JP5733571B2 - リチウム含有複合酸化物の製造方法、正極活物質および二次電池 - Google Patents

リチウム含有複合酸化物の製造方法、正極活物質および二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、主としてリチウムイオン二次電池の正極材料として使用される複合酸化物およびその複合酸化物を用いた二次電池に関するものである。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、小型軽量でかつ高容量の二次電池が必要とされている。たとえば、リチウムイオン二次電池は、リチウム(Li)を挿入および脱離することができる活物質を正極と負極にそれぞれ有する。そして、両極間に設けられた電解液内をLiイオンが移動することによって動作する。
リチウムイオン二次電池の性能は、二次電池を構成する正極、負極および電解質の材料に左右される。そのなかでも、活物質を形成する活物質材料の研究開発が活発に行われている。たとえば、リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiFeOなどのα−NaFeO型の層状岩塩構造を有するリチウムおよび他の金属元素を含むリチウム含有複合酸化物が知られている。
なかでも、LiMnOについては、正極活物質としてLiMnOを含む二次電池を使用する際、使用に先立ち正極活物質を活性化させる必要がある。しかし、LiMnOの粒径が大きい場合には、粒子の表層しか活性化されない。使用するLiMnOのほぼ全量を電池として活性な材料とするためには、LiMnOの粒径を小さくすることが必要と考えられている。
簡便な微粒子の合成プロセスとして、溶融塩法がある。たとえば、特許文献1には、ナノオーダーの酸化物粒子を合成する方法が開示されている。特許文献1の各実施例では、LiOH・HOとLiNOとを1:1のモル比で混合した溶融塩原料に乾燥添加剤としてLiを添加して乾燥を行った後300℃にした溶融塩を用いて、各種リチウム含有複合酸化物の微粒子を合成している。
特開2008−105912号公報
特許文献1にも記載されているように、溶融塩中で合成を行った後、溶融塩および生成物を含む混合物は、室温に冷却される。冷却過程で液状から固化した混合物は、イオン交換水の中で攪拌されることで、水溶性の塩が溶解する。生成物は水に不溶であるため、濾過または遠心分離により溶液と生成物とを分離することで、生成物を回収できる。回収した生成物を乾燥させることで、リチウム含有複合酸化物の微粒子からなる粉末を得ることができる。
溶融塩および生成物を含む混合物をイオン交換水の中で攪拌する工程は、生成物から溶融塩成分を流し去る、いわば水洗工程である。しかし、溶融塩法で合成されるリチウム含有複合酸化物はナノオーダーの極微細な粉末である。そのため、十分に水洗を行わなければ、生成物の表面に溶融塩の成分が不純物として残存しやすく、正極活物質としての性能を著しく低下させる要因となる。具体的には、LiOH、LiNO、LiCO等の不純物がリチウム含有複合酸化物粒子の表面を被覆することにより、電気抵抗が上昇すると考えられる。実際に、溶融塩法により合成された従来のリチウム含有複合酸化物は、他の方法により合成されたリチウム含有複合酸化物と比較して、リチウムイオン二次電池の正極活物質に用いた場合の作動電圧が低い。これは、リチウム含有複合酸化物の表面に残存する不純物によるものであると推測される。また、LiCOが残存するリチウム含有複合酸化物をリチウムイオン二次電池の正極活物質に用いた場合、初回充電時にCOガスが発生し、電池の膨張の原因となる。
また、合成されるリチウム含有複合酸化物はアルカリ塩なので、溶融塩ほどではないが、比較的水に溶けやすい。そのため、不純物を十分に除去することを目的として長時間の水洗を行うと、リチウム含有複合酸化物のLiイオン(Li)の一部が水の水素イオン(H)とプロトン交換反応を起こして、リチウム含有複合酸化物のLiが水中に溶け出すことがある。たとえば、目的生成物がLiCoOである場合には、Li1−nCoO(0<n<1)となり、Liの損失を招く。
溶融塩法により合成された従来のリチウム含有複合酸化物がリチウムイオン二次電池の電池特性を低下させる原因は、上記の不純物に因るところが大きいと考えられるが、結晶内部の残留応力もその一因であると考えられる。溶融塩法は、短時間でリチウム含有複合酸化物を合成するため、合成時に結晶内部にひずみが発生しやすい。
本発明は、溶融塩法により合成された従来のリチウム含有複合酸化物が有する上記の問題点を解消することが可能なリチウム含有複合酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、層状岩塩構造に属する結晶構造をもち、リチウム(Li)元素ならびに3価のコバルト(Co)、3価のニッケル(Ni)および3価の鉄(Fe)の少なくとも一種を必須とする一種以上の金属元素を含むリチウム含有複合酸化物の製造方法であって、
前記金属元素を含む金属化合物を含む金属化合物原料を、少なくとも水酸化リチウムを含み、前記リチウム含有複合酸化物に含まれるリチウムの理論組成を超えるモル比のリチウムを含む溶融塩原料を溶融した溶融塩中で反応させる溶融反応工程と、
前記溶融反応工程後の前記溶融塩を冷却する冷却工程と、
前記冷却工程により凝固した前記溶融塩を極性プロトン性溶媒に溶解させて、該溶融塩から該溶融反応工程で生成された前記リチウム含有複合酸化物を分離する分離回収工程と、
前記分離回収工程で回収された前記リチウム含有複合酸化物を酸素含有雰囲気中で400〜800℃に加熱して焼成する焼成工程と、
を経ることを特徴とする。
溶融反応工程において水酸化リチウムを含む溶融塩中で金属化合物原料を反応させることにより、微粒子状のリチウム含有複合酸化物が合成される。これは、溶融塩中でアルカリ融解が起こり、各原料が均一に混合されるためである。特に、溶融塩として水酸化リチウムと硝酸リチウムとの混合溶融塩を用いるのが望ましく、比較的低温(たとえば330℃以上500℃未満)で溶融反応工程を行うことが可能となり、リチウム含有複合酸化物が微粉末で得られやすい。実質的に水酸化リチウムのみを溶融した溶融塩を用いるのであれば、反応温度が高温(たとえば500℃以上)であっても結晶成長は抑制され、一次粒子がナノオーダーの複合酸化物が得られる。
上記のように、微粒子状のリチウム含有複合酸化物が得られる本発明の製造方法では、分離回収工程後に焼成工程を行うことで、二次電池の正極活物質として優れた特性を発揮する生成物の合成が可能となる。
焼成工程においては、リチウム含有複合酸化物に熱が加えられることで、複合酸化物の結晶内に存在する残留応力が除去される。それだけでなく、分離回収工程で完全に除去されずたとえば皮膜となって複合酸化物粒子の表面に残留する不純物が低減されたリチウム含有複合酸化物が得られる。このような不純物は、水酸化リチウム、硝酸リチウムなどの溶融塩原料、LiCO等のリチウム塩からなる副生成物、などから選ばれる一種以上のリチウム化合物を主成分とすると考えられる。リチウム含有複合酸化物に含まれるLiが理論組成よりも少ない場合(Li欠損)には、焼成の熱によりリチウム含有複合酸化物の表面部とリチウム化合物とが反応して、リチウム化合物からLiが補われることでリチウム含有複合酸化物のLi欠損が低減されるとともにリチウム化合物が分解される。つまり、焼成の結果、残留応力が除去され、表面の不純物およびLi欠損が低減されたリチウム含有複合酸化物が得られる。
