JP5828289B2 - 複合酸化物の製造方法、二次電池用正極活物質および二次電池 - Google Patents

複合酸化物の製造方法、二次電池用正極活物質および二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池等の正極材料として使用される複合酸化物の製造方法に関するものである。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、小型軽量でかつ高容量の二次電池が必要とされている。現在、この要求に応える高容量二次電池としては、正極材料としてコバルト酸リチウム(LiCoO)、負極材料として炭素系材料、を用いたリチウムイオン二次電池が商品化されている。このようなリチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高く、小型化および軽量化が図れることから、幅広い分野で電源としての使用が注目されている。しかしながら、LiCoOは希少金属であるCoを原料として製造されるため、今後、資源不足が深刻化すると予想される。さらに、Coは高価であり、価格変動も大きいため、安価で供給の安定している正極材料の開発が望まれている。
そこで、構成元素の価格が安価で、供給が安定しているマンガン(Mn)を基本組成に含むリチウムマンガン酸化物系の複合酸化物の使用が有望視されている。その中でも、4価のマンガンイオンのみを含み、充放電の際にマンガン溶出の原因となる3価のマンガンイオンを含まないLiMnOという物質が注目されている。LiMnOは、今まで充放電不可能と考えられてきたが、最近の研究では4.8Vまで充電することにより充放電可能なことが見出されてきている。しかしながらLiMnOは内部抵抗が高く、LiMnOのみでは十分な容量を引き出せず、さらなる改善が必要であった。
電池特性の改善のため、LiMnOとLiMtO(Mtは遷移金属元素)との固溶体であるxLiMnO・(1−x)LiMtO(0<x≦1)の開発が盛んである。なお、LiMnOは、一般式Li(Li0.33Mn0.67)Oとも書き表すことが可能であり、LiMtOと同じ結晶構造に属するとされている。そのため、xLiMnO・(1−x)LiMtOは、Li1.33―yMn0.67−zMty+z(0≦y<0.33、0≦z<0.67)とも記載される場合がある。いずれの記載方法であっても同様の結晶構造をもつ複合酸化物を示す。
たとえば、特許文献1では、xLiMnO・(1−x)LiMtO(0≦x≦1)を溶融塩法により合成する。実施例4には、0.3モルの水酸化リチウムと0.1モルの硝酸リチウムとを溶融させた450℃の溶融塩と、Co、NiおよびMnを原子比でMn:Co:Ni=4:1:1含む前駆体と、を反応させることにより、0.5(LiMnO)・0.5(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3)が得られることが記載されている。こうした固溶体は、電池特性の改善の観点から有用である。しかし、固溶体に占めるLiMnOの割合が過剰となると、抵抗上昇や容量減少の問題が生じる。また、実施例7には、0.15モルの水酸化リチウムと0.15モルの硝酸リチウムとを溶融させた450℃の溶融塩と、Mn:Co:Ni=1:1:1の原子比で含む前駆体と、を反応させることにより、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3が得られることが記載されている。
国際公開第2011/078389号
特許文献1に具体的に開示されている合成方法は、LiMnOを含む複合酸化物を得ることを目的としている。そのため、LiMnOを含まないLiCo1/3Ni1/3Mn1/3のような複合酸化物を製造する場合には、特許文献1に記載の方法では、副生成物としてLiMnOが生成されやすいことがわかった。しかし上述のように、LiMnOは抵抗上昇や容量減少の原因となるので、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3を目的生成物とする場合には、LiMnOの生成をできるだけ抑制したいという要望がある。
本発明は、上記の問題点に鑑み、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3に代表される、LiMeO(0.95≦n≦1.05、MeはMnを必須としCo、MnおよびNiから選ばれる二種以上の金属元素)を基本組成とし結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系複合酸化物の合成において、LiMnOの生成を抑制することが可能な新規の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、MnとともにNiやCoを含むリチウムマンガン系複合酸化物を溶融塩中で合成する際に、LiMnOが生成されやすい理由を次のように考えた。
溶融塩法では、水酸化リチウム等を含む溶融塩原料を用いるが、水酸化リチウム等の溶融塩にMnが溶解すると、溶融塩の酸化力が強くなると推察される。酸化力の強い溶融塩中では、LiMnOが生成されやすい。すなわち、Mnの溶解量が少ない程、溶融塩の酸化力は低減する。酸化力の弱い溶融塩中では、LiMnOが生成されにくくなる。
つまり、本発明者等は、LiMnOの生成を抑制するためには、Mnが溶融塩へ溶解し難い条件とし、溶融塩の反応性を低減させてリチウムマンガン系複合酸化物を合成する必要があることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、LiMeO(0.95≦n≦1.05、MeはMnを必須としCo、MnおよびNiから選ばれる二種以上の金属元素)を基本組成とし結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系複合酸化物を主生成物とする複合酸化物の製造方法であって、
