JP5866937B2 - 脱脂炉 - Google Patents
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Description
上記成形体を得るには、例えば、金属粉末と有機バインダーとを混合、混練し、この混練物(コンパウンド)を用いて射出成形する金属粉末射出成形(MIM:Metal Injection Molding)法が知られている。また、その他に、圧縮成形法、押出成形法等の成形方法も知られている。
脱脂処理では、成形体を脱脂炉に入れ、成形体中の有機バインダーを加熱分解することによって除去する。
従来の脱脂炉では、ガスを循環させつつ脱脂を行っていたが、有機バインダーの分解成分を含んだガスが再び成形体の脱脂に供させることもあって、脱脂効率が低いという問題があった。
しかしながら、上記の装置では、脱脂炉内に供給されたガスは、脱脂に寄与したかどうかに関わらず、すぐに炉外へ排出されるため、ガスの使用量が非常に多く、ランニングコストの上昇を招いている。
また、脱脂ガスを加熱するための加熱手段を設ける必要があり、脱脂炉の構造の複雑化、大型化が避けられない。
本発明の脱脂炉は、水平方向に長軸を有する筒状をなす炉本体と、
前記炉本体の内部のうち、前記長軸方向の一方の端部に設けられたファンと、
前記炉本体の内部のうち、前記長軸方向の両端部を除く部分の上層部と被脱脂体が収容される中層部とを隔てるよう設けられた第1の隔壁と、
前記炉本体の内部のうち、前記長軸方向の両端部を除く部分の下層部と前記中層部とを隔てるよう設けられた第2の隔壁と、
前記上層部を加熱する加熱手段と、
前記炉本体のうち、前記長軸方向の中央から前記一方の端部までの位置に設けられ、前記上層部にガスを導入するガス導入系と、
前記炉本体のうち、前記長軸方向の前記ガス導入系の位置から前記長軸方向の他方の端部までの位置に設けられ、前記下層部のガスを排気するガス排気系と、
を有し、
前記長軸に垂直な横断面を見たとき、前記ファンは前記中層部に重なる位置に設けられていることを特徴とする。
これにより、比重の差を利用して脱脂用ガスと有機バインダー分解成分とを分離し、脱脂用ガスを再び被脱脂体の脱脂に供することができるよう構成されているので、脱脂用ガスの利用効率が高くランニングコストの低い脱脂炉が得られる。また、構造が簡単で脱脂効率の高い脱脂炉が得られる。
これにより、上層部および下層部を流れるガスの流速が、中層部を流れるガスの流速より大きくなる。その結果、比重の差に基づくガスの分離効率が高くなり、脱脂用ガスと有機バインダー分解成分とをより確実に分離することができるようになるため、脱脂用ガスのさらなる有効利用を図ることができる。
これにより、炉本体の内部におけるガスの入れ替え等を効率よく行うことができる。
本発明の脱脂炉では、前記第2の隔壁は、前記炉本体に対して着脱可能に設けられていることが好ましい。
これにより、第2の隔壁上に被脱脂体を載置した状態で搬送することが可能になるため、被脱脂体の取り扱いが容易になる。
<脱脂炉>
まず、本発明の脱脂炉について説明する。この脱脂炉は、無機粉末と有機バインダーとを含む成形体を加熱下で脱脂ガスに曝すことで脱脂する炉である。
図1に示す脱脂炉1は、水平方向に長軸を有する筒状をなす炉本体2と、炉本体2の内部に設けられたファン3と、炉本体2の内部空間の一部を分割する第1の隔壁41および第2の隔壁42と、炉本体2の内壁に沿って設けられたヒーター(加熱手段)5と、炉本体2の内部にガスを導入するガス導入系6と、ガスを排気するガス排気系7と、を有する。また、炉本体2の内部空間の長軸方向の両端部を除く部分を上層部201、中層部202、下層部203の3層に分けたとき、第1の隔壁41は上層部201と中層部202との境界に設けられ、第2の隔壁42は下層部203と中層部202との境界に設けられている。脱脂処理に供される成形体(被脱脂体)100は、中層部202に収容される。以下、脱脂炉1の各部について詳述する。
炉本体2は、例えばステンレス鋼、耐熱鋼等の鉄基合金で構成される。また、長軸に垂直な横断面で見たとき、炉本体2の内壁面は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形のような多角形をなしていてもよいが、真円、楕円、長円のような略円形をなしているのが好ましい。これにより、炉本体2の内部20におけるガスの入れ替え等を効率よく行うことができる。
一方、右端部205には、これを左右に隔てるように中扉22が設けられている。中扉22は、多数の貫通孔が設けられた板状体であり、その構成材料としては、例えばステンレス鋼、耐熱鋼等が挙げられる。
