JP5549510B2 - リーンバーンエンジン - Google Patents

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Description

ここに開示する技術は、リーンバーンエンジンに関する。
例えば特許文献1には、火花点火式ガソリンエンジンの理論熱効率を高めるべく、その圧縮比を高めると共に、混合気をリーンにしたエンジンが記載されている。
また、例えば特許文献2には、冷却損失を低減させて熱効率を向上させる観点から、燃焼室を区画形成する面を、多数の気泡を含んだ断熱材によって構成する技術が記載されている。
特開平9−217627号公報 特開2009−243355号公報
ところで、火花点火式ガソリンエンジンの理論サイクルであるオットーサイクルにおいては、圧縮比を高めれば高めるほど、また、ガスの比熱比を高めれば高めるほど、理論熱効率が高くなる。このため、前記特許文献1に記載されているような高圧縮比と混合気のリーン化との組み合わせは、熱効率(図示熱効率)の向上に、ある程度は有利になるものの、この場合、圧縮比15程度で図示熱効率が最大になり、それ以上に圧縮比を高めても、図示熱効率は高くならない(逆に、圧縮比を高めれば高めるほど、図示熱効率が低くなる)。これは、混合気がリーンであるため比較的大量の空気がシリンダ内に導入される一方で、そのシリンダ内の大量の空気が、高圧縮比化に伴い大きく圧縮されて燃焼圧力及び燃焼温度が大幅に高くなってしまうためである。つまり、高い燃焼圧力及び燃焼温度によってシリンダの壁面等を通じた熱の放出量が増え、冷却損失が大幅に増大する結果、図示熱効率が低くなってしまうのである。従って、前記特許文献1に記載されているような高圧縮比と混合気のリーン化との組み合わせだけでは、エンジンの熱効率を高めて、燃費性能を大幅に向上させることは、到底望めない。
一方、特許文献2に記載されているような燃焼室の断熱化による冷却損失の低減は、排気温度を上昇させることになるため、冷却損失の低減分は排気損失の増大に転換されてしまう。従って、燃焼室の断熱化による冷却損失の抑制だけを行っても、エンジンの熱効率の向上には、あまり寄与しない。
これに対し、例えば環境保全の観点等から、エンジンの熱効率を大幅に向上させて、その燃費性能を大幅に向上させる技術が求められている。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱効率を向上させて、燃費性能を大幅に向上させ得るリーンバーンエンジンを提供することにある。
本願発明者らは、前述したように、エンジンの高圧縮比と混合気のリーン化との組み合わせを前提として、冷却損失の増大に起因して図示熱効率が低下してしまうような、極めて高い幾何学的圧縮比において冷却損失を低下させるべく、燃焼室の少なくとも一部を断熱化する一方で、エンジンの高膨張比化(=高圧縮比化)をさらに組み合わせることにより、冷却損失の抑制分を、排気損失の増大とせずに機械仕事に有効に変換させて、エンジンの図示熱効率を大幅に向上させることにした。
具体的に、ここに開示するリーンバーンエンジンは、シリンダが形成されたシリンダブロック、当該シリンダに嵌挿されるピストン、前記シリンダブロック上に載置されるシリンダヘッド、並びに、当該シリンダヘッドに形成された吸気ポート及び排気ポートを開閉する吸気弁及び排気弁により囲まれた燃焼室を有するエンジン本体と、少なくとも空気過剰率λの制御を通じて、前記エンジン本体の運転を制御する制御手段と、を備える。
前記燃焼室は、前記シリンダの壁面と、前記ピストンの冠面と、前記シリンダヘッドに形成されかつ前記吸気ポート及び前記排気ポートがそれぞれ開口すると共に、前記シリンダの上端開口を閉塞する天井面と、前記吸気弁及び前記排気弁それぞれのバルブヘッド面と、によって区画され、前記燃焼室を区画する区画面の少なくとも一部は、前記燃焼室を囲む、前記シリンダブロック、前記ピストン、前記シリンダヘッド、前記吸気弁及び前記排気弁を構成する母材の表面側に設けられかつ、前記燃焼室内のガスの熱が前記区画壁を通じて外部に放出されることを抑制する燃焼室断熱層によって構成される。ここで、燃焼室断熱層は、例えば母材よりも熱伝導率が低い材料によって構成することで、区画壁を通じて外部に熱が放出されることを抑制するようにしてもよい。
そうして、前記エンジン本体は、幾何学的圧縮比εが20≦ε≦50に設定され、前記制御手段は、前記エンジン本体が少なくとも部分負荷の運転領域にあるときには、燃焼時の前記空気過剰率λを2.5≦λ≦6に設定する。
この構成によると、エンジン本体が少なくとも部分負荷の運転領域にあるときには、燃焼時の空気過剰率λが2.5≦λ≦6に設定される。つまり、このエンジンは、空気過剰率λ=1よりも高い空気過剰率で運転され得る、いわゆるリーンバーンエンジンである。また、このエンジン本体は、幾何学的圧縮比εが20≦ε≦50に設定された超高圧縮比エンジンであるため、高圧縮比化と混合気のリーン化との組み合わせにより、理論熱効率は向上し得る。
20以上の高い圧縮比は、前述したように、燃焼室内の燃焼圧力及び燃焼温度を大幅に高くし得るから、冷却損失の増大により図示熱効率が低下するものの、前記の構成では、燃焼室を区画するシリンダの壁面、ピストンの冠面、吸気ポート及び排気ポートが開口したシリンダヘッドの天井面、及び、吸気弁及び排気弁それぞれのバルブヘッド面を含む区画面の少なくとも一部を燃焼室断熱層によって構成する。燃焼室断熱層は、燃焼室を区画する面を通じた放熱を抑制して冷却損失を低減し得る。
