JP2016216741A - ポリビニルアルコール系重合体フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
本発明者らはこのような知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
[1]フィルム表面から窪んだ欠点であって面積が400μm2以上で深さが0.3μm以上の欠点の数が0.25個/m2以下であるPVA系重合体フィルム(以下、このPVA系重合体フィルムを「PVA系重合体フィルム(1)」と称することがある);
[2]前記欠点の数が0.15個/m2以下である、上記[1]のPVA系重合体フィルム;
[3]PVA系重合体フィルムに含まれるPVA系重合体の重合度が3,000以上10,000以下である、上記[1]または[2]のPVA系重合体フィルム;
[4]長尺のPVA系重合体フィルムである、上記[1]〜[3]のいずれか1つのPVA系重合体フィルム;
[5]長さが6,000m以上である、上記[4]のPVA系重合体フィルム;
[6]前記欠点が、フィルムの長さ方向に実質的に一定の間隔でフィルムの幅方向に実質的に同一の位置に存在する欠点を含む、上記[4]または[5]のPVA系重合体フィルム;
[8]前記欠点の数が0.25個/m2以下である、上記[7]のフィルムロール;
[9]前記欠点の数が0.15個/m2以下である、上記[7]のフィルムロール;
[10]PVA系重合体フィルムに含まれるPVA系重合体の重合度が3,000以上10,000以下である、上記[7]〜[9]のいずれか1つのフィルムロール;
[11]PVA系重合体フィルムの長さが6,000m以上である、上記[7]〜[10]のいずれか1つのフィルムロール;
[12]前記欠点が、フィルムの長さ方向に実質的に一定の間隔でフィルムの幅方向に実質的に同一の位置に存在する欠点を含む、上記[7]〜[11]のいずれか1つのフィルムロール;
[14]大きい方の二乗平均粗さが1nm以上20nm以下である、上記[13]のPVA系重合体フィルム;
[15]長尺のPVA系重合体フィルムである、上記[13]または[14]のPVA系重合体フィルム;
[16]上記[15]のPVA系重合体フィルムが連続的に巻き取られてなるフィルムロール(以下、このフィルムロールを「フィルムロール(2)」と称することがある);
[17]上記[13]〜[15]のいずれか1つのPVA系重合体フィルムを原反フィルムとして用いる偏光フィルムの製造方法であって、染色工程、一軸延伸工程、固定処理工程および乾燥工程を有し、乾燥工程に入る前の最後の処理浴を出るときに、処理浴の液面とフィルム面とのなす角度が30°以上85°以下であると共に、フィルムの上方側の面がポリビニルアルコール系重合体フィルムにおいて小さい方の二乗平均粗さを有していた面である、製造方法;
[18]上記[17]の製造方法によって製造される偏光フィルム;
[20]溶液状態または溶融状態のPVA系重合体がPVA系重合体と水を含む製膜原液の形態である、上記[19]の製造方法;
[21]前記PVA系重合体の重合度が3,000以上10,000以下である、上記[19]または[20]の製造方法;
[22]前記金属支持体の表面硬度がビッカース硬さで600HV以上800HV未満である、上記[19]〜[21]のいずれか1つの製造方法;
[23]表面にクロムメッキ層を有し、表面硬度がビッカース硬さで550HV以上900HV未満である金属支持体の表面温度を0.5℃/時間以上の変温速度で50℃以上115℃以下にする工程を有する、上記[19]〜[22]のいずれか1つの製造方法;
[24]上記[1]〜[6]および[13]〜[15]のいずれか1つのPVA系重合体フィルムを製造する、[19]〜[23]のいずれか1つの製造方法;
に関する。
[PVA系重合体フィルム(1)]
本発明のPVA系重合体フィルム(PVA系重合体フィルム(1))は、フィルム表面から窪んだ欠点であって面積が400μm2以上で深さが0.3μm以上の欠点(以下、この欠点を「欠点A」と称することがある)の数が0.25個/m2以下である。プラスチックフィルムに存在する欠点としては、フィルム中のボイド(気泡);異物の混入・付着によるいわゆるフィッシュアイ;フィルムのハンドリング中に生じる傷(多くは溝状の凹み);製膜装置上の凸形状が転写されることによる欠点などが挙げられるが、本発明者らは、上記欠点Aの数を特に制御することによって欠陥の少ない偏光フィルムや偏光板を収率よく製造することができるなどの優れた効果が奏されることを見出した。この欠点Aは上記した製膜装置上の凸形状の転写が原因の1つであると考えられ、特に、後述するようにドラムやベルトといった金属支持体を用いてPVA系重合体フィルムを製膜した場合に、金属支持体上に付着した樹脂堆積物と思われる異物による凸形状がフィルムに転写されることが原因の1つであると考えられる。このような原因によって長尺のPVA系重合体フィルムに欠点Aが生じる場合には、欠点Aのうちの少なくとも一部が、フィルムの長さ方向に実質的に一定の間隔で且つフィルムの幅方向に実質的に同一の位置に複数(例えば3個以上)配列する傾向がある。ここで上記の実質的に一定の間隔は、典型的には、ドラムやベルトといった金属支持体の1周分の長さ(全周長さ)に対応するが、場合によっては、1周分の長さの整数倍に対応することもある。また、異物による凸形状は金属支持体上に複数形成され得るため、上記のように配列した欠点Aの群も複数存在し得る。
一方、欠点Aの数の下限については必ずしも限定されないが、欠点Aの数を極度に少なくするためには、製膜設備を設置するためのコストが極度に高くなるなどのおそれがあることから、欠点Aの数は0.001個/m2以上であることが好ましく、0.003個/m2以上であることがより好ましく、0.005個/m2以上であることがさらに好ましい。
欠点Aの数(単位は個/m2)は、対象となるPVA系重合体フィルムの一方の端から欠点Aを探していき、10個の欠点Aを見つけるまでに検査したPVA系重合体フィルムの面積(単位はm2)で10(個)を除すことにより求めることができ、具体的には実施例において後述する方法によって求めることができる。ここで、個々の欠点が欠点Aであるか否かの判定は、非接触表面形状測定機を用いて行うことができる。
