JP5002087B2 - クロミア焼結体とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、緻密性に優れ、且つ、均質な組織を有するクロミア焼結体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クロミア(Cr23)は、高温においてスラグ融液に濡れにくく、溶解しにくいことから、クロミアを活用した焼結材料は、ガラス溶解炉や、一般及び産業廃棄物等の減容化や無害化に有効な廃棄物処理用の溶融炉等の内張炉材として広く用いられている。
クロミアは大気中で焼成すると、蒸発−凝縮機構によって過度な粒成長を起こしてクロミア単成分では緻密に焼結することが困難であることから(図3参照)、クロミアを活用した耐火物用途では、クロミアにTiO2や粘土等の焼結助剤を添加し、大気中で高温焼成することにより焼結の促進が図られている。例えば、特開平6−321628号公報には、TiO2等の焼結助剤を用いて作られたクロミア質焼結体を耐食性骨材として耐火物に応用することが記載されている。
【0003】
しかしながら、このような焼結体は空隙が多く緻密性に劣り、更に、焼結助剤が液相としてクロミアの粒界に存在することとなるため、スラグ融液と接触した場合に、スラグ中の特性成分の拡散によって焼結体組織が著しく崩壊してしまい、クロミアの優れた耐食性機能が生かされることなく、結果として侵食が進行してしまうといった問題が生じる。
【0004】
一方、クロミア単成分の緻密化焼結については、例えば、特公昭63−387号公報に記載の製造方法が知られている。かかる方法では、クロミアの成形体を炭素還元雰囲気で焼成することにより、焼結過程で成形体内部に適量の低融点組成物を生成させ、95%以上の相対密度の緻密な焼結体を得ている。しかし、上記公報に記載されている従来の製造方法では、成形と焼成の2段工程からなり、焼成する際には成形体を炭素粉末中に埋め込む必要があるため、従来の焼成方法よりも手間がかかるという実用上の問題がある。
【0005】
又、クロミアは、焼成時の収縮が殆どなく、成形時の充填性が焼結体の密度に大きく反映されるため、クロミアの緻密化焼結には雰囲気制御の他に、成形時の充填性も重要となる。しかし、市販の高純度クロミアは、一般に数μmサイズの微粉末であり、このような微粉末を高圧力で成形するには、真空中の場合を除き成形体内部に形成される空気層の存在が問題となり、それを入りにくくするためには、スプレードライヤー等で更に粉体原料を顆粒状にするといった前処理が必要になる。
以上のように、従来のクロミア単成分の緻密化焼結では、成形や焼成に手間がかかっていたことから、原料段階から焼成工程まで、簡便で、且つ、実用的な製造方法の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、高純度にして緻密で、且つ、均質なクロミア焼結体を得ることにある。更に、本発明の目的は、クロミア単成分を用い、上記の優れたクロミア焼結体を容易に得ることのできるクロミア焼結体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、相対密度が97%以上の緻密な形態を有するクロミア焼結体を製造するための製造方法であって、圧力をかけるための上下パンチを有する焼成型内に、少なくとも該上下パンチとの間にカーボンシートを配置し、更に、該カーボンシートの上にグラファイト粉末を、最大の加圧力を施した時点で、その厚みが0.5〜5mmとなる範囲で充填して配置した状態で、平均粒子径が1〜3μmの範囲にある純度99.5重量%以上のクロミア粉末を充填し、真空中若しくは不活性雰囲気中で、荷重10〜60MPaの範囲でクロミア粉末に一軸加圧しながら、焼成型及び上下パンチから伝わるジュール熱で加熱する、ホットプレス法又はパルス通電加熱加圧焼結法によって焼成温度1200〜1600℃で焼成することを特徴とするクロミア焼結体の製造方法、及び、均質な微細構造組織をもつことを特徴とするクロミア焼結体である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明のクロミア焼結体は、真空中若しくは不活性雰囲気中で加圧焼成して得られたものであって、相対密度が97%以上と緻密であることを特徴とする。かかるクロミア焼結体は、クロミア粉末を真空中若しくは不活性雰囲気中で加圧しながら加熱して焼成する本発明の製造方法によって容易に得られる。以下、これについて説明する。
