JP2018021225A - 遮熱膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃焼室構成面に設けられる遮熱膜の低い熱伝導率と低い体積熱容量の両立を前提とした、熱伝導率の更なる改善を可能とする遮熱膜の製造方法を提供する。【解決手段】図5に示すように、中間層の基材との境界部分には、数μmサイズの超微小亀裂が形成されている。超微小亀裂は、荒研削での条件(切り込み量、送り速度、回転数、取り代、砥石の砥粒径や集中度・結合度)を最適条件に設定し、中間層に作用するせん断応力を制御することによって意図的に形成したものである。超微小亀裂がこの部分に形成されていることで、遮熱層側から基材側に向かう燃焼ガスの熱の移動を、この超微小亀裂によって遮断することが可能となる。【選択図】図5

Description

この発明は遮熱膜の製造方法に関し、詳細には、エンジンの燃焼室の構成面に設けられる遮熱膜の製造方法に関する。
エンジンの燃焼室は一般に、シリンダヘッドとシリンダブロックを合わせたときに、当該シリンダブロックのボア面と、当該ボア面に収容されるピストンの頂面と、当該シリンダヘッドの底面と、によって囲まれる空間として定義される。このような燃焼室の構成面、即ち、シリンダブロックのボア面、ピストンの頂面やシリンダヘッドの底面には、エンジンでの冷却損失の低減や、燃焼に伴い発生する熱からの保護を目的として、遮熱膜が設けられることがある。
特許文献1には、燃焼室構成面に遮熱膜としての溶射膜が設けられたシリンダヘッドが開示されている。この溶射膜は、シリンダヘッド基材側に設けられた第1溶射膜と、この第1溶射膜の表面に設けられた第2溶射膜と、から構成される二層構造の膜である。この二層構造の膜において、第1溶射膜には、シリンダヘッド基材の線膨張係数よりも小さく、第2溶射膜の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有するものが採用されている。このような第1溶射膜を採用すれば、シリンダヘッド基材に直接的に第2溶射膜を設ける場合に比べて、溶射膜の熱応力耐性を高めることができる。
また、特許文献1の溶射膜では、ZrO−SiO系のセラミックスで第2溶射膜を構成すると共に、第2溶射膜内の気孔率を所定割合に調整して、第2溶射膜の低い熱伝導率と低い体積熱容量とを両立させている。第2溶射膜が低い熱伝導率を有することで、燃焼室の遮熱性を高めることができる。第2溶射膜が低い体積熱容量を有することで、燃焼室内の作動ガスの温度に第2溶射膜の表面温度を追従させることも可能となる。即ち、吸気行程では吸気の温度に、膨張行程では燃焼ガスの温度に、それぞれ第2溶射膜の表面温度を追従させることが可能となる。よって、特許文献1の溶射膜によれば、膨張行程での冷却損失を低減すると共に吸気行程での作動ガスの加熱を抑制して、燃費を向上することができる。
特開2016−98407号公報
ところで、第2溶射膜の様な遮熱層を備える二層構造の遮熱膜においては、遮熱層の低い熱伝導率と低い体積熱容量の両立を前提としながらも、これらの値が更に改善されることが望ましい。ここで、熱伝導率、即ち、燃焼ガスの熱の遮熱層への伝わり易さに着目すると、遮熱層の表面粗度が大きいほど燃焼ガスの熱が遮熱層に伝わり易くなる。何故なら、遮熱層の表面粗度が大きいほど、燃焼ガスの熱が移動できる遮熱層の表面積が増えるためである。故に、遮熱層の熱伝導率を下げるためには、遮熱層の表面を平滑化すれば良いということになる。しかしながら、遮熱層の表面を平滑化すればそれだけ層厚が減少するので、燃焼ガスの熱が遮熱層からシリンダヘッド基材に伝わり易くなってしまい、今度は燃焼室の遮熱性が低下してしまう。
