JP6146426B2 - 熱伝導部材を備えたエンジン構造 - Google Patents

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Description

ここに開示する技術は、エンジンに用いられる熱伝導部材を備えたエンジン構造に関する。
特許文献1には、シリンダライナに熱伝導率の低い熱伝導部材を用いたエンジン構造が開示されている。具体的には、このシリンダライナは、炭素繊維強化樹脂複合材料(CFRP/Carbon Fiber Reinforced Plastics)により構成されている。このエンジン構造では、シリンダライナが熱伝導率の低いCFRPで構成されることにより、燃焼室、シリンダライナ、シリンダブロックの順に熱が放出されることが抑制される。この結果、このエンジン構造では、エンジンの冷却損失を低下でき、ひいては熱効率の向上を図っている。
特開昭59−49352号公報
ところで、特許文献1に記載のような熱伝導部材を用いたエンジン構造では、熱伝導の方向を十分にコントロールできない。つまり、エンジン構造によっては、例えば暖機に用いられるための熱媒体(冷却水や冷却油)への伝熱を促進させたいことがある。また、シリンダブロック等への伝熱を抑制し、放熱ロスを抑制したいこともある。更には、吸気への放熱を抑制する、あるいは排気からの入熱を抑制するといった要求もある。
このような観点から、エンジン構造では、狙いの方向に対して伝熱を促進できると同時に、狙いの方向に対して伝熱を抑制できる、熱伝導率の異方性を有する熱伝導部材が望まれる。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比較的容易な製法により得られる、熱伝導率の異方性を有する熱伝導部材を備えたエンジン構造を提供することである。
ここに開示する技術は、エンジンに用いられる熱伝導部材であって、略円弧状ないし略扇状に形成され、径方向、周方向、及び前記径方向及び前記周方向に垂直な軸方向のうちの径方向又は周方向の熱伝導率が、残りの2方向の熱伝導率よりも低い複数の異方性伝熱片を有し、複数の異方性伝熱片が、周方向に隣り合う異方性伝熱片が互いに接合されるように周方向に配列されて成る円筒状又は円柱状の異方性熱伝導部を備えている。
この構成によると、熱伝導率の異方性を有する略扇状の複数の異方性伝熱片が、円筒状ないし円柱状に接合されることで異方性熱伝導部が得られる。この異方性熱伝導部は、径方向又は周方向の熱伝導率が低く、残りの2方向の熱伝導率が高くなる。具体的に、異方性熱伝導部は、例えば径方向での伝熱が抑制される一方、周方向及び軸方向の伝熱が促進される。また、異方性伝熱部は、例えば径方向及び軸方向の伝熱が促進される一方、周方向の伝熱が抑制される。従って、所望とする方向での熱伝導を促進でき、かつ所望とする方向での熱伝導を抑制できる熱伝導部材を得ることができる。
異方性伝熱片は、径方向の熱伝導率が周方向及び軸方向の熱伝導率よりも低くしてもよい。これにより、これらの異方性伝熱片が組み合わされて構成された異方性伝熱部は、径方向の伝熱が抑制され、周方向及び軸方向の伝熱が促進されることになる。
異方性伝熱片は、周方向の熱伝導率が径方向及び軸方向の熱伝導率よりも低くしてもよい。これにより、これらの異方性伝熱片が組み合わされて構成された異方性伝熱部は、径方向及び軸方向の伝熱が促進され、周方向の伝熱が抑制されることになる。
この熱伝導部材を備えたエンジン構造においては、熱伝導部材が、径方向の熱伝導率が周方向及び軸方向の熱伝導率よりも低い複数の第1の異方性伝熱片で構成される円筒状の第1の異方性伝熱部を含み、筒軸方向の少なくとも一部が第1の異方性伝熱部で構成されるシリンダライナを備えていてもよい。
この構成のエンジン構造では、シリンダライナの筒軸方向の少なくとも一部が第1の異方性伝熱部で構成される。第1の異方性伝熱部は、径方向の熱伝導率が低いため、シリンダライナから、その外周側のシリンダブロックへの伝熱を抑制でき、ひいてはエンジンの熱ロスを防止できる。