【0009】
本発明のクロミア焼結体は、相対密度が97%以上であるため、これを製造するためのクロミア粉体原料としては、純度の高いものを使用することが好ましい。好ましくは、99.5重量%以上の純度の粉体原料を用いることが好ましい。このような純度の市販されているクロミア粉体は、通常、平均粒径が1〜3μmの範囲に調製されているが、本発明においては、これをそのまま使用することができる。より均質なクロミア焼結体を得るためには、よりシャープな粒度分布を有する均一なクロミア微粉末を原料として用いることが好ましい。
【0010】
本発明においては、上記のように、好ましくは、Cr23の純度が99.5重量%以上のクロミア微粉末を原料として用いるが、このような、クロミア粉体を真空中又は不活性雰囲気中で加圧焼成することを特徴とする。その際に、焼成温度を、好ましくは、1200〜1600℃の範囲、更に好ましくは、1300〜1500℃の範囲とするとよい。又、圧力としては、好ましくは、加圧力10〜60MPaの範囲、更に好ましくは、20〜40MPaの範囲で加圧焼結を行うとよい。
【0011】
本発明者らの検討によれば、より高い密度のクロミア焼結体を得るためには、焼成温度を1200℃以上、更に好ましくは、1300℃以上とすることが望ましいことがわかった。一方、焼成温度が1600℃よりも高くなると、粒子の成長が著しくなる傾向があり、得られるクロミア焼結体の強度が低下することが起こる。このため、1600℃以下、より好ましくは、1500℃以下の温度で焼成するとよいことがわかった。又、加圧力を60MPaより大きくしても焼結性への加圧効果が格段に変わらず経済的でなく、一方、10MPaよりも加圧力が小さい場合は、長時間に及ばないと加圧効果が充分に得られない場合がある。従って、実用的には、20〜40MPaの範囲で加圧焼結を行うとよい。更に、実際の焼成条件は、両者の兼ね合いにおいて決定され、より高い温度で焼成すれば圧力を低く抑えることができ、圧力を高くすることによって、より低い温度での焼成が可能となる。
【0012】
本発明のクロミア焼結体は、真空中若しくは不活性雰囲気中で、上記に挙げたような焼成温度及び加圧力の範囲から選択される好適な焼成条件で加圧焼成して得られるが、この際に用いる加圧焼結法としては、焼結助剤の力に頼らず外圧により焼結を助長するホットプレス法、若しくは、従来からのパルス通電加熱加圧焼結法を用いることができる。本発明のクロミア焼結体は、特に、パルス通電加熱加圧焼結法を用いて製造することが好ましい。パルス通電加熱法としては、パルス電流を直接又は間接に、或いは直接と間接を同時に利用する各種の方法があるが、いずれも利用できる。又、加圧方法としては、粉体原料に対して、一軸加圧であってもよいし、一軸加圧を行ないながら、チャンバー内に導入した不活性ガスを利用した全体加圧であってもよい。以下、加圧焼成の方法について具体的に説明する。
【0013】
ホットプレス法では、クロミア粉体原料を充填するためのグラファイト等からなる材質の焼成型(ダイ)と、該焼成型内に充填されているクロミア粉末に少なくとも圧力がかかるように構成されている上下パンチを用い、ダイ内に充填されているクロミア粉末に一軸加圧しながら、ダイ及び上下パンチから伝わるジュール熱で焼成を行なう。
【0014】
パルス通電加熱加圧焼結法では、グラファイト等の材料からなる導電性焼成型(ダイ)に充填された粉体に上下のパンチによって一軸加圧しながら、パルス電流を粉体及び導電性ダイに流すことによって起こる粉体自身の発熱作用と、ダイ及び上下のパンチから伝わるジュール熱で焼成を行なう。
【0015】
本発明においては、上記のいずれの焼結方法を用いる場合も、真空中、又は、クロミアに対して不活性な雰囲気中で焼成を行なう。この際、不活性雰囲気とするために、いずれの不活性ガスを使用することもできるが、中でも、アルゴンガス中で行うのが一般的である。
【0016】
