JP4529252B2 - ポジ型感光性樹脂組成物、パターンの製造法及び電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性を有するポリイミド前駆体又はポリオキサゾール前駆体を含有する耐熱性ポジ型感光性樹脂組成物、これを用いたパターンの製造法及び電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。しかし近年半導体素子の高集積化、大型化が進む中、封止樹脂パッケージの薄型化小型化の要求がありLOC(リード・オン・チップ)や半田リフローによる表面実装などの方式が取られてきており、これまで以上に機械特性、耐熱性等に優れたポリイミド樹脂が必要とされるようになってきた。
【0003】
一方、ポリイミド樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきているが、これを用いるとパターン作成工程が簡略化でき、煩雑な製造工程の短縮が行えるという特徴を有する。
従来から感光性ポリイミドまたはその前駆体を用いてなる耐熱性フォトレジストや、その用途については良く知られている。例えばネガ型では、ポリイミド前駆体にエステル結合またはイオン結合を介してメタクリロイル基を導入する方法(特開昭49−11541号公報、特開昭50−40922号公報、特開昭54−145794号公報、特開昭56−38038号公報等)、光重合性オレフィンを有する可溶性ポリイミド(特開昭59−108031号公報、特開昭59−220730号公報、特開昭59−232122号公報、特開昭60−6729号公報、特開昭60−72925号公報、特開昭61−57620号公報等)、ベンゾフェノン骨格を有し、かつ窒素原子が結合する芳香環のオルソ位にアルキル基を有する自己増感型ポリイミド(特開昭59−219330号公報、特開昭231533号公報等)などが提案されている。
【0004】
上記のネガ型では、現像の際にN‐メチルピロリドン等の有機溶剤を必要とするため、最近では、アルカリ水溶液で現像ができるポジ型の感光性樹脂の提案がなされている。ポジ型ではポリイミド前駆体にエステル結合を介してo−ニトロベンジル基を導入する方法(J. Macromol. Sci. Chem., A24, 10, 1407, 1987)、可溶性ヒドロキシルイミドまたはポリオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(特公昭64−60630号公報、米国特許4395482号明細書)、可溶性ポリイミドにエステル結合を介してナフトキノンジアジドを導入する方法(Macromolecules, 23, 1990)、化学増幅型のポリイミド(特開平3−763号公報)、ポリイミド前駆体にナフトキノンジアジドを混合するもの(特開昭52−13315号公報)あるいはフェノール性水酸基をアルコキシカルボニル基で保護したポリアミド酸エステルまたはポリアミドフェノールに酸発生剤を用いるもの(特開平11−202489号公報)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記のネガ型ではその機能上、解像度に問題があったり用途によっては製造時の歩留まり低下を招くなどの問題がある。また、上記のものでは用いるポリマーの構造が限定されるために、最終的に得られる被膜の物性が限定されてしまい多目的用途には不向きなものである。一方、ポジ型においても上記のように感光剤の吸収波長に伴う問題から感度や解像度が低かったり、構造が限定され、同様の問題を有する。さらに、上記では画像形成後の高温処理に伴う膜減りの問題や大気中に微量に存在する塩基性成分の影響により、パターン形状が劣化するという問題がある。
【0006】
また、ポリベンゾオキサゾール前駆体にジアゾナフトキノン化合物を混合したもの(特開平1−46862号公報)や、ポリアミド酸にエステル結合を介してフェノール部位を導入したもの(特開平10−307393号公報)等カルボン酸の代わりにフェノール性水酸基を導入したものがあるが、これらのものは現像性が不十分であり未露光部の膜減りや樹脂の基材からの剥離が起こる。また、こうした現像性や接着の改良を目的に、シロキサン部位をポリマー骨格中に有するポリアミド酸を混合したもの(特開平4−31861号公報、特開平4−46345号公報)が提案されているが、上述のごとくポリアミド酸を用いるため保存安定性が悪化する。またこれらのものは、酸発生剤として芳香環を多数含むジアゾキノン化合物を用いるため、熱硬化後の機械物性を著しく低下させると言う問題があり、実用レベルの材料とは言い難いものである。
従って、いずれも未だ実用化レベルで充分なものはないのが実状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酸条件下で脱離可能な保護基にてアルカリ可溶性基を保護したポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体に、放射線の照射により上記ポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体中の保護基の脱離反応を誘発できる化合物を配合することによって、従来からのフォトレジストが有する前記問題を解決し、感光性を付与するポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体がいかなる構造であっても充分に対応でき、しかも感度や解像度も良好かつ大気中に微量に存在する塩基性成分の影響の少ない耐熱性のポジ型感光性樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
また本発明は、前記組成物の使用により、アルカリ水溶液で現像可能であり、感度、解像度および耐熱性に優れ、良好な形状のパターンが得られるパターンの製造法を提供するものである。
また、本発明は、良好な形状と特性のパターンを有することにより、信頼性の高い電子部品を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次のものに関する。
1)(A)分子中に、芳香環に結合しかつ−OR(但しRは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタール若しくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基又はアルキルシリル基を示す)で示される基を有するポリイミド前駆体であって、下記2)で詳述の一般式(1)で表されるポリイミド前駆体、(B)放射線照射により酸を発生する化合物を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物。
【0010】
2) (A)成分は、一般式(1)
【化3】
