しかしながら、上記特許文献2及び上記特許文献3に記載された技術においては、いずれも基材が限定されており、汎用性に劣る。また、上記特許文献3に記載された技術においては、形成されるコーティング膜が光沢を有するため、基材となる木材や大理石の本来の質感を失わせるという問題点があった。
そこで、本発明は、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、あらゆる基材に適用することができる汎用性の高いコーティング膜及びコーティング塗料であって、基材本来の質感や触感を失わせることがなく、表面硬度が高く傷付きを確実に防止することができるコーティング膜及びコーティング塗料を提供することを課題とする。
請求項1の発明に係るコーティング膜は、基材の表面に形成されたコーティング膜であって、略30nm〜300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子を有機樹脂バインダーまたは無機高分子バインダーまたは有機無機複合バインダー中に略均一に分散してなるものである。ここで、「基材」としては、木材、皮革、合成皮革、プラスチック、石材、ガラス、紙、繊維材料を始めとして、種々の材料がある。
なお、本発明において数値に「略」が付されているものは、臨界値、境界値として当該値が出てきたものではなく、その数値は大凡の値として捉えているものである。
請求項2の発明に係るコーティング膜は、請求項1の構成において、前記基材は木材であるものである。
請求項3の発明に係るコーティング膜は、請求項1の構成において、前記基材は皮革または合成皮革であるものである。
請求項4の発明に係るコーティング膜は、請求項1の構成において、前記基材はプラスチックであるものである。ここで、「プラスチック」とは、一般に有機合成樹脂と言われるものであり、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリエチレンテレフタレート(PET)・ナイロン樹脂・アクリル樹脂・ポリアミド樹脂・ポリカーボネート・ポリスチレン・ポリ塩化ビニル・ポリアセタール・フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、及びウレタン樹脂・フェノール樹脂・エポキシ樹脂・尿素樹脂・メラミン樹脂・不飽和ポリエステル樹脂・アルキド樹脂・エボナイト等の熱硬化性樹脂がある。
請求項5の発明に係るコーティング膜は、請求項1の構成において、前記基材は石材であるものである。ここで、「石材」としては、建築材・床材等として用いられる御影石・大理石のような高級石材だけでなく、いわゆるコンクリートも含むものとする。
請求項6の発明に係るコーティング膜は、請求項1の構成において、前記基材はガラスであるものである。
請求項7の発明に係るコーティング膜は、請求項1の構成において、前記基材は紙であるものである。
請求項8の発明に係るコーティング膜は、請求項1の構成において、前記基材は繊維材料であるものである。ここで、「繊維材料」とは、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維、カーボンファイバー(カーボン繊維)等の無機質繊維等の繊維自体、若しくはこれらの繊維を混合してなる混合繊維、またはこれらの繊維を単独で若しくは混用してなる糸を言うものとする。
請求項9の発明に係るコーティング膜は、請求項1乃至請求項8のいずれか1つの構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子が、立方体状形態を有するものである。
請求項10の発明に係るコーティング膜は、請求項1乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子が、60%〜80%の空隙率を有するものである。
請求項11の発明に係るコーティング膜は、請求項1乃至請求項10のいずれか1つの構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子が、略40nm〜150nmの範囲内の外径を有するものである。
請求項12の発明に係るコーティング膜は、請求項1乃至請求項11のいずれか1つの構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子が、前記有機樹脂バインダーまたは前記無機高分子バインダーまたは前記有機無機複合バインダーに対して、固形分で略2重量%〜15重量%の割合で混合されたものである。
請求項13の発明に係るコーティング膜は、請求項1乃至請求項12のいずれか1つの構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子の表面にイソシアネート系、アルキル系、ビニル系またはアクリロキシ系の表面修飾剤を付加させたものである。
ここで、「イソシアネート系の表面修飾剤」とは、イソシアネート基(−N=C=O)を1つ以上もった化合物からなる表面修飾剤を意味し、具体例としては、アルキル基にイソシアネート基が3個結合したトリイソシアネート化合物、トリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)、等がある。また、「アルキル系の表面修飾剤」とは、アルキル基を1つ以上もった化合物からなる表面修飾剤を意味するもので、具体例としては、トリエトキシブチルシラン(TEBS)、等がある。
更に、「ビニル系の表面修飾剤」とは、ビニル基(−CH=CH2 )を1つ以上もった化合物からなる表面修飾剤を意味し、具体例としては、トリエトキシプロピルビニルシラン、等がある。また、「アクリロキシ系の表面修飾剤」とは、アクリロキシ基を1つ以上もった化合物からなる表面修飾剤を意味するもので、具体例としては、トリエトキシプロピルアクリロキシシラン、等がある。
請求項14の発明に係るコーティング塗料は、略30nm〜300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子を有機樹脂塗料または無機高分子塗料または有機無機複合塗料中に略均一に分散してなるものである。
請求項15の発明に係るコーティング塗料は、請求項14の構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子が、立方体状形態を有するものである。
請求項16の発明に係るコーティング塗料は、請求項14または請求項15の構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子が、略60%〜80%の空隙率を有するものである。
請求項17の発明に係るコーティング塗料は、請求項14乃至請求項16のいずれか1つの構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子が、略40nm〜150nmの範囲内の外径を有するものである。
請求項18の発明に係るコーティング塗料は、請求項14乃至請求項17のいずれか1つの構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子が、前記有機樹脂塗料または前記無機高分子塗料または前記有機無機複合塗料に対して、固形分で略2重量%〜15重量%の割合で混合されたものである。
請求項19の発明に係るコーティング塗料は、請求項14乃至請求項18のいずれか1つの構成において、前記シリカ殻からなる中空粒子の表面にイソシアネート系、アルキル系、ビニル系またはアクリロキシ系の表面修飾剤を付加させたものである。
請求項1の発明に係るコーティング膜は、基材の表面に形成されたコーティング膜であって、略30nm〜300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子を有機樹脂バインダーまたは無機高分子バインダーまたは有機無機複合バインダー中に略均一に分散してなる。ここで、「基材」としては、木材、皮革、合成皮革、プラスチック、石材、ガラス、紙、繊維材料を始めとして、種々の材料がある。
略30nm〜300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子をバインダー中に略均一に分散してなるコーティング膜は、薄膜でも耐摩耗性に優れているため基材の外観を変化させることがなく、しかも光沢を殆ど有しておらず、また基材の表面の凹凸に沿って形成されるため、基材の質感及び触感を損ねることがない。更に、シリカ殻からなる中空粒子の断熱性によって基材の表面を難燃性にすることができ、シリカ殻からなる中空粒子の高硬度によって表面硬度が高くなり、基材の表面の傷付きを防ぐことができる。
