JP5992016B2 - リチウムイオン電池正極材の改質方法 - Google Patents

リチウムイオン電池正極材の改質方法 Download PDF

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Description

本発明はリチウムイオン電池正極材処理方法の技術分野に関し、特にリチウムイオン電池正極材の改質方法に関する。
従来、高エネルギー密度のリチウムイオン電池の正極材として、一般的にLiCoO2が用いられ、締固め密度、使用上限電圧などの条件の制限で、そのエネルギー密度がすでに限界に達し、且つ該エネルギー密度での電池の分極が極めて大きいので、高出力と長寿命の要求を満たし難い。LiCoO2に比べて、層状リチウムニッケル系複合酸化物正極材LiNix1-x2(MはCo、Mn、Al、Cr、Mg、Cu、Ti、Zn、Zr、Vのうちの1種又は2種であり、0.5≦x<1である。)は高放電比容量(170〜230mAh/g)および低コストのメリットを有するので、ますますリチウム電池分野で注目されるようになる。
LiNix1-x2において、Li原子は3aサイトに位置し、遷移金属原子は3bサイトに位置し、O原子はM’O6(M’=Ni、Co、Mn、Al又はCr)八面体の6cサイトに位置する。Li+(0.76Å)とNi2+(0.69Å)の半径は非常に近く、高温焼結過程で、微量のLiが揮発し、一部のNiが結晶構造におけるLiの3aサイトを占め、微小な構造陥没領域を形成し、リチウム/ニッケル混在をもたらす。リチウム/ニッケル混在によって、構造内部の活性酸素の脱出および遊離リチウムイオン数の増加をもたらし、脱出した活性酸素が更に空気中のCO2とH2Oに接触すると、反応してCO3 2-とOH-を生成し、生成したCO3 2-とOH-が活性リチウムイオンと継続的に反応してLi2CO3およびLiOHなどのリチウムの可溶性塩を生成し、可溶性塩が活物質の表面に付着するため、材料のpHが高くなってしまう。高pHは材料の特性に下記のような深刻な影響をもたらし、(1)材料が非常に吸湿して劣化し易く、接着剤PVDFに対する適合性が悪いことによって、スラリーの分散性と安定性が悪くなり、ガミングが発生し易く、製品の歩留まりが低くなりすぎ、(2)材料がアルミ箔と化学反応して、Al(OH)3を生成し、綿状の沈殿物が発生し、リチウムイオンの伝導をある程度妨害し、電池容量維持率およびレート特性に悪影響を与え、(3)pHが高くなると、材料表面の含水量がそれなりに増加し、電池の高温保存過程において、LiPF6がニッケル系材料により導入される水と反応してHFを生成し、HFが更にLi2CO3およびLiOH不純物と反応してCO2ガスとH2Oを生成し、H2Oを開始剤としてLiPF6の分解を更に触媒し、電池特性を大幅に低下させ、最終的に、ニッケル基材料を正極材とするリチウムイオン電池の高温保存特性およびサイクル安定性に深刻な影響を与え、特にアルミプラスチック複合フィルムを外装として用いたリチウムイオン電池の場合、ケースが比較的に柔らかで、ガスの発生が電池の急激な膨張変形をもたらし、深刻な安全リスクをもたらすので、その使用が制限される。
特許文献1にはリチウムイオン電池材料の総合特性の向上方法が記載されている。該方法は易揮発性の有機溶剤を用いて電極材料に対して攪拌および乾燥処理を行うことによって、電極材料と水分子との結合を効果的に防止し、ガミング課題を回避し、電極材料の加工特性を向上させる。しかしながら、該方法は電極材料の表面における不純物Li2CO3およびLiOHを除去することが不能であり、材料のpHが低下せず、電池の高温保存特性とサイクル安定性も実質的に改善するには至っていない。
特許文献2には三元系材料pH値の低下方法が記載されている。該方法は脱イオン水又はHCO3 -含有溶液を用いて三元系材料に対して洗浄、吸引濾過処理を行い、且つマッフル炉に入れて二段焼結することによって、三元系材料のpH値を効果的に低下させ、三元系材料の電気化学特性の向上に寄与する。しかしながら、該方法は二次高温焼結処理が必要で、プロセスが複雑で、製品の生産サイクルが長く、エネルギー消費量が大きくなるだけでなく、比較的多くの工業廃水が生じる。研究によると、層状ニッケル基正極材LiNi0.8Co0.1Mn0.12を水洗した後、電解液における材料の構造安定性およびサイクル安定性は著しく向上するが、材料の初回放電比容量は著しく低下し、且つ二次焼結温度による影響が比較的大きい。また、水洗後の材料が再び空気に晒されると、さらに水分を吸収しやすくなり、材料の包装、輸送、保存および使用環境に更なる要求が求められる。