(式中、R1及びR2は各々独立に四価の有機基、個々のR3は各々独立に炭素原子数が1〜10の脂肪族若しくは芳香族炭化水素基又は炭素原子数が2〜10のアルコキシアルキル基、個々のR4は各々独立に酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価のアセタール若しくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基又はアルキルシリル基を示す)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体である。
【0011】
3) (A)ポリイミド前駆体100重量部に対して、(B)放射線照射により酸を発生する化合物0.01〜50重量部を含有することが好ましい。
4) 一般式(1)のR1が、結合基の存在する芳香族基において、非プロトン性の電子供与基またはフッ素化アルキル基によって置換された芳香族基の化学構造を有する四価の基であることが好ましい。
【0012】
5) 一般式(1)のR2が、結合基の存在する芳香族基またはこれとエーテル結合を介して隣接する芳香族基において、非プロトン性の電子求引基によって置換された芳香族基の化学構造を有する四価の基であることが好ましい。
【0013】
6) (A)成分が、一般式(2)
【化4】
(式中、R1は二価の有機基、R2は四価の有機基、個々のR3は各々独立に酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価のアセタール若しくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基又はアルキルシリル基を示す)で表される構造単位を有するポリオキサゾール前駆体である場合も有用である。
【0014】
7) (A)成分としてポリオキサゾール前駆体を考えた場合、(A)ポリオキサゾール前駆体100重量部に対して、(B)放射線照射により酸を発生する化合物0.01〜50重量部を含有することが好ましい。
8) 前記(A)成分が一般式(1)で表されるポリイミド前駆体であるポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥する工程、露光する工程、アルカリ水溶液を用いて現像する工程、加熱処理する工程を含むパターンの製造法。
9) 前記8)記載の製造法により得られるパターンを表面保護膜又は層間絶縁膜として有してなる電子部品。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において、(A)成分は、ポリイミド前駆体又はポリオキサゾール前駆体であるが、分子中に、芳香環に結合しかつ−OR(但しRは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価のアセタール若しくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基又はアルキルシリル基)で示される基を有することが必要である。
上記のRが、酸の作用で分解し、水素原子に変換すると、フェノール性水酸基を発生するため、本発明の組成物に適度なアルカリ可溶性を与えることになる。
【0016】
この基は、ポリイミド前駆体においては、テトラカルボン酸の残基中、ジアミン残基中、側鎖中等に存在していればよいが、その数としては、ポリイミド前駆体の構造単位(即ち、テトラカルボン酸残基1つとジアミン残基1つを含む繰り返し単位)当たり、2以上であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。
またこの基は、ポリオキサゾール前駆体においては、ジカルボン酸の残基中、ジアミン残基中、側鎖中等に存在していればよいが、その数としては、ポリオキサゾール前駆体の構造単位(即ち、ジカルボン酸残基1つとジヒドロキシジアミン残基1つを含む繰り返し単位)当たり、2以上であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。
【0017】
酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価のアセタール若しくはケタールを構成する基としては、例えば次の構造を有するものが挙げられる。
【化5】
(式中、R’、R”及びR’’’は各々独立に炭素数5以下のアルキル基であり、Xは炭素数3以上(好ましくは20以下)の2価のアルキレン基(側鎖を有していてもよい)である)
具体的には、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、アルキル置換テトラヒドロピラニル基、アルキル置換テトラヒドロフラニル基、アルコキシ置換テトラヒドロピラニル基、アルコキシ置換テトラヒドロフラニル基などが典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。
最も好ましい基はテトラヒドロピラニル基である。
【0018】
酸の作用で分解し、水素原子に変換しうる一価のアルコキシアルキル基又はアルキルシリル基に特に制限はないが、好ましい炭素数としてはアルコキシアルキル基2〜5、アルキルシリル基1〜20である。
【0019】
具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t-ブトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルシリル基、エチルシリル基、t-ブチルジメチル基などが典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。
最も好ましい基はエトキシメチル基、t-ブチルジメチル基である。
【0020】
(A)成分がポリイミド前駆体の場合、その構造としては特に制限はないが、上記一般式(1)にて示される構造単位を有するポリイミド前駆体は、i線領域の透明性、R4で示される基がHへ変換するときのアルカリ現像液への溶解性、基板との密着性に優れるので好ましい。
また(A)成分がポリオキサゾール前駆体の場合、その構造としては特に制限はないが、上記一般式(2)にて示される構造単位を有するポリオキサゾール前駆体は、i線領域の透明性、R3で示される基がHへ変換するときのアルカリ現像液への溶解性、基板との密着性に優れるので好ましい。
【0021】
以下、まず、ポリイミド前駆体について詳述する。
ポリイミド前駆体が、上記一般式(1)にて示される構造単位中のR1は、具体的にはベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノンなどの骨格を有する四価の芳香族炭化水素残基、または、ブタン、シクロブタンなどの骨格を有する四価の脂肪族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。炭素原子数としては、4〜30が好ましい。好ましい基としてはフェニル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルヘキサフルオロプロパンである。なお、必要に応じて、ポリアミド酸誘導体の分子中に、R1として上記にて例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
【0022】