そして、基材の種類に応じてバインダーを有機樹脂バインダーまたは無機高分子バインダーまたは有機無機複合バインダーとすることによって、基材との密着性を確保することができ、あらゆる基材に適用することができる汎用性の高いコーティング膜となる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、あらゆる基材に適用することができる汎用性の高いコーティング膜であって、基材本来の質感や触感を失わせることがなく、表面硬度が高く傷付きを確実に防止することができるコーティング膜となる。
請求項2の発明に係るコーティング膜においては、基材が木材である。木材の表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、木材の耐摩耗性を向上させることができる。従来のコロイダルシリカ粒子を分散させたコーティング膜においては、コロイダルシリカ粒子をバインダーに対して固形分で略30重量%以上混入しなければ耐摩耗性が得られなかったが、本発明に係るコーティング膜においては、シリカ殻からなる中空粒子をバインダーに対して固形分で8重量%混入するのみで耐摩耗性を確保することができた。
また、木材の表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、難燃性を向上させることができ、更に光沢を有していないため木材の質感を損なうことがなく、木材の表面の凹凸に沿ってコーティング膜が形成されるため、木材本来の触感を確保することができる。したがって、ヒノキ等の高級木材に適用した場合にも、高級感を損なうことがない。更に、木材に難燃性を付与することができる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、木材本来の質感や触感を失わせることがなく、難燃性を付与するとともに表面硬度が高く傷付きを確実に防止することができるコーティング膜となる。
請求項3の発明に係るコーティング膜においては、基材が皮革または合成皮革である。皮革及び合成皮革は、靴・財布・バッグ等の他、ソファーや自動車のシート等にも用いられる材料であるが、傷付き易いためコーティング膜が用いられる場合が多い。しかし、従来のコロイダルシリカ粒子を分散させたコーティング膜等は、耐摩耗性を付与するためには厚く形成しなければならず、光沢を有するとともに滑り性があるため、皮革の高級感を失わせるという問題があった。
これに対して、皮革または合成皮革の表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、光沢を有していないため皮革または合成皮革の質感を損なうことがなく、皮革または合成皮革の表面の凹凸に沿ってコーティング膜が形成されるため、本来の触感を確保することができ、また樹脂感がなくなるので、皮革の高級感を損なうことがない。そして、靴・財布・バッグ・ソファー・自動車のシート等の表面が傷付き難くなり、また難燃性をも向上させることができる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、皮革及び合成皮革本来の質感や触感を失わせることがなく、難燃性を向上させるとともに表面硬度及び耐摩耗性が高く傷付きを確実に防止することができるコーティング膜となる。
請求項4の発明に係るコーティング膜においては、基材がプラスチックである。ここで、「プラスチック」とは、一般に有機合成樹脂と言われるものであり、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリエチレンテレフタレート(PET)・ナイロン樹脂・アクリル樹脂・ポリアミド樹脂・ポリカーボネート・ポリスチレン・ポリ塩化ビニル・ポリアセタール・フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、及びウレタン樹脂・フェノール樹脂・エポキシ樹脂・尿素樹脂・メラミン樹脂・不飽和ポリエステル樹脂・アルキド樹脂・エボナイト等の熱硬化性樹脂がある。
これらのプラスチックは一般に傷付き易く、摩耗し易い。これに対して、プラスチックの表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、コーティング膜が高硬度であるため表面が傷付き難くなり、また難燃性をも向上させることができる。更に、ポリエチレン・ポリプロピレン・PET・アクリル樹脂・ポリカーボネート等の透明プラスチックにおいては、コーティング膜を形成しても透明性を損ねることがない。更に、一般にプラスチックは表面に触れると粘着感(ベタツキ感)があるが、プラスチックの表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、かかる粘着感(ベタツキ感)が解消し、さらっとした感触となる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、プラスチックの難燃性を向上させ、表面硬度が高く傷付きを確実に防止することができるとともに、透明性を維持することができ、触れたときの冷感及び粘着感(ベタツキ感)を低減することができるコーティング膜となる。
請求項5の発明に係るコーティング膜においては、基材が石材である。ここで、「石材」としては、建築材・床材・階段材等として用いられる御影石・大理石のような高級石材だけでなく、いわゆるコンクリートも含む。
これらの石材は、硬度の高い材料として、人が歩行する床面や階段や歩道等に用いられるとともに、御影石や大理石のような高級石材はその美的外観を活かして、家屋やビルの外壁やインテリア等にも用いられる。しかし、多数の人が頻繁に歩行する場所においては、更に硬度を向上させる必要があるとともに、屋外に用いられる場合には雨が表面から沁み込むのを防ぐ必要がある。また、屋内においてインテリアとして用いられる場合には、御影石や大理石に人が触れた場合に感じる冷感を低減することが好ましい。
そこで、これらの石材の表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、コーティング膜が高硬度であるため表面がより一層傷付き難くなり、また雨が沁み込むのを確実に防止することができる。また、インテリアとしての石材の表面にコーティング膜を形成することによって、高級石材の質感を損ねることなく、コーティング膜の断熱性によって触れたときの冷感がなくなり、より一層傷付き難くなる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、石材の質感を損なうことなく表面硬度をより一層向上させて傷付きを確実に防止することができるとともに、雨が沁み込むのを確実に防止することができ、触れたときの冷感を低減することができるコーティング膜となる。
請求項6の発明に係るコーティング膜においては、基材がガラスである。ガラスの表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、ガラスの透明性を損なうことなく表面を高硬度として傷付き難くし、また触れたときの冷感を低減することができる。更に、一般にガラスは表面に触れると粘着感(ベタツキ感)があるが、ガラスの表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、かかる粘着感(ベタツキ感)が解消し、さらっとした感触となるという作用効果も得られる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、ガラスの透明性を損なうことなく表面硬度を向上させて傷付きを確実に防止することができるとともに、触れたときの冷感及び粘着感(ベタツキ感)を低減することができるコーティング膜となる。
請求項7の発明に係るコーティング膜においては、基材が紙である。単行本のカバー等は厚めの色紙に文字を印刷した後にビニル樹脂等でコーティングされてなる場合が多いが、ビニル樹脂等のコーティングでは傷が付き易く、また光沢を有するため紙の質感が損なわれてしまう。そこで、色紙等の紙の表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、紙の質感を損なうことなく、コーティング膜が高硬度であるため表面が傷付き難くなる。
また、コーティング膜の断熱性によって、紙に難燃性を付与することができる。更に、コーティング膜の吸油性によって、印刷インクが紙に吸収され易くなり、紙の印刷特性が向上するという作用効果も得ることができる。特に、インクジェットプリンタに用いる印刷用紙として、インクの乗りが非常に良くなり、インクジェットプリンタ用紙として適したものとなる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、紙の質感を損なうことなく、表面硬度を向上させて傷付きを確実に防止することができるとともに、難燃性を付与することができ、印刷特性を向上させることができるコーティング膜となる。