冷却損失を低減させる一方で、このエンジンは、前記の高圧縮比化に伴う高膨張比化によって燃焼ガスのエネルギを機械仕事に有効に変換して、排気損失も低減し得る。すなわち、理論熱効率を高める一方、冷却損失及び排気損失を共に抑制する結果、図示熱効率が大幅に向上し得る。
前記吸気ポートを区画するポート壁面には、前記シリンダヘッドよりも熱伝導率が低いポート断熱層が設けられている、としてもよい。
冷却損失は、冷却損失=熱伝達率×伝熱面積×(ガス温度−区画面の温度)によって決定されることから、燃焼時のガス温度のピークを低くして、区画面の温度との差温を小さくすることが、冷却損失を低減する上で有利になる。吸気ポートを区画するポート壁面にポート断熱層を設けることは、吸気ポートを通じてシリンダ内に流入する吸気が、高温のシリンダヘッドから受熱して温度が高くなることを抑制し得る。このことは、初期のガス温度を下げて燃焼時のガス温度のピークを低くする上で有利になる。つまり、冷却損失を抑制して、エンジンの熱効率の向上に有利になる。
また、熱伝達率は、燃焼室内のガスの圧力及び温度の関数であり、ガス圧力及び温度が高くなるほど熱伝達率が高くなり、冷却損失は増大する。初期のガス温度を下げて燃焼時のガス温度のピークを低くすることはまた、熱伝達率を低くして冷却損失を抑制する上でも有利である。
前記リーンバーンエンジンは、前記シリンダ内に流入する吸気を冷却する冷却手段をさらに備えてもよい。
こうすることで、前述したように、初期のガス温度をさらに低下して、燃焼時のガス温度のピークをさらに低くし得るから、冷却損失を抑制して、エンジンの熱効率の向上により一層、有利になり得る。
前記燃焼室断熱層は、熱伝導率が前記母材よりも低くかつ、容積比熱(比熱容量)が前記母材と同じか、又はそれよりも小さい耐熱性セラミックスによって構成されている、としてもよい。こうしたセラミックスの具体例としては、ジルコニア(ZrO)、及びジルコニア含有のセラミックス(例えば部分安定化ジルコニア(PSZ)等)が例示される。熱伝導率が母材よりも低いことによって、燃焼室を区画する面を通じた放熱が抑制される。つまり、燃焼室の断熱性が確保される。
また、エンジンの燃焼サイクルの進行に伴い、燃焼室内の温度(ガス温度)は変動することになるが、このガス温度の変動に追従するように、燃焼室を区画する区画面の温度を変化させれば、前述したガス温度と区画面の温度との差温は小さくなるため、冷却損失は低減する。そこで、燃焼室断熱層は、容積比熱が前記母材と同じか、又はそれよりも小さい耐熱性セラミックスによって構成することが好ましく、こうすることにより、区画面の温度追従性が良好になる結果、冷却損失を、より一層低減させて、エンジンの熱効率を高める上で、より一層有利になり得る。
また、仮に断熱層の熱容量が大きいときは、燃焼室内の温度が低下したときでも、区画面の温度が下がらず、燃焼室内の温度を高温に維持してしまう。このことは、結果として排気損失を増大させることになり、エンジンの熱効率の向上を阻害する。これに対し、断熱層の容積比熱を小さくすることは、燃焼室内の温度が低下したときに、それに追従して区画面の温度も低下する。従って、燃焼室内の温度を高温に維持してしまうことを回避し得るから、前述した、温度追従性に伴う冷却損失の抑制のほか、排気損失の抑制にも有利になり得る。
前記燃焼室断熱層は、空気を含んだ多孔質層と、前記多孔質層の表面側を覆って前記燃焼室を区画する前記面を構成する皮膜層と、を有する、としてもよい。
ここで、「多孔質層」は、多数の気泡を含む層(例えば発泡金属による層や、陽極酸化処理によって多数の空隙が形成された層等)としてもよいが、これに限定されず、例えば繊維(不織布を含む)状の層、多数の中空粒子を集合させた層等としてもよい。こうした空気を含んだ多孔質層は、その熱伝導率が比較的低くなり、母材よりも熱伝導率が低下し得ると共に、容積比熱も大幅に小さくなることで、母材よりも容積比熱が小さくなり得る。
また、多孔質層の表面側を、被覆層が覆って燃焼室を区画する前記面を構成することは、多孔質層を保護して、耐久性の向上や安定性の向上に有利になり得る。
前記制御手段は、前記エンジン本体が、前記部分負荷の運転領域内において負荷が増大したときには、最高燃焼温度が所定温度以下になるように、燃焼時の空気過剰率λを制御する、とすることが好ましい。
ここで言う「所定温度」は、例えば燃焼室内でRawNOxが生成し得る温度として設定してもよく、そうすることによって、燃焼室内からのRawNOxの排出が抑制乃至回避し得る。特にこのエンジンは、前述したように、高膨張比化により排気損失を低減していて触媒の活性化には不利であることから、燃焼室からのRawNOxの排出を抑制乃至回避することは、排気エミッション性能の向上に有利になる。
前記リーンバーンエンジンは、前記燃焼室内に臨んで配設された点火プラグを含む点火手段をさらに備え、前記点火手段は、プラズマ式の点火手段である、としてもよい。
プラズマ式の点火手段は、点火エネルギが相対的に高いため、空気過剰率λが2.5〜6に設定され得るリーンバーンエンジンにおいて着火性を高めて、燃焼を安定化する上で有利になる。