上記一般式(1)にて示される構造単位中のR2は、具体的にはジフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ベンゼンなどの骨格を有する四価の芳香族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。炭素原子数としては、6〜30が好ましい。好ましい基としてはジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルエーテル、ビフェニルである。なお、必要に応じてR2として上記にて例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
【0023】
上記一般式(1)にて示される構造単位中のR3は、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基等の炭素原子数が1〜10の脂肪族又は芳香族炭化水素基、メトキシエチル基などの炭素原子数が2〜10のアルコキシアルキル基などが典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。これらのうち好ましい基としてはイソプロピル基、ベンジル基が挙げられる。
上記一般式(1)にて示される構造単位中のR4は、酸の作用で分解し、水素原子に変換しうる一価のアセタール若しくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基又はアルキルシリル基であり、前記Rと同一のものである。
【0024】
本発明において、上記一般式(1)で示されるポリイミド前駆体は、下記一般式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物、下記一般式(4)で示されるジアミノ化合物を原料の一部として用いることにより製造できる。
【0025】
【化6】
(式中、R1は一般式(1)と同じ)
【0026】
【化7】
(式中、R2は一般式(1)と同じ)
【0027】
ポリイミド前駆体は、例えば以下の方法で得ることができる。即ち、前記一般式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(5)で示されるアルコール類あるいはフェノール類とをN‐メチルピロリドン、γ‐ブチロラクトン、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中にて、ピリジンなどの適当な触媒の存在下で反応させる。
【0028】
【化8】
(式中、R3は前と同じ)
【0029】
ついで、塩化チオニルなどのハロゲン化剤を用いて酸部をハロゲン化した後に、前記一般式(4)にて示されるジアミノ化合物とピリジンなどの適当な触媒の存在下で、前記と同様の有機溶媒中で反応させる。
【0030】
前記方法にて得られたポリイミド前駆体を、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、アセトンなどの貧溶媒中で結晶化させ、ろ別、乾燥した後に、テトラヒドロフラン、N‐メチルピロリドン、γ‐ブチロラクトン、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどのアプロティックな有機溶媒中にて、R4を有する水酸基の保護化剤と、必要に応じて反応触媒とを加え保護化反応させて、前記一般式(1)で示される構造単位を有するポリイミド前駆体を得ることができる。
【0031】
本発明の組成物において、現在多用されているi線露光に適するものとするためには、i線領域で樹脂の透明性を向上させることが好ましい。
そのためには、上記一般式(3)にて示される構造単位中のR1は、結合基の存在する芳香族基において、非プロトン性の電子供与基またはフッ素化アルキル基によって置換された芳香族基の化学構造を有する四価の基とすることが好ましい。
また、上記一般式(4)にて示される構造単位中のR2は、結合基の存在する芳香族基またはこれとエーテル結合を介して隣接する芳香族基において、非プロトン性の電子求引基によって置換された芳香族基の化学構造を有する四価の基とすることが好ましい。
【0032】
前記非プロトン性の電子供与基によって置換された芳香族基の化学構造を有するカルボン酸二無水物の具体的な好ましい例としては、3,3',4,4'‐ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,4‐ジメトキシ‐2,3,5,6‐ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4‐ジトリメチルシリル‐2,3,5,6‐ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、3,3',4,4'‐ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4‐ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4‐ジカルボキシフェノキシ)メチルアミン二無水物、4,4'‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、4,4'‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物などを挙げることができる。またここで電子供与基とは、Hammett関係則におけるσpまたはσmの値が負の値をとる置換基を言い、このような関係則及び数値については例えば化学便覧、基礎編II、第365項(日本化学会編、丸善1984年)等によって広く知られている。
【0033】
またフッ素化アルキル基で置換された化学構造を有するカルボン酸二無水物の具体的な好ましい例としては、2,2‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェニル)‐1,1,1‐トリフルオロプロパン二無水物などを挙げることができる。
【0034】
また非プロトン性の電子求引基によって置換された芳香族基の化学構造を有するジアミノ化合物の具体的な好ましい例としては、前記R2がベンゾフェノン、ジフェニルスルホン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルなどを挙げることができる。
【0035】
本発明の前記一般式(1)で示される構造単位を有するポリイミド前駆体においては、その一部に前記一般式(1)で示される構造単位以外の構造単位を本発明の効果を損なわない程度有していてもよい。
(A)成分のポリイミド前駆体の分子量に特に制限はないが、一般に重量平均分子量で、10,000〜200,000であることが好ましい。なお、分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定し、ポリスチレン換算で算出することができる。
【0036】
次に、ポリオキサゾール前駆体について詳述する。
