JP3779273B2 - 車両座席用留め具 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する分野】
本発明は、ディスク状の第１留め具部材と、この第１留め具部材に対して回転可能なディスク状の第２留め具部材と、前記第１留め具部材と第２留め具部材とを共に保持するクランプリングとを備えた車両座席用留め具、特に、自動車に適した車両座席用留め具に関する。
【０００２】
【従来の技術】
欧州特許出願公開第０ ７２０ ９３０ Ａ１号明細書は、車両座席の背もたれの傾斜調節装置として設けられたタイプの車両座席用留め具を開示している。そして、この車両座席用留め具を構成している２つの留め具部材の外周囲には、フランジ状縁部を半径内方に向けて曲げたリングが配置されて係合している。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の車両座席用留め具は、車両座席の別の部分の調整装置にも使用するため、より簡素化された高い費用効率の製造が要求されている。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明は、最初に述べたタイプの車両座席用留め具を改善するものであって、本発明の目的は、ディスク状の第１留め具部材と、この第１留め具部材に対して回転可能なディスク状の第２留め具部材と、前記第１留め具部材と第２留め具部材とを共に保持するクランプリングとを備えた車両座席用留め具において、前記クランプリングが、前記第１留め具部材をリング片側からリング中心軸方向に押し込んだ状態で嵌合固定するように前記第１留め具部材の外径よりも取り付け前のリング内径を小さくしたことにより、達成される。
また、本発明の更なる有益な改良は、前記クランプリングが第１留め具部材と第２留め具部材の両方を外周側から包囲すること、前記第１留め具部材の外径が第２留め具部材の外径よりも大きいこと、前記クランプリングが半径内方に向いた段差部を備えて前記第１留め具部材が段差部まで押し込まれること、前記第１留め具部材と接続したアダプタを備えていること、前記第１留め具部材とクランプリングとアダプタが相互に共に接続していること、前記第１留め具部材とクランプリングとアダプタとが１つの共通した溶接による継ぎ目によって相互に接続されていること、前記第１留め具部材とクランプリングとアダプタが第２留め具部材と反対側より付加された１つの共通したレーザ溶接による継ぎ目によって相互に接続されていることなどにより、より一段と達成される。
【０００５】
すなわち、本発明の車両座席用留め具は、クランプリングが、第１留め具部材をリング片側からリング中心軸方向に押し込んだ状態で嵌合固定するように前記第１留め具部材の外径よりも取り付け前のリング内径を小さくしたことによって、クランプリングにおけるフランジ状縁部の成形が少なくともリング片側で省かれて、車両座席用留め具の製造が簡素化され、そのコストも低減される。これにより、クランプリングは、ディスク状の第１留め具部材と第２留め具部材の両方を外周側から包囲することが好ましい。
そして、前記クランプリングの取り付け前のリング内径をディスク状の第１留め具部材の外径よりも小さくして第１留め具部材が押し込まれてクランプリングに嵌合固定されることによって、溶接工程を用いずに車両座席用留め具を事前に組み立てることが可能になり、例えば、この事前組み立て段階で車両座席用留め具の機能テストを行うことができる。 クランプリング内にディスク状の第１留め具部材と第２留め具部材とを保持する機能が設けられているため、保持プレートを省略することで軽量化を図ることができる。また、ディスク状の第１留め具部材と第２留め具部材との間の旋回範囲が３６０°となって万能な使用が可能となる。
必要とする構造的空間が同じであれば、本発明の解決手段は、タンブラ取り付け（ギア取り付け）や事前折り畳み機構をラッチ取り付けるために使用することができる。
【０００６】
前記クランプリングが半径内方に向いた環状の段差部を備えて、この環状の段差部内に第１留め具部材がいっぱいまで押し込まれていることが好ましく、該第１留め具部材の外径が第２留め具部材の外径よりも大きいことが好ましい。
また、この環状の段差部により、車両座席用留め具の軸方向への遊びを調整することが可能になる。同時に、封止機能を有する段差部が、車両座席用留め具の最終設置中に溶接噴霧物の浸入を阻止する。
【０００７】
用途に応じた最終的な取り付けを調整するアダプタは、車両座席用留め具を車両座席の構造に固定するために使用される。第１留め具部材側に設けるアダプタは、クランプリングと一体に単体部品として形成することができる。
