JP2006082261A - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法であって、長時間製膜しても、フィルムに光学的な欠陥の発生がなく、延伸後のリタデーションの均一性に優れる光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 溶融流延製膜法により製膜される光学フィルムの製造方法において、押出し機から溶融押し出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を冷却ドラム4により冷却するに際して、有機溶媒を冷却ドラム4の表面に付着させ、ついで拭く手段23により冷却ドラム4の表面を拭いて有機溶媒と共に冷却ドラム表面の汚れや異物を除去し、ついでこの拭き取り後の冷却ドラム表面部分に、押出し機から溶融押し出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を付着させて冷却することにより、光学フィルムを製造する。有機溶媒は、光学フィルムを構成する樹脂を常温で膨潤するが、溶解しない有機溶媒であるのが、好ましい。
【選択図】 図3

Description

本発明は、光学用フィルムの製造方法、特に溶融流延製膜法で製膜された光学フィルムの製造方法に関するものである。
液晶表示装置は、従来のCRT表示装置に比べて、省スペース、省エネルギーであることからモニターとして広く使用されている。さらにTV用としても普及が進んできている。このような液晶表示装置には、偏光フィルムや位相差フィルムなどの種々な光学フィルムが使用されている。
偏光フィルムは、延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の片面または両面に、セルロースエステルフィルムを保護膜として積層されている。また、位相差フィルムは、視野角の拡大やコントラストの向上などの目的で用いられており、ポリカーボネ−ト、脂環式構造を有する重合体、セルロースエステルなどのフィルムを延伸するなどしてリタデーションが付与されたものである。光学補償フィルムとも呼ばれることがある。
これらの光学フィルムでは、光学的な欠陥がなく、リタデーションが均一であること(特に遅相軸のばらつきがないこと)が要求される。特に、モニターやTVの大型化や高精細化が進み、これらの要求品質はますます厳しくなってきている。
光学フィルムの製造方法には、大別して溶液流延製膜法と溶融流延製膜法とがある。前者は、ポリマーを溶媒に溶かして、その溶液を支持体上に流延し、溶媒を蒸発し、さらに必要により延伸してフィルムにする方法である。膜厚の均一性に優れるなどの点から広く採用されてきたが、溶媒の乾燥のため、設備が大型化するなどの問題点を抱えていた。後者は、ポリマーを加熱溶融して支持体上に流延し、冷却固化し、さらに必要により延伸してフィルムにする方法であり、溶媒を乾燥する必要がないので設備が比較的コンパクトにできるとの利点があるが、膜厚の均一性に劣るという問題点があった。
溶融流延製膜法を用いる光学フィルムの製造方法としては、例えばつぎのような特許文献がある。
特開平10−10321号公報 特許文献1に開示されている溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法は、溶融樹脂を冷却ロールと無端ベルトで円弧上に挟み込んで冷却する方法である。この特許文献1の方法によれば、リタデーションが20nm以下、リタデーションのムラが±5nm以内でありかつ膜厚の均一性の良好な光学フィルムが得られることが記載されている。 特開2002−212312号公報 特許文献2に開示されている溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法は、溶融樹脂を2つの冷却ドラムで挟み込んで冷却する方法である。この特許文献2の方法によれば、膜厚ムラが5μm以下、リタデーションが10nm以下、リタデーションのムラが2nm以下の光学フィルムが得られることが記載されている。 特開2003−236915号公報 特許文献3に開示されている溶融流延製膜法による非晶性熱可塑性樹脂シート(光学フィルム)の製造方法は、溶融した熱可塑性樹脂を特定の温度と時間の関係で、2本の冷却ドラムの周に沿って順に通過させる方法である。この特許文献3の方法によれば、膜厚ムラ10μm以下、リタデーションが10nm以下を有する光学フィルムが得られることが記載されている。 特開2002−86474号公報 特許文献4に開示されているセルロースエステルフィルムの製造方法では、ロール表面の清掃手段を有する溶液流延製膜装置を用いていた。
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2の方法によれば、溶融樹脂を冷却ドラムで挟み込むことで溶融樹脂からの揮発成分などが封じ込められるためか、長時間製膜を続けると、フィルムに周期状の光学的な欠陥ができるという問題があることが判明した。さらに、長時間製膜後に得られたフィルムを延伸するとリタデーションムラが大きくなるとの問題があることが判明した。
また、特許文献3の方法によれば、冷却ドラムに樹脂のガラス転移温度(Tg)近傍で長時間冷却ドラムと接触するためか、上記と同様に、長時間製膜後にフィルムに周期状の光学的欠陥ができるという問題や、得られたフィルムを延伸するとリタデーションムラが大きくなるとの問題があることが判明した。
