JP4291832B2 - 基板焼成炉の給排気システム - Google Patents

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Description

本発明は、液晶表示装置用ガラス基板、PDP(プラズマディスプレイパネル)用ガラス基板や半導体ウェハー等の薄板状電子部品用基板(以下、単に「基板」と称する)に焼成処理を行う基板焼成炉における給排気システムに関する。
カラーフィルタの製造工程の一つにカラーインクをインクジェットで着弾させたガラス基板を焼成する工程がある。この焼成工程は、所定の焼成温度に昇温した焼成炉中にて大気雰囲気下でガラス基板を所定時間保持することによって進行する。また、ガラス基板上に金属配線を形成する場合には、同様の焼成炉中にて窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下でガラス基板を焼成する。いずれの焼成処理工程においても、ガラス基板上のカラーインク等の被焼成物に含まれる有機溶剤が揮発或いは酸化することによって多くの有機物が発生して雰囲気中に拡散する。
このため、焼成処理中は絶えず清浄な熱風を焼成炉に送風するとともに、排気も継続して行って焼成炉中に有機物が滞留しないようにしている。焼成炉から排気された有機物を多量に含む気体をそのまま外気に放出することはできないため、スクラバー等によって排気中の有機物を捕集する処理がなされていた。
一方、省エネルギーの観点から、焼成炉から排気される熱風と焼成炉に新たに供給する気体との間で熱交換を行う試みもなされてきた。すなわち、焼成炉からの排気をスクラバーで処理すると持ち去られる熱エネルギー量が非常に多くなってエネルギー効率が悪いため、排気される気体と新たに供給する気体とを熱交換器に導入し、それらの間で熱交換を行わせることによって焼成炉からの排熱を回収するという試みである。
焼成炉から排気された気体をそのまま熱交換器に導入すると、熱交換器内の構造物に有機物が付着して目詰まりを生じるため、排気気体を触媒処理して有機物を分解した後に熱交換器に導くことが必要となる。炉から排出された排ガスを触媒処理した後に熱交換器に導く技術については、例えば特許文献1にも開示されている。
特開2001−201271号公報
しかしながら、ガラス基板の焼成炉から排気された気体を触媒処理しても有機物を十分に取り除くことができず、その結果比較的短時間で付着物によって熱交換器が詰まり、結局長時間の連続運転が出来ないために装置稼働率が低くなって経済的ではなかった。
このため、実際には焼成炉から排気された気体をスクラバーによって処理していることが多いのであるが、この場合は上述した低エネルギー効率以外にも処理後の廃液処理が必要になるため、ランニングコストが高くなるという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エネルギー効率が高く、しかも長期間安定して稼働させることができる基板焼成炉の給排気システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板を収容して焼成処理を行う炉体と、前記炉体から排出された熱風を循環させて再度前記炉体に供給する循環経路と、前記循環経路に設けられて熱風を循環させるファンと、前記循環経路に設けられて熱風を加熱するヒータと、を有する基板焼成炉と、前記循環経路のうち前記ヒータから前記炉体の気体吹き出し口に至る加熱後熱風通過領域から熱風を排出する排気経路と、前記排気経路に設けられ、前記循環経路から排出された熱風に含まれる有機物を分解するための触媒を有する触媒ユニットと、前記触媒ユニットから排出された熱風と前記循環経路に新たに供給する気体との熱交換を行う熱交換器と、を備えている。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板焼成炉の給排気システムにおいて、前記触媒ユニットを前記排気経路が前記循環経路に接続される分岐接続点に配置している。