請求項8の発明に係るコーティング膜においては、基材が繊維材料である。ここで、「繊維材料」とは、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維、カーボンファイバー(カーボン繊維)等の無機質繊維等の繊維自体、若しくはこれらの繊維を混合してなる混合繊維、またはこれらの繊維を単独で若しくは混用してなる糸を言う。
これらの繊維材料の表面に請求項1に係るコーティング膜を形成することによって、特にナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の合成繊維の持つツルツルした触感を、合成繊維の外観を損なうことなく低減することができ、また繊維材料に難燃性を付与することができる。また、例えば、カーボンファイバー製のゴルフクラブに用いた場合には、グリップの部分のカーボンファイバーの滑り易さを低減することができる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、合成繊維の外観を損なうことなく合成繊維の持つツルツルした触感を低減することができるとともに、難燃性を付与することができるコーティング膜となる。
請求項9の発明に係るコーティング膜においては、シリカ殻からなる中空粒子が立方体状形態を有する。立方体状形態を有するシリカ殻からなる中空粒子を製造する方法としては、立方体状形態を有する微結晶のコロイド状炭酸カルシウムや立方体状炭酸カルシウムの表面に、シリコンアルコキシドの加水分解反応によって生成するシリカを析出させた後、酸処理することによってシリカ層内部の炭酸カルシウムを溶解させて、脱水した後に400℃〜800℃で焼成処理して溶解した炭酸カルシウムが流出した孔を塞ぐことによって製造される。
したがって、請求項1乃至請求項8に記載の効果に加えて、炭酸カルシウム微結晶の立方体状形態が転写された中空粒子となり、しかもシリカ殻の厚さが3nm〜15nmと薄いため空隙率が略70%〜80%と極めて高く、断熱性のより高い中空粒子となる。また、立方体状形態を有するため、球状の中空粒子よりも充填率が高くなるという作用効果も得られる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状形態を有する中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜となる。
請求項10の発明に係るコーティング膜においては、シリカ殻からなる中空粒子が略60%〜80%の空隙率、より好ましくは略70%〜80%の空隙率を有する。したがって、断熱性のより高い中空粒子となる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜となる。
請求項11の発明に係るコーティング膜においては、シリカ殻からなる中空粒子が、略40nm〜150nmの範囲内、より好ましくは略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する。略30nm〜300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の中でも、略40nm〜150nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子がより製造し易く、有機樹脂バインダーまたは無機高分子バインダーまたは有機無機複合バインダー中に均一に分散させることが容易である。
そして、断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性を高めるために約200層までのシリカ殻からなる中空粒子を積層させた場合でも、膜厚を略20μm以下に薄くすることができる。更に、より好ましくは、略50nm〜100nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子を用いることによって、膜厚を略20μm以下に薄く抑えながらより断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性を向上させることができる。
このようにして、略40nm〜150nmの外径、より好ましくは略50nm〜100nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜となる。
請求項12の発明に係るコーティング膜においては、シリカ殻からなる中空粒子が、有機樹脂バインダーまたは無機高分子バインダーまたは有機無機複合バインダーに対して、固形分で略2重量%〜15重量%の割合で、より好ましくは略4重量%〜10重量%の割合で混合されている。
シリカ殻からなる中空粒子は中空であるため比重が小さく、固形分で略2重量%混合するだけでもコーティング膜中に占める体積%は充分に大きく、コーティング膜の断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性を高めて保護効果を向上させることができる。一方、混合量が固形分で15重量%を超えると、粘性が高くなって取扱いがし難くなる。したがって、コーティング膜におけるシリカ殻からなる中空粒子の混合量は、有機樹脂バインダー等に対して固形分で略2重量%〜15重量%の割合が最も適切である。
更に、シリカ殻からなる中空粒子を有機樹脂バインダー等に対して固形分で略4重量%〜10重量%の割合で混合することによって、コーティング膜の断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性をより確実に向上させることができるとともに、粘性が適切な範囲内となって取扱いがよりし易くなるため、より好ましい。
このようにして、有機樹脂バインダー等に対して固形分で2重量%〜15重量%の割合で、より好ましくは略4重量%〜10重量%の割合でシリカ殻からなる中空粒子を混合することによって、シリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用して、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜となる。
請求項13の発明に係るコーティング膜においては、シリカ殻からなる中空粒子の表面にイソシアネート系、アルキル系、ビニル系またはアクリロキシ系の表面修飾剤を付加させている。
ここで、前述の如く、「イソシアネート系の表面修飾剤」とは、イソシアネート基(−N=C=O)を1つ以上もった化合物からなる表面修飾剤を意味するものであり、具体例としては、アルキル基にイソシアネート基が3個結合したトリイソシアネート化合物、トリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)、等がある。また、「アルキル系の表面修飾剤」とは、アルキル基を1つ以上もった化合物からなる表面修飾剤を意味するものであり、具体例としては、トリエトキシブチルシラン(TEBS)、等がある。
更に、「ビニル系の表面修飾剤」とは、ビニル基(−CH=CH2 )を1つ以上もった化合物からなる表面修飾剤を意味し、具体例としては、トリエトキシプロピルビニルシラン、等がある。また、「アクリロキシ系の表面修飾剤」とは、アクリロキシ基を1つ以上もった化合物からなる表面修飾剤を意味するもので、具体例としては、トリエトキシプロピルアクリロキシシラン、等がある。
このようなイソシアネート系、アルキル系、ビニル系またはアクリロキシ系の表面修飾剤を、シリカ殻からなる中空粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、シリカ殻からなる中空粒子の全表面をイソシアネート系、アルキル系、ビニル系またはアクリロキシ系の表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、またバインダー中に混合する場合にもバインダーの活性基とイソシアネート基、アルキル基、ビニル基またはアクリロキシ基とが反応することによって、バインダーとシリカ殻からなる中空粒子との強固な結合が得られる。
このようにして、バインダー中に混合する場合に分散性が向上するとともにバインダーとシリカ殻からなる中空粒子との強固な結合が得られ、略30nm〜300nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜となる。
請求項14の発明に係るコーティング塗料は、略30nm〜300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子を有機樹脂塗料または無機高分子塗料または有機無機複合塗料中に略均一に分散してなる。
かかるコーティング塗料を基材に塗布してコーティング膜を形成することによって、このコーティング膜は薄膜でも耐摩耗性に優れているため基材の外観を変化させることがなく、しかも光沢を殆ど有しておらず、また基材の表面の凹凸に沿って形成されるため、基材の質感及び触感を損ねることがない。更に、シリカ殻からなる中空粒子の断熱性によって基材の表面を難燃性にすることができ、シリカ殻からなる中空粒子の高硬度によって表面硬度が高くなり、基材の表面の傷付きを防ぐことができる。
そして、基材の種類に応じてコーティング塗料のベースとなる塗料を有機樹脂塗料または無機高分子塗料または有機無機複合塗料とすることによって、コーティング塗料と基材との密着性を確保することができ、あらゆる基材に適用することができる汎用性の高いコーティング塗料となる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、あらゆる基材に適用することができる汎用性の高いコーティング塗料であって、基材本来の質感や触感を失わせることがなく、表面硬度が高く傷付きを確実に防止できるコーティング膜を形成できるコーティング塗料となる。
請求項15の発明に係るコーティング塗料においては、シリカ殻からなる中空粒子が、立方体状形態を有する。立方体状形態を有するシリカ殻からなる中空粒子を製造する方法としては、上述の如く、立方体状形態を有する微結晶のコロイド状炭酸カルシウムや立方体状炭酸カルシウムの表面に、シリコンアルコキシドの加水分解反応によって生成するシリカを析出させた後、酸処理することによってシリカ層内部の炭酸カルシウムを溶解させて、脱水した後に略400℃〜800℃で焼成処理して溶解した炭酸カルシウムが流出した孔を塞ぐことによって製造される。
したがって、請求項14に記載の効果に加えて、炭酸カルシウム微結晶の立方体状形態が転写された中空粒子となり、しかもシリカ殻の厚さが略3nm〜15nmと薄いため空隙率が略70%〜80%と極めて高く、断熱性のより高い中空粒子となる。また、立方体状形態を有するため、コーティング塗料中に分散させて基材に塗布しコーティング膜を形成した場合に、球状の中空粒子よりも充填率が高くなるという作用効果も得られる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる立方体状形態を有する中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜を形成できるコーティング塗料となる。
請求項16の発明に係るコーティング塗料においては、シリカ殻からなる中空粒子が、60%〜80%の空隙率を有する。したがって、断熱性のより高い中空粒子となる。
このようにして、略30nmから300nmまでの範囲の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜を形成できるコーティング塗料となる。
請求項17の発明に係るコーティング塗料においては、シリカ殻からなる中空粒子が、略40nm〜150nmの範囲内、より好ましくは略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する。略30nm〜300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の中でも、略40nm〜150nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子がより製造し易く、有機樹脂塗料または無機高分子塗料または有機無機複合塗料中に均一に分散させることが容易である。
そして、断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性を高めるために約200層までのシリカ殻からなる中空粒子を積層させた場合でも、コーティング塗料中に分散させて基材に塗布してなるコーティング膜の膜厚を20μm以下に薄くすることができる。さらに、より好ましくは、略50nm〜100nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子を用いることによって、コーティング塗料を基材に塗布してなるコーティング膜の膜厚を略20μm以下に薄く抑えながら、より断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性を向上させることができる。
このようにして、略40nm〜150nmの外径、より好ましくは50nm〜100nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜を形成できるコーティング塗料となる。
請求項18の発明に係るコーティング塗料においては、シリカ殻からなる中空粒子が、有機樹脂塗料または無機高分子塗料または有機無機複合塗料に対して、固形分で略2重量%〜15重量%の割合で、より好ましくは略4重量%〜10重量%の割合で混合されている。
シリカ殻からなる中空粒子は中空であるため比重が小さく、固形分で2重量%混合するだけでもコーティング塗料中に占める体積%は充分に大きく、コーティング塗料を塗布してなるコーティング膜の断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性を高めて保護効果を向上させることができる。一方、混合量が固形分で15重量%を超えると、コーティング塗料の粘性が高くなって塗布が困難となり、取扱いがし難くなる。したがって、コーティング塗料におけるシリカ殻からなる中空粒子の混合量は、有機樹脂塗料等に対して固形分で略2重量%〜15重量%の割合が最も適切である。
更に、シリカ殻からなる中空粒子を有機樹脂塗料等に対して固形分で4重量%〜10重量%の割合で混合することによって、コーティング塗料を塗布してなるコーティング膜の断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性をより確実に向上させることができるとともに、粘性が適切な範囲内となって塗布し易くなり取扱い易くなるため、より好ましい。
このようにして、有機樹脂塗料等に対して固形分で略2重量%〜15重量%の割合で、より好ましくは略4重量%〜10重量%の割合でシリカ殻からなる中空粒子を混合することによって、シリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用して、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜を形成できるコーティング塗料となる。
請求項19の発明に係るコーティング塗料においては、シリカ殻からなる中空粒子の表面にイソシアネート系、アルキル系、ビニル系またはアクリロキシ系の表面修飾剤を付加させている。
このようなイソシアネート系、アルキル系、ビニル系またはアクリロキシ系の表面修飾剤を、シリカ殻からなる中空粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、シリカ殻からなる中空粒子の全表面をイソシアネート系、アルキル系、ビニル系またはアクリロキシ系の表面修飾剤でコーティングすることによって、コーティング塗料における再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂塗料等に混合する場合にも有機樹脂等の活性基とイソシアネート基、アルキル基、ビニル基またはアクリロキシ基とが反応することによって、有機樹脂等とシリカ殻からなる中空粒子との強固な結合が得られる。
このようにして、有機樹脂塗料等に混合する場合に分散性が向上するとともに有機樹脂等とシリカ殻からなる中空粒子との強固な結合が得られ、略30nm〜300nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を有するコーティング膜を形成できるコーティング塗料となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1に係るコーティング膜及びコーティング塗料について、図1乃至図7を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係るコーティング膜及びコーティング塗料に用いられるシリカ殻からなる中空粒子の製造方法の概略を示す説明図である。図2は本発明の実施の形態1の実施例1に係るコーティング塗料の製造工程を示すフローチャートである。図4は本発明の実施の形態1の実施例2に係るコーティング塗料の製造工程を示すフローチャートである。
