JP4716558B2 - 炭化珪素基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素(SiC)基板の製造方法に関し、特に、結晶欠陥であるマイクロパイプの継承を抑制する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、SiC単結晶は、一般的には昇華法によって製造されるが、マイクロパイプ欠陥(中空貫通欠陥)と呼ばれる直径サブμm乃至数μmの中空貫通孔が結晶中に100から1000個/cm2程度ある。
【0003】
パワーデバイスや高周波デバイスを作製する場合、この単結晶を基板として、デバイスを形成する領域であるエピタキシャル膜をデバイスに適した構造になるように成長させるが、この欠陥が基板中に存在すると、その上に成長させたエピタキシャル膜にもその欠陥が継承され、エピタキシャル膜にもマイクロパイプ欠陥が同数形成される。そして、この欠陥があるエピタキシャル膜にデバイスを作製すると、デバイスの漏れ電流を増加させ、逆方向耐圧を低下させることが報告されている。このため、デバイスを作製するにはこの欠陥を低減させることが極めて重要である。
【0004】
デバイスを作製する領域であるエピタキシャル膜のマイクロパイプ欠陥を低減させる方法として、これまで、基板となるSiC単結晶のマイクロパイプ欠陥をなくすことが提案されていた。これには、米国特許第5679153号や特開平10−324600号公報や特開2000−44398号公報、さらには、第47回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集 第1分冊P.407講演No.29P−YF−6「厚膜4H−SiCエピタキシャル成長におけるの転位の挙動」((財)電力中央研究所 鎌田ら;2000年3月発行)に示される方法が提案されている。
【0005】
米国特許第5679153号に示される方法は、シリコン中のSiC溶融を用いた液相エピタキシー技術によって結晶成長させると、エピタキシャル成長途中でマイクロパイプ欠陥が閉塞させていくことを利用して、マイクロパイプを有する種結晶上にマイクロパイプ欠陥を低減させたエピタキシャル膜を成長させている。
【0006】
次に、特開平10−324600号公報に示される方法は、α(六方晶)−SiC単結晶基板(種結晶)の表面に熱化学的蒸着(CVD)法によりβ(立方晶)−SiCもしくはα−SiCの多結晶膜の成膜と、それによって得られた複合体に対する熱処理とを複数繰り返すことにより、複数層のβ−SiCもしくはα−SiCの多結晶膜をα−SiC単結晶基板(種結晶)の結晶軸と同一方向に配向(ある種の固相エピタキシャル成長)させることによって、種結晶上にマイクロパイプ欠陥の少ないSiC単結晶を成長させている。
【0007】
また、特開2000−44398号公報に示される方法は、マイクロパイプを有する単結晶基板の表面に被覆材料を被覆した後、熱処理を行ない、SiC単結晶に存在するマイクロパイプ欠陥をSiC単結晶の内部で閉塞させ、マイクロパイプ欠陥の少なくとも一部が塞がれた結晶を形成する。
【0008】
そして、上述の第47回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集によると、基板上のエピタキシャル膜を16μm/hにて65μmで厚く形成した結果、マイクロパイプが閉塞したことが報告されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記第1の方法では、マイクロパイプ欠陥がない部分を得るためには、液相エピタキシー法により20〜75μm以上の厚いエピタキシャル膜を成長させなければならない。さらに、その上にデバイスを作製するエピタキシャル膜をCVD法により成長させなければならず、工程が多いという問題がある。
【0010】
上記第2の方法では、単結晶基板上に多結晶膜を形成するため、結晶粒界を内在したSiC複合体が得られる。この複合体を熱処理し、種結晶上に固相エピタキシャル成長させると、多結晶中の結晶粒界における内部歪みを原因とした結晶欠陥が導入される危惧がある。こうした欠陥はキャリアのトラップ源となるため、電子デバイス用基板としては適さないという問題がある。また、実用基板の厚さにするため、成膜工程と熱処理工程と表面平滑工程を数回繰り返す必要があるため、工程が多く、製造コストが高くなるという問題がある。