少なくとも、前記金属元素を含む金属含有原料と、水酸化リチウムを含み他の化合物を実質的に含まず目的の前記複合酸化物に含まれるLiの理論組成を超えるLiを含む溶融塩原料と、を477℃以上577℃以下で反応させる溶融反応工程と、
前記溶融反応工程にて生成された前記複合酸化物を回収する回収工程と、
を経て前記複合酸化物を得ることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、溶融反応工程における反応温度を融点(Tmp℃とする)以上(Tmp+100)℃以下とする、すなわち水酸化リチウムの融点477℃以上577℃以下とすることで、溶融塩の反応性が低減される。これは、反応温度を融点付近とすることで、溶融塩へのMnの溶解が抑制されるためである。その結果、LiMeO合成時のLiMnOの生成が抑制される。
融塩の温度が低い場合には金属元素の溶解度はそもそも低いため、溶融塩にMnが溶解してもその溶解量は少なく、溶融塩の反応性への影響は大きくない。しかし、溶融塩の温度が高いほど、金属元素は溶融塩中に溶解しやすくなる。つまりMnが溶融塩に溶解しやすくなり、溶融塩の反応性は高まり、LiMnOが生成されやすくなる。しかし、反応温度を(Tmp+100)℃以内にすることで、LiMnOの生成が効果的に抑制される。
なかでも、水酸化リチウムの溶融塩は、高酸化状態で反応活性が非常に高い。つまり、LiMnOが最も生成されやすい状況にある。したがって、水酸化リチウムを含む溶融塩原料を用いてのLiMeOの合成には、本発明の製造方法が特に好適である。
本発明の複合酸化物の製造方法における溶融反応工程の前に、少なくとも二種の前記金属元素を含む溶液から沈殿物を得る前駆体調製工程を行い、該溶融反応工程にて該沈殿物を含む前記金属含有原料を使用するのが望ましい。金属含有原料として沈殿物を用いることで、目的のリチウムマンガン系複合酸化物が高純度で得られる。
本発明の複合酸化物の製造方法によれば、上記のごとく、LiMeO(0.95≦n≦1.05、MeはMnを必須としCo、MnおよびNiから選ばれる二種以上の金属元素)を基本組成とし結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系複合酸化物が得られる。「基本組成とする」とは、その組成式で表される組成のものだけでなく、結晶構造における各サイトの一部を他の元素で置換したものも含むことを意味する。さらに、化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損等して化学量論組成から僅かにずれた非化学量論組成のものも含むことを意味する。したがって、不可避的に生じるLi、MeまたはOの欠損により、上記組成式からわずかにずれた複合酸化物をも含む。また、Li、MeおよびOの一部が他の元素で置換されていてもよい。リチウムマンガン系酸化物が層状岩塩構造の場合、基本的にMnの平均酸化数は4価である。しかし、上記の基本組成から僅かにずれることで、4価に満たないMnの存在により、得られる複合酸化物全体のMnの平均酸化数としては3.8〜4価まで許容される。
本発明の複合酸化物の製造方法により得られる複合酸化物は、リチウムイオン二次電池などの正極活物質として使用することができる。すなわち、本発明は、本発明の複合酸化物の製造方法により得られた複合酸化物を含むことを特徴とする正極活物質の製造方法、さらにはこの正極活物質を用いた二次電池の製造方法と捉えることもできる。
本発明の複合酸化物の製造方法によれば、LiMeO(0.95≦n≦1.05、MeはMnを必須としCo、MnおよびNiから選ばれる二種以上の金属元素)を基本組成とし結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系複合酸化物の合成において、LiMnOの生成を抑制することができる。
本発明の複合酸化物の製造方法において金属含有原料として使用される前駆体を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を示す。 本発明の複合酸化物の製造方法において反応温度500℃にて製造された複合酸化物を、SEMを用いて観察した結果を示す。 反応温度を600℃とした比較例の製造により製造された複合酸化物を、SEMを用いて観察した結果を示す。 反応温度を700℃とした比較例の製造により製造された複合酸化物を、SEMを用いて観察した結果を示す。 種々の反応温度で製造された複合酸化物のX線回折測定の結果を示す。 異なる反応温度で製造された複合酸化物を正極活物質として用いた二次電池の初回充放電特性を示すグラフである。 水酸化リチウム(LiOH)および硝酸リチウム(LiNO)から構成される二元系の状態図である。
以下に、本発明の複合酸化物の製造方法を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。
<複合酸化物>
本発明は、LiMeOを基本組成とするリチウムマンガン系複合酸化物を主生成物とする複合酸化物の製造方法である。nは0.95≦n≦1.05、MeはMnを必須としCo、MnおよびNiから選ばれる二種以上の金属元素、を示す。リチウムマンガン系複合酸化物の構造は、層状岩塩構造、特に、α−NaFeO型の層状岩塩構造であるとよい。層状岩塩構造を主体とする複合酸化物であることは、X線回折(XRD)、電子線回折などにより確認することができる。また、高分解能の透過電子顕微鏡(TEM)を用いた高分解能像で、層状構造を観察可能である。
なお、LiMeOにおいて、Liは、原子比で60%以下さらには45%以下がHに置換されてもよい。また、MeのほとんどがMnとCoおよび/またはNiとで占められるのが好ましいが、10原子%以下さらには5原子%以下が他の金属元素で置換されていてもよい。Meを置換するMn、NiおよびCo以外の金属元素としては、電極材料とした場合の充放電可能な容量の観点から、Al、Fe、Mg、Ti等から選ばれる一種以上であるのが好ましい。
