃焼室の内壁構成面に遮熱膜を形成することで、燃焼行程の開始から排気行程の終了にかけての区間において、作動ガス温度と当該燃焼室の内壁構成面の表面温度との差を小さくできるので、冷却損失を低減できる。また、その他の区間、即ち、吸気行程の開始から圧縮行程の終了にかけての区間においても、作動ガス温度とエンジン燃焼室の内壁構成面の表面温度との差を小さくできる。従って、エンジン燃焼室の内壁構成面に遮熱膜を形成すれば、当該エンジン燃焼室に吸入される空気(吸気)の加熱によるノッキングや異常燃焼の発生を抑制することもできる。
既に述べたように、遮熱膜の遮熱性能は熱伝導率により評価されることが一般的であり、当該溶射膜の熱伝導率が低いほど遮熱性能が高くなる。一方、遮熱膜の追従性能は体積熱容量(単位体積当たりの熱容量)により評価されることが一般的であり、当該溶射膜の体積熱容量が低いほど追従性能が高くなる。この熱伝導率と体積熱容量を、遮熱膜の種類(膜材料および膜形成方法)に対応させて分類したのが図3である。この図に示すアルミニウムおよび鉄は、シリンダヘッド、排気マニホルド等の主要母材であり、当該母材の熱伝導率λと体積熱容量Cは何れも、相対的に高い値を示す。このアルミニウムや鉄と比べると、図3に示すセラミックス膜(例えば、図2で説明した焼結体)は、熱伝導率λと体積熱容量Cの両者において低くなる。
図3に示す溶射膜(従来)は公知の溶射法により形成される遮熱膜である。この溶射膜(従来)は、同図に示すアルマイト膜(アルミニウムまたはアルミニウム合金の母材の表面の陽極酸化処理により形成される膜をいう。)と同様に、セラミックス膜に比べて、熱伝導率λと体積熱容量Cの両者において低くなる。また、図3に示す矢印からも分かるように、遮熱膜の熱伝導率λが空気の熱伝導率λに近づくほど遮熱性能が良好となり、遮熱膜の体積熱容量Cが空気の体積熱容量Cに近づくほど追従性能が良好となる。但し、図3に示す溶射膜(従来)とアルマイト膜の熱伝導率λは何れも、同図に示す熱伝導率の目標値(目標λ)よりも高いというのが現状である。
2.溶射膜の問題点
ところで溶射膜は、高温フレームによって運搬した溶射材を基材表面に噴き付けて堆積させることにより形成されるものである。そのため、基材表面に形成される溶射膜の表面は、通常、溶射膜を形成しない場合の当該基材表面よりも粗くなる。また一般に、基材表面に形成される溶射膜の表面が粗くなるほど熱伝達が可能な面積が増えることから、遮熱膜の遮熱性能が低下する傾向がある。この傾向について、図4を参照して説明する。図4は、表面粗さ(算術平均粗さ)Raの値の異なる2種類の溶射膜の総括伝熱係数Uを示した図である。これらの溶射膜は何れも、溶射後に表面が仕上げ加工されているものである。この図に示すように、2種類の溶射膜の総括伝熱係数Uの値は何れも、アルミニウム基材(遮熱膜を形成しない場合の基材)の総括伝熱係数Uの値に比べて低くなる。但し、2種類の溶射膜同士を比べると分かるように、表面粗さRaの値が小さいほど総括伝熱係数Uの値が小さくなる。
図4に示した傾向を考慮して、高温フレームに導入する溶射材の平均粒径を小さくすれば、表面粗さRaの値の小さい溶射膜を形成することができるはずである。この予想を裏付ける実験結果を図5に示す。図5は、平均粒径Dの値の異なる3種類の溶射材と、溶射膜の表面粗さRaの値との関係を示した図である。なお、3種類の溶射材は何れも酸化イットリウム(Y)であり、平均粒径Dの値は、高温フレームに導入する前の溶射材の粒度分布を、レーザー回折・散乱法によりそれぞれ求めたものである(メジアン径)。図5から分かるように、溶射材の平均粒径Dの値を小さくすれば、表面粗さRaの値を目標値(目標Ra)以下にすることができる。