当該長尺のPVA系重合体フィルムの長さは特に制限されず、PVA系重合体フィルム(1)の用途などに応じて適宜設定することができ、具体的には当該長さは1,000m以上であることが好ましく、4,000m以上であることがより好ましく、6,000m以上であることがさらに好ましく、7,000m以上であることが特に好ましく、8,000m以上であることが最も好ましい。特に後述するPVA系重合体フィルムの製造方法によれば、PVA系重合体フィルムの欠点Aの数を低減できるとともに、PVA系重合体フィルムを長時間にわたり連続して製膜しても欠点Aの数の変動を低いレベルに保つことができるため、上記長さがより長い場合(例えば6,000m以上)であっても欠点Aの数が低減されたPVA系重合体フィルムを簡便に得ることができる。そしてこのようなより長いPVA系重合体フィルムによれば、偏光フィルムを連続的に製造する場合に欠陥が少なくて近年要求される品質レベルを満足する製品を長時間にわたり収率よく安定して製造することが可能となり、また、フィルムロールの切り替えに伴う煩雑さや時間ロスを低減することもできる。長尺のPVA系重合体フィルムの長さの上限に特に制限はないが、あまりに長いとフィルムロールとした際に重量やロール径が過度に大きくなるなどしてハンドリング性が低下し保管や輸送が困難になる場合があることなどから、当該長さは30,000m以下であることが好ましく、25,000m以下であることがより好ましく、20,000m以下であることがさらに好ましい。
重合度 = ([η]×103/8.29)(1/0.62)
PVA系重合体フィルム(1)における可塑剤の含有量は、PVA系重合体100質量部に対して1〜30質量部の範囲内であることが好ましく、3〜25質量部の範囲内であることがより好ましく、5〜20質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型などが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが挙げられる。
これらの界面活性剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明のフィルムロール(フィルムロール(1))は、長尺のPVA系重合体フィルムが連続的に巻き取られてなるフィルムロールであって、PVA系重合体フィルムの巻き取り開始部分(PVA系重合体フィルムをフィルムロールとして巻き取り始めたときのフィルム部分)における上記欠点Aの数に対する、PVA系重合体フィルムの巻き取り終了部分(PVA系重合体フィルムをフィルムロールとして巻き取り終わったときのフィルム部分)における上記欠点Aの数が1.4倍以下である。このようなフィルムロールではPVA系重合体フィルムの巻き取り開始部分から巻き取り終了部分までの表面特性の差が小さいため、当該フィルムロールによれば品質の安定した偏光フィルムひいては偏光板を製造することが可能となる。このような観点から、PVA系重合体フィルムの巻き取り開始部分における上記欠点Aの数に対するPVA系重合体フィルムの巻き取り終了部分における上記欠点Aの数は、1.3倍以下であることが好ましく、1.2倍以下であることがより好ましく、1.1倍以下であることがさらに好ましい。また、長尺のPVA系重合体フィルムの製膜において欠点Aの数は概ね経時的に増加する傾向があるため、PVA系重合体フィルムの巻き取り開始部分における上記欠点Aの数に対するPVA系重合体フィルムの巻き取り終了部分における上記欠点Aの数は通常0.6倍以上となることが多く、また、品質の安定した偏光フィルムひいては偏光板を製造するなどの観点からPVA系重合体フィルムの巻き取り開始部分における上記欠点Aの数に対するPVA系重合体フィルムの巻き取り終了部分における上記欠点Aの数は0.7倍以上であることが好ましく、0.75倍以上であることがより好ましく、0.8倍以上であることがさらに好ましく、0.9倍以上であることが特に好ましい。
本発明のPVA系重合体フィルム(PVA系重合体フィルム(2))は、フィルムの両面のそれぞれにおいて二乗平均粗さを測定した際に、得られた2つの二乗平均粗さの差が0.3nm以上10nm以下であり、小さい方の二乗平均粗さが10nm以下である。PVA系重合体フィルムが連続的に巻き取られてなる従来のフィルムロールではフィルム間のスリップ性不良などによりフィルムに皺が生じやすいが、本発明のPVA系重合体フィルム(2)によれば、当該皺の発生を低減することができる。なおフィルムロールの皺には、PVA系重合体フィルムを巻き取る際に生じるものと、一旦フィルムロールとした後これを倉庫等で保管しているときにPVA系重合体フィルムに残存していた応力による巻き絞まりが生じてこの際にフィルム間のスリップ性が不良であることにより生じるものとがあり、本発明のPVA系重合体フィルム(2)によれば、前者の皺の発生を効果的に低減することができるが、後者の皺の発生も低減することもできる。これに加えて本発明のPVA系重合体フィルム(2)によれば、上記した欠陥とは異なる染色斑が低減された偏光フィルムを容易に製造することができる。
当該長尺のPVA系重合体フィルムの長さは特に制限されず、PVA系重合体フィルム(2)の用途などに応じて適宜設定することができ、具体的には当該長さは1,000m以上であることが好ましく、4,000m以上であることがより好ましく、6,000m以上であることがさらに好ましく、7,000m以上であることが特に好ましく、8,000m以上であることが最も好ましい。このようなより長いPVA系重合体フィルムによれば、フィルムロールの切り替えに伴う煩雑さや時間ロスを低減することができる。長尺のPVA系重合体フィルムの長さの上限に特に制限はないが、あまりに長いとフィルムロールとした際に重量やロール径が過度に大きくなるなどしてハンドリング性が低下し保管や輸送が困難になる場合があることなどから、当該長さは30,000m以下であることが好ましく、25,000m以下であることがより好ましく、20,000m以下であることがさらに好ましい。なお、フィルムロールを保管しているときに発生する皺の原因の1つとしてはPVA系重合体フィルムに残存していた応力による巻き絞まりが挙げられるが、この巻き絞まりはより長くより幅の広いPVA系重合体フィルムにおいて強く現れやすいため、より長いPVA系重合体フィルムにおいて本発明の効果がより顕著に奏される。