本発明の製造方法により得られるリチウムマンガン系複合酸化物の具体的としては、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi1/2Mn1/2等が挙げられる。前述の通り、Mn、NiおよびCoの一部は、他の金属元素で置換されていてもよい。また、得られる複合酸化物全体としては、例示した酸化物を基本組成とすればよく、不可避的に生じるリチウム、金属元素または酸素の欠損により、上記組成式から僅かに外れていてもよい。
<複合酸化物の製造方法>
本発明の複合酸化物の製造方法は、主として、溶融反応工程および回収工程を含み、必要に応じて、前駆体調製工程および/または乾燥工程などを含む。
溶融反応工程は、金属含有原料と溶融塩原料とを、溶融塩原料の溶融塩中で反応させる工程である。金属含有原料は、金属元素Me、すなわち、Mnを必須としCo、MnおよびNiから選ばれる二種以上の金属元素を含む。溶融塩原料は、Liを含む。
金属含有原料は、金属元素Meを供給する原料である。金属含有原料は、前駆体としてあらかじめ合成するとよい。すなわち、溶融反応工程の前に、少なくとも二種の金属元素Meを含む溶液から沈殿物を得る前駆体調製工程を行うとよい。こうした前駆体の合成方法として、二種以上の金属イオンを含む溶液から難溶性の塩を沈殿させる方法(たとえば共沈法)が知られている。たとえば、硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩などの水溶性の無機塩を水に溶解し、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水などで水溶液をアルカリ性にすると、沈殿物が生成される。生成された沈殿物は、溶媒を蒸発させて溶液から回収されるとよい。具体的には、常圧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、薄層乾燥、流動床乾燥、泡沫乾燥、などにより沈殿物を乾燥させることで、Meを含む前駆体が容易に得られる。
特に、前駆体調製工程は、二種以上の金属イオンを含む金属塩含有溶液に水酸化リチウム溶液を加えて沈殿物を沈殿させる工程であるのがよい。金属塩含有溶液に水酸化リチウム溶液を添加することで、金属水酸化物の沈殿物が得られる。その後、溶媒を蒸発させて、上記金属元素を含む前駆体を得るとよい。
前駆体は、目的生成物であるリチウムマンガン系複合酸化物に含まれる金属元素Meの少なくとも一部が含まれるのが好ましく、さらに、Meを置換する置換元素が含まれていてもよい。
回収された沈殿物は、焼成されてもよい。焼成温度:300〜700℃さらには450〜550℃、焼成時間:1〜4時間さらには1.5〜2.5時間で焼成するとよい。
また、目的生成物であるリチウムマンガン系複合酸化物に含まれる金属元素Meを含むのであれば、金属単体および/または金属化合物を単独であるいは二種以上を混合または反応させて得られる材料を金属含有原料として使用可能である。このような材料は、前駆体と併用することも可能である。具体的には、二酸化マンガン(MnO)、三酸化二マンガン(Mn)、一酸化マンガン(MnO)、四三酸化マンガン(Mn)水酸化マンガン(Mn(OH))、オキシ水酸化マンガン(MnOOH)、酸化コバルト(CoO、Co)、硝酸コバルト(Co(NO・6HO)、水酸化コバルト(Co(OH))、酸化ニッケル(NiO)、硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO)、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)、酸化銅(CuO)、硝酸銅(Cu(NO・3HO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、これらの化合物の金属元素の一部がCr、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Mgなどで置換された金属化合物などが挙げられる。目的生成物の組成に応じて、これらのうちの一種あるいは二種以上を金属含有原料として用いればよい。ここで、金属含有原料に含まれるMeの価数に限定はない。本発明の製造方法では、反応中の溶融塩の活性に応じてMeの価数が変化するためである。
金属含有原料に含まれる金属元素の配合割合は、本発明の製造方法における目的生成物であるリチウムマンガン系複合酸化物に含まれる金属元素の比率と同等とする必要がある。特に、金属含有原料にMnとともにNiが含まれる場合には、MnとNiとが等モルで含まれるのが最も望ましい。金属含有原料にMnが過剰に含まれる場合には、LiMnOが生成されやすくなるためである。金属含有原料に含まれるMnおよびNiの割合は、Niに対するMnのモル比で、0.95≦Mn/Ni≦1.05であるのが望ましい。
金属含有原料は、粉末状であるのが好ましい。粉末の平均粒径に特に限定はないが、本発明の製造方法は金属含有原料の溶解を抑制した条件下で反応が進む。そのため、金属含有原料の平均粒径は、得られるリチウムマンガン系複合酸化物の平均粒径と略等しくなる。金属含有原料の平均粒径を敢えて規定するのであれば、望ましくは5〜10μmである。
溶融塩原料は、Liの供給源となるが、製造されるリチウムマンガン系複合酸化物に含まれるLiの理論組成を超えるLiを含む。リチウムを含む溶融塩原料として使用可能なリチウム塩として、水酸化リチウム(無水物または一水和物)、硝酸リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム等が挙げられる。特に本発明は、前述の通り、反応活性が高い条件下でのLiMnOの生成を抑制する効果がある。そのため、溶融塩原料は、リチウム塩のうち最も塩基性が高く溶融塩の酸化力が高い水酸化リチウムを含むとよい。溶融塩原料に占める水酸化リチウムの割合は、望ましくは80モル%以上、90モル%以上、さらに望ましくは95モル%以上である。あるいは、溶融塩原料は、水酸化リチウムを含み、他の化合物を実質的に含まないのが好ましい。