ところが、溶射材の平均粒径Dが小さ過ぎると、高温フレームに溶射材を導入するためのノズルや、このノズルに溶射材を搬送するためのチューブ内に詰まりが生じてしまう問題があることが判明した。この問題に関して、図6乃至図8を参照しながら説明する。図6は、溶射法による遮熱膜形成装置の構成を示した図であり、この装置は、本発明の実施の形態に係る方法にも適用できるものである。図6に示す遮熱膜形成装置10は、具体的にはプラズマ溶射装置であり、内壁面12に向けてプラズマフレーム16を噴射する溶射ガン14と、プラズマフレーム16に溶射材18を導入するノズル20と、膜材料を収容するタンク22と、タンク22とノズル20とを接続するホース26と、を備えている。
溶射ガン14は、図示しない陽極と陰極を備えており、これらの間に電圧をかけてアークを発生させると、これらの上流から約1000m/sの速度で供給される作動ガス(例えば、水素、窒素、酸素、アルゴン等)が電離してプラズマが発生する。溶射ガン14から噴射されるプラズマフレーム16は、このようにして発生したプラズマを含んでおり、その温度は約5000〜10000℃に達する。ノズル20のオリフィスの径φはφ=2mmである。ノズル20から噴射される溶射材18は、所定粒径(例えば、二次粒子の平均粒径1〜10μm)の膜材料を含んでいる。
膜材料には、セラミックス(例えば、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、ムライト(3Al・2SiO)、ジルコン(ZrO・SiO)、安定化ジルコニア(ZrOにY、MgO等を固溶させたもの)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)等を含む酸化物および複合酸化物群;窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)等を含む窒化物群;炭化ケイ素(SiC)等を含む炭化物群;サイアロン(SiN・Al)等を含むサーメット群の中から選択された一種または複数種)、純金属(例えばAl、Cr、Ni、Cu等)、または、合金(例えばNi−50Cr等)が使用できる。上述したセラミックス、純金属および合金を同時に使用することもできる。
図6に矢印で示すように、ノズル20から噴射された溶射材18は、プラズマフレーム16に導入され、その後、内壁面12に向かって移動する。溶射材18がプラズマフレーム16に導入される際、当該プラズマフレーム16の熱によって溶射材18中の膜材料の少なくとも一部が溶融状態となり、内壁面12に噴き付けられることで扁平し、同じく扁平する隣接粒子と結合しながら堆積していく。但し、膜材料の各粒子の質量が小さいと、ノズル20からの導入の際にプラズマフレーム16に弾かれてしまい、当該プラズマフレーム16の中心部に到達することができない。そのため、膜材料の各粒子が溶融状態となることができず、固体状態のまま内壁面12に堆積していく。図7は、膜材料の各粒子の質量が小さい場合に形成される溶射膜の断面組織の実験結果を示した図である。この図から分かるように、膜材料の各粒子の質量が小さい場合は、非常に脆い組織の溶射膜が形成されてしまう。
これに対し、事前に膜材料を造粒・焼結して平均粒径を拡大させた造粒材料であれば、造粒材料の各粒子の質量が増えるので、ノズル20からの導入の際にプラズマフレーム16の中心部に到達させることができる。しかしこの場合には、別の問題が生じてしまう。この別の問題について、図8を参照して説明する。図8は、事前の造粒・焼結により平均粒径を拡大させた造粒材料を使用した場合に形成される溶射膜の断面組織の実験結果を示した図である。この図から分かるように、平均粒径を拡大させた場合には、造粒材料の各粒子が結合した状態が観察される。この理由は、造粒材料の各粒子の質量が増えたことで当該造粒材料の各粒子の溶融状態が改善したからである。但しこの場合は、造粒材料の粒子を多数含んだ塊状部が形成されてしまう。また、このような塊状部が形成された溶射膜の熱伝導率の値は、セラミックス膜(例えば、図2で説明した焼結体)よりは低いものの、熱伝導率の目標値(図2に示した目標λ)には及ばない。