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る基板焼成炉の給排気システムにおいて、前記炉体に収容して焼成処理を行っている基板の枚数を計数する計数手段と、前記計数手段によって計数された基板枚数に応じて前記循環経路からの排気量および前記循環経路への給気量を制御する流量制御手段と、をさらに備える。
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る基板焼成炉の給排気システムにおいて、前記熱交換器を経由することなく前記循環経路に直接新たな給気を行うバイパス経路をさらに備える。
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る基板焼成炉の給排気システムにおいて、前記触媒ユニットから排出されて前記熱交換器に流入する熱風の圧力と前記熱交換器から排出される熱排気の圧力との圧力差を検知する圧損検知手段と、前記圧力差が所定値以上となった時点で前記バイパス経路を作動させる給気経路切替手段と、をさらに備える。
また、請求項6の発明は、請求項1の発明に係る基板焼成炉の給排気システムにおいて、前記基板焼成炉に不活性ガス雰囲気中にて基板の焼成処理を行わせ、前記触媒ユニットの入口側近傍に空気または酸素を供給する空気供給管をさらに備える。
請求項1の発明によれば、循環経路のうちヒータから炉体の気体吹き出し口に至る加熱後熱風通過領域から熱風を排出する排気経路に触媒ユニットを設けているため、ヒータによって加熱された直後の高温の熱風が直ちに触媒ユニットに流入し、効率良く熱風中に含まれる有機物が分解されることとなるため、有機物のほとんどは分解される。その結果、熱交換器の内部構造に有機物が付着することが最小限に抑制されるため熱交換器を長期間安定して稼働させることができ、給排気システムにおけるエネルギー効率を高くすることができる。
また、請求項2の発明によれば、触媒ユニットを排気経路が循環経路に接続される分岐接続点に配置しているため、可能な限り高温の熱風を触媒ユニットに流入させることができ、有機物の分解効率をより高めることができる。
また、請求項3の発明によれば、炉体に収容して焼成処理を行っている基板の枚数に応じて循環経路からの排気量および循環経路への給気量を制御するため、触媒ユニットに流入する排気気体中に含まれる有機物の気中濃度をほぼ一定にすることができ、触媒ユニットを安定して作動させることができる。
また、請求項4の発明によれば、熱交換器を経由することなく循環経路に直接新たな給気を行うバイパス経路を備えるため、新たに供給される気体をバイパス経路に流すことによって熱交換を停止し、熱交換器の内部構造を昇温させて付着した有機物を除去することができる。
また、請求項5の発明によれば、触媒ユニットから排出されて熱交換器に流入する熱風の圧力と熱交換器から排出される熱排気の圧力との圧力差が所定値以上となった時点でバイパス経路を作動させるため、熱交換器の内部構造にある程度の量の有機物量が付着した時点でバイパス経路が作動することとなり、効果的な有機物除去を行うことができる。
また、請求項6の発明によれば、触媒ユニットの入口側近傍に空気または酸素を供給する空気供給管を備えるため、不活性ガス雰囲気中にて基板の焼成処理を行う場合であっても、触媒ユニットにて有機物の熱分解と酸化分解とを生じせしめ、触媒ユニットの出口側温度を高温にして熱交換器における熱交換効率を向上させることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る基板焼成炉の給排気システムの要部構成を示す概要図である。また、図2は、基板焼成炉を上方から見た断面図である。基板焼成炉1は、カラーインク等を載せた角型のガラス基板W(本発明で言う基板)を焼成する熱風炉である。基板焼成炉1は、ガラス基板Wを収容して焼成処理を行う炉体10と、炉体10から排出された熱風を循環させて再度炉体10に供給する循環経路20と、循環経路20に設けられて熱風を循環させるファン21と、循環経路20に設けられて熱風を加熱するヒータ22と、を備える。