また、第2の隔壁42は、炉本体2に対して着脱可能に設けられているのが好ましい。これにより、第2の隔壁42上に成形体100を載置した状態で搬送することが可能になるため、成形体100の取り扱いが容易になる。
また、左端部204と右端部205との長さの比は、1:3以上3:1以下であるのが好ましく、1:2以上2:1以下であるのがより好ましい。これにより、成形体100の脱脂効率のさらなる向上を図ることができる。
一方、炉本体2の下部には、ガスを排気するためのガス排気系7が接続されている。図1に示すガス排気系7は、一端が炉本体2の下層部203に接続されたガス排気管71と、ガス排気管71の他端に接続された排気ポンプ72と、排気するガスの流量を制御するバルブ73と、を有している。
次に、本発明の脱脂炉の作用(本発明の脱脂方法)について説明する。
図3、4は、本発明の脱脂方法の実施形態を説明するための縦断面図である。
脱脂体は、前述したように、無機粉末と有機バインダーとを含む成形体を加熱下でガスに曝すことにより、有機バインダーを除去してなるものである。
また、有機バインダーとしては、例えば、各種樹脂材料等が挙げられる。
成形体は、例えばこれらを含む組成物を圧縮成形、射出成形、押出成形等の各種成形方法によって成形してなるものである。
導入する脱脂用ガスG1は、無機粉末や有機バインダーの組成に応じて適宜選択されるが、例えば、大気(空気)、酸素ガスのような酸化系ガス、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガス、アンモニア分解ガス、水素ガスのような還元系ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合ガスが用いられる。ガス導入系6からは脱脂用ガスG1を継続的に導入する一方、ガス排気系7はそのまま作動させてもよいし、停止させて自然に排気されるようにしてもよい。
下層部203に移動した有機バインダー分解成分G3は、図4に示すようにガス排気系7から排気され、脱脂炉1から除去される。
以上のように脱脂炉1によれば、成形体100の脱脂に供した脱脂用ガスG1と、成形体100の脱脂に伴って発生した有機バインダー分解成分G3とを、これらの比重の差を利用して分離し、脱脂用ガスG1を再び脱脂に利用することができる。このため、有機バインダー分解成分G3が脱脂に供されることが抑制されることとなり、単位時間当たりの脱脂効率を高めることができる。また、脱脂用ガスG1を有効利用することができるので、その使用量を抑え、ランニングコストの上昇を抑えることができる。さらに、成形体100に対して常に清浄な脱脂用ガスG1を供給することができるので、脱脂のムラ等の脱脂不良の発生が抑えられ、脱脂歩留まりの向上を図ることができる。
なお、上記範囲よりも右側にガス導入系6が接続された場合、導入された脱脂用ガスG1が十分に加熱されず、脱脂効率が低下するとともに、右端部205において脱脂用ガスG1が下層部203に移動し、排気されることとなる。さらには、この場合、導入された脱脂用ガスG1は、導入直後の流速をある程度維持したまま右端部205に到達するため、下層部203に移動してしまう。このため、比重の差に基づく分離ができなくなる。
一方、ガス排気系7は、炉本体2のうち、前述したガス導入系6の位置から右側に接続されている。このような位置に接続されることで、有機バインダー分解成分G3を確実に排気することができる。これは、右端部205から下層部203に移動した有機バインダー分解成分G3は、その流速が最小になっており、排気が滞るおそれがあるため、右端部205側にガス排気系7を接続することによって、排気の滞りを防ぐことができるからである。また、左端部204から下層部203に移動した有機バインダー分解成分G3は、ファン3で押されることにより十分に高い流速を持っていることから、右端部205側にガス排気系7が接続されていたとしても排気が滞るおそれがない。
また、有機バインダー分解成分G3が逆流しても成形体100を汚染しないようにするため、前記接続位置は、右端から0.01以上は離れている方が好ましい。
また、炉本体2について長軸に垂直な横断面を見たとき、上層部201および下層部203は、その面積の和が中層部202の面積より小さくなるよう設定される。これにより、上層部201および下層部203を流れるガスの流速が中層部202を流れるガスの流速より大きくなる。その結果、例えば右端部205において、比重の差に基づくガスの分離効率が高くなり、脱脂用ガスG1と有機バインダー分解成分G3とをより確実に分離することができるようになるため、脱脂用ガスG1のさらなる有効利用を図ることができる。
