JP6567442B2 - リチウム二次電池の充放電方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム二次電池の充放電方法に関する。
近年、リチウム二次電池は、高エネルギー密度を有する等の理由から広く普及し、携帯電話やデジタルカメラ、ノートパソコン等の携帯用小型機器の電源として搭載されている。また、リチウム二次電池は、エネルギー資源枯渇問題や地球温暖化等の観点から、ハイブリッド自動車や電気自動車、または太陽光や風力等の自然エネルギー発電による電力貯蔵用等の大型産業用途への開発が進められている。リチウム二次電池は、これらの電源の利用拡大のために更なる高密度化、長寿命化が求められている。
このようなリチウム二次電池は、正極と負極との間でリチウムイオンを移動させて充放電を行う。リチウム二次電池の正極活物質は、現在、リチウム金属酸化物であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)等のリチウムを含む金属酸化物または金属リン酸化物が実用化され、または商品化を目指して開発が進められている。
負極活物質は、グラファイトなどの炭素材料や、リチウムチタン酸化物(Li4Ti512)が用いられ、これら活物質を含む正極と負極の間には、内部短絡を防止するためのセパレータが介在されている。セパレータは、一般的にポリオレフィンからなる微孔性薄膜が使用されている。
ところで、負極活物質である金属リチウムは単位重量当たりの電気量が3.86Ah/gと大きい特徴を持つ。このため、最も理論エネルギー密度を持つ、高容量のリチウム二次電池の実現のために、金属リチウムを負極活物質として用いる研究が再び進められている。
しかしながら、負極活物質に金属リチウムを用いるリチウム二次電池は充放電の繰り返しにおいて、金属リチウムの負極表面からリチウムがデンドライト状に成長し、デンドライト状のリチウムが正極と負極の間に介在したセパレータを貫通して正極に達し、内部短絡を起こす課題があった。
このようなことから、例えば特許文献1には正極の主活物質としてLiCoO2を、副活物質として初期から放電可能な材料(例えば二酸化マンガン)を用いる非水電解質二次電池が記載されている。
特許文献1の第2頁左上欄には、リチウムのデンドライト状の成長のメカニズムが記載されている。デンドライト状の成長の主な要因は、1)電池組立直後の負極の金属リチウムの表面に炭酸リチウムまたは水酸化リチウムのような不活性被膜が形成されていること、2)正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用いた場合、充放電サイクルが充電から始まり、初回の充電時において、正極から放出されたリチウムイオン(Li+)が負極の金属リチウム表面にリチウムとして還元析出し、負極の金属リチウム表面に形成された不活性被膜が除去されないこと、である。負極の金属リチウム表面の不活性被膜が除去されないと、リチウムが負極の金属リチウム表面に不均一かつ偏って析出し、その後の充放電サイクルの充電時に、負極表面に析出するリチウムが偏って析出したリチウムを起点としてデンドライト状に成長し、セパレータを貫通して正極に達し、内部短絡を起こす。
特許文献1では、正極活物質として主活物質であるLiCoO2の他に、副活物質である初期から放電可能な材料(例えば二酸化マンガン)を用いているため、充放電時において、初回から放電を行うことができる。すなわち、負極から金属リチウムをリチウムイオンとして放出できる。このため、電池組立直後のリチウムイオンの放出により負極の金属リチウム表面に形成された炭酸リチウムまたは水酸化リチウムのような不活性被膜が除去される。その結果、初回放電後の充電時にはリチウムイオンが良好な表面状態を有する負極の金属リチウム表面に還元析出するため、負極の金属リチウム表面からリチウムがデンドライト状に成長するのを抑制することが可能になる。
しかしながら、前記特許文献1に開示された副活物質である初期から放電可能な材料(例えば二酸化マンガン)は、主活物質(例えばLiCoO2)に比べて充放電に伴うリチウムの吸蔵・放出による膨張・収縮が大きい性質を有する。そのため、前記副活物質を含むリチウム二次電池を繰り返し充放電すると、当該副活物質の結晶構造に負荷が加わる。このため、当該副活物質を含む正極層にクラックが発生したり、正極集電体から正極層が剥離したりする。その結果、リチウム二次電池の容量または充放電サイクル特性が低下する課題があった。
特開平4−206267号公報
本発明は前記課題を解決し、リチウムのデンドライト状の成長を抑制しつつ正極の正極層を安定化ができ、高容量と充放電サイクル特性の向上とを同時に実現することが可能なリチウム二次電池の充放電方法を提供するものである。