前記リーンバーンエンジンは、前記燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を含む燃料供給手段をさらに備え、前記燃料供給手段は、燃焼開始時点において、前記燃焼室内の中央側に混合気が存在すると共に、当該混合気と前記区画面との間に新気が介在するように、前記燃焼室内に燃料を供給する、としてもよい。
燃焼開始時点において、燃焼室内の中央側に存在する混合気と区画面との間に介在する新気は、燃焼開始後に断熱層として機能し得るから、区画面を通じた放熱が抑制され得る。つまり、前記の燃料供給形態は、冷却損失を低減する上で有利になる。
ここで、混合気と区画面との間に新気を介在させるための方策の一つとして、例えば燃焼噴射時期を圧縮行程の後期に設定してもよい。また、例えば噴孔の配置や形状の工夫により燃焼室内の中央側にのみ混合気が存在するようにしてもよい。また、それらの方策を組み合わせてもよい。
以上説明したように、前記のリーンバーンエンジンは、高圧縮比と混合気のリーン化との組み合わせにより理論熱効率を向上しつつ、燃焼室を区画する区画面の少なくとも一部を燃焼室断熱層によって構成して冷却損失を低減させると共に、高圧縮比化に伴う高膨張比化によって燃焼ガスのエネルギを機械仕事に有効に変換して排気損失も低減させる結果、図示熱効率を向上して、燃費を大幅に向上することが実現し得る。
リーンバーンエンジンの構成を概略的に示す図である。 幾何学的圧縮比に対する図示熱効率の関係の一例を示す図である。 空気過剰率に対する図示熱効率の関係の一例を示す図である。 クランク角度に対する燃焼室の区画面温度変化の一例を示す図である。 区画面に設けた断熱層の構成例を示す断面図である。
以下、リーンバーンエンジン(以下、単にエンジンとも言う)の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1に示すように、エンジン・システムは、エンジン(エンジン本体)1、エンジン1に付随する様々なアクチュエーター、様々なセンサ、及びセンサからの信号に基づきアクチュエーターを制御するエンジン制御器100を有する。
エンジン1は、火花点火式内燃機関であって、図示は省略するが、複数のシリンダ11を有する。エンジン1は、自動車等の車両に搭載され、その出力軸は、図示しないが、変速機を介して駆動輪に連結されている。エンジン1の出力が駆動輪に伝達されることによって、車両が推進する。エンジン1は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを備えており、シリンダブロック12の内部にシリンダ11が形成されている。シリンダブロック12及びシリンダヘッド13の内部には、図示は省略するが冷却水が流れるウォータージャケットが形成されている。
ピストン15は、各シリンダ11内に摺動自在に嵌挿されており、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室17を区画している。この実施形態では、ピストン15の冠面に凹部が形成されている。図1には一つのみ示すが、シリンダ11毎に2つの吸気ポート18がシリンダヘッド13に形成され、それぞれがシリンダヘッド13の下面(燃焼室17の上面を区画する天井面)に開口することで燃焼室17に連通している。同様に、シリンダ11毎に2つの排気ポート19がシリンダヘッド13に形成され、それぞれがシリンダヘッド13の天井面に開口することで燃焼室17に連通している。吸気ポート18は、シリンダ11内に導入される新気が流れる吸気通路(図示省略)に接続されている。吸気通路には、吸気流量を調整するスロットル弁20が介設しており、エンジン制御器100からの制御信号を受けて、スロットル弁20の開度が調整される。一方、排気ポート19は、各シリンダ11からの既燃ガス(排気ガス)が流れる排気通路(図示省略)に接続されている。排気通路には、図示は省略するが、一つ以上の触媒コンバータを有する排気ガス浄化システムが配置される。
図に示すように、吸気弁21及び排気弁22はそれぞれ、吸気ポート18及び排気ポート19を燃焼室17から遮断(閉)することができるように配設されている。吸気弁21は吸気弁駆動機構により、排気弁22は排気弁駆動機構により、それぞれ駆動される。吸気弁21及び排気弁22は所定のタイミングで往復動して、吸気ポート18及び排気ポート19を開閉し、シリンダ11内のガス交換を行う。吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構は、図示は省略するが、それぞれ、クランクシャフトに駆動連結された吸気カムシャフト及び排気カムシャフトを有し、これらのカムシャフトはクランクシャフトの回転と同期して回転する。また、少なくとも吸気弁駆動機構は、吸気カムシャフトの位相を所定の角度範囲内で連続的に変更可能な、液圧式又は機械式の位相可変機構(Variable Valve Timing:VVT)23を含んで構成されている。VVT23と共に、弁リフト量を連続的に変更可能なリフト可変機構(CVVL(Continuous Variable Valve Lift))を備えるようにしてもよい。