仮に、溶射粒子を微粒化して遮熱層を構成する粒子のサイズを小さくし、または、遮熱層の気孔率を高めれば、遮熱層の熱伝導率を低減することは可能である。しかしながら、これらの対策には限界があり、上述した平滑化に伴った、燃焼室の遮熱性の低下を補うのに十分な効果が得られるかどうか不明である。加えて、遮熱層の気孔率が高いということはその表面が粗いということを意味する。そのため、遮熱層の気孔率を単に高めてしまうと、燃焼ガスの熱が移動できる遮熱層の表面積が却って増えてしまう可能性がある。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃焼室構成面に設けられる遮熱膜の低い熱伝導率と低い体積熱容量の両立を前提とした、熱伝導率の更なる改善を可能とする遮熱膜の製造方法を提供することにある。
本発明は、上記の目的を達成するための遮熱膜の製造方法であって、中間層形成工程と、遮熱層形成工程と、負荷印加工程と、を備えている。中間層形成工程は、エンジンの燃焼室を構成する基材の表面の所定領域に、前記基材の線膨張係数よりも大きな線膨張係数を有する溶射膜から構成される中間層を形成する工程である。遮熱層形成工程は、前記中間層の表面に、前記中間層の線膨張係数よりも大きな線膨張係数を有する溶射膜から構成される遮熱層を形成する工程である。負荷印加工程は、前記中間層に負荷を加える工程であって、前記中間層の前記基材との境界部に、膜面方向の単位長さ当たりの数とサイズがそれぞれ所定範囲の亀裂が形成される条件下で行われる工程である。
本発明において、前記負荷印加工程が、前記遮熱層形成工程の後に行われる、前記遮熱層の平面を研削する工程であってもよい。
本発明において、前記負荷印加工程が、前記遮熱層形成工程の後に行われる、前記中間層と前記遮熱層の両方に周期的な温度変化を加える工程であってもよい。
本発明によれば、中間層の基材との境界部に、膜面方向の単位長さ当たりの数とサイズがそれぞれ所定範囲の亀裂を形成することができる。この亀裂によれば、遮熱層側から基材側に向かう燃焼ガスの熱の移動を遮断することが可能となる。故に、本発明によれば、中間層と遮熱層を備える遮熱膜の低い熱伝導率と低い体積熱容量の両立を前提とした、熱伝導率の更なる改善を図ることができる。
本発明において、負荷印加工程は、中間層形成工程と遮熱層形成工程の間に行うこともでき、遮熱層形成工程の後に行うこともできる。但し、中間層と遮熱層は何れも溶射膜であることから、遮熱層形成工程の後に負荷印加工程を行う場合は、2種類の溶射膜を連続的に形成した後に亀裂を形成できることになる。従って、中間層形成工程と遮熱層形成工程の間に負荷印加工程を行う場合に比べて、溶射工程を簡略化して遮熱膜の製造コストを抑えることができる。
本発明の実施の形態1に係る製造方法が適用されるエンジン燃焼室の構成部材の例を説明する図である。 図1に示した遮熱膜22の構成を説明する図である。 図2の下段に示した遮熱膜22の拡大模式図である。 平面研削のイメージを示した図である。 図4に示す領域Aの近傍の拡大模式図である。 超微小亀裂のサイズおよび数と、遮熱膜の熱抵抗Rとの関係を示した図である。 超微小亀裂の数とサイズに関するデータの一例を示した図である。 本発明の実施の形態2に係る製造方法が適用されるエンジン燃焼室の構成部材の例を説明する図である。 本発明の実施の形態2に係る製造方法が適用されるエンジン燃焼室の構成部材の例を説明する図である。 熱処理のイメージを示した図である。 ヒートショック条件を変えた予備試験の一例を示した図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
[エンジン燃焼室の構成部材と遮熱膜の説明]
