ところで、内燃機関の熱効率を高める方策の一つとして、冷却損失を低減することが考えられる。冷却損失は、燃焼室内の燃焼火炎が、燃焼室を区画する壁面に接触することにより増大することから、火炎と壁面との接触を抑制すれば、冷却損失は低減し得る。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷却損失を低減し、それによって熱効率を向上させた内燃機関、及びその制御方法を実現することにある。
ここに開示する技術は、内燃機関の制御方法に係り、この制御方法は、内燃機関の燃焼室内において、圧縮行程後期から膨張行程初期にかけての期間内において、当該燃焼室の中心部から外周部の方向に燃料噴霧を噴射すると共に、燃料噴霧のペネトレーションを、燃料噴霧が気筒内の外周部まで届かない大きさに抑える工程、前記燃焼室内に導入する吸気にオゾンを添加する工程、及び、前記燃焼室内の中央部に混合気層を形成し、その周囲にガス層を形成した状態で、混合気を自着火させると共に、前記吸気へのオゾン添加によって前記燃焼室内の燃焼を早め、それによって、前記燃焼室の中心部から外周部の方向に拡がる火炎が前記燃焼室を区画する壁面に到達する前に、前記燃焼を終了させる工程を含む。
この構成によると、吸気にオゾンを添加することにより、その強い酸化作用によって燃焼室内の燃焼が早まる。つまり、燃料の噴射後、混合気が着火するまでの着火遅れ時間が短くなると共に、燃焼開始から燃焼終了までの燃焼期間も短くなる。尚、吸気にオゾンを添加するタイミングは特に限定されず、燃焼室(つまり、シリンダ)内に吸気を導入する前にオゾンを添加してもよいし、燃焼室内に吸気を導入する際にオゾンを添加してもよいし、燃焼室内に吸気を導入した後にオゾンを添加してもよい。
この内燃機関では、燃焼室の中心部から外周部の方向に燃料噴霧が噴射され、その噴射開始後に、圧縮自着火により着火して、火炎は、中心部から外周部の方向に拡がっていくが、前述の通り、オゾン添加によって燃焼が早まっているため、火炎が燃焼室を区画する壁面に到達する前に、燃焼が終了する。こうして火炎と壁面との接触が回避されるが、このことは、言い換えると、燃焼室における中心部の燃焼ガスと、燃焼室を区画する壁面との間に、燃焼に寄与しないガス層を形成することになる。つまり、このガス層は、いわば断熱層として、壁面からの熱の放出を抑えることになるから、冷却損失を大幅に低減することが可能になり、内燃機関の熱効率が高まる。尚、吸気に添加されたオゾンは、燃焼により消滅するため、ほとんど排出されない。
ここで、吸気中のオゾン濃度が高いほど、着火遅れ時間が短くなると共に、その燃焼期間も短くなる。そこで、前記の制御方法は、内燃機関の運転状態に応じて、前記吸気中のオゾン濃度を変更する工程をさらに含む、としてもよい。
具体的には、前記の制御方法は、前記内燃機関の回転数が所定以上のときに、当該回転数が所定未満のときよりも前記吸気中のオゾン濃度を高める工程をさらに含む、としてもよい。
内燃機関の回転数が相対的に高いときには、クランク角の変化に対する実時間が短くなるため、吸気中のオゾン濃度を高めることによって燃焼をより一層早めることで、火炎と壁面との接触が確実に回避されて、冷却損失の低減に有利になる。
逆に、内燃機関の回転数が相対的に低いときに、オゾン濃度を高めて、着火遅れ時間や燃焼期間を必要以上に短縮させると、例えば圧力上昇率が高くなりすぎて、燃焼騒音(つまり、NVH: Noise Vibration Harshness)が悪化する可能性がある。
そのため、回転数が高いときにはオゾン濃度を高める一方、回転数が低いときにはオゾン濃度を下げるように、内燃機関の回転数に応じて吸気中のオゾン濃度を変更することが好ましい。
また、前記の制御方法は、前記内燃機関の負荷が所定以上のときに、当該負荷が所定未満のときよりも前記吸気中のオゾン濃度を下げる工程をさらに含む、としてもよい。
内燃機関の負荷が相対的に高いときには、気筒内の温度及び圧力が相対的に高く、着火時間及び燃焼期間が短くなる傾向にある。そのため、内燃機関の負荷が高いときに、吸気中のオゾン濃度を高めることは、着火遅れ時間や燃焼期間を必要以上に短縮させることになるため、オゾン濃度を下げることが好ましい。
逆に、内燃機関の負荷が相対的に低いときには、オゾン濃度を高めることによって、着火時間及び燃焼期間を短くすることで、火炎と壁面との接触が回避されて、冷却損失の低減、ひいては熱効率の向上に有利になる。
また、前記の制御方法は、燃焼室内における燃料噴霧の飛翔のし易さ(燃料噴霧の広がり易さ)に応じて、前記吸気中のオゾン濃度を変更する工程をさらに含む、としてもよい。
具体的に、前記の制御方法は、前記内燃機関の筒内圧力が所定以上のときに、当該筒内圧力が所定未満のときよりも前記吸気中のオゾン濃度を下げる工程をさらに含む、としてもよい。