点火プラグ31は、例えばねじ等の周知の構造によって、シリンダヘッド13に取り付けられている。点火プラグ31は、この実施形態では、シリンダ11の中心軸に対し、排気側に傾斜した状態で取り付けられており、その先端部(電極)は燃焼室17の天井部に臨んでいる。尚、点火プラグ31の配置はこれに限定されるものではない。点火システム32は、エンジン制御器100からの制御信号を受けて、点火プラグ31が所望の点火タイミングで火花を発生するよう、それに通電する。一例として、点火システム32はプラズマ発生回路を備え、点火プラグはプラズマ点火式のプラグとしてもよい。後述するように、このエンジン1は混合気をリーンにするため、着火エネルギの高いプラズマ点火式のプラグの採用は、着火安定性を向上する上で有利になる。
燃料噴射弁33は、この実施形態ではシリンダ11の中心軸に沿って配置され、例えばブラケットを使用する等の周知の構造でシリンダヘッド13に取り付けられている。燃料噴射弁33の先端は、燃焼室17の天井部の中心に臨んでいる。尚、燃料噴射弁33の配置はこれに限定されるものではない。燃料噴射弁33はまた、例えば多噴口型の燃料噴射弁であるが、これに限定されるものではない。燃料供給システム34は、燃料噴射弁33に燃料を供給する燃料供給系と、燃料噴射弁33を駆動する電気回路と、を備えている。電気回路は、エンジン制御器100からの制御信号を受けて燃料噴射弁33を作動させ、所定のタイミングで所望量の燃料を、燃焼室17内に噴射させる。ここで、このリーンバーンエンジン1の燃料は、この実施形態ではガソリンであるが、これに限定されるものではなく、軽油やバイオエタノール等を含む各種の液化燃料、及び、天然ガス等を含む各種の気体燃料を適宜採用し得る。
エンジン制御器100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。
エンジン制御器100は、少なくとも、エアフローセンサ71からの吸気流量に関する信号、クランク角センサ72からのクランク角パルス信号、アクセル・ペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ73からのアクセル開度信号、車速センサ74からの車速信号をそれぞれ受ける。エンジン制御器100は、これらの入力信号に基づいて、以下のようなエンジン1の制御パラメーターを計算する。例えば、所望のスロットル開度信号、燃料噴射パルス、点火信号、バルブ位相角信号等である。そしてエンジン制御器100は、それらの信号を、スロットル弁20(スロットル弁20を動かすスロットルアクチュエーター)、燃料供給システム34、点火システム32及びVVT23等に出力する。
そうして、このリーンバーンエンジン1において最も特徴的な点は、エンジンの図示熱効率を高めて、燃費性能を従来に比べて大幅に向上させる観点から、エンジン1の幾何学的圧縮比εを20以上50以下の超高圧縮比に設定すると共に、少なくとも部分負荷の運転領域においては空気過剰率λを2.5以上6以下に設定して、混合気をリーン化することに対し、燃焼室17の断熱構造を、さらに組み合わせる点にある。
ここで、このエンジン1は圧縮比=膨張比となる構成から、高圧縮比と同時に、比較的高い膨張比を有するエンジン1でもある。尚、圧縮比≦膨張比となる構成(例えばアトキンソンサイクルや、ミラーサイクル)を採用してもよい。
また、燃焼室17は、図1にも示すように、シリンダ11の壁面と、ピストン15の冠面と、シリンダヘッド13の下面(天井面)と、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッドの面と、によって区画形成されており、これらの各面に、後述する構成を有する断熱層61,62,63,64,65が設けられることによって、燃焼室17が断熱化されている。尚、以下において、これらの断熱層61〜65を総称する場合は、断熱層に符号「6」を付す場合がある。断熱層6は、これらの区画面の全てに設けてもよいし、これらの区画面の一部に設けてもよい。また、図例では、シリンダ壁面の断熱層61は、ピストン15が上死点に位置した状態で、そのピストンリング14よりも上側の位置に設けられており、これにより断熱層61上をピストンリング14が摺動しない構成としている。但し、シリンダ壁面の断熱層61はこの構成に限らず、断熱層61を下向きに延長することによって、ピストン15のストロークの全域、又は、その一部に断熱層61を設けてもよい。また、燃焼室17を直接区画する壁面ではないが、吸気ポート18や排気ポート19における、燃焼室17の天井面側の開口近傍のポート壁面に断熱層を設けてもよい。尚、図1に図示する各断熱層61〜65の厚みは実際の厚みを示すものではなく単なる例示であると共に、各面における断熱層の厚みの大小関係を示すものでもない。
以下、このリーンバーンエンジン1における燃費向上に係る構成について、図を参照しながら説明する。前述したように、このリーンバーンエンジン1では幾何学的圧縮比εを、20≦ε≦50に設定しているが、図2は、幾何学的圧縮比εの変化に対するエンジン1の図示熱効率の変化を、モデル計算により演算した結果の一例を示している。先ず、理論サイクルであるオットーサイクルにおける理論熱効率ηthは、図2にも示すようにηth=1−1/(εκ−1)であり、圧縮比εを高くすればするほど、理論熱効率ηthは高くなる。また、ガスの比熱比κを高めれば高めるほど、言い換えると、空気過剰率λを高めれば高めるほど、理論熱効率ηthは高くなる。