【0011】
上記第3の方法では、被覆材料を被覆する工程と熱処理工程と被覆材料の除去も含む表面平滑工程が最低必要であり、工程が多いという問題がある。
【0012】
上記第4の方法では、エピタキシャル膜を厚く形成することでマイクロパイプが閉塞するものの、通常、デバイス制作のために基板上に形成するエピタキシャル膜は、せいぜい20〜30μm程度であり、エピタキシャル膜が薄い状態でもマイクロパイプを閉塞したいという要望があり、また、成長レートが16μm/h程度と遅く、マイクロパイプを閉塞するのに4時間以上の長時間も成長させなければならず、デバイス用、あるいはバルク用としてエピタキシャル膜を形成する方法としては商業的に適したものではない。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされ、マイクロパイプを有する炭化珪素基板において、より実用的なマイクロパイプの閉塞技術を提供し、この閉塞技術を用いて炭化珪素エピタキシャル膜付き炭化珪素基板を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、マイクロパイプを有する炭化珪素基板にエピタキシャル膜を形成する際、エピタキシャル膜が形成される側の炭化珪素基板の表面と、この表面とは反対側の炭化珪素基板の裏面とに温度差を設け、表面側を低温としている。
【0015】
炭化珪素基板表面の温度を裏面の温度よりも低くすることで、温度が高い裏面近傍(マイクロパイプあるいは裏面)から発生するSiCの昇華ガスが、マイクロパイプを通して表面側に向かって流れ、温度が低い表面近くで再結晶化する。その際、マイクロパイプの内側に再結晶化するため、マイクロパイプの内径を小さくし、最終的には塞ぐことができる。
【0035】
そして、請求項1に記載のように、マイクロパイプが導電性炭化珪素基板内部にて該マイクロパイプの内壁に再結晶化された結晶によって閉塞しており、この閉塞した導電性炭化珪素基板の表面上に炭化珪素エピタキシャル膜が形成されているエピタキシャル膜付き炭化珪素基板においては、マイクロパイプの終点の位置が炭化珪素基板の内部であるため、その基板のエピタキシャル膜にデバイスを作製した場合、空乏層が拡がるような電圧が印加される際、エピタキシャル膜から拡がってくる空乏層がマイクロパイプまでに到達することを防止できる。よって、空乏層がマイクロパイプに到達することで生じるマイクロパイプでの電界集中を抑制し、マイクロパイプに起因するブレイクダウンを防ぐことができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した実施形態を図面を用いて具体的に説明する。本実施形態は、例えば昇華法などにより形成された炭化珪素単結晶基板(SiC単結晶基板)に、電界効果トランジスタ(MOSFETなど)や接合型電界効果トランジスタ(JFET)、あるいはショットキーバリアダイオードなどのデバイスを形成するためのエピタキシャル成長基板を製造する方法に適用したものである。
【0040】
(第1実施形態)
図1に、SiC単結晶基板10上にエピタキシャル膜を成長させるCVD(Chemical Vapor Deposition)装置の概略図を示す。SiC単結晶基板10は、カーボンで作製された円筒形のサセプタ30の中に設置されている。このサセプタ30は、加熱されたサセプタからの熱を外部に出さないようにするため、その周りを断熱材31で囲まれている。そして、これら全体を石英でできた反応管32で囲んでいる。その外周には、コイル33があり、高周波誘導加熱により、サセプタ30が加熱される。
【0041】
ガスは水素、SiH4、C38のそれぞれの配管を通して供給され、ガス導入管34の直前でガスが混合された後、ガス導入管34から反応管32内に導入される。排気は、ガス排気管35を通して、図示しないロータリーポンプによって排気される。
【0042】
以下、図2,3を用いて、本装置を使用してエピタキシャル成長を行った例について説明する。
【0043】
まず、SiC単結晶基板として、(0001)面から3.5°傾いた面を持ち、厚さ700μmの6H−SiC単結晶基板10を用意する(図2(a))。このとき、マイクロパイプ欠陥11は、<0001>軸方向に伸びているため、SiC基板10の表面に対して傾くことになる。この基板10をサセプタ30に設置し、CVD装置の反応管32内に入れる。
