JP5409045B2 - レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用樹脂印刷版原版、レリーフ印刷版およびレリーフ印刷版の製造方法 - Google Patents
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Description
感光性エラストマー組成物は、担体として例えば合成ゴムのようなエラストマー性ポリマーを含有しており、得られるレリーフ版は柔軟であることからフレキソ版と称される。
アナログ製版に伴う課題を解決する手法として、感光性エラストマー層あるいは感光性樹脂層上に、その場で(in situ)画像マスク形成可能なレーザー感応式のマスク層要素を設けたフレキソ印刷版原版あるいは樹脂凸版印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの原版の製版方法は、デジタルデバイスで制御された画像データに基づいてレーザー照射を行い、マスク層要素から画像マスクをその場で形成し、その後はアナログ製版と同様に、画像マスクを介して紫外光で露光し、感光性エラストマー層(あるいは感光性樹脂層)および画像マスクを現像除去する製版方法で、フレキソ版や樹脂凸版の業界では「マスクCTP方式」と称されている。マスクCTP方式は、上述した原画フィルムの製造工程に関わる課題を解決しているが、感光性エラストマー層や感光性樹脂層の現像で発生する廃液の処理に関する課題がある。さらにフレキソ版の場合、現像にはトリクロロエチレンなどの塩素系溶媒を用いることが多く、作業衛生面でも不利がある。
現像工程および現像廃液に関する課題を解決する別の手段として、レーザーによる直接彫刻製版、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。直彫りCTP方式は、文字通りレーザーで彫刻することにより、レリーフとなる凹凸を形成する方法で、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができるという利点がある。例えば、抜き文字部分を印刷物に再現する部位を深く彫刻したり、微細網点を再現する部分では印圧に負けて網点が倒れないようにショルダーをつけた彫刻をすることができる。
直彫りCTP方式の課題として、レーザー彫刻の速度が遅いことが挙げられる。これはマスクCTP方式ではアブレーションすべき対象のマスク層要素の厚さが1〜10μm程度であるのに対し、直彫りCTP方式では直接レリーフを形成する機能上、少なくとも100μmは彫刻する必要があるためである。そのため、レーザー彫刻感度の向上を図った提案がいくつかなされている。
例えば、エラストマー発泡体を含むレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版が提案されている(特許文献7)。密度の低い発泡体を用いることで、彫刻感度の向上を図っているが、低密度の材料であるため印刷版としての強度が不足し、耐刷性が著しく損なわれるという問題がある。
例えば、天井温度が600度K未満の高分子充填剤を含有するレーザー彫刻用樹脂凸版印刷版が提案されている(特許文献9)。解重合温度の低い高分子充填剤を添加する事で彫刻感度の向上を図っているが、このような高分子充填剤を用いると、印刷版原版の表面に凹凸がついてしまい、印刷品質に重大な影響を与える。
なお、ポリ乳酸とアルカリ土類金属酸化物とを組み合わせ、ポリ乳酸の熱分解性や生分解性を高めることが知られているが(非特許文献1、特許文献10)、下記で説明する本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物の構成、すなわちポリエステルを含むバインダーポリマーと特定の金属またはメタロイドの少なくとも一つのオキシ化合物とを組み合わせたレーザー彫刻用樹脂組成物については、従来技術に開示されていない。
〔1〕
(A)脂肪族ポリエステルを含むバインダーポリマーおよび(B)周期律表の1〜16族から選択される金属またはメタロイドの少なくとも一つのオキシ化合物を含んでなることを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔2〕
前記脂肪族ポリエステルが、ヒドロキシルカルボン酸ユニットからなるポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレンコハク酸)及びこれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1種のポリエステルであることを特徴とする前記〔1〕に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔3〕
前記脂肪族ポリエステルが、ポリヒドロキシアルカノエート、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレンコハク酸)、これらの誘導体及びこれらの少なくとも2つの混合物から成る群から選択されることを特徴とする前記〔2〕に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔4〕
前記脂肪族ポリエステルが、ポリヒドロキシアルカノエート、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸、これらの誘導体及びこれらの少なくとも2つの混合物から成る群から選択されることを特徴とする前記〔2〕または〔3〕に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔5〕
前記バインダーポリマーは、親水性ポリマーを含むことを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔6〕
前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール誘導体であることを特徴とする前記〔5〕に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔7〕
重合性化合物(C)を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔8〕
700〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤(D)を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔9〕
前記光熱変換剤(D)は、カーボンブラック、シアニン系化合物およびフタロシアニン系化合物からなる群から選択されることを特徴とする前記〔8〕に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔10〕
前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂印刷版原版。
〔11〕
前記〔10〕に記載のレリーフ形成層を光および/または熱により架橋する工程1)、および架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程2)を含むことを特徴とするレリーフ印刷版の製造方法。
〔12〕
前記工程1)は、レリーフ形成層を熱により架橋する工程であることを特徴とする前記〔11〕に記載のレリーフ印刷版の製造方法。
〔13〕
前記〔11〕または〔12〕に記載の方法で製造されたレリーフ印刷版。
〔14〕
前記〔11〕または〔12〕に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層の厚みが0.05mm以上であることを特徴とする前記〔13〕に記載のレリーフ印刷版。
〔15〕
前記〔11〕または〔12〕に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層のショアA硬度が50〜90°であることを特徴とする前記〔13〕または〔14〕に記載のレリーフ印刷版。
本発明は、上記〔1〕〜〔15〕に関するものであるが、参考のためその他の事項(例えば、下記1〜16に記載した事項等)についても記載した。
1.(A)ポリエステルを含むバインダーポリマーおよび(B)周期律表の1〜16族から選択される金属またはメタロイドの少なくとも一つのオキシ化合物を含んでなることを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。
2.前記ポリエステルが、脂肪族ポリエステルであることを特徴とする前記1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
3.前記ポリエステルが、ヒドロキシルカルボン酸ユニットからなるポリエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンコハク酸)及びこれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1種のポリエステルであることを特徴とする前記1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
4.前記ポリエステルが、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンコハク酸)、これらの誘導体及びこれらの少なくとも2つの混合物から成る群から選択されることを特徴とする前記3に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
6.前記バインダーポリマーは、親水性ポリマーを含むことを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
7.前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)誘導体であることを特徴とする前記6に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
8.重合性化合物(C)を含有することを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
9.700〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤(D)を含有することを特徴とする前記1〜8のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