上記の課題を解決するために、本発明によると、正極、負極、セパレータおよび非水電解質を備えたリチウム二次電池の充放電方法であって、正極は、それぞれリチウムを吸蔵および放出することが可能な第1の活物質および第2の活物質を含む正極活物質を含有する正極層を備え、第1の活物質は、リチウムチタン系複合酸化物であり、第2の活物質はリチウム含有化合物(前記リチウムチタン系複合酸化物を除く)であり、第1の活物質は第1の活物質および第2の活物質の合量に対して、1質量%以上30質量%以下の割合で含有され、負極は金属リチウムを負極活物質として含み、二次電池の組立後の充放電を放電から初め、初回放電時の放電カットオフ電圧を第1の活物質の反応電位とし、初回放電以降の放電時の放電カットオフ電圧を第1の活物質と反応しない電位とすることを特徴とするリチウム二次電池の充放電方法が提供される。
本発明によれば、リチウムのデンドライト状の成長を抑制しつつ、正極の正極層を安定化ができ、高容量と充放電サイクル特性の向上とを同時に実現することが可能なリチウム二次電池の充放電方法を提供できる。
実施形態に係る積層型のリチウム二次電池の一例を示す斜視図である。 図1の積層型のリチウム二次電池のII−II線に沿う断面図である。
以下、実施形態に係るリチウム二次電池の充放電方法を詳細に説明する。
実施形態に係るリチウム二次電池の充放電方法は、正極、負極、セパレータおよび非水電解質を備えたリチウム二次電池の充放電方法である。正極は、それぞれリチウムを吸蔵および放出することが可能な第1の活物質および第2の活物質を含む正極活物質を含有する正極層を備える。第1の活物質はリチウムチタン系複合酸化物であり、第2の活物質はリチウム含有化合物(前記リチウムチタン系複合酸化物を除く)である。第1の活物質は、第1の活物質および第2の活物質の合量に対して、1質量%以上30質量%以下の割合で含有される。負極は、金属リチウムを負極活物質として含む。二次電池の組立後の充放電を放電から初め、初回放電時の放電カットオフ電圧を第1の活物質の反応電位とし、初回放電以降の放電時の放電カットオフ電圧を第1の活物質と反応しない電位とする。
このようなリチウムチタン系複合酸化物を第1の活物質として含む正極活物質は、当該正極活物質を含む正極を前記負極と共にリチウム二次電池に組込むと、初回に放電から始めることが可能になり、充放電の繰り返しにおいて負極の金属リチウム表面からリチウムがデンドライト状に成長するのを抑制することができる。その結果、リチウム二次電池の高容量化と充放電サイクル特性の向上とを同時に達成することが可能になる。
すなわち、リチウムチタン系複合酸化物(例えば、Li4Ti512)は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能で、次の充放電反応式(1)に示すように初回に放電から始めることが可能である。このため、当該リチウムチタン系複合酸化物を活物質として含む正極および金属リチウムを活物質として含む、負極を備えたリチウム二次電池の組立後の充放電を放電から始めることが可能になる。当該初回放電では、負極の金属リチウム表面からリチウム(Li)がイオンとして非水電解質に放出され、セパレータを通して正極側に移動し、正極のリチウムチタン系複合酸化物に吸蔵される。
Li4Ti512+3Li+3e⇔Li7Ti512 …(1)
なお、前記式(1)において右方向の反応が放電反応、左方向の反応が充電反応である。
また、リチウムチタン系複合酸化物(第1の活物質)が第1の活物質と第2の活物質の合量に対して1質量%以上30質量%以下の割合で含有するため、初回放電において十分な量のリチウムイオンを負極の金属リチウム表面から放出できる。
さらに、初回放電時の放電カットオフ電圧をリチウムチタン系複合酸化物の反応電位とすることにより、リチウムチタン系複合酸化物にリチウムをほぼ完全に吸蔵可能にし得る状態になるまで放電を続行できる。その結果、負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出量を増大できる。