しかし、これらの第１留め具部材とクランプリングとアダプタとを溶接による継ぎ目や接続要素のような共通した接続手段によって相互に接続することが有益であり、例えば、３つの構成要素をレーザ溶接による継ぎ目で接続でき、最小量の接続手段で、しっかりとした接続が得られる。
【０００８】
溶接接続の場合、レーザ溶接が好ましい理由は、溶接による継ぎ目を付属品を用いずに狙って付加することができるためである。そのとき、対応するアダプタの取り付けと同じ方向からアダプタを介して、レーザ溶接を実施することが好ましい。
なお、アダプタを使用する代わりに、例えば、第２留め具部材側に設けるアダプタの代わりに、この車両座席用留め具を車両座席の構造に直接取り付けることも可能である。
【０００９】
図面に示した本発明の実施形態を参照して、本発明の車両座席用留め具をより詳細に説明する。
【００１０】
【発明の実施の形態】
自動車用座席からなる車両座席１の背もたれ３の傾斜を調整するために、車両座席１の両側には、ラッチ留め具として設計された車両座席用留め具５がそれぞれ取り付けられているが、この車両座席用留め具はタンブラ留め具として設計することもできる。
そして、このような車両座席１の両側に取り付けられた２つの車両座席用留め具５は、トランスミッションロッドを介して相互にギア接続している。また、車両座席用留め具５は、手動で作動するために、トランスミッションロッド上に回転的に固定されているハンドレバー９を使用している。
以下に示す本発明の詳細な説明は、移動方向に対して水平および横方向に配置された、トランスミッションロッドで画定された円筒形の同等のシステムを示すものである。
【００１１】
各車両座席用留め具５は、ほぼディスク状の第１留め具部材１１を下方に備えるとともに、ほぼディスク状の第２留め具部材１２を上方に備えている。
車両座席１の座席部分に固定されている第１留め具部材１１には、４つのほぼ四半円形状の案内・軸受けセグメント１５が一体形成されている。
案内・軸受けセグメント１５の外周面は、半径外方に向いて第１留め具部材１１の中心周囲で湾曲し、また、該外周面どうしが円筒形の軸受け面を形成し、該軸受け面は４つの中断部分を備え、対応して湾曲し、第２留め具部材１２側の軸受け面を指して半径内方に向いている。
ディスク状の第２留め具部材１２は、中空の車輪として設計されるとともに、背もたれ３に固定されている。
その結果、ロック解除状態において、第２留め具部材１２が、車両座席１内に取り付けられる前に、第１留め具部材１１に対して詳細には３６０°回転される。
【００１２】
２つずつの案内・軸受けセグメント１５がさらなる案内を形成し、この案内は半径方向に延びており、半径方向に向かって可動に配置された歯付きセグメントのため、また、取り付け用の表面を備えた第２留め具部材１２側の軸受け面と相互に動作する車両座席用留め具５をロックするためのものである。
２つの歯付きセグメントを動作するべく機能する偏心部（詳細には示していない）が、プラスチック製のトランスミッション要素２７上に回転的に固定されており、該プラスチック製のトランスミッション要素２７は、トランスミッションロッドに回転固定的に設置されている。
トランスミッション要素２７は、その端側に２つのフランジを備えているため、組み立て中や最終的な設置の前に、車両座席用留め具５の構成要素をまとめて軸固定する軸固定手段として機能する。
【００１３】
ディスク状の第１留め具部材１１と第２留め具部材１２との外周面上にはクランプリング３５が設置されている。クランプリング３５は、第１留め具部材１１と反対側に、第２留め具部材１２を軸方向に位置決めするためのフランジ状縁部３７を備えている。
第２留め具部材１２の遅れのない回転動作を可能にするために、第２留め具部材１２とクランプリング３５との間には、半径方向に向かってある程度の遊びが設けられている。
第１留め具部材１１の外径は、第２留め具部材１２よりもいくらか大きく、第２留め具部材１２よりも半径方向にいくらか突出している。
言わば肩部のような封止機能を有する環状の段差部３９が、クランプリング３５上の第１留め具部材１１と第２留め具部材１２との間の移動範囲内の内周面に設けられている。
また、前記クランプリング３５の取り付け前のリング内径は、公差を設定した第１留め具部材１１の範囲において、第１留め具部材１１の外径よりも小さい。すなわち、クランプリング３５が、前記第１留め具部材１１をリング片側からリング中心軸方向に押し込んだ状態で嵌合固定するように前記第１留め具部材１１の外径よりも取り付け前のリング内径を小さくしている。
【００１４】
車両座席用留め具５の組み立て中において、上述した第１留め具部材１１と第２留め具部材１２との間のロック手段として必要な構成要素を挿入した後に、最終工程ステップとして、クランプリング３５が第２留め具部材１２へと押され、第１留め具部材１１が、クランプリング３５内で封止機能を有する環状の段差部３９までリング中心軸方向から押し込まれることにより、固定接続される。