図2において黒菱形によって示される、空気過剰率λ=1(断熱なし)のエンジンは、幾何学的圧縮比εが高くなるに従って、図示熱効率は高くなる。但し、その図示熱効率は、理論熱効率ηthに比べて大幅に低い。この低下分は、主に冷却損失及び排気損失による。これに対し、図2において白三角によって示される、空気過剰率λ=6(断熱なし)のリーンバーンエンジンは、混合気のリーン化により理論熱効率が高くなるため、基本的には、空気過剰率λ=1のエンジンよりも図示熱効率は高くなる。しかしながら、断熱なしのリーンバーンエンジンは、圧縮比εが15程度で図示熱効率がピークになり、幾何学的圧縮比εをそれ以上に高めても図示熱効率は高くならず、逆に、図示熱効率は低下することになる。これは、図2は、エンジン負荷を一定にした状態で幾何学的圧縮比を変化させた場合の図示熱効率の変化を示しているためであり、燃料量及び吸気量が一定のままで幾何学的圧縮比が高くなることで、圧縮比が高くなればなるほど、燃焼圧力及び燃焼温度が高くなることに起因している。つまり、燃焼室17を区画する面を通じて熱が放出することに伴う冷却損失は、冷却損失=熱伝達率×伝熱面積×(ガス温度−区画面の温度)によって決定され、燃焼ガスの圧力及び温度が高くなるほど熱伝達率は高くなるから、燃焼圧力及び燃焼温度が高くなることは、その分、冷却損失を増大させることになる。その結果、リーンバーンエンジンは、幾何学的圧縮比が高くなればなるほど、図示熱効率が低下してしまうのである。このように、混合気をリーン化しつつ、幾何学的圧縮比を高めることによってエンジンの図示熱効率を高めようとしても、冷却損失が増大することにより、理論熱効率よりも大幅に低い図示熱効率で頭打ちなってしまう。
これに対し、ここに開示するリーンバーンエンジン1では、前述した図示熱効率が低下してしまうような幾何学的圧縮比ε、例えば幾何学的圧縮比εが20〜50の範囲において図示熱効率が高まるように、燃焼室17の断熱構造を組み合わせる。つまり、燃焼室17の断熱化により冷却損失を低減させ、それによって図示熱効率を高める。断熱構造の詳細は後述するが、図2に黒丸で示すように、空気過剰率λ=6(断熱あり)のリーンバーンエンジンは、「断熱なし」のエンジンよりも燃焼室の断熱率を50%高めており、このエンジンは、幾何学的圧縮比εを高くしたときでも、白三角によって示される断熱なしのリーンバーンエンジンとは異なり図示熱効率が低下しなくなり、例えば空気過剰率λ=1のエンジンと比較して、図示熱効率が大幅に高くなる。
燃焼室17を断熱化して冷却損失を低減させるだけでは、その冷却損失の低減分が排気損失に転換されて図示熱効率の向上にはあまり寄与しないところ、このリーンバーンエンジン1では、前述したように、高圧縮比化に伴う高膨張比化によって、冷却損失の低減分に相当する燃焼ガスのエネルギを、機械仕事に効率よく変換している。すなわち、このリーンバーンエンジン1は、冷却損失及び排気損失を共に低減させる構成を採用することによって、図示熱効率を大幅に向上させているということができる。
尚、図2に白丸や黒三角で示すように、空気過剰率λ=2.5とした場合も、「断熱あり」とすることによって、図示熱効率の低下を回避して、空気過剰率λ=1のエンジンよりも、図示熱効率を大幅に高くし得る。尚、白丸と黒三角とは、エンジン負荷が相違し、白丸は、黒三角よりもエンジン負荷が高い(但し、全負荷ではなく、部分負荷に相当する)。
図2に示すモデル計算において「断熱あり」は、「断熱なし」のエンジンよりも燃焼室の断熱率を50%高めているが、燃焼室17の断熱構造は、その断熱性能が高ければ高いほど冷却損失をより一層低減し得るため、図示熱効率の向上に有利になる。
ここで、幾何学的圧縮比εの上限値「50」は、例えば図2の黒丸で示す例で顕著であるように、幾何学的圧縮比が50を超えても図示熱効率がほとんど上がらないことに基づいて設定された値である。また、幾何学的圧縮比εを50よりも大に設定することは、シリンダ11及びピストン15等を含めた、各種のエンジン部品の機械加工精度として大幅に高い精度が要求される一方で、幾何学的圧縮比εの固体差が極めて大きくなり得る点で不利になる。一方、幾何学的圧縮比εの下限値「20」は、燃焼室17を断熱化しない従来のリーンバーンエンジンにおいて、図示熱効率が低下してしまう幾何学的圧縮比の下限値として設定される値であり、言い換えると燃焼室17の断熱化によって、図示熱効率の向上が見込まれる幾何学的圧縮比の下限値である。
図3は、空気過剰率λの変化に対する図示熱効率の変化を、モデル計算により演算した結果の一例を示している。燃焼室17を断熱化した「断熱あり」のエンジン(幾何学的圧縮比ε=40、低負荷)では、基本的には、空気過剰率λを高くして混合気をリーン化するほど図示熱効率が高くなり、空気過剰率λ=6で図示熱効率がピークになる。尚、燃焼室17を断熱化していない「断熱なし」のエンジン(幾何学的圧縮比ε=20、低負荷)では、空気過剰率λの如何にかかわらず、「断熱あり」のエンジンよりも図示熱効率は低くなる。
ここで、空気過剰率λが2.5よりも低くなると燃焼室17内の最高燃焼温度が高くなって、燃焼室17からRawNOxが排出され得る。前述したように、このリーンバーンエンジンは、冷却損失と共に排気損失の低減をも図っているため、排気温度が比較的低く触媒の活性化には不利である。そのため、燃焼室17からのRawNOxの排出を回避乃至抑制することが望ましく、そのためには、空気過剰率λを2.5以上に設定することが好ましい。言い換えると、燃焼室17内の最高燃焼温度が所定温度(例えば、RawNOxが生成し得る温度としての1800K(ケルビン))以下となる範囲で、空気過剰率λを設定することが望ましい。エンジン制御器100は、例えばエンジン1の部分負荷における運転領域内で、負荷の上昇に伴い(言い換えると、燃料噴射量の増量により空気過剰率λが上がることに伴い)、最高燃焼温度が所定温度を超えるようなときには、空気過剰率λを下げてエンジン1を運転することが望ましい。