水酸化リチウムと硝酸リチウムとを含む溶融塩原料を用いることで、溶融塩原料の融点が低下し低温での合成が可能となる。図7は、水酸化リチウム(LiOH)および硝酸リチウム(LiNO)から構成される二元系の状態図である。LiOHの融点は、477℃である。LiNOの割合が増加する程、融点は低下する傾向にあり、LiOHを80モル%含む溶融塩の融点は、約400℃である。LiOHを0.75モル%含む溶融塩(すなわち、LiOH:LiNO=3:1)の融点は、375℃である。LiOHを0.5モル%含む溶融塩(すなわち、LiOH:LiNO=1:1)の融点は、213℃である。特に本発明は、前述の通り、Mnの溶解量が多く溶融塩の反応性に影響しやすい高い反応温度の下で、LiMnOの生成を抑制する効果が高い。そのため、望ましい溶融塩原料を溶融塩原料の融点で規定するのであれば、融点が400℃以上さらには450℃以上の溶融塩原料を用いるのが望ましい。
溶融塩は、Liの供給源のみならず、金属含有原料を高分散状態で維持する役割も果たす。したがって、溶融塩原料に含まれるLiに対する、目的の複合酸化物に含まれるLiの理論組成(複合酸化物のLi/溶融塩原料のLi)は、モル比で1未満であればよいが、0.02〜0.7が好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.6である。0.02未満であると、使用する溶融塩原料の量に対して生成する複合酸化物の量が少なくなるため、製造効率の面で望ましくない。また、0.7以上であると金属含有原料を分散させる溶融塩の量が不足し、溶融塩中で複合酸化物が凝集したり粒成長したりすることがあるため望ましくない。溶融塩原料は、金属含有原料と混合された混合原料として溶融反応工程に供されるのが望ましい。
なお、使用される金属含有原料および溶融塩原料は、脱水された状態にあるのが望ましい。水酸化リチウムを含む溶融塩原料からなる溶融塩中に存在する水は、非常にpHが高くなる。pHの高い水の存在下で溶融反応工程が行われると、その水が坩堝と接触することで、坩堝の種類によっては坩堝の成分が微量ではあるが溶融塩に溶出する可能性がある。そこで、溶融反応工程の前に、金属含有原料および溶融塩原料の少なくとも一部を乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。乾燥工程では、原料の水分が除去されるため、坩堝の成分の溶出抑制につながる。なお、水酸化リチウムとして無水水酸化リチウムを使用する場合には、乾燥工程を省略しても同様の効果が得られる。金属含有原料として吸湿性の高い金属化合物を使用しない場合も同様である。また、乾燥工程において少なくとも水酸化リチウムから水分を除去することで、溶融反応工程において水が沸騰して溶融塩が飛散するのを防止できる。
乾燥は、真空乾燥器を用いるのであれば、80〜150℃で2〜24時間真空乾燥するとよい。
溶融反応工程は、少なくとも金属含有原料と溶融塩原料とを反応させる工程である。反応温度は、溶融反応工程における溶融塩の温度であり、溶融塩原料の融点(Tmp℃)以上(Tmp+100)℃以下とする。望ましくは(Tmp+75)℃以下、さらに望ましくは(Tmp+50)℃以下である。本発明では、水酸化リチウムを含み他の化合物を実質的に含まない溶融塩原料を使用するため、水酸化リチウムの融点が477℃であることから、577℃以下さらには552℃以下さらには527℃以下で反応させる。反応温度と反応生成物との関係を、以下に具体的に説明する。
金属含有原料に金属元素がCo:Ni:Mn=1:1:1(モル比)で含まれる場合には、リチウムを含む溶融塩中で金属含有原料を反応させることにより、下記の式(1)で表される化合物が生成される。また、金属含有原料に金属元素がNi:Mn=1:1(モル比)で含まれる場合には、リチウムを含む溶融塩中で金属含有原料を反応させることにより、下記の式(2)で表される化合物が生成される。式(1)および式(2)において、Xは0≦X≦1、Yは0≦Y≦1、である。
本発明においては、溶融反応工程における反応温度をTmp℃以上(Tmp+100)℃以下とすることで、XおよびYの値が小さくなる。反応温度が溶融塩原料の融点よりも高くなる程XおよびYの値は大きくなる。つまり、溶融反応工程における反応温度を融点近傍とすることで、LiMnOの生成が効果的に抑制される。特に、融点の高い溶融塩原料を使用した場合には、多くのMnが溶解し溶融塩の反応性に大きな影響を及ぼすため、温度上昇によるXおよびYの増加の程度が大きくなる傾向にある。本発明の製造方法は、融点の高い溶融塩原料に対して、特に効果的に、XおよびYの値を低減することができる。
反応温度の下限は、溶融反応工程において溶融状態を維持できればよいため、Tmp℃を越えるのが望ましいが、さらに(Tmp+5)℃以上、(Tmp+10)℃以上とすることで、安定的に溶融状態が維持される。反応時間に特に限定はないが、上記の反応温度で30分以上さらに望ましくは1〜6時間保持すれば、金属含有原料および溶融塩原料は十分に反応する。
また、反応には、溶融塩中に成分が溶出しにくい金などの坩堝を使用するのが望ましい。たとえば、ニッケル坩堝を使用すると、Niが溶融塩中に溶出して、複合酸化物以外の不純物(NiOなど)が生成されやすくなるため望ましくない。
溶融反応工程は、酸素含有雰囲気、たとえば大気中、酸素ガスおよび/またはオゾンガスを含むガス雰囲気中で行うと、所望のリチウムマンガン系複合酸化物が単相で得られやすい。酸素ガスを含有する雰囲気であれば、酸素ガス濃度を20〜100体積%さらには50〜100体積%とするのがよい。