中国特許出願公開第101572308号明細書 中国特許出願公開第102683672号明細書
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、正極材の表面における可溶性リチウム塩不純物を除去して正極材のpH値を低下させるだけでなく、材料と水分子との再結合を効果的に防止し、極片のガミング課題を徹底的に解決し、それにより、電池の高温保存特性およびサイクル安定性を向上させるリチウムイオン電池正極材の改質方法を提供する。
リチウムイオン電池正極材の改質方法であって、
(1)有機酸とアルコールを混合して有機溶液を得る工程と、
(2)リチウムイオン電池正極材を前記有機溶液に加え、混合して懸濁液を得る工程と、
(3)前記懸濁液を遠心分離した後、アルコール溶剤で洗浄する工程と、
(4)前記洗浄後のリチウムイオン電池正極材を乾燥して改質したリチウムイオン電池正極材を得る工程と、を含み、
前記リチウムイオン電池正極材はニッケル基金属酸化物正極材LiNix1-x2(0.5≦x<1で、MはCo、Mn、Al、Cr、Mg、Cu、Ti、Zn、Zr、Vのうちの1種又は2種である。)であり、
前記工程(3)の後に、洗浄後の前記有機酸およびアルコールを含む廃液に対して超重力場を発生させるベッド設備を用いて前記廃液の精留と分離を行い、再利用可能な有機酸およびアルコールを得る回収工程をさらに含むことを特徴とする。
記工程(1)の前記混合は、攪拌機で攪拌し混合するものであり、
記工程(2)の前記リチウムイオン電池正極材は粉末状ある。
前記工程(1)の前記攪拌混合は回転速度が50〜500rpm、攪拌時間が5〜80minであり、
記工程(1)の前記有機酸とアルコールの質量比は(1〜38):19であり、
記工程(1)の前記有機酸はカルボン酸であり、
記工程(1)の前記アルコールはC1-6アルコールであることが好ましい。
前記工程(2)に記載の前記混合は、攪拌機で攪拌混合するものであり、前記攪拌混合は回転速度が50〜500rpm、攪拌時間が5〜300minであり、
記工程(2)の前記リチウムイオン電池正極材と有機溶液の質量比は(1〜12):4であることが好ましい。
前記工程(3)の遠心分離は回転速度が1000〜10000rpm、遠心時間が60min以下であり、
記工程(3)の前記洗浄の回数は2〜8回であり、
記工程(3)の前記アルコール溶剤はC1-6アルコールであることが好ましい。
前記工程(4)の前記乾燥は真空炉で行、乾燥温度30〜120℃であることが好ましい。
工程(4)は、乾燥後の正極材を篩分けすることをさらに含む。
(1)質量比が(1〜19):19の有機酸とアルコールを100〜400rpmの回転速度で10〜60min攪拌し、有機溶液を得る工程と、
(2)リチウムイオン電池正極材を前記有機溶液に加え、前記リチウムイオン電池正極材と有機溶液の質量比が(1〜8):4であり、100〜400rpmの回転速度で30〜240min攪拌し、懸濁液を得る工程と、
(3)前記懸濁液を遠心機に入れ、3000〜8000rpmの回転速度で5〜25min遠心処理し、次に遠心処理後の前記正極材をアルコールで3〜5回洗浄し、洗浄後の前記有機酸およびアルコールを含む廃液を、超重力場を発生させるベッド設備を用いて前記廃液の精留と分離を行い、再利用可能な有機酸およびアルコールを得る工程と、
(4)前記洗浄後のリチウムイオン電池正極材を40〜90℃で乾燥し、篩分けして改質したリチウムイオン電池正極材を得る工程と、を含むリチウムイオン電池正極材の改質方法である。
従来の技術に比べて、本発明に係る方法は有機酸とアルコールの混合溶液で正極材を洗浄処理し、有機酸が正極材の表面におけるLi2CO3、LiOH不純物と反応可能でアルコール溶液に可溶の有機リチウム化合物を生成し、遠心および洗浄処理を経て除去することによって、材料のpH値を著しく低下させ、また、洗浄材料を低温乾燥処理した後、残留した一部のアルコール分子が材料表面を被覆して空気に対する効果的な隔離を達成し、材料と水分子との結合を効果的に防止し、極片のガミング課題を解決し、電池の高温保存特性およびサイクル安定性を著しく向上させる。それとともに、該プロセスは簡単で、高温二次焼結過程が不要で、エネルギー消費量が比較的小さく、且つ洗浄後の有機酸とアルコールの混合溶液を回収して再利用することができ、コストが低く、環境を汚染することがない。