更に、本発明では、ダイとパンチの噛み合わせを良くし、クロミア粉体原料に対して均一な加熱が行われるようにする目的で、図2に示したように、上下パンチと、圧粉体成形面との間にグラファイト粉末を薄く配置して焼成してもよい。本発明者らの検討によれば、特に、ダイとパンチの発熱性が電流特性に大きく影響されるパルス通電加熱加圧焼結法を用いて加圧焼成する場合に、グラファイト粉末を配置した状態で加熱加圧することが望ましいことがわかった。この際のグラファイト粉末の充填量は、最大の加圧力を施した時点で、その厚みが0.5〜5mm程度の範囲になるように、加圧力に合わせて適宜に設定すればよい。
【0017】
この際に使用するグラファイト粉末は、ダイとパンチの損傷を防ぐために、なるべく純度が高いものを用いることが好ましい。又、その粒径としては、グラファイト自身の充填性を高めるためにはできるだけ小さい方が好ましいが、グラファイト粉末は、加圧焼成後には焼結により固化してしまうため、充填性がよく、しかも、焼結により得られる固化物を容易に破砕できる程度の粒径のものを適宜に選択することが好ましい。このようにすれば、クロミア粉体を加圧焼成後に、得られるクロミア焼結体の上下の面から、グラファイト焼結体を容易に分離して取り除くことができる。
【0018】
本発明のクロミア焼結体の製造方法によれば、クロミア焼結体を製造する場合に、上記したホットプレス法若しくはパルス通電加熱法等の加熱法を用い、焼結過程が不活性雰囲気中で行なわれるように制御し、更に加圧しながら焼成することで、従来の大気中で行なわれている焼成よりも低温で焼結を進行させることが可能となるため、クロミア粉末の粒成長を伴うことなく、得られる焼結体を緻密化できるという顕著な効果が得られる。
【0019】
以下に、クロミア焼結体の製造にパルス通電加熱加圧焼結法を用いた場合を例に採って、本発明の効果について説明する。パルス通電加熱法のプロセスでは、通電すると外部応力のかかる粒子接触部に高エネルギーのパルス電流が流れ、溶着状態のネックを瞬時に形成するため、従来のホットプレス法に比べて短時間で焼結できるという利点がある。
【0020】
一般に、クロミアは大気中で焼成されると著しい粒成長を起こし、空隙を生じながら焼結が進行するが、本発明では、真空中、又は、クロミアに対して不活性な雰囲気中で焼成を行なうので、焼成雰囲気における酸素分圧が低下しているため、著しい粒成長を伴わずに焼結が進行する。更に、付加的な要素として、粉体に対して外部から適度な圧力をかけながら焼成しているため、加熱時において塑性流動が促進され、効果的に空隙が排除されるため、緻密な焼結体の形成が可能となる。
【0021】
以上の作用が奏される結果、パルス通電加熱加圧焼結法を用いてクロミア粉末を焼成すれば、上記のような高純度にして相対密度が97%以上の緻密なクロミア焼結体が容易に得られる。更に、上記方法では、成形と焼成が同時に行われるため、高い成形圧力を必要とすることなく、しかも粉体原料の前処理を必要とせずに、微粉末のまま緻密化焼結することが可能となる。
【0022】
パルス通電加熱加圧焼結法を用いてクロミア粉末を焼成する場合に、グラファイト等の材料からなる導電性のダイとパンチを用いた場合は、使用頻度が高くなると摩耗によりダイとパンチの噛み合わせが悪くなり、充填粉体原料に対して均一な成形ができなくなることが起こることがある。この場合には、パンチとの接触面で加熱効果に違いを生じ、不均質な組織が形成されることが生じる恐れがあり、又、局部的な発熱はダイの劣化を早める原因ともなる。
【0023】
パルス通電加熱加圧焼結法では、ダイとパンチの噛み合わせが充填粉体とパンチとの接触性だけでなく、パンチからダイへの電流の流れ方にも影響する。電流がダイに均一に流れないと、圧粉体側面において加熱効果に違いが生じ、ジュール熱だけに頼るホットプレス法よりも更に不均質な組織が形成されることが生じる恐れがある。
【0024】
しかしながら、パンチと圧粉体との間に導電性の高いグラファイト粉末を配置して、加圧しながら通電加熱して焼成する態様の本発明のクロミア焼結体の製造方法によれば、圧粉体の全面が均一に加圧されると共に、パンチからダイへの通電点が全周に確保されることとなるため、電流が均一に流れ、その結果、圧粉体に対して均一に加熱することができる。
【0025】
以上述べた特徴から、パルス通電加熱加圧焼結法を利用した本発明のクロミア焼結体の製造方法によれば、高温耐食性材料としての信頼性の高いクロミア焼結体が容易に得られる。更に、かかる製造方法では、粉末の成形と焼成とが同時に行われ、しかも僅か5分程度の保持時間で焼結が行われるため、工業的に充分に利用できる。従って、本発明のクロミア焼結体を工業的規模で生産することが可能となる。