ポリオキサゾール前駆体において、上記一般式(2)にて示される構造単位中のR1は、具体的にはベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノンなどの骨格を有する二価の芳香族炭化水素残基、または、ブタン、シクロブタンなどの骨格を有する二価の脂肪族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
炭素原子数としては、4〜30が好ましい。好ましい基としてはフェニル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルヘキサフルオロプロパンである。なお、必要に応じて、ポリアミド誘導体の分子中に、R1として上記にて例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
【0038】
上記一般式(2)にて示される構造単位中のR2は、具体的にはジフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ベンゼンなどの骨格を有する四価の芳香族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。炭素原子数としては、6〜30が好ましい。好ましい基としてはジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルエーテル、ビフェニルである。なお、必要に応じてR2として上記にて例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
【0039】
上記一般式(2)にて示される構造単位中のR3は、酸の作用で分解し、水素原子に変換しうる一価のアセタール若しくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基又はアルキルシリル基であり、前記Rと同一のものである。
これらR3で示される保護基の水素原子に対する置換率は、10〜80%とすることが好ましく、30〜60%とすることがより好ましい。これよりも置換率が高い場合には、基材との密着性に低下が見られ、またこれよりも置換率が低い場合には、未露光部の膜減りが大きくなる等、悪影響を与える場合がある。
【0040】
また本発明において、上記ポリオキサゾール前駆体は、下記一般式(6)で示されるジカルボン酸、下記一般式(7)で示されるジアミノ化合物を原料の一部として用いることにより製造される。
【0041】
【化9】
(式中、R1は一般式(2)と同じ)
【0042】
【化10】
(式中、R2は一般式(2)と同じ)
【0043】
前記ポリオキサゾール前駆体は、例えば以下の方法で得ることができる。
前記一般式(6)にて示されるジカルボン酸をN‐メチルピロリドン、γ‐ブチロラクトン、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中にて塩化チオニルなどのハロゲン化剤を用いてハロゲン化した後に、前記一般式(7)にて示されるジアミノ化合物とピリジンなどの適当な触媒の存在下で、前記と同様の有機溶媒中で反応させる。
【0044】
前記方法にて得られたポリオキサゾール前駆体を、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、アセトンなどの貧溶媒中で結晶化させ、ろ別、乾燥した後に、テトラヒドロフラン、N‐メチルピロリドン、γ‐ブチロラクトン、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどのアプロティックな有機溶媒中にて、R3を有する水酸基の保護化剤と、必要に応じて反応触媒とを加え保護化反応させて、前記一般式(2)で示される構造単位を有するポリオキサゾール前駆体を得ることができる。
【0045】
本発明の前記一般式(2)で示される構造単位を有するポリオキサゾール前駆体においては、その一部に前記一般式(2)で示される構造単位以外の構造単位を有していてもよい。この場合、その割合は全構造単位中50%以下であることが好ましい。
(A)成分のポリオキサゾール前駆体の分子量に特に制限はないが、一般に平均分子量で10,000〜200,000であることが好ましい。なお、分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定し、ポリスチレン換算で算出することができる。
【0046】
なお、(A)成分として、ポリイミド前駆体及びポリオキサゾール前駆体を混合して使用しても良い。
本発明の組成物において、(A)成分として用いるポリイミド前駆体又はポリオキサゾール前駆体とともに、(B)成分として放射線照射により酸を発生する化合物(以下、酸発生剤とする)を用いる。この量は、感光時の感度、解像度を良好とするために、(A)成分100重量部に対して、0.01〜50重量部とすることが好ましく、0.01〜20重量部とすることがより好ましく、5〜15重量部とすることがさらに好ましい。
【0047】
本発明に使用する酸発生剤(B)は、紫外線の如き活性光線の照射によって酸性を呈すると共に、(A)成分であるポリイミド前駆体又はポリオキサゾール前駆体中の保護基Rを脱離させる作用を有する。このような(B)成分の化合物としては具体的にはジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N‐オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ナフトキノンジアジド‐4‐スルホン酸エステルなどが用いられる。このような化合物は必要に応じて2種類以上併用したり、他の増感剤と組合せて使用することができる。
なかでも芳香族N‐オキシイミドスルフォネートは高感度が、ジアリールヨードニウム塩は、未露光部に適度な溶解阻止効果が期待できるので好ましい。
【0048】
本発明におけるポジ型感光性樹脂組成物には、必要により密着性付与のための有機ケイ素化合物、シランカップリング剤、レベリング剤等の密着性付与剤を添加してもよい。これらの例としては、例えば、γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
密着性付与剤を用いる場合は、ポリイミド前駆体100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0049】
本発明においてはこれらの成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用することができる。溶剤としては、N‐メチル‐2‐ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、2‐メトキシエタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル‐1,3‐ブチレングリコールアセテート、1,3‐ブチレングリコールアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフランなどがあり、単独でも混合して用いても良い。