筒内圧力が高いときには、燃料噴霧が飛翔し難くて、広がり難くなるため、吸気中のオゾン濃度を高めなくても、火炎と壁面との接触は回避される。逆に、筒内圧力が低いときには、燃料噴霧が飛翔し易くて、広がり易くなるため、吸気中のオゾン濃度を高めることによって燃焼をより一層早めて、火炎と壁面との接触を確実に回避することが好ましい。
また、前記の制御方法は、前記燃焼室内に臨んで配置された燃料噴射弁に供給する燃料の圧力を設定する工程、及び、前記燃料の圧力が所定以上のときに、当該燃料の圧力が所定未満のときよりも前記吸気中のオゾン濃度を高める工程をさらに含む、としてもよい。
燃料の圧力は、例えば内燃機関の運転状態に応じて設定され、設定された燃料の圧力が高いときには、燃料噴霧のペネトレーションが大きくなるため、火炎と壁面とが接触し易くなる一方、燃料の圧力が低いときには、燃料噴霧のペネトレーションが小さくなるため、火炎と壁面とが接触し難くなる。そこで、燃料の圧力が所定以上のときには、吸気中のオゾン濃度を相対的に高めることで、火炎と壁面との接触がより確実に回避される一方、燃料の圧力が所定未満のときには、吸気中のオゾン濃度を相対的に下げることで、着火遅れ時間や燃焼期間を必要以上に短縮してしまうことが回避される。
ここに開示する内燃機関は、シリンダが形成されたシリンダブロック、前記シリンダ内に嵌挿されるピストン、及び、前記シリンダブロック上に載置されるシリンダヘッドにより区画形成された燃焼室を有する機関本体と、前記燃焼室内における中心部から外周部の方向に燃料噴霧を噴射する燃料噴射弁と、前記燃焼室内に導入する吸気にオゾンを添加するオゾン添加手段と、制御器と、を備え、前記制御器は、圧縮行程後期から膨張行程初期にかけての期間内において燃料の噴射を行うと共に、前記燃料噴射弁が噴射する燃料噴霧のペネトレーションを、燃料噴霧が気筒内の外周部まで届かない大きさに抑え、前記制御器は、前記燃焼室内の中央部に混合気層を形成し、その周囲にガス層を形成した状態で、混合気を自着火させると共に、前記オゾン添加手段によって吸気へオゾンを添加することにより燃焼を早め、それによって、前記燃焼室の中心部から外周部の方向に拡がる火炎が前記燃焼室を区画する壁面に到達する前に、前記燃焼を終了させるように構成されている。
この構成によると、前述したように、吸気へのオゾンの添加により、燃焼室内において火炎と壁面との接触が回避されて冷却損失が低減するから、内燃機関の熱効率を高めることが可能になる。
前記オゾン添加手段は、前記機関本体の運転状態に応じて、前記吸気中のオゾン濃度を変更してもよい。
例えば前記オゾン添加手段は、前記機関本体の回転数が所定以上のときには、当該回転数が所定未満のときよりも前記吸気中のオゾン濃度を高めるように構成されている、としてもよい。
また、前記オゾン添加手段は、前記機関本体の負荷が所定以上のときには、当該負荷が所定未満のときよりも前記吸気中のオゾン濃度を下げるように構成されている、としてもよい。
前記オゾン添加手段は、前記機関本体の燃焼室内における燃料噴霧の飛翔のし易さ(燃料噴霧の広がり易さ)に応じて、前記吸気中のオゾン濃度を変更してもよく、例えば前記オゾン添加手段は、前記内燃機関の筒内圧力が所定以上のときに、当該筒内圧力が所定未満のときよりも前記吸気中のオゾン濃度を下げるように構成してもよい。
また、燃焼室内に臨んで配置された燃料噴射弁に供給する燃料の圧力を調圧する調圧手段により設定された燃料の圧力が所定以上のときに、当該燃料の圧力が所定未満のときよりも前記吸気中のオゾン濃度を高めるように、前記オゾン添加手段を構成してもよい。
前記オゾン添加手段は、前記気筒に接続された吸気管内を流れる吸気をオゾン化するように構成されている、としてもよい。つまり、オゾン添加手段は、無声放電により、酸素を含むガスをオゾン化するよう構成してもよく、こうした無声放電式のオゾン添加手段は、吸気管内を流れる吸気(新気)を原料ガスとしてオゾンを発生させ、燃焼室内に導入される吸気にオゾンを添加することが可能になる。
オゾン添加手段を、吸気管内に多数のオゾナイザを配置することによって構成した場合は、電圧を印加するオゾナイザの個数を変更することによって、吸気のオゾン濃度の調整を、容易に行うことが可能になるという利点がある。また、吸気管内にオゾン添加手段を設けることは、オゾナイザへの電圧印加時間を長く設定して、オゾン生成時間を十分に長くすることが可能であるから、オゾン濃度を高める上でも有利になる。
前記オゾン添加手段は、前記気筒内に導入された吸気をオゾン化するように構成されている、としてもよい。
前記と同様に、例えば無声放電式のオゾン添加手段は、気筒内に導入された吸気(新気)を原料ガスとしてオゾンを発生させることで、燃焼室内に導入される吸気にオゾンを添加することが可能になる。尚、気筒内に導入する吸気をオゾン化するオゾン添加手段は、燃焼室を区画するシリンダヘッドに設けてもよいし、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁に設けてもよい。