11.前記1〜10のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂印刷版原版。
12.前記11に記載のレリーフ形成層を光および/または熱により架橋する工程1)、および架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程2)を含むことを特徴とするレリーフ印刷版の製造方法。
13.前記工程1)は、レリーフ形成層を熱により架橋する工程であることを特徴とする前記12に記載のレリーフ印刷版の製造方法。
14.前記12または13に記載の方法で製造されたレリーフ印刷版。
15.前記12または13に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層の厚みが0.05mm以上であることを特徴とする前記14に記載のレリーフ印刷版。
16.前記12または13に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層のショアA硬度が50〜90°であることを特徴とする前記14または15に記載のレリーフ印刷版。
[レーザー彫刻用樹脂組成物]
本発明におけるレーザー彫刻用樹脂組成物は、(A)ポリエステルを含むバインダーポリマーおよび(B)周期律表の1〜16族から選択される金属またはメタロイドの少なくとも一つのオキシ化合物を含んでなることを特徴とする。なお、本明細書において、『誘導体』とは、その他の共重合成分を50モル%以下(好ましくは30モル%以下、更に好ましくは10モル%以下)含有する共重合ポリマーを意味する。
以下、レーザー彫刻用樹脂組成物の要素について説明する。以下、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を本発明の樹脂組成物ともいう。
バインダー(A)におけるポリエステルは、主鎖にエステル結合を有するポリエステルであればとくに制限されない。膜の柔軟性と熱分解性(=彫刻感度)の観点で、芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなど)よりも、以下に記載する脂肪族ポリエステルの方が好ましい。
本発明において、特に適する脂肪族ポリエステルは、例えばヒドロキシルカルボン酸ユニットからなるポリエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンコハク酸)及びこれらの誘導体である。また、δ−バレロラクトンのような他のラクトンの単独重合体や、ラクトン類の共重合体も使用できる。該共重合体は種々の形のコモノマー単位を含むことができる。一般には、他のラクトンとの共重合体、エチレンやプロピレンオキサイドのようなオレフィンオキサイドとの共重合体が挙げられる。さらに、エチレングリコールのようなグリコールと、ジカルボン酸、好ましくは非環式カルボン酸、例えばアジピン酸との混合物との共重合体も挙げられる。ラクトン共重合体はラクトンから誘導されるモノマー単位を様々な量で含むことが可能である。
本明細書における「ヒドロキシルカルボン酸ユニットからなるポリエステル」とは、ヒドロキシカルボン酸を原料の1つとして用い、重合反応により得られるポリエステルを指す。また、本明細書において、「ヒドロキシルカルボン酸」とは分子中に少なくとも1つのOH基とCOOH基を有する化合物を指す。「ヒドロキシルカルボン酸」の少なくとも1つのOH基とCOOH基は近傍に存在することが好ましく、OH基とCOOH基の連結
が原子6個以下で行われていることが好ましく、4個以下で行われていることがさらに好ましい。
具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、及びポリ(ブチレンコハク酸)、並びにこれらの誘導体又は混合物から成る群から選択されるものが好ましい。特に、ポリヒドロキシアルカノエート、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、並びにこれらの誘導体又は混合物から成る群から選択されるものが好ましい。
バインダー(A)は、熱分解した際(即ち本願でいうところのレーザー彫刻に相当)に300℃前後と比較的低温で主鎖の一部が熱分解し、そこを起点として解重合反応(重合反応の逆反応で、ポリマーが原料の低分子モノマー単位まで熱解裂する)する特性を有する。
本発明で実施するレーザー彫刻(特に近赤外レーザーの場合)は、(1)700〜1300nmに極大吸収波長を有する化合物による光吸収⇒(2)700〜1300nmに極大吸収波長を有する化合物による光熱変換⇒(3)700〜1300nmに極大吸収波長を有する化合物から近傍に存在するバインダーへの熱伝達⇒(4)バインダーの熱分解⇒(5)分解したバインダーの消散、という5つの過程から構成されると考えられる。 バインダー(A)は、上記の低温熱分解特性と解重合特性を有しているので、低温熱分解特性によって上記(4)が促進され、さらに解重合により生じた低分子モノマー(250℃未満で揮発するものが多い)が即座に揮発するので上記(5)が非常に効率的に起こり、この2つの効果によってレーザー彫刻感度が非常に高くなっているものと考えられる。
また、レーザー彫刻部分は極高温となり、(A)の熱分解や解重合が(B)によって促進される(=熱分解温度が低下する)と考えられる。
バインダー(A)のPHAとしては以下の一般式(a)で表される繰り返しモノマー単位を有するものが好ましい。
一般式(a)
ロキシオクタノエート、ポリ−4−ヒドロキシブチレート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)、及び、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)及びその他のコポリマーが含まれる。ここに挙げられたPHAのコポリマーは、通常、40〜100%未満、好ましくは、60〜98%の3−ヒドロキシブチレートモノマーを有する。
なお、バインダー(A)として、上記一般式で表される繰り返しモノマー単位と共重合可能な、コモノマーとして、後述の併用し得るポリエステルに用いられるモノマーとして挙げられるものを用いた共重合体を用いるることもできる。
ポリ乳酸および乳酸−グリコール酸の共重合体としては乳酸/グリコール酸比率(モル
比)が100/0〜30/70,より好ましくは100/0〜40/60で,分子量が1,000〜100,000,より好ましくは2,000〜80,000程度のものが挙げられる。
バインダー(A)として用いられるポリカプロラクトン(PCL)(一般式(a)において、R1はH、n=4)は、ホモでも他のラクトンとの組み合わせでもよく、上記一般式(a)と構造上同じポリエステルとなるもの等が挙げられる。
バインダー(A)として用いられるポリ(ブチレンコハク酸)は、ヒドロキシルカルボン酸ユニットのみからなるポリエステルではなく、1,4−ブタンジオールとコハク酸から合成されるポリマーであるが、ヒドロキシルカルボン酸を併用してもよい。
なお、上記バインダー(A)として記載したポリエステルは、共重合可能な、コモノマーとして、後述の併用し得るポリエステルに用いられるモノマーとして挙げられるものを用いた共重合体を用いることもできる。
このようなポリエステルは、膜の耐水性や柔軟性を調節する等の目的で、モノマーとし
て、脂肪族(環状脂肪族を含む)グリコール類、芳香族ジカルボン酸またはその酸無水物、脂肪族ジカルボン酸又はその酸無水物(以下、脂肪族ジカルボン酸と略す)からなるポリエステルが挙げられる。
また、必要に応じて、第3成分モノマーとして、3官能または4官能の多価アルコール、および多価カルボン酸(またはその酸無水物)から選ばれる少なくとも1種の多官能成分を含んでいても良い。
上記グリコール類としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールならびにそれらの混合物等が好んで用いられるが、これらに限定されるもまではない。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸ならびにそれらの混合物などが好んで用いられるが、これらに限定されるものではない。
上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、無水コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ならびにそれらの混合物などが好んで用いられるが、これらに限定されるものではない。
<(A')バインダーポリマー>
バインダーポリマー(A')としては、主鎖および側鎖の少なくともいずれかに炭素-炭素不飽和結合をもつポリマーが挙げられる。以下、バインダーポリマー(A')をバイン
ダー(A')ともいう。
リブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
の高い重合性不飽和基を有するポリマーを用いた場合、極めて機械的強度の高い被膜を作製することができる。特にポリウレタン系では、比較的簡単に分子内に反応性の高い重合性不飽和基を導入することが可能である。ここで言う分子内とは高分子主鎖の両末端あるいは片末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接、重合性不飽和基が付いている場合なども含まれる。例えば直接、重合性の不飽和基をその分子末端に導入したものを用いても良いが、別法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基などの反応性基を複数有する数千程度の分子量の化合物と上記反応性基と結合しうる基を複数有する結合剤(例えば水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネートなど)を反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後、この末端結合性基と反応する基と重合性不飽和基を有する有機化合物と反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法などの方法が好適にあげられる。
バインダー(A')の種類としては、エラストマーであっても非エラストマーであって
も構わない。