脱脂処理における処理温度は、特に限定されないが、100℃以上750℃以下であるのが好ましく、150℃以上700℃以下であるのがより好ましい。
また、脱脂処理は、種々の目的(例えば、脱脂時間の短縮等の目的)で、複数回に分けて行ってもよい。例えば、前半を低温で、後半を高温で脱脂するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
なお、成形体中の有機バインダーは、脱脂処理によって完全に除去されなくてもよく、例えば、脱脂処理の完了時点で、その一部が残存していてもよい。
以上のようにして得られた脱脂体は、その後焼成に供されることによって、金属焼結体やセラミックス焼結体となる。
焼成温度は、無機粉末の組成に応じて適宜設定されるが、金属粉末の場合、1000℃以上1650℃以下であるのが好ましく、1050℃以上1500℃以下であるのがより好ましい。また、セラミックス粉末の場合、1250℃以上1900℃以下であるのが好ましく、1300℃以上1800℃以下であるのがより好ましい。
また、このような焼成工程は、種々の目的(例えば、焼成時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で焼成するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
なお、得られた焼結体には、必要に応じて、HIP処理(熱間等方加圧処理)等を施すようにしてもよい。これにより、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
また、加圧圧力は、50MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。
上記のようにして得られた焼結体は、いかなる目的で用いられるものであってもよく、その用途としては、各種構造部品、各種医療用構造体等が挙げられる。
また、焼結体の引張強度は、例えば金属粉末を用いた場合、900MPa以上になることが期待される。さらには、焼結体の0.2%耐力は、例えば金属粉末を用いた場合、750MPa以上になることが期待される。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、脱脂炉には、上記の構造物以外に任意の構造物が付加されていてもよい。
1.脱脂体および焼結体の製造
(実施例1)
まず、水アトマイズ法により製造されたSUS316L粉末を用意した。SUS316L粉末について、レーザー回折方式の粒度分布測定装置(マイクロトラック、日機装株式会社製、HRA9320−X100)により平均粒径を測定したところ、平均粒径が10μmであった。有機バインダーは、ポリプロピレンとパラフィンワックスを質量比で9:1となるよう混合したものを用いた。そして、SUS316L粉末と有機バインダーとの質量比は、91:9とした。
次いで、得られた混練物をペレタイザーにより粉砕し、平均粒径5mmのペレットを得た。
次いで、得られたペレットを用い、材料温度:150℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm2)という成形条件で、射出成形機にて成形を行った。これにより、成形体を得た。なお、成形体の形状は、直径0.5mm×高さ0.5mmの円筒形状である。
次に、成形体100kgに対して、温度:500℃、時間:1時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という脱脂条件で脱脂処理を施した。これにより、脱脂体を得た。
なお、この脱脂には、図1、2に示す脱脂炉を使用した。なお、脱脂炉の各設定値は、以下に示す通りである。
・炉本体の横断面形状 :円形
・処理空間の横断面形状 :四角形
・ガス導入系の接続位置 :左端から長さ0.1の位置
・ガス排気系の接続位置 :右端から長さ0.4の位置
・上層部および下層部の面積の和:処理空間の面積の25%
・各隔壁の長さ :炉本体の内部の全長を1としたとき0.9
・左端部と右端部の長さの比 : 1:1
・処理空間の長さと幅の比 : 5:1
・処理空間の長さと高さの比 : 5:1
次に、脱脂体に対して、温度:1270℃、時間:3時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という焼成条件で焼成処理を施した。これにより、焼結体を得た。脱脂炉の各設定値を表1に示す。