炉体10は、基板焼成炉1の本体部であって、ガラス基板Wを多段(本実施形態では40段)に収容可能な筐体である。炉体10の内側は、略四角柱形状の熱処理空間19とされている。炉体10の内壁面には図示を省略する多数のフォークが内設されている。各フォークは、炉体10の内壁面から熱処理空間19に向けて水平方向に沿って延設されている。水平方向に沿って並んだ複数本のフォークでもって1段の棚が構成されており、そのような棚が40段形成されている。各段の棚には1枚のガラス基板Wを水平姿勢にて載置することが可能である。
炉体10の正面側(図2の紙面左側)には、ルーバタイプのシャッター11が設けられている。シャッター11は、複数個のルーバを多段に積層して構成されている。各ルーバには図示を省略する昇降駆動機構が付設されており、ルーバごとに昇降可能とされている。図外の搬送ロボットが基板焼成炉1に対してガラス基板Wの搬出入を行うときには、搬出入先の棚に対向する部位のみをアクセス用開口とするように、当該棚とほぼ同じ高さ位置のルーバが上昇する。このようにすれば、ガラス基板Wの搬出入時の開口を必要最小限として、搬出入に伴う熱エネルギーの漏出を最小限に抑制することができる。なお、シャッター11の比較的下部のルーバを駆動するときには、当該ルーバよりも上段のルーバも連動して駆動することとなるため、下部のルーバ程大きなトルクの得られる駆動機構を設けておく必要がある。
炉体10の側面には、熱処理空間19に熱風を供給するための吹き出し口12および熱風を排気するための排気口14が相対向して設けられている。すなわち、本実施形態の基板焼成炉1においては、炉体10の一方側面から供給された熱風がガラス基板Wの面に沿って水平方向に熱処理空間19内を流れて反対側側面へと流れ込むのである。吹き出し口12および排気口14は、炉体10の内壁面のうち少なくともガラス基板Wを収容する多段の棚全体に対応する高さ位置に設けられている。このため、炉体10に収容されているガラス基板Wには均一に熱風を供給して均質な熱処理を行うことができる。
吹き出し口12には高温対応の耐熱HEPAフィルタ13が設けられている。耐熱HEPAフィルタ13は、循環経路20を経由して送風されてきた熱風中に含まれるパーティクルを取り除いて清浄な熱風とする。一方、排気口14には、多数の通気孔を全面に配置したパンチングメタル15が設置されている。熱処理空間19を流れる熱風はパンチングメタル15の通気孔から循環経路20へと排気される。なお、炉体10の内壁面のうちシャッター11と対向する壁面は通気孔のない部材にて形成された炉壁である。また、炉体10の内壁面のうちシャッター11とそれに対向する壁面を除く二方にパンチングメタル15と同様のものを配置するようにしても良い。
循環経路20は、炉体10の排気口14と吹き出し口12とを連通する気体通過可能な流路であり、炉体10の外壁面と基板焼成炉1全体を覆う耐熱壁の内壁面との間に形成された空間をもって構成されている。基板焼成炉1の循環経路20にはファン21とヒータ22とが設けられている。本実施形態においては、循環経路20の上流側にファン21が設けられ、下流側にヒータ22が設けられている。循環経路20の上流側とは炉体10の排気口14に近い側であり、逆に下流側とは吹き出し口12に近い側である。ファン21は、具体的には図2に示すように、排気口14に近接対向する部位に設置されている。ファン21は、モータ21aと旋回翼21bとを備えており、モータ21aが旋回翼21bを回転させることによって、循環経路20中を上流側から下流側へと向かう気流(つまり、排気口14から吹き出し口12へと向かう気流)が生じる。なお、図2では、2個のファン21が設けられているが、ファン21の設置数は任意である。