従って、前述したリチウム二次電池の組立後の充放電を放電から始めることが可能であること、正極括物質中のリチウムチタン系複合酸化物の含有割合を規定すること、および初回放電時のカットオフ電圧をリチウムチタン系複合酸化物の反応電位とすることによって、初回放電において、負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出量を著しく増大できる。負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出は、電池組立直後の負極の金属リチウム表面に形成された炭酸リチウムまたは水酸化リチウムのような不活性被膜を破壊して除去できる。初回放電後の充電において、リチウム含有化合物を含む正極活物質からリチウムイオンが放出され、当該リチウムイオンは負極の金属リチウム表面でリチウムを還元析出する。この還元析出において、金属リチウム表面は不活性被膜が除去されているため、リチウムは金属リチウム表面に偏って析出することなく、金属リチウム表面に均一に析出する。その結果、充放電の繰り返しにおいて、負極の金属リチウム表面からリチウムがデンドライト状に成長するのを抑制して、リチウムのデンドライト状の成長に伴う負極と正極間の内部短絡を防止できる。それ故、単位重量当たりの電気量が3.86Ah/gと大きい特徴を持つ金属リチウムを負極活物質として安全に使用できるため、リチウム二次電池の高容量化を実現することができる。
また、実施形態の第1の活物物質であるリチウムチタン系複合酸化物は充放電に伴う結晶構造の崩壊はなく、結晶安定性が高いものの、リチウムチタン系複合酸化物は、プラトー電圧がリチウム含有化合物に比較して低く、例えばLi4Ti512のプラトー電圧は1.5Vである。そのため、リチウムチタン系複合酸化物が充放電に関与すると、リチウム含有化合物のみで充放電を行う場合に比較して放電電圧が低下するおそれがある。
このようなことから、初回放電以降の放電時の放電カットオフ電圧をリチウムチタン系複合酸化物と反応しない電位とする。すなわち、初回放電以降の放電カットオフ電圧を専ら、負極の金属リチウムから放出したリチウムイオンが専らリチウム含有化合物に吸蔵され、リチウムチタン系複合酸化物に吸蔵されない電位に変更する。これによって、その後の充放電サイクルにおいてリチウムチタン系複合酸化物ではリチウムの吸蔵・放出が起きず、充放電には関与しない条件にすることができる。その結果、リチウムチタン系複合酸化物のプラトー電圧が低い場合でも、初回放電以降の充放電サイクルの繰り返し時に、リチウムチタン系複合酸化物がリチウムの吸蔵・放出がなされないため、第2の活物質(リチウム含有化合物)がもつ高い電池電圧を維持できる。
次に、実施形態に係る充放電方法に用いるリチウム二次電池の構成および充放電条件について説明する。
<正極>
正極は、例えば正極集電体と、当該正極集電体の一方または両方の面に形成された正極層とを備える。正極層は、例えば正極活物質、導電材および結着剤を含む。
実施形態において、正極活物質は、第1の活物質および第2の活物質を含む。
第1の活物質は、リチウムを吸蔵および放出することが可能なリチウムチタン系複合酸化物からなる。リチウムチタン系複合酸化物は、一般式Li4Ti5-xM112にて表されるものが好ましい。一般式中のM1は、Co、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、Cr、MnおよびGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の元素であり、xは0≦x<5である。M1の元素のうち、Co、Ni、Feを用いることが好ましい。リチウムチタン系複合酸化物は、x=0の場合、すなわちTiが前記元素M1で置換されない場合、Li4Ti512で表される。
第2の活物質は、リチウムを吸蔵および放出することが可能なリチウム含有化合物(前記リチウムチタン系複合酸化物を除く)であれば特に限定されない。当該リチウム含有化合物は、リチウム含有金属酸化物(前記リチウムチタン系複合酸化物を除く)またはリン酸金属リチウムであることが好ましい。リチウム含有金属酸化物は、例えばリチウムコバルト複合酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMnO2、Li2MnO3またはLiMn24)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムコバルト鉄複合酸化物(例えばLiCo0.5Fe0.52)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLi(NiCoMn1-x-y)O2(0<x<1、0<y<1))、リチウム鉄リン複合酸化物(例えばLiFePO4)等が挙げられる。第2の活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2、Li2MnO3またはLiMn24)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムおよびリン酸鉄リチウムの群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