以上説明したように、前記の内燃機関の制御方法及び内燃機関によると、吸気にオゾンを添加することで、燃焼室内の中心部から外周部の方向に火炎が拡がる際に、火炎が燃焼室の壁面に到達する前に燃焼が終了するから、火炎と壁面との接触が回避され、冷却損失が低減する結果、内燃機関の熱効率が向上する。
以下、エンジンの制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1に示すように、エンジン・システムは、エンジン1、エンジン1に付随する様々なアクチュエーター、様々なセンサ、及びセンサからの信号に基づきアクチュエーターを制御するエンジン制御器100を有する。
エンジン1は、火花点火式内燃機関であって、複数のシリンダ(気筒)11を有する。この例では、図3に示すように4つのシリンダ11が一列に並んで設けられた直列4気筒エンジン1である。エンジン1は、自動車等の車両に搭載され、その出力軸は、図示しないが、変速機を介して駆動輪に連結されている。エンジン1の出力が駆動輪に伝達されることによって、車両が推進する。エンジン1は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを備えており、シリンダブロック12の内部にシリンダ11が形成されている。
ピストン15は、各シリンダ11内に摺動自在に嵌挿されており、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室17を区画している。この実施形態では、燃焼室17は、シリンダヘッド13の下面(燃焼室17の上面を区画する天井面)及びピストン15の冠面が共に、シリンダ11の軸心に対して垂直な面で構成されている。ピストン15の冠面には、比較的容積の小さいキャビティ15aが凹陥して形成されている。図7にも一部を示すように、このキャビティ15aは、ディーゼルエンジンでのリエントラント型のような形状を有している。こうして、このエンジン1では、小さいキャビティ15aと、それに伴い拡大したスキッシュエリアとによって、後述するように、高い幾何学的圧縮比を実現している。
図1には一つのみ示すが、シリンダ11毎に2つの吸気ポート18がシリンダヘッド13に形成され、それぞれがシリンダヘッド13の下面に開口することで燃焼室17に連通している。同様に、シリンダ11毎に2つの排気ポート19がシリンダヘッド13に形成され、それぞれがシリンダヘッド13の下面に開口することで燃焼室17に連通している。吸気ポート18は、シリンダ11内に導入される新気が流れる吸気通路に接続されている。吸気通路は、図3に示すように、各シリンダ11に接続される分岐部と集合部とを有する吸気マニホールド182を含む。図3では図示を省略するが、吸気通路における上流側には、吸気流量を調整するスロットル弁20が介設しており、スロットル弁20は、エンジン制御器100からの制御信号を受けてその開度が調整される。一方、排気ポート19は、各シリンダ11からの既燃ガス(排気ガス)が流れる排気通路191に接続されている(図3参照)。排気通路191には、図示は省略するが、一つ以上の触媒コンバータを有する排気ガス浄化システムが配置される。触媒コンバータは、例えば三元触媒を含む。
吸気弁21及び排気弁22はそれぞれ、吸気ポート18及び排気ポート19を燃焼室17から遮断(閉)することができるように配設されている。吸気弁21は吸気弁駆動機構により、排気弁22は排気弁駆動機構により、それぞれ駆動される。吸気弁21及び排気弁22は所定のタイミングで往復動して、吸気ポート18及び排気ポート19を開閉し、シリンダ11内のガス交換を行う。吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構は、図示は省略するが、それぞれ、クランクシャフトに駆動連結された吸気カムシャフト及び排気カムシャフトを有し、これらのカムシャフトはクランクシャフトの回転と同期して回転する。また、少なくとも吸気弁駆動機構は、吸気カムシャフトの位相を所定の角度範囲内で連続的に変更可能な、液圧式又は機械式の位相可変機構(Variable Valve Timing:VVT)23を含んで構成されている。VVT23と共に、弁リフト量を連続的に変更可能なリフト可変機構(CVVL(Continuous Variable Valve Lift))を備えるようにしてもよい。
点火プラグ31は、例えばねじ等の周知の構造によって、シリンダヘッド13に取り付けられている。点火プラグ31は、この実施形態では、シリンダ11の軸心に対し、排気側に傾斜した状態で取り付けられており、その先端部(電極)は燃焼室17の天井部に臨んでいる。尚、点火プラグ31の配置はこれに限定されるものではない。点火システム32は、エンジン制御器100からの制御信号を受けて、点火プラグ31が所望の点火タイミングで火花を発生するよう、それに通電する。一例として、点火システム32はプラズマ発生回路を備え、点火プラグはプラズマ点火式のプラグとしてもよい。