【0044】
そして、たとえば200Torrの減圧下でキャリアガス13aとして水素を流しながら、1800℃まで基板10を加熱する(図2(b))。この時、基板10の裏面はサセプタに接しているが、基板10の表面は水素にさらされている。しかも、200Torrの減圧下で、水素の流速は1m/s以上と速い。このため、基板10の表面から熱が奪われやすく、表面温度が低くなっている。
【0045】
尚、基板温度は、パイロメータを用い、サセプタ30の温度を測定し、サセプタ30の温度をSiC基板10の温度と見なす。
【0046】
基板10の温度が1800℃に達した後、水素ガスに対して原料ガスであるSiH4ガスとC38ガスを加えた混合ガス13bを流すことにより、基板10の表面にSiCのエピタキシャル膜を成長させる。尚、水素の流量は、10リットル/minである。
【0047】
1800℃程の高温では、SiC基板10からSiCの昇華が発生しており、Si2C,SiC2などの昇華ガス10aが発生し、しかも基板裏面より基板表面の温度が低くなっていることから、温度が高い基板裏面近傍12bから昇華したガスが中空であるマイクロパイプ欠陥11を通して、温度の低い基板表面近傍12aに移動する。
【0048】
一方、基板10の表面では、水素とともに原料ガスが流れており、原料ガスの熱分解により、基板10の表面にはSi原子とC原子が多く存在するので、基板10の裏面近傍にて発生した昇華ガス10aは表面からSiC基板10の外側へ拡散しにくくなり、基板10の表面近傍のマクロパイプ欠陥11の内壁に再結晶化する(図2(c))。
【0049】
また、エピタキシャル膜14は、SiC基板10の厚さ方向に対してほぼ垂直(<0001>軸に対して垂直)なa軸方向にも成長するのでり、マイクロパイプ欠陥11において、再結晶化した領域上にも成長することになる。
【0050】
そして、時間とともに、マイクロパイプ欠陥11の内壁に再結晶化する結晶が多くなり、遂にはマイクロパイプ欠陥11が閉塞してしまうとともに、エピタキシャル膜14がその上に成長してしまうため、エピタキシャル膜14にはマイクロパイプ欠陥11が形成されなくなる(図3(a))(b))。
【0051】
このように、本実施形態では、SiC基板10の裏面側に対し、表面側を、エピタキシャル成長させる反応ガスを所定の流速にて流すことにより冷却し、基板10の裏面近傍で生じる昇華ガスが、マイクロパイプ欠陥11の表面側にて再結晶化するという現象を利用することでマイクロパイプ欠陥11を閉塞することができた。
【0052】
SiC基板10も700μmと厚く、基板10の表面側と裏面側との温度差が付けやすい。
【0053】
しかも、流速が速いことにより、成長速度が50μm/hと高い。そして、エピタキシャル膜の膜厚が10μmであっても、マイクロパイプ欠陥11はエピタキシャル膜に継承されることなく、SiC基板10の表面にて閉塞させることができた。
【0054】
なお、ガスの流れ方向と基板の設置向きは、図1に示した例には限らず、基板表面を下に向けても構わず、さらに、ガスを上下方向に流し、基板表面をその流れに対しほぼ平行にさせるようにしても構わない。
【0055】
(第2実施形態)
図4に、第2実施形態に用いるSiC単結晶基板10上にエピタキシャル膜を成長させるCVD装置の概略図を示す。SiC単結晶基板10は、カーボンで作製された円筒形のサセプタ30の中に設置されている。この装置では、SiC基板10の表面は、下方に向くように設置する。SiC基板10はカーボン製の台座36に貼付され固定される。尚、台座36は図示していないが、サセプタ30に固定されている。台座30はSiC基板10の固定だけでなく、基板10の加熱及び均熱化の役目も果たす。
【0056】
サセプタ30の回りには、加熱されたサセプタからの熱を外部に出さないようにするため、断熱材31で囲まれている。そして、これら全体を石英でできた反応管32で囲んでいる。その外には、コイル33があり、高周波誘導加熱により、サセプタ30が加熱される。
【0057】
ガスは水素、SiH4、C38のそれぞれの配管を通して供給され、ガス導入管34の直前でガスが混合された後、ガス導入管34から反応管32の下から導入される。排気は、反応管32の上方にあるガス排気管35を通して、図示しないロータリーポンプにより排気される。
【0058】