図1は、本発明の実施の形態1に係る製造方法が適用されるエンジン燃焼室の構成部材の例を説明する図である。図1には、直列4気筒型のディーゼルエンジンのシリンダヘッド10の底面12が描かれている。図1に示すように、底面12には、吸気バルブ(図示しない)によって開閉される吸気バルブ孔14と、排気バルブ(図示しない)によって開閉される排気バルブ孔16と、が1気筒当たり2つずつ形成されている。各気筒において、吸気バルブ孔14と排気バルブ孔16によって囲まれた中心部には、インジェクタ(図示しない)が挿入されるインジェクタ孔18が形成されている。また、各気筒において、吸気バルブ孔14の中間部には、グロープラグ(図示しない)が挿入されるグロープラグ孔20が形成されている。
底面12には、本実施の形態に係る製造方法によって製造される遮熱膜22も描かれている。各気筒において、遮熱膜22は、燃焼室構成面に相当する領域に設けられている。図2は、図1に示した遮熱膜22の構成を説明する図である。図2の上段には、図1に示した燃焼室構成面の1つが描かれている。この上段に示すように、遮熱膜22は、吸気バルブ孔14、インジェクタ孔18等の開口部を除いた燃焼室構成面の全領域に設けられている。図2の下段には、図2の上段に示した吸気バルブ孔14と排気バルブ孔16の中間部と、インジェクタ孔18の中心部とを通る線A−A’でのシリンダヘッド10の断面イメージが描かれている。この下段に示すように、遮熱膜22は、燃焼室構成面を覆うように設けられており、遮熱膜22よりも外側の領域では底面12が露出している。因みにこの露出領域は、シリンダブロックとの合わせ面を構成することになる。
図3は、図2の下段に示した遮熱膜22の拡大模式図である。図3に示すように、遮熱膜22はシリンダヘッド10(シリンダヘッド基材)側から順に、中間層24および遮熱層26を備えている。中間層24と遮熱層26は何れも溶射膜である。
[遮熱膜の製造方法の説明]
本実施の形態に係る製造方法では、先ず、エンジン構成部材の表面(図1で説明した底面12)にショットブラストを実施して燃焼室構成面に相当する領域の表面粗度Raを7μmとする。その後、プラズマ溶射装置(一例としてMETCO社製F4ガン)を使用して、当該表面に中間層と遮熱層(図3で説明した中間層24と遮熱層26)の二層をこの順に形成する。形成する二層の溶射材料と、溶射条件は次のとおりである。
1.溶射材料
<中間層>
Ni−50Cr合金粉末(ガスアトマイズ粒子:粒径10〜45μm)と、ベントナイト粉末(スプレー造粒粉末:粒径45μm以下)の造粒焼結体を使用。溶射膜中のベントナイト面積率60%を得るために、Ni−50Crとベントナイトの混合割合は重量比で65:35とした。
<遮熱層>
ZrO−SiO粉末としてジルコンサンド(組成:ZrO−33wt%SiO−0.7wt%Al−0.15TiO−0.1wt%Fe)の粉砕粉を分級し、粒径10〜45μmのものを使用。
2.溶射条件(ロボット走行。速度:直径に応じて変更、ピッチ:4mm)
<中間層>
プラズマガス:Ar−H,ガス流量:30L/min(Ar),8L/min(H
プラズマ電流:450A,プラズマ電圧:60V
粉末供給量:30g/min
溶射距離:150mm
<遮熱層>
プラズマガス:Ar−H,ガス流量:40L/min(Ar),12L/min(H
プラズマ電流:600A,プラズマ電圧:60V
粉末供給量:25g/min
溶射距離:100mm
本実施の形態に係る製造方法では、中間層と遮熱層を形成した後に、砥石を用いた平面研削を実施して遮熱層の表面粗度Raを0.5μm以下まで低下させる。図4は、平面研削のイメージを示した図である。図4に示すように、平面研削では、回転する砥石28によって遮熱層の表面が研削される。この平面研削では、荒研削と仕上げ研削の二段階研削が実施される。各段階での研削条件(加工条件)は、次のとおりである。
<荒研削>
砥石:#170
回転数:1800rpm
取り代:80μm
切り込み回数:4回
切り込み量:20μm(各回)
左右送り速度:435mm/s
前後送り速度:12.7mm/s
<仕上げ研削>
砥石:#1000
回転数:1800rpm
取り代:20μm
切り込み回数:5回
切り込み量:5μm(2回)、4μm(2回)、2μm(1回)