本発明に係る実施例2における処理前のLiNi0.8Co0.1Mn0.12正極材のSEM像である。 本発明に係る実施例2における改質後のLiNi0.8Co0.1Mn0.12正極材のSEM像である。
以下、図面および実施例を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。ここで記述される具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を制限するものではないと理解すべきである。ただし、記述の便宜上、図面にはすべての構造ではなく、本発明に関連する部分のみが示される。
実施例1
エタノール950g、蟻酸50gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を300rpm、攪拌時間を10min制御し、混合有機溶液を得る。1000gのLiNi0.8Co0.22正極材を前記混合有機溶液に徐々に加え、持続的に攪拌し、回転速度を100rpm、攪拌時間を120minに制御し、懸濁液を得て、懸濁液を遠心機に入れて遠心分離し、遠心回転速度が6000rpm、遠心時間が10minであり、そしてエタノールで3回洗浄し、洗浄後の原料を真空台車炉に移し、80℃で乾燥して改質した正極材を製造する。遠心分離するとともに、廃液を超重力ベッド設備(超重力場を発生させるベッド設備の意味、以下同じ)に移して溶剤の精留と分離を行い、精製・分離した有機酸およびアルコール溶剤を専用容器に貯蔵し、回収再利用に用いる。
実施例2
メタノール500g、酢酸500gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を400rpm、時間を30minに制御し、混合有機溶液を得る。2000gのLiNi0.8Co0.1Mn0.12正極材を前記混合有機溶液に徐々に加え、持続的に攪拌し、回転速度を300rpm、攪拌時間を240minに制御し、懸濁液を得て、懸濁液を遠心機に入れて遠心分離し、遠心回転速度が5000rpm、遠心時間が15minであり、そしてメタノールで5回洗浄し、洗浄後の原料を真空台車炉に移し、40℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を製造する。遠心分離するとともに、廃液を超重力ベッド設備に移して溶剤の精留と分離を行い、精製・分離した有機酸およびアルコール溶剤を専用容器に貯蔵し、回収再利用に用いる。
実施例3
エタノール800g、イソプロピル酸200gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を100rpm、時間を10minに制御し、混合有機溶液を得る。250gのLiNi0.8Co0.15Al0.052正極材を前記混合有機溶液に徐々に加え、持続的に攪拌し、回転速度を400rpm、時間を30minに制御し、懸濁液を得て、懸濁液を遠心機に入れて遠心分離し、遠心回転速度が8000rpm、遠心時間が5minであり、そしてエタノールで8回洗浄し、洗浄後の原料を真空台車炉に移し、90℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を製造する。遠心分離するとともに、廃液を超重力ベッド設備に移して溶剤の精留と分離を行い、精製・分離した有機酸およびアルコール溶剤を専用容器に貯蔵し、回収再利用に用いる。
実施例4
グリセロール700g、蟻酸300gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を200rpm、時間を60minに制御し、混合有機溶液を得る。500gのLiNi0.6Co0.2Cr0.22正極材を前記混合有機溶液に徐々に加え、持続的に攪拌し、回転速度を300rpm、時間を60minに制御し、懸濁液を得て、懸濁液を遠心機に入れて遠心分離し、遠心回転速度が3000rpm、遠心時間が25minであり、そしてグリセロールで5回洗浄し、洗浄後の原料を真空台車炉に移し、60℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を製造する。遠心分離するとともに、廃液を超重力ベッド設備に移して溶剤の精留と分離を行い、精製・分離した有機酸およびアルコール溶剤を専用容器に貯蔵し、回収再利用に用いる。