本発明のフィルムロール(フィルムロール(2))は、上記のPVA系重合体フィルム(2)であって長尺のPVA系重合体フィルムが連続的に巻き取られてなり、例えば、円筒状のコアにPVA系重合体フィルム(2)であって長尺のPVA系重合体フィルムが連続的に巻き取られてなる。円筒状のコアが使用される場合には、当該コアの両端部はフィルムロールの端面から突出する突出部を形成していることが好ましい。当該コアとしては、フィルムロール(1)の説明として上記したものを用いることができ、ここでは重複する説明を省略する。
PVA系重合体フィルムを製造するための本発明の製造方法は、表面にクロムメッキ層を有し、表面硬度がビッカース硬さで550HV以上900HV未満であり、表面温度が50℃以上115℃以下である金属支持体の表面上に、溶液状態または溶融状態のPVA系重合体を流延して乾燥させて製膜する工程を有する。そして、溶液状態または溶融状態のPVA系重合体を流延し始める直前において金属支持体の表面における面積(最大幅と最大端部間距離との積)が200μm2以上のクラックの数が0.7個/mm2以下である。当該製造方法によれば、上記した本発明のPVA系重合体フィルム(PVA系重合体フィルム(1)および(2))や、本発明のフィルムロール(フィルムロール(1)および(2))において連続的に巻き取られる長尺のPVA系重合体フィルムを簡便に製造することができる。
<サージエント浴の組成>
無水クロム酸:100〜300g/L(使用薬品基準の濃度)
硫酸:使用される無水クロム酸の1/50〜1/150(質量割合)
<クロムメッキ処理の条件>
電流密度 10〜60A/dm2
本発明のPVA系重合体フィルム(PVA系重合体フィルム(1)および(2))や、本発明のフィルムロール(フィルムロール(1)および(2))から巻き出されたPVA系重合体フィルムは、欠点Aの数が少ない;品質が安定している;皺が発生しにくい;などの利点を活かして各種用途に使用することができるが、本発明の効果がより顕著に奏されることから、偏光フィルムや位相差フィルムなどの光学フィルム製造用の原反フィルムとして使用するのが好ましく、偏光フィルム製造用の原反フィルムとして使用するのがより好ましい。
一軸延伸する際の温度は特に制限されないが、PVA系重合体フィルムを温水中で一軸延伸(湿式延伸)する場合には30℃以上90℃以下の範囲内であることが好ましく、また乾熱延伸する場合には50℃以上180℃以下の範囲内であることが好ましい。
一軸延伸の延伸倍率(多段で一軸延伸する場合には合計の延伸倍率)は、偏光性能の点から4倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。延伸倍率の上限に特に制限はないが、8倍以下であると一軸延伸を安定して行い易いため好ましい。一軸延伸後のフィルムの厚みは、用いるPVA系重合体フィルムの厚みにもよるが、3μm以上75μm以下の範囲内であることが好ましく、5μm以上50μm以下の範囲内であることがより好ましい。
製膜用ドラムの表面(周面)において、両端からそれぞれ5mm内側に入りこんだ線上で、製膜用ドラムの全周長さを4等分するように各端部4点ずつ合計8点を定めた。そして各点において、UCI式硬さ計 MIC10(GEセンシング&インスペクション・テクノロジーズ株式会社製;プローブはMIC−2101−Aを使用)にてクロムメッキ層表面のビッカース硬度を測定し、それらの平均値を製膜用ドラムの表面硬度とした。
製膜用ドラムの表面(周面)上で任意の25箇所を定め、それぞれにおいて、デジタルビデオマイクロスコープ VHX−900(キーエンス社製)を用いて1000倍の倍率で2mm×2mm(4mm2)の範囲内にあるクラック(クロムメッキ層上のひび割れ)の写真を撮影した。そして写真上に見られる各クラックの最大幅と最大端部間距離(端部が2つのみの場合にはそれらの端部間距離を意味し、複数ある場合には複数の端部間距離のうちの最大の距離を意味する)をμm単位で求めてこれらの積を算出し、その積が200μm2以上となるクラックを「面積が200μm2以上のクラック」とした。このようにして上記4mm2の範囲×25箇所において「面積が200μm2以上のクラック」の数を求めて、これから1mm2あたりの数を算出した。
製膜用ドラムの表面(周面)上の任意の1点を通過する幅方向の1直線と、この1直線に平行でこの1直線と共に周面を4等分するようなその他の3直線(すなわち製膜用ドラムが1/4周する毎に同一直線上に位置する直線)を定め、これらの4直線上における温度分布を、サーモトレーサ TH9100MR(NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社製)を用いて測定した。次いで、得られた温度分布データから、各直線につき幅方向中央部と両端部から中央部に向けて20cmの位置の各3点(合計12点)の温度を得て、これら12点の温度を平均した値をそのときの製膜用ドラムの表面温度とした。また、得られた各直線毎の温度分布データを、幅方向の位置を横軸とし温度を縦軸とする4本のグラフにし、その傾きの絶対値の最大値を求め、これをそのときの製膜用ドラムの最大温度勾配とした。
フィルムロールよりPVAフィルムを巻き出しながらフィルムを通してその後ろに置かれた蛍光灯を見たときの蛍光灯の像のゆがみからフィルムの欠点を見つけ、その回りを油性マジックペンで丸く囲った。次に、見つけた欠点を非接触表面形状測定機「NewView」6300(ザイゴ社製)を用いて観察し、フィルム表面から窪んだ欠点であって面積(開口部面積)が400μm2以上で深さが0.3μm以上の欠点(欠点A)であるか否かを判定した。上記の操作を、製造されたフィルムロールにおける巻き取り終了部分(なお誤差を低減するためフィルムの長さ方向の端部より10mまでの部分は除外した)から始め、欠点Aの数が10個になったときまでのPVAフィルムの面積(操作を始めてから10個目の欠点Aまでの長さ×フィルムの幅;単位はm2)を求め、その面積で10(個)を除すことにより、巻き取り終了部分における欠点Aの数(単位は個/m2)を算出した。また10個の欠点Aのうち、フィルムの幅方向に実質的に同一の位置にあり且つフィルムの長さ方向の間隔が使用された製膜用ドラムの全周長さの整数倍に実質的に一致する関係にある2個以上の欠点(以下、「回転周期欠点」と称することがある。なおこのような欠点は、測定に供された部分以外の部分も含めて、フィルムの長さ方向に実質的に一定(製膜用ドラムの全周長さの整数倍)の間隔で3個以上配列していると考えることができる。)の数を求め、これを上記面積(単位はm2)で除すことにより、巻き取り終了部分における回転周期欠点の数(単位は個/m2)を算出した。