熱伝導部材は、第1の異方性伝熱部に加え、周方向の熱伝導率が径方向及び軸方向の熱伝導率よりも低い複数の第2の異方性伝熱片で構成される円筒状の第2の異方性伝熱部を含み、シリンダライナでは、第1の異方性伝熱部と第2の異方性伝熱部とが筒軸方向に連続して配置され、第2の異方性伝熱部の外周側には、熱媒体が流れる流路が設けられていてもよい。
この構成のエンジン構造では、第1の異方性伝熱部と第2の異方性伝熱部とが筒軸方向に連続することでシリンダライナが構成される。第1の異方性伝熱部は、径方向の熱伝導率が低いので、シリンダライナの第1の異方性伝熱部から、その外周側のシリンダブロックへの伝熱を抑制でき、ひいてはエンジンの熱ロスを防止できる。また、第1の異方性伝熱部は、軸方向の熱伝導率が高いので、第1の異方性伝熱部の熱は、その内周面に沿うようにして第2の異方性伝熱部へと伝導し易い。この第2の異方性伝熱部は、径方向の熱伝導率が高いので、シリンダライナの第2の異方性伝熱部から、その外周側の流路を流れる熱媒体(例えば冷却水や冷却油等)へ熱が伝導し易い。従って、シリンダライナの熱を、シリンダブロック側へ無駄に放出することなく、熱媒体へ付与することができ、この熱媒体の熱を例えば暖機等に有効利用できる。
熱伝導部材は、径方向の熱伝導率が周方向及び軸方向の熱伝導率よりも低い複数の異方性伝熱片で構成される円柱状の第3の異方性伝熱部を含み、第3の異方性伝熱部は、吸気ポートを開閉する吸気弁の円柱状のシャフト部又は排気ポートを開閉する排気弁の円柱状のシャフト部を構成していてもよい。
この構成のエンジン構造では、吸気弁のシャフト部、又は排気弁のシャフト部が第3の異方性伝熱部で構成される。第3の異方性伝熱部は、径方向の熱伝導率が低い。このため、例えば吸気弁のシャフト部に第3の異方性伝熱部を適用すると、燃焼室から吸気弁へ熱が伝導したとしても、吸気弁のシャフト部から吸気ポートの吸気への径方向の放熱を抑制できる。これにより、燃焼室へ吸い込まれる前の吸気が加熱されてしまうことを防止できる。
また、例えば排気弁のシャフト部に第3の異方性伝熱部を適用すると、排気から、排気弁のシャフト部への径方向の入熱を抑制できる。これにより、排気の温度が低下してしまうことを防止できる。
吸気ポートの弁体及び排気ポートの弁体のいずれか一方又は両方は、シャフト部の軸方向の熱伝導率が周方向及び径方向の熱伝導率よりも低い熱伝導性を有していてもよい。
この構成のエンジン構造では、燃焼室に面する弁体の軸方向の熱伝導率が低い。このため、燃焼室の熱が弁体を介して軸方向外方のシャフト部へ伝導してしまうことを抑制できる。これにより、燃焼室の熱ロスを低減できる。

吸気ポートの弁体及び排気ポートの弁体のいずれか一方又は両方の外周側には、熱媒体が流れる流路が設けられていてもよい。
この構成のエンジン構造では、弁体の周方向及び径方向の熱伝導率が高い。このため、弁体から、その外周側を流れる熱媒体(例えば冷却水や冷却油等)へ熱が伝導し易い。従って、燃焼室の熱を無駄に放出することを抑制しつつ、この熱を熱媒体へ付与することができ、この熱媒体の熱を例えば暖機等に利用できる。
以上説明したように、エンジンに用いられる熱伝導部材は、径方向、周方向、及び軸方向において、熱伝導率の異方性を有する。これにより、例えば径方向及び軸方向への熱伝導を促進しつつ、周方向への熱伝導を抑制したり、径方向への熱伝導を抑制しつつ、周方向及び軸方向への熱伝導を促進したりできる。従って、エンジンの構造に応じて、熱伝導の方向を容易にコントロールできる熱伝導部材を比較的簡易な構成により提供することができる。