実施例5
エタノール600g、酪酸400gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を200rpm、時間を20minに制御し、混合有機溶液を得る。750gのLiNi0.5Co0.2Mn0.32正極材を前記混合有機溶液に徐々に加え、持続的に攪拌し、回転速度を300rpm、時間を180minに制御し、懸濁液を得て、懸濁液を遠心機に入れ、遠心回転速度を4000rpm、遠心時間を20minで遠心分離した。そしてエタノールで4回洗浄し、洗浄後の原料を真空台車炉に移し、50℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を製造する。遠心分離するとともに、廃液を超重力ベッド設備に移して溶剤の精留と分離を行い、精製・分離した有機酸およびアルコール溶剤を専用容器に貯蔵し、回収再利用に用いる。
実施例6
エタノール200g、酢酸400gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を500rpm、時間を5minに制御し、混合有機溶液を得る。1800gのLiNi0.5Co0.2Mn0.32正極材を前記混合有機溶液に徐々に加え、持続的に攪拌し、回転速度を500rpm、時間を5minに制御し、懸濁液を得て、懸濁液を遠心機に入れ、遠心回転速度を1000rpm、遠心時間を60minで遠心分離した。そしてエタノールで5回洗浄し、洗浄後の原料を真空台車炉に移し、35℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を製造する。遠心分離するとともに、廃液を超重力ベッド設備に移して溶剤の精留と分離を行い、精製・分離した有機酸およびアルコール溶剤を専用容器に貯蔵し、回収再利用に用いる。
実施例7
イソプロパノール380g、蟻酸500gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を50rpm、時間を80minに制御し、混合有機溶液を得る。2200gのLiNi0.8Co0.1Mn0.12正極材を前記混合有機溶液に徐々に加え、持続的に攪拌し、回転速度を50rpm、時間を300minに制御し、懸濁液を得て、懸濁液を遠心機に入れて遠心分離し、遠心の回転速度が2000rpm、遠心時間が40minであり、イソプロパノールで2回洗浄し、洗浄後の原料を真空台車炉に移し、30℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を製造する。遠心分離するとともに、廃液を超重力ベッド設備に移して溶剤の精留と分離を行い、精製・分離した有機酸およびアルコール溶剤を専用容器に貯蔵し、回収再利用に用いる。
実施例8
イソプロパノール400g、酢酸300gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を80rpm、時間を70minに制御し、混合有機溶液を得る。300gのLiNi0.8Co0.15Al0.052正極材を前記混合有機溶液に徐々に加え、持続的に攪拌し、回転速度を450rpm、時間を20minに制御し、懸濁液を得て、懸濁液を遠心機に入れて遠心分離し、遠心の回転速度が2500rpm、遠心時間が30minであり、イソプロパノールで4回洗浄し、洗浄後の原料を真空台車炉に移し、120℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を製造する。遠心分離するとともに、廃液を超重力ベッド設備に移して溶剤の精留と分離を行い、精製・分離した有機酸およびアルコール溶剤を専用容器に貯蔵し、回収再利用に用いる。
実施例9