続いて、残りのフィルムロールを用いて後述するように偏光フィルム(巻き取り終了部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルム)を製造後、大部分のPVAフィルムが未使用の状態にある残りのフィルムロールからPVAフィルムを巻き出して新たにフィルムロールに巻き直すことにより、当初のフィルムロールの巻き取り開始部分が新たなフィルムロールの外側に位置するようにした。この新たなフィルムロールを用いて上記と同様の操作を行い、当初のフィルムロールの巻き取り開始部分における欠点Aおよび回転周期欠点の数(いずれも単位は個/m2)を求め、残りのフィルムロールを用いて後述するように偏光フィルム(巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルム)を製造した。
フィルムロールを目視で観察し、以下の基準で皺を評価した。
Aランク:皺が認められない
Bランク:皺が僅かに存在するが、実用上問題ないレベル
Cランク:実用上問題となるレベルの皺がある
PVAフィルムの一方の面の任意の10箇所の二乗平均粗さを白色干渉顕微鏡 NV6300(ザイゴ社製)を用いて測定し、それらの平均値をその面の二乗平均粗さとした。次いで、PVAフィルムの他方の面についても同様にして二乗平均粗さを得た。
上記のフィルムロールから巻き出されたPVAフィルムを予備膨潤・染色・一軸延伸・固定処理・乾燥・熱処理の順番で連続的に処理して偏光フィルムを作製した。
すなわち、PVAフィルムを30℃の水中に30秒間浸漬して予備膨潤し、次いでヨウ素濃度0.4g/Lおよびヨウ化カリウム濃度40g/Lの35℃の水溶液(染色浴)中に3分間浸漬して染色した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液(延伸浴)中で長さ方向に延伸倍率5倍で一軸延伸を行い、さらにヨウ化カリウム濃度40g/L、ホウ酸濃度40g/Lおよび塩化亜鉛濃度10g/Lの30℃の水溶液(固定処理浴)中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、フィルムを40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。
得られた偏光フィルムの任意の位置から、長さ方向に50cm、幅方向に25cmの試験片を20枚採取した。一方、欠陥の少ない50cm×50cmの偏光板を準備して、この偏光板上に上記の各試験片を配向軸が垂直になるように重ね、それをレントゲン写真観察用のシャウカッセンの上に置いて、それぞれの試験片における欠陥を確認した。なお、試験片に欠陥がない場合、重ねた偏光板/試験片は真っ黒に見えるが、試験片に欠陥がある場合、その部分から光が漏れて点状の明るい欠陥として認識することができる。この明るい欠陥が2個以上観察された試験片は不合格として、20枚の試験片中の合格率を算出した。
試験片の数を20枚から100枚に変更するとともに、明るい欠陥が1個以上観察された試験片を不合格としたこと以外は上記の20枚試験と同様にして、100枚の試験片中の合格率を算出した。
得られた偏光フィルムの任意の位置から、長さ方向に50cm、幅方向に25cmの試験片を採取した。一方、染色斑や異物の少ない50cm×50cmの偏光板を準備して、この偏光板上に上記の試験片を配向軸が垂直になるように重ね、それをレントゲン写真観察用のシャウカッセンの上に置いて、試験片における染色斑および異物を以下の基準で評価した。
・染色斑
Aランク:染色斑が認められない
Bランク:染色斑が僅かに存在するが、実用上問題ないレベル
Cランク:実用上問題となるレベルの染色斑がある
・異物
Aランク:異物が認められない
Bランク:異物が僅かに存在するが、実用上問題ないレベル
Cランク:実用上問題となるレベルの異物がある
《ドラム1の調製》
幅1.0mの炭素鋼製の製膜用ドラムのドラム表面(周面)をバフ研磨して脱脂処理などの下地処理を行った後、当該ドラム表面にクロムメッキ浴を用いて以下の条件でクロムメッキ処理を実施した。なお、使用薬品基準の濃度で無水クロム酸200g/Lおよび硫酸2g/Lとなるようにこれらの薬品を蒸留水に溶解したものをクロムメッキ浴とした。
・クロムメッキ浴温度:55℃
・電流密度:20A/dm2
・クロムメッキ層厚み(研磨後):50μm
そして、クロムメッキ処理の終了後、当該製膜用ドラムを102℃で50時間熱処理し、放冷した。
上記のクロムメッキ処理と熱処理により表面(周面)にクロムメッキ層が形成された製膜用ドラムについて、その表面硬度を上記した方法に従って測定したところ760HVであった。以下、この製膜用ドラムを「ドラム1」と称する。
《ドラム2の調製》
クロムメッキ浴温度を52℃に変更したこと以外は調製例1と同様にしてクロムメッキ処理と熱処理を行い、表面(周面)にクロムメッキ層が形成された製膜用ドラムを調製した。この製膜用ドラムについて、その表面硬度を上記した方法に従って測定したところ840HVであった。以下、この製膜用ドラムを「ドラム2」と称する。
《ドラム3の調製》
クロムメッキ浴温度を48℃に変更したこと以外は調製例1と同様にしてクロムメッキ処理と熱処理を行い、表面(周面)にクロムメッキ層が形成された製膜用ドラムを調製した。この製膜用ドラムについて、その表面硬度を上記した方法に従って測定したところ950HVであった。以下、この製膜用ドラムを「ドラム3」と称する。
《ドラム4の調製》
クロムメッキ浴温度を67℃に変更したこと以外は調製例1と同様にしてクロムメッキ処理と熱処理を行い、表面(周面)にクロムメッキ層が形成された製膜用ドラムを調製した。この製膜用ドラムについて、その表面硬度を上記した方法に従って測定したところ525HVであった。以下、この製膜用ドラムを「ドラム4」と称する。
ドラム1をキャスト製膜設備に取り付け、温水循環装置と接続した。次いで、ドラム1の周面をバフ研磨した。バフ研磨後のドラム1の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.10個/mm2であった。その後、ドラム1の表面温度を温水循環装置により1℃/時間の変温速度で上昇させ、表面温度90℃で維持した。この際の最大温度勾配は最大で3.8℃/mであった。