実施形態に係る多気筒エンジンの縦断面図である。 図1のシリンダライナ及びその周辺を拡大した縦断面図である。 熱伝導部材の原材料となるグラファイト材料の斜視図である。 (A)は、第1ライナ部の切削加工を表した構成図であり、(B)は、切り出した異方性伝熱片を焼結した状態を表した構成図である。 (A)は、第2ライナ部の切削加工を表した構成図であり、(B)は、切り出した異方性伝熱片を焼結した状態を表した構成図である。 図2において、熱の移動を表した縦断面図である。 実施形態の参考形態に係る吸気弁及びその周辺を拡大した縦断面図である。 参考形態1及び2の弁体(熱伝導部材)の原材料となるグラファイト材料の斜視図である。 (A)は、参考形態1及び2のシャフト部の切削加工を表した構成図であり、(B)は、切り出した異方性伝熱片を焼結した状態を表した構成図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
〈エンジンの全体構造〉
本発明のエンジン構造(エンジン1)は、自動車等の車両用エンジンである。エンジン1は、図1の紙面に垂直な方向に4つの気筒が配列された直列4気筒の多気筒式のガソリンエンジンである。
エンジン1は、エンジン本体2と、エンジン本体2に組み付けられた給排気マニホールド(図示省略)と、各種のポンプ等の補機(図示省略)とを備えている。
エンジン本体2は、上下に連結されるカムキャップ3、シリンダヘッド4、シリンダブロック5、クランクケース(図示省略)、及びオイルパン(図示省略)を備えている。
シリンダブロック5には、4つのシリンダボア7が形成され、各シリンダボア7内にそれぞれピストン8が摺動可能に収容される。各気筒では、ピストン8、シリンダボア7、シリンダヘッド4、吸気弁14、及び排気弁15によって燃焼室10が区画される。各ピストン8は、コネクティングロッド9を介して、クランク軸(図示省略)に連結されている。クランク軸は、クランクケースに回転自在に支持されている。
シリンダヘッド4には、燃焼室10を形成するための、シリンダボア7と同数の凹部4aが設けられている。シリンダヘッド4には、気筒毎に、各凹部4aの位置で燃焼室10に開口する吸気ポート12及び排気ポート13が設けられる。シリンダヘッド4には、吸気ポート12を開閉する吸気弁14及び排気ポート13を開閉する排気弁15がそれぞれ収容されている。
吸気弁14及び排気弁15は、それぞれリターンスプリング16、17により各ポート12、13を閉鎖する方向(図1の上方向)に付勢されている。吸気弁14及び排気弁15は、カムシャフト18、19の外周に設けられたカム部18a、19aによって押し下げられることで、対応するポート12、13を開放するように構成される。
具体的に、カムシャフト18、19が回転すると、スイングアーム20、21の中央部に設けられたカムフォロア20a、21aがカム部18a、19aによって押し下げられる。これに伴い、スイングアーム20、21が、これらの一端側に設けられた油圧ラッシュアジャスタ24、25のピボット機構の頂部を支点として揺動する。この揺動に伴い、スイングアーム20、21の他端部がリターンスプリング16、17の付勢力に抗して吸気弁14及び排気弁15を押し下げる。これにより、吸気ポート12及び排気ポート13が開放状態となる。
シリンダヘッド4及びシリンダブロック5には、複数のウォータジャケット26〜29が設けられている。シリンダブロック5には、4つのシリンダボア7を一体に囲むようにウォータジャケット26が設けられている。シリンダヘッド4には、3つのウォータジャケット27、28、29が設けられる。ウォータジャケット27は、燃焼室10の吸気側(図1の右側)であって吸気ポート12の下側に設けられる。ウォータジャケット28は、燃焼室10の排気側(図1の左側)であって排気ポート13の下側に設けられる。ウォータジャケット29は、燃焼室10の真上であって吸気ポート12及び排気ポート13の間に設けられる。
シリンダブロック5のウォータジャケット26と、シリンダヘッド4のウォータジャケット27、28とは、シリンダヘッド4とシリンダブロック5との間に介設されたガスケットの連通孔(図示省略)を介して互いに連通している。
各ウォータジャケット26〜29は、図外のウォータポンプに繋がっている。これにより、ウォータジャケット26〜29内の冷却水は、エンジン本体2と図外のラジエターとの間を循環する。つまり、ウォータジャケット26〜29は、燃焼室10の熱が伝導する熱媒体が流れる流路を構成している。なお、この流路26〜29を流れる熱媒体は、水に限らず、オイルであってもよいし、熱を搬送できる媒体であれば如何なる流体であってもよい。