好ましい範囲としては、0.5万から50万である。数平均分子量が0.1万から100万の範囲であれば、形成される被膜の機械的強度を確保することができる。数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、分子量既知のポリスチレン標品に対して評価したものである。
不飽和結合をもたないポリマー併用する場合、後者のポリマーは、炭素-炭素不飽和結合
をもつポリマーに対して、一般的に1〜90質量%、好ましくは5〜80質量%用いられる。なお、本発明ではバインダー(A')として、後者のみを用いても良い。
易い樹脂としては、分子鎖中に分解し易いモノマー単位としてスチレン、α−メチルスチレン、α−メトキシスチレン、アクリルエステル類、メタクリルエステル類、上記以外のエステル化合物類、エーテル化合物類、ニトロ化合物類、カーボネート化合物類、カルバモイル化合物類、ヘミアセタールエステル化合物類、オキシエチレン化合物類、脂肪族環状化合物類等が含まれていることが好ましい。特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート類、脂肪族カルバメート類、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ニトロセルロース、ポリオキシエチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロヘキサジエン水添物、あるいは分岐構造の多いデンドリマー等の分子構造を有するポリマーは、分解し易いものの代表例である。また、分子鎖中に酸素原子を多数含有するポリマーが分解性の観点から好ましい。これらの中でも、カーボネート基、カルバメート基、メタクリル基をポリマー主鎖中に有する化合物は、熱分解性が高く好ましい。例えば、(ポリ)カーボネートジオールや(ポリ)カーボネートジカルボン酸を原料として合成したポリウレタン、(ポリ)カーボネートジアミンを原料として合成したポリアミドなどを熱分解性の良好なポリマーの例として挙げることができる。これらのポリマーは、主鎖、側鎖に重合性不飽和基を含有しているものであっても構わない。特に、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の反応性官能基を有する場合には、重合性不飽和基を導入することも容易である。
熱可塑性樹脂において非エラストマー性のものとして、特に限定するものではないが、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー(例えばポリビニルアルコール誘導体)等を挙げることができる。
親水性ポリマーとは、水に溶解または膨潤するポリマーを意味する。親水性の樹脂は概して油性インキに対して耐性があり、好ましく使用される。このような樹脂として、例えばヒドロキシエチレンを含む親水性ポリマー、セルロースをはじめとする親水性官能基を有する多糖類、ポリアクリル酸ナトリウムのような酸性官能基が中和された塩構造やアミノ基が中和された塩構造やオニウム構造を含むアクリル樹脂、ポリエチレンオキサイドの如き親水性基を導入したポリアミド樹脂、ゼラチンなどが挙げられる。
良好な親水性を示す点で、ヒドロキシエチレンを含む親水性ポリマー、アミノ基またはカルボン酸基/スルホン酸基/硫酸基およびこれらが中和された塩構造などの極性基含有セルロース、アミノ基またはカルボン酸基/スルホン酸基/硫酸基およびこれらが中和された塩構造などの極性基含有アクリル樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。
より好ましくは、ヒドロキシエチレンを含む親水性ポリマー、アミノ基またはカルボン酸基/スルホン酸基/硫酸基およびこれらが中和された塩構造などの極性基含有アクリル樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、特に好ましくはポリビニルアルコール類、ポリアミド樹脂である。特に好ましくはポリビニルアルコール誘導体である。
PVA誘導体としては、特に好ましくはポリビニルアルコールおよびビニルアルコール/酢酸ビニル共重合体(部分鹸化ポリビニルアルコール)を例示することができ、これらの変性体もこれに該当する。
親水性ポリマーとして単独のポリマーを用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
親水性ポリマーとして、特にPVA誘導体とヒドロキシエチレン単位を含まない親水性ポリマーを併用することが好ましい。上記ヒドロキシエチレン単位を含まない親水性ポリマーを非PVA誘導体とも記す。
アジピン酸や1,6−ヘキサンジアミン、ε−カプロラクタムのみの重合によって得られるポリアミドは非水溶性で、PVA誘導体と明らかに極性が異なる。このような非水溶性ポリアミドにポリエチレングリコールやピペラジンのような親水性基を導入した親水性ポリアミドは、その親水性基の働きでPVA誘導体との相溶性が発現するため、非PVA誘導体として用いるのに好適である。つまり、非PVA誘導体として用いる親水性ポリア
ミドはPVA誘導体と相溶性があるため、PVA誘導体の分子間に容易に入り込むことができ、親水性ポリアミドの疎水性部分の作用でPVA誘導体と非PVA誘導体の両分子間の分子間力が弱められ、結果としてポリマーの柔軟化がなされるのである。
ε−カプロラクタムおよび/またはアジピン酸を、両末端アミン変性のポリエチレングリコールと反応させることでポリエチレングリコール単位を有するポリアミドが得られ、ピペラジンと反応させることでピペラジン骨格を有する親水性ポリアミドが得られる。また、親水性ポリアミドのアミド基とグリシジルメタクリレートのエポキシ基とを反応させることで、架橋性の官能基がポリマー中に導入された親水性ポリアミドが得られる。これら非PVA誘導体は単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
当該水酸基の少なくとも一部をカルボキシル基に変性したポリマーは、ポリビニルアルコールあるいは部分鹸化ポリビニルアルコールと、例えばコハク酸、マレイン酸やアジピン酸のような多官能カルボン酸とでエステル化することによって得ることができる。カルボキシル基の導入量は、当該水酸基1モルに対して0.01〜1.00モルが好ましく、0.05〜0.80モルが更に好ましい。
当該水酸基の少なくとも一部を(メタ)アクロイル基に変性したポリマーは、上記カルボキシル基変性ポリマーにグリシジル(メタ)アクリレートを付加することによって、またはポリビニルアルコールあるいは部分鹸化ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸とでエステル化することによって得ることができる。(メタ)アクロイル基の導入量は、当該水酸基1モルに対して0.01〜1.00モルが好ましく、0.03〜0.50モルが更に好ましい。なお、(メタ)アクロイル基との表記は、アクロイル基および/またはメタクロイル基を総称するものである。なお、(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを総称するものである。また、(メタ)アクリル酸等もこれと同様である。
当該水酸基の少なくとも一部をアミノ基に変性したポリマーは、ポリビニルアルコールあるいは部分鹸化ポリビニルアルコールと、例えばカルバミン酸のようなアミノ基を含有するカルボン酸とでエステル化することによって得ることができる。アミノ基の導入量は、当該水酸基1モルに対して0.01〜1.00モルが好ましく、0.05〜0.70モルが更に好ましい。
当該水酸基の少なくとも一部にエチレングリコールやプロピレングリコールおよびこれらの複量体を導入したポリマーは、ポリビニルアルコールあるいは部分鹸化ポリビニルアルコールとグリゴール類を硫酸触媒のもと加熱し、副生成物である水を反応系外に取り除くことによって得ることができる。エチレングリコールやプロピレングリコールおよびこれらの複量体の総導入量は、当該水酸基1モルに対して0.01〜0.90モルが好ましく、0.03〜0.50モルが更に好ましい。
親水性ポリマーの質量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算)は0.5万〜50万が好ましい。質量平均分子量が0.5万以上であれば、単体樹脂としての形態保持性に優れ、50万以下であれば、水など溶媒に溶解しやすくレーザー彫刻用樹脂組成物を調製するのに好都合である。より好ましくは1万〜40万、特に好ましくは1.5万〜3
0万である。
レーザー彫刻用樹脂組成物中のPVA誘導体と非PVA誘導体併用時の合計の含有量は、該樹脂組成物固形分全質量に対し30質量%〜80質量%が好ましく、40質量%〜70質量%がより好ましい。PVA誘導体および非PVA誘導体の合計の含有量を30質量%以上とすることで原版のコールドフローを防止することが可能で、80質量%以下とすることで他の成分が不足することがなく、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られるためである。
レーザー彫刻用樹脂組成物中のPVA誘導体と非PVA誘導体併用に際して、PVA誘導体の含有量は、該樹脂組成物固形分全質量に対し15質量%〜79質量%が好ましく、30質量%〜65質量%がより好ましい。PVA誘導体の含有量を15質量%以上とすることで、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、79質量%以下とすることで、他成分が不足することがなくフレキソ印刷版として使用するに足る柔軟性が得られるためである。一方、非PVA誘導体の含有量は、該樹脂組成物固形分全質量に対し1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。非PVA誘導体の含有量を1質量%以上とすることで、PVA誘導体の柔軟化が効率的になされてフレキソ版として使用するに足る柔軟性が得られ、かつ非PVA誘導体の強靱な特性からレリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、15質量%以下とすることで、非PVA誘導体が発生源となる粘着質の彫刻カスの発生量を低減することができる。
親水性ポリマーを用いると、彫刻カスも親水的となり、結果的に彫刻後に水道水で洗い流すだけという簡便な操作で彫刻カスを除去可能である。SB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)のような疎水的なポリマーやエラストマー、ポリウレタン、アクリル樹脂を主成分のバインダーとして用いると彫刻カスが疎水的であるため水洗による彫刻カスの除去が困難なケースも発生することがある。