n−ブチルアルコール500g、酢酸400gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を450rpm、時間を8minに制御し、混合有機溶液を得る。1200gのLiNi0.6Co0.2Cr0.22正極材を前記混合有機溶液に徐々に加え、持続的に攪拌し、回転速度を80rpm、時間を270minに制御し、懸濁液を得て、懸濁液を遠心機に入れて遠心分離し、遠心の回転速度が10000rpm、遠心時間が2minであり、n−ブチルアルコールで3回洗浄し、洗浄後の原料を真空台車炉に移し、100℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を製造する。遠心分離するとともに、廃液を超重力ベッド設備に移して溶剤の精留と分離を行い、精製・分離した有機酸およびアルコール溶剤を専用容器に貯蔵し、回収再利用に用いる。
特許文献1に記載されている方法に従って、それぞれLiNi0.8Co0.22、LiNi0.8Co0.1Mn0.12、LiNi0.8Co0.15Al0.052、LiNi0.6Co0.2Cr0.22、LiNi0.5Co0.2Mn0.32正極材を処理し、形成する比較例1〜5は下記の通りである。
比較例1
エタノール1000gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を50rpm、時間を10minに制御し、混合有機溶液を得る。1000gのLiNi0.8Co0.22正極材を前記混合有機溶液に徐々に加えた後、乾燥炉に入れ、温度を70℃に維持するとともに、攪拌機を作動させ、回転速度を100rpmに制御し、持続的に攪拌して有機溶剤を蒸発させ、有機溶剤が完全に蒸発した後、得られた正極材を真空台車炉に移し、60℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を作製した。
比較例2
エタノール1000gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を50rpm、時間を10minに制御し、混合有機溶液を得る。1000gのLiNi0.8Co0.1Mn0.12正極材を前記混合有機溶液に徐々に加えた後、乾燥炉に入れ、温度を70℃に維持するとともに、攪拌機を作動させ、回転速度を100rpmに制御し、持続的に攪拌して有機溶剤を蒸発させ、有機溶剤が完全に蒸発した後、得られた正極材を真空台車炉に移し、60℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を作製した。
比較例3
エタノール1000gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を50rpm、時間を10minに制御し、混合有機溶液を得る。1000gのLiNi0.8Co0.15Al0.052正極材を前記混合有機溶液に徐々に加えた後、乾燥炉に入れ、温度を70℃に維持するとともに、攪拌機を作動させ、回転速度を100rpmに制御し、持続的に攪拌して有機溶剤を蒸発させ、有機溶剤が完全に蒸発した後、得られた正極材を真空台車炉に移し、60℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を作製した。
比較例4
エタノール1000gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を50rpm、時間を10minに制御し、混合有機溶液を得る。1000gのLiNi0.6Co0.2Cr0.22正極材を前記混合有機溶液に徐々に加えた後、乾燥炉に入れ、温度を70℃に維持するとともに、攪拌機を作動させ、回転速度を100rpmに制御し、持続的に攪拌して有機溶剤を蒸発させ、有機溶剤が完全に蒸発した後、得られた正極材を真空台車炉に移し、60℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を作製した。
比較例5
エタノール1000gを容器に入れて攪拌混合し、回転速度を50rpm、時間を10minに制御し、混合有機溶液を得る。1000gのLiNi0.5Co0.2Mn0.32正極材を前記混合有機溶液に徐々に加えた後、乾燥炉に入れ、温度を70℃に維持するとともに、攪拌機を作動させ、回転速度を100rpmに制御し、持続的に攪拌して有機溶剤を蒸発させ、有機溶剤が完全に蒸発した後、得られた正極材を真空台車炉に移し、60℃で乾燥し、篩分けして改質した正極材を作製した。
比較例6
LiNi0.8Co0.22正極材を処理していない。
比較例7
LiNi0.8Co0.1Mn0.12正極材を処理していない。
比較例8