これら第2の活物質のプラトー電圧は、マンガン酸リチウム(LiMn24):4.0V、コバルト酸リチウム(LiCoO2):3.9V、リン酸鉄リチウム(LiFePO4):3.4V、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNi0.5Co0.2Mn0.32):3.8V、である。なお、前述した第1の活物質であるリチウムチタン系複合酸化物(Li4Ti512)のプラトー電圧は1.5Vである。
正極活物質は、リチウムチタン系複合酸化物(第1の活物質)を、第1の活物質および第2の活物質の合量に対して、1質量%以上30質量%以下の割合で含有する。より好ましいリチウムチタン系複合酸化物の割合は、第1の活物質および第2の活物質の合量に対して、5質量%以上20質量%である。正極活物質は、例えば、第1の活物質(1質量%以上30質量%以下)、および第2の活物質(70質量%以上99質量%以下)からなる。
第1の活物質および第2の活物質の合量に対して、リチウムチタン系複合酸化物(第1の活物質)の割合が1質量%未満にすると、初回放電時に負極の金属リチウム表面から放出されるリチウムイオン量が低下してリチウムイオンの放出に伴う金属リチウム表面の不活性被膜の破壊、除去が不十分になる。その結果、リチウムのデンドライト状の成長を効果的に防止することが困難になる。
第1の活物質および第2の活物質の合量に対して、リチウムチタン系複合酸化物(第1の活物質)の割合が30質量%を超えると、リチウム二次電池の放電容量が低下する。すなわち、正極活物質のリチウムチタン系複合酸化物(第1の活物質)の割合が多くなると、リチウム含有化合物(第2の活物質)の割合が相対的に少なくなる。実施形態に係る充放電方法では、初回放電以降の放電を含む充放電ではリチウム含有化合物(第2の活物質)のみを関与させるため、正極活物質中に占めるリチウム含有化合物の割合が減少するとリチウム二次電池の放電容量を低下させる。
正極集電体は、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。例えば、アルミニウムなどの金属箔、ラス加工またはエッチング処理された金属箔等が挙げられる。
導電材は、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、活性炭、黒鉛等が挙げられる。
結着剤は、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル樹脂等が挙げられる。
なお、正極は例えば次に示す方法で作製することができる。最初に、前述した正極活物質、導電材および結着剤を溶剤に分散させて正極スラリーを調製する。つづいて、正極集電体の一方または両方の面に正極スラリーを塗布した後、乾燥して正極層を形成して正極を作製する。
溶剤は、特に限定されるものではなく、リチウム二次電池で一般に用いられる溶剤を用いることができる。溶剤は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等が挙げられる。なお、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いる場合には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶剤に用いるのが好ましい。
<負極>
負極は、例えば、負極集電体と、当該負極集電体の一方または両方の面に形成された金属リチウムを含む負極活物質を備える。負極活物物質は、例えば金属リチウム単独、または金属リチウムおよびカーボンブラックの混合物を挙げることができる。
負極集電体は、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。負極集電体は、例えば、銅または銅合金からなる圧延箔、電解箔、多孔体等を用いることができる。
<非水電解質>
非水電解質は、液体状の場合、非水溶媒および電解質を含む。
非水溶媒は、主成分として環状カーボネートおよび鎖状カーボネートを含有する。環状カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、およびブチレンカーボネート(BC)から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびエチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