ヒータ22は、炉体10のシャッター11と対向する炉壁と基板焼成炉1の耐熱壁との間に設置されている。ヒータ22は、循環経路20を流れる熱風を再加熱する。本実施形態の基板焼成炉1においては、循環経路20の上流側のファン21によって送り出された気流が下流側のヒータ22によって加熱された後に耐熱HEPAフィルタ13によって浄化されて吹き出し口12から熱処理空間19に供給されることとなる。そして、炉体10の排気口14から排出された熱風は再びファン21によって循環経路20の下流側に送り出される。なお、図2では、3個のヒータ22が設けられているが、ヒータ22の設置数は任意である。
以上のように、基板焼成炉1はいわゆる熱風循環型の焼成炉として構成されており、ガラス基板Wを加熱処理するときには絶えず炉体10から排気された熱風が再加熱されて帰還することとなる。炉体10に絶えず新たな熱風が供給されることによって、熱処理空間19の温度は所定の焼成温度(本実施形態では200℃〜300℃の範囲から処理に応じて設定される)に維持されている。
ところで、既述したように、ガラス基板Wを加熱するとガラス基板W上の被焼成物(カラーインク等)に含まれる有機溶剤が揮発或いは酸化することによって多くの有機物が発生する。熱処理空間19には絶えず熱風の気流が形成されているため、ガラス基板Wから遊離した有機物は気流とともに排気口14から循環経路20へと流れ込む。基板焼成炉1の熱風循環システムを完全に閉じた系にすると、多量の有機物によって新たな有機物の焼成が抑制されたり、耐熱HEPAフィルタ13が急速に目詰まりして劣化したりするため、本実施形態では循環経路20への新たな気体の供給および循環経路20からの排気を行うようにしている。
排気経路としては、循環経路20のうちヒータ22から炉体10の気体吹き出し口12に至る加熱後熱風通過領域20aに排気管30が連通接続されている。そして、排気管30には触媒ユニット31が配設されている。触媒ユニット31は、有機物を分解するための白金(Pt)触媒を内蔵する。ここで、本実施形態においては図2に示すように、触媒ユニット31が循環経路20におけるヒータ22の直後であって加熱後熱風通過領域20aに臨むように配置されている。すなわち、基板焼成炉1の筐体に形成され、排気管30が循環経路20に接続される分岐接続点に触媒ユニット31が配置されている。
また、排気管30の他端(循環経路20とは反対側端部)は熱交換器50に連通接続されている。本実施形態の熱交換器50は、蓄熱部が回転する方式の蓄熱式熱交換器であり、回転する蓄熱部のエレメントに高温の気体と低温の気体とを交互に接触させて熱交換させるものである。このような方式の熱交換器としては、例えばユングストローム(登録商標)式の熱交換器を使用することができる。
排気管30には触媒ユニット31の他にも流量調整バルブ32および入り側圧力計33が介挿されている。流量調整バルブ32は、排気管30を流れる排気流量を調整する。入り側圧力計33は、触媒ユニット31から排出されて熱交換器50に流入する熱風の圧力を検出する。また、熱交換器50から排出された排気気体を排熱ダクト等に導く熱排気経路30aには出側圧力計34が介挿されている。出側圧力計34は、熱交換器50から排出される熱排気の圧力を検出する。
一方、循環経路20への給気経路としては、循環経路20のうちのファン21の近傍領域に給気管40が連通接続されている。より具体的には、給気管40から供給された気体が旋回翼21bの軸周辺に流れるように構成されている。給気管40には流量調整バルブ42が介挿されている。流量調整バルブ42は、給気管40を流れる給気流量を調整する。給気管40の他端側(循環経路20とは反対側)は二股に分岐されており、一方の分岐管40aは熱交換器50に連通接続されるとともに、他方の分岐管は熱交換器50を経由しないバイパス管40bとされている。
また、熱交換器50に新たな気体(空気または窒素ガス等の不活性ガス)を供給するための供給経路40cには三方弁44が設けられている。この三方弁44にはバイパス管40bも接続されている。三方弁44は、新たに供給する気体を熱交換器50を経由して給気管40に送るか、熱交換器50を経由することなくバイパス管40bを介して給気管40に送るかを択一的に切り替える。新たに供給する気体がバイパス管40bを通過する場合には、バイパス管40bが熱交換器50を経由することなく循環経路20に直接新たな給気を行うバイパス経路として機能する。新たに供給する気体がいずれの経路を通過したとしても、最終的には給気管40に流れ込み、その供給流量は流量調整バルブ42によって調整される。