燃料噴射弁33は、この実施形態ではシリンダ11の軸心に沿って配置され、例えばブラケットを使用する等の周知の構造でシリンダヘッド13に取り付けられている。燃料噴射弁33の先端は、燃焼室17の天井部の中心に臨んでいる。
図2に示すように、燃料噴射弁33は、この実施形態では、シリンダ11内に燃料を噴射するノズル口41を開閉する外開弁42を有する、外開弁式のインジェクタである。但し、燃料噴射弁は、外開弁式には限定されない。ノズル口41は、シリンダ11の軸心に沿って延びる燃料管43の先端部において、先端側ほど径が大きくなるテーパ状に形成されている。燃料管43の基端側の端部は、内部にピエゾ素子44が配設されたケース45に接続されている。外開弁42は、弁本体42aと、弁本体42aから燃料管43内を通ってピエゾ素子44に接続された連結部42bとを有している。弁本体42aの連結部42b側の部分が、ノズル口41と略同じ形状を有しており、該部分がノズル口41に当接(着座)しているときには、ノズル口41が閉状態となる。このとき、弁本体42aの先端側の部分は、燃料管43の外側に突出した状態となっている。
ピエゾ素子44は、電圧の印加による変形により、外開弁42をシリンダ11の軸心方向の燃焼室17側に押圧することで、その外開弁42を、ノズル口41を閉じた状態からリフトさせてノズル口41を開放する。このとき、ノズル口41からシリンダ11内に燃料が、シリンダ11の軸心を中心とするコーン状(詳しくはホローコーン状)に噴射される。つまり、この燃料噴射弁33は、燃焼室17の中心部から外周部の方向に燃料噴霧を噴射する。コーンのテーパ角は、本実施形態では、90°〜100°である(内側の中空部のテーパ角は70°程度である)。そして、ピエゾ素子44への電圧の印加が停止すると、ピエゾ素子44が元の状態に復帰することで、外開弁42がノズル口41を再び閉状態とする。このとき、ケース45内における連結部42bの周囲に配設された圧縮コイルバネ46がピエゾ素子44の復帰を助長する。
ピエゾ素子44に印加する電圧が大きいほど、外開弁42の、ノズル口41を閉じた状態からのリフト量(以下、単にリフト量という)が大きくなる。このリフト量が大きいほど、ノズル口41の開度が大きくなってノズル口41からシリンダ11内に噴射される燃料噴霧のペネトレーションが大きくなる(長くなる)とともに、単位時間当たりに噴射される燃料量が多くなりかつ燃料噴霧の粒径が大きくなる。
燃料供給システム34は、外開弁42(ピエゾ素子44)を駆動するための電気回路と、燃料噴射弁33に燃料を供給する燃料供給系とを備えている。エンジン制御器100は、所定のタイミングで、リフト量に応じた電圧を有する噴射信号を前記電気回路に出力することで、該電気回路を介してピエゾ素子44及び外開弁42を作動させて、所望量の燃料を、シリンダ11内に噴射させる。前記噴射信号の非出力時(噴射信号の電圧が0であるとき)には、外開弁42によりノズル口41が閉じられた状態となる。このようにピエゾ素子44は、エンジン制御器100からの噴射信号によって、その作動が制御される。こうしてエンジン制御器100は、ピエゾ素子44の作動を制御して、燃料噴射弁33のノズル口41からの燃料噴射及び該燃料噴射時におけるリフト量を制御する。
燃料供給系は、図示は省略するが、高圧燃料ポンプ及び調圧弁を含んで構成され、高圧燃料ポンプは、燃料タンクより供給されてきた燃料をコモンレールに圧送し、コモンレールは燃料を所定の燃料圧力で蓄える。そうして、インジェクタ33が作動する(外開弁42がリフトされる)ことによって、コモンレールに蓄えられている燃料がノズル口41から噴射される。高圧燃料ポンプはプランジャー式のポンプであって、エンジンの回転部材(例えばカムシャフト)によって駆動される。
調圧弁は、コモンレールで蓄えられる所定の燃料圧力を調整する弁である。調圧弁は、例えば電磁弁によって構成されていて、エンジン制御器100によって作動制御される。つまり、エンジン制御器100が弁制御信号を出力すると、調圧弁は、その弁制御信号の電圧に応じた開度になるように作動する。この調圧弁の開度に応じて燃料圧力が決定される。
ここで、このエンジン1の燃料は、この実施形態ではガソリンであるが、これに限定されるものではなく、例えばガソリン含有の各種の液化燃料としてもよい。
エンジン制御器100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。