シリンダブロック5及びシリンダヘッド4には、オイルギャラリ30〜32が設けられている。オイルギャラリ30〜32は、図外のオイルポンプに繋がっている。これにより、油圧ラッシュアジャスタ24、25等の油圧作動装置に作動用の油圧が供給される。また、潤滑及び冷却用のオイルがエンジン本体2の各部に供給される。
〈シリンダブロックの詳細構造〉
図1及び図2に示すように、シリンダブロック5は、アルミ合金の鋳造品であるブロック本体50と、このブロック本体50の内部に収容される円筒状のシリンダライナ51とを備えている。シリンダライナ51は、例えば鋳込み、あるいは圧入によりブロック本体50に取り付けられる。このシリンダライナ51により、シリンダボア7が形成される。
ブロック本体50は、4つのシリンダ部55と、シリンダ部55の下方に繋がってクランク室を形成するスカート部56と、このスカート部56の内側に形成された軸受部57とを備えている。軸受部57は、クランク軸(図示省略)を回転自在に支持する。各シリンダ部55の内部には、シリンダライナ51が配設されている。
図2に示すように、シリンダライナ51は、シリンダボア7の熱が伝導する熱伝導部材を構成している。シリンダライナ51は、真円筒状に形成され、第1ライナ部52と第2ライナ部53とが筒軸方向に連続して構成される。本実施形態では、第1ライナ部52は、第2ライナ部53の下側に位置している。第1ライナ部52は、シリンダライナ51の下端から、該シリンダライナ51の上端よりもやや下側の部分まで筒軸方向に伸びている。第2ライナ部53は、シリンダライナ51の上端部に位置する。
第1ライナ部52と第2ライナ部53の外径は互いに等しく、第1ライナ部52と第2ライナ部53の内径も互いに等しい。第1ライナ部52の筒軸方向の長さ(図2の上下方向の高さ)は、第2ライナ部53の筒軸方向の長さ(図2の上下方向の高さ)よりも大きい。
第1ライナ部52の外周側には、シリンダ部55が位置している。つまり、第1ライナ部52の外周面52aは、シリンダ部55の内壁と接触している。第2ライナ部53の外周側には、上述したウォータジャケット26が位置している。つまり、第2ライナ部53の外周面53aは、ウォータジャケット26の流路に面している。従って、第2ライナ部53の外周面53aには、ウォータジャケット26の冷却水が直接接触することになる。
このように、第1ライナ部52は、筒軸方向においてシリンダ部55に対応する高さ位置に形成され、第2ライナ部53は、筒軸方向においてウォータジャケット26に対応する高さ位置にある。従って、例えばウォータジャケット26がシリンダライナ51の下部に対応する位置にある場合、シリンダライナ51の下部に第2ライナ部53を形成し、シリンダライナ51の上部に第1ライナ部52を形成するとよい。
また、例えばシリンダライナ51の全外周面がシリンダ部55に覆われ、シリンダライナ51の外周側にウォータジャケットが存在しない場合、シリンダライナ51の全体を第1ライナ部52のみで構成してもよい。
第1ライナ部52及び第2ライナ部53は、熱伝導率に異方性を有するグラファイト材料を原料とする異方性熱伝導部で構成される。各ライナ部52、53の製造方法の詳細は後述する。
第1ライナ部52は、径方向の熱伝導率が軸方向及び周方向の熱伝導率よりも極めて低い第1の異方性伝熱部である。例えば第1ライナ部52の径方向の熱伝導率は、20W/mkであるのに対し、第1ライナ部52の軸方向及び周方向の熱伝導率は、2000W/mkである。つまり、第1ライナ部52では、径方向の熱伝導率が、軸方向及び周方向の熱伝導率の1/100となっている。
第2ライナ部53は、周方向の熱伝導率が、径方向及び軸方向の熱伝導率よりも極めて低い第2の異方性伝熱部である。例えば第2ライナ部53の径方向及び軸方向の熱伝導率は、2000W/mkであるのに対し、第2ライナ部53の周方向の熱伝導率は、20W/mKである。つまり、第2ライナ部53では、周方向の熱伝導率が、径方向及び軸方向の熱伝導率の1/100となっている。