電解質は、特に限定されるものではなく、リチウム二次電池で一般に用いられるリチウム塩の電解質を用いることができる。例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(C2m+1SO2)(Cn2n+1SO2)(m、nは1以上の整数)、LiC(C2p+1SO2)(C2q+1SO2)(C2r+1SO2)(p、q、rは1以上の整数)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム等を用いることができる。これらの電解質は、一種類で使用してもよく、また二種類以上組み合わせて使用してもよい。また、この電解質は非水溶媒に対して0.1〜1.5モル/L、好ましくは0.5〜1.5モル/Lの濃度で溶解することが望ましい。
非水電解質は、分子内に不飽和結合を有し、還元重合が可能な有機物を含有してもよい。当該有機物を非水電解質に添加すると、当該有機物は負極活物質の還元力による悪影響を防止することができる。この結果、非水電解質に含まれる電解質の分解を抑制することが可能となる。当該有機物としては、例えばフルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート等のカーボネートの誘導体の他、不飽和のカルボン酸エステル類、リン酸エステル類、ホウ酸エステル類、およびアルコール類等を用いることができる。特に、フルオロエチレンカーボネートや、ビニレンカーボネートを用いるのが好ましい。
<セパレータ>
セパレータは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂の微多孔膜または不織布を用いることができる。微多孔膜または不織布は単層であっても、多層構造であってもよい。セパレータは、特にポリイミド樹脂を基材とした三次元構造が好ましい。
<充放電条件>
リチウム二次電池の組立後の充放電を放電から初め、初回放電時の放電カットオフ電圧はリチウムチタン系複合酸化物(第1の活物質)の反応電位とする。リチウムチタン系複合酸化物が、例えばLi4Ti512である場合、反応電位は1.0Vである。
初回放電以降の放電時の放電カットオフ電圧は、リチウムチタン系複合酸化物(第1の活物質)と反応しない電位とする。リチウムチタン系複合酸化物が、例えばLi4Ti512である場合、反応しない電位は当該Li4Ti512の反応電位より1.0〜2.0V高い、2.0〜3.0Vにすることが好ましい。
初回放電以降の放電時の放電カットオフ電圧は、リチウムチタン系複合酸化物(第1の活物質)と反応しない電位とし、同時にリチウム含有化合物の反応電位とする。リチウムチタン系複合酸化物がLi4Ti512である場合、反応しない電位を当該Li4Ti512の反応電位より高い2.0〜3.0Vにすることにより、前述したリチウム含有化合物であるリチウム含有金属酸化物またはリチウム含有金属リン化合物の反応電位になる。
実施形態に係るリチウム二次電池の形状は特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、角形等が挙げられる。
以下、積層型のリチウム二次電池を例にして、実施形態に係るリチウム二次電池の構造を図面を参照して説明する。図1は、積層型のリチウム二次電池の一例を示す斜視図、図2は図1のII−II線に沿う断面図である。
積層型のリチウム二次電池1は、ラミネートフィルムからなる袋状の外装体2を備えている。外装体2内には、電極群3が収納されている。ラミネートフィルムは、例えば複数枚(例えば2枚)のプラスチックフィルムをそれらのフィルム間にアルミニウム箔のような金属箔を挟んで積層した構造を有する。2枚のプラスチックフィルムのうち、一方のプラスチックフィルムは熱融着性樹脂フィルムが用いられる。外装体2は、2枚のラミネートフィルムを熱融着性樹脂フィルムが互いに対向するように重ね、外周部を熱シールすることにより袋状に形成される。電極群3は、外装体2の開口部を通して挿入され、外装体2の開口部を熱融着して封止することにより、外装体2内に気密に収納される。
電極群3は、図2に示すように正極4と負極5とそれら正極4、負極5の間に介在されたセパレータ6とを負極5が最外層に位置するように複数積層した構造を有する。正極4は、正極集電体42と当該集電体42の両面に形成された正極層41,41とから構成されている。正極層41、41は、例えば正極活物質、導電材および結着剤を含む。実施形態において、正極活物質はそれぞれリチウムを吸蔵および放出することが可能なリチウムチタン系複合酸化物を第1の活物質、リチウム含有化合物(前記リチウムチタン系複合酸化物を含まない)を第2の活物質として含む。第1の活物質は、第1の活物質および第2の活物質の合量に対して、1質量%以上30質量%以下の割合で含有する。
最外層に位置する負極5は、負極集電体52と、当該集電体52のセパレータ6と対向する面に形成された金属リチウムからなる負極層51とから構成されている。最外層に位置する負極5を除く、正極4間に位置する負極5は、負極集電体52と、当該集電体52の両面に形成された金属リチウムからなる負極層51,51とから構成されている。