熱交換器50は、触媒ユニット31から排出された熱風と循環経路20に新たに供給する気体との熱交換を行う。本実施形態の熱交換器50は蓄熱式熱交換器であり、触媒ユニット31から排出されて排気管30から送給された高温の熱風と、供給経路40cから送給された比較的低温の気体とを交互に蓄熱部のエレメントに接触させ、排出される熱風が保有している熱をエレメントを介して新たに供給する気体に伝える。
また、本実施形態の給排気システムには制御部90が設けられている。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく磁気ディスク等を備えている。制御部90は、流量調整バルブ32,42および三方弁44と電気的に接続されており、それらの動作を制御する。また、制御部90は、基板焼成炉1の各動作部(例えば、ファン21、ヒータ22、シャッター11の昇降駆動機構)の動作も制御する。さらに、制御部90は、入り側圧力計33、出側圧力計34および後述する基板焼成炉1のカウンター91とも電気的に接続されており、これらセンサーからの検出信号を受ける。
次に、上記構成を有する基板焼成炉1の給排気システムにおける動作内容について説明する。まず、焼成処理中においては、搬送ロボットが一定間隔でガラス基板Wを順次炉体10に搬入して所定の段の棚に渡す。棚を構成するフォークに載置されたガラス基板Wは吹き出し口12からの熱風によって焼成温度にまで昇温する。そして、熱処理空間19内にて所定の焼成時間が経過したガラス基板Wは搬送ロボットによって搬出される。なお、本実施形態のようにガラス基板Wに載せられた被焼成物がカラーインクである場合には熱処理空間19が空気雰囲気とされるが(つまり、加熱空気が循環される)、被焼成物が配線用のインクである場合には窒素ガス等の不活性ガス雰囲気とされる(つまり、加熱不活性ガスが循環される)。
炉体10の排気口14から排出された熱排気はファン21によって循環経路20に熱風の気流として送り出され、その気流がヒータ22によって加熱された後に耐熱HEPAフィルタ13によって浄化されて吹き出し口12から熱処理空間19に再供給される。ヒータ22は、制御部90によって制御されており、ファン21によって送り出された気流を焼成温度に応じた温度にまで加熱する。なお、炉体10の熱処理空間19に温度センサーを設け、その温度センサーの計測結果に基づいて、熱処理空間19が焼成温度に応じた温度となるように制御部90がヒータ22をフィードバック制御するようにしても良い。
上記の循環過程において、ヒータ22によって加熱された熱風は、吹き出し口12に向かう気流と排気管30に流れ込む気流とに分岐する。排気管30には、加熱後熱風通過領域20aに臨むように触媒ユニット31が設けられている。従って、ヒータ22によって加熱された直後の焼成温度よりも数十℃高温の熱風の一部は直ちに触媒ユニット31に流入することとなる。
ヒータ22によって加熱された直後の高温の熱風が直ちに触媒ユニット31に流入して白金触媒に接触すると、白金触媒も高温となり、循環経路20から排出された熱風に含まれる有機物が高い効率にて分解されることとなる。このときに、ガラス基板Wが不活性ガス雰囲気中にて焼成されている場合には触媒ユニット31にて有機物の熱分解が生じ、空気雰囲気中にて焼成されている場合には触媒ユニット31にて有機物の熱分解と酸化分解とが同時に生じる。その結果、循環経路20から排気管30に排出された熱風に含まれる有機物のほとんどが無害な物質に分解される。