〈シリンダライナの製造工程〉
シリンダライナ51の製造工程について詳細に説明する。シリンダライナ51の製造工程では、第1ライナ部52と第2ライナ部53とがそれぞれ個別に製造される。第1ライナ部52及び第2ライナ部53は、図3に示すようなグラファイト材料90を原料として製造される。このグラファイト材料90は、熱伝導率の異方性を有している。
具体的に、このグラファイト材料90は、互いに垂直な3方向のうち図3の略左右方向(X方向)と図3の上下方向(Z方向)における熱伝導率が高く、残りのY方向の熱伝導率が低い円柱状に構成されている。上述したように、X方向及びZ方向の熱伝導率は、2000W/mkであり、Y方向の熱伝導率は20W/mkである。
なお、図2〜図9において、熱伝導率の異方性を有する部材に付したハッチングは、熱伝導率を模式的に表したものである。つまり、各図のこれらの部材では、ハッチングに沿った方向において熱伝導率が高い(例えば2000W/mk)であることを意味し、ハッチングの配列方向において熱伝導性が低い(例えば20W/mk)であることを意味する。
−第1ライナ部−
第1ライナ部52の製造工程について図3及び図4を参照しながら詳細に説明する。
第1ライナ部52の製造工程では、図3のグラファイト材料90から複数(多数、本例では16個)の第1異方性伝熱片91を切削加工により軸方向に切り出す(図4(A)を参照)。本例の第1異方性伝熱片91は、軸直角な横断面が幅広の略円弧状に形成される。ここで、第1ライナ部52の製造工程の切削加工では、各第1異方性伝熱片91の径方向(図3及び図4(A)のY方向)の熱伝導率が、周方向(即ち、図3及び図4(A)のX方向)及び軸方向(即ち、図3のZ方向、及び図4の紙面方向)よりも低くなるように、第1異方性伝熱片91の切り出し角度を決定する。
次いで、図4(B)に示すように、多数の第1異方性伝熱片91を環状に配列し、隣り合う第1異方性伝熱片91の周方向の両端を接合する。この接合は、例えば焼結により行われる。この結果、周方向及び軸方向の熱伝導率が高く、径方向の熱伝導率が低い第1ライナ部52が得られる。
−第2ライナ部−
第2ライナ部53の製造工程について図3及び図5を参照しながら詳細に説明する。
第2ライナ部53の製造工程では、図3のグラファイト材料90から複数(多数、本例では16個)の第2異方性伝熱片92を切削加工により軸方向に切り抜く(図5(A)を参照)。本例の第2異方性伝熱片92は、軸直角な横断面が幅広の略円弧状に形成される。ここで、第2ライナ部53の製造工程の切削加工では、各第2異方性伝熱片92の周方向(図3及び図5(A)のY方向)の熱伝導率が、径方向(即ち、図3のX方向及び図5(A)のX方向)及び軸方向(即ち、図3のZ方向、及び図5の紙面方向)よりも低くなるように、第2異方性伝熱片92の切り出し角度を決定する。
次いで、図5(B)に示すように、多数の第2異方性伝熱片92を環状に配列し、隣り合う第2異方性伝熱片92の周方向の両端を接合する。この接合は、例えば焼結により行われる。この結果、径方向及び軸方向の熱伝導率が高く、周方向の熱伝導率が低い第2ライナ部53が得られる。
以上のようにして得られた第1ライナ部52と第2ライナ部53を同軸上において上下に接合することで、シリンダライナ51を得ることができる。
〈シリンダライナの熱伝導〉
シリンダライナ51の熱伝導について図6を参照しながら説明する。シリンダボア7の熱は、第1ライナ部52へ伝導する。第1ライナ部52は、径方向の熱伝導率が極めて低く、軸方向及び周方向の熱伝導率が極めて高い。従って、第1ライナ部52の内周面に伝導した熱は、この内周面に沿うように軸方向上方へと移動し、第2ライナ部53の内周面へと伝達する。
このように、シリンダボア7とシリンダ部55とは、径方向の熱伝導率が極めて低い第1ライナ部52で仕切られる。従って、燃焼室10の熱が、第1ライナ部52を介してシリンダ部55へと放出されてしまうことを防止でき、燃焼室10の熱ロスを抑制できる。