本発明のリチウム含有複合酸化物の製造方法により残存が抑制される不純物としては、溶融塩原料、副生成物、などのリチウム化合物が挙げられる。これらの不純物は、X線回折(XRD)、電子線回折、発光分光分析(ICP)等により確認可能である。
なお、本発明のリチウム含有複合酸化物の製造方法は、溶融塩法を用いて合成されるリチウム含有複合酸化物の製造方法のいずれにも適用可能である。ほとんどの溶融塩法において、分離回収工程に相当する水洗が行われるためである。ただし、本発明の製造方法により得られるリチウム含有複合酸化物は、Liならびに3価のコバルト(Co)、3価のニッケル(Ni)および3価の鉄(Fe)の少なくとも一種を必須とする一種以上の金属元素を含む複合酸化物であ。たとえば、LiおよびLiを除く一種以上の金属元素を含み結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウム含有複合酸化物が挙げられる。リチウム含有複合酸化物が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物である場合、基本的にMnの平均酸化数は4価であるが、3.8〜4価まで許容される。リチウム含有複合酸化物は、層状岩塩構造に属するリチウムニッケル系酸化物であってもよく、基本的にNiの平均酸化数は3価であるが、2.8〜3価まで許容される。層状岩塩構造に属するリチウム含有複合酸化物にて基本的に3価をとるCoおよびFeについても同様である。
リチウムマンガン系酸化物は、スピネル構造であってもよい。スピネル構造であれば、Mnは3.5〜4価をとり得る。したがって、本発明の製造方法により得られる複合酸化物のMnの平均酸化数は、3.5価以上4価以下さらには3.7価以上4価以下まで許容される。また、リチウムマンガン系酸化物は、層状岩塩構造およびスピネル構造の両結晶構造からなる複合酸化物であってもよい。
また、結晶構造が層状岩塩構造に属する代表的なリチウム含有複合酸化物として、LiCoO、LiNiO、LiFeO、LiMnO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.5、等が挙げられる。これらを組成式で表すのであれば、xLi・(1−x)LiM(0≦x≦1であって、Mは4価のMnを必須とする一種以上の金属元素、Mは3価のCo、3価のNiおよび3価のFeの少なくとも一種を必須とする一種以上の金属元素あるいは4価のMnを必須とする二種以上の金属元素)で表される。ただし、本発明の製造方法により得られるリチウム含有複合酸化物は、これらのうち3価のCo、3価のNiおよび3価のFeの少なくとも一種を必須で含むリチウム含有複合酸化物である。また、スピネル構造に属するリチウムマンガン系酸化物として、LiMn(Mn:3.5価)、LiMn12(Mn:4価)、これらのうちMnの一部が他の金属元素により置換されたものなどが挙げられる。なお、言うまでもなく、不可避的に生じるLi、Mn、M、MまたはOの欠損により、上記組成式からわずかにずれた複合酸化物をも含む。
本発明の複合酸化物の製造方法により得られる複合酸化物は、リチウムイオン二次電池などの二次電池の正極活物質として使用することができる。すなわち、本発明は、本発明の複合酸化物の製造方法により得られた複合酸化物を含むことを特徴とする正極活物質と捉えることもできる。
本発明のリチウム含有複合酸化物の製造方法によれば、合成後のリチウム含有複合酸化物に含まれる残留応力が除去され、表面の不純物およびLi欠損が低減された微細なリチウム含有複合酸化物が得られる。
本発明の参考例であるリチウム含有複合酸化物の製造方法により得られたリチウム含有複合酸化物および比較例の複合酸化物の製造方法により得られたリチウム含有複合酸化物の正極活物質としての特性を比較するグラフであって、サイクル数に対する放電容量維持率を示す。 本発明の参考例であるリチウム含有複合酸化物の製造方法により得られたリチウム含有複合酸化物および比較例の複合酸化物の製造方法により得られたリチウム含有複合酸化物の正極活物質としての特性を比較するグラフであって、2サイクル目の充放電特性を示す。 本発明の参考例であるリチウム含有複合酸化物の製造方法により得られたリチウム含有複合酸化物および比較例の複合酸化物の製造方法により得られたリチウム含有複合酸化物の正極活物質としての特性を比較するグラフであって、サイクル数に対する充電容量および放電容量を示す。
以下に、本発明の複合酸化物の製造方法を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。
<複合酸化物>
以下に、本発明の複合酸化物の製造方法の各工程を説明する。本発明の複合酸化物の製造方法は、LiおよびLiを除く一種以上の金属元素を含むリチウム含有酸化物の製造方法であって、主として、溶融反応工程、分離回収工程および焼成工程を含み、必要に応じて、原料調製工程、前駆体合成工程および/またはプロトン置換工程などを含む。
はじめに、金属化合物原料と溶融塩原料とを調製する原料調製工程を行うとよい。原料調製工程では、金属化合物原料と溶融塩原料とを混合するのが望ましい。この際、金属化合物を粉砕するなどして得られる粉体状の金属化合物原料と溶融塩原料とを混合するとよい。金属化合物原料は、合成する複合酸化物に含まれる金属元素を含む金属化合物を含む。溶融塩原料は、脱水された状態にある水酸化リチウムを含む。
金属化合物原料は、Liを除く一種以上の金属元素を供給する原料である。金属元素を含む金属化合物は、金属化合物原料に必須である。金属化合物に含まれる金属元素の価数に特に限定はない。目的のリチウム含有複合酸化物に含まれる金属元素の価数以下にするのが好ましい。これは、本発明の複合酸化物の製造方法では、溶融塩原料の酸化状態を調整することで、合成されるリチウム含有複合酸化物に含まれる金属元素の価数を調整可能であるためである。たとえば、溶融塩原料全体を100モル%としたとき、水酸化リチウムを50モル%以上含む場合には、高酸化状態の溶融塩中で反応が進むため、たとえば2価や3価のMnであっても4価のMnになる。したがって、溶融塩法に使用される一般的な金属化合物であれば使用可能である。具体的には、Mn供給源であれば、二酸化マンガン(MnO)、三酸化二マンガン(Mn)、一酸化マンガン(MnO)、四三酸化マンガン(Mn)水酸化マンガン(Mn(OH))、オキシ水酸化マンガン(MnOOH)、等が挙げられる。Co供給源であれば、酸化コバルト(CoO、Co)、硝酸コバルト(Co(NO・6HO)、水酸化コバルト(Co(OH))、塩化コバルト(CoCl・6HO)、硫酸コバルト(Co(SO)・7HO)、等が挙げられる。Ni供給源であれば、酸化ニッケル(NiO)、硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO)、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、塩化ニッケル(NiCl・6HO)、等が挙げられる。Fe供給源であれば、水酸化鉄(Fe(OH))、塩化鉄(FeCl・6HO)、酸化鉄(Fe)、硝酸鉄(Fe(NO・9HO)、硫酸鉄(FeSO・9HO)、等が挙げられる。これらの酸化物、水酸化物または金属塩に含まれる金属元素の一部が他の金属元素(たとえば、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Mgなど)で置換された金属化合物であってもよい。なかでも、Mn供給源であればMnO、Co供給源であればCo(OH)、Ni供給源であればNi(OH)、Fe供給源であればFe(OH)、が好ましく、入手が容易であるとともに、比較的高純度のものが入手しやすい。