【0026】
以上のような特徴を有する本発明の製造方法で製造されたクロミア焼結体を電子顕微鏡(SEM)で組織観察した結果、図1に示すように、粒子間が溶融状態で結合し、且つ、局所的な粒成長を起こすことなく、粒子径の揃った均質な組織が形成されることが確認できた。
又、焼成温度、加圧力等の焼成条件を変えることによって、得られるクロミア焼結体の組織形態を制御できることや、本発明の製造方法で製造されたクロミア焼結体は、温度効果によって粒子の成長が進行する場合があったとしても、加圧効果によって焼結体の緻密性が維持されることもわかった。
【0027】
【実施例】
次に、実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
参考例1>
原料のクロミア粉末としては、平均粒径1μmの市販品(日本化学工業(株)製、G5)を用いた。粉体の充填部は、図2に示したように上下パンチとダイとによって形成されるが、パンチの形状は上下ともにφ60×40mmであり、ダイの形状は、外径φ100mm、内径φ60.8mm、高さ70mmのものを用いた。これらの材質はいずれもグラファイトである。先ず、ダイに下パンチを差し込んだ後、ダイ内部に、上記の原料粉末を均一に充填し、上パンチを差し込む。この際、本参考例では、ダイ及びパンチと粉末原料との反応によって生じるダイの損傷を防ぐために、0.2mm厚のカーボンシートを、上下パンチと充填された粉末原料との間に各々1枚、粉末原料が充填されるダイ内壁に2枚設置した。
【0028】
上記のようにしてクロミア粉末原料が充填されたダイスを、放電プラズマ焼結機((株)イズミテック製、SPS−7.40)のチャンバー内にセットし、焼成を行った。先ず、チャンバー内を5Pa以下の真空状態とした後、表1に示したような焼成条件で焼成して、No.1〜8の8種類の焼結体を得た。即ち、焼成条件は、20〜40MPaの範囲内で夫々加圧力を粉体にかけながら、19又は20分で1350〜1450℃の範囲の到達温度に夫々昇温し、その所定の温度で5分間保持して加圧焼成を行なった。このようにして焼成した後、加圧を完全に開放すると共に自然冷却し、400℃に達した時点で大気開放して各焼結体を得た。
【0029】
<比較例1>
焼結助剤(TiO2、SiO2)を合量で10%使用して、参考例1で使用したと同様のCr23を90%含む粉体原料を用い、大気中で、1750℃で焼成して、比較例のクロミア焼結体No.9を得た。
【0030】
【評価】
上記得られた参考例及び比較例のNo.1〜9の9種類の焼結体を夫々切断加工し、各焼結体について、下記に述べる方法で、相対密度、曲げ強度、侵食試験、表面の状態観察を実施して、その特性を夫々評価した。その結果を、各焼結体の焼成条件と共に表1に示した。
【0031】
(1)相対密度
アルキメデス法によって密度の計測を行なった。即ち、JIS−R2205に準拠して、得られた嵩密度をクロミアの理論密度で除して百分率で表したものを相対密度とした。
【0032】
(2)曲げ強度
参考例のNo.1〜8の焼結体について、JIS−R1601に準拠し、室温における3点曲げ強度を測定した。
【0033】
(3)侵食試験
No.1、2、5及び9の焼結体について、下記のようなスラグによる侵食試験を行なった。スラグ侵食試験は、試薬から合成したスラグを大気中、1500℃で溶融し、その溶融スラグに50時間、夫々の焼結体(6×10×20mm形状に切り出した試料を使用)を浸漬させて実施した。試験後、試料を切断し、SEMによりスラグ界面を観察し、試料の減少量を測定して侵食量とし、各焼結体の耐食性を評価した。
【0034】
(4)表面の状態観察
SEMによる微構造組織の観察を行ない、粒子を無作為に100個取り出してその粒径を測定し、得られた粒子径の範囲で表面性状を評価した。
【0035】
(5)評価結果
参考例の製造方法で得られたNo.1〜8の8種類の焼結体は、表1に示したように、相対密度が97%以上であり、いずれも緻密なクロミア焼結体であることが確認できた。これに対し、焼結助剤を用い大気中で焼成したNo.9の比較例の焼結体は相対密度が89%であり、本参考例のものに比べて緻密さが劣ったものであれることがわかった。又、本参考例によれば、比較例の方法に比べて、格段に低い焼成温度で、相対密度が97%以上の緻密なクロミア焼結体が容易に得られることもわかった。