触媒ユニット31にて有機物のほとんどが分解されて浄化された熱風は流量調整バルブ32を通過して熱交換器50に流入する。一方、ガラス基板Wに通常の焼成処理を行っているときには、新たに供給される気体が熱交換器50を経由するように三方弁44が設定されいる。すなわち、バイパス管40bは閉じられている。これにより、熱交換器50において、触媒ユニット31から排出された高温の熱風と循環経路20に新たに供給する低温の気体との間で熱交換が実行され、排気気体の温度が低下するとともに給気気体の温度が昇温する。このときに、循環経路20から排気管30に排出された熱風に含まれる有機物のほとんどが分解されているため、熱交換器50内のエレメント等への有機物の付着は非常に少なく、熱交換器50の目詰まりを防止することができる。

熱交換器50を通過して温度が低下した排気気体は熱排気経路30aを経て外部の排熱ダクト等に放出される。この排気気流にも有機物がほとんど含まれていないことは勿論である。一方、熱交換器50を通過して温度が上昇した給気気体は分岐管40aを経て給気管40に流れ込み、流量調整バルブ42を通過して循環経路20に流れ込む。新たに供給される気体は循環経路20のファン21の近傍(つまり、ヒータ22よりも上流側)に流れ込むため、熱処理空間19に吹き出される熱風の温度を低下させるおそれはなく、ヒータ22によって加熱された後に吹き出し口12から熱処理空間19に供給されることとなる。
このようにすれば、ヒータ22によって加熱された直後の高温の熱風が直ちに触媒ユニット31に流入し、効率良く熱風中に含まれる有機物が分解されることとなるため、有機物のほとんどは分解される。その結果、熱交換器50の内部構造に有機物が付着することが最小限に抑制されるため熱交換器50を長期間安定して稼働させることができる。熱交換器50を使用して給気気体と排気気体との間の熱交換を行うことができれば、基板焼成炉1の給排気システムにおけるエネルギー効率を高くすることができる。
また、特に空気雰囲気にて焼成処理を行う場合には、触媒ユニット31にて有機物の熱分解と酸化分解とが同時に生じ、その結果、触媒ユニット31の入口側温度が焼成温度に近似した温度であったのが出口側温度では約200℃上昇して昇温することが判明した。一般に熱交換器においては高温側流体の温度が高いほど良好な熱効率が得られ、約400℃以上の高温の排気気体が熱交換器50に流入すれば、エネルギー効率をより良好なものとすることができる。むしろ、基板焼成炉1から見ると、触媒ユニット31にて分解熱が上乗せされることにより、排気によって自らが放出した以上の熱を給気によって得ることができる。
また、基板焼成炉1には炉体10に収容されて焼成処理が行われているガラス基板Wの枚数を計測するカウンター91が設けられている。このカウンター91としては、ガラス基板Wが各棚に載置されているか否かを検出する光学センサー等のハード的な計数機構であっても良いし、処理レシピから炉体10に収容されているガラス基板Wの枚数を認識するソフト的なものであっても良い。カウンター91によって計数された処理中のガラス基板Wの枚数は制御部90に電気信号として伝達される。そして、制御部90は、カウンター91によって計数されたガラス基板Wの枚数に応じて流量調整バルブ32および流量調整バルブ42を制御し、循環経路20からの排気量および循環経路20への給気量を調整する。具体的には、焼成処理が行われているガラス基板Wの枚数が多いほど、それに比例して発生する有機物量も多くなるため、循環経路20からの排気量および循環経路20への給気量が多くなるように制御部90が流量調整バルブ32,42を制御する。このようにすれば、触媒ユニット31に流入する排気気体中に含まれる有機物の気中濃度がほぼ一定となるため、白金触媒が安定して作用することとなる。また、焼成処理が行われているガラス基板Wの枚数が少ないときは給排気量を少なくして基板焼成炉1の循環経路20から持ち去られる熱エネルギーを低減し、逆にガラス基板Wの枚数が多いときは給排気量を多くして発生した有機物をなるべく早期に排出することができる。
また、制御部90は、循環経路20からの排気量が循環経路20への給気量よりも若干多くなるように流量調整バルブ32,42を制御する。このようにすれば、炉体10の内部は絶えず外気に対して若干の負圧状態となり、ガラス基板Wの搬出入時にシャッター11を開放したときにも有機物の炉外への漏出や熱の放散を抑制することができる。