上記のMn供給源、Co供給源、Ni供給源およびFe供給源の他、さらに必要に応じて、他の金属元素の供給源となる第二の金属化合物を使用してもよい。第二の金属化合物を使用することで、たとえば、4価のMnが他の金属元素、遷移金属元素などの金属元素で置換された複合酸化物を製造することもできる。第二の金属化合物の具体例としては、上記の必須の金属化合物原料に加え、水酸化アルミニウム(Al(OH))、硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)、酸化銅(CuO)、硝酸銅(Cu(NO・3HO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))などが挙げられる。また、これらの金属化合物のAl、CuおよびCaの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。これらのうちの一種あるいは二種以上を第二の金属化合物として用いればよい。
また、金属化合物原料が二種以上の金属元素を含む場合は、それらを含む化合物を前駆体としてあらかじめ合成するとよい。すなわち、原料を調製する前に、少なくとも二種の金属元素を含む水溶液をアルカリ性にして沈殿物を得る前駆体合成工程を行うとよい。水溶液としては、水溶性の無機塩、具体的には金属元素の硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩などを水に溶解し、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水などで水溶液をアルカリ性にすると、前駆体は沈殿物として生成される。合成するリチウム含有複合酸化物がNiを含むリチウムニッケル系複合酸化物である場合には、前駆体を用いた製造方法を採用することで、除去が困難な副生成物(NiO)の生成が抑制されるため好ましい。
溶融塩原料は、少なくとも水酸化リチウムを含む。水酸化リチウムは、無水物(LiOH)を用いても水和物(LiOH・HO)を用いてもよいが、後述の溶融反応工程に供される水酸化リチウムは、脱水された状態にあるのが好ましい。
水酸化リチウムの配合割合に特に限定はなく、どのような構造のリチウム含有複合酸化物を合成したいかによって適宜選択するとよい。たとえば、層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物を合成したい場合には、溶融塩原料全体を100モル%としたとき、50モル%以上の水酸化リチウムを含むとよい。水酸化リチウムは、リチウム塩のうち最も塩基性が高いため、溶融塩の酸化力を高めることを目的としても使用される。したがって、たとえば、結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウム含有複合酸化物を高品質で効率よく製造するには、溶融塩原料に占める水酸化リチウムの割合を、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上とするとよい。一方、スピネル構造に属するリチウムマンガン系酸化物を合成したい場合には、水酸化リチウムとともに硝酸リチウムを含む溶融塩原料を用い、酸化力を低く調整するとよい。
溶融塩原料は、主として水酸化リチウムを含むが、溶融塩の融点を下げるために、その残部に硝酸リチウムを含んでもよい。硝酸リチウムは低融点のリチウム塩であり、製造される複合酸化物に不純物を残存させにくいため、採用される。合成時に高い酸化力を得るためには、溶融塩原料は、硝酸リチウムに対する水酸化リチウムの割合(水酸化リチウム/硝酸リチウム)がモル比で1以上さらには10を越えるように硝酸リチウムおよび水酸化リチウムを含むとよい。硝酸リチウムに対する水酸化リチウムの割合が1を越える、1.25以上さらには1.5以上であれば、溶融塩の酸化力を十分に高めることができ、層状岩塩構造を有するリチウム含有複合酸化物の合成に好適である。溶融塩原料に占める水酸化リチウムの含有割合が多いほど、溶融塩の酸化力は高まる。そのため、実質的に水酸化リチウムのみからなる溶融塩原料を使用してもよい。ただし、溶融塩原料に占める他の成分(たとえば硝酸リチウム)の占める割合が少なくなると、溶融塩の融点は上昇する。一方、スピネル構造に属するリチウムマンガン系酸化物を合成したい場合には、硝酸リチウムに対する水酸化リチウムの割合(水酸化リチウム/硝酸リチウム)がモル比で0.05以上1未満さらには0.1〜0.9さらには0.2〜0.8とするとよい。
また、溶融塩原料の配合割合を変化させることで得られる複合酸化物の粒子径を変化させることも可能である。たとえば、同一温度の溶融塩反応においては水酸化リチウム/硝酸リチウムのモル比が大きくなるほど合成される粒子の粒子径を小さくすることが可能である。また、粒子径については、後述の溶融反応工程での酸素濃度を高くするほど合成される粒子の粒子径を小さくすることが出来る。
上述の通り、溶融塩原料は、水酸化リチウムが上記の含有割合にあることにより所望の複合酸化物の生成に望ましい酸化状態をもたらす。そのため、言うまでもなく、溶融塩原料および金属化合物原料には、水酸化リチウムおよび硝酸リチウム以外の溶融塩の酸化状態に影響するような化合物の使用は避けるのが望ましい。たとえば、過酸化リチウム(Li)は、大気中で不安定であり、強い酸化剤であることから水酸化リチウムの配合割合によって調整される酸化状態を大きく変化させてしまうため望ましくない。
上記の金属化合物原料および溶融塩原料の配合割合は、製造する複合酸化物に含まれるLiおよび金属元素の割合に応じて適宜選択すればよい。敢えて規定するのであれば、溶融塩原料に含まれるリチウム金属に対する金属化合物原料に含まれる金属元素の割合(金属化合物原料の金属元素/溶融塩原料のLi)がモル比で0.01以上0.2以下とするとよい。0.01未満であると、使用する溶融塩原料の量に対して生成する複合酸化物の量が少なくなるため、製造効率の面で望ましくない。また、0.2を超えると金属化合物原料を分散させる溶融塩の量が不足し、溶融塩中で複合酸化物が凝集したり粒成長したりすることがあるため望ましくない。さらに望ましい(金属化合物原料の金属元素/溶融塩原料のLi)割合は、モル比で0.01〜0.3、0.01〜0.1、0.013〜0.05さらには0.015〜0.045である。
また、上記の溶融塩原料の配合割合は、溶融塩原料に含まれるリチウムに対する、目的の複合酸化物に含まれるリチウムの理論組成(複合酸化物のLi/溶融塩原料のLi)で規定することも可能である。溶融塩原料は、リチウムの供給源のみならず、溶融塩の酸化状態を調整する役割を果たす。そのため、溶融塩原料は、製造される複合酸化物に含まれるリチウムの理論組成を超えるリチウムを含む。複合酸化物のLi/溶融塩原料のLiは、モル比で1未満であればよいが、0.01〜0.4が好ましく、さらに好ましくは、0.013〜0.3、0.02〜0.2である。0.01未満であると、使用する溶融塩原料の量に対して生成する複合酸化物の量が少なくなるため、製造効率の面で望ましくない。また、0.4を超えると、金属化合物原料を分散させる溶融塩の量が不足し、溶融塩中で複合酸化物が凝集したり粒成長したりすることがあるため望ましくない。