樹脂シート(フィルム)の光学的な欠陥は、冷却ドラムに汚れや異物が強くくっ付いて、「押され傷」と呼ばれる外観的な欠陥となる。また、リタデーションムラは、液晶表示装置の画像品質が劣化してしまう。このような問題が発生した場合、生産を中断し、清掃するなどが必要となり、生産安定性を著しく損ねることになり、改善が望まれていた。
さらに、特許文献4の方法は、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造には有効であったが、溶融流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造には、必ずしも効果が充分でなかった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法であって、長時間製膜しても、フィルムに光学的な欠陥の発生がなく、延伸後のリタデーションの均一性に優れる光学フィルムの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、溶融流延製膜法により製膜される光学フィルムの製造方法において、長時間製膜後のフィルムの光学的な欠陥、延伸後のリタデーションのムラの発生が、冷却ドラムの表面特性と関わりがあることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明による光学フィルムの製造方法は、溶融流延製膜法により製膜される光学フィルムの製造方法において、押出し機から溶融押し出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を冷却ドラムにより冷却するに際して、有機溶媒を冷却ドラムの表面に付着させ、ついで拭く手段により冷却ドラムの表面を拭いて有機溶媒と共に冷却ドラム表面の汚れや異物を除去し、ついでこの拭き取り後の冷却ドラム表面部分に、押出し機から溶融押し出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を付着させて冷却することにより、光学フィルムを製造することを特徴とするものである。
請求項2の発明による光学フィルムの製造方法は、上記請求項1記載の光学フィルムの製造方法であって、有機溶媒が、光学フィルムを構成する樹脂を常温で膨潤するが、溶解しない有機溶媒であることを特徴とするものである。
請求項3の発明による光学フィルムの製造方法は、上記請求項1記載の光学フィルムの製造方法であって、有機溶媒が、有機溶媒が、炭素数1〜6の低級アルコールを10〜50%含むことを特徴とするものである。
請求項4の発明による光学フィルムの製造方法は、上記請求項1記載の光学フィルムの製造方法であって、有機溶媒が、拭く手段が、不織布を具備することを特徴とするものである。
請求項5の発明による光学フィルムの製造方法は、上記請求項1記載の光学フィルムの製造方法であって、有機溶媒が、有機溶媒を付着させる手段が、有機溶媒を含んだ不織布を具備することを特徴とするものである。
請求項6の発明による光学フィルムの製造方法は、上記請求項1記載の光学フィルムの製造方法であって、有機溶媒が、冷却ドラムが、表面に非晶質クロムメッキ被膜を設けた冷却ドラムであることを特徴とするものである。
請求項7の発明による光学フィルムの製造方法は、上記請求項1記載の光学フィルムの製造方法であって、有機溶媒が、熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有ポリマーであることを特徴とするものである。
請求項8の発明による光学フィルムの製造方法は、上記請求項1記載の光学フィルムの製造方法であって、有機溶媒が、熱可塑性樹脂が、セルロースエステルであることを特徴とするものである。
本発明によれば、溶融流延製膜法により光学フィルムを長時間製造しても、フィルムに冷却ドラムによる光学的な欠陥の発生がなく、延伸後のリタデーションのムラの改良され、リタデーションの均一性に優れた光学フィルムを製造することができ、さらに、本発明の光学フィルムを用いた偏光板を用いることで、良好な視野角特性を有する液晶表示装置を提供することができるという効果を奏する。
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明による光学フィルムの製造方法は、溶融流延製膜法により製膜される光学フィルムの製造であって、押出し機から溶融押し出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を冷却ドラムにより冷却するに際して、有機溶媒を冷却ドラムの表面に付着させ、ついで拭く手段により冷却ドラムの表面を拭いて有機溶媒と共に冷却ドラム表面の汚れや異物を除去し、ついでこの拭き取り後の冷却ドラム表面部分に、押出し機から溶融押し出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を付着させて冷却することにより、光学フィルムを製造するものである。
本発明では、溶融流延製膜法により光学フィルムを製造するに際して、冷却ドラムの軸方向に移動しながら有機溶媒を冷却ドラムに付着させ、続けて隣接した冷却ドラム表面を拭きながら製造する。
本発明で用いる有機溶媒(有機溶剤)としては、光学フィルムを構成する樹脂を常温では膨潤できるが、溶解はできない有機溶媒であることが好ましい。
ここで、有機溶媒が樹脂を膨潤するか、溶解するかは、目視で容易に判別できる。本発明では、溶媒100重量部に樹脂15重量部を攪拌しながら30分間混合し、溶媒中の樹脂の状態を目視で判別した。