また、例えばPVA誘導体を親水性ポリマー(特にガラス転移温度が室温以上の非エラストマー)として用いる場合、上記の疎水性ポリマーやエラストマー(ほとんどがガラス転移温度が室温以下)に比べて、ガラス転移温度が低いことに起因する彫刻時のレリーフのエッジ溶融が抑制傾向にあり好ましい。
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド類、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、などのエチレン性不飽和結合を1個だけ有する化合物、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物、などの2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。本発明においては、これらを単独で、もしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
主鎖にオレフィンおよび炭素−炭素三重結合の少なくともいずれかを含むポリマーが挙げられ、例えばSB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
親水性ポリマーと併用してもよいバインダーポリマーは、彫刻感度を低下させずに膜性を向上させる程度に含有させることが好ましく、全バインダーポリマー中、1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが最も好ましい。
量を100とした時に(A):(A')=0.1:99.9〜99.9:0.1が好ましく、
より好ましくは5:95〜80:20、特に好ましくは10:90〜50:50である。
(A)とバインダー(A')の併用時、(A')が親水性ポリマーの場合、組成物を調製する溶媒が水あるいはアルコールが主体となるので、(A)はエマルション(懸濁液あるいはラテックスとも呼ぶ)の状態で(A')と混合することが好ましい。ポリ乳酸エマル
ションの好ましい具体例として、「ランディPL」シリーズ(ミヨシ油脂製)、「ビオノーレ」(昭和高分子製)などを挙げることができる。
(A)をエマルションの状態で使用する時、組成物の調製中や乾燥中に(A)が凝集・析出することを防止するために、(A)の分散を補助するような界面活性剤や安定化剤を添加してもよい。
本発明で使用される(B)の金属またはメタロイドは、周期律表の1〜16族から選択されるものであればとくに制限されないが、アルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs,Fr)、アルカリ土類金属(Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Ra)、アルミニウム、珪素、リン、チタン、ゲルマニウム、砒素、ジルコニウム、スズ、亜鉛、カドミウム、ビスマス、インジウム、スカンジウムまたはアンチモンが好ましいものとして挙げられる。彫刻感度の点で好ましいのは、アルカリ土類金属、アルミニウム、珪素、リン、ビスマス、チタン、ゲルマニウム、砒素、ジルコニウム、スズ、亜鉛であり、より好ましくはアルカリ土類金属、スズ、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、チタン(好ましくは原子価4)、アルミニウム、特に好ましくはアルカリ土類金属、スズ、ビスマス、亜鉛、チタン、アルミニウムである。
所望により、オキシ化合物の有機部分は一部が多価であるもの、例えば多価アルコール(例えばグリコールもしくはグリセロール)、ポリビニルアルコールもしくはヒドロキシカルボン酸から誘導されるものでありうる。キレート化合物を使用してもよい。炭素原子が存在する場合、代表的には前記金属またはメタロイド1個当たりの炭素原子の数は4〜24個の範囲である。
本発明で好ましい(B)としては、トランスエステル化触媒またはその前駆体(例えばチタンブトキシド(n-、イソまたはtert-)またはチタンプロポキシド(n-またはイソ)、アルカリ土類金属の酸化物である。
また、前記(A)や(A')との相溶性が良好な観点からは、特に亜鉛、スズ、ビスマ
ス、アルミニウムのカルボキシレートが好ましく、中でも酢酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸スズ、ビスマス トリス(2-エチルヘキサノエート)、ビス(2-エチルヘキサン酸)ヒドロキシアルミニウムが特に好ましい。
可塑剤(F)等を含むことが好ましい。以下、これらについて詳述する。
本発明において、重合性化合物(C)とは、重合開始剤由来の開始ラジカルの発生を引き金としてラジカル重合可能な炭素-炭素不飽和結合を少なくとも1つ以上有する化合物
を意味する。
以下に、重合性化合物(C)として付加重合性化合物を用いた場合を例に挙げ、より詳しく述べる。
本発明に使用される好ましい重合性化合物としては、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物が挙げられる。この付加重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれることが好ましい。このような化合物群は当産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に制限なく用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの共重合体、ならびにそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナト基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R及びR'は、H又はCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
レーザー分解の前および/または後で、重合性化合物を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物は、光、熱などのエネルギーにより重合、硬化させることができる。
即ち、架橋ネットワーク中にS原子を含んでいることが好ましい。
S原子を含む重合性化合物とS原子を含まない重合性化合物との併用も可能であるが、レリーフのエッジ溶融が起こりにくいという観点で、S原子を含む重合性化合物単独であるほうが好ましい。また、特性の異なるS含有重合性化合物を複数併用することにより、膜の柔軟性の調節等に寄与することも可能である。
S原子を含む重合性化合物として、以下の化合物を挙げることができる。
本発明の光熱変換剤(D)は、700〜1300nmに極大吸収波長を有する。本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物において、700から1300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、赤外線吸収剤として光熱変換剤(D)が用いられる。光熱変換剤(D)は、レーザー光を吸収し、発熱して該樹脂組成物の熱分解を促進する。本発明において使用される光熱変換剤(D)は、波長700nmから1300nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましい。
本発明において、好適に用いることのできるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
下記一般式(d)または一般式(e)で表される色素は光熱変換性の観点から好ましい。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ま
しいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
本願で用いられる光熱変換剤の具体例としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、インドリウム系色素、ベンズインドリウム系色素、ベンゾチアゾリウム系色素、キノリニウム系色素、顕色剤と反応させたフタリド化合物等を挙げることができる。全てのシアニン系色素が、前述した光吸収特性を有するものではない。置換基の種類および分子内での位置、共役結合の数、対イオンの種類、色素分子の存在する周囲の環境などにより、光吸収特性が極めて大きく変化する。また、一般に市販されているレーザー色素、過飽和吸収色素、近赤外線吸収色素を使用することもできる。例えば、レーザー色素として、アメリカン・ダイ・ソース社(カナダ国)の商標「ADS740PP」、「ADS745HT」、「ADS760MP」、「ADS740WS」、「ADS765WS」、「ADS745HO」、「ADS790NH」、「ADS800NH」、株式会社林原生物化学研究所社製の商標「NK−3555」、「NK−3509」、「NK−3519」を挙げることができる。また、近赤外線吸収色素として、アメリカン・ダイ・ソース社(カナダ国)商標「ADS775MI」、「ADS775MP」、「ADS775HI」、「ADS775PI」、「ADS775PP」、「ADS780MT」、「ADS780BP」、「ADS793EI」、「ADS798MI」、「ADS798MP」、「ADS800AT」、「ADS805PI」、「ADS805PP」、「ADS805PA」、「ADS805PF」、「ADS812MI」、「ADS815EI」、「ADS818HI」、「ADS818HT」、「ADS822MT」、「ADS830AT」、「ADS838MT」、「ADS840MT」、「ADS845BI」、「ADS905AM」、「ADS956BI」、「ADS1040T」、「ADS1040P」、「ADS1045P」、「ADS1050P」、「ADS1060A」、「ADS1065A」、「ADS1065P」、「ADS1100T」、「ADS1120F」、「ADS1120P」、「ADS780WS」、「ADS785WS」、「ADS790WS」、「ADS805WS」、「ADS820WS」、「ADS830WS」、「ADS850WS」、「ADS780HO」、「ADS810CO」、「ADS820HO」、「ADS821NH」、「ADS840NH」、「ADS880MC」、「ADS890MC」、「ADS920MC」、山本化成株式会社製、商標「YKR−2200」、「YKR−2081」、「YKR−2900」、「YKR−2100」、「YKR−3071」、有本化学工業株式会社製、商標「SDO−1000B」、株式会社林原生物化学研究所社製、商標「NK−3508」、「NKX−114」を挙げることができる。