本実施形態の給排気システムによれば、熱交換器50のエレメント等の内部構造への有機物付着はほとんど生じないのであるが、長期にわたって連続運転を行っていると徐々にではあるが有機物の付着は避けられない。熱交換器50の内部構造に有機物が付着してくると、いわゆる目詰まり状態となって圧力損失が発生する。このため、入り側圧力計33および出側圧力計34の圧力検知結果に基づいて、制御部90が触媒ユニット31から排出されて熱交換器50に流入する熱風の圧力と熱交換器50から排出される熱排気の圧力との圧力差を検知する。そして、その圧力差が所定の閾値以上となったときに、新たに供給される気体がバイパス管40bを通るように制御部90が三方弁44を切り替える。この状態では、新たに供給される気体が熱交換器50を通過することはない。すると、熱交換器50には、高温の排気気体が流れ続ける一方で低温の気体が供給されなくなるため熱交換が生じなくなり、熱交換器50のエレメント等の温度が上昇する。その結果、熱交換器50の内部構造に付着していた有機物が熱によって再度昇華して排出される。すなわち、新たに供給される気体をバイパス管40bに流すことによって、熱交換器50の内部構造から有機物が除去されてクリーニング処理が実行されるのである。但し、このクリーニング処理時には熱交換が全く行われずにエネルギー効率が低くなるため、入り側圧力計33と出側圧力計34との圧力差が所定値未満となった時点で新たに供給される気体が再び熱交換器50を通過するように制御部90が三方弁44を切り替える。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、本発明に係る給排気システムは図3に示すようなものであっても良い。図3において、図1と同一の要素については同一の符号を付している。図3の給排気システムが図1と相違するのは、触媒ユニット31に空気(または酸素)を供給する空気供給管60を設けている点である。空気供給管60は、熱交換器50を通って排気管30の触媒ユニット31の入口側近傍に連通接続されている。なお、このような構成を実現するため、図3のシステムにおいては、排気管30における加熱後熱風通過領域20aからやや離れた位置に触媒ユニット31が配置されている。すなわち、排気管30が循環経路20に接続される分岐接続点と触媒ユニット31との間に空気供給管60が連通接続される。
図3のシステムでは、給気管40からは窒素ガス等の不活性ガスが供給され、循環経路20および炉体10の内部は不活性ガス雰囲気とされている。それとは別経路の空気供給管60からは排気管30の触媒ユニット31入口側近傍に熱交換器50にて昇温された空気(または酸素)が供給される。なお、空気が供給されるのは排気管30の最上流位置であるため、その空気が逆流して不活性ガス雰囲気とされた循環経路20に流れ込むことは防止される。触媒ユニット31の入口側近傍に高温の空気が供給されると、空気雰囲気にて焼成処理を行う場合と同様に、触媒ユニット31にて有機物の熱分解と酸化分解とが同時に生じ、触媒ユニット31の入口側温度よりも出口側温度の方が高温となる。その結果、熱交換器50における熱交換効率を向上させて、エネルギー効率をより良好なものとすることができる。なお、図3のシステムは、給気管40から空気を供給してガラス基板Wの大気焼成処理を行うものにも適用できることは言うまでもない。
また、循環経路20の構成は図2のような形態に限定されるものではなく、炉体10の排気口14と吹き出し口12とを連通する気体通過可能な流路であって、その上流側にファン21を設け、下流側にヒータ22を設ける構成であれば良い。従って、例えば基板焼成炉1の外壁パネルを開放しやすいように、ヒータ22を炉体10の底部に配置するようにしても良い。
また、バイパス管40bを使用した熱交換器50のクリーニング処理は、入り側圧力計33と出側圧力計34との圧力差に関わらず一定間隔ごとに実行するようにしても良い。