LiNi0.8Co0.15Al0.052正極材を処理していない。
比較例9
LiNi0.6Co0.2Cr0.22正極材を処理していない。
比較例10
LiNi0.5Co0.2Mn0.32正極材を処理していない。
実施例2および比較例2の正極材に対して、日本Hitachi会社のS−4800電界放射型走査電子顕微鏡を用いて形態を観察する。
実施例1〜9および比較例1〜10の正極材に対して、下記の方法によってテストを行った。
表面におけるLi2CO3およびLiOH不純物含有量テストについて、塩酸標準溶液を用いて正極材におけるLi2CO3およびLiOH不純物含有量を滴定し、消費される塩酸の体積からLi2CO3およびLiOH値を算出する。
pH値テストについて、5gの正極材を秤量し、二酸化炭素を除去した45mlの二次蒸留水に入れ、十分に攪拌又は超音波処理し、静置した後、上澄み液を取り、メトラーpH計を用いて上澄み液のpH値を測定する。
実施例1〜5および比較例1〜5の正極材を下記の方法によって7090130Pに組み立てた。
正極片の製造について、5Lの攪拌機において、正極活物質、接着剤PVDF、導電剤super−Pを97:1:2で油系、真空条件において正極材料混合し、均一な正極スラリーを得て、調製した正極スラリーを正極集電体Al箔に均一に塗布し、正極片を作製した。
負極片の製造について、黒鉛、増粘剤CMC、接着剤SBR、導電性炭素粉末を重量比95:1:2:2で水系で負極材料混合し、均一な負極スラリーを得て、調製した負極スラリーを負極集電体Cu箔に均一に塗布して冷却し、負極片を作製した。
リチウムイオン電池の製造について、前記プロセスによって製造された正極片、負極片およびセパレータを捲回してリチウムイオン電池コアを製造し、非水電解液を注入し、7090130Pフレキシブルパッケージ電池を製造し、非水電解液は濃度が1.0mol/LのLiPF6を電解質、体積比が1:1である炭酸エチレン、炭酸ジエチルの混合物を非水溶剤として用いる。
前記実施例および比較例の正極材スラリーへのガミング特性テストについて、調製した正極スラリーを温度25℃、湿度80%の環境条件において密閉容器に入れ、水を含有する雰囲気を作るように容器に水を入れたビーカーが置かれ、材料のガミング特性を観察し、1時間ごとに実験記録を1回行い、スラリーのガミング状況を記録した。
前記実施例および比較例で製造されたリチウムイオン電池に対して、下記の方法によって電気特性テストを行った。
充放電テストについて、まず、リチウムイオン電池を化成し、45℃でまず0.01Cの定電流で3.4Vまで充電し、さらに0.2Cの定電流で3.8Vまで充電し、そして、常温で0.2Cの定電流で4.2Vまで充電し、さらに0.05Cになるまで定電圧を維持し、5min静置した後、0.2Cで3Vまで放電し、放電容量および400周サイクル後の放電容量を記録した。
60℃、30日間における高温保存特性テストについて、常温で、1.0Cの電流で電池の初期放電容量をテストし、そして1.0Cの定電流で4.2Vまで充電し、電流が0.05Cに下がるまで定電圧で充電し、充電を停止させ、そして1時間静置し、厚さを測定した後、電池を60℃±2℃の高温箱に入れ、30日間保存した後、高温箱において電池の厚さを測定し、そして、それを取り出し、常温の環境で1時間放置し、そして1.0Cの電流で常温での残容量をテストし、残容量を初期放電容量で割算したものは容量維持率である。
本発明の実施例1〜9および比較例1〜10の正極材の物理化学的指標およびリチウムイオン電池特性の結果は表1に示され、表1から、本発明の方法によって改質された材料は、活物質の表面におけるLi2CO3およびLiOH含有量が著しく減少し、材料のpHが著しく低下し、スラリーにガミング現象がほとんど発生せず、常温で400周サイクルした後の容量維持率が大幅に向上し、高温保存厚さ膨張率が著しく低下し、容量維持率が著しく向上したことが分かった。
図1と図2の比較から、改質前の材料表面が比較的粗く、改質後の材料表面が滑らかになり、改質後の材料表面における不純物が除去されたことを示すことが分かった。
以上から分かるように、本発明で処理されたリチウムイオン電池正極材はpHが著しく低下し、加工特性が著しく向上し、サイクル安定性および高温保存特性が向上した。