シリンダボア7の上部の熱や、第1ライナ部52の内周面に沿って上方へ移動した熱は、第2ライナ部53へと伝導する。第2ライナ部53は、径方向の熱伝導率が極めて高い。従って、この熱は、第2ライナ部53を径方向外方へ移動し、ウォータジャケット26の冷却水へ付与される。これにより、この冷却水に熱が付与され、この熱が暖機等に利用される。
〈実施形態の作用効果〉
前記実施形態では、径方向の熱伝導率が極めて低い第1ライナ部52をシリンダボア7とシリンダ部55の間に配置することで、燃焼室10の熱がシリンダライナ51を介してシリンダ部55へ放出されてしまうことを確実に防止できる。この結果、燃焼室10の熱がシリンダ部55を介して無駄に放出されてしまうことを防止でき、熱ロスを招くことを回避できる。
また、第1ライナ部52は、軸方向の熱伝導率が極めて高いため、第1ライナ部52に伝導した熱を第2ライナ部53へ移動させることができる。第2ライナ部53は、径方向の熱伝導率が極めて高い。従って、第2ライナ部53の内側の熱や、第1ライナ部52から第2ライナ部53へ移動した熱を速やかにウォータジャケット26の冷却水に付与できる。この結果、冷却水に付与した熱を暖機等の他の用途に有効利用できる。
第1ライナ部52や第2ライナ部53は、図3に示すグラファイト材料90の切り出し部分(異方性伝熱片)の向きをそれぞれ異なる向きとし、各第1異方性伝熱片91や各第2異方性伝熱片92を周方向に環状に接合するだけで製造することができる。つまり、熱伝導率の異方性を有する部材を容易に製造でき、この部材をエンジン構造に採用できる。
参考形態1〉
上述した実施形態のエンジン1の構造では、本発明に係る熱伝導部材をシリンダライナ51に用いている。しかしながら、この熱伝導部材を吸気弁14に適用してもよい。
図7に示すように、吸気弁14は、燃焼室10に面する弁体14aと、該弁体14aの上部に連結する棒状のシャフト部14bとを有している。弁体14aは、傘状に形成され、吸気ポート12の流出端の開口周縁部に当接している。シャフト部14bは、弁体14aの上部から徐々に軸心に向かって先細りし、バルブガイド73の内部に挿通するように上方へ延びている。
参考形態1では、吸気弁14の弁体14aも熱伝導率の異方性を有するグラファイト材料で構成される。具体的に、図8に示すように、弁体14aの原材料となるグラファイト材料95は、互いに垂直な3方向のうち図8の上下方向(Z方向)の熱伝導率が低く、残りのX方向及びY方向の熱伝導率が低い円柱状に構成されている。Z方向の熱伝導率は、20W/mkであり、X方向及びY方向の熱伝導率は2000W/mkである。
吸気弁14の弁体14aは、このグラファイト材料95を例えば切削加工等により成型して得られる。弁体14aは、周方向及び径方向の熱伝導率が高くなり、軸方向(上下方向)の熱伝導率が低くなるように加工が施される。
以上のように弁体14aを構成すると、弁体14aのうち燃焼室10に面に伝導した熱は、この面に沿うように径方向外方へと移動する。図7に示すように、吸気弁14の弁体14aの外周側には、熱媒体が流れる流路であるウォータジャケット27、29が形成される。従って、弁体14aの径方向外方へと移動した熱は、最終的にウォータジャケット27、29の冷却水に付与され、暖機等に利用される。
また、燃焼室10の熱は、弁体14aを軸方向上方へ伝導することが抑制されるため、この熱が吸気ポート12の吸気へ付与されることも防止できる。これにより、燃焼室10へ流入する前の吸気が加熱・膨張してしまうことを回避でき、エンジン1の効率の低下を防止できる。
参考形態1では、吸気弁14のシャフト部14bが第3の異方性伝熱部を構成している。つまり、シャフト部14bは、第1ライナ部52と同様、径方向の熱伝導率が極めて低く、周方向及び軸方向の熱伝導率が極めて高い。従って、シャフト部14bに熱が伝導したとしても、この熱が吸気ポート12におけるシャフト部14bの外周側の吸気に伝導することを防止できる。