溶剤の量に特に制限はないが、一般に組成物中溶剤の割合が40〜75重量%となるように用いられる。
【0050】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を使用し、パターンを製造する方法は、まず該組成物を適当な支持体、例えば、シリコンウエハ、セラミック、アルミ基板などに塗布する。塗布方法としてはスピンナーを用いた回転塗布、スプレーコータを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティングなどが挙げられる。次に好ましくは60〜120℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に放射線、化学線を照射することができる。放射線、化学線としてはX線、電子線、紫外線、可視光線などが使用できるが、200nm〜500nmの波長のものが好ましい。g線、i線などの単色光を用いることもできる。次に好ましくは50〜150℃で加熱を行い、照射部表層部に発生した酸を底部にまで拡散させることが好ましい。次に現像して照射部を溶解除去することによりパターンを得ることができる。
【0051】
現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミンなどの一級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの二級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの三級アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの、四級アンモニウム塩などのアルカリ水溶液、および、これに水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。
【0052】
現像方法としてはスプレー、パドル、浸漬、超音波などの方式が可能である。次に現像によって形成したパターンをリンスすることができる。リンス液としては蒸留水を使用することができる。次に加熱処理を行い、耐熱性に富む最終パターンを得ることができる。加熱温度は一般に150〜450℃とされる。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体装置や多層配線板などの電子部品に使用することができ、具体的には、半導体装置の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜などの形成に使用することができる。本発明の半導体装置は、前記組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【0054】
本発明の半導体装置製造工程の一例を以下に説明する。
図1は多層配線構造の半導体装置の製造工程図である。図において、回路素子を有するSi基板などの半導体基板は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜などの保護膜2などで被覆され、露出した回路素子上に第一導体層が形成されている。前記半導体基板上にスピンコート法などで層間絶縁膜4が形成される。(工程(a))
【0055】
次に塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が前記層間絶縁膜4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出する様に窓6Aが設けられている(工程(b))。
前記窓6Aの層間絶縁膜4は、酸素、四フッ化炭素などのガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bがあけられている。ついで窓6Bから露出した第一導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(工程(c))。
【0056】
さらに公知の写真食刻技術を用いて、第二導体層7を形成させ、第一導体層3との電気的接続が完全に行われる(工程(d))。
3層以上の多層配線構造を形成する場合には、前記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0057】
次に表面保護膜8が形成される。この図の例では、この表面保護膜を前記感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、加熱して樹脂膜とする。この樹脂膜は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
なお、前記例において、層間絶縁膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【0058】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1 ポリアミド酸エステルの合成
3,3',4,4'‐ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)10gとイソプロピルアルコール3.87gとをN,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)45gに溶解し、1,8‐ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加の後に、60℃にて2時間加熱を行い、つづいて室温下で15時間かくはんし、エステル化を行った。
その後、氷冷下で塩化チオニルを7.1g加え、室温に戻し2時間反応を行った後にDMAc 45gに溶かした2,2‐ビス(3‐アミノ‐4‐ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.6gとピリジン4.67gを氷冷下で加え、さらに室温下で30分かくはんした。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミド酸エステルを得た。この重量平均分子量は24,000、数平均分子量は17,000であった。
【0059】
フェノール性水酸基の保護反応
前記にて得られたポリアミド酸エステル10gをテトラヒドロフラン50gに溶解させ、2,3‐ジヒドロピラン26gとp−トルエンスルホン酸を触媒量加え、室温下で1時間かくはんした。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによって一般式(1)で示されるポリイミド前駆体を得た。
【0060】
感光特性評価
前記ポリイミド前駆体100重量部に対し、放射線照射により酸を発生する化合物としてジメトキシアントラセンスルフォン酸ジフェニルヨードニウムを15重量部加え、2‐メトキシエタノールに溶解させた。
【0061】
前記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚2〜3μmの塗膜を形成し、そののち干渉フィルターを介して、超高圧水銀灯を用いてi線(365nm)露光を行った。