3.本実施の形態の特徴
図8に示した結果が得られた理由は、プラズマフレーム16によって運搬される間に、少なくとも一部が溶融状態にある造粒材料の粒子同士が結合し、内壁面12に噴き付けられるときには既に当該造粒材料の粒径が拡大したためであることが予想された。そこで、本実施の形態では、膜材料の事前の造粒は行うものの、造粒材料の各粒子がプラズマフレーム16の中心部に到達してから内壁面12に噴き付けられるまでに解砕されるように構成する。このような造粒材料の構成について図9を参照しながら説明する。
図9は、本実施の形態に係る方法において使用する造粒材料(複合材料)の構成を説明するための図である。図9に示す複合材料2は、所定粒径(例えば、二次粒子の平均粒径1〜10μm)の膜材料4と、所定粒径(例えば、平均粒径1〜20μm)のガス発生材料6と、膜材料4とガス発生材料6とを結合するバインダ8と、から構成されている。
膜材料4には、上述した膜材料が使用できる。また、ガス発生材料6には、水を成分として含む鉱物質(例えば、真珠岩、松脂岩、黒曜岩、シラス等)、水素化物(水素化チタン、水素化ジルコン等)、または、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)といった、プラズマフレーム16の熱によりガス(蒸気、水素ガス、二酸化炭素ガス等)を発生する材料が使用できる。なお、これらの鉱物質、水素化物および炭酸塩を同時に使用することもできる。また、バインダ8には有機バインダ(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)、または、無機バインダ(例えば、シリカゾル、アルミナゾル等)が使用できる。
複合材料2は、所定容積比で混合した膜材料4とガス発生材料6をバインダ8中に分散させた後、スプレーによって霧状に噴射して瞬間的に乾燥させる手法(湿式造粒法)により調製される。この複合材料2の平均粒径(メジアン径(D50))は10〜200μmである。溶射膜の物性(詳細は後述)を考慮すると、膜材料4とガス発生材料6の混合物中の容積比率は、膜材料4:ガス発生材料6=50〜90:50〜10であることが好ましく、膜材料4:ガス発生材料6=60〜80:40〜20であることがより好ましい。また、膜材料4とガス発生材料6の混合物全体に対するバインダ8の比率は少ない方が好ましく、具体的には当該比率が1〜5%であることが好ましい。
図10は、図9で説明した複合材料2を使用した場合に形成される溶射膜の断面組織の実験結果を示した図である。図7および図8と、図10とを比べると分かるように、図9で説明した複合材料2を使用した場合には、膜材料の各粒子が扁平し、隣接粒子同士で結合している様子が観察される。このような結果から、本実施の形態に係る方法によれば、ノズル20からプラズマフレーム16の中心部に膜材料を導入でき、かつ、プラズマフレーム16によって運搬される間の粒子同士の結合を抑制して、内壁面12に形成される溶射膜の表面粗さRaの値を小さくすることができる。従って、遮熱性能に優れた溶射膜を得ることができる。表面粗さRa等の分析結果の詳細は後述するとして、先ずは、図10に示した結果が得られた理由について、図11乃至図12を参照して説明する。
図11には、ノズル20からプラズマフレーム16に導入された複合材料2がプラズマフレーム16の中心部に到達し、その後、膜材料4がプラズマフレーム16に運搬されて内壁面12に向かって移動する様子が描かれている。ノズル20から導入された複合材料2がプラズマフレーム16の中心部まで到達する理由は、複合材料2の各粒子の質量が増やされているためである。そして、プラズマフレーム16の中心部に到達した複合材料2中の膜材料4は、プラズマフレーム16の熱により少なくとも一部が溶融状態となり、プラズマフレーム16に運搬されて内壁面12に噴き付けられることで扁平し、同じく扁平する隣接の膜材料4と結合しながら堆積していく。