図5は本発明の実施の形態1の実施例2に係るコーティング塗料の製造工程における表面修飾処理の方法を示す説明図である。図6は本発明の実施の形態1の実施例2に係るコーティング塗料の製造工程における表面修飾処理の方法の他の例を示す説明図である。図7(a)は本発明の実施の形態1に係るコーティング膜を表面に形成した木材を示す斜視図、(b)はその断面図である。
本発明者らは、先に、緻密なシリカ殻からなり、ナノサイズの粒子径でかつ分散性に優れた、高分散シリカナノ中空粒子及びそれを製造する方法についての発明をし、その発明について特許出願をしている(特開2005−263550号公報)。まず、この発明に係るシリカ殻からなる中空粒子の製造方法の概略について、図1を参照して説明する。
図1に示されるように、まずコア粒子となる炭酸カルシウム微粒子を結晶成長させる。ここで生成させる炭酸カルシウムの結晶はカルサイトであり六方晶系であるが、合成条件を制御することにより、あたかも立方晶系であるかのような形状、即ち「立方体状形態」に成長させることができる。ここで、「立方体状形態」とは、立方体に限らず面で囲まれた立方体に似た形状をいう。この炭酸カルシウムの外径が20nm〜200nmとなるように結晶成長させた後に、ゾル−ゲル法によりシリコンアルコキシドを用いて、炭酸カルシウム微粒子にシリカをコーティングする。
続いて、これを水に分散させて酸を添加して内部の炭酸カルシウムを溶解させて流出させることによって、立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子が形成される。最後に、800℃で焼成し溶解した炭酸カルシウムが流出した孔を塞ぐことによって、緻密なシリカ殻からなる中空粒子4が製造される。シリカ殻からなる中空粒子4の中空部分4bの内径は、コア粒子の炭酸カルシウム微粒子の外径20nm〜200nmであり、緻密なシリカ殻4aの厚さは1nm〜5nm、厚くても5nm〜20nm前後であるため、シリカ殻からなる中空粒子4の外径は30nm〜300nmとなる。
次に、この立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4を用いた本実施の形態1の実施例1に係るコーティング塗料の製造方法について、図2を参照して説明する。まず、ステップS10において、図1で説明した製造工程によって立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4が製造される。ここでは、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4を用いることとする。
一方、水にポリカーボネート樹脂エマルジョンを溶解させて、均一なポリカーボネート樹脂エマルジョン水溶液が調製され(ステップS11)、このポリカーボネート樹脂エマルジョン水溶液にシリカ殻からなる中空粒子4が混合される(ステップS12)。そして、高速攪拌機を使用して、循環方式によって、周速25m/sec、液流量180m/minで、混合液が処理され(ステップS13)、処理された分散液を目開き60μmのステンレス網で濾過(ステップS14)した後、湿式ジェットミルで更に30分間分散処理を行う(ステップS15)。
これによって、ポリカーボネート樹脂エマルジョン水溶液中に、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4が均一に分散される。このようにして得られた分散液に、更にポリカーボネート樹脂エマルジョンとシリコーン系界面活性剤が追加され(ステップS16)、ミキサーで攪拌される(ステップS17)。
以上の工程によって、本実施の形態1の実施例1に係るコーティング塗料3aが製造される。この実施例1に係るコーティング塗料3aは、シリカ殻からなる中空粒子4をポリカーボネート樹脂エマルジョン系有機樹脂塗料中に略均一に分散してなる水性コーティング塗料である。なお、ポリカーボネート樹脂エマルジョンとしては、DSM社(オランダ)製のNeoRezR9603(ポリカーボネート樹脂エマルジョン、固形分34%)を使用し、シリコーン系界面活性剤としては信越化学工業(株)製のKF643を用いた。
このようにして製造される本実施の形態1の実施例1に係るコーティング塗料3aの配合を、表1に示す。
表1に示されるように、実施例1に係るコーティング塗料3aは、シリカ殻からなる中空粒子4を固形分で8.00%含有している。即ち、実施例1に係るコーティング塗料3aは、本発明の請求項18に係る「シリカ殻からなる中空粒子が、有機樹脂塗料または無機高分子塗料または有機無機複合塗料に対して、固形分で略2重量%〜15重量%の割合で混合されている」という要件を満たしており、更に「より好ましくは略4重量%〜10重量%の割合で混合されている」という要件をも満たしている。
したがって、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4を、有機樹脂塗料等に対して固形分で4重量%〜10重量%の割合で混合することによって、コーティング塗料を塗布してなるコーティング膜の断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性をより確実に向上させることができるとともに、粘性が適切な範囲内となって塗布し易くなり取扱い易くなるため、より好ましいコーティング塗料3aとなる。
なお、本実施の形態1の実施例1に係るコーティング塗料3aは、表1に示される配合で製造したが、これに限られるものではなく、実用的なコーティング塗料とするためには、シリカ殻からなる中空粒子の配合量を0.6重量部〜4.6重量部、分散液中のポリカーボネート樹脂エマルジョンの配合量を15.3重量部〜30.6重量部、水の配合量を15.3重量部〜30.6重量部、追加分のポリカーボネート樹脂エマルジョンの配合量を38重量部〜61重量部、シリコーン系界面活性剤の配合量を2.3重量部〜6.1重量部の範囲内とすれば良い。
この場合、シリカ殻からなる中空粒子の配合率を0.4重量%〜3.0重量%、分散液中のポリカーボネート樹脂エマルジョンの配合率を10重量%〜20重量%、水の配合率を40重量%〜60重量%、追加分のポリカーボネート樹脂エマルジョンの配合率を25重量%〜40重量%、シリコーン系界面活性剤の配合率を1.5重量%〜4.0重量%の範囲内とすることが好ましい。
また、シリカ殻からなる中空粒子の固形分の配合量を0.4重量部〜3.0重量部、分散液中のポリカーボネート樹脂エマルジョンの固形分の配合量を3.4重量部〜6.8重量部、追加分のポリカーボネート樹脂エマルジョンの固形分の配合量を8.4重量部〜13.5重量部、シリコーン系界面活性剤の固形分の配合量を1.5重量部〜4.0重量部の範囲内とすることが好ましい。ただし、シリカ殻からなる中空粒子の固形分の配合率を2重量%〜15重量%の範囲内とする必要がある。
次に、立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4を用いた本実施の形態1の実施例2に係るコーティング塗料の製造方法について、図3を参照して説明する。まず、ステップS20において、図1で説明した製造工程によって立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4が製造される。ここでも、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4を用いることとする。
次に、このシリカ殻からなる中空粒子4がイソプロピルアルコール(IPA)と混合され(ステップS21)、高速攪拌機を使用して、循環方式によって、周速25m/sec、液流量180m/minで、混合液が処理され(ステップS22)、処理された分散液を目開き60μmのステンレス網で濾過(ステップS23)した後、湿式ジェットミルで更に30分間分散処理を行う(ステップS24)。
一方、TSL8123N、イソプロピルアルコール(IPA)、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)、及びエチルアセトアセテートアルミニウムイソプロピレート(ALCH)の5%溶液が混合され(ステップS25)、この混合液に0.1%塩酸を加えながら攪拌し、液温度が40℃になるように加温する(ステップS26)。これによって、30分間程度で脱水縮合反応が起こり、液温が上昇するとともに液が透明となるので、この時点で冷却して液温度を25℃まで下げる(ステップS27)。その後、2時間程度静置して(ステップS28)、ゾルゲル法組成物が得られる。