【0062】
露光後、90℃で5分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液とメタノールの混合溶液(体積比5:1)にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスしたところ、解像度10μm、未露光部の残膜率が90%の良好なパターンを得ることができた。この時の露光量は200mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0063】
実施例2
実施例1において用いるテトラカルボン酸二無水物を2,2‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物に代えてポリイミド前駆体を合成し(重量平均分子量14,500,数平均分子量11,000)、以下同様に感光特性評価を行い、解像度6μm、未露光部の残膜率が92%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は200mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0064】
実施例3
実施例1において用いる放射線照射により酸を発生する化合物をナフタルイミジルトリフレートに代え、また現像液にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液を用いて、以下同様に感光特性評価を行い、解像度8μm、未露光部の残膜率が92%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は150mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0065】
実施例4
実施例2において用いる放射線照射により酸を発生する化合物をナフタルイミジルトリフレートに代え、また現像液にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液を用いて、以下同様に感光特性評価を行い、解像度8μm、未露光部の残膜率が90%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は100mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0066】
実施例5 ポリアミド酸エステルの合成
3,3',4,4'‐ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)10gとイソプロピルアルコール3.87gとをN,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)45gに溶解し、1,8‐ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加の後に、60℃にて2時間加熱を行い、つづいて室温下で15時間かくはんし、エステル化を行った。
その後、氷冷下で塩化チオニルを7.1g加え、室温に戻し2時間反応を行った後にDMAc 45gに溶かした2,2‐ビス(3‐アミノ‐4‐ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.6gとピリジン4.67gを氷冷下で加え、さらに室温下で30分かくはんした。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミド酸エステルを得た。この重量平均分子量は24,000、数平均分子量は17,000であった。
【0067】
フェノール性水酸基の保護反応
前記にて得られたポリアミド酸エステル10gをγ‐ブチロラクトン50gに溶解させ、t-ブチルジメチルクロロシラン1.96gを加え、氷冷下で3時間かくはんした。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによって一般式(1)で示されるポリイミド前駆体を得た。
【0068】
感光特性評価
前記ポリイミド前駆体100重量部に対し、放射線照射により酸を発生する化合物としてジメトキシアントラセンスルフォン酸ジフェニルヨードニウムを15重量部加え、2‐メトキシエタノールに溶解させた。
【0069】
前記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚2〜3μmの塗膜を形成し、そののち干渉フィルターを介して、超高圧水銀灯を用いてi線(365nm)露光を行った。
【0070】
露光後、100℃で5分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液とメタノールの混合溶液(体積比5:1)にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスしたところ、解像度15μm、未露光部の残膜率が88%の良好なパターンを得ることができた。この時の露光量は250mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0071】
実施例6
実施例5において用いるテトラカルボン酸二無水物を2,2‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物に代えてポリイミド前駆体を合成し(重量平均分子量14,500,数平均分子量11,000)、以下同様に感光特性評価を行い、解像度10μm、未露光部の残膜率が92%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は300mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0072】
実施例7
実施例5において用いる水酸基の保護基をエトキシメチル基に変えてポリイミド前駆体を合成し、以下同様に感光特性評価を行い、解像度15μm、未露光部の残膜率が90%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は250mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0073】
実施例8
実施例5において用いる放射線照射により酸を発生する化合物をナフタルイミジルトリフレートに代え、また現像液にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液を用いて、以下同様に感光特性評価を行い、解像度10μm、未露光部の残膜率が90%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は200mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0074】
実施例9