図12には、プラズマフレーム16の中心部付近での複合材料2の様子が描かれている。この図に破線で示す複合材料2は、プラズマフレーム16の中心部付近で解砕される。この理由は、プラズマフレーム16の熱により複合材料2を構成するガス発生材料6からガスが発生する際に周囲の組織を破壊するためである。なお、ガス発生後のガス発生材料6の残部は、プラズマフレーム16の熱により少なくとも一部が溶融状態となり、プラズマフレーム16に運搬されて内壁面12に噴き付けられる。また、図9で説明したバインダ8は、複合材料2の解砕後、プラズマフレーム16の熱により分解して消失し(有機バインダ)、または、消失せずに焼成(無機バインダ)すると考えられる。
4.実験結果と分析結果の詳細
図13乃至図15は、図9で説明した複合材料2を使用したプラズマ溶射によってシリンダヘッドの底面に形成した溶射膜の物性の分析結果を示した図である。具体的に図13は溶射膜の熱伝導率を示した図であり、図14は溶射膜の表面粗さRaを示した図であり、図15は溶射膜のせん断強度を示した図である。なお、溶射にはMETCO社製のプラズマ溶射装置を使用し、溶射膜は遮熱層と中間層の二層構造とした。また、この中間層を形成する前には、ショットブラストを実施して膜形成面を粗面化した(粗面化後の表面粗さRa6μm)。また、溶射の実施後には遮熱層の仕上げ加工を行って(仕上げ加工後の表面粗さRa2μm)、所定膜厚(150μm)に揃えた。
具体的な膜材料と主要な溶射条件は次のとおりである。
(1)中間層
<膜材料>
Ni−50Cr(平均粒径:40μm)
<溶射条件>
プラズマガス:Ar−H,ガス流量:30L/min(Ar),8L/min(H
プラズマ電流:450A,プラズマ電圧:60V
膜材料供給量:30g/min
溶射距離:150mm
(2)遮熱層
<造粒材料>
造粒材料A:ジルコン−真珠岩−PVA(平均粒径:60μm)
造粒材料B:ジルコン−水素化チタン−PVA(平均粒径:60μm)
(膜材料とガス発生材料の混合物全体に対するPVAの比率は3%に固定)
<溶射条件>
プラズマガス:Ar−H,ガス流量:40L/min(Ar),12L/min(H
プラズマ電流:600A,プラズマ電圧:60V
造粒材料供給量:20g/min
溶射距離:100mm
図13および図14から分かるように、造粒材料A(真珠岩)または造粒材料B(TiH)を使用した溶射膜によれば、概ね目標値(目標λおよび目標Ra)を実現することができる。特に、ガス発生材料の容積比率が20%〜40%(つまり、膜材料:ガス発生材料=60〜80:40〜20)とした場合には、熱伝導率と表面粗さに優れる溶射膜が得られることが明らかとなった。また、図15から分かるように、造粒材料A(真珠岩)または造粒材料B(TiH)を使用した溶射膜によれば、せん断強度の目標値(目標S)を実現することもできる。
更に、造粒材料A(真珠岩)または造粒材料B(TiH)を使用した溶射膜が形成されたシリンダヘッドを用いて、エンジン効率(冷却損失)の評価と、耐久性の評価とを行った。その結果、溶射膜を形成していないシリンダヘッドを用いたエンジンに比べて冷却損失を大幅に低減できることが確認された。また、溶射膜の剥がれ、割れなどの異常も発生していないことも確認された。以上の結果から、本実施の形態に係る方法によれば、内壁面に好適な溶射膜が得られることが立証された。
なお、図13および図14において造粒材料A(真珠岩)と造粒材料B(TiH)を比較すると、表面粗さRaの値に差異は殆ど無いものの、熱伝導率の値は造粒材料A(真珠岩)を使用した溶射膜の方がより低くなる傾向が示された。この理由としては、水素化チタンの熱伝導率の値よりも真珠岩の熱伝導率の値の方が低いことから、ガス発生後の残部を含む溶射膜を比較すると、真珠岩の残部を含む溶射膜の方が、水素化チタンの残部を含む溶射膜よりも熱伝導率の値が低くなったと推察される。
