JP3900633B2 - レーザーによるレリーフの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性樹脂組成物をシート状にし、光硬化した後にレーザー光を照射してシート表面に凹凸を形成したレリーフの製造方法、その製造装置および印刷版材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
感光性樹脂組成物を印刷用版材として使用することは一般的に行われ、凸版、平版、凹版印刷の各分野において主流となっている。
【0003】
このような印刷版材は、ネガティブ、ポジティブの原画フィルムを感光性樹脂層に密着させ、活性光線を原画フィルムを通して照射することにより、感光性樹脂層中に溶剤に溶解する部分と溶解しない部分を形成することでレリーフ像を形成し、印刷版材として使用するものである。
【0004】
このような印刷版材は、ネガティブ、ポジティブの原画フィルムを必要とし、また、現像工程を必要とすることから、1つの印刷用版材を作成するために、多くの工程と労力を必要とするものであった。
【0005】
現在、コンピューターが進歩し、コンピューター上で処理された情報を印刷版材上に直接出力し、原画フィルムの作成工程および現像工程を必要とせずに、印刷版材を得る方法が提案されている(例えば特開平2−235634号公報、特開平6−55723号公報など)。
【0006】
しかしながら、これらは主として平版印刷を対象とするものであり、凸版材については、上述のような工程を簡略化した印刷版材の製造方法は、提案されていないのが現状である。また、上述の平版で提案されている方法は、インキ反発層とインキ受容層をいかに形成するかを特徴とし、凸版にはそのまま利用できないものである。
【0007】
さらに、ゴムなどのプラスチック板に直接レーザーを照射して凹凸を形成する方法も知られているが、ゴム等の強度等が足らないため凹凸が形成されたエッジが十分シャープにならないという問題点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を鑑みて、原画フィルムを必要とせず、また現像工程を必要としないで感光性樹脂組成物に凹凸のある像を形成したレリーフの製造方法、およびこのレリーフを用いた樹脂凸版用印刷版材を提案するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、親水性樹脂、エチレン性不飽和モノマと光重合開始剤を少なくとも含有する感光性樹脂組成物をエタノールおよび水の混合溶媒に溶解した感光性樹脂溶液を調製し、該感光性樹脂溶液を流延後乾燥することによって感光性樹脂組成物をシート状に加工し、300〜500nmの光を照射して感光性樹脂組成物を硬化させた後、この硬化物にレーザー光を照射することによって凹凸のある像を形成するレリーフの製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物とは、300〜500nmの光を照射することにより、光硬化する組成物のことである。このような感光性樹脂組成物は、一般に親水性樹脂、エチレン性不飽和モノマと光重合開始剤を少なくとも含有するものである。
【0012】
エチレン性不飽和モノマとは、ラジカル重合により架橋可能な物質である。ラジカル重合により架橋可能な物質は、特に限定されるものではないが、一般に次のようなものを挙げることができる。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド類、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3ークロロー2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、などのエチレン性不飽和結合を1個だけ有する化合物、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物、などの2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。
【0013】
光重合開始剤とは、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば特に限定されない。なかでも、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などある。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物を固体状態にして形態を保持するために、担体樹脂を加えることができる。このような担体樹脂としては、使用するインキによって、使い分けられるのが一般的である。水性インキを使用する印刷版材を得る場合には、担体樹脂として、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンゴムなどの汎用ゴムやエラストマーが使用される。油性インキを使用する場合は、ポリアミド樹脂、部分ケン化ポリ酢酸ビニルなどの親水性樹脂が使用される。
【0015】
その他の成分として、相溶性、柔軟性を高めるための相溶化剤としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類を添加することも可能であり、熱安定性を上げる為に、従来公知の重合禁止剤を添加することができる。好ましい重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類などが挙げられる。また、染料、顔料、界面活性剤、紫外線吸収剤、香料などを添加することもできる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物をシート状にして、光硬化したシートを得る方法としては、少なくともエチレン性不飽和モノマと光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどに、流延し、さらにその上からポリエチレンテレフタレートフィルムで挟み込んだ後に、特定の厚みになるようにロールなどにより厚み強制し、その後、300〜500nmの光を照射することにより、光硬化したシートを得ることができる。このように感光性樹脂版を用いることによって、版材用途を意識して光硬化後の硬度を自由に設計することができる。
【0017】
また、担体樹脂を含有する感光性樹脂組成物の場合、担体樹脂をその樹脂を溶解できる溶剤に溶解した後に、エチレン性不飽和モノマ、光重合開始剤を添加して充分攪拌し、感光性樹脂組成物溶液を得ることができる。この溶液から溶剤を除去した後に、接着剤を塗布した基板上に溶融押し出しし、そこに、300〜500nmの光を照射することで光硬化したシートを得ることができる。基板としてはスチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属やポリエステルなどのプラスチックシート、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムシートが使用される。