正極4は、例えば図2に示すように、正極集電体42が正極層41の例えば右側面から延出した正極リード43を有する。各正極リード43は、外装体2内において先端側で束ねられ、互いに接合されている。正極端子7は、一端が正極リード43の接合部に接合され、かつ他端が外装体2の封止部を通して外部に延出している。負極5は、例えば図2に示すように負極集電体52が負極層51の例えば左側面から延出した負極リード53を有する。各負極リード53は、外装体2内において先端側で束ねられ、互いに接合されている。負極端子8は、一端が負極リード53の接合部に接合され、かつ他端が外装体2の封止部を通して外部に延出している。
以下、本発明は実施例を詳細に説明する。
(実施例1〜8および比較例1〜5)
[正極1の作製]
正極活物質は、第1の活物質であるリチウムチタン系複合酸化物(Li4Ti512)1質量%と、第2の活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)99質量%と、とを混合して調製した。つづいて、正極活物質に導電材としてアセチレンブラック6.0質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)4.0質量%をそれぞれ添加して混合し、当該混合物に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)質量%を添加して正極スラリーを調製した。次に、アルミニウム箔上に正極スラリーを塗工量が120g/mとなるよう塗布し、100℃で乾燥した。その後、電極密度が3.3g/ccになるまでプレス加工して正極1を作製した。
[正極2〜8の作製]
第1の活物質であるLi4Ti512が、第2の活物質であるLiCoO2とLi4Ti512の合量に対して、0質量%、0.5質量%、5質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%の割合で含有する正極活物質を用いた以外、前記正極1の作製方法と同様な方法により正極2〜8をそれぞれ作製した。
[正極9〜11の作製]
第1の活物質である20質量%のリチウムチタン系複合酸化物(Li4Ti512)と、それぞれ第2の活物質である80質量%のマンガン酸リチウム(LiMn24)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)とを混合した正極活物質を用いた以外、前記正極1の作製方法と同様な方法により正極9〜11を作製した。
[評価セルの組立]
前記各正極を作用極として用いて3極式評価セルを組立てた。評価セルは、両端封止円筒形状を有する例えばポリプロピレンからなる外装体を備えている。外装体内には、各正極から切出した円形の作用極と当該作用極より寸法の大きい円形の対極とがそれら作用極と対極の間にセパレータを挟んで配置している。すなわち、作用極、セパレータおよび対極の積層方向は外装体の円筒部の軸と平行している。参照極は、矩形板状をなし、外装体内に作用極、セパレータおよび対極の上方に近接して当該矩形板状表面が前記積層方向と平行するように配置されている。
作用極および対極の各端子は、外装体の対向する封止部からそれぞれ外部に延出されている。参照極の端子は、外装体の円筒部から外部に延出されている。非水電解液は、前記外装体内にその内部全体を満たすように収容されている。前述した作用極、対極および参照極のそれぞれの端子には、電源(試験装置)と接続するためのリード線が取付けられている。後述する充放電サイクル試験では、作用極および対極から導出されるリード線を介し所定電流を流した。また、作用極および参照極から導出されるリード線を介し、電圧測定を行った。
前記対極および参照極は、金属リチウムから作られている。セパレータは、微多孔質ポリエチレン膜からなる。非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)の混合非水溶媒(体積比、EC:EMC:DMC=2:5:3)にLiPF6を1.3モル/L溶解させて調製した。
[充放電サイクル試験の充放電条件]
得られた実施例1〜8および比較例1〜5の前記各評価セルについて、以下の充放電条件1〜4で充放電サイクル試験を行い、1サイクル目の放電容量、100サイクル目の放電容量、放電容量維持率((1)式に示す)、1サイクル目の放電平均電圧[V]を求めた。その結果を下記表1に示す。
なお、放電容量維持率は次式(1)から算出した。
放電容量維持率(%)=
(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100…(1)