一方、けん化度99.9モル%、重合度2,400のPVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)のチップ100質量部を35℃の蒸留水2,500質量部に24時間浸漬した後、遠心脱水を行い、PVA含水チップを得た。PVA含水チップ中の揮発分率は70質量%であった。そのPVA含水チップ333質量部(乾燥状態PVA換算で100質量部)に対して、グリセリン12質量部および界面活性剤(ラウリン酸ジエタノールアミド95質量%含有)0.3質量部を添加した後、よく混合して混合物とし、これを最高温度130℃のベント付き二軸押出機で加熱溶融した。得られた溶融状態のPVAを熱交換機で100℃に冷却した後、900mm幅のコートハンガーダイから表面温度を90℃にした前記ドラム1上に押出製膜して、さらに熱風乾燥炉内を通して乾燥して、幅方向両端部(耳部)をカットすることにより幅0.7mの長尺のPVAフィルムを連続的に製造した。なお、製膜速度は8m/分とした。製膜が安定した後のPVAフィルム(厚み60μm、長さ8,000m)は直径6インチのアルミニウム製の円筒状のコアに連続的に巻き取ってフィルムロールとした。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定と偏光フィルムの評価(20枚試験)を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.102個/m2(うち、回転周期欠点は0.031個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は100%、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.098個/m2(うち、回転周期欠点は0.029個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は100%であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.96倍と計算された。
PVAフィルムの長さを8,000mから3,000mに変更したこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム1の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.11個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定と偏光フィルムの評価(20枚試験)を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.110個/m2(うち、回転周期欠点は0.044個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は100%、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.121個/m2(うち、回転周期欠点は0.036個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は100%であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は1.10倍と計算された。
PVAフィルムの長さを8,000mから15,000mに変更したこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム1の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.10個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.108個/m2(うち、回転周期欠点は0.032個/m2)、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.160個/m2(うち、回転周期欠点は0.096個/m2)であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は1.48倍と計算された。
PVAの重合度を2,400から3,300に変更するとともに、PVAフィルムの長さを8,000mから15,000mに変更したこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム1の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.10個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定と偏光フィルムの評価(100枚試験)を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.088個/m2(うち、回転周期欠点は0.018個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの100枚試験における合格率は98%、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.118個/m2(うち、回転周期欠点は0.024個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの100枚試験における合格率は95%であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は1.34倍と計算された。
PVAの重合度を2,400から6,000に変更するとともに、PVAフィルムの長さを8,000mから15,000mに変更したこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム1の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.13個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定と偏光フィルムの評価(100枚試験)を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.067個/m2(うち、回転周期欠点は0.007個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの100枚試験における合格率は99%、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.074個/m2(うち、回転周期欠点は0.007個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの100枚試験における合格率は99%であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は1.10倍と計算された。