左右送り速度:287mm/s
前後送り速度:10.5mm/s
図5は、図4に示す領域Aの近傍の拡大模式図である。図5に示すように、中間層の基材との境界部分には、数μmサイズの超微小亀裂が形成されている。超微小亀裂は、上述した荒研削での条件(切り込み量、送り速度、回転数、取り代、砥石の砥粒径や集中度・結合度)を最適条件に設定し、中間層に作用するせん断応力を制御することによって意図的に形成したものである。超微小亀裂がこの部分に形成されていることで、遮熱層側から基材側に向かう燃焼ガスの熱の移動を、この超微小亀裂によって遮断することが可能となる。よって、荒研削の後の仕上げ研削によって遮熱層の層厚が減少したとしても、膜全体としての遮熱性を確保することが可能となる。
図6は、超微小亀裂のサイズおよび数と、遮熱膜の熱抵抗Rとの関係を示した図である。図6の左方のデータは、上述した仕上げ研削のみを実施した遮熱膜の熱抵抗Rの内訳を表している。一方、図6の中央と右方のデータは、上述した二段階研削を実施した遮熱膜の熱抵抗Rの内訳を表している。これらのデータから分かるように、二段階研削を実施して中間層に超微小亀裂を形成すると、「膜内」の熱抵抗Rが変化する。「膜内」の熱抵抗Rが高いということは、遮熱膜の熱伝導率が低下していることを意味している。但し、超微小亀裂の数が多くなり過ぎ、または、超微小亀裂のサイズが大きくなり過ぎると、今度は中間層の強度が低下してしまう。
このような観点から、本実施の形態に係る製造方法では、研削条件を変えた予備試験によって、中間層の任意の断面視において、膜面方向の単位長さ(一例として1mm)当たりに観察される超微小亀裂の数とサイズ(大きさ)に関するデータを取得している。そして、膜全体の熱抵抗Rが下限値(一例として2.5mK/kW)となるときのクライテリア(超微小亀裂の数が50個以上、かつ、超微小亀裂の最大サイズが2μm以下)、および、膜全体の強度が下限値となるときのクライテリア(超微小亀裂の数が200個以下、かつ、超微小亀裂の最大サイズが30μm以下)の両方が満たされる研削条件を、荒研削での最適条件として採用している。因みに、この予備試験では、断面視での幅(短辺)が0.5μm以上で、長さ(長辺)が2μm以上のサイズの亀裂を超微小亀裂として定義し、上述した数とサイズに関するデータを取得している。図7は、超微小亀裂の数とサイズに関するデータの一例を示した図である。
以上説明した本実施の形態に係る製造方法によれば、次のような効果を得ることができる。先ず、溶射によって形成される中間層の線膨張係数(一例として、約7〜15×10−6/℃)は、基材の線膨張係数(一例としてアルミニウム合金の線膨張係数:約23×10−6/℃)よりも小さく、かつ、同じく溶射によって形成される遮熱層の線膨張係数(一例として、ZrO−SiO系のセラミックス溶射膜の線膨張係数:約6×10−6/℃)よりも大きくなる。そのため、中間層のない遮熱層のみの一層構造の遮熱膜に比べて、基材と遮熱層の間の線膨張係数の差を緩和した、熱応力耐性の高い遮熱膜を製造することができる。
また、本実施の形態に係る製造方法によれば、低い熱伝導率と低い体積熱容量とを両立させた遮熱層を中間層の上に形成することができる。そのため、低い熱伝導率と低い体積熱容量を有する遮熱膜を製造することもできる。更に、本実施の形態に係る製造方法によれば、荒研削によって中間層の基材との境界部分に超微小亀裂を形成することもできる。そのため、荒研削の後の仕上げ研削によって遮熱層の層厚が減少したとしても、膜全体としての遮熱性が確保された遮熱膜を製造することもできる。
なお、上記実施の形態1では、遮熱層の形成後に上述した二段階研削を実施した。しかし、中間層の形成後、遮熱層の形成前に荒研削を実施して上述した超微小亀裂を形成してもよい。なおこの場合は、遮熱層の形成後に、上述した仕上げ研削を実施すればよい。
実施の形態2.
