JP5094027B2 - 非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明等は種々の検討を行ったところ、ある条件を満たすエージング処理を施すことにより初期の出力特性が向上するという知見を得た。
また、放置する温度が35℃未満であると、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩が分解されにくくなって、負極表面にリチウムイオンの透過性に優れた被膜が形成されにくくなる。一方、放置する温度が85℃を超えるような高温になると、電解質の分解と考えられる電解液の劣化が起こり、電池特性が低下する。このことから、エージングのために放置する温度は35℃以上で、85℃以下にするのが望ましい。
さらに、電池電圧が1V未満であるとオキサラト錯体は分解しないため、電池電圧が1V以上で放置する必要がある。
このため、非水電解液に添加させるオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩は非水溶媒に対して0.01〜0.2モル/リットルの範囲になるように添加するのが望ましい。
Li2CO3と(Ni0.4Co0.3Mn0.3)3O4とを、Liと(Ni0.4Co0.3Mn0.3)とのモル比が1:1(Li:(Ni0.4Co0.3Mn0.3)=1:1)となるように混合した。ついで、この混合物を空気雰囲気中にて900℃で20時間焼成し、平均粒子径が12.1μmのLiNi0.4Co0.3Mn0.3O2で表されるリチウム遷移金属酸化物を得て、正極活物質とした。
負極活物質としての人造黒鉛と、結着剤としてのポリイミド(PI)とを溶かした水溶液とを混練して負極スラリーを作製した。この場合、負極活物質:結着剤の質量比が97:3となるようにこれらを添加した。ついで、作製した負極スラリーを負極芯体12aとしての銅箔の上に塗布した後、乾燥させて負極活物質層12bを形成した。その後、圧延ローラーを用いて所定の充填密度になるまで圧延し、負極集電タブ12cを取り付けて負極板12を作製した。
非水電解液を作製するにあたっては、環状カーボネートのエチレンカーボネート(EC)と、鎖状カーボネートのエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で3:7となるように混合させた混合溶媒に対して、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの割合で溶解させるとともに、リチウム―ビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2)を0.1モル/リットルの割合で溶解させた。このようにして得られた溶液にビニレンカーボネート(VC)を1質量%だけ添加して非水電解液を調製し、これを電解液aとした。
ついで、上述のように作製した各正極板11と、上述のようにして作製した負極板12とをそれぞれ用い、これらの間にポリプロピレン製微多孔膜からなるセパレータ13を介在させて積層した後、渦巻状にそれぞれ巻回して渦巻状電極群とした。ついで、これらの渦巻状電極群を上部外周に絞り加工を施して絞り部14aを形成した円筒状の金属製外装缶14にそれぞれ挿入した後、負極板12から延出する負極集電タブ12cを金属製外装缶14の内底面に溶接した。一方、正極板11から延出する正極集電タブ11cを、封口体15の正極蓋15bの底面に溶接し、封口体15の外周部にリング状の絶縁ガスケット16を配置した。
ついで、上述のようにして作製した電池A,Bを用いて、これらの各電池A,Bを25℃の室温下において、1It(Itは定格容量(mA)/1h(時間)で表される数値)の充電電流で4.1Vまで充電させた。このようにして充電を行った後の各電池A,Bを60℃の恒温槽内に放置してエージングを行った。この場合、電池Aを60℃の恒温槽内に、5時間だけ放置したものを電池A1とし、10時間だけ放置したものを電池A2とし、24時間だけ放置したものを電池A3とし、48時間だけ放置したものを電池A4とし、7日(168時間)だけ放置したものを電池A5とし、14日(336時間)だけ放置したものを電池A6とした。また、電池Bを60℃の恒温槽内に、48時間だけ放置したものを電池B1とし、7日(168時間)だけ放置したものを電池B2とし、14日(336時間)だけ放置したものを電池B3とした。なお、エージングを行わなかった電池Aを電池A0とし、エージングを行わなかった電池Bを電池B0とした。
ついで、エージングを行わなかった電池A0,B0をそれぞれ25℃の室温下において、1Itの充電電流で4.1Vまで充電させた後、さらに電圧を4.1Vに維持させながら充電電流を減少させ、総充電時間が1.5時間になるように充電させた後、0.1Itの放電電流で3.0Vまで放電させて、エージング前の放電容量を測定した。また、電池A0,B0を25℃の室温下において、1Itの充電電流で充電深度(SOC)が50%になるまで充電させた状態で、それぞれ1It、3It、5It、10It及び15Itの電流で10秒間充電及び放電を行い、それぞれの電池電圧を測定し、各電流値と電池電圧とをプロットして充電時及び放電時におけるI―V特性を求め、得られた直線の傾きから充電時及び放電時におけるエージング前のIV抵抗(mΩ)を求めると、下記の表1に示すような結果となった。
これらのことから、エージングのための放置時間は7日(168時間)以内にするのが望ましいということが分かる。
ついで、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で3:7となるように混合させた混合溶媒に対して、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの割合で溶解させるとともに、リチウム―ビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2)を0.1モル/リットルの割合で溶解させた。このようにして得られた溶液99質量%にビニレンカーボネート(VC)を1質量%だけ添加して非水電解液を調製し、これを電解液cとした。
このことから、エージングのために放置する温度は35℃以上で、85℃以下にするのが望ましいということができる。
なお、電池電圧が1V未満であるとオキサラト錯体は分解しないため、オキサラト錯体が分解する電圧の1V以上、好ましくは1.5V以上で放置するのが望ましい。
Claims (6)
- リチウムの吸蔵・放出が可能なリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として含む正極と、リチウムの吸蔵・放出が可能な炭素を負極活物質として含む負極とを外装缶内に挿入した後、当該外装缶内にオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩が添加された非水電解液を注液して形成する非水電解質二次電池の製造方法であって、
前記オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩が添加された非水電解液の注液後、出荷前に電池電圧が1V以上で、35℃〜85℃の温度雰囲気中に7日以内だけ放置するエージング工程を設けるようにしたことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。 - 前記オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩は溶媒に対して0.01〜0.2モル/リットル添加されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
- 前記オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩はリチウム−ビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2)またはリチウム−ジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)F2)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
- 前記非水電解液中の溶質として、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩の他にリチウム塩が含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
- 前記非水電解液はビニレンカーボネートを含有していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
- 前記エージング工程におけるエージングは10時間以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
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