【0036】
又、No.1、2及び5の本参考例の焼結体は、No.9の比較例の焼結体と比べて、スラグによる侵食を格段に抑制でき、耐食性に優れた焼結体であることが確認できた。これは、比較例の焼結体は相対密度に劣り、粒界における空隙が多いことや、粒子間に液相が存在していることがスラグによる侵食を促進させているのに対し、本参考例の焼結体は、相対密度が高く、このような原因が抑制されているためと考えられる。
【0037】
更に、No.1〜8の8種類の本参考例の焼結体の特性について、焼成条件との関係を詳細に検討した結果、以下のことがわかった。
先ず、加圧力を一定にして焼成温度を変化させて得られたNo.1〜5の焼結体から、表1に示したように、相対密度については、いずれも高いものが得られるが、焼成温度を上げるに従い、粒成長が進行し、曲げ強さが低下する傾向があることがわかった。従って、加圧力が同じであれば、できるだけ、低い焼成温度で焼成することが有効であることがわかった。
【0038】
一方、以上の検討の結果、より良好なクロミア焼結体が得られた1350℃の焼結温度を一定にして、加圧力を変化させてNo.6〜8の焼結体を得た。表1に示されているように、得られたNo.6〜8の焼結体の相対密度は、加圧力に左右され、加圧力が低くなるに従って緻密化しにくくなる傾向が見られた。従って、できるだけ加圧力を大きくして焼成することが好ましいが、経済性との兼ね合いから、加圧力は30MPa程度で充分であることもわかった。
【0039】
【表1】
Figure 0005002087
【0040】
<実施例2及び参考例2
原料のクロミア粉末としては、参考例1で使用したと同様の平均粒径1μmの市販品(日本化学工業(株)製、G5)を用いた。粉体の充填部は、図2に示したように上下パンチとダイとによって形成されるが、パンチの形状は上下ともにφ100×40mmであり、ダイの形状は、外径φ140mm、内径φ100.8mm、高さ70mmのものを用いた。これらの材質はいずれもグラファイトである。先ず、ダイに下パンチを差し込んだ後、ダイ内部に、上記の原料粉末を均一に充填し、上パンチを差し込む。この際、ダイ及びパンチと粉末原料との反応によって生じるダイの損傷を防ぐために、参考例1の場合と同様に、0.2mm厚のカーボンシートを、上下パンチと充填された粉末原料との間に各々1枚、粉末原料が充填されるダイ内壁に2枚設置した。
【0041】
本実施例及び参考例では、上記の状態のものと、更にこれに、上下パンチと、形成される圧粉体成形面との間に平均粒径100μmのグラファイト粉末を1.5〜3mmの厚みで夫々配置したものの2種類を用意した。
【0042】
上記のようにして、原料粉末のものと、原料粉末に加えてグラファイトを充填した2種類のダイスを、夫々、放電プラズマ焼結機((株)イズミテック製、SPS−7.40)のチャンバー内にセットし、加圧焼成を行った。焼成条件は、先ずチャンバー内を5Pa以下の真空状態とした後、30MPaの加圧力を粉体にかけながら、19分で1350℃まで昇温した。そして、この温度で5分保持した後、加圧を完全に開放すると共に自然冷却し、400℃に達した時点で大気開放して、No.10及び11のクロミア焼結体を得た。グラファイトを配置したNo.10のクロミア焼結体では、焼成後、固化したグラファイトをカーボンシートと共に取り除いた。
【0043】
上記で得られた2種類の焼結体を切断加工し、参考例1で行なったと同様の方法で、相対密度の計測、SEMによる微構造組織の観察、3点曲げ強度の測定、スラグによる侵食試験を夫々実施した。その結果、No.10及び11のクロミア焼結体は共に、参考例1のNo.5及びNo.7のクロミア焼結体と同等の焼成特性を有するものであった。
【0044】
更に、グラファイト粉末を設置したことによる効果を確認するために、室温における3点曲げ強度の測定の際に、No.10及び11の各焼結体の5箇所よりJIS−R1601に準じて曲げ強度測定用試料を2本ずつ採取し、夫々について3点曲げ強さを測定した。そして、測定値から曲げ強さのバラツキ具合を確認すると共に、これらの値から曲げ強さの標準偏差を求め、この標準偏差が小さいものほど均質性に優れていると判断し、焼結体の均質性評価を行なった。