ただし、これらのみに限定されるものではない。また、顕色剤と反応させたフタリド化合物は、特許第3271226号公報に記載されているものを用いることもできる。また、リン酸エステル金属化合物、例えば特開平6−345820号公報、WO99/10354号パンフレットに記載のあるリン酸エステルと銅塩との複合体を用いることもできる。更に、近赤外線領域に光吸収特性を有する数平均粒子径が好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下、更に好ましくは0.08μm以下の超微粒子を用いることもできる。例えば、酸化イットリウム、酸化錫および/または酸化インジウム、酸化銅、酸化鉄等の金属酸化物、あるいは金、銀、パラジウム、白金等の金属などを挙げることもできる。更に、数平均粒子径が5μm以下、より好ましくは1μm以下の、ガラス等の微粒子中に銅、錫、インジウム、イットリウム、クロム、コバルト、チタン、ニッケル、バナジウム、希土類元素のイオン等の金属イオンを添加したものを用いることもできる。また、感光性樹脂組成物と反応し光吸収波長が変化するような色素の場合、マイクロカプセル中に含有させることもできる。その場合、カプセルの数平均粒子径は、10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下である。イオン交換体微粒子に銅、錫、インジウム、イットリウム、希土類元素等の金属イオンを吸着させたものを用いることもできる。イオン交換体微粒子としては、有機系樹脂微粒子であっても無機系微粒子であっても構わない。無機系微粒子としては、例えば非晶質リン酸ジルコニウム、非晶質ケイリン酸ジルコニウム、非晶質ヘキサメタリン酸ジルコニウム、層状リン酸ジルコニウム、網状リン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、ゼオライト等を挙げることができる。有機系樹脂微粒子としては、通常使用されているイオン交換樹脂、イオン交換セルロース等を挙げることができる。
本願では、比較的低い比表面積及び比較的低いDBP吸収を有するカーボンブラックや比表面積の大きい微細化されたカーボンブラックまでを使用することも可能である。
好適なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A又はSpezialschwarz(登録商標)4(Degussaより)を含む。
本願では、光熱変換により発生した熱を周囲のポリマー等に効率よく伝えることで彫刻感度が向上するという観点で、比表面積が少なくとも150m2/g及びDBP数が少なくとも150ml/100gである、伝導性カーボンブラックが好ましい。
この比表面積は好ましくは、少なくとも250、特に好ましくは少なくとも500m2/gである。DBP数は好ましくは少なくとも200、特に好ましくは少なくとも250ml/100gである。上述したカーボンブラックは酸性の又は塩基性のカーボンブラックであって良い。カーボンブラックは好ましくは塩基性のカーボンブラックである。
約1500m2/gにまで及ぶ比表面積及び約550ml/100gにまで及ぶDBP数を有する適当な伝導性カーボンブラックが、例えば、Ketjennlack(登録商標)EC300J、Ketjennlack(登録商標)EC600J(Akzoより)、Prinrex(登録商標)XE(Degussaより)又はBlack Pearls(登録商標)2000(Cabotより)、ケッチェンブラック(ライオン(株)製)の名称で、商業的に入手可能である。
重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue, 93, 435 (1993) やR.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A:Chemistry,73.81 (1993); J.P.Faussier, "Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications":Rapra Review vol.9, Report, Rapra Technology(1998); M.Tsunooka et al., Prog.Polym.Sci., 21, 1 (1996)等に多く記載されている。また、F.D.Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990); G.G.Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993); H.B.Shuster et al,JACS, 112, 6329 (1990); I.D.F.Eaton et al, JACS, 102, 3298 (1980)等に記載されているような、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格あるいはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、下記の化合物が挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(b)オニウム塩化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
を示す。(Z3)-は(Z2)-と同義の対イオンを表す。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリイブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリイブチルパーオキサイド、ターシャリイブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリイブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリイブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリイブチルパーオキシアセテート、ターシャリイブチルパーオキシピバレート、ターシャリイブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリイブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリイブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリイブチルパーオキシラウレート、ターシャリーカーボネート、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
本発明で用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(d)チオ化合物としては、下記一般式(4)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
またはアルキル基を示す。また、R26とR27は、互いに結合して酸素、硫黄および窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。)
上記一般式(4)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記に示すような化合物が挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル
)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(f)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(g)ボレート化合物の例としては、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、又は置換もしくは非置換の複素環基を示し、R28、R29、R30およびR31はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R28、R29、R30およびR31のうち、少なくとも1つは置換もしくは非置換のアルキル基である。(Z5)+はアルカリ金属カチオンまたは第4級アンモニウムカチオンを示す。)
一般式(5)で示される化合物例としては具体的には米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物および以下に示すものが挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(h)アジニウム塩化合物としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号記載のN−O結合を有する化合物群をあげることができる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(i)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号記載の鉄−アレーン錯体をあげることができる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(j)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号記載の活性スルホネート類をあげることができる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(6)から(12)のものを挙げることができる。
リール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基又はシアノ基であり、X3はハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)
ロゲンであり、Z6は−C(=O)−、−C(=S)−又は−SO2−であり、X3はハロ