(充放電条件1)
初回 :1.0Vまで0.1C放電 (1回)
活性化 :4.3Vまで0.2C充電、2.5Vまで0.2C放電 (4回)
サイクル:4.3Vまで0.5C充電、2.5Vまで0.5C放電 (100回)
(充放電条件2)
初回 :1.0Vまで0.1C放電 (1回)
活性化 :4.3Vまで0.2C充電、1.0Vまで0.2C放電 (4回)
サイクル:4.3Vまで0.5C充電、1.0Vまで0.5C放電 (100回)
(充放電条件3)
初回 :2.5Vまで0.1C放電 (1回)
活性化 :4.3Vまで0.2C充電、2.5Vまで0.2C放電 (4回)
サイクル:4.3Vまで0.5C充電、2.5Vまで0.5C放電 (100回)
(充放電条件4)
初回 :4.3Vまで0.1C充電、2.75Vまで0.1C放電 (1回)
活性化 :4.3Vまで0.2C充電、2.75Vまで0.2C放電 (4回)
サイクル:4.3Vまで0.5C充電、2.75Vまで0.5C放電 (100回)
Figure 0006567442
Figure 0006567442
前記表1から明らかなように、第1の活物質であるリチウムチタン系複合酸化物(Li4Ti512)と第2の活物質であるコバルト酸リチウムとからなり、Li4Ti512がコバルト酸リチウムとLi4Ti512の合量に対して1〜30質量%含有する正極活物質を含む正極1、4〜7をそれぞれ作用極として備えるセルを用い、各セルを充放電条件1(初回放電のカットオフ電圧をLi4Ti512の反応電位(1.0V)、初回放電以降のカットオフ電圧をLi4Ti512と反応しない電位(2.5V))で充放電を行う実施例1〜5では、充放電の繰り返しによるリチウムのデンドライト状の成長が抑制ないし防止されるため、100サイクル目でも高い放電容量と高い放電容量維持率の両方を達成できることがわかる。
初回放電以降の放電でのカットオフ電圧をLi4Ti512と反応しない電位(2.5V)にすることによって、この後の充放電サイクルの繰り返しで、プラトー電圧の低いLi4Ti512が充放電反応に関与しないため、充放電サイクルにおいて、第2の活物質(コバルト酸リチウム)の持つ高い電池電圧を維持できる。
特に、Li4Ti512がコバルト酸リチウムとLi4Ti512の合量に対して5〜20質量%含有する正極活物質を含む正極4〜6をそれぞれ作用極として備えるセルを用いた実施例2〜4では、充放電の繰り返しによるリチウムのデンドライト状の成長の抑制効果が高くなるため、100サイクル目においてより高い放電容量とより高い放電容量維持率を示すことがわかる。
これに対し、Li4Ti512を含まない正極活物質を含有する正極2を作用極として備えるセルを用い、当該セルを充放電条件4(初回が充電)で充放電を行う比較例1は100サイクル目での放電容量および放電容量維持率がいずれも低いことがわかる。これは、充放電での初回が充電であるため、充放電の繰り返しによりリチウムのデンドライト状の成長により100サイクル目の放電容量が低くなったものと推定される。
一方、リチウムチタン系複合酸化物であるLi4Ti512が本発明の範囲の上限(30質量%)を超える正極活物質を含有する正極8を作用極として備えるセルを用い、当該セルを実施例1〜8と同様な充放電条件1で充放電を行う比較例3は100サイクル目での放電容量維持率が高いものの、放電容量が低いことがわかる。これは、充放電の繰り返しによるリチウムのデンドライト状の成長を抑制できるものの、初回の放電以降の放電、その後の充放電で充放電に関与しないLi4Ti512が正極活物質に占める割合が多く、充放電に関与するコバルト酸リチウムが相対的に減少するため、100サイクル目の放電容量が低くなったものと推定される。
また、比較例4は初回放電でのカットオフ電圧と初回放電以降の放電でのカットオフ電圧が同じで、それらのカットオフ電圧をLi4Ti512の反応電位(1.0V)にしている。このため、初回放電以降の充放電ではリチウム含有化合物であるコバルト酸リチウムのみならず、リチウムチタン系複合酸化物であるLi4Ti512も充放電反応に関与するため、Li4Ti512の低いプラトー電圧によって、充放電サイクル中の電池電圧が低下する。このような比較例4の充放電時の問題から、1サイクル目の放電平均電圧が実施例4の当該電圧(3.83V)と比べて3.25Vに低下する。