エンジン制御器100は、図1、3に示すように、少なくとも、エアクリーナ183の下流側に取り付けられたエアフローセンサ71からの吸気流量に関する信号、クランク角センサ72からのクランク角パルス信号、アクセル・ペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ73からのアクセル開度信号、車速センサ74からの車速信号、及び、排気通路191上に設置されたO2センサ75からの排気ガスの酸素濃度に関する信号をそれぞれ受ける。エンジン制御器100は、これらの入力信号に基づいて、以下のようなエンジン1の制御パラメーターを計算する。例えば、所望のスロットル開度信号、燃料噴射パルス、調圧弁の弁制御信号、点火信号、バルブ位相角信号等である。そしてエンジン制御器100は、それらの信号を、スロットル弁20(スロットル弁20を動かすスロットルアクチュエーター)、燃料供給システム34、点火システム32、VVT23等に出力する。
このエンジン1の幾何学的圧縮比εは、15以上40以下とされている。この幾何学的圧縮比εは、特に25以上35以下が好ましい。本実施形態では、エンジン1は圧縮比=膨張比となる構成から、高圧縮比と同時に、比較的高い膨張比を有するエンジン1でもある。尚、圧縮比≦膨張比となる構成(例えばアトキンソンサイクルや、ミラーサイクル)を採用してもよい。
燃焼室17は、図1に示すように、シリンダ11の壁面と、ピストン15の冠面と、シリンダヘッド13の下面(天井面)と、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッドの面と、によって区画形成されている。そして、冷却損失を低減するべく、これらの各面に、断熱層61,62,63,64,65が設けられることによって、燃焼室17が断熱化されている。尚、以下において、これらの断熱層61〜65を総称する場合は、断熱層に符号「6」を付す場合がある。断熱層6は、これらの区画面の全てに設けてもよいし、これらの区画面の一部に設けてもよい。また、図例では、シリンダ壁面の断熱層61は、ピストン15が上死点に位置した状態で、そのピストンリング14よりも上側の位置に設けられており、これにより断熱層61上をピストンリング14が摺動しない構成としている。但し、シリンダ壁面の断熱層61はこの構成に限らず、断熱層61を下向きに延長することによって、ピストン15のストロークの全域、又は、その一部に断熱層61を設けてもよい。また、燃焼室17を直接区画する壁面ではないが、吸気ポート18や排気ポート19における、燃焼室17の天井面側の開口近傍のポート壁面に断熱層を設けてもよい。尚、図1に図示する各断熱層61〜65の厚みは実際の厚みを示すものではなく単なる例示であると共に、各面における断熱層の厚みの大小関係を示すものでもない。
燃焼室17の断熱構造について、さらに詳細に説明する。燃焼室17の断熱構造は、上述の如く、燃焼室17を区画する各区画面に設けた断熱層61〜65によって構成されるが、これらの断熱層61〜65は、燃焼室17内の燃焼ガスの熱が、区画面を通じて放出されることを抑制するため、燃焼室17を構成する金属製の母材よりも熱伝導率が低く設定される。ここで、シリンダ11の壁面に設けた断熱層61については、シリンダブロック12が母材であり、ピストン15の冠面に設けた断熱層62についてはピストン15が母材であり、シリンダヘッド13の天井面に設けた断熱層63については、シリンダヘッド13が母材であり、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッド面に設けた断熱層64,65については、吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ母材である。したがって、母材の材質は、シリンダブロック12、シリンダヘッド13及びピストン15については、アルミニウム合金や鋳鉄となり、吸気弁21及び排気弁22については、耐熱鋼や鋳鉄等となる。
また、断熱層6は、冷却損失を低減する上で、母材よりも容積比熱が小さいことが好ましい。つまり、燃焼室17内のガス温度は燃焼サイクルの進行によって変動するが、燃焼室17の断熱構造を有しない従来のエンジンは、シリンダヘッドやシリンダブロック内に形成したウォータージャケット内を冷却水が流れることにより、燃焼室17を区画する面の温度は、燃焼サイクルの進行にかかわらず、概略一定に維持される。
一方で、冷却損失は、冷却損失=熱伝達率×伝熱面積×(ガス温度−区画面の温度)によって決定されることから、ガス温度と壁面の温度との差温が大きくなればなるほど冷却損失は大きくなってしまう。冷却損失を抑制するためには、ガス温度と区画面の温度との差温は小さくすることが望ましいが、冷却水によって燃焼室17の区画面の温度を概略一定に維持した場合、ガス温度の変動に伴い差温が大きくなることは避けられない。そこで、断熱層6の熱容量を小さくして、燃焼室17の区画面の温度が、燃焼室17内のガス温度の変動に追従して変化するようにすることが好ましい。