ドラム1に代えてドラム2を用いるとともに、PVAフィルムの長さを8,000mから3,000mに変更したこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム2の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.39個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定と偏光フィルムの評価(20枚試験)を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.172個/m2(うち、回転周期欠点は0.052個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は90%、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.224個/m2(うち、回転周期欠点は0.134個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は85%であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は1.30倍と計算された。
ドラム1の表面温度を90℃から110℃に変更するとともに、PVAフィルムの長さを8,000mから3,000mに変更したこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム1の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.13個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定と偏光フィルムの評価(20枚試験)を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.132個/m2(うち、回転周期欠点は0.053個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は95%、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.180個/m2(うち、回転周期欠点は0.090個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は90%であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は1.36倍と計算された。
変温速度を1℃/時間から5℃/時間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム1の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.10個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.110個/m2(うち、回転周期欠点は0.044個/m2)、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.122個/m2(うち、回転周期欠点は0.049個/m2)であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は1.11倍と計算された。
ドラム1に代えてドラム3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム3の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.73個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定と偏光フィルムの評価(20枚試験)を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.291個/m2(うち、回転周期欠点は0.175個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は80%、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.938個/m2(うち、回転周期欠点は0.750個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は50%であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は3.22倍と計算された。
ドラム1の表面温度を90℃から120℃に変更するとともに、PVAフィルムの長さを8,000mから3,000mに変更したこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム1の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.11個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定と偏光フィルムの評価(20枚試験)を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.252個/m2(うち、回転周期欠点は0.101個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は80%、巻き取り終了部分における欠点Aの数は0.358個/m2(うち、回転周期欠点は0.251個/m2)、巻き取り開始部分側のPVAフィルムから製造された偏光フィルムの20枚試験における合格率は65%であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は1.42倍と計算された。