比較例5は、初回放電でのカットオフ電圧と初回放電以降の放電でのカットオフ電圧が同じで、それらのカットオフ電圧をLi4Ti512と反応しない電位(2.5V)にしている。このため、初回放電時での負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出量が不足し、金属リチウム表面の改質が不十分になるため、初回放電以降の放電、その後の充放電の繰り返しによってリチウムのデンドライト状の成長が起こる。このような比較例5の充放電時の問題から、100サイクル目での放電容量維持率および放電容量が、実施例4の放電容量維持率(82%)、放電容量(98mAh/g)と比較して、それぞれ53%、60mAh/gと低くなる。
また、表2示すように、リチウムコバルト複合酸化物(リチウム含有化合物)の代わりにリチウム含有化合物であるマンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムとリチウムチタン系複合酸化物であるLi4Ti512とからそれぞれなり、Li4Ti512が各リチウム含有化合物とLi4Ti512の合量に対して20質量%含有する正極活物質を含む正極9〜11をそれぞれ作用極として備えるセルを用い、各セルを充放電条件1(初回放電のカットオフ電圧をLi4Ti512の反応電位(1.0V)とし、初回放電以降のカットオフ電圧をLi4Ti512と反応しない電位とする)で充放電を行う実施例6〜8も、リチウム含有化合物がリチウムコバルト複合酸化物である正極活物質を含む正極6(Li4Ti512の割合が20質量%)を作用極として備えるセルを用いる実施例4と同様、100サイクル目においてより高い放電容量とより高い放電容量維持率を示すことがわかる。
1…リチウム二次電池、2…外装体、3…電極群、4…正極、5…負極、41…正極層、42…正極集電体、43…正極リード、51…負極層、52…負極集電体、53…負極リード、6…セパレータ、7…正極端子、8…負極端子

Claims (6)

  1. 正極、負極、セパレータおよび非水電解質を備えたリチウム二次電池の充放電方法であって、
    前記正極は、それぞれリチウムを吸蔵および放出することが可能な第1の活物質および第2の活物質を含む正極活物質を含有する正極層を備え、
    前記第1の活物質は、リチウムチタン系複合酸化物であり、
    前記第2の活物質は、リチウム含有化合物(前記リチウムチタン系複合酸化物を除く)であり、
    前記第1の活物質は、前記第1の活物質および前記第2の活物質の合量に対して、1質量%以上30質量%以下の割合で含有され、
    前記負極は、金属リチウムを負極活物質として含み、
    前記二次電池の組立後の充放電を放電から始め、初回放電時の放電カットオフ電圧を前記第1の活物質の反応電位とし、二回目以降の放電時の放電カットオフ電圧を前記第1の活物質と反応しない電位とすることを特徴とするリチウム二次電池の充放電方法。
  2. 前記リチウムチタン系複合酸化物は、一般式Li4Ti5−xM112(ここで、M1はCo、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、Cr、MnおよびGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の元素、xは0≦x<5である)にて表されることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池の充放電方法。
  3. 前記二回目以降の放電時の放電カットオフ電圧は、前記第1の活物質と反応しない電位で、かつ前記第2の活物質の反応電位であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池の充放電方法。
  4. 前記二回目以降の放電時の放電カットオフ電圧を前記第1の活物質の反応電位よりも1.0乃至2.0V高い電位で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池の充放電方法。
  5. 前記リチウムチタン系複合酸化物は、Li4Ti512であり、前記リチウム含有化合物は、リチウム含有金属酸化物(前記リチウムチタン系複合酸化物を除く)またはリチウム含有金属リン化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池の充放電方法。
  6. 前記リチウム含有化合物は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム(LiMnO2、Li2MnO3、LiMn24)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムおよびリン酸鉄リチウムの群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池の充放電方法。
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