このゾルゲル法組成物を上記ステップS24で得られた分散液に加え、更にエチルアセトアセテートアルミニウムイソプロピレート(ALCH)の20%溶液とメチルイソブチルケトン(MIBK)を追加してこれらの3液を混合し(ステップS29)、ミキサーで攪拌する(ステップS30)。以上の工程によって、本実施の形態1の実施例2に係るコーティング塗料3bが製造される。この実施例2に係るコーティング塗料3bは、シリカ殻からなる中空粒子4をALCH系有機樹脂塗料中に略均一に分散してなるアルコール系コーティング塗料である。
このようにして製造される本実施の形態1の実施例2に係るコーティング塗料3bの配合を、表2に示す。
ここで、「TSL」とは、GE東芝シリコーン(株)製のシリコーン樹脂・品番TSL8123の略であり、「ALCH」とは、川研ファインケミカル(株)製のエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートの製品名である。表2に示されるように、実施例2に係るコーティング塗料3bは、シリカ殻からなる中空粒子4を固形分で略2%含有している。即ち、実施例2に係るコーティング塗料3bは、本発明の請求項18に係る「シリカ殻からなる中空粒子が、有機樹脂塗料または無機高分子塗料または有機無機複合塗料に対して、固形分で略2重量%〜15重量%の割合で混合されている」という要件を満たしている。
シリカ殻からなる中空粒子4は中空であるため比重が小さく、固形分で略2重量%混合するだけでもコーティング塗料3b中に占める体積%は充分に大きく、コーティング塗料3bを塗布してなるコーティング膜の断熱性、耐摩耗性、傷付き防止性を高めて保護効果を向上させることができる。一方、混合量が固形分で15重量%を超えると、コーティング塗料の粘性が高くなって塗布が困難となり、取扱いがし難くなる。したがって、コーティング塗料におけるシリカ殻からなる中空粒子4の混合量は、有機樹脂塗料等に対して固形分で略2重量%〜15重量%の割合が最も適切である。
なお、本実施の形態1の実施例2に係るコーティング塗料3bは表2に示される配合で製造したが、これに限られるものではなく、実用的なコーティング塗料とするためには、シリカ殻からなる中空粒子の配合量を0.6重量部〜4.6重量部、分散液中のイソプロピルアルコール(IPA)の配合量を16.1重量部〜26.8重量部、TSLの配合量を21.2重量部〜25.7重量部、ゾルゲル法組成物中のイソプロピルアルコール(IPA)の配合量を5.4重量部〜9.7重量部、KBEの配合量を1.2重量部〜1.5重量部、5%ALCHの配合量を5.1重量部〜10.0重量部、0.1%塩酸の配合量を6重量部〜15重量部、20%ALCHの配合量を12.1重量部〜20.9重量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)の配合量を10.7重量部〜21.5重量部の範囲内とすれば良い。
この場合、シリカ殻からなる中空粒子の配合率を0.57重量%〜4.3重量%、分散液中のIPAの配合率を15.0重量%〜25.0重量%、TSLの配合率を19.7重量%〜23.9重量%、ゾルゲル法組成物中のIPAの配合率を5.0重量%〜9.0重量%、KBEの配合率を1.1重量%〜1.4重量%、5%ALCHの配合率を4.8重量%〜9.3重量%、0.1%塩酸の配合率を5.6重量%〜14.0重量%、20%ALCHの配合率を11.3重量%〜19.5重量%、MIBKの配合率を10.0重量%〜20.0重量%の範囲内とすることが好ましい。
また、シリカ殻からなる中空粒子の固形分の配合量を0.56重量部〜4.22重量部、TSLの固形分の配合量を19.7重量部〜23.9重量部、KBEの固形分の配合量を1.07重量部〜1.41重量部、5%ALCHの固形分の配合量を0.23重量部〜0.45重量部、0.1%塩酸の固形分の配合量を0.02重量部〜0.05重量部、20%ALCHの固形分の配合量を2.25重量部〜3.90重量部の範囲内とすることが好ましい。ただし、シリカ殻からなる中空粒子の固形分の配合率を2重量%〜15重量%の範囲内とする必要がある。
次に、立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4を用いた本実施の形態1の実施例3に係るコーティング塗料の製造方法について、図4を参照して説明する。まず、ステップS31において、図1で説明した製造工程によって立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4が製造される。ここでも、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4を用いることとする。次に、このシリカ殻からなる中空粒子4に対して、表面修飾剤による表面修飾処理が実施される(ステップS32)。
そして、表面修飾されたシリカ殻からなる中空粒子が、蒸留水に水性ポリエステル樹脂を溶解させて調製された水性ポリエステル樹脂水溶液に混合され(ステップS33)、分散機を用いて、水性ポリエステル樹脂水溶液中に表面修飾されたシリカ殻からなる中空粒子が均一に分散される(ステップS34)。以上の工程によって、本実施の形態1の実施例3に係るコーティング塗料3cが製造される。この実施例3に係るコーティング塗料3cは、表面修飾されたシリカ殻からなる中空粒子を、水性ポリエステル系有機樹脂塗料中に略均一に分散してなるコーティング塗料である。
ここで、図4のステップS32における、シリカ殻からなる中空粒子4に対する表面修飾剤による表面修飾処理の具体的な内容について、図5及び図6を参照して説明する。図5に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子4の表面には、多数の水酸基(−OH)が存在しており、図5においてはそのうち3個の水酸基のみが示されている。
このシリカ殻からなる中空粒子4に、n−ヘキサン溶媒中において、表面修飾剤としてイソシアネート系表面修飾剤であるトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)9aと混合して、オークレーブ中でn−ヘキサンの超臨界状態になるまで加圧加熱して、約2時間反応させる。
このように超臨界状態で反応させることによって、ナノメートルレベルの非常に微細なシリカ殻からなる中空粒子4の、凝集体の間にまでTEIS9aが入り込んで反応し、図5に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子4の表面全体がTEIS9aで覆われた表面修飾シリカ中空粒子4Aが生成する。かかる表面修飾シリカ中空粒子4Aは、イソシアネート基を有するTEIS9aによって全表面が覆われているため、再凝集し難く、しかも水性ポリエステル系有機樹脂塗料中のポリエステル系有機樹脂の官能基と、イソシアネート基が反応して強固な結合を作るため、均一な分散状態が長期間保持される。
また、図6に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子4に、n−ヘキサン溶媒中において、表面修飾剤としてアルキル系表面修飾剤であるトリエトキシブチルシラン(TEBS)9bと混合して、オークレーブ中でn−ヘキサンの超臨界状態になるまで加圧加熱して、約2時間反応させることによって、シリカ殻からなる中空粒子4の表面全体がTEBS9bで覆われた表面修飾シリカ中空粒子4Bが生成する。
かかる表面修飾シリカ中空粒子4Bは、アルキル基(メチル基)を有するTEBS9bによって全表面が覆われているため、再凝集し難く、しかも水性ポリエステル系有機樹脂塗料中のポリエステル系有機樹脂の官能基と、アルキル基が反応して強固な結合を作るため、均一な分散状態が長期間保持される。
以上のようにして製造されるコーティング塗料のうち、本実施の形態1においては、図2に示される実施例1に係るコーティング塗料3aを、図7に示されるように、木材としての建築用ヒノキ板2の表面にスプレー塗布して、コーティング膜3Aを形成した。コーティング膜3Aの厚さは5μm〜10μmと薄いため、建築用ヒノキ板2の表面の凹凸に沿って形成され、しかもシリカ殻からなる中空粒子4を含有するコーティング膜3Aは光沢を有しないため、図7(a)に示されるように、コーティング膜3Aを表面に形成したヒノキ板1は、外観も触感も変わらない。
図7(b)の断面図に示されるように、コーティング膜3Aはシリカ殻からなる中空粒子4を有機樹脂バインダー5中に均一に分散させてなるものであるため、シリカ殻からなる中空粒子4の耐摩耗性及び高硬度によって、木材としてのヒノキ板2の耐摩耗性を向上させることができる。また、ヒノキ板2の表面にコーティング膜3Aを形成することで、シリカ殻からなる中空粒子4の断熱性によって難燃性を向上させることができる。そして、上述の如く、外観(質感)も触感も変わらないため、ヒノキ板2の高級感を損なうことがない。