ゲン原子であり、mは1又は2である。)
ル基又は置換アリール基であり、R44は一般式(6)中のR38と同じである。)
炭素原子1〜3個を有するトリハロアルキル基又はトリハロアルケニル基であり、pは1、2又は3である。)
す。L7は水素原子又は式:CO−(R47)q(C(X4)3)rの置換基であり、Q2はイオウ、セレン又は酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1
,2−フェニレン基又はN−R基であり、M4は置換又は非置換のアルキレン基又はアル
ケニレン基であるか、又は1,2−アリーレン基であり、R48はアルキル基、アラルキル基又はアルコキシアルキル基であり、R47は、炭素環式又は複素環式の2価の芳香族基であり、X4は塩素、臭素またはヨウ素原子であり、q=0及びr=1であるか又はq=1
及びr=1又は2である。)
表す。X5はハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、
R49は水素原子又はCH3-tX5 t基であり、R50はs価の置換されていてもよい不飽和有
機基である。)
表す。X6はハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、
R51は水素原子又はCH3-vX6 v基であり、R52はu価の置換されていてもよい不飽和有
機基である。)
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、たとえば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2′,4′−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、たとえば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、たとえば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。あるいはさらにM.P.Hutt、E.F.ElslagerおよびL.M.Herbel著「Journalof Heterocyclic chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる次のような化合物群、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
本発明における重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
可塑剤(F)としては例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、メチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等がある。また、可塑剤として、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)がある。
可塑剤は、レリーフ形成層を柔軟化する作用を有するものであり、バインダーポリマーに対して相溶性の良いものである必要がある。一般に、バインダーポリマーに対しては、親水性の高い化合物が相溶性が良好である。親水性の高い化合物の中でも、例えば、直鎖にヘテロ原子を含むエーテル化合物や2級アミンなどの親水性基と疎水性基が交互に続く構造をとるものが好ましく用いられる。−O−や−NH−のような親水性基の存在がPVA誘導体との相溶性を発現し、それ以外の疎水性基がPVA誘導体の分子間力を弱めて柔軟化に働くためである。また、PVA誘導体との間に水素結合を形成しうる水酸基の少ないものが好ましく用いられる。このような化合物に該当するのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびこれらの二量体、三量体、および四量体以上の単独多量体や共多量体、ジエタノールアミン、ジメチロールアミンのような2級アミン類である。これらの中でも、立体障害が小さく相溶性にすぐれ、毒性が低いエチレングリコール類(単量体、二量体、三量体、多量体)が可塑剤(F)として特に好ましく用いられる。
エチレングリコール類は、その分子量により3種類に大別される。第一に単量体であるエチレングリコール、第二に二量体であるジエチレングリコールと三量体であるトリエチレングリコール、第三に四量体以上のポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、語尾に平均分子量をつけた名称で市販されていることが多く、分子量200〜700の液状ポリエチレングリコールと分子量1000以上の固体ポリエチレングリコールに大別される。
鋭意検討の結果、可塑剤の分子量が低分子であるほど、樹脂を柔軟化する効果が高いことが明らかになった。このことから特に好ましく用いられるのは第一のグループであるエチレングリコール、第二のグループであるジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール、第三のグループに含まれるテトラエチレングリコール(四量体)であるが、中でも、毒性が低く、樹脂組成物中からの抽出がなく取り扱い性に優れる点で、より好ましく用いられる可塑剤(D)は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールである。また、これらの2種以上の混合物も好ましく用いられる。
可塑剤は、レーザー彫刻用樹脂組成物固形分全質量に対し10質量%以下添加することができる。
熱伝達を補助する目的で、熱伝導性の高い物質を添加するとさらに彫刻感度が向上する。無機化合物(金属粒子)としては、粒径がマイクロメートルオーダーから数ナノメートルオーダーの金微粒子、銀微粒子、銅微粒子が好ましく、有機化合物としては導電性ポリマーとして一般に知られるポリマーが好ましい。
特に、導電性ポリマーのなかでも、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアセチレンおよびこれらの誘導体が好ましく、高感度であるという点でポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンおよびこれらの誘導体がさらに好ましく、特に好ましくはポリアニリンである。ポリアニリンはエメラルディンベースまたはエメラルディン塩のどちらの形態で添加してもよいが、熱伝達効率が高い点でエメラルディン塩であることが好ましい。
以上の熱伝達効率向上の点で最も好ましいのは、「aquaPASS-01x」(三菱レイヨン製)、「Panipol-W」(Panipol社製)、「Panipol-F」(Panipol社製)である。
<彫刻感度向上のための添加剤>
彫刻感度向上のための添加剤としてニトロセルロースを加えることがより好ましい。ニトロセルロースは自己反応性化合物であるため、レーザー彫刻時、自身が発熱し、共存する親水性ポリマーの熱分解をアシストする。その結果、彫刻感度が向上すると推定される。
ニトロセルロースの種類は、熱分解可能である限り特に制限されず、RS(regular soluble)タイプ,SS(spirit soluble)タイプ及びAS(alcohol soluble)タイプのいずれであってもよい。前記ニトロセルロースの窒素含量は、通常、10〜14質量%程度、好ましくは11〜12.5質量%、さらに好ましくは11.5〜12.2質量%程度である。ニトロセルロースの重合度も、例えば、10〜1500程度の広い範囲で選択できる。好ましいニトロセルロースの重合度は、例えば、10〜900、特に15〜150程度である。好ましいニトロセルロースには、JIS K6703「工業用ニトロセルロース」(ハーキュレスパウダー社の粘度表示法)による溶液粘度が20〜1/10秒、好ましくは10〜1/8秒程度のニトロセルロースが含まれる。ニトロセルロースとしては、溶液粘度5〜1/8秒、特に1〜1/8秒程度のニトロセルロースを用いる場合が多い。なお、レーザー彫刻用樹脂組成物を形成するためのニトロセルロースとしては、酢酸エチルなどのエステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンやセロソルブなどのエーテル類に可溶なRSタイプのニトロセルロース(例えば、窒素含量11.7〜12.2%程度のニトロセルロース)を用いる場合が多い。ニトロセルロースは、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
ニトロセルロースの使用量は、レーザー彫刻用樹脂組成物の感度を低下させない範囲で選択でき、例えば、バインダーポリマー及び重合性化合物(C)100質量部に対して、5〜300質量部、好ましくは20〜250質量部、さらに好ましくは50〜200質量部程度であり、40〜200質量部程度である場合が多い。
ある種の添加剤(以後、共増感剤という)を用いることで、レーザー彫刻用樹脂組成物を光硬化させる際の感度をさらに向上させる事ができる。これらの作用機構は、明確では
ないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。即ち、光重合開始剤により開始される光反応とそれに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、カチオン)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(a)還元されて活性ラジカルを生成しうるもの、(b)酸化されて活性ラジカルを生成しうるもの、(c)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、もしくは連鎖移動剤として作用するものに分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては通説がない場合も多い。
炭素−ハロゲン結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂して、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
(b)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂して、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