脱脂炉の各設定値を表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結体を得た。
(実施例4)
図2に示す第3の隔壁43および第4の隔壁44を除去した脱脂炉を使用した以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。なお、脱脂炉の処理空間の横断面形状は、上部および下部が水平な直線で、側部が円弧を描く長円形であった。また、この変更に伴って、上層部および下層部の面積が相対的に減少した。脱脂炉の各設定値を表1に示す。
無機粉末の組成および有機バインダーの組成をそれぞれ以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
無機粉末として、水アトマイズ法により製造された平均粒径6μmの2%Ni−Fe合金粉末(エプソンアトミックス(株)製、真密度7.827g/cm3)を用意した。なお、2%Ni−Feの組成は、C:0.4質量%以上0.6質量%以下、Si:0.35質量%以下、Mn:0.8質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.045質量%以下、Ni:1.5質量%以上2.5質量%以下、Cr:0.2質量%以下、Fe:残部である。
また、有機バインダーとして、2%Ni−Fe合金粉末100重量部に対してポリビニルアルコール0.8重量部、モンタンワックス0.04重量部、ソルビタン脂肪酸エステル0.01重量部を含むものを用いた。脱脂炉の各設定値を表1に示す。
図2に示す第3の隔壁43および第4の隔壁44を除去した脱脂炉を使用した以外は、実施例5と同様にして焼結体を得た。なお、脱脂炉の処理空間の横断面形状は、上部および下部が水平な直線で、側部が円弧を描く長円形であった。また、この変更に伴って、上層部および下層部の面積が相対的に減少した。脱脂炉の各設定値を表1に示す。
脱脂炉の各設定値を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
(比較例3、4)
脱脂炉の各設定値を表1に示すように変更した以外は、実施例5と同様にして焼結体を得た。
2.1 脱脂に要した時間の評価
各実施例および各比較例において、所定の脱脂率(有機バインダーの除去率)になるまでに要した時間を測定した。
2.2 1回当たりの処理重量の評価
各実施例および各比較例において、脱脂炉内にセットする成形体の重量を25kg、50kg、100kg、150kg、200kg、250kgと変えたとき、不良率が1%未満に抑えられる最大重量を調査した。
2.3 焼結体の品質の評価
各実施例および各比較例において得られた焼結体50個について、それぞれの外観を観察し、不良率を計算した。そして、得られた不良率を以下の評価基準にしたがって評価した。
◎:不良率1%未満
○:不良率1%以上2%未満
△:不良率2%以上5%未満
×:不良率5%以上
以上、2.1〜2.3の評価結果を表2に示す。
Claims (4)
- 水平方向に長軸を有する筒状をなす炉本体と、
前記炉本体の内部のうち、前記長軸方向の一方の端部に設けられたファンと、
前記炉本体の内部のうち、前記長軸方向の両端部を除く部分の上層部と被脱脂体が収容される中層部とを隔てるよう設けられた第1の隔壁と、
前記炉本体の内部のうち、前記長軸方向の両端部を除く部分の下層部と前記中層部とを隔てるよう設けられた第2の隔壁と、
前記上層部を加熱する加熱手段と、
前記炉本体のうち、前記長軸方向の中央から前記一方の端部までの位置に設けられ、前記上層部にガスを導入するガス導入系と、
前記炉本体のうち、前記長軸方向の前記ガス導入系の位置から前記長軸方向の他方の端部までの位置に設けられ、前記下層部のガスを排気するガス排気系と、
を有し、
前記長軸に垂直な横断面を見たとき、前記ファンは前記中層部に重なる位置に設けられていることを特徴とする脱脂炉。 - 前記長軸に垂直な横断面を見たとき、前記上層部の面積と前記下層部の面積の和は、前記中層部の面積より小さい請求項1に記載の脱脂炉。
- 前記長軸に垂直な横断面を見たとき、前記炉本体の内壁面は真円、楕円または長円をなしており、かつ、前記中層部は鉛直方向に設けられた第3の隔壁および第4の隔壁により前記炉本体から隔てられている請求項1または2に記載の脱脂炉。
- 前記第2の隔壁は、前記炉本体に対して着脱可能に設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の脱脂炉。
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