また、本実施の形態1の変形例として、図4に示される実施例3に係るコーティング塗料3cを、図7に示されるように、木材としての建築用ヒノキ板2の表面にスプレー塗布して、コーティング膜3Aを形成した。この場合にも、図7(b)の断面図に示される有機樹脂バインダー5がポリカーボネート樹脂エマルジョン系有機樹脂バインダーから水性ポリエステル系有機樹脂バインダーに変わっただけで、しかもシリカ殻からなる中空粒子4の代わりに表面修飾シリカ中空粒子4Aまたは4Bが分散しているため、より均一な分散状態が得られる。
そして、シリカ殻からなる中空粒子4の耐摩耗性及び高硬度によって、木材としてのヒノキ板2の耐摩耗性を向上させることができ、傷付きを防止することができる。また、ヒノキ板2の表面にコーティング膜3Aを形成することで、シリカ殻からなる中空粒子4の断熱性によって難燃性を向上させることができる。そして、上述の如く、外観(質感)も触感も変わらないため、ヒノキ板2の高級感を損なうことがない。
このようにして、本実施の形態1に係るコーティング膜3A及びコーティング塗料3a,3b,3cにおいては、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、木材本来の質感や触感を失わせることがなく、難燃性を付与するとともに表面硬度が高く傷付きを確実に防止することができる。
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2に係るコーティング膜及びコーティング塗料について、図4,図6及び図8を参照して説明する。図8(a)は本発明の実施の形態2に係るコーティング膜を表面に形成したプラスチックを示す斜視図、(b)はその断面図である。
まず、本実施の形態2に係るコーティング塗料について、図4及び図6を参照しつつ説明する。本実施の形態2に係るコーティング塗料は、図4に示される上記実施の形態1に係るコーティング塗料3cの製造工程において、ステップS33における水性ポリエステル樹脂水溶液の代わりに、シリカ系無機高分子溶液を混合してなるものである。そして、ステップS32における表面修飾処理では、図6に示される表面修飾剤としてのアルキル系表面修飾剤であるトリエトキシブチルシラン(TEBS)9bを用いている。
こうして製造されるコーティング塗料を、図8に示されるように、プラスチックとしての透明ポリカーボネート板8の表面にスプレー塗布して、コーティング膜3Bを形成した。コーティング膜3Bの厚さは10μm〜20μmと薄いため、シリカ殻からなる中空粒子4の透明性と相俟って、透明ポリカーボネート板8の透明性を損なうことがない。また、透明ポリカーボネート板8は傷付き易く、摩耗し易いが、透明ポリカーボネート板8の表面にコーティング膜3Bを形成することによって、コーティング膜3Bが高硬度であるため表面が傷付き難くなり、また難燃性をも向上させることができる。
このようにして、本実施の形態2に係るコーティング膜3B及びコーティング塗料においては、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、透明ポリカーボネート板8の透明性を損なうことなく、難燃性を付与するとともに、表面硬度を高くして傷付きを確実に防止することができる。
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3に係るコーティング膜及びコーティング塗料について、図2及び図9を参照して説明する。図9(a)は本発明の実施の形態3に係るコーティング膜を表面に形成した自動車用革製シートを示す斜視図、(b)はその断面図である。
図9(b)の断面図に示されるように、本実施の形態3に係る自動車用革製シートは、クッション材12の表面を皮革(本皮)11で覆ったものであるが、皮革11は傷が付き易く、高級なものであるためコーティング膜を施す必要があった。しかし、従来のコロイダルシリカ粒子を分散させたコーティング膜は光沢を有するため、皮革の高級感を失わせるという問題があった。
そこで、本実施の形態3に係るコーティング膜を表面に形成した自動車用革製シート10においては、図2に示される製造方法においてポリカーボネート樹脂エマルジョンの代わりにSBR(スチレンーブタジエンゴム)エマルジョンを用いて製造されたコーティング塗料を皮革11の全面にスプレー塗布している。
こうして、図9(b)の断面図に示されるように、皮革11の表面にコーティング膜3Cを形成することによって、シリカ殻からなる中空粒子4をSBR(スチレンーブタジエンゴム)エマルジョン系有機樹脂バインダー5Bの中に分散させたコーティング膜3Cは光沢を有していないため、皮革の質感を損なうことがなく、皮革11の表面の凹凸に沿ってコーティング膜3Cが形成されるため、本来の触感を確保することができ、皮革11の高級感を損なうことがない。そして、自動車用革製シート10の表面が傷付き難くなり、また難燃性をも向上させることができる。
また、SBR(スチレンーブタジエンゴム)エマルジョンを用いて製造されたコーティング塗料を皮革11の全面にスプレー塗布して、シリカ殻からなる中空粒子4をSBR(スチレンーブタジエンゴム)エマルジョン系有機樹脂バインダー5Bの中に分散させたコーティング膜3Cを形成したことによって、SBRエマルジョン系有機樹脂バインダー5Bは伸び率が100%以上あるため、皮革11を歪ませることがない。
このようにして、本実施の形態3に係るコーティング膜3C及びコーティング塗料においては、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、皮革11の高級感を損なうことなく、難燃性を付与するとともに、表面硬度を高くして傷付きを確実に防止することができる。
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4に係るコーティング膜及びコーティング塗料について、図2及び図10,図11を参照して説明する。図10(a)は本発明の実施の形態4に係るコーティング膜を表面に形成した玄関前床面の石材を示す斜視図、(b)はその断面図である。図11(a)は本発明の実施の形態4の変形例に係るコーティング膜を表面に形成した大理石のテーブルを示す斜視図、(b)はその断面図である。
図10(b)の断面図に示される石材16は、高級石材である御影石であり、この御影石16は、図10(a)に示されるように、硬度の高い材料として人が歩行する玄関前の床面に用いられるとともに、その美的外観を活かして玄関を装飾する機能も備えている。しかし、人が頻繁に歩行する場所である玄関前においては、更に硬度を向上させる必要があるとともに、屋外に用いられるため雨が表面から沁み込むのを防ぐ必要がある。
しかし、従来のコロイダルシリカ粒子を分散させたコーティング膜は光沢を有するため、御影石16の高級感を失わせるという問題があった。そこで、本実施の形態4に係るコーティング膜を表面に形成した御影石15においては、図2に示される製造方法で製造されたコーティング塗料3aを御影石16の全面にスプレー塗布して、コーティング膜3Dを形成している。
こうして、図10(b)の断面図に示されるように、御影石16の表面にコーティング膜3Dを形成することによって、シリカ殻からなる中空粒子4をポリカーボネート樹脂エマルジョン系有機樹脂バインダー5の中に分散させたコーティング膜3Dは、光沢を有せず透明であるため、御影石16の質感を損なうことがなく、御影石16の表面の凹凸に沿ってコーティング膜3Dが形成されるため、本来の触感を確保することができ、御影石16の高級感を損なうことがない。そして、コーティング膜3Dを表面に形成した御影石15の表面はより一層傷付き難くなるとともに、御影石16の表面から雨が沁み込むのを確実に防止することができる。
また、図11(b)の断面図に示される石材16Aは高級石材である大理石であり、図11(a)に示されるように、この大理石16Aからなるテーブルの表面にコーティング膜3Dが形成されて、コーティング膜付き大理石テーブル15Aとなっている。これによって、コーティング膜3Dを表面に形成した大理石テーブル15Aの表面はより一層傷付き難くなるとともに、シリカ殻からなる中空粒子4の断熱性によって、人が大理石テーブル15Aの表面に触れたときの冷感が低減され、使い心地のよい大理石テーブル15Aとなる。