溶融反応工程に先立ち、少なくとも溶融塩原料を乾燥させる乾燥工程を行うとよい。乾燥工程は、主に、水酸化リチウム一水和物を脱水することを目的とするが、無水水酸化リチウムを用いる場合であっても、他の溶融塩原料および金属化合物原料として吸湿性の高い化合物を使用する場合には、有効である。溶融反応工程において水酸化リチウムを含む溶融塩原料からなる溶融塩中に存在する水は、非常にpHが高くなる。pHの高い水の存在下で溶融反応工程が行われると、その水が坩堝と接触することで、坩堝の種類によっては坩堝の成分が微量ではあるが溶融塩に溶出する可能性がある。乾燥工程では、原料混合物の水分が除去されるため、坩堝の成分の溶出抑制につながる。また、乾燥工程において原料混合物から水分を除去することで、溶融反応工程において水が沸騰して溶融塩が飛散するのを防止できる。乾燥工程は、真空乾燥器を用いるのであれば、80〜150℃で2〜24時間真空乾燥するとよい。
溶融反応工程は、溶融塩原料からなる溶融塩中で反応を行う工程である。溶融反応工程での反応温度は、溶融塩の温度に相当し、溶融塩原料の融点以上である。反応温度は、合成するリチウム含有複合酸化物の構造に応じて適宜選択すればよい。たとえば、スピネル構造のリチウムマンガン系酸化物を合成する場合には、それほど高い反応活性が必要ではないため、300〜550℃程度であればよい。一方、層状岩塩構造のリチウム含有複合酸化物を合成するには、350℃未満では溶融塩の反応活性が十分ではなく層状岩塩構造を有する所望の複合酸化物を高純度で製造することが困難である。また、反応温度が350℃以上であれば、得られる複合酸化物の結晶構造が安定する。したがって、水酸化リチウムと硝酸リチウムとの混合溶融塩であって融点が350℃未満であっても、反応温度は350℃以上とする。好ましい反応温度の下限は、400℃以上、450℃以上、500℃以上さらには550℃以上である。反応温度が高いほど、層状岩塩構造をもつ複合酸化物を選択率よく製造することができ、また、結晶性の高い複合酸化物が得られるが、硝酸リチウムは高温(約600℃)になると激しく分解する。そのため、硝酸リチウムを含む溶融塩原料を使用する場合には、500℃以下であれば比較的安定した条件の下で複合酸化物の合成を行うことができる。この反応温度で30分以上さらに望ましくは1〜6時間保持すれば、溶融塩および金属化合物は十分に反応する。また、溶融反応工程を酸素含有雰囲気、たとえば大気中、酸素ガスおよび/またはオゾンガスを含む雰囲気中で行うと、層状岩塩構造を有するリチウム含有複合酸化物が単相で得られやすい。酸素ガスを含有する雰囲気であれば、酸素ガス濃度を20〜100体積%さらには50〜100体積%とするのがよい。なお、酸素濃度を高くするほど、合成される複合酸化物の粒子径は小さくなる傾向にある。
冷却工程は、溶融反応工程後の溶融塩を冷却する工程である。冷却工程では、反応終了後の高温の溶融塩を、加熱炉の中に放置して炉冷してもよいし、加熱炉から取り出して室温にて空冷してもよい。冷却により溶融塩は凝固するため、冷却工程後には、合成されたリチウム含有複合酸化物と溶融塩との混合物が固形物で得られる。
分離回収工程は、上記の混合物のうち、凝固した溶融塩を少なくとも極性プロトン性溶媒に溶解させる工程である。この工程により、溶融反応工程で生成された前記リチウム含有複合酸化物は、溶融塩から分離される。極性プロトン性溶媒は、凝固した溶融塩(つまり水酸化リチウムなどの溶融塩原料)を溶解することができるため本工程に採用されるが、プロトン供与性をもつ溶媒であるため、リチウム含有複合酸化物にLi欠損が生じやすい。しかし、プロトン性溶媒は、非プロトン性溶媒に比べてイオンを安定化させる効果があるので、電解質である水酸化リチウムを溶解するのに適しているため、本工程に好適である。極性プロトン性溶媒の具体例としては、イオン交換水などの純水、エタノールなどのアルコール類、等が挙げられ、これらのうちの一種を単独、二種以上を混合して使用してもよい。凝固した溶融塩は極性プロトン性溶媒に容易に溶解し、極性プロトン性溶媒に溶解しにくいリチウム含有複合酸化物は溶媒中に溶け残る。そのため、溶融塩とリチウム含有複合酸化物とは、容易に分離される。リチウム含有複合酸化物の回収方法に特に限定はないが、溶液を遠心分離したり濾過したりして、回収可能である。回収後のリチウム含有複合酸化物を乾燥させてもよい。
また、分離回収工程の後に、複合酸化物のLiの一部を水素(H)に置換するプロトン置換工程を行ってもよい。プロトン置換工程では、回収工程後の複合酸化物を希釈した酸などの溶媒に接触させることで、Liの一部が容易にHに置換する。ただし、プロトン置換工程は、複合酸化物のLiサイトにHが存在するようにLiとHとの置換を積極的に行う工程であり、分離回収工程で複合酸化物に生じる前述のLi欠損とは異なる。
焼成工程は、分離回収工程で回収されたリチウム含有複合酸化物を焼成する工程である。焼成温度は、400〜800℃さらには400〜700℃が望ましい。焼成温度が400℃以上であれば、リチウム含有複合酸化物の正極活物質としての特性の向上が期待できる。しかし、焼成温度が700℃を越えると、凝集が生じるため、望ましくない。この焼成温度で20分以上さらには0.5〜6時間保持するのが望ましい。
焼成は、酸素含有雰囲気中で行われる。焼成工程は、酸素含有雰囲気、たとえば大気中、酸素ガスおよび/またはオゾンガスを含むガス雰囲気中で行うのがよい。酸素ガスを含有する雰囲気であれば、酸素ガス濃度を20〜100体積%さらには50〜100体積%とするのがよい。スピネル構造をもつリチウムマンガン系酸化物をこのような雰囲気中で焼成すると、4価のMnを多く含むスピネル構造化合物が得られる。
本発明の複合酸化物の製造方法によれば、単結晶性の一次粒子を含む複合酸化物が得られる。一次粒子がほぼ単結晶であることは、透過型電子顕微鏡(TEM)の高分解能像により確認することができる。また、得られる複合酸化物は非常に微細であり、複合酸化物の一次粒子の粒径は、5μm以下さらには200〜500nmであるとよい。粒径は、TEMの高分解能像を用いて測定可能である。一次粒子径は、小さい方が活性化されやすいが、小さすぎると、充放電により結晶構造が崩れやすくなり、電池特性が低下することがあるため好ましくない。
本発明の複合酸化物の製造方法により得られるリチウム含有複合酸化物の同定は、X線回折(XRD)、電子線回折、発光分光分析(ICP)などにより可能である。また、高分解能の透過電子顕微鏡(TEM)を用いた高分解能像では、層状構造を観察可能である。