出願人は、本発明が上記実施例によって本発明の詳細なプロセス設備およびプロセス流れを説明したが、本発明が前記詳細なプロセス設備およびプロセス流れに限定されるものではなく、すなわち、本発明が前記詳細なプロセス設備およびプロセス流れでしか実施不能である意味ではないと言明する。当業者は、本発明へのすべての改良、本発明の製品の各原料の等価置換および補助成分の添加、具体的な方式の選択などがいずれも本発明の保護範囲および開示範囲に属すると理解すべきである。

Claims (8)

  1. 有機酸とアルコールを混合して有機溶液を得る工程(1)と、
    リチウムイオン電池正極材を前記有機溶液に加え、混合して懸濁液を得る工程(2)と、
    前記懸濁液を遠心分離した後、アルコール溶剤で洗浄する工程(3)と、
    前記洗浄後のリチウムイオン電池正極材を乾燥して改質したリチウムイオン電池正極材を得る工程(4)とを具備し、
    前記リチウムイオン電池正極材はニッケル系金属酸化物正極材LiNix1-x2であり、xは0.5≦x<1で、MはCo、Mn、Al、Cr、Mg、Cu、Ti、Zn、Zr、Vのうちの1種又は2種であり、
    前記工程(3)の後に、洗浄後の前記有機酸およびアルコールを含む廃液に対して超重力場を発生させるベッド設備を用いて前記廃液の精留と分離を行い、再利用可能な有機酸およびアルコールを得る回収工程をさらに含むことを特徴とするリチウムイオン電池正極材の改質方法。
  2. 前記工程(1)に記載の前記混合は、攪拌機で攪拌し混合するものであり、
    前記工程(2)に記載の前記リチウムイオン電池正極材は粉末状であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記工程(1)に記載の前記攪拌混合は回転速度が50〜500rpm、攪拌時間が5〜80minであり、
    前記工程(1)に記載の前記有機酸とアルコールの質量比は(1〜38):19であり、
    前記工程(1)に記載の前記有機酸はカルボン酸であり、
    前記工程(1)に記載の前記アルコールはC1-6アルコールであることを特徴とする請求項2記載の方法。
  4. 前記工程(2)に記載の前記混合は、攪拌機で攪拌混合するものであり、前記攪拌混合は回転速度が50〜500rpm、攪拌時間が5〜300minであり、
    前記工程(2)に記載の前記リチウムイオン電池正極材と有機溶液の質量比は(1〜12):4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記工程(3)に記載の遠心分離は回転速度が1000〜10000rpm、遠心時間が60min以下であり、
    前記工程(3)に記載の前記洗浄の回数は2〜8回であり、
    前記工程(3)に記載の前記アルコール溶剤はC1-6アルコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記工程(4)に記載の前記乾燥は真空炉で行い、乾燥温度は30〜120℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に載の方法。
  7. 前記工程(4)には、乾燥後の正極材を篩分けする工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 質量比が(1〜19):19である有機酸とアルコールを100〜400rpmの回転速度で10〜60min攪拌し、有機溶液を得る工程(1)と、
    リチウムイオン電池正極材を前記有機溶液に加え、前記リチウムイオン電池正極材と有機溶液の質量比が(1〜8):4であり、100〜400rpmの回転速度で30〜240min攪拌し、懸濁液を得る工程(2)と、
    前記懸濁液を遠心機に入れ、3000〜8000rpmの回転速度で5〜25min遠心処理し、次に遠心処理後の前記正極材をアルコールで3〜5回洗浄し、洗浄後の前記有機酸およびアルコールを含む廃液を、超重力場を発生させるベッド設備を用いて前記廃液の精留と分離を行い、再利用可能な有機酸およびアルコールを得る工程(3)と、
    前記洗浄後のリチウムイオン電池正極材を40〜90℃で乾燥し篩分けした後、改質したリチウムイオン電池正極材を得る工程(4)と、
    を含むことを特徴とするリチウムイオン正極材の改質方法。
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