回収工程は、溶融反応工程にて得られた反応生成物と溶融塩との混合物から、該反応生成物を回収する工程である。回収工程は、以下に説明する冷却工程および分離工程を含むとよい。
冷却工程は、溶融反応工程後の溶融塩を冷却する工程である。冷却工程では、反応終了後の高温の溶融塩を、加熱炉の中に放置して炉冷してもよいし、加熱炉から取り出して室温にて空冷してもよい。冷却により溶融塩は凝固するため、冷却工程後には、反応生成物と溶融塩との混合物が固形物で得られる。冷却速度に特に限定はないが、0.5〜10℃/分さらには1〜1.5℃/分が望ましい。
分離工程は、冷却工程により凝固した溶融塩を極性プロトン性溶媒に溶解させて、溶融塩から反応生成物を分離する工程である。なお、極性プロトン性溶媒は、凝固した溶融塩(つまり水酸化リチウム等の溶融塩原料)を溶解することができるため本工程に採用されるが、プロトン供与性をもつ溶媒であるため、リチウム含有珪素系材料にLi欠損が生じやすい。しかし、プロトン性溶媒は、非プロトン性溶媒に比べてイオンを安定化させる効果があり、溶融塩であった水酸化リチウム等を溶解するのに適しているため、本工程に好適である。具体的には、イオン交換水などの純水、エタノールなどのアルコール類、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。固化した溶融塩は極性プロトン性溶媒に容易に溶解し、極性プロトン性溶媒に溶解しにくいリチウムマンガン系複合酸化物は溶液中に溶け残る。そのため、溶融塩と反応生成物とは、容易に分離される。反応生成物の回収方法に特に限定はないが、溶液を遠心分離したり濾過したりして、回収可能である。回収後の反応生成物を乾燥させてもよい。
また、回収工程の後に、リチウムマンガン系複合酸化物のLiの一部を水素(H)に置換するプロトン置換工程を行ってもよい。プロトン置換工程では、回収工程後のリチウムマンガン系複合酸化物を希釈した酸などの溶媒に接触させることで、Liの一部が容易にHに置換する。
また、回収工程(あるいはプロトン置換工程)の後に、複合酸化物を酸素含有雰囲気中で加熱する加熱焼成処理工程を行ってもよい。焼成を行うことで、リチウムマンガン系複合酸化物に存在する残留応力が除去される。また、焼成を行うことで、回収工程で完全に除去されずたとえば皮膜となって反応生成物の表面に残留する不純物が低減される。このような不純物は、溶融塩原料である水酸化リチウム、LiCO等のリチウム塩、などから選ばれる一種以上のリチウム化合物を主成分とすると考えられる。そのため、複合酸化物に含まれるLiが理論組成よりも少ない場合(Li欠損)には、焼成の熱により複合酸化物の表面部とリチウム化合物とが反応して、複合酸化物のLi欠損が低減されるとともにリチウム化合物が分解される。つまり、焼成の結果、残留応力が除去され、表面の不純物およびLi欠損が低減されたリチウムマンガン系複合酸化物が得られる。
焼成は、酸素含有雰囲気中で行われるとよい。加熱焼成処理工程は、酸素含有雰囲気、たとえば大気中、酸素ガスおよび/またはオゾンガスを含むガス雰囲気中で行うのがよい。酸素ガスを含有する雰囲気であれば、酸素ガス濃度を20〜100体積%さらには50〜100体積%とするのがよい。焼成温度は、300℃以上さらには350〜500℃が望ましく、この焼成温度で20分以上さらには0.5〜2時間保持するのが望ましい。
以上詳説した本発明の製造方法によれば、LiMnOの生成が抑制されることで、リチウムマンガン系複合酸化物の収率が向上する。LiMnOの生成が抑制されたことは、X線回折により確認することができる。LiMnOの存在は、回折角度(2θ、CuKα線)20.7〜20.9°に検出される(020)面に対応する回折ピークおよび21.7〜21.9°に検出される(110)面に対応する回折ピークにより判断が可能である。なお、指数付けは、空間群C2/mに基づいて行った。本発明の製造方法によれば、LiMnOの生成が抑制されたことにより、2θ=20.7〜20.9°および2θ=21.7〜21.9°の位置に回折ピークはほとんど見られない。
<二次電池>
本発明の複合酸化物の製造方法により得られた複合酸化物は、たとえばリチウムイオン二次電池などの正極活物質として用いることができる。以下に、上記複合酸化物を含む正極活物質を用いた二次電池を説明する。二次電池は、主として、正極、負極および非水電解質を備える。また、一般の二次電池と同様に、正極と負極の間に挟装されるセパレータを備える。
正極は、リチウムイオンを挿入・脱離可能な正極活物質と、正極活物質を結着する結着剤と、を含む。さらに、導電助材を含んでもよい。正極活物質は、上記の複合酸化物を単独、あるいは上記の複合酸化物とともに、一般の二次電池に用いられる一種以上の他の正極活物質を含んでもよい。他の正極活物質としては、金属リチウムの他、LiCoO、LiNiCoMn(0<p<1、0+p<q<1−p、0+(p+q)<r<1−(p+q))、LiMnO、LiMnO、LiNiMn(0<s<1、0+s<t<1−s)、LiFePO、LiFeSOを基本組成とするリチウム含有金属酸化物あるいはそれぞれを1種または2種以上含む固溶体材料などが挙げられる。
また、結着剤および導電助材にも特に限定はなく、一般の二次電池で使用可能なものであればよい。導電助材は、電極の電気伝導性を確保するためのものであり、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛などの炭素物質粉状体の1種または2種以上を混合したものを用いることができる。結着剤は、正極活物質および導電助材を繋ぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂などを用いることができる。
正極に対向させる負極は、負極活物質である金属リチウムをシート状にして、あるいはシート状にしたものをニッケル、ステンレス等の集電体網に圧着して形成することができる。金属リチウムのかわりに、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であってリチウムと合金化可能な元素および/またはリチウムと合金化可能な元素を有する化合物を使用してもよい。リチウムと合金化反応可能な元素は、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biが挙げられる。これらのうちの少なくとも1種を含む負極活物質を使用するのが望ましく、中でも、珪素(Si)または錫(Sn)であるとよい。リチウムと合金化反応可能な元素を有する元素化合物は、珪素化合物または錫化合物であることがよい。珪素化合物は、SiO(0.5≦m≦1.5)であることがよい。錫化合物は、例えば、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金等)などが挙げられる。
中でも、負極活物質は、珪素(Si)を有するとよく、さらにはSiO(0.5≦m≦1.5)を有するとよい。珪素は、理論容量が大きい一方で、充放電時の体積変化が大きいため、SiOとすることで体積変化を少なくすることができる。
また、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。これらのうちの一種を単独あるいは二種以上を混合して使用することができる。
負極は、少なくとも負極活物質が結着剤で結着されてなる活物質層が、集電体に付着してなるのが一般的である。そのため、負極は、活物質および結着剤、必要に応じて導電助材を含む電極合材層形成用組成物を調製し、さらに適当な溶剤を加えてペースト状にしてから集電体の表面に塗布後、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成することができる。結着剤および導電助材には、正極と同様の上記の材料を使用すればよい。
集電体は、金属製のメッシュや金属箔を用いることができる。集電体としては、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅などの金属材料または導電性樹脂からなる多孔性または無孔の導電性基板が挙げられる。多孔性導電性基板としては、たとえば、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布などの繊維群成形体、などが挙げられる。無孔の導電性基板としては、たとえば、箔、シート、フィルムなどが挙げられる。電極合材層形成用組成物の塗布方法としては、ドクターブレード、バーコーターなどの従来から公知の方法を用いればよい。
粘度調整のための溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
電解質としては、有機溶媒に電解質を溶解させた有機溶媒系の電解液や、電解液をポリマー中に保持させたポリマー電解質などを用いることができる。その電解液あるいはポリマー電解質に含まれる有機溶媒は特に限定されるものではないが、負荷特性の点からは鎖状エステルを含んでいることが好ましい。そのような鎖状エステルとしては、たとえば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートに代表される鎖状のカーボネートや、酢酸エチル、プロピロン酸メチルなどの有機溶媒が挙げられる。これらの鎖状エステルは、単独でもあるいは2種以上を混合して用いてもよく、特に、低温特性の改善のためには、上記鎖状エステルが全有機溶媒中の50体積%以上を占めることが好ましく、特に鎖状エステルが全有機溶媒中の65体積%以上を占めることが好ましい。
ただし、有機溶媒としては、上記鎖状エステルのみで構成するよりも、放電容量の向上をはかるために、上記鎖状エステルに誘導率の高い(誘導率:30以上)エステルを混合して用いることが好ましい。このようなエステルの具体例としては、たとえば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートに代表される環状のカーボネートや、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールサルファイトなどが挙げられ、特にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状構造のエステルが好ましい。そのような誘電率の高いエステルは、放電容量の点から、全有機溶媒中10体積%以上、特に20体積%以上含有されることが好ましい。また、負荷特性の点からは、40体積%以下が好ましく、30体積%以下がより好ましい。
有機溶媒に溶解させる電解質としては、たとえば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)などが単独でまたは2種以上混合して用いられる。中でも、良好な充放電特性が得られるLiPFやLiCSOなどが好ましく用いられる。
電解液中における電解質の濃度は、特に限定されるものではないが、0.3〜1.7mol/dm、特に0.4〜1.5mol/dm程度が好ましい。
また、電池の安全性や貯蔵特性を向上させるために、非水電解液に芳香族化合物を含有させてもよい。芳香族化合物としては、シクロヘキシルベンゼンやt−ブチルベンゼンなどのアルキル基を有するベンゼン類、ビフェニル、あるいはフルオロベンゼン類が好ましく用いられる。
セパレータとしては、強度が充分でしかも電解液を多く保持できるものがよく、そのような観点から、5〜50μmの厚さで、ポリプロピレン製、ポリエチレン製、プロピレンとエチレンとの共重合体などポリオレフィン製の微孔性フィルムや不織布などが好ましく用いられる。特に、5〜20μmと薄いセパレータを用いた場合には、充放電サイクルや高温貯蔵などにおいて電池の特性が劣化しやすく、安全性も低下するが、上記の複合酸化物を正極活物質として用いた二次電池は安定性と安全性に優れているため、このような薄いセパレータを用いても安定して電池を機能させることができる。