(c)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、もしくは連鎖移動剤として作用する化合
物:例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これ
らは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンする事によりラジカルを生成しうる。具体的には、例えば、2−メルカ
プトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンゾオキサゾール類、2−メルカプトベンズイミダゾール類等があげられる。
また、本発明においては以上の成分の他に組成物の製造中あるいは保存中において重合性化合物(C)の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t
−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t―ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t―ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。また、重合禁止剤としては、本発明に係る樹脂組成物を用いてレリーフ形成層を有するレーザー彫刻用樹脂印刷版原版を作成し、これを保存する際の安定性に非常に優れるという点で、Q-1301(10%トリクレジルホスフェート溶液)(和光純薬工業製)が好ましい。これを前記重合性化合物(C)と組み合わせて用いると、レーザー彫刻用樹脂印刷版原版の保存安定性が格段に優れ、また良好なレーザー彫刻感度が得られる。熱重合禁止剤の添加量は、全レーザー彫刻用樹脂組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を禁止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、支持体等への塗布後の乾燥の過程でその層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
さらに、レーザー彫刻用樹脂組成物の着色を目的として染料もしくは顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させる事ができる。着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては例えばフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。着色剤の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
さらに、レーザー彫刻用樹脂組成物の硬化皮膜の物性を改良するために充填剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
本発明におけるレーザー彫刻用樹脂印刷版原版は、支持体上に、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。レーザー彫刻用樹脂組成物として架橋性樹脂組成物を用いると、架橋性のレリーフ形成層が得られる。レーザー彫刻用樹脂印刷版原版は、必要により更に、支持体とレリーフ形成層との間に接着層を、また、レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂印刷版原版は、レリーフ形成層を架橋させ、次いでレーザー彫刻することによりレリーフ印刷版を作製することができる。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ形成層の摩耗を防ぐことができるし、レーザー彫刻後にシャープな形状を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
レリーフ形成層中の重合開始剤(E)の含有量は、レリーフ形成層の固形分全質量に対し0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。重合開始剤(E)の含有量を0.01質量%以上とすることで架橋性レリーフ形成層の架橋が速やかに行われ、10質量%以下とすることで他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られるためである。
レリーフ形成層中の重合性化合物(C)の含有量は、レリーフ形成層の固形分全質量に対し10〜60質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。重合性化合物(C)の含有量を10質量%以上とすることでレリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、60質量%以下とすることでレリーフ印刷版として使用するに足る強度が得られるためである。
レリーフ形成層は、前記樹脂組成物をシート状あるいはスリーブ状に成形することで得ることができる。
レリーフ形成層と支持体の間に、両層間の接着力を強化する目的で接着層を設けても良い。接着層に使用される材料は、レリーフ形成層が架橋された後において接着力を強固にするものであれば良いが、レリーフ形成層が架橋される前も接着力が強固であることが好ましい。ここで、接着力とは支持体/接着層間および接着層/レリーフ形成層間の接着力の両者を意味する。
支持体/接着層間の接着力は、支持体/接着層/レリーフ形成層からなる積層体から接着層およびレリーフ形成層を400mm/分の速度で剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が1.0N/cm以上または剥離不能であることが好ましく、3.0N/cm以上または剥離不能であることがより好ましい。
接着層/レリーフ形成層の接着力は、接着層/レリーフ形成層から接着層を400mm/分の速度で剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が1.0N/cm以上または剥離不能であることが好ましく、3.0N/cm以上または剥離不能であることがより好ましい。
保護フィルムは、薄すぎると傷・凹み防止の効果が得られず、厚すぎると取り扱いが不便になり、コスト高にもなる。よって、保護フィルムの厚さは25μm〜500μmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。
レリーフ形成層上に保護フィルムを設ける場合、保護フィルムは剥離可能でなければならない。保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。
スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分
鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解または分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの中で、粘着性の面から、鹸化度60〜99モル%の部分鹸化ポリビニルアルコール、アルキル基の炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースが特に好ましく用いられる。
次に、レーザー彫刻用樹脂印刷版原版の作製方法について説明する。作製方法は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用樹脂組成物の溶液を調製し、この溶液から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいはレーザー彫刻用樹脂組成物の溶液を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶液から溶媒を除去する方法でも良い。
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしても良い。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶媒を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることよって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採っても良い。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
本願のレリーフ形成層は架橋前後で0.05mm以上の厚みを有することが好ましい。耐磨耗性やインキ転移性のような種々のフレキソ印刷適性を満たす観点で、0.05〜10mmが好ましく、より好ましくは0.05〜7mm、特に好ましくは0.05〜3mmである。
以上のようにして得られたレーザー彫刻用樹脂印刷版原版は、下記の工程を順次経て、レリーフ印刷版を製造することができる。
第1の例は、(1a)レーザー彫刻用樹脂印刷版原版に活性光線を照射してレリーフ形成層を架橋する工程、(2)架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程からなる。
第2の例は、(1b)レーザー彫刻用樹脂印刷版原版を加熱してレリーフ形成層を架橋する工程、(2)架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程からなる。
上記(1a)と(1b)は併用してもよく、互いに同時工程でも別時工程としてもよい。
さらに、必要に応じて下記工程を含んでも良い。工程(2)に次いで、(3)水または
水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程、(4)彫刻されたレリーフ形成層を乾燥する工程、(5)レリーフ形成層をさらに架橋する工程、である。