【0045】
表2に、グラファイト粉末を配置して作製したNo.10の焼結体と、配置せずに作製したNo.11の焼結体について、上記の方法で得られた、それぞれ異なる点で採取した試料の曲げ強さと、その標準偏差を示した。この結果、グラファイト粉末を配置しないNo.11の焼結体の場合は、曲げ強さのバラツキの幅が最大で約200MPaあったのに対し、グラファイト粉末を配置した場合はその約半分におさまっており、更に、標準偏差についても同様に小さいことから、全体的に均一な焼成が行われたことを確認できた。
【0046】
【表2】
Figure 0005002087
【0047】
参考例3>
原料のクロミア粉末として、純度99.9%の市販品(日本化学工業(株)製、G5)の平均粒径3μmのものを用いた。粉体の充填部は、図2に示したように上下パンチとダイとによって形成されるが、パンチの形状は上下ともにφ60×150mmであり、ダイの形状は、外径φ170mm、内径φ60mm、高さ120mmのものを用いた。これらの材質はいずれもグラファイトである。先ず、ダイに下パンチを差し込んだ後、ダイ内部に、上記の原料粉末を均一に充填し、上パンチを差し込む。この際、ダイ及びパンチと粉末原料との反応によって生じるダイの損傷を防ぐために、参考例1の場合と同様に、0.2mm厚のカーボンシートを、上下パンチと充填された粉末原料との間に各々1枚、粉末原料が充填されるダイ内壁に2枚設置した。
【0048】
上記のようにしてクロミア粉末原料が充填されたダイスを、ホットプレス焼結機(富士電波工業(株)製、FVPHP−R−15,FRET−30)のチャンバー内にセットし、焼成を行った。先ず、チャンバー内を5Pa以下の真空状態とした後、焼成条件は、1350℃で、30MPaの加圧力を粉体にかけながら、270分で1350℃の到達温度に夫々昇温し、その所定の温度で180分間保持して加圧焼成を行なった。このようにして焼成した後、加圧を完全に開放すると共に自然冷却し、400℃に達した時点で大気開放して焼結体を得た。この結果、相対密度99.6%の焼結体が得られた。得られた焼結体について、SEMによる微構造組織の観察を行なった結果、3μm程度の微粒子で構成された緻密な組織となっていた。又、参考例1と同様に、スラグによる浸食を格段に抑制でき、耐食性に優れた焼結体であることが確認できた。
【0049】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、高純度にして緻密かつ均質なクロミア焼結体が簡便な製造方法によって容易に提供される。本発明によれば、耐食性に優れ、ガラス溶解炉や廃棄物処理溶融炉等において長期使用可能な高温耐食性材料として有用なクロミア焼結体を工業的規模で経済的に提供できるクロミア焼結体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクロミア焼結体をSEMで組織観察した結果を示す図である。
【図2】本発明のクロミア焼結体を得るための粉体試料の充填容器を示す概略図である。
【図3】従来の焼成方法によって得られたクロミア焼結体をSEMで組織観察した結果を示す図である。

Claims (2)

  1. 相対密度が97%以上の緻密な形態を有するクロミア焼結体を製造するための製造方法であって、圧力をかけるための上下パンチを有する焼成型内に、少なくとも該上下パンチとの間にカーボンシートを配置し、更に、該カーボンシートの上にグラファイト粉末を、最大の加圧力を施した時点で、その厚みが0.5〜5mmとなる範囲で充填して配置した状態で、平均粒子径が1〜3μmの範囲にある純度99.5重量%以上のクロミア粉末を充填し、真空中若しくは不活性雰囲気中で、荷重10〜60MPaの範囲でクロミア粉末に一軸加圧しながら、焼成型及び上下パンチから伝わるジュール熱で加熱する、ホットプレス法又はパルス通電加熱加圧焼結法によって焼成温度1200〜1600℃で焼成することを特徴とするクロミア焼結体の製造方法。
  2. 焼成温度1300〜1500℃、荷重20〜40MPaの範囲で加圧焼成を行なう請求項1に記載のクロミア焼結体の製造方法。
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