実施例7において用いる放射線照射により酸を発生する化合物をナフタルイミジルトリフレートに代え、また現像液にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液を用いて、以下同様に感光特性評価を行い、解像度15μm、未露光部の残膜率が88%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は200mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0075】
比較例1
実施例1において合成中間体であるポリアミド酸エステルの水酸基の保護を行わずに、以下同様に感光特性評価を行った。
その結果、現像後の塗膜に明確なコントラストが得られず、パターンを得ることができなかった。
【0076】
比較例2
実施例1においてポリアミド酸エステルに対し、放射線照射により酸を発生する化合物を添加せずに、以下同様に感光特性評価を行った。
その結果、長時間現像液に浸しても露光部が溶解せず、シリコンウエハより剥離が生じ、パターンを得ることができなかった。
【0077】
比較例3
実施例1において用いる水酸基の保護基をt−ブトキシカルボニル基に変えてポリイミド前駆体を合成し、以下同様に感光特性評価を行った。露光後15分以内に加熱工程を行ったときには露光量400mJ/cm2において解像度10μm、未露光部の残膜率が88%の良好なパターンが得られたが、加熱工程までに20分以上放置した場合には表面難溶化が起こり、パターンを得ることができなかった。
【0078】
実施例10 ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成
4,4'‐ジカルボキシジフェニルエーテル(OBBA)10.3gをN,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)50gに溶解し、氷冷下で塩化チオニルを8.6g加えた後、室温に戻し2時間反応を行った。ここにDMAc 50gに溶かした2,2‐ビス(3‐アミノ‐4‐ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン 14.6gとピリジン5.7gを氷冷下で加え、さらに室温下で30分かくはんした。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミドを得た。重量平均分子量は14,500であった。
【0079】
水酸基の保護反応
前記にて得られたポリアミド10gをテトラヒドロフラン50gに溶解させ、2,3‐ジヒドロピラン28gとp−トルエンスルホン酸を触媒量加え、室温下で1時間かくはんした。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによって一般式(2)にて示されるポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。このもののテトラヒドロピラニル基による水酸基の保護率は58%であった。
【0080】
感光特性評価
前記ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対し、放射線照射により酸を発生する化合物としてジメトキシアントラセンスルフォン酸ジフェニルヨードニウムを15重量部加え、2‐メトキシエタノールに溶解させた。
【0081】
前記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚2〜3μmの塗膜を形成し、そののち干渉フィルターを介して、超高圧水銀灯を用いてi線(365nm)露光を行った。
露光後、120℃で5分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスしたところ、解像度5μm、未露光部の残膜率が95%の良好なパターンを得ることができた。この時の露光量は200mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0082】
実施例11
実施例10において用いるジカルボン酸をイソフタル酸に代えてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成し、以下同様に感光特性評価を行い、解像度6μm、未露光部の残膜率が92%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は400mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量は15,000であった。
【0083】
実施例12
実施例10において用いるジカルボン酸をテレフタル酸とイソフタル酸の共重合にして用い、ポリベンゾオキサゾール前駆体を合成し、以下同様に感光特性評価を行い、解像度6μm、未露光部の残膜率が93%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は300mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量は14,000であった。
【0084】
実施例13
実施例10において用いるジアミンを4,4'‐ジアミノ‐3,3'‐ジヒドロキシビフェニルに代えてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成し、以下同様に感光特性評価を行い、解像度8μm、未露光部の残膜率が90%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は400mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量は20,000であった。
【0085】
実施例14
実施例10において用いる放射線照射により酸を発生する化合物をナフタルイミジルトリフレートに代えて、以下同様に感光特性評価を行い、解像度6μm、未露光部の残膜率が95%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は150mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0086】
実施例15 ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成
4,4'‐ジカルボキシジフェニルエーテル(OBBA)10.3gをN,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)50gに溶解し、氷冷下で塩化チオニルを8.6g加えた後、室温に戻し2時間反応を行った。ここにDMAc 50gに溶かした2,2‐ビス(3‐アミノ‐4‐ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン 14.6gとピリジン5.7gを氷冷下で加え、さらに室温下で30分かくはんした。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミドを得た。重量平均分子量は14,500であった。
【0087】
水酸基の保護反応