実施例1において、ドラム1の表面温度を90℃から40℃に変更してPVAフィルムの製造を試みたが、ドラム上での乾燥が不十分であってフィルムをドラムから剥離することが困難であったため、各評価は行わなかった。
変温速度を1℃/時間から5℃/時間に変更したこと以外は比較例1と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム3の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.73個/mm2であった。
得られたフィルムロールを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの欠点の数の測定を行ったところ、巻き取り開始部分における欠点Aの数は0.332個/m2(うち、回転周期欠点は0.166個/m2)、巻き取り終了部分における欠点Aの数は1.349個/m2(うち、回転周期欠点は1.214個/m2)であった。巻き取り開始部分における欠点Aの数に対する巻き取り終了部分における欠点Aの数は4.06倍と計算された。
ドラム1をキャスト製膜設備に取り付け、温水循環装置と接続した。次いで、ドラム1の周面をバフ研磨した。バフ研磨後のドラム1の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.10個/mm2であった。その後、ドラム1の表面温度を温水循環装置により上昇させ、表面温度90℃で維持した。
一方、けん化度99.9モル%、重合度2,400のPVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)のチップ100質量部を35℃の蒸留水2,500質量部に24時間浸漬した後、遠心脱水を行い、PVA含水チップを得た。PVA含水チップ中の揮発分率は70質量%であった。そのPVA含水チップ333質量部(乾燥状態PVA換算で100質量部)に対して、グリセリン12質量部および界面活性剤(ラウリン酸ジエタノールアミド95質量%含有)0.3質量部を添加した後、よく混合して混合物とし、これを最高温度130℃のベント付き二軸押出機で加熱溶融した。得られた溶融状態のPVAを熱交換機で100℃に冷却した後、900mm幅のコートハンガーダイから表面温度を90℃にした前記ドラム1上に押出製膜して、さらに熱風乾燥炉内を通して乾燥して、幅方向両端部(耳部)をカットすることにより幅0.7mの長尺のPVAフィルムを連続的に製造した。なお、製膜速度は8m/分とした。製膜が安定した後のPVAフィルム(厚み60μm、長さ12,000m)は直径6インチのアルミニウム製の円筒状のコアに連続的に巻き取ってフィルムロールとした。
得られたフィルムロールの皺(PVAフィルムを巻き取る際に生じる皺)を上記した方法により評価したところAランクであった。また、得られたフィルムロールから巻き出したPVAフィルムを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの二乗平均粗さを測定したところ、ドラム1の表面に接した側の面における二乗平均粗さは4.1nmであり、他方の面における二乗平均粗さは1.9nmであった。両者の差は2.2nmと計算された。
上記のフィルムロールから巻き出されたPVAフィルムを予備膨潤・染色・固定処理・一軸延伸・洗浄・乾燥の順番で連続的に処理して偏光フィルムを作製した。すなわち、PVAフィルムを30℃の水中に60秒間浸して予備膨潤し、次いでヨウ素濃度0.4g/Lおよびヨウ化カリウム濃度40g/Lの35℃の水溶液(染色浴)中に110秒間浸漬して染色した。続いて、ホウ酸濃度30g/Lの30℃の水溶液(固定処理浴)中に90秒間浸漬して固定処理を行い、さらにホウ酸濃度4%の50℃の水溶液(延伸浴)中で長さ方向に延伸倍率5倍で一軸延伸を行った。その後、ホウ酸濃度15g/Lの30℃の水溶液(洗浄浴)中に10秒間浸漬して洗浄を行い、55℃で熱風乾燥して偏光フィルムとした。なお乾燥工程に入る前の最後の処理浴である洗浄浴を出るときの洗浄浴の液面とフィルム面とのなす角度をガイドロールの位置を変更することにより60°に設定すると共に、そのときのフィルムの上方側の面が使用したPVAフィルムにおいて小さい方の二乗平均粗さを有していた面となるようにした。
得られた偏光フィルムの染色斑を上記した方法により評価したところAランクであった。また、得られた偏光フィルムの異物を上記した方法により評価したところAランクであった。
ドラム1に代えてドラム2を用いたこと以外は実施例8と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム2の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.37個/mm2であった。
得られたフィルムロールの皺(PVAフィルムを巻き取る際に生じる皺)を上記した方法により評価したところBランクであった。また、得られたフィルムロールから巻き出したPVAフィルムを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの二乗平均粗さを測定したところ、ドラム2の表面に接した側の面における二乗平均粗さは6.7nmであり、他方の面における二乗平均粗さは2.0nmであった。両者の差は4.7nmと計算された。
上記のフィルムロールから巻き出されたPVAフィルムに対して、実施例8と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの染色斑を上記した方法により評価したところBランクであった。また、得られた偏光フィルムの異物を上記した方法により評価したところBランクであった。
ドラム1に代えてドラム3を用いたこと以外は実施例8と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム3の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.73個/mm2であった。