以上の構成要素によって構成される二次電池の形状は円筒型、積層型、コイン型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極と負極との間にセパレータを挟装させ電極体とする。そして正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を集電用リードなどで接続し、この電極体に上記電解液を含浸させ電池ケースに密閉し、二次電池が完成する。
以上説明した本発明の製造方法により得られる複合酸化物を用いた二次電池は、携帯電話、パソコン等の通信機器、情報関連機器の分野の他、自動車の分野においても好適に利用できる。たとえば、この二次電池を車両に搭載すれば、電気自動車用の電源として使用できる。
以上、本発明の複合酸化物の製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質および非水電解質二次電池の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
以下に説明する実施例および比較例では、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3の合成を反応温度のみを変化させて行った。
<実施例1>
溶融塩原料として水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)を120℃の真空乾燥炉で24時間以上乾燥させて水和物を除去した水酸化リチウム(LiOH)を準備した。また、金属化合物原料(前駆体)を以下の手順で合成した。
0.16molのMn(NO・6HO(45.9g)と0.16molのCo(NO・6HO(46.6g)と0.16molのNi(NO・6HO(46.5g)とを500mLの蒸留水に溶解させて金属塩含有水溶液を作製した。この水溶液を氷浴中でスターラーを用いて撹拌しながら、50g(1.2mol)のLiOH・HOを300mLの蒸留水に溶解させたものを2時間かけて滴下して水溶液をアルカリ性とし、金属化合物の沈殿物を析出させた。この沈殿溶液を5℃に保持したまま酸素雰囲気下で1日熟成を行った。得られた沈殿物を濾過、蒸留水を用いて洗浄することによりMn:Co:Ni=0.16:0.16:0.16の前駆体を得た。
なお、得られた前駆体は、X線回折測定により、Mn、CoおよびNiOの混合相からなることが確認された。そのため、この前駆体1gの遷移金属酸化物含有量は0.013molである。また、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて前駆体を観察した。結果を図1に示した。SEM像より算出した前駆体の平均粒径は、5μmであった。なお、平均粒径は、SEM像より測定した複数の粒子の最大径(粒子を2本の平行線で挟んだとき平行線の間隔の最大値)の平均値とした。
120gのLiOH(5モル)と200gの前駆体とを混合して原料混合物を調製した。このとき、前駆体の遷移金属が全て目的生成物に供給されたと仮定して、(目的生成物のLi)/(溶融塩原料のLi)は、2.6mol/5mol=0.52であった。
原料混合物を坩堝にいれて、直ちに500℃に熱せられた電気炉に移し、大気中500℃で6時間加熱した。その後、電気炉内で室温まで冷却した。冷却後の坩堝内では、LiOHが固化してなる透明な固体に茶色の生成物が覆われていた。このとき、冷却開始から5時間程度で溶融塩は100℃になった。つまり、冷却速度は1.3℃/分であった。
次に、坩堝に純水を加えて固体化した溶融塩を溶解させ、30〜60分放置して生成物の沈殿物とLiOHが溶解した上澄み液とに分離した。上澄み液を捨ててから、再び坩堝に純水を加え、同様の作業をさらに二度繰り返して行った。沈殿物を濾過し、120℃の恒温槽で6時間以上乾燥させた。乾燥後の茶色固体を乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、茶色粉末を得た。
得られた茶色粉末についてCuKα線を用いたXRD測定を行った。測定結果を図5に示した。XRDによれば、得られた化合物は層状岩塩構造であることがわかった。また、2θ=20〜25°を詳細に確認しても、LiMnOの(020)面および(110)面に対応する回折ピークは検出されなかった。つまり、茶色粉末の組成は、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3であり、LiMnOを実質的に含まないことがわかった。
また、SEMを用いて茶色粉末を観察した。結果を図2に示した。SEM像より算出した茶色粉末の平均粒径は、5μmであり、前駆体の平均粒径と大きな差はなかった。つまり、反応前後で粒子の形状が維持された。
<比較例1>
LiOHと前駆体との反応温度を600℃とした他は、実施例1と同様の手順で茶色粉末を得た。
得られた茶色粉末についてCuKα線を用いたXRD測定を行った。測定結果を図5に示した。XRDによれば、得られた化合物は層状岩塩構造であることがわかった。また、2θ=20〜25°を詳細に確認すると、2θ=20.7°および2θ=21.8°にLiMnOに由来する回折ピークが微小ではあるが検出された。これらの回折ピークは、実施例1にて得られた粉末のXRDパターンには見られなかったものである。つまり、茶色粉末は、微量のLiMnOを含むLiCo1/3Ni1/3Mn1/3粉末であることがわかった。
また、SEMを用いて茶色粉末を観察した。結果を図3に示した。SEM像より算出した茶色粉末の平均粒径は、5μmであった。しかし、粒子の表面には溶融塩中で溶融した痕跡が確認された。