層状岩塩構造に属する結晶構造をもつリチウム含有複合酸化物を組成式で表すのであれば、xLi・(1−x)LiM(0≦x≦1であって、Mは4価のMnを必須とする一種以上の金属元素、Mは3価のCo、3価のNiおよび3価のFeの少なくとも一種を必須とする一種以上の金属元素あるいは4価のMnを必須とする二種以上の金属元素)である。ただし、本発明の製造方法により得られるリチウム含有複合酸化物は、これらのうち3価のCo、3価のNiおよび3価のFeの少なくとも一種を必須で含むリチウム含有複合酸化物である。なお、Liは、原子比で60%以下さらには45%以下がHに置換されてもよい。また、Mはほとんどが4価のMnであるのが好ましいが、50%未満さらには80%未満が他の金属元素で置換されていてもよい。Mはほとんどが3価のCo、3価のNiまたは3価のFeであるのが好ましいが、50%未満さらには80%未満が他の金属元素で置換されていてもよい。置換元素としては、電極材料とした場合の充放電可能な容量の観点から、Ni、Al、Co、Fe、Mg、Tiから選ばれる少なくとも一種の金属元素が好ましい。なお、言うまでもなく、不可避的に生じるLi、M、MまたはOの欠損により、上記組成式からわずかにずれた複合酸化物をも含む。
なお、本発明の複合酸化物の製造方法により得られるリチウム含有複合酸化物を組成式で具体的に表すのであれば、組成式:Li1.33―y 0.67−z y+z(Mは4価のMnを必須とする一種以上の金属元素、Mは3価のCo、3価のNiおよび3価のFeの少なくとも一種を必須とする一種以上の金属元素あるいは4価のMnを必須とする二種以上の金属元素、0≦y≦0.33、0≦z≦0.67)とも表される。いずれの表記方法であっても、同じ組成物を表す。ただし、本発明の製造方法により得られるリチウム含有複合酸化物は、これらのうち3価のCo、3価のNiおよび3価のFeの少なくとも一種を必須で含むリチウム含有複合酸化物である。
さらに具体的には、LiCoO、LiNioO、LiFeO、LiMnO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.5、または、これらのうちの二種以上を含む固溶体、これらのうち一種以上とLiMnおよび/またはLiMn12との固溶体、などが挙げられる。前述の通り、これらを基本組成とすればよく、Mn、Fe、CoおよびNiの一部は、他の金属元素で置換されていてもよい。また、不可避的に生じる金属元素または酸素の欠損により、上記組成式から僅かに外れていてもよい。
<二次電池>
本発明の複合酸化物の製造方法により得られた複合酸化物は、非水電解質二次電池のような二次電池、たとえばリチウムイオン二次電池用正極活物質として用いることができる。以下に、上記複合酸化物を含む正極活物質を用いた非水電解質二次電池を説明する。非水電解質二次電池は、主として、正極、負極および非水電解質を備える。また、一般の非水電解質二次電池と同様に、正極と負極の間に挟装されるセパレータを備える。
正極は、リチウムイオンを挿入・脱離可能な正極活物質と、正極活物質を結着する結着剤と、を含む。さらに、導電助材を含んでもよい。正極活物質は、上記の複合酸化物を単独、あるいは上記の複合酸化物とともに、一般の非水電解質二次電池に用いられる一種以上の他の正極活物質を含んでもよい。
また、結着剤および導電助材にも特に限定はなく、一般の非水電解質二次電池で使用可能なものであればよい。導電助材は、電極の電気伝導性を確保するためのものであり、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛などの炭素物質粉状体の1種または2種以上を混合したものを用いることができる。結着剤は、正極活物質および導電助材を繋ぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂などを用いることができる。
正極に対向させる負極は、負極活物質である金属リチウムをシート状にして、あるいはシート状にしたものをニッケル、ステンレス等の集電体網に圧着して形成することができる。金属リチウムのかわりに、リチウム合金またはリチウム化合物をも用いることができる。また、正極同様、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質と結着剤とからなる負極を使用してもよい。負極活物質としては、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。結着剤としては、正極同様、含フッ素樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
正極および負極は、少なくとも正極活物質または負極活物質が結着剤で結着されてなる活物質層が、集電体に付着してなるのが一般的である。そのため、正極および負極は、活物質および結着剤、必要に応じて導電助材を含む電極合材層形成用組成物を調製し、さらに適当な溶剤を加えてペースト状にしてから集電体の表面に塗布後、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成することができる。
集電体は、金属製のメッシュや金属箔を用いることができる。集電体としては、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅などの金属材料または導電性樹脂からなる多孔性または無孔の導電性基板が挙げられる。多孔性導電性基板としては、たとえば、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布などの繊維群成形体、などが挙げられる。無孔の導電性基板としては、たとえば、箔、シート、フィルムなどが挙げられる。電極合材層形成用組成物の塗布方法としては、ドクターブレード、バーコーターなどの従来から公知の方法を用いればよい。
粘度調整のための溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
電解質としては、有機溶媒に電解質を溶解させた有機溶媒系の電解液や、電解液をポリマー中に保持させたポリマー電解質などを用いることができる。その電解液あるいはポリマー電解質に含まれる有機溶媒は特に限定されるものではないが、負荷特性の点からは鎖状エステルを含んでいることが好ましい。そのような鎖状エステルとしては、たとえば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートに代表される鎖状のカーボネートや、酢酸エチル、プロピロン酸メチルなどの有機溶媒が挙げられる。これらの鎖状エステルは、単独でもあるいは2種以上を混合して用いてもよく、特に、低温特性の改善のためには、上記鎖状エステルが全有機溶媒中の50体積%以上を占めることが好ましく、特に鎖状エステルが全有機溶媒中の65体積%以上を占めることが好ましい。
ただし、有機溶媒としては、上記鎖状エステルのみで構成するよりも、放電容量の向上をはかるために、上記鎖状エステルに誘導率の高い(誘導率:30以上)エステルを混合して用いることが好ましい。このようなエステルの具体例としては、たとえば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートに代表される環状のカーボネートや、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールサルファイトなどが挙げられ、特にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状構造のエステルが好ましい。そのような誘電率の高いエステルは、放電容量の点から、全有機溶媒中10体積%以上、特に20体積%以上含有されることが好ましい。また、負荷特性の点からは、40体積%以下が好ましく、30体積%以下がより好ましい。