【0018】
感光層の厚みは、感光層の凸部にインキが受容し、それが被印刷体などに転写できる厚みがあれば特に限定されないが、0.2〜7mmの厚さに形成することが好ましい。
【0019】
感光性樹脂を光硬化させる光源は特に限定されないが、通常300〜400nmの波長を照射できるものとして、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などが使用できる。
【0020】
光硬化して得られた感光性樹脂シートに凹凸を形成する方法としては、レーザー光を発信する装置からレーザー光出力し、これをレンズにより集光させて、1μm〜5mmのスポットにして、シート上に照射し、シートを焼き飛ばすことによりシート上に凹凸を形成する方法である。レーザー発信機からの出力は、シートを焼き飛ばすエネルギーを有すれば特に限定られるものではないが、通常100W程度のものをレンズで集光し、シートを焼き飛ばすものである。
【0021】
レーザー光としては、特に光源を限定するものではないが、一般に次のようなものを使用することができる。エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、イオンレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザーなどを挙げることができる。この中でも、炭酸ガスレーザーが好ましく使用される。
【0022】
レーザー光は、コンピューターからなるコントロールユニットによりレーザー光のオン−オフを制御し、シート上にレーザー光の当たる部分と当たらない部分を作ることにより、凹凸を形成することができる。
【0023】
本発明におけるレリーフの製造装置は、上述した感光性樹脂を300〜500nmの光で光硬化させるユニットおよび光硬化させた感光性樹脂にレーザー光を照射して凹凸を形成するユニットから構成される。
【0024】
このようにして形成できた凹凸を有する感光性樹脂版は、通常の印刷機に印刷版材を装着する印刷版材として使用することができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。
【0026】
実施例1
数平均分子量600のポリオキシエチレンの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα,ω−ジアミノポリオキシエチレンとアジピン酸の等モル塩55重量部、ε−カプロラクタム25重量部およびヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の塩20重量部を通常の条件で重合してポリアミドを得た。
【0027】
このポリアミド100重量部をエタノール/水=60/40(重量比)の混合溶媒150重量部に80℃で加温溶解した。次いで、グリシジルメタクリレートを2重量部添加して、80℃で1時間反応させてポリアミドの末端にメタクリロイル基を導入した。さらに、エチレン性不飽和基を2個持つ化合物として、エチレングリコールジグリシジルエーテル1モルとメタクリル酸2モルの付加反応物を50重量部およびエチレン性不飽和基を4個もつ化合物として、キシリレンジアミン1モルとグリシジルメタクリレート4モルの付加反応物を5重量部添加した。さらに、可塑剤としてN−ブチルベンゼンスルホンアミドを20重量部、光重合開始剤としてベンゾフェノンを5重量部を添加して充分に攪拌混合した。
【0028】
このようにして得られた感光性樹脂溶液を、予めウレタン系の接着剤を塗布した厚さ250μmのポリエステルフィルム基板上に、乾燥後の感光層の厚さが700μmになるように流延した。これを、60℃の熱風オーブンに3時間入れて溶媒を除去し、ポリエステル基板を持つ感光性樹脂版を得た。
【0029】
この感光性樹脂版に超高圧水銀灯で2分間露光して感光性樹脂版を光硬化させた。これに、炭酸ガスレーザー彫刻機ROYAL MARK NSK(日本製図器工業株式会社)により、画像形成したところ、レーザー光の照射されたところは感光層がなくなり、凹凸のある印刷用版材を得ることができた。これを使用して、印刷をしたところ、良好な印刷物が得られた。
【0030】
実施例2
ケン化度75モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニル100重量部をエタノール/水=50/50(重量比)の混合溶剤150重量部中に60℃で加温溶解した。次いで、エチレン性飽和結合を2個有する化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテル1モルとアクリル酸2モルの付加反応生成物70重量部および相溶化剤としてジエチレングリコール30重量部を添加した。さらに、光重合開始剤としてジメトキシフェニルアセトフェノンを2重量部添加し、充分に攪拌した。
【0031】
このようにして得られた感光性樹脂溶液を、予めエポキシ系接着剤を塗布した厚さ250μmのスチール基板上に、感光層の乾燥後の厚さが700μmとなるように流延した。これを60℃の温風オーブンに5時間入れて、溶媒を除去してスチール基板からなる感光性樹脂版を得た。
【0032】
このシートを、ケミカル灯により10分間紫外線露光して光硬化させた。これに、実施例1と同様の方法で、炭酸ガスレーザーにより凹凸のある印刷用版材を得ることができた。これを使用して印刷したところ良好な印刷物が得られた。
【0033】
比較例1
実施例1と同様の感光性樹脂版を得て、実施例1で行った超高圧水銀灯での光硬化は行わなかった。これを、実施例1と同様に炭酸ガスレーザー彫刻機で画像形成を行った。レーザー光の照射されたところは感光層がなくなったが、レリーフエッジ部が溶けたようになり良好なレリーフは得られなかった。
【0034】
感光性樹脂版の光硬化の工程がなかったことが原因と考えられる。
【0035】
【発明の効果】
感光性樹脂組成物を光硬化させたシートを、レーザー光により凹凸を形成することにより得られたものを印刷版材とすることにより、原画フィルムがなく、現像工程を必要とせずに印刷版材が得られる。
Claims (1)
- 親水性樹脂、エチレン性不飽和モノマと光重合開始剤を少なくとも含有する感光性樹脂組成物をエタノールおよび水の混合溶媒に溶解した感光性樹脂溶液を調製し、該感光性樹脂溶液を流延後乾燥することによって感光性樹脂組成物をシート状に加工し、300〜500nmの光を照射して感光性樹脂組成物を硬化させた後、この硬化物にレーザー光を照射することを特徴とするレリーフの製造方法。
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