このようにして、本実施の形態4に係るコーティング膜3D及びコーティング塗料においては、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、石材としての御影石16及び大理石16Aの質感及び高級感を損なうことなく表面硬度をより一層向上させて傷付きを確実に防止することができるとともに、雨が沁み込むのを確実に防止することができ、また表面に触れたときの冷感を低減することができる。
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5に係るコーティング膜及びコーティング塗料について、図4,図6及び図12を参照して説明する。図12(a)は本発明の実施の形態5に係るコーティング膜を表面に形成したガラスを嵌め込んだガラス窓を示す斜視図、(b)はその断面図である。
まず、本実施の形態5に係るコーティング塗料について、図4及び図6を参照しつつ説明する。本実施の形態5に係るコーティング塗料は、図4に示される上記実施の形態1に係るコーティング塗料3cの製造工程において、ステップS33における水性ポリエステル樹脂水溶液の代わりに、シリカ系無機高分子溶液を混合してなるものである。そして、ステップS32における表面修飾処理では、図6に示される表面修飾剤としてのアルキル系表面修飾剤であるトリエトキシブチルシラン(TEBS)9bを用いている。
こうして製造されるコーティング塗料を、図12に示されるように、ガラス19の表面にスプレー塗布して、コーティング膜3Eを形成した。コーティング膜3Eの厚さは5μm〜10μmと薄いため、シリカ殻からなる中空粒子4の透明性と相俟って、ガラス19の透明性を損なうことがない。また、ガラス19の表面にコーティング膜3Eを形成することによって、コーティング膜3Eが高硬度であるため表面が傷付き難くなり、またシリカ殻からなる中空粒子4の断熱性によって、コーティング膜3Eを形成したガラス18に触れたときの冷感を低減することができる。
このようにして、本実施の形態5に係るコーティング膜3E及びコーティング塗料においては、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、ガラス19の透明性を損なうことなく表面を高硬度として傷付き難くし、また触れたときの冷感を低減することができる。
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6に係るコーティング膜及びコーティング塗料について、図2及び図13を参照して説明する。図13(a)は本発明の実施の形態6に係るコーティング膜を表面に形成した紙を用いた本のカバーを示す斜視図、(b)はその断面図である。
図13(b)の断面図に示されるように、本実施の形態6に係る本のカバー20は、色紙21の表面にコーティング膜3Fを形成して文字を印刷したものである。色紙21は傷が付き易く、本のカバー20は頻繁に人が触れるものであるためコーティング膜を施す必要があったが、従来のビニル樹脂等のコーティングでは傷が付き易く、また光沢を有するため紙の質感が損なわれるという問題があった。そこで、本実施の形態6に係るコーティング膜を表面に形成した本のカバー20においては、図2に示される製造方法で製造されたコーティング塗料3aを色紙21の全面にスプレー塗布している。
こうして、図13(b)の断面図に示されるように、色紙21の表面にコーティング膜3Fを形成することによって、シリカ殻からなる中空粒子4をポリカーボネート樹脂エマルジョン系有機樹脂バインダー5の中に分散させたコーティング膜3Fは光沢を有していないため、色紙21の質感を損なうことがなく、コーティング膜3Fを表面に形成した本のカバー20の表面が傷付き難くなり、またシリカ殻からなる中空粒子4の断熱性によって、難燃性をも向上させることができる。
更に、コーティング膜3Fの吸油性によって、印刷インクが色紙21に吸収され易くなり、色紙21の印刷特性が向上するという作用効果も得ることができる。特に、インクジェットプリンタに用いる印刷用紙として、インクの乗りが非常に良くなり、インクジェットプリンタ用紙として適したものとなる。
この特性を利用して、図13(a)に示される本のカバー20のような小さいもののみならず、デパート等の店頭に掲げられる巨大なポスター等の大きな物の用紙としても使用することができる。この場合には、コーティング膜3Fの吸油性によって、紙の印刷特性が向上して美しい仕上がりのポスター等が得られる作用効果のみならず、コーティング膜3Fの防水性によって、屋外に設置しても雨に強いポスター等が得られるという作用効果もある。
このようにして、本実施の形態6に係るコーティング膜3F及びコーティング塗料においては、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、色紙21の質感を損なうことなく難燃性を付与するとともに、表面硬度を高くして傷付きを確実に防止することができる。
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7に係るコーティング膜及びコーティング塗料について、図2及び図14,図15を参照して説明する。図14(a)は本発明の実施の形態7に係るコーティング膜を表面に形成したポリエステル繊維材料(ポリエステル糸)を用いてなる生地を使用した日傘を示す斜視図、(b)はポリエステル糸の断面図である。図15(a)は本発明の実施の形態7の変形例に係るコーティング膜を表面に形成したアクリル繊維材料(アクリル糸)を用いてなる生地を使用したセーターを示す斜視図、(b)はアクリル糸の断面図である。
図14(a)に示されるように、本実施の形態7に係る日傘25は、コーティング膜を表面に形成したポリエステル繊維材料(ポリエステル糸)26を用いてなる生地を使用したものである。図14(b)に示されるように、繊維材料としてのポリエステル糸27の表面に、図2に示される製造方法で製造されたコーティング塗料3aを塗布してコーティング膜3Gを形成することによって、合成繊維の持つツルツルした触感を、ポリエステル糸27の外観を損なうことなく低減することができ、またポリエステル糸27に難燃性を付与することができる。
更に、シリカ殻からなる中空粒子4をポリカーボネート樹脂エマルジョン系有機樹脂バインダー5の中に分散させたコーティング膜3Gに包まれたポリエステル糸26を用いてなる生地を使用した日傘25は、シリカ殻からなる中空粒子4の断熱性によって、太陽光線によって生地が加熱されるのを防いで、使用する人に涼しさを感じさせることができる。
また、図15(a)に示されるように、本実施の形態7の変形例に係るセーター30は、コーティング膜を表面に形成したアクリル繊維材料(アクリル糸)31を用いてなる生地を使用したものである。図15(b)に示されるように、繊維材料としてのアクリル糸32の表面に、図2に示される製造方法で製造されたコーティング塗料3aを塗布してコーティング膜3Hを形成することによって、合成繊維の持つツルツルした触感を、アクリル糸32の外観を損なうことなく低減することができ、またアクリル糸32に難燃性を付与することができる。
したがって、本実施の形態7の変形例に係るセーター30は、着用したときに合成繊維特有のツルツルした触感がなく、着心地の良いものとなる。また、コーティング膜3Hの断熱性によって、羊毛よりずっと安価なアクリル糸32を用いたセーター30であっても、防寒性に優れたセーターとなる。
このようにして、本実施の形態7に係るコーティング膜3G,3H及びコーティング塗料においては、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4の断熱性、耐摩耗性、高硬度及び透明性を利用することによって、ポリエステル糸27及びアクリル糸32の外観を損なうことなく合成繊維の持つツルツルした触感を低減することができるとともに、難燃性を付与することができ、断熱効果をも付与することができる。
上記各実施の形態においては、シリカ殻からなる中空粒子として、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径80nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなる中空粒子4を用いた場合について説明したが、略30nm〜300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子であれば、空隙率及び形状に関わらず、本発明に係るシリカ殻からなる中空粒子として用いることができる。
本発明を実施するに際しては、コーティング膜及びコーティング塗料のその他の部分の構成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。