有機溶媒に溶解させる電解質としては、たとえば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiCnF2n+1SO(n≧2)などが単独でまたは2種以上混合して用いられる。中でも、良好な充放電特性が得られるLiPFやLiCSOなどが好ましく用いられる。
電解液中における電解質の濃度は、特に限定されるものではないが、0.3〜1.7mol/dm、特に0.4〜1.5mol/dm程度が好ましい。
また、電池の安全性や貯蔵特性を向上させるために、非水電解液に芳香族化合物を含有させてもよい。芳香族化合物としては、シクロヘキシルベンゼンやt−ブチルベンゼンなどのアルキル基を有するベンゼン類、ビフェニル、あるいはフルオロベンゼン類が好ましく用いられる。
セパレータとしては、強度が充分でしかも電解液を多く保持できるものがよく、そのような観点から、5〜50μmの厚さで、ポリプロピレン製、ポリエチレン製、プロピレンとエチレンとの共重合体などポリオレフィン製の微孔性フィルムや不織布などが好ましく用いられる。特に、5〜20μmと薄いセパレータを用いた場合には、充放電サイクルや高温貯蔵などにおいて電池の特性が劣化しやすく、安全性も低下するが、上記の複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は安定性と安全性に優れているため、このような薄いセパレータを用いても安定して電池を機能させることができる。
以上の構成要素によって構成される非水電解質二次電池の形状は円筒型、積層型、コイン型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極と負極との間にセパレータを挟装させ電極体とする。そして正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を集電用リードなどで接続し、この電極体に上記電解液を含浸させ電池ケースに密閉し、非水電解質二次電池が完成する。
特に、本発明の製造方法により得られる複合酸化物のうち4価のMnを含む複合酸化物を正極活物質として使用する非水電解質二次電池であれば、はじめに充電を行い、正極活物質を活性化させる。ただし、上記の複合酸化物を正極活物質として用いる場合には、初回の充電時にリチウムイオンが放出されるとともに酸素が発生する。そのため、電池ケースを密閉する前に充電を行うのが望ましい。
以上説明した本発明の製造方法により得られる複合酸化物を用いた二次電池は、携帯電話、パソコン等の通信機器、情報関連機器の分野の他、自動車の分野においても好適に利用できる。たとえば、この二次電池を車両に搭載すれば、二次電池を電気自動車用の電源として使用できる。
以上、本発明の複合酸化物の製造方法、さらには二次電池の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、本発明の複合酸化物の製造方法の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
<比較例1:LiMnOの合成>
溶融塩原料として0.20molの水酸化リチウム(LiOH・HO、8.4g)と、金属化合物原料として0.010molの二酸化マンガン(MnO、0.87g)と、を混合して原料混合物を調製した。このとき、目的生成物がLiMnOであることから、二酸化マンガンのMnが全てLiMnOに供給されたと仮定して、(目的生成物のLi量)/(溶融塩原料のLi量)は、0.020mol/0.2mol=0.1であった。
原料混合物を坩堝に入れて、真空乾燥容器にて120℃で12時間真空乾燥した。その後、乾燥機を大気圧に戻し、原料混合物の入った坩堝を取り出し、直ちに700℃の電気炉に移し、700℃の電気炉内で1時間加熱した。このとき、坩堝の中の原料混合物は融解して溶融塩となり、茶色の生成物が沈殿していた。
次に、溶融塩の入った坩堝を電気炉から取り出して、室温にて冷却した。溶融塩が十分に冷却されて固体化した後、坩堝ごと200mLのイオン交換水に浸し、攪拌することで、固体化した溶融塩を水に溶解した。生成物は水に不溶性であるため、水は茶色の懸濁液となった。茶色の懸濁液を濾過すると、透明な濾液と、濾紙上に茶色固体の濾物と、が得られた。
得られた濾物をさらにアセトンを用いて十分に洗浄しながら濾過した。洗浄後の茶色固体を120℃で12時間、真空乾燥した後、乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、茶色粉末を得た。
得られた茶色粉末について、発光分光分析(ICP)および酸化還元滴定によるMnの平均価数分析をおこなった。その結果、組成はLiMnOであると確認された。また、得られた茶色粉末についてCuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った結果、茶色粉末はLiMnOとともにLiOHを含むことがわかった。
なお、Mnの価数評価は、次のように行った。0.05gの試料を三角フラスコに取り、シュウ酸ナトリウム溶液(1%)40mLを正確に加え、さらにHSOを50mL加えて窒素ガス雰囲気中90℃水浴中で試料を溶解した。この溶液に、過マンガン酸カリウム(0.1N)を滴定し、微紅色にかわる終点(滴定量:V1)まで行った。別のフラスコに、シュウ酸ナトリウム溶液(1%)20mLを正確に取り、上記と同様に過マンガン酸カリウム(0.1N)を終点まで滴定した(滴定量:V2)。V1およびV2から下記の式により、高価数のMnがMn2+に還元された時のシュウ酸の消費量を酸素量(活性酸素量)として算出した。
活性酸素量(%)={(2×V2−V1)×0.00080/試料量}×100
上記の式において、V1およびV2の単位はmL、試料量の単位はgである。そして、試料中のMn量(ICP測定値)と活性酸素量からMnの平均価数を算出した。
参考例1:LiMnOの焼成>
比較例1で得られた茶色粉末(LiMnO)を坩堝に入れ、700℃の電気炉内で6時間加熱し、茶色粉末を焼成した。
焼成後の茶色粉末についてCuKα線を用いたXRD測定を行った結果、LiMnOの存在を示すピークが検出されたが、不純物の存在を示すピークは検出されなかった。また、ICPおよびMnの平均価数分析を行った結果、得られた茶色粉末はLiMnOであって、Li量が理論組成から不足していないことがわかった。
<評価1>
参考例1または比較例1で得られた複合酸化物LiMnOをそれぞれ正極活物質として用い、二種類の二次電池を作製した。
いずれかの複合酸化物、導電助剤としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を質量比で50:40:10の割合で混合した。次いで、この混合物を集電体であるアルミニウムメッシュに圧着した。その後、120℃で12時間以上真空乾燥し、電極(正極:φ14mm)とした。正極に対向させる負極は、金属リチウム(φ14mm、厚さ400μm)とした。
正極および負極の間にセパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを挟装して電極体電池とした。この電極体電池を電池ケース(宝泉株式会社製CR2032コインセル)に収容した。また、電池ケースには、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを1:2(体積比)で混合した混合溶媒にLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解した非水電解質を注入して、二次電池を得た。