以下、図5,6を用いて、本装置を使用してエピタキシャル成長を行った例について説明する。成長条件は第1実施形態と同様でる。
【0059】
まず、(0001)面から8°傾いた面を持つ厚さ300μmの4H−SiC基板を用意する。この基板をサセプタ30に設置し、CVD装置の反応管32内に入れる(図5(a))。
【0060】
そして、たとえば200Torrの減圧下でキャリアガスの水素を流しながら、1800℃まで基板10を加熱する(図5(b))。この時、基板裏面はサセプタに接しているが、基板表面は水素にさらされている。しかも、水素は、200Torrの減圧下で、流速は1m/s以上と速い。このため、基板表面から熱が奪われやすく、表面温度が低くなっている。
【0061】
基板10の温度が1800℃に達した後、原料ガスであるSiH4ガスとC38ガスを流すことにより、基板表面にSiCのエピタキシャル膜14を成長させる。
【0062】
1800℃程の高温では、SiC基板からSiCの昇華が発生しており、しかも基板10の裏面より基板表面の温度が低くなっていることから、温度が高い基板裏面近傍12bから昇華したガス10aが中空であるマイクロパイプ欠陥11を通して、温度の低い基板表面近傍12aに移動する。
【0063】
一方、基板10の表面では、水素と原料ガスが基板に向かって流れてくるため、昇華ガス10aは表面から外に出られず、表面近傍のマイクロパイプ欠陥11の内壁に再結晶化が促進される。そして、時間とともに、マイクロパイプ欠陥11の内壁に再結晶化する結晶が多くなり、遂にはマイクロパイプ欠陥11が閉塞してしまうとともに、エピタキシャル膜がその上に成長してしまうため、エピタキシャル膜にはマイクロパイプ欠陥11が形成されなくなる(図6(a))(b))。
【0064】
なお、ガスの流れ方向と基板の設置向きは、図4に示した例には限らず、ガスを上方から流し、基板表面を上に向けても構わない。
【0065】
(第3実施形態)
本実施形態では、上述の第2実施形態と同様に、図4に示したCVD装置を使用してエピタキシャル成長を行った他の例について図7,8を用いて説明する。
【0066】
まず、(0001)面から3.5°傾いた面を持つ6H−SiC単結晶基板を用意する。この基板をサセプタ30に設置し、CVD装置の反応管32内に入れる(図7(a))。
【0067】
そして、たとえば200Torrの減圧下でキャリアガスの水素を流しながら、1800℃まで基板10を加熱し、この温度で10分程度保持する。この時、基板表面は1800℃近くの高温で水素に10分程度さらされることにより、欠陥が選択的にエッチングされ、図7(b)に示すように、表面にあるマイクロパイプ欠陥11の開口部12cが広がる。
【0068】
その後、原料ガスであるSiH4ガスとC38ガスを流すことにより、基板表面にSiCのエピタキシャル膜14を成長させると、広がった開口部では、成長の核となるステップが多く形成されることと、表面の面方位からよりa面に近づくことの相乗効果により、表面の面より成長速度が速い横方向への成長が進行しつつエピタキシャル膜が成長する。その結果、開口部12でのエピタキシャル膜の厚さがより厚くなり、遂にはマイクロパイプ欠陥11が閉塞してしまうとともに、エピタキシャル膜がその上に成長してしまうため、エピタキシャル膜にはマイクロパイプ欠陥11が継承されなくなる(図8(a),(b))。
【0069】
また、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、SiCの昇華ガスによってマイクロパイプ欠陥11の閉塞が促進する。
【0070】
なお、マイクロパイプ欠陥11の表面に開口部を作る方法としては、水素の代わりに塩素を含むガスを成長する前に流しても同様な効果は得られる。塩素の場合には基板温度を高い状態にする必要はない。水素を用いる場合には、1650℃以上まで昇温させることが望ましい。それは、低い温度では水素ガスによるエッチング効果が現れにくく、マイクロパイプ欠陥11の表面に開口部を設けるために時間がかかるためである。
【0071】
また、500℃前後の溶融KOH中でSiC単結晶基板をエッチングした後、その基板をCVD装置内に入れ、SiCエピタキシャル成長を行っても同様な効果は得られる。