<比較例2>
LiOHと前駆体との反応温度を700℃とした他は、実施例1と同様の手順で茶色粉末を得た。
得られた茶色粉末についてCuKα線を用いたXRD測定を行った。測定結果を図5に示した。XRDによれば、得られた化合物は層状岩塩構造であることがわかった。また、2θ=20〜25°を詳細に確認すると、2θ=20.7°および2θ=21.8°にLiMnOに由来する回折ピークが検出された。つまり、茶色粉末は、LiMnOを含むLiCo1/3Ni1/3Mn1/3粉末であった。
また、SEMを用いて茶色粉末を観察した。結果を図4に示した。SEM像より算出した茶色粉末の平均粒径は、5μmであった。つまり、前駆体は溶融塩に溶解し、前駆体の形状は完全に失われたことがわかった。
<比較例3>
LiOHと前駆体との反応温度を800℃とした他は、実施例1と同様の手順で茶色粉末を得た。
得られた茶色粉末についてCuKα線を用いたXRD測定を行った。測定結果を図5に示した。XRDによれば、得られた化合物は層状岩塩構造であることがわかった。また、2θ=20〜25°を詳細に確認すると、2θ=20.7°および2θ=21.8°にLiMnOに由来する回折ピークが検出された。つまり、茶色粉末は、LiMnOを含むLiCo1/3Ni1/3Mn1/3粉末であった。
<二次電池>
実施例1または比較例2で得られた複合酸化物粉末を正極活物質として用いた二種類のリチウム二次電池を作製し、充放電試験を行った。
実施例1および比較例2のいずれかの複合酸化物、導電助剤としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を質量比で50:40:10の割合で混合した。次いで、この混合物を集電体であるアルミニウムメッシュに圧着した。その後、120℃で12時間以上真空乾燥し、電極(正極:φ14mm)とした。正極に対向させる負極は、金属リチウム(φ14mm、厚さ400μm)とした。
正極および負極の間にセパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを挟装して電極体電池とした。この電極体電池を電池ケース(宝泉株式会社製CR2032コインセル)に収容した。また、電池ケースには、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを1:2(体積比)で混合した混合溶媒にLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解した非水電解質を注入して、リチウム二次電池を得た。
作製したリチウム二次電池を用いて25℃一定温度下において充放電試験を行った。充電は0.2Cのレートで4.3Vまで定電流充電を行い、その後0.02Cの電流値まで4.3V一定電圧で充電を行った。放電は2.0Vまで0.2Cのレートで行った。充放電曲線を図6に示した。
なお、充放電試験において、充電時のカットオフ電圧を4.3Vとしたのは、LiMnOの含有量を推定するためである。LiMnOは、4.3V以下では不活性であり充放電に関与しないしたがって、上記の充放電条件において活物質として充放電に関与するのは、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3である。
実施例1で得られた複合酸化物粉末を正極活物質として用いた場合には、比較例2で得られた複合酸化物粉末を正極活物質として用いた場合に比べて、高容量であった。これは、実施例1で得られた複合酸化物粉末にLiCo1/3Ni1/3Mn1/3が多く含まれ、不純物としてのLiMnO量が低減されたためである。実施例1で使用した溶融塩(水酸化リチウム)の融点は477℃である。溶融塩原料の融点付近である500℃の溶融塩中で前駆体を反応させることにより、LiMnOの生成が抑制されると言える。

Claims (6)

  1. LiMeO(0.95≦n≦1.05、MeはMnを必須としCo、MnおよびNiから選ばれる二種以上の金属元素)を基本組成とし結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系複合酸化物を主生成物とする複合酸化物の製造方法であって、
    少なくとも、前記金属元素を含む金属含有原料と、水酸化リチウムを含み他の化合物を実質的に含まず目的の前記複合酸化物に含まれるLiの理論組成を超えるLiを含む溶融塩原料と、を477℃以上577℃以下で反応させる溶融反応工程と、
    前記溶融反応工程にて生成された前記複合酸化物を回収する回収工程と、
    を経て前記複合酸化物を得ることを特徴とする複合酸化物の製造方法。
  2. 前記溶融反応工程は、552℃以下で前記金属含有原料および前記溶融塩原料を反応させる工程である請求項1に記載の複合酸化物の製造方法。
  3. LiCo1/3Ni1/3Mn1/3を基本組成とするリチウムマンガン系複合酸化物を主成分とする請求項1または2に記載の複合酸化物の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の複合酸化物の製造方法における溶融反応工程の前に、少なくとも二種の前記金属元素を含む溶液から沈殿物を得る前駆体調製工程を行い、該溶融反応工程にて該沈殿物を含む前記金属含有原料を使用する複合酸化物の製造方法。
  5. 前記溶融塩原料に含まれるLiに対する、目的の前記複合酸化物に含まれるLiの理論組成(複合酸化物のLi/溶融塩原料のLi)がモル比で0.02以上0.7以下である請求項1〜4のいずれかに記載の複合酸化物の製造方法。
  6. 前記溶融塩原料に含まれる水酸化リチウムは、脱水された状態にある請求項1〜5のいずれかに記載の複合酸化物の製造方法。
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