参考形態1のシャフト部14bは、上述した実施形態の第1ライナ部52と概ね同様にして製造される。即ち、図9(A)に示すように、図3に示すグラファイト材料90から複数(多数、本例では8個)の第3異方性伝熱片93を切削加工により軸方向に切り抜く。本例の第3異方性伝熱片93は、軸直角な横断面が略扇状に形成される。ここで、シャフト部14bの製造工程の切削加工では、各第3異方性伝熱片93の径方向(図3のY方向及び図9(A)のY方向)の熱伝導率が、周方向(即ち、図3のX方向及び図9(A)のX方向)及び軸方向(即ち、図3のZ方向及び図9(A)の紙面方向)よりも低くなるように、第3異方性伝熱片93の切り出し角度を決定する(図9(A)を参照)。
次いで、図9(B)に示すように、多数の第3異方性伝熱片93を環状に配列し、隣り合う第3異方性伝熱片93の周方向の両端を接合する。この接合は、例えば焼結により行われる。この結果、周方向及び軸方向の熱伝導率が高く、径方向の熱伝導率が低いシャフト部14bが得られる(図9(B)を参照)。
参考形態2〉
上述した参考形態1では、本発明に係る熱伝導部材を吸気弁14に適用しているが、同様にして排気弁15に適用してもよい。つまり、排気弁15の弁体は、参考形態1と同様にして図8に示すグラファイト材料95を原料として加工する。また、排気弁15のシャフト部は、参考形態1と同様にして図9に示すように加工する。これにより、燃焼室10の熱をウォータジャケットへ伝達できるとともに、排気ポート13の排気の熱が排気弁15のシャフト部へ伝導してしまうことを防止できる。
このような熱伝導に起因して排気ポート13の排気の温度が低下してしまうと、例えば排気ポート13の下流側の触媒における排気の浄化効率が低下してしまう。これに対し、このようにして排気から排気弁15のシャフト部への熱伝導を抑制することで、排気の温度が低下してしまうことを防止できる。
〈その他の実施形態〉
上述した実施形態の異方性伝熱部の原材料は、グラファイト材料で構成されている。しかしながら、この原材料は、例えば炭素繊維強化樹脂複合材料等の他の材料であってもよい。要は、互いに垂直な3方向のうち1つの方向の熱伝導率が、残りの方向の熱伝導率よりも低い材料であれば、如何なる材料であってもよい。
1 エンジン(エンジン構造)
12 吸気ポート
13 排気ポート
14 吸気弁
14a 弁体
14b シャフト
15 排気弁
26 ウォータジャケット(流路)
29 ウォータジャケット(流路)
51 シリンダライナ
52 第1ライナ部(第1異方性伝熱部、熱伝導部材)
53 第2ライナ部(第2異方性伝熱部、熱伝導部材)
91 第1の異方性伝熱片
92 第2の異方性伝熱片
93 第3の異方性伝熱片

Claims (1)

  1. エンジンに用いられる熱伝導部材を備えたエンジン構造であって、
    前記熱伝導部材は、略円弧状ないし略扇状に形成され、径方向、周方向、及び前記径方向及び前記周方向に垂直な軸方向のうちの径方向又は周方向の熱伝導率が、残りの2方向の熱伝導率よりも低い複数の異方性伝熱片を有し、前記複数の異方性伝熱片が、周方向に隣り合う異方性伝熱片が互いに接合されるように周方向に配列されて成る円筒状又は円柱状の異方性熱伝導部を備え
    前記熱伝導部材は、前記径方向の熱伝導率が前記周方向及び前記軸方向の熱伝導率よりも低い複数の第1の異方性伝熱片で構成される円筒状の第1の異方性伝熱部を含み、
    筒軸方向の少なくとも一部が前記第1の異方性伝熱部で構成されるシリンダライナを備え、
    前記熱伝導部材は、前記周方向の熱伝導率が前記径方向及び前記軸方向の熱伝導率よりも低い複数の第2の異方性伝熱片で構成される円筒状の第2の異方性伝熱部を含み、
    上記シリンダライナは、上記第1の異方性伝熱部と第2の異方性伝熱部とが筒軸方向に連続して構成され、
    上記第2の異方性伝熱部の外周側には、熱媒体が流れる流路が設けられる
    ことを特徴とするエンジン構造
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