レリーフ形成層が光重合開始剤を含有する場合には、光重合開始剤のトリガーとなる活性光線をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層を架橋することができる。活性光線の照射は、レリーフ形成層全面に行うのが一般的である。活性光線としては可視光、紫外光あるいは電子線が挙げられるが、紫外光が最も一般的である。レリーフ形成層の支持体側を裏面とすれば、表面に活性光線を照射するだけでも良いが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムならば、さらに裏面からも活性光線を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行っても良いし、保護フィルムを剥離した後に行っても良い。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、架橋性レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行っても良い。
光を利用する工程(1a)は、活性光線を照射する装置が比較的高価であるものの、印刷版原版が高温になる事がないので、印刷版原版の原材料の制約がほとんどない。熱を利用する工程(1b)には特別高価な装置を必要としない利点があるが、印刷版原版が高温になるので、高温で柔軟になる熱可塑性ポリマーは加熱中に変形する可能性がある等、使用する原材料は慎重に選択する必要がある。
熱架橋の際には、熱重合開始剤が加えられ得る。原則として、遊離基重合(free radical polymerization)用の商業的な熱重合開始剤が重合開始剤、例えば、適当な過酸化物、ヒドロペルオキシド又はアゾ基を含む化合物、として使用され得る。代表的な加硫剤も架橋用に使用される。
熱架橋性(heat−curable)の樹脂、例えばエポキシ樹脂、を架橋成分として層に加えることにより熱架橋も実施され得る。
レリーフ形成層を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。未架橋のレリーフ形成層をレーザー彫刻すると、レーザー照射部の周辺に伝播した余熱により、本来意図していない部分が溶融、変形しやすく、シャープなレリーフが得られない場合がある。また、素材の一般的な性質として、低分子なものほど固形ではなく液状になり、すなわち粘着性が強くなる傾向がある。レリーフ形成層を彫刻する際に発生する彫刻カスは、低分子の材料を多く用いるほど粘着性が強くなる傾向がある。低分子である重合性化合物(C)は架橋することで高分子になるため、発生する彫刻カスは粘着性
が少なくなる傾向がある。
なかでも光熱変換剤(D)の極大吸収波長に対応した赤外レーザーで彫刻する場合に、より高感度かつシャープなレリーフが得られる。
彫刻表面をリンスする工程(3)を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる工程(4)を追加することが好ましい。
さらに、必要に応じてレリーフ形成層をさらに架橋させる工程(5)を追加しても良い。追加の架橋工程(5)を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
本発明の方法で製造されたレリーフ印刷版は、凸版用印刷機による油性インキやUVインキでの印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。
撹拌羽および冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、(A)としてランディPL−2000(ポリ乳酸のエマルジョン(水分散液)、ミヨシ油脂製)10g、バインダー(A')と
して「ゴーセナールT−215(日本合成化学工業(株)製、PVA誘導体)40g、光熱変換剤(D)としてケッチェンブラックEC600JD(ライオン(株)製)を0.7
5g、可塑剤としてジエチレングリコール20g、溶媒として水35gおよびエタノール12gを入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱しポリマーを溶解させた。さらに重合性化合物(C)としてエチレン性不飽和モノマーの下記化合物28g、重合開始剤として“イルガキュア”184(α−ヒドロキシケトン、チバ・ガイギー(株)製)を1.6g、(B)として酸化マグネシウム(重質)(和光純薬工業製)1.0g添加して30分間撹拌し、流動性のある架橋性レリーフ形成層用のレーザー彫刻用樹脂組成物の溶液を得た。
彫刻深さは、ベタ彫刻部分の断面を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK9510((株)キーエンス製)にて観察し、レリーフ形成層表面と彫刻された部分の高さの差を読みとることで測定した。結果を表1に示す(以下の評価も同様に表1に示す)。
上記実施例1において、(B)酸化マグネシウムを、(B)酸化カルシウム(和光純薬工業製)に変更した以外は全て同様に実施した。
上記実施例1において、(B)酸化マグネシウムを、(B)ネオスタンU−600(日東化成製、ビスマス トリス(2−エチルヘキサノエート)と2−エチルヘキサン酸の混合物)に変更した以外は全て同様に実施した。
上記実施例1において、(B)酸化マグネシウムを、(B)2−エチルヘキサン酸スズ(和光純薬工業製)に変更した以外は全て同様に実施した。
上記実施例1において、(B)酸化マグネシウムを、(B)酸化亜鉛(和光純薬工業製)に変更した以外は全て同様に実施した。
<実施例6>
上記実施例1において、(A)ランディPL−2000を、(A)ポリエチレンテレフタレート(質量平均分子量=10万)に変更し、(B)酸化マグネシウムを、(B)2−エチルヘキサン酸スズ(和光純薬工業製)に変更した以外は全て同様に実施した。
実施例1〜5において、彫刻用のレーザーを半導体レーザーからCO2レーザーに変更し、実施例7〜11とした。
レリーフ形成には、炭酸ガスレーザー彫刻機として、最大出力30Wの炭酸ガスレー
ザーを装備した“CO2レーザーマーカーML−Z9500”((株)キーエンス製)を用いた。彫刻条件は、レーザー出力:15W、走査速度:100mm/秒、ピッチ間隔:0.15mmに設定し、2cm四方のベタ部分を彫刻しレリーフ印刷版を作製した。
実施例1〜11において、架橋されたレリーフ形成層の厚みは、およそ1mmであり、ショアA硬度(25℃)は、およそ70°であった。
実施例1において、ランディPL−2000を無しにして、その分をPVA誘導体で補填した以外は全て同様に実施した。
<比較例2>
実施例1において、ランディPL−2000及びPVA誘導体を「TR−2000」(JSR製のスチレン-ブタジエンゴム)に変更した以外は全て同様に実施した。
<比較例3〜4>
比較例1〜2の彫刻用のレーザーを半導体レーザーからCO2レーザーに変更した。
<比較例5>
実施例1において、酸化マグネシウムを無しにして、その分をPVA誘導体で補填した以外は全て同様に実施した。これを半導体レーザーで彫刻した。
<比較例6>
実施例1において、酸化マグネシウムを無しにして、その分をPVA誘導体で補填した以外は全て同様に実施した。これをCO2レーザーで彫刻した。
Claims (15)
- (A)脂肪族ポリエステルを含むバインダーポリマーおよび(B)周期律表の1〜16族から選択される金属またはメタロイドの少なくとも一つのオキシ化合物を含んでなることを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記脂肪族ポリエステルが、ヒドロキシルカルボン酸ユニットからなるポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレンコハク酸)及びこれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1種のポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記脂肪族ポリエステルが、ポリヒドロキシアルカノエート、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレンコハク酸)、これらの誘導体及びこれらの少なくとも2つの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記脂肪族ポリエステルが、ポリヒドロキシアルカノエート、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸、これらの誘導体及びこれらの少なくとも2つの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項2または3に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記バインダーポリマーは、親水性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール誘導体であることを特徴とする請求項5に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 重合性化合物(C)を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 700〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤(D)を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記光熱変換剤(D)は、カーボンブラック、シアニン系化合物およびフタロシアニン系化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂印刷版原版。
- 請求項10に記載のレリーフ形成層を光および/または熱により架橋する工程1)、および架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程2)を含むことを特徴とするレリーフ印刷版の製造方法。
- 前記工程1)は、レリーフ形成層を熱により架橋する工程であることを特徴とする請求項11に記載のレリーフ印刷版の製造方法。
- 請求項11または12に記載の方法で製造されたレリーフ印刷版。
- 請求項11または12に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層の厚みが0.05mm以上であることを特徴とする請求項13に記載のレリーフ印刷版。
- 請求項11または12に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層のショアA硬度が50〜90°であることを特徴とする請求項13または14に記載のレリーフ印刷版。
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