【0072】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、他の例として、図9に示すように、デバイスの製作を考慮した場合、マイクロパイプ欠陥の閉塞は必ずしもSiC基板10内部である必要はない。本実施形態では、デバイスの耐圧とマイクロパイプ欠陥との関係からマイクロパイプ欠陥の閉塞位置について説明する。
【0073】
マイクロパイプ欠陥に空乏層が達すると、その時点でブレイクダウンが生じ、デバイスとして所望の耐圧が得られなくなるため、空乏層がマイクロパイプ欠陥に達しないようにすることが望まれる。
【0074】
図9では、SiC基板20として、高濃度(例えば1019〜1020/cm3)の不純物が添加されたn+型の低抵抗基板20に対して、上述の製造方法により、高抵抗なn-型エピタキシャル膜14を形成した状態を示す。
【0075】
図9(a)では、低抵抗基板20に対して、不純物濃度の低いn-型エピタキシャル層14を形成したものである。この場合、n-型エピタキシャル層14上あるいはその内部に、デバイスとして機能させるべく、p型領域を形成した場合、この基板に形成されたpn接合に対し、逆バイアスが印加された際に、空乏層はn-型エピタキシャル層14を突き抜け、SiC基板20まで達する場合が想定される。SiC基板20の不純物濃度が高いため、空乏層はSiC基板20内ではほとんど拡がらない。
【0076】
よって、マイクロパイプ欠陥11が、SiC基板20内部にて閉塞していれば、空乏層がマイクロパイプ欠陥11に到達せず、マイクロパイプ欠陥に起因したブレイクダウンを生じさせることを防止する。
【0077】
また、図9(b)では、低抵抗基板20上に、同じく低抵抗なn+型エピタキシャル膜21を形成し、その上に、高抵抗なn-型エピタキシャル層22を形成したものである。この構造を作製する方法の一つとして、 n+型エピタキシャル膜21を1750℃以下の温度で形成する方法がある。この場合も、図9(a)に示したものと同様に、低抵抗領域内にてマイクロパイプ欠陥11が閉塞していれば、マイクロパイプ欠陥11が耐圧に影響しないため、好ましい。
【0078】
つまり、導電性のある低抵抗領域内にてマイクロパイプ欠陥が閉塞することが望ましい。尚、「導電性のある」というのは導体として機能できる程度に不純物が高濃度に添加された低抵抗領域のことを言う。
【0079】
また、図4に示したCVD装置において、SiC基板10を保持する構造の変形例を図10に示す。
【0080】
図10(a)に示すように、サセプタ30の側面から基板保持部37が突出し、SiC基板10が保持されている。SiC基板10の裏面にはカーボンからなる均熱部38が載置され、SiC基板10の裏面と均熱部38は密着することになる。SiC基板10は均熱部38により全体にほぼ等しい温度に熱せられる。
【0081】
このように、均熱部38を密着させることによって、マイクロパイプ欠陥がSiC基板10を貫通していたとしても、マイクロパイプ欠陥はSiC基板10の裏面側にて閉じられることとなり、エピタキシャル膜形成の際にSiC基板10の裏面近傍から発生する昇華ガスは、SiC基板10の表面側に移動しやすくなり、マイクロパイプ欠陥の閉塞が促進される。
【0082】
また、図10(b)に示すように、均熱部38はSiC基板10には接しず、空間が存在し、基板保持部37に接している。基板保持部37はSiC基板10の周囲全体を保持し、均熱部38とSiC基板10とで閉空間を形成している。よって、SiC基板10の裏面側は、この閉空間による圧力が加わり、一方、SiC基板10の表面側は、裏面側よりも低圧となる例えば200Torr程度の減圧雰囲気となる。
【0083】
なお、均熱部38は、基板保持部37に接しなくて、均熱部38とSiC基板10とで数mm以下の狭い空間を形成させてもよい。
【0084】
従って、マイクロパイプ欠陥11において、SiC基板10の表面側に印加される低圧により、SiC基板10の裏面近傍から生じた昇華ガスが、SiC基板10の表面側に移動しやすくなり、SiC基板10の表面側での再結晶化を促進する。
【0085】
このように、SiC基板10の裏面側と表面側とに温度差を加えることでマイクロパイプ欠陥の閉塞を行う際に、SiC基板10の裏面側と表面側とに圧力差を設け、裏面側に対し表面側に印加される圧力を低圧とすることで、マイクロパイプ欠陥の閉塞を促進させることができる。
【0086】