また、熱交換器50のクリーニング処理では、バイパス管40bを使用し、さらに別途排気入口に設けた、例えば高温・高圧の過熱蒸気を噴出する過熱蒸気ノズルを併用することにより、より短時間でクリーニングレベルを上げてもよい。
また、熱交換器50は、蓄熱式熱交換器に限定されるものではなく、給排気が交互に通過する流路を持つプレート式熱交換器等であってもよい。
また、基板焼成炉1の炉体10に収容可能なガラス基板Wの枚数は40枚に限定されるものではなく任意の数とすることができる。
また、本発明に係る給排気システムを備えた基板焼成炉によって焼成処理の対象となる基板はガラス基板Wに限定されるものではなく、半導体ウェハであっても良い。また、被焼成物となるインクはバンク用、ITO電極(インジウム錫酸化物の透明電極)用などでも良い。
本発明に係る基板焼成炉の給排気システムの要部構成を示す概要図である。 基板焼成炉を上方から見た断面図である。 本発明に係る基板焼成炉の給排気システムの他の例を示す概要図である。
符号の説明
1 基板焼成炉
10 炉体
12 吹き出し口
13 耐熱HEPAフィルタ
14 排気口
20 循環経路
20a 加熱後熱風通過領域
21 ファン
22 ヒータ
30 排気管
31 触媒ユニット
32,42 流量調整バルブ
33 入り側圧力計
34 出側圧力計
40 給気管
40b バイパス管
50 熱交換器
90 制御部
91 カウンター
W ガラス基板

Claims (6)

  1. 基板を収容して焼成処理を行う炉体と、前記炉体から排出された熱風を循環させて再度前記炉体に供給する循環経路と、前記循環経路に設けられて熱風を循環させるファンと、前記循環経路に設けられて熱風を加熱するヒータと、を有する基板焼成炉と、
    前記循環経路のうち前記ヒータから前記炉体の気体吹き出し口に至る加熱後熱風通過領域から熱風を排出する排気経路と、
    前記排気経路に設けられ、前記循環経路から排出された熱風に含まれる有機物を分解するための触媒を有する触媒ユニットと、
    前記触媒ユニットから排出された熱風と前記循環経路に新たに供給する気体との熱交換を行う熱交換器と、
    を備えることを特徴とする基板焼成炉の給排気システム。
  2. 請求項1記載の基板焼成炉の給排気システムにおいて、
    前記触媒ユニットは、前記排気経路が前記循環経路に接続される分岐接続点に配置されていることを特徴とする基板焼成炉の給排気システム。
  3. 請求項1または請求項2に記載の基板焼成炉の給排気システムにおいて、
    前記炉体に収容して焼成処理を行っている基板の枚数を計数する計数手段と、
    前記計数手段によって計数された基板枚数に応じて前記循環経路からの排気量および前記循環経路への給気量を制御する流量制御手段と、
    をさらに備えることを特徴とする基板焼成炉の給排気システム。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板焼成炉の給排気システムにおいて、
    前記熱交換器を経由することなく前記循環経路に直接新たな給気を行うバイパス経路をさらに備えることを特徴とする基板焼成炉の給排気システム。
  5. 請求項4記載の基板焼成炉の給排気システムにおいて、
    前記触媒ユニットから排出されて前記熱交換器に流入する熱風の圧力と前記熱交換器から排出される熱排気の圧力との圧力差を検知する圧損検知手段と、
    前記圧力差が所定値以上となった時点で前記バイパス経路を作動させる給気経路切替手段と、
    をさらに備えることを特徴とする基板焼成炉の給排気システム。
  6. 請求項1記載の基板焼成炉の給排気システムにおいて、
    前記基板焼成炉は不活性ガス雰囲気中にて基板の焼成処理を行い、
    前記触媒ユニットの入口側近傍に空気または酸素を供給する空気供給管をさらに備えることを特徴とする基板焼成炉の給排気システム。
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