作製した二次電池を用いて室温において充放電試験を行った。充電は0.2Cのレートで4.6Vまで定電流充電を行い、その後0.02Cの電流値まで4.6V一定電圧で充電を行った。放電は2.0Vまで0.2Cのレートで行った。各サイクルでの放電容量を容量維持率(各サイクルでの放電容量/1サイクル目の放電容量)に換算して図1に示した。また、2サイクル目の充放電特性を図2に示した。
容量維持率は、正極活物質として参考例1の複合酸化物を用いた二次電池では、正極活物質として比較例1の複合酸化物を用いた二次電池よりも高かった。また、図2において両者の放電電圧を比較すると、正極活物質として参考例1の複合酸化物を用いた二次電池の放電電圧は高かった。参考例1と比較例1との違いは、複合酸化物を合成後の焼成の有無のみであるため、焼成を施すことで、二次電池としての特性が大きく向上することがわかった。これは、焼成により、比較例1の生成物に不純物として含まれたLiOHが分解されたこと、および、分解反応に伴い複合酸化物のLi欠損が補われたことを示唆する結果であった。
<比較例2:0.5(LiMnO)・0.5(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3)の合成>
溶融塩原料として0.30molの水酸化リチウム(LiOH・HO、12.6g)と、金属化合物原料として前駆体(1.0g)と、を混合して原料混合物を調製した。以下に、前駆体の合成手順を説明する。
0.268molのMn(NO・6HO(76.93g)と0.064molのCo(NO・6HO(18.63g)と0.064molのNi(NO・6HO(18.61g)とを500mLの蒸留水に溶解させて金属塩含有水溶液を作製した。この水溶液を氷浴中でスターラーを用いて撹拌しながら、50g(1.2mol)のLiOH・HOを300mLの蒸留水に溶解させたものを2時間かけて滴下して水溶液をアルカリ性とし、金属化合物の沈殿を析出させた。この沈殿溶液を5℃に保持したまま酸素雰囲気下で1日熟成を行った。得られた沈殿物を濾過、蒸留水を用いて洗浄することによりMn:Co:Ni=0.67:0.16:0.16の前駆体を得た。
なお、得られた前駆体は、XRD測定により、Mn、CoおよびNiOの混合相からなることが確認された。そのため、この前駆体1gの遷移金属酸化物含有量は0.013molである。このとき、前駆体の遷移金属が全て目的生成物に供給されたと仮定して、(目的生成物のLi)/(溶融塩原料のLi)は、0.0195mol/0.3mol=0.065であった。
原料混合物を坩堝にいれて、500℃にした電気炉に移し、大気中500℃で4時間加熱した。このとき原料混合物は融解して溶融塩となり、黒色の生成物が沈殿していた。
次に、溶融塩の入った坩堝を電気炉から取り出し、大気中で室温にて冷却した。溶融塩が十分に冷却されて固体化した後、坩堝ごと200mLのイオン交換水に浸し、攪拌することで、固体化した溶融塩を水に溶解した。黒色の生成物は水に不溶性であるため、水は黒色の懸濁液となった。黒色の懸濁液を濾過すると、透明な濾液と、濾紙上に黒色固体の濾物と、が得られた。得られた濾物をさらにイオン交換水を用いて十分に洗浄しながら濾過した。洗浄後の黒色固体を120℃で6時間、真空乾燥した後、乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。
得られた黒色粉末についてCuKα線を用いたXRD測定を行った。XRDによれば、得られた化合物は層状岩塩構造であることがわかった。また、ICPおよびMnの平均価数分析によれば、組成は0.5(LiMnO)・0.5(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3)であると確認された。
<実施例:0.5(LiMnO)・0.5(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3)の焼成>
比較例2で得られた0.5(LiMnO)・0.5(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3)を電気炉にて、純酸素100体積%の酸素雰囲気中700℃で6時間熱処理(焼成)した。
<評価2>
実施例または比較例2で得られた複合酸化物、0.5(LiMnO)・0.5(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3)をそれぞれ正極活物質として用い、二種類の二次電池を作製した。
いずれかの複合酸化物、導電助剤としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を質量比で50:40:10の割合で混合した。次いで、この混合物を集電体であるアルミニウムメッシュに圧着した。その後、120℃で12時間以上真空乾燥し、電極(正極:φ14mm)とした。正極に対向させる負極は、金属リチウム(φ14mm、厚さ400μm)とした。
正極および負極の間にセパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを挟装して電極体電池とした。この電極体電池を電池ケース(宝泉株式会社製CR2032コインセル)に収容した。また、電池ケースには、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを1:2(体積比)で混合した混合溶媒にLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解した非水電解質を注入して、二次電池を得た。
作製した二次電池を用いて室温において充放電試験を行った。充電は0.2Cのレートで4.5Vまで定電流充電を行い、その後0.02Cの電流値まで4.5V一定電圧で充電を行った。放電は2.0Vまで0.2Cのレートで行った。
初回放電容量は、正極活物質として比較例2の複合酸化物を用いた二次電池では、217mAh/g、正極活物質として実施例の複合酸化物を用いた二次電池では、240mAh/g、であった。実施例と比較例2との違いは、複合酸化物を合成後の焼成の有無のみであるため、焼成を施すことで、二次電池としての特性が大きく向上することがわかった。これは、焼成により、比較例2の複合酸化物のLi欠損が補われたことを示唆する結果であった。
<比較例3:LiMnOの合成>
0.15molの水酸化リチウム(LiOH・HO、6.3g)と0.10molの硝酸リチウム(LiNO、6.9g)とを混合して溶融塩原料を調製した。ここに金属化合物原料として0.010molの二酸化マンガン(MnO、0.87g)を加えて、原料混合物を調製した。このとき、目的生成物がLiMnOであることから、二酸化マンガンのMnが全てLiMnOに供給されたと仮定して、(目的生成物のLi/溶融塩原料のLi)は、0.02mol/0.25mol=0.08であった。
原料混合物をムライト製坩堝にいれて、真空乾燥器にて120℃で12時間真空乾燥した。その後、乾燥器を大気圧に戻し、原料混合物の入った坩堝を取り出し、直ちに350℃に熱せられた電気炉に移し、酸素雰囲気(酸素ガス濃度100%)中350℃で2時間加熱した。このとき原料混合物は融解して溶融塩となり、黒色の生成物が沈殿していた。