ところで、上記実施の形態においては、プラズマを溶射の熱源として利用するプラズマ溶射法を前提として説明した。しかし、本発明に係る方法には、例えば、燃焼フレームを熱源に利用するフレーム溶射法を適用することもできる。フレーム溶射法によれば、燃焼フレームの温度を約3000℃まで上昇させることが可能であることから、この燃焼フレームの熱によってガス発生材料からガスを発生させ、尚且つ、膜材料の少なくとも一部を溶融状態とすることができる。このように、熱によってガス発生材料からガスを発生させ、尚且つ、膜材料の少なくとも一部を溶融状態とすることのできる高温フレームを用いる溶射法であれば、溶射条件等を適宜変更することにより、本発明に係る方法として採用することができる。
なお、上記実施の形態に係る方法を図6で説明した装置に適用する場合においては、溶射ガン14が本発明に係る装置の「噴射手段」に該当し、ノズル20,タンク22およびホース26が本発明に係る装置の「導入手段」に該当する。
2 複合材料
4 膜材料
6 ガス発生材料
8 バインダ
10 遮熱膜形成装置
12 エンジンの燃焼室の内壁構成面またはエンジンの排気系統の内壁構成面
14 溶射ガン
16 プラズマフレーム
18 溶射材
20 ノズル
22 タンク
26 ホース

Claims (4)

  1. エンジンの燃焼室または当該エンジンの排気系統の内壁を構成する基材の表面に、当該基材よりも低い熱伝導率を有する遮熱膜を形成する遮熱膜の形成方法であって、
    前記表面に向けて噴射される高温フレームに、前記高温フレームの熱により少なくとも一部が溶融状態となる膜材料と、前記高温フレームの熱によりガスを発生するガス発生材料と、前記膜材料と前記ガス発生材料を結合するバインダと、を含む複合材料であって、
    前記複合材料の平均粒径が10〜200μmであり、
    前記膜材料の平均粒径が1〜10μmであり、
    前記ガス発生材料の平均粒径が1〜20μmであり、
    前記複合材料における前記膜材料と前記ガス発生材料の容積比率が、60〜80:40〜20である
    複合材料を導入することを特徴とする遮熱膜形成方法。
  2. 前記遮熱膜は、前記基材よりも低い体積熱容量を有するものであり、
    前記表面が、前記燃焼室の内壁構成面または前記排気系統の内壁構成面であることを特徴とする請求項1に記載の遮熱膜形成方法。
  3. エンジンの燃焼室または当該エンジンの排気系統の内壁を構成する基材の表面に、当該基材よりも低い熱伝導率を有する遮熱膜を形成する遮熱膜の形成装置であって、
    前記表面に向けて高温フレームを噴射する噴射手段と、
    前記高温フレームの熱により少なくとも一部が溶融状態となる膜材料と、前記高温フレームの熱によりガスを発生するガス発生材料と、前記膜材料と前記ガス発生材料を結合するバインダと、を含む複合材料を、前記高温フレームに導入する導入手段と、
    を備え
    前記複合材料の平均粒径が10〜200μmであり、
    前記膜材料の平均粒径が1〜10μmであり、
    前記ガス発生材料の平均粒径が1〜20μmであり、
    前記複合材料における前記膜材料と前記ガス発生材料の容積比率が、60〜80:40〜20である
    ことを特徴とする遮熱膜形成装置。
  4. 前記遮熱膜は、前記基材よりも低い体積熱容量を有するものであり、
    前記表面が、前記燃焼室の内壁構成面または前記排気系統の内壁構成面であることを特徴とする請求項3に記載の遮熱膜形成装置。
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