前記にて得られたポリアミド10gをγ‐ブチロラクトン50gに溶解させ、t-ブチルジメチルクロロシラン1.96gを加え、氷冷下で3時間かくはんした。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによって一般式(2)にて示されるポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。
【0088】
感光特性評価
前記ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対し、放射線照射により酸を発生する化合物としてジメトキシアントラセンスルフォン酸ジフェニルヨードニウムを15重量部加え、2‐メトキシエタノールに溶解させた。
【0089】
前記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚2〜3μmの塗膜を形成し、そののち干渉フィルターを介して、超高圧水銀灯を用いてi線(365nm)露光を行った。
露光後、120℃で5分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスしたところ、解像度8μm、未露光部の残膜率が90%の良好なパターンを得ることができた。この時の露光量は250mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0090】
実施例16
実施例15において用いるジカルボン酸をテレフタル酸とイソフタル酸の共重合にして用い、ポリベンゾオキサゾール前駆体を合成し、以下同様に感光特性評価を行い、解像度10μm、未露光部の残膜率が88%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は300mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量は14,000であった。
【0091】
実施例17
実施例15において用いる水酸基の保護基をエトキシメチル基に変えてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成し、以下同様に感光特性評価を行い、解像度6μm、未露光部の残膜率が90%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は300mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0092】
実施例18
実施例15において用いる放射線照射により酸を発生する化合物をナフタルイミジルトリフレートに代えて、以下同様に感光特性評価を行い、解像度8μm、未露光部の残膜率が90%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は150mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0093】
実施例19
実施例17において用いる放射線照射により酸を発生する化合物をナフタルイミジルトリフレートに代えて、以下同様に感光特性評価を行い、解像度6μm、未露光部の残膜率が92%の良好なパターンが得られた。この時の露光量は150mJ/cm2であった。なお露光後、加熱工程までに30分〜2時間放置してもパターン形状の劣化は見られなかった。
【0094】
比較例4
実施例10において合成中間体であるポリアミドの水酸基の保護を行わずに、以下同様に感光特性評価を行った。
その結果、現像後の塗膜に明確なコントラストが得られず、パターンを得ることができなかった。
【0095】
比較例5
実施例10においてポリベンゾオキサゾール前駆体に対し、放射線照射により酸を発生する化合物を添加せずに、以下同様に感光特性評価を行った。
その結果、長時間現像液に浸しても露光部が溶解せず、シリコンウエハより剥離が生じ、パターンを得ることができなかった。
【0096】
比較例6
実施例10において用いる水酸基の保護基をt−ブトキシカルボニル基に変えてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成し、以下同様に感光特性評価を行った。露光後15分以内に加熱工程を行ったときには露光量450mJ/cm2において解像度5μm、未露光部の残膜率が95%の良好なパターンが得られたが、加熱工程までに20分以上放置した場合には表面難溶化が起こり、パターンを得ることができなかった。
【0097】
【発明の効果】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、感度、解像度および耐熱性に優れる。
また本発明のパターンの製造法によれば、前記組成物の使用により、感度、解像度および耐熱性に優れ、良好な形状のパターンが得られる。
また、本発明の電子部品は、良好な形状と特性のパターンを有することにより、信頼性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多層配線構造の半導体装置の製造工程図である。
【符号の説明】
1…半導体基板、2…保護膜、3…第1導体層、4…層間絶縁膜層、5…感光樹脂層、6A、6B、6C…窓、7…第2導体層
8…表面保護膜層。
Claims (7)
- (A)分子中に、芳香環に結合しかつ−OR(但しRは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタール若しくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基又はアルキルシリル基を示す)で示される基を有するポリイミド前駆体であって、
下記一般式(1):
- (A)ポリイミド前駆体100重量部に対して、(B)放射線照射により酸を発生する化合物0.01〜50重量部を含有する請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
- 一般式(1)のR1が、結合基の存在する芳香族基において、非プロトン性の電子供与基またはフッ素化アルキル基によって置換された芳香族基の化学構造を有する四価の基である請求項1又は2記載のポジ型感光性樹脂組成物。
- 一般式(1)のR2が、結合基の存在する芳香族基またはこれとエーテル結合を介して隣接する芳香族基において、非プロトン性の電子求引基によって置換された芳香族基の化学構造を有する四価の基である請求項1〜3のいずれか1項記載のポジ型感光性樹脂組成物。
- i線の単色光露光用である請求項1〜4のいずれか1項記載のポジ型感光性樹脂組成物。
- 請求項1〜5の何れかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥する工程、露光する工程、アルカリ水溶液を用いて現像する工程、加熱処理する工程を含むパターンの製造法。
- 請求項6記載の製造法により得られるパターンを表面保護膜又は層間絶縁膜として有してなる電子部品。
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