前記断熱層6は、例えば、母材上にZrO2等のセラミック材料をプラズマ溶射によってコーティングして形成すればよい。このセラミック材料の中には、多数の気孔を含んでいてもよい。このようにすれば、断熱層6の熱伝導率及び容積比熱をより低くすることができる。
また、本実施形態では、図1に示すように、熱伝導率が非常に低くて断熱性に優れかつ耐熱性にも優れたチタン酸アルミニウム製のポートライナ181を、シリンダヘッド13に一体的に鋳ぐるむことによって、吸気ポート18に断熱層を設けている。この構成は、新気が吸気ポート18を通過するときに、シリンダヘッド13から受熱して温度が上がることを抑制乃至回避し得る。これによってシリンダ11内に導入する新気の温度(初期のガス温度)が低くなるため、燃焼時のガス温度が低下し、ガス温度と燃焼室17の区画面との差温を小さくする上で有利になる。燃焼時のガス温度を低下させることは熱伝達率を低くし得るから、そのことによる冷却損失の低減にも有利になる。尚、吸気ポート18に設ける断熱層の構成は、ポートライナ181の鋳ぐるみに限定されない。
このエンジン1ではまた、少なくとも一部の運転領域において、前記の燃焼室17及び吸気ポート18の断熱構造に加えて、燃焼室17内においてガス層による断熱層を形成することで、冷却損失を大幅に低減するようにしている。
具体的には、エンジン制御器100は、エンジン1の燃焼室17内の外周部に新気を含むガス層が形成されかつ中心部に混合気層が形成されるように、圧縮行程後期から膨張行程初期にかけての期間内において燃料噴射弁33のノズル口41から気筒内に燃料を噴射させるべく、燃料供給システム34に制御信号を出力する。すなわち、圧縮行程後期から膨張行程初期にかけての期間内において燃料噴射弁33により気筒内に燃料を噴射させかつその燃料噴霧のペネトレーションを、燃料噴霧が気筒内の外周部(ガス層)まで届かないような大きさ(長さ)に抑えることで、気筒内の中央部に混合気層が形成されかつその周囲に新気を含むガス層が形成されるという、成層化が実現する。このガス層は、新気のみであってもよく、新気に加えて、既燃ガス(EGRガス)を含んでいてもよい。尚、ガス層に少量の燃料が混じっても問題はなく、ガス層が断熱層の役割を果たせるように混合気層よりも燃料リーンであればよい。
こうして、燃焼室17内において、ガス層と混合気層とが形成された状態で、その混合気層の混合気を、例えば圧縮自己着火により燃焼させれば、図7に示すように、混合気層とシリンダ11等の壁面との間のガス層Gにより、高温の燃焼ガスがシリンダ11等の壁面に接触することがなく、そのガス層Gが断熱層となって、シリンダ11等の壁面からの熱の放出を抑えることができる。その結果、冷却損失を大幅に低減することが可能になる。
尚、冷却損失を低減させるだけでは、その冷却損失の低減分が排気損失に転換されて図示熱効率の向上にはあまり寄与しないところ、このエンジン1では、高圧縮比化に伴う高膨張比化によって、冷却損失の低減分に相当する燃焼ガスのエネルギを、機械仕事に効率よく変換している。すなわち、エンジン1は、冷却損失及び排気損失を共に低減させる構成を採用することによって、図示熱効率を大幅に向上させているということができる。
このように、このエンジン1においては、燃焼室17内にガス層Gを形成することによって、冷却損失を低減しようとするものの、エンジン1の運転状態によっては、ガス層Gが確実に形成できずに、冷却損失の低減効果が得られないこともある。
すなわち、このエンジン1においては、前述の通り、燃焼室17の中心部から外周部に向かって燃料が噴射され、自着火による燃焼火炎は、中心部から外周部の方向に拡がっていく。このときに、燃料の噴射後、混合気が着火するまでの着火遅れ時間が長くなったり、燃焼開始から燃焼終了までの燃焼期間が長くなったりしたときには、火炎が燃焼室17を区画する壁面に到達する前に燃焼が終了せず、火炎が壁面にまで到達してしまうことになる。
例えばエンジン1の負荷が低いときには、燃焼室17内の温度及び圧力が低くなるため、燃焼が遅くなり、前述の通り、火炎が燃焼室17を区画する壁面に到達しやすくなる。また、エンジン1の回転数が高いときには、クランク角の変化に対する実時間が短くなるため、燃焼が相対的に遅くなり、この場合も、火炎が燃焼室17を区画する壁面に到達しやすくなる。
そこで、このエンジン1では、必要に応じて燃焼を早めるべく、吸気にオゾンを添加するオゾン添加装置5を備えている。具体的には、図3に示すように、オゾン添加装置5は、吸気マニホールド182における集合部内に配設されており、エンジン制御器100によって制御されることで、ここを通過する吸気をオゾン化する。