次に、車両座席用留め具５が損傷なく移送されるが、その後の使用のために、下方のアダプタ４１と上方のアダプタ４２とが車両座席用留め具５に既に取り付けられていることが好ましい。
上方のアダプタ４２は、第１留め具部材１１と反対側でレーザ溶接による接続部４４により第２留め具部材１２に固着されている。下方のアダプタ４１は、第２留め具部材１２と反対側で、第１留め具部材１１上に配置されている。
接続を目的としたレーザ溶接による環状の継ぎ目４５が、第１留め具部材１１の外径に沿って下方のアダプタ４１に設けられる。すなわち、同時に、継ぎ目４５が、クランプリング３５に沿って導かれる。
その結果、１つの溶接工程が、３つの構成要素、すなわち、第１留め具部材１１とクランプリング３５と下方のアダプタ４１とを固定的に接続するために使用される。
【００１５】
【発明の効果】
本発明の車両座席用留め具は、クランプリングが第１留め具部材をリング片側からリング中心軸方向に押し込んだ状態で嵌合固定するように前記第１留め具部材の外径よりも取り付け前のリング内径を小さくしたことによって、車両座席用留め具の製造が簡素化され、そのコストも低減され、溶接工程を用いずに車両座席用留め具を事前に組み立て可能となり事前組み立て段階で車両座席用留め具の機能テストを行うことができ、しかも、軽量化が図れ、万能な使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の一実施例である車両座席用留め具の断面図。
【図２】 図１の線ＩＩ−ＩＩに沿って切った断面図。
【図３】 本発明の一実施例である車両座席用留め具を備えた車両座席の概略図。
【符号の説明】
１ ・・・車両座席
３ ・・・背もたれ
５ ・・・車両座席用留め具
９ ・・・ハンドレバー
１１ ・・・第１留め具部材
１２ ・・・第２留め具部材
１５ ・・・案内・軸受けセグメント
２７ ・・・トランスミッション要素
３５ ・・・クランプリング
３７ ・・・フランジ状縁部
３９ ・・・段差部
４１ ・・・下方のアダプタ
４２ ・・・上方のアダプタ
４４ ・・・レーザ溶接による接続部
４５ ・・・レーザ溶接による継ぎ目

Claims (9)

1. ディスク状の第１留め具部材（１１）と、該第１留め具部材（１１）に対して回転可能なディスク状の第２留め具部材（１２）と、前記第１留め具部材（１１）と第２留め具部材（１２）とを共に保持するクランプリング（３５）とを備えた車両座席用留め具において、
   前記クランプリング（３５）が、前記第１留め具部材（１１）をリング片側からリング中心軸方向に押し込んだ状態で嵌合固定するように前記第１留め具部材（１１）の外径よりも取り付け前のリング内径を小さくしたことを特徴とする車両座席用留め具（５）。
2. 前記クランプリング（３５）が、前記第１留め具部材（１１）と第２留め具部材（１２）の両方を外周側から包囲することを特徴とする請求項１に記載の車両座席用留め具（５）。
3. 前記第１留め具部材（１１）の外径が、前記第２留め具部材（１２）の外径よりも大きいことを特徴とする請求項２に記載の車両座席用留め具（５）。
4. 前記クランプリング（３５）が、半径内方に向いた段差部（３９）を備えて、前記第１留め具部材（１１）が段差部（３９）まで押し込まれることを特徴とする請求項２または請求項３のいずれか１項に記載の車両座席用留め具（５）。
5. 前記第１留め具部材（１１）と接続したアダプタ（４１）を備えて、車両座席（１）の構造に固定されることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれか１項に記載の車両座席用留め具（５）。
6. 前記第１留め具部材（１１）とクランプリング（３５）とアダプタ（４１）とが、相互に共に接続していることを特徴とする請求項５に記載の車両座席用留め具（５）。
7. 前記第１留め具部材（１１）とクランプリング（３５）とアダプタ（４１）とが、１つの共通した溶接による継ぎ目によって相互に接続されていることを特徴とする請求項６に記載の車両座席用留め具（５）。
8. 前記第１留め具部材（１１）とクランプリング（３５）とアダプタ（４１）とが、前記第２留め具部材（１２）と反対側より付加された１つの共通したレーザ溶接による継ぎ目によって相互に接続されていることを特徴とする請求項７に記載の車両座席用留め具（５）。
9. 請求項１乃至請求項８のいずれか１項に記載された背もたれ（３）の傾斜を調整する車両座席用留め具（５）が取り付けられていることを特徴とする車両座席（１）。

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