一方、図3に示すように、空気過剰率λ=6で図示熱効率がピークになることから、空気過剰率λの範囲としては、2.5≦λ≦6が好ましい。尚、エンジン1の全負荷の運転領域においては、トルク優先により、空気過剰率λをさらに下げて例えばλ=1としてもよい。前記の空気過剰率λの数値範囲は、エンジン1の、少なくとも部分負荷の運転領域における好ましい範囲である。
尚、混合気のリーン化は、スロットル弁20を開き側に設定することになるから、ガス交換損失(ポンピングロス)の低減による図示熱効率の向上にも寄与し得る。
次に、燃焼室17の断熱構造について、さらに詳細に説明する。燃焼室17の断熱構造は、前述したように、燃焼室17を区画する各区画面に設けた断熱層61〜65によって構成されるが、これらの断熱層61〜65は、燃焼室17内の燃焼ガスの熱が、区画面を通じて放出されることを抑制するため、燃焼室17を構成する金属製の母材よりも熱伝導率が低く設定される。ここで、シリンダ11の壁面に設けた断熱層61については、シリンダブロック12が母材であり、ピストン15の冠面に設けた断熱層62についてはピストン15が母材であり、シリンダヘッド13の天井面に設けた断熱層63については、シリンダヘッド13が母材であり、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッド面に設けた断熱層64,65については、吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ母材である。従って、母材の材質は、シリンダブロック12、シリンダヘッド13及びピストン15については、アルミニウム合金や鋳鉄となり、吸気弁21及び排気弁22については、耐熱鋼や鋳鉄等となる。但し、前述したように、このリーンバーンエンジン1は排気損失を低減していることから、排気ガス温度が大幅に低下しているため、特に排気弁22については耐熱鋼でなくても、従来は使用することができなかった、又は、使用することが困難であった材料(例えばアルミニウム合金等)を使用することも可能である。
また、断熱層6は、冷却損失を低減する上で、母材よりも容積比熱が小さいことが好ましい。つまり、燃焼室17内のガス温度は燃焼サイクルの進行によって変動するが、燃焼室の断熱構造を有しない従来のエンジンは、シリンダヘッドやシリンダブロック内に形成したウォータージャケット内を冷却水が流れることにより、例えば図4に破線で示すように、燃焼室17を区画する面の温度は、燃焼サイクルの進行にかかわらず、概略一定に維持される。
一方で、冷却損失は、前述の通り、冷却損失=熱伝達率×伝熱面積×(ガス温度−区画面の温度)によって決定されることから、ガス温度と壁面の温度との差温が大きくなればなるほど冷却損失は大きくなってしまう。冷却損失を抑制するためには、ガス温度と区画面の温度との差温は小さくすることが望ましいが、前述したように、燃焼室17の区画面の温度を概略一定に維持した場合、ガス温度の変動に伴い差温が大きくなることは避けられない。
そこで、前記の断熱層6は熱容量を小さくし、図4に実線で示すように、燃焼室17の区画面の温度が、燃焼室17内のガス温度の変動に追従して変化することが好ましい。
また、断熱層6の熱容量を小さくすることは、排気損失の低減にも有利になる。つまり、仮に断熱層の熱容量が大きいときは、燃焼室17内の温度が低下したときでも、区画面の温度が下がらない一方で、燃焼室17が断熱構造を有しているため、燃焼室17内の温度を高温のままに維持してしまう。このことは、結果として排気損失を増大させることになり、エンジン1の熱効率の向上を阻害する。
これに対し、断熱層6の熱容量を小さくすることは、燃焼室17内の温度が低下したときに、それに追従して区画面の温度が低下する。従って、燃焼室17内の温度を高温に維持してしまうことを回避し得るから、前述した、温度追従性に伴う冷却損失の抑制のほか、排気損失の抑制にも有利になり得る。
断熱層6は、シリンダ11の壁面、ピストン15の冠面、シリンダヘッド13の天井面、並びに、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッド面、つまり、燃焼室17を区画する区画面に、例えばプラズマ溶射により形成した、ジルコニア(ZrO)、又は、部分安定化ジルコニア(PSZ)の皮膜によって構成してもよい。ジルコニア又は部分安定化ジルコニアは、熱伝導率が比較的低くかつ、容積比熱も比較的小さいため、母材によりも熱伝導率が低くかつ、容積比熱が母材と同じか、それよりも小さい断熱層6が構成される。
また、図5に例示するように、断熱層6は、空気を含んだ多孔質層601と、多孔質層601の表面側を覆って燃焼室17を区画する区画面を構成する皮膜層602と、を有して構成してもよい。空気を含んだ多孔質層601は、その熱伝導率が比較的低くなるため、前述した各種金属製の母材よりも熱伝導率が低くなると共に、容積比熱が大幅に小さいため、各種金属製の母材7よりも容積比熱が小さくなる。