オゾン添加装置5は、図4、5に示すように、この例においては、吸気管(吸気マニホールド)内の横断面上で上下左右に並列された複数のオゾナイザ50によって構成されている。各オゾナイザ50は、酸素を含有する吸気を原料ガスとして、無声放電によりオゾンを生成するように構成されている。オゾナイザ50は、接地電極管51と、その接地電極管51に対し所定の放電間隙を空けて同軸配置された高電圧電極52とを備えた同軸円筒型であり、高電圧電極52の表面には、誘電体53がコーティングされている。そうして、高電圧電極52に対し、図外の電源から電線54を介して高周波交流高電圧を印加することにより、放電間隙において無声放電が発生し、そこを通過する空気(つまり、吸気)がオゾン化される。こうしてオゾンが添加された吸気は、吸気マニホールド182の分岐部を介して、各シリンダ11内に導入されるようになる。
各オゾナイザ50に対する電圧の印加態様を変更する、及び/又は、電圧を印加するオゾナイザ50の数を変更することによって、オゾン添加装置5を通過した後の、吸気中のオゾン濃度を調整することが可能であり、エンジン制御器100は、詳しくは後述するが、こうしたオゾン添加装置5に対する制御を通じて、吸気中のオゾン濃度の調整を行うように構成されている。
吸気にオゾンを添加することにより、オゾンの強い酸化作用によって燃焼室17内の燃焼を早めることが可能になる。例えば図6は、吸気にオゾンが添加されていない場合の熱発生率と(同図の一点鎖線参照)、吸気にオゾンが添加されている場合の熱発生率と(同図の実線参照)を比較する図である。尚、燃料の噴射タイミングは互いに同じである。これによると、吸気にオゾンが添加されている場合は、オゾンが添加されていない場合と比較して、熱発生率が立ち上がるタイミングが進角側になり、着火の開始が早まっていることが判る。これは、燃料噴射の終了から着火までの時間である着火遅れが短くなることに対応する。また、吸気にオゾンが添加されている場合は、熱発生率の立ち上がりが、より急峻になり、熱発生率のピークが進角側に移動するようになる。そうして、燃焼の終了タイミングも、吸気にオゾンが添加されている場合は、オゾンが添加されていない場合よりも進角側になり、燃焼の開始から燃焼の終了までの燃焼期間も短くなる。
こうして、着火遅れが短くなること、及び、燃焼期間が短くなることによって、燃焼室17内の中心部から外周部に向かって拡がる火炎が燃焼室17を区画する壁面に到達する前に、燃焼が終了するようになる。すなわち、図7に示すように、燃焼室17内の外周部に、燃焼に寄与しないガス層Gが確実に形成される。特に、火炎がスキッシュエリアに到達する前に燃焼を終了させることは、シリンダヘッド13への熱の放出を回避するため、冷却損失の低減に効果的である。
ここで、吸気中のオゾン濃度と、燃焼の早さとは関係し、図8に示すように、吸気中のオゾン濃度が高くなるほど、着火遅れ時間は短くなり、オゾン濃度が低くなるほど、着火遅れ時間は長くなる。一点鎖線で示す所定濃度以下では、失火してしまうような条件下において、オゾン濃度を少なくとも10ppmとすることで、着火遅れを4ms程度に短くすることが可能になる。一方、オゾン濃度を100ppm以上にすると、着火遅れが短くなりすぎて、気筒内の圧力上昇率(dP/dθ)が高くなりすぎる。着火遅れとしては、1〜4msに設定することが好ましく、これを達成する上で、吸気のオゾン濃度は10〜100ppmの範囲で設定することが望ましい。
前述したように、エンジン1の負荷及び回転数に係るエンジン1の運転状態に応じて、シリンダ11内の状態が変化し、火炎が燃焼室17を区画する壁面に到達しやすくなったり、逆に到達しにくくなったりする。そこで、このエンジン1では、その運転状態に応じて、吸気中のオゾン濃度を変更するように構成されている。図9は、エンジン1の運転状態に対するオゾン濃度の関係を示すマップである。
このマップでは、同一回転数では、エンジン1の負荷が低いときには、筒内温度及び圧力が低いため、燃料の着火性には不利になると共に、燃焼速度も遅くなることから、吸気中のオゾン濃度を高く設定して、前述の通り、燃焼を早める。一方、エンジン1の負荷が高くなれば、筒内温度及び圧力が高まり、燃料の着火性には有利になると共に、燃焼速度も速まることから、吸気中のオゾン濃度を低く設定する。つまり、前述したように、高すぎるオゾン濃度は、シリンダ11内の圧力上昇率が高くなりすぎて、NVH性能が悪化してしまうためである。
また、同一負荷では、エンジン1の回転数が低いときは、クランク角変化に対する実時間が長くなるため、燃焼を早める必要性はそれほど高くなく、吸気中のオゾン濃度は低く設定される一方で、エンジン1の回転数が高くなれば、クランク角変化に対する実時間が短くなることから、燃焼を早めるために、オゾン濃度は高く設定される。
エンジン制御器100は、各種パラメーターの検出値から得られるエンジン1の運転状態に基づき、図9のマップに従ってオゾン濃度を設定し、それに応じてオゾン添加装置5を制御することで、吸気中のオゾン濃度を設定値となるように制御する。