次に、溶融塩の入った坩堝を電気炉から取り出し、室温にて冷却した。溶融塩が十分に冷却されて固体化した後、坩堝ごと200mLのイオン交換水に浸し、攪拌することで、固体化した溶融塩を水に溶解した。黒色の生成物は水に不溶性であるため、水は黒色の懸濁液となった。黒色の懸濁液を濾過すると、透明な濾液と、濾紙上に黒色固体の濾物と、が得られた。得られた濾物をさらにイオン交換水を用いて十分に洗浄しながら濾過した。洗浄後の黒色固体を120℃で6時間、真空乾燥した後、乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。
得られた黒色粉末について、ICPおよび酸化還元滴定によるMnの平均価数分析をおこなった。その結果、組成はLiMnOであると確認された。また、得られた黒色粉末についてCuKα線を用いたXRD測定を行った結果、黒色粉末はLiMnOとともにLiOHを含むことがわかった。
参考:LiMnOの焼成>
比較例3で得られた黒色粉末を坩堝に入れ、400℃の電気炉内で1時間加熱した。
焼成後の黒色粉末についてCuKα線を用いたXRD測定を行った結果、LiMnOの存在を示すピークが検出されたが、不純物の存在を示すピークは検出されなかった。また、ICPおよびMnの平均価数分析を行った結果、得られた黒色粉末はLiMnOであって、Li量が理論組成から不足していないことがわかった。
<評価3>
参考または比較例3で得られた複合酸化物LiMnOをそれぞれ正極活物質として用い、二種類の二次電池を作製した。
正極活物質として90質量部のLiMnO、導電助剤として5質量部のカーボンブラック(KB)、結着剤(バインダー)として5質量部のポリフッ化ビニリデン、を混合し、N−メチル−2−ピロリドンを溶剤として分散させ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーを集電体であるアルミニウム箔上に塗布して乾燥させた。その後、厚さ60μmに圧延し、直径11mmφのサイズで打ち抜き、正極を得た。また、正極に対向させる負極は、金属リチウム(φ14mm、厚さ200μm)とした。
正極および負極の間にセパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを挟装して電極体電池とした。この電極体電池を電池ケース(宝泉株式会社製CR2032コインセル)に収容した。また、電池ケースには、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した混合溶媒にLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解した非水電解質を注入した。こうして、正極活物質の異なる二種類の二次電池を得た。
二種類の二次電池について、室温にて充放電試験を50サイクル行った。充放電試験は、0.2Cで4.6VまでCCCV充電(定電流定電圧充電)を行い正極活物質を活性化させた後、0.2Cで2.0VまでCC放電を行った。2サイクル目以降は、0.2Cで4.6VまでCCCV充電(定電流定電圧充電)を行い、0.2Cで2.0VまでCC放電を行う充放電を、繰り返し行った。なお、定電圧充電の終止条件は0.02Cの電流値とした。
上記のリチウムイオン二次電池の各サイクルでの充放電容量を図3に示した。参考で得られた複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、50サイクルの充放電後も、初期の容量を維持することができ、6サイクル目以降からは容量の低下がほとんど見られなかった。参考と比較例3との違いは、複合酸化物を合成後の焼成の有無のみであるため、焼成を施すことで、二次電池としての特性が大きく向上することがわかった。これは、焼成により、比較例3の生成物に不純物として含まれたLiOHが分解されたこと、および、分解反応に伴い複合酸化物のLi欠損が補われたことを示唆する結果であった。

Claims (10)

  1. 層状岩塩構造に属する結晶構造をもち、リチウム(Li)元素ならびに3価のコバルト(Co)、3価のニッケル(Ni)および3価の鉄(Fe)の少なくとも一種を必須とする一種以上の金属元素を含むリチウム含有複合酸化物の製造方法であって、
    前記金属元素を含む金属化合物を含む金属化合物原料を、少なくとも水酸化リチウムを含み、前記リチウム含有複合酸化物に含まれるリチウムの理論組成を超えるモル比のリチウムを含む溶融塩原料を溶融した溶融塩中で反応させる溶融反応工程と、
    前記溶融反応工程後の前記溶融塩を冷却する冷却工程と、
    前記冷却工程により凝固した前記溶融塩を極性プロトン性溶媒に溶解させて、該溶融塩から該溶融反応工程で生成された前記リチウム含有複合酸化物を分離する分離回収工程と、
    前記分離回収工程で回収された前記リチウム含有複合酸化物を酸素含有雰囲気中で400〜800℃に加熱して焼成する焼成工程と、
    を経ることを特徴とするリチウム含有複合酸化物の製造方法。
  2. 前記焼成工程は、前記酸素含有雰囲気の酸素ガス濃度を20〜100体積%として行う請求項1に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
  3. 前記溶融反応工程は、前記溶融塩原料全体を100モル%としたとき、前記水酸化リチウムが50モル%以上となるように調製された該溶融塩原料の溶融塩中で前記金属化合物原料を該溶融塩原料の融点以上の反応温度で反応させる工程である、請求項1または2に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
  4. 前記溶融反応工程は、前記溶融塩原料全体を100モル%としたとき、前記水酸化リチウムが90モル%以上となるように調製された該溶融塩原料の溶融塩中で前記金属化合物原料を500℃以上の反応温度で反応させる工程である、請求項に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
  5. 前記溶融塩原料は、水酸化リチウムおよび硝酸リチウムを含む請求項1〜のいずれかに記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
  6. 前記溶融塩原料は、硝酸リチウムに対する水酸化リチウムの割合(水酸化リチウム/硝酸リチウム)がモル比で1を越えるように硝酸リチウムおよび水酸化リチウムを含む請求項に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
  7. さらに、4価のマンガン(Mn)を必須の前記金属元素として含む請求項1〜6のいずれかに記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法により得られたリチウム含有複合酸化物を含むことを特徴とする正極活物質。
  9. 請求項に記載の正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質と、を備えることを特徴とする二次電池。
  10. 請求項に記載の二次電池を搭載したことを特徴とする車両。
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