ここで、多孔質層601は、具体的には、各種金属製の発泡体(発泡金属)によって構成してもよいし、例えばステンレス鋼等の金属不織布のような繊維成形体によって、多孔質層を構成してもよい。こうした発泡金属や金属不織布を利用して多孔質層601を構成するときには、酸化処理を施して発泡金属や金属不織布の表面に酸化膜を形成することにより熱伝導率を低下させることで、多孔質層601の断熱性能を向上し得る。こうした発泡金属や金属不織布を利用した多孔質層601は、例えばピストン15の冠面、シリンダヘッド13の天井面、並びに、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッド面等に対する断熱層6の形成に利用し得る。
また、例えばピストン15やシリンダヘッド13のようなアルミニウム合金製の部位の表面に断熱層を設ける場合、つまり、アルミニウム合金製の母材7上に断熱層6を設ける場合は、区画壁を構成する母材7の表面に、陽極酸化処理(アルマイト処理)を施すことによって、それぞれ厚み方向に延びる多数の気孔を有する多孔質層601を設けてもよい。陽極酸化処理による多孔質層601は、前述したように、吸気ポート18や排気ポート19の開口近傍のポート壁面に断熱層を設ける場合にも利用し得る。
また、例えばアルミナやセラミックス等の中空状粒子を多数、集合させることにより多孔質層601を構成してもよい。中空状粒子を互いに接合するようにすれば、多孔質層601の強度を向上し得る。中空状粒子同士の接合は、例えば放電プラズマ焼結によって行ってもよいし、また例えばアルミナゾルやシリカゾル等を含浸させることで中空状粒子同士の隙間を埋めるようにして、それらを接合してもよい。中空状粒子により構成された多孔質層601は、空気の対流が生じないため、断熱性能を高める上で有利になり得る。中空状粒子による多孔質層601の形成は、例えばピストン15の冠面、シリンダブロック12のシリンダの壁面、シリンダヘッド13の天井面、並びに、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッド面に対する多孔質層601の形成に利用し得る。
多孔質層601の表面側を覆う皮膜層602は、多孔質層601を保護して、耐久性の向上及び安定性の向上に有利になり得る。皮膜層602は、一例として、但しこれに限定されないが、ジルコニア、又は、部分安定化ジルコニアの溶射皮膜によって構成してもよい。ジルコニアを含む皮膜層602は、その熱伝導率及び容積比熱を母材7よりも低くして、断熱性能の向上及び温度追従性の向上に有利になり得る。
エンジン1の冷却損失をさらに抑制する上で、燃料噴射弁33を通じた燃焼室17内への燃料の供給を工夫してもよい。具体的には、燃焼開始時点において燃焼室17内の中央側に混合気が局所的に存在する一方で、その混合気と区画面との間に新気が介在するように、燃焼室17内に燃料を供給(噴射)してもよい。このことにより、燃焼開始後に、混合気と区画面との間に介在する新気が一種の断熱層として機能し、区画面を通じた熱の放出がさらに抑制され得る。尚、燃焼室17内の中央側に混合気を局所的に存在させ、その周囲を新気で囲む構成は、燃焼室17内の全体に混合気が存在しない点で、燃焼室内全体に混合気の濃度分布を伴う従来の成層燃焼とは相違する。ここで、混合気を局所的に存在させる手法としては、例えば燃料噴射弁33による燃料の噴射時期を、圧縮行程の後期に設定することを採用してもよい。また、例えば燃料噴射弁33の噴孔の配置を工夫することにより、燃焼室17内の中央側にのみ混合気が存在するようにしてもよく、それらの手法を組み合わせてもよい。さらに、混合気を局所的に存在させる一方で、燃料噴射弁33から噴射した燃料と空気との混合を促進する観点から、燃料を超臨界状態にして燃焼室17内に噴射する構成を採用してもよい。
また、冷却損失を低減する上では、ガス温度と区画面との差温を小さくすることも有効であり、このリーンバーンエンジン1では、吸気ポート18に断熱層を設けて、ガス温度を下げている。具体的には、図1に示すように、熱伝導率が非常に低くて断熱性に優れかつ、耐熱性にも優れたチタン酸アルミニウム製のポートライナ181を、シリンダヘッド13に一体的に鋳ぐるむことによって、吸気ポート18に断熱層を設けている。この構成は、新気が吸気ポート18を通過するときに、シリンダヘッド13から受熱して温度が上がることを抑制乃至回避し得る。これによってシリンダ11内に導入する新気の温度(初期のガス温度)が低くなるため、燃焼時のガス温度が低下し、ガス温度と燃焼室17の区画面との差温を小さくする上で有利になる。燃焼時のガス温度を低下させることは熱伝達率を低くし得るから、そのことによる冷却損失の低減にも有利になる。尚、吸気ポート18に設ける断熱層の構成は、ポートライナ181の鋳ぐるみに限定されず、前述した区画壁の断熱層の構成を、適宜適用してもよい。
ここで、シリンダ11内に導入する新気の温度を低くする上で、吸気を冷却する手段をエンジン1に設けてもよい。冷却手段としては、例えば、シリンダヘッド13及びシリンダブロック12に形成したウォータージャケットを含むエンジン1の冷却システムとは別の、当該冷却システムよりも温度帯が低くて吸気の冷却効果が高いような冷却システムを、吸気ポート18の周囲に設け、シリンダ導入前の吸気を積極的に冷却してもよい。また、吸気通路の途中に吸気を冷却するクーラーを設けてもよい。このクーラーは、例えば、吸気通路上の過給機により過給された後の吸気を冷却するためのインタークーラーによって構成してもよい。尚、過給機は、排気通路側に配置したタービンを含むターボ過給機でもよいが、このリーンバーンエンジン1は、排気損失の低減により十分な過給圧が確保し難いことを考慮して、電動過給機を設けるようにしてもよい。また、ターボ過給機と電動過給機との組み合わせとすることも可能である。
