JP4098179B2 - 熱処理炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト等の電子部品の生産炉のような、炉内の雰囲気を制御する必要のある熱処理炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライト等の電子部品の焼成は、バッチ式の熱処理炉で炉内雰囲気をある所定の酸素濃度に制御して加熱を行う必要があり、また、加熱後の冷却時においても、その炉内雰囲気、すなわち加熱時の炉内ガスの組成を維持したまま冷却しなければならない。
【0003】
従来、このような目的に使用される熱処理炉では、図5に示すように、冷却時に炉の外部からパイプ17を通じて炉内ガスと同組成の冷却ガスを炉内に導入することにより、炉体と製品2の強制冷却を行っていた。例えば、フェライトの焼成においては、炉内に窒素ガスを導入して、当該窒素ガスを導入する前の初期の炉内雰囲気ガス(通常は空気)と置換することにより、平均炉内酸素濃度を1〜10%程度まで低下させた雰囲気で焼成が行われ、冷却時には外部から低温の窒素ガスを導入することで強制冷却を行っていた(当該従来技術に関する先行技術文献は特に見当たらない。)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のように外部から炉内ガスと同組成の冷却ガスを導入して強制冷却を行う熱処理炉においては、冷却に膨大な量の冷却ガスを消費するため、運用コスト上の問題から炉の大型化が困難であり、実用レベルの炉としては、炉内容積を0.5〜0.6m3程度とすることが限界であった。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷却のために多量のガスを消費せず、大型化してもその運用コストに見合った生産性が得られるような熱処理炉を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、炉内雰囲気の制御を必要とし、加熱後の冷却時においても所定の炉内雰囲気を維持しながら強制冷却することを要するバッチ式の熱処理炉において、前記冷却時に、気密構造を有するファンにより炉内ガスを炉外に吸引し、これを空冷ジャケットにて予めある程度冷却し、更に気密構造を有する熱交換器により冷却した後、再び炉内に導入するようにし、前記空冷ジャケットの冷媒として、既に前記熱交換器を経て冷却された炉内ガスの一部を前記空冷ジャケット内に導入して使用することを特徴とする熱処理炉、が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の熱処理炉は、熱処理を一回行う毎に製品を炉外に取り出して、新たな製品との詰め替えを行うバッチ式の熱処理炉である。フェライトのように熱処理に際して炉内のガス雰囲気を所定の組成に制御した状態とする必要のある製品の熱処理には、通常、このようなバッチ式の熱処理炉が使用される。
【0008】
図1は、本発明に係る熱処理炉の実施形態の一例を示す概要図である。この熱処理炉は、炉体の外部に気密構造を有するファン3が設けられており、冷却時においては、ファン3により炉内ガスがパイプ6を通じて炉外に吸引される。吸引された炉内ガスは、ファン3の手前に設けられた同じく気密構造を有する熱交換器4に導入され、冷却される。この熱交換器4には、冷却性能の観点から水冷式のものを用いるのが好ましい。こうして熱交換器4により冷却された炉内ガスは、パイプ7を通じて再び炉内に導入され、これにより加熱時の炉内雰囲気(ガス組成)を維持したまま炉体及び炉内の製品が冷却される。
【0009】
なお、通常は、このように吸引した炉内ガスを熱交換器4で冷却して再導入することに伴ってガス体積が減少するために、炉内圧力が大気圧より低下し、炉の外部の大気を炉内に吸引してしまうことがあるので、これと同時に炉の外部から炉内ガスと同組成の冷却ガスを必要量だけ炉内に導入して、炉内圧力の低下を抑止するのに必要なガスを補う。この外部からの冷却ガスの導入は、例えば、熱交換器で冷却された炉内ガスを再び炉内に戻すためのパイプ7の一部に冷却ガス導入孔8を設けるなどして行うことができる。
【0010】
すなわち、本発明の熱処理炉は、炉内ガスを炉外に取り出し、冷却してから炉内に戻すという循環式の冷却構造を有するものであり、基本的には炉内ガス自体を冷却ガスとして循環利用することにより冷却を行い、その上で前記のように炉内圧力の低下を抑止するのに必要となる分の冷却ガスだけを外部から補助的に導入する。したがって、前記した従来の熱処理炉のように冷却のためのガスを全て外部からの導入に頼るということがなく、冷却のために多量のガスを用意する必要はない。具体的には、炉内容積と冷却速度を同一として比較した場合、本発明の熱処理炉は従来の熱処理炉の1/15〜1/20程度のガス量しか冷却に必要としない。
【0011】
また、従来の熱処理炉では、冷却を行うために膨大な量の冷却ガスを消費するため、後述の実施例にも示すとおり、炉の運用コストに見合った生産性を得るには、炉内容積を0.5〜0.6m3程度とするのが大型化の限界であったが、本発明の熱処理炉であれば、炉内容積を8〜10m3程度まで大型化しても、その運用コストに見合った生産性を得ることが可能である。
【0012】
更に、本発明の熱処理炉では、冷却のために炉内に導入するガスの大部分を循環させながら使用しているため、コストをあまり増大させることなく炉内へのガス導入量を増やすことができる。そして、炉内へのガス導入量を増大させると、それに応じて炉内ガスがより激しく撹拌されることになり、その結果として炉内雰囲気のバラツキを抑えて均一化することができる。
【0013】