尚、図示しないが、基板保持部37は、SiC基板10と接する領域以外の部分では開口しており、サセプタ30の下側より流入してきたガスはサセプタ上側から排出されるようになっている。
【0087】
その他、本発明を実施する上で留意する点について以下説明する。
【0088】
まず、SiC基板の温度は、1650℃以上が好ましく、この温度条件でSiC基板からの昇華が発生しやすくなる。より昇華が促進するためには1750℃以上、好ましくは1800℃以上の温度が望まれる。
【0089】
また、SiC基板の温度が1900℃を超えると、再結晶化よりも昇華が促進されることになり、マイクロパイプ欠陥を塞ぐことができなくなる可能性があるため、1900℃以下の温度とすることが望ましい。
【0090】
ただし、成長レート、成長雰囲気などの条件によっては、1900℃以上、例えば昇華法における種結晶基板の温度である2250℃近傍まで熱することも可能であると考える。
【0091】
また、SiC基板の表面を冷却する点から、キャリアガスあるいはエピタキシャル成長させるためのガスの流速は1m/s以上であることが望ましい。
【0092】
また、SiC基板の裏面と表面との温度差は5℃以上あることが望ましい。こうすることで、マイクロパイプ欠陥を介してSiC基板の表面側に、SiC基板の裏面近傍より昇華したガスが移動し再結晶化しやすくなる。
【0093】
また、SiC基板の厚さを300μm以上とすることにより、SiC基板の裏面側と表面側との温度差を生じさせやすくなる。
【0094】
また、SiC基板表面に形成するエピタキシャル膜の成長速度を20μm/h以上、望ましくは30μm/h以上とすることにより、基板の厚さ方向に対してほぼ垂直な横方向への成長(a面成長)も増大することとなり、エピタキシャル膜にマイクロパイプ欠陥が継承することを防止できる。
【0095】
尚、本発明はデバイス用の基板を用意するためのものだけにとどまらず、エピタキシャル成長の成長スピードが速いメリットを生かし、バルク成長として用いても良い。この場合、マイクロパイプ欠陥のないSiC単結晶を得ることができる。
【0096】
また、原料ガスとして、SiH4ガスとC38ガスを用いた例を示したが、それ以外にSi26ガスやC24ガス等の水素化物や塩素化物、SiCの昇華ガス、Si蒸気を用いてもよい。さらに、成長方法もCVDに限らず、分子線エピタキシャル成長法や昇華法などの気相成長法を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態におけるSiCエピタキシャル膜を成長させるCVD装置の概略図である。
【図2】第1実施形態におけるエピタキシャル成長工程を示す図である。
【図3】第1実施形態におけるエピタキシャル成長工程を示す図である。
【図4】第2実施形態におけるSiCエピタキシャル膜を成長させるCVD装置の概略図である。
【図5】第2実施形態におけるエピタキシャル成長工程を示す図である。
【図6】第2実施形態におけるエピタキシャル成長工程を示す図である。
【図7】第3実施形態におけるエピタキシャル成長工程を示す図である。
【図8】第3実施形態エピタキシャル成長工程を示す図である。
【図9】(a)は、SiCエピタキシャル成長基板の断面図である。
(b)は、他の実施形態のSiCエピタキシャル成長基板の断面図である。
【図10】(a)は、第2実施形態のCVD装置の一部の変形例を示す図である。
(b)は、第2実施形態のCVD装置の一部の変形例を示す図である。
【符号の簡単な説明】
10 SiC基板、
10a 昇華ガス、
11 マイクロパイプ欠陥、
14 エピタキシャル膜、
30 サセプタ、
31 断熱材、
33 コイル、
34 ガス導入管、
35 ガス排気管

Claims (1)

  1. マイクロパイプを有する導電性炭化珪素基板と、
    前記基板表面上に形成された炭化珪素エピタキシャル膜とから構成された炭化珪素エピタキシャル膜付き炭化珪素基板において、
    前記マイクロパイプが前記導電性炭化珪素基板内部にて該マイクロパイプの内壁に再結晶化された結晶によって閉塞しており、この閉塞した導電性炭化珪素基板の表面上において、炭化珪素エピタキシャル膜が形成されており、前記マイクロパイプの終点の位置が前記導電性炭化珪素基板の内部であることを特徴とする炭化珪素エピタキシャル膜付き炭化珪素基板。
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