ここで、図10は、所定のエンジン回転数において、吸気中のオゾン濃度を変更したときの、エンジン負荷と燃費との関係を示している。これによると、吸気中のオゾン濃度を一定としたときには、低負荷側は失火限界により制限され、高負荷側はNVH限界により制限されるが、図9のマップにも示すように、エンジン負荷が高い領域は、吸気中のオゾン濃度を低くし、エンジン負荷が中程度の領域は、吸気中のオゾン濃度を中程度にし、エンジン負荷が低い領域は、吸気中のオゾン濃度を高くすることで、エンジン1の広い負荷領域に対し、燃費をおおよそフラットな特性にすることが可能であることが判る(図10の一点鎖線参照)。
尚、ここでは、エンジン1の回転数及び負荷を含む運転状態に基づいて、吸気中のオゾン濃度を設定する制御を例示したが、オゾン添加装置5の制御は、これに限定されない。例えばシリンダ11内に噴射する燃料噴射量が多くなるほど、燃料の噴霧時間が長くなって、火炎が燃焼室17の壁面にまで到着しやすくなることから、燃料噴射量に応じて、噴射量が多くなるときには、吸気中のオゾン濃度が高くなるようにしてもよい。具体的には、図3に示すように、エンジン制御器100は、エアフローセンサ71が検出した空気流量と、クランク角センサ72が検出したエンジン回転数とに基づき燃料噴射量を設定すると共に、O2センサ75が検出した酸素濃度に応じて、設定した燃料噴射量を補正する。そうして、その補正後の燃料噴射量に基づいて、噴射量が多くなるときには吸気中のオゾン濃度が高くなるように、例えば予め設定した関係式に従ってオゾン濃度を設定し、オゾン添加装置5を制御してもよい。オゾン添加によって、燃焼が早まったことは、例えばクランク角センサ72の検出値から角速度変動に基づいて把握することが可能であるため、クランク角センサ72の検出値から得られる角速度変動に基づいて、オゾン添加装置5の制御(言い換えると、吸気へのオゾンの添加量の調整)を行ってもよい。
また、例えば筒内圧力が高くなれば、燃料噴霧が飛翔し難くなって、火炎が燃焼室17の壁面にまで到達しにくくなる一方、筒内圧力が低くなれば、燃料噴霧が飛翔しやすくなって、火炎が燃焼室17の壁面にまで到達しやすくなることから、筒内圧力に応じて、筒内圧力が低くなるときには、吸気中のオゾン濃度が高くなるようにし、逆に筒内圧力が高くなるときには、吸気中のオゾン濃度が低くなるようにしてもよい。こうすることでも、火炎が燃焼室17を区画する壁面に到達することが抑制されて、冷却損失を確実に低減することが可能になる。
さらに、燃料圧力が高くなれば、燃料噴霧が飛翔し易くなって、火炎が燃焼室17の壁面に到達しやすくなる一方、燃料圧力が低くなれば、燃料噴霧が飛翔し難くなって、火炎が燃焼室17の壁面にまで到達し難くなることから、燃料圧力に応じて、燃料圧力が低くなるときには、吸気中のオゾン濃度が低くなるようにし、逆に燃料圧力が高くなるときには、吸気中のオゾン濃度が高くなるようにしてもよい。こうすることでも、火炎が燃焼室17を区画する壁面に到達することが抑制されて、冷却損失を確実に低減することが可能になる。
尚、以上説明したような、図9に示す制御マップを用いたオゾン濃度の調整制御、燃料噴射量に基づくオゾン濃度の調整制御、筒内圧力に基づくオゾン濃度の調整制御、及び燃料圧力に基づくオゾン濃度の調整制御は、適宜組み合わせることが可能である。
また、前記の構成では、オゾン添加装置5を、同軸円筒型のオゾナイザ50によって構成しているが、例えば図11に示すように、平行平板型のオゾナイザ500によって構成してもよい。平行平板型のオゾナイザ500は、吸気管内を横切るように配置された接地電極510と、表面に誘電体530が設けられた高電圧電極520とが、所定の放電間隙を空けて配置されることで構成されており、図例では、複数のオゾナイザ500が、上下方向に重なるように配設されている。このような構成のオゾン添加装置5においても、吸気にオゾンを添加することが可能である。こうした平行平板型のオゾナイザ500は、広い放電面積が確保できるという利点がある。
また、吸気管(吸気マニホールド182)内で、吸気にオゾンを添加するのではなく、シリンダ11内に導入された吸気にオゾンを添加するようにしてもよく、図示は省略するが、例えばシリンダヘッド13に対し、燃料噴射弁33に近接してオゾン添加装置を取り付けてもよい。この場合は、吸気行程中にオゾナイザに電圧を印加し、その吸気流動を利用して吸気にオゾンを添加することが望ましい。尚、オゾン濃度は、オゾナイザの駆動時間の調整によって変更することが可能である。また、オゾナイザを燃料噴射弁33に設けてもよい。
さらに、ここに開示する技術は、前述したような、燃焼室17の断熱構造を有する高圧縮比のエンジン1への適用に限定されるものではなく、例えば燃焼室17の断熱構造は省略してもよい。