なお、本発明においては、冷却効率を向上させる観点から、図1の実施形態に示すように、炉外に吸引した炉内ガスを熱交換器4で冷却する前に、空冷ジャケット5にて予めある程度冷却するようにする。また、この際には、空冷ジャケット5の冷媒として、既に熱交換器4を経て冷却された炉内ガスの一部を空冷ジャケット5内に導入して使用する。
【0014】
図2は、空冷ジャケットの構造の一例を示す概要図である。この空冷ジャケット5は、炉内ガスを熱交換器4に送るためのパイプ6の一部に、パイプ6の外側を覆うように装着された筒状の構造体あり、既に熱交換器4を経て冷却された炉内ガスの一部が、冷媒としてパイプ6とジャケット5との間の空間9に導入される。ジャケット5の内側のパイプ6は、その内部を高温のガスが流れるため、熱膨張を吸収できるようにその一部がルーズな嵌合構造(図のA部)となっている。このため、この嵌合部からパイプ6内のガスが一部漏洩したり、パイプ6周囲の空間9に導入されたの冷媒ガスがパイプ6内のガスに混入する場合があるが、両者のガス組成は同一であるので、炉内雰囲気には影響がない。
【0015】
また、パイプ6の内部とその周囲の空間9とは、炉内側の端部付近に形成された合流部(図のB部)にて連通しており、冷媒として利用されたガスは、最終的にこの合流部でパイプ6内に吸引されて炉内から熱交換器4へ向かうガスと合流し、無駄なく有効に利用される。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
図1に示すような循環冷却構造を有する本発明の熱処理炉と、図5に示すような外部からの冷却ガスの導入のみによって冷却を行う従来構造の熱処理炉とで、炉内温度1400℃から200℃まで冷却速度200℃/hrで冷却を行い、その際に必要としたガス量を比較した。炉内ガス及び導入する冷却ガスは窒素ガスであり、何れの熱処理炉も炉内容積1.7m3、製品積載重量600kgである。
【0018】
結果は、図3のグラフに示すとおりであり、従来構造の熱処理炉が総使用量として2100m3(時間当たりの平均使用量として330m3/hr)もの窒素ガスを要したのに対し、本発明の熱処理炉では総使用量として140m3(時間当たりの平均使用量として22m3/hr)と、1/15程度の窒素ガスしか冷却に必要としなかった。
【0019】
(実施例2)
図1に示すような循環冷却構造を有する本発明の熱処理炉と、図5に示すような外部からの冷却ガスの導入のみによって冷却を行う従来構造の熱処理炉とで、炉内容積を様々に変化させて、炉内温度1400℃から200℃まで冷却速度200℃/hrで冷却を行い、その際に必要としたガスの平均流量を比較した(一部推定値を含む)。炉内ガス及び導入する冷却ガスは窒素ガスであり、製品積載重量600kgである。
【0020】
結果は、図4のグラフに示すとおりであるが、一般には、冷却に必要なガスの平均流量が100m3/hrを超えると、ガスの供給や貯蔵等に要する運用コストが増大して、その運用コストに見合った生産性を得ることが困難になるとともに、法規制等の制限が多くなるため実用的ではなくなる。したがって、従来構造の熱処理炉では炉内容積0.5〜0.6m3程度までが大型化の限界と考えられるが、本発明の熱処理炉では炉内容積8〜10m3程度まで大型化することも可能である。
【0021】
(実施例3)
図1に示すような循環冷却構造を有する本発明の熱処理炉と、図5に示すような外部からの冷却ガスの導入のみによって冷却を行う従来構造の熱処理炉とで、それぞれの炉内に27箇所の酸素濃度測定点を設けた。これらの熱処理炉に、窒素ガスを導入して平均炉内酸素濃度が約1%となる状態を維持しつつ、前記27箇所の酸素濃度測定点にて酸素濃度の測定を行い、炉内各部における酸素濃度のバラツキを調べた。
【0022】
結果は表1(本発明の熱処理炉)及び表2(従来の熱処理炉)に示すとおりであり、従来構造の熱処理炉では炉内の場所により平均値に対して±0.5%程度のバラツキがあったが、本発明の熱処理炉では、平均値に対して±0.1%以下にまでバラツキを抑えられ、炉内ガスの循環による炉内の撹拌で雰囲気がより均一化していることがわかる。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の熱処理炉は、冷却に多量のガスを消費せず、炉内容積と冷却速度を同一した場合に、従来の熱処理炉の1/15〜1/20程度のガス量しか必要としないため低コストで運用でき、また、炉内容積を8〜10m3程度まで大型化しても、その運用コストに見合った生産性が得られる。更に、冷却のために炉内に導入するガスを循環して使用しているため、コストを増大させることなくガス導入量を増やすことができ、この結果、炉内ガスがより撹拌されて、炉内雰囲気が均一化する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る熱処理炉の実施形態の一例を示す概要図である。
【図2】 空冷ジャケットの構造を示す概要図である。
【図3】 実施例1の結果を示すグラフである。
【図4】 実施例2の結果を示すグラフである。
【図5】 従来の熱処理炉の構造を示す概要図である。
【符号の説明】
2…製品、3…ファン、4…熱交換器、5…空冷ジャケット、6…パイプ、7…パイプ、8…冷却ガス導入孔、9…空間、17…パイプ。
Claims (1)
- 炉内雰囲気の制御を必要とし、加熱後の冷却時においても所定の炉内雰囲気を維持しながら強制冷却することを要するバッチ式の熱処理炉において、
前記冷却時に、気密構造を有するファンにより炉内ガスを炉外に吸引し、これを空冷ジャケットにて予めある程度冷却し、更に気密構造を有する熱交換器により冷却した後、再び炉内に導入するようにし、前記空冷ジャケットの冷媒として、既に前記熱交換器を経て冷却された炉内ガスの一部を前記空冷ジャケット内に導入して使用することを特徴とする熱処理炉。
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