[エンジン構成部材と遮熱膜の説明]
図8乃至図9は、本発明の実施の形態2に係る製造方法が適用されるエンジン燃焼室の構成部材の例を説明する図である。図8には、ディーゼルエンジンのピストン30の断面図が描かれている。図8に示すように、ピストン30の頂面32には、キャビティ34が形成されている。また、キャビティ34の表面を含む頂面32の全領域には、本実施の形態に係る製造方法によって製造される遮熱膜36が形成されている。一方、図9には、ガソリンエンジンのシリンダヘッド40の断面図が描かれている。図9に示すように、シリンダヘッド40の底面42は、ペントルーフ状に加工されている。この加工領域には、本実施の形態に係る製造方法によって製造される遮熱膜44が形成されている。
図8に示した遮熱膜36と図9に示した遮熱膜44は何れも、図3で説明した遮熱膜22と同様の二層構造の遮熱膜である。遮熱膜36を構成する中間層や、遮熱膜44を構成する中間層は、図3で説明した中間層24と同一の溶射材料と溶射条件で形成される溶射膜である。また、遮熱膜36を構成する遮熱層や、遮熱膜44を構成する遮熱層は、図3で説明した遮熱層26と同一の溶射材料と溶射条件で形成される溶射膜である。
[遮熱膜の製造方法の説明]
本実施の形態に係る製造方法では、先ず、エンジン構成部材の表面(図8で説明した頂面32または図9で説明した底面42)に、ショットブラストを実施して燃焼室構成面に相当する領域の表面粗度Raを7μmとする。その後、プラズマ溶射装置(一例としてMETCO社製F4ガン)を使用して、当該表面に中間層と遮熱層の二層をこの順に形成する。ここまでは、上述した実施の形態1に係る製造方法と同じである。
本実施の形態に係る製造方法では、中間層と遮熱層を形成した後に、熱処理として、エンジン構成部材に対して周期的な温度変化が加えられる。図10は、熱処理のイメージを示した図である。図10に示すように、エンジン構成部材に熱を加えることで、基材、中間層および遮熱層の全てが熱膨張する。この熱処理の条件(ヒートショック条件)は、次のとおりである。
温度上昇量ΔT:200℃(低温100℃、高温300℃)
昇温時間:4sec
高温保持時間:2sec
降温時間:4sec
低温保持時間:2sec
サイクル数:10回
本実施の形態に係る製造方法では、ヒートショック条件を変えた予備試験によって、膜面方向の単位長さ(一例として1mm)当たりに観察される超微小亀裂の数とサイズ(大きさ)に関するデータを取得している。そして、膜全体の熱抵抗Rが下限値(一例として2.5mK/kW)となるときのクライテリア(超微小亀裂の数が50個以上、かつ、超微小亀裂の最大サイズが2μm以下)、および、膜全体の強度が下限値となるときのクライテリア(超微小亀裂の数が200個以下、かつ、超微小亀裂の最大サイズが30μm以下)の両方が満たされるヒートショック条件を、熱処理での最適条件として採用している。図11は、ヒートショック条件を変えた予備試験の一例を示した図である。なお、超微小亀裂の定義については、上述した実施の形態1に係る製造方法と同じである。
以上説明した本実施の形態に係る製造方法によれば、上述した実施の形態1に係る製造方法により得られる効果に加え、次のような効果を得ることができる。即ち、上述した実施の形態1に係る製造方法は、平面研削を基本とするため、平面に形成された遮熱層に対しては有効であるが、図8で説明したキャビティ34の表面や、図9で説明した底面42の様な曲面に形成された遮熱膜に適用することが難しい。この点、本実施の形態に係る製造方法によれば、上述した熱処理によって、中間層の基材との境界部分に超微小亀裂を形成することができる。つまり、平面研削を実施することなく、曲面に形成された遮熱層の熱伝導率を低下させることが可能となる。また、平面研削を実施しないことで、遮熱層の表面粗度を溶射後の表面粗度に保持することも可能となる。
なお、上述した実施の形態2では、遮熱層の形成後に上述した熱処理を実施した。しかし、中間層の形成後、遮熱層の形成前に熱処理を実施して上述した超微小亀裂を形成してもよい。
10,40 シリンダヘッド
12,42 底面
22,36,44 遮熱膜
24 中間層
26 遮熱層
30 ピストン
32 頂面
34 キャビティ

Claims (3)

  1. エンジンの燃焼室を構成する基材の表面の所定領域に、前記基材の線膨張係数よりも大きな線膨張係数を有する溶射膜から構成される中間層を形成する中間層形成工程と、
    前記中間層の表面に、前記中間層の線膨張係数よりも大きな線膨張係数を有する溶射膜から構成される遮熱層を形成する遮熱層形成工程と、
    前記中間層に負荷を加える負荷印加工程であって、前記中間層の前記基材との境界部に、膜面方向の単位長さ当たりの数とサイズがそれぞれ所定範囲の亀裂が形成される条件下で行われる負荷印加工程と、
    を備えることを特徴とする遮熱膜の製造方法。
  2. 前記負荷印加工程が、前記遮熱層形成工程の後に行われる、前記遮熱層の平面を研削する工程であることを特徴とする請求項1に記載の遮熱膜の製造方法。
  3. 前記負荷印加工程が、前記遮熱層形成工程の後に行われる、前記中間層と前記遮熱層の両方に周期的な温度変化を加える工程であることを特徴とする請求項1に記載の遮熱膜の製造方法。
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