このリーンバーンエンジン1は、例えばハイブリッド車両に搭載するエンジンとして、ハイブリッドシステムに組み込むことも可能である。こうすることで、エンジン1を、図示熱効率が高くなる運転領域に限定して運転させることも可能になる。その結果、エンジンの効率、ひいては燃費性能の向上にさらに有利になり得る。
尚、前述した幾何学的圧縮比εに関する数値範囲(20≦ε≦50)は、前述した作用効果と同じ作用効果を奏する範囲で任意に狭めることにより、その一部を除くことも可能である。また、空気過剰率λに冠する数値範囲(2.5≦λ≦6)も、前述した作用効果と同じ作用効果を奏する範囲で任意に狭めることにより、その一部を除くことも可能である。
1 リーンバーンエンジン(エンジン本体)
11 シリンダ
12 シリンダブロック
13 シリンダヘッド
15 ピストン
17 燃焼室
18 吸気ポート
181 ポートライナ(ポート断熱層)
19 排気ポート
100 エンジン制御器(制御手段)
21 吸気弁
22 排気弁
31 点火プラグ(点火手段)
32 点火システム(点火手段)
33 燃料噴射弁
34 燃料供給システム(燃料供給手段)
6 燃焼室断熱層
61 燃焼室断熱層
62 燃焼室断熱層
63 燃焼室断熱層
64 燃焼室断熱層
65 燃焼室断熱層

Claims (8)

  1. シリンダが形成されたシリンダブロック、当該シリンダに嵌挿されるピストン、前記シリンダブロック上に載置されるシリンダヘッド、並びに、当該シリンダヘッドに形成された吸気ポート及び排気ポートを開閉する吸気弁及び排気弁により囲まれた燃焼室を有するエンジン本体と、
    少なくとも空気過剰率λの制御を通じて、前記エンジン本体の運転を制御する制御手段と、を備え、
    前記燃焼室は、
    前記シリンダの壁面と、
    前記ピストンの冠面と、
    前記シリンダヘッドに形成されかつ前記吸気ポート及び前記排気ポートがそれぞれ開口すると共に、前記シリンダの上端開口を閉塞する天井面と、
    前記吸気弁及び前記排気弁それぞれのバルブヘッド面と、によって区画され、
    前記燃焼室を区画する区画面の少なくとも一部は、前記燃焼室を囲む、前記シリンダブロック、前記ピストン、前記シリンダヘッド、前記吸気弁及び前記排気弁を構成する母材の表面側に設けられかつ、前記燃焼室内のガスの熱が前記区画壁を通じて外部に放出されることを抑制する燃焼室断熱層によって構成され、
    前記エンジン本体は、幾何学的圧縮比εが20≦ε≦50に設定され、
    前記制御手段は、前記エンジン本体が少なくとも部分負荷の運転領域にあるときには、燃焼時の前記空気過剰率λを2.5≦λ≦6に設定するリーンバーンエンジン。
  2. 請求項1に記載のリーンバーンエンジンにおいて、
    前記吸気ポートを区画するポート壁面には、前記シリンダヘッドよりも熱伝導率が低いポート断熱層が設けられているリーンバーンエンジン。
  3. 請求項2に記載のリーンバーンエンジンにおいて、
    前記シリンダ内に流入する吸気を冷却する冷却手段をさらに備えているリーンバーンエンジン。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジンにおいて、
    前記燃焼室断熱層は、熱伝導率が前記母材よりも低くかつ、容積比熱が前記母材と同じか、又はそれよりも小さい耐熱性セラミックスによって構成されているリーンバーンエンジン。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジンにおいて、
    前記燃焼室断熱層は、
    空気を含んだ多孔質層と、
    前記多孔質層の表面側を覆って前記区画面を構成する皮膜層と、を有するリーンバーンエンジン。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジンおいて、
    前記制御手段は、前記エンジン本体が、前記部分負荷の運転領域内において負荷が増大したときには、最高燃焼温度が所定温度以下になるように燃焼時の空気過剰率λを制御するリーンバーンエンジン。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジンにおいて、
    前記燃焼室内に臨んで配設された点火プラグを含む点火手段をさらに備え、
    前記点火手段は、プラズマ式の点火手段であるリーンバーンエンジン。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジンにおいて、
    前記燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を含む燃料供給手段をさらに備え、
    前記燃料供給手段は、燃焼開始時点において、前記燃焼室内の中央側に混合気が存在すると共に、当該混合気と前記区画面との間に新気が介在するように、前記燃焼室内に燃料を供給するリーンバーンエンジン。
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