得られたフィルムロールの皺(PVAフィルムを巻き取る際に生じる皺)を上記した方法により評価したところAランクであった。また、得られたフィルムロールから巻き出したPVAフィルムを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの二乗平均粗さを測定したところ、ドラム3の表面に接した側の面における二乗平均粗さは28.3nmであり、他方の面における二乗平均粗さは2.6nmであった。両者の差は25.7nmと計算された。
上記のフィルムロールから巻き出されたPVAフィルムに対して、実施例8と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの染色斑を上記した方法により評価したところCランクであった。また、得られた偏光フィルムの異物を上記した方法により評価したところCランクであった。
ドラム1に代えてドラム4を用いたこと以外は実施例8と同様にして、PVAフィルムを連続的に製造しフィルムロールとした。なお、バフ研磨後のドラム4の表面(周面)における面積が200μm2以上のクラックの数を上記した方法によって測定したところ0.15個/mm2であった。
得られたフィルムロールの皺(PVAフィルムを巻き取る際に生じる皺)を上記した方法により評価したところCランクであった。また、得られたフィルムロールから巻き出したPVAフィルムを用いて、上記した方法によりPVAフィルムの二乗平均粗さを測定したところ、ドラム4の表面に接した側の面における二乗平均粗さは2.8nmであり、他方の面における二乗平均粗さは2.6nmであった。両者の差は0.2nmと計算された。
上記のフィルムロールから巻き出されたPVAフィルムに対して、実施例8と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの染色斑を上記した方法により評価したところAランクであった。また、得られた偏光フィルムの異物を上記した方法により評価したところAランクであった。
実施例8で得られたフィルムロールを用い、洗浄浴を出るときの洗浄浴の液面とフィルム面とのなす角度を60°から45°に変更したこと以外は実施例8と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの染色斑を上記した方法により評価したところAランクであった。また、得られた偏光フィルムの異物を上記した方法により評価したところBランクであった。
実施例8で得られたフィルムロールを用い、洗浄浴を出るときのフィルムの上方側の面が使用したPVAフィルムにおいて大きい方の二乗平均粗さを有していた面となるように変更したこと以外は実施例8と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの染色斑を上記した方法により評価したところAランクであった。また、得られた偏光フィルムの異物を上記した方法により評価したところCランクであった。
実施例8で得られたフィルムロールを用い、洗浄浴を出るときの洗浄浴の液面とフィルム面とのなす角度を60°から25°に変更したこと以外は実施例8と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの染色斑を上記した方法により評価したところAランクであった。また、得られた偏光フィルムの異物を上記した方法により評価したところCランクであった。
実施例8で得られたフィルムロールを用い、洗浄浴を出るときの洗浄浴の液面とフィルム面とのなす角度を60°から88°に変更したこと以外は実施例8と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの染色斑を上記した方法により評価したところAランクであった。また、得られた偏光フィルムの異物を上記した方法により評価したところCランクであった。
Claims (12)
- フィルム表面から窪んだ欠点であって面積が400μm2以上で深さが0.3μm以上の欠点の数が0.25個/m2以下であるポリビニルアルコール系重合体フィルム。
- 前記欠点の数が0.15個/m2以下である、請求項1に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
- ポリビニルアルコール系重合体フィルムに含まれるポリビニルアルコール系重合体の重合度が3,000以上10,000以下である、請求項1または2に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
- 長尺のポリビニルアルコール系重合体フィルムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
- 長さが6,000m以上である、請求項4に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
- 前記欠点が、フィルムの長さ方向に実質的に一定の間隔でフィルムの幅方向に実質的に同一の位置に存在する欠点を含む、請求項4または5に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
- 長尺のポリビニルアルコール系重合体フィルムが連続的に巻き取られてなるフィルムロールであって、フィルム表面から窪んだ欠点であって面積が400μm2以上で深さが0.3μm以上の欠点について、ポリビニルアルコール系重合体フィルムの巻き取り開始部分における当該欠点の数に対するポリビニルアルコール系重合体フィルムの巻き取り終了部分における当該欠点の数が1.4倍以下であるフィルムロール。
- 前記欠点の数が0.25個/m2以下である、請求項7に記載のフィルムロール。
- 前記欠点の数が0.15個/m2以下である、請求項7に記載のフィルムロール。
- ポリビニルアルコール系重合体フィルムに含まれるポリビニルアルコール系重合体の重合度が3,000以上10,000以下である、請求項7〜9のいずれか1項に記載のフィルムロール。
- ポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さが6,000m以上である、請求項7〜10のいずれか1項に記載のフィルムロール。
- 前記欠点が、フィルムの長さ方向に実質的に一定の間隔でフィルムの幅方向に実質的に同一の位置に存在する欠点を含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載のフィルムロール。
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