本発明において使用する有機溶媒の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン及びブロモプロパン等を挙げることができる。中でも、酢酸メチル、アセトンまたは塩化メチレンが、本発明の効果が高度に得られるので、好ましい。
なお、これらの溶媒単独では樹脂を溶解してしまう場合は、樹脂を溶解しないその他の溶媒との混合溶媒とすることで、常温では膨潤はするが、溶解はしないような混合有機溶媒を調整できる。樹脂を溶解しないその他の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、シクロヘキサノール等の炭素数1〜6個の低級アルコールを含有させることが好ましい。炭素数1〜6個の低級アルコールの有機溶媒中での割合は、用いる樹脂の種類や溶媒によって溶解しないが膨潤する範囲に適宜調整すればよい。例えば、用いる樹脂がセルロースエステルの場合、有機溶媒中の割合は10〜50%であることが好ましい。この様に、有機溶媒に炭素数1〜6個の低級アルコールを含有させることで、本発明の効果であるところのレタデーションムラの小さい光学フィルムを得ることができる。
上記の有機溶媒を用いることで、得られる光学フィルムのレタデーションのムラを小さく抑えることができる。
このような効果が得られる理由についての詳細は不明であるが、溶融流延製膜法では、樹脂を溶解する有機溶媒(有機溶剤)を用いると、冷却ドラム上の汚れ(樹脂成分)は有機溶媒に溶解してしまい、続いて拭っても、塗り広がるだけで除去できず、一方、樹脂を膨潤するだけの有機溶媒を用いることで、効果的に汚れ(樹脂成分)が除去できることにより、溶融樹脂と冷却ドラムとの密着均一性が向上し、冷却ムラが改善できるためではないか、と推測している。
本発明では、冷却ドラム表面に有機溶媒を冷却ドラムの軸方向に移動しながら付着させ、続けて、隣接位置において冷却ドラム表面の有機溶媒と汚れを拭き取りながら、樹脂フィルムを製造する。
有機溶媒を冷却ドラム表面に付着させて、続けて拭き取る手段は、公知の方法で実施できる。例えば、特開2002−86474号公報記載のロールの清掃手段を好適に用いることができる。清掃手段に使用する有機溶媒を冷却ドラムに付着させる手段は、冷却ドラムと接触して擦り切れて、くず等を生じるものでなければ、制限なく使用でき、例えば不織布からできているパッドや布(シート)が好ましく用いられる。不織布の材質としては、セルロース系、ポリウレタン系、ポリエステル系、アクリル系等が好ましい。市販の不織布としては、小津産業社製のベンコット(登録商標)を好ましく用いることができる。
また、拭く手段に使用するものの材質としては、上記同様、拭いている間にゴミや摺りくずが生じないようなパッドがよく、例えば、不織布からできているものが好ましい。
本発明で用いる有機溶媒を冷却ドラム(ロール)に付着させる手段と、その後に隣接して拭く手段とは、お互いに対になっているもので、その対が1本の冷却ドラム(ロール)の回転方向に向かって稼働し得るようになっていることが好ましい。つまり、フィルムが冷却ドラムから離れたすぐ後に有機溶媒を冷却ドラムに付着し、それに続いて拭くのである。付着した有機溶媒が汚れを膨潤し、それが乾かないうちに拭くようになっている。フィルム幅全体を一度に有機溶媒を冷却ドラムに付着させるのと、拭くのと両方を行なうのもよいが、これでは装置が大がかりになり、作業性が悪くなるため、上記のように連続して稼働できるものの方がよい。冷却ドラムが複数ある場合は、少なくとも1個に対して行なうことにより、効果が得られるが、もちろん全ての冷却ドラムに対して行なうことが好ましい。
つぎに、図面を参照して本発明を説明する。本発明の光学フィルムの製造方法は溶融流延製膜法によるものである。ここで、溶融流延製膜法としては、膜厚ムラやリタデーションのムラを小さくできるTダイを用いた方法が好ましい。Tダイを用いた押出し方法では、ポリマーを溶融可能な温度で溶融し、図1に示すように、Tダイ1からフィルム状(シート状)の溶融樹脂2を第1の冷却ドラム3上に押し出す。引き続いて、第2の冷却ドラム4、第3の冷却ドラム5によってフィルム状(シート状)の溶融樹脂2を冷却固化して、第3の冷却ドラム5から樹脂フィルムを剥離する。図示の実施形態では、冷却ドラムが3つ用いられており、第2の冷却ドラム4に、本発明による可動式の清掃手段20が具備されている。
図2は、可動式の清掃手段20と冷却ドラム4を側面から見た図である。冷却ドラム4の表面を、該冷却ドラム4の軸方向に移動する清掃手段20によって清掃する。25は可動式の清掃手段のレールを有する台である。
図3は、図2の可動式清掃手段20と冷却ドラム4を正面から見た図である。清掃手段20は、有機溶媒を冷却ドラム4に付着させる有機溶媒付着用パッド21と、拭く用パッド23とを有している。22は有機溶媒付着用パッド21に有機溶媒を供給する有機溶媒溜まりである。この有機溶媒溜まり22には、図示していない有機溶媒供給源から有機溶媒が送られてくるようになっている。有機溶媒付着用パッド21は有機溶媒溜まり22から有機溶媒を毛細管現象で吸い上げ、冷却ドラム4に有機溶媒を付着させる。24はこれらのパッド21,23を冷却ドラム4の軸方向に移動する可動台で、レールを有する基台25の上を、図示していない動力伝導装置により移動するようになっている。有機溶媒が付着した冷却ドラム4の表面は、つぎに拭く用パッド23で汚れを拭き取る。
なお、有機溶媒付着用パッド21と拭く用パッド23とを有する清掃手段20は、1つの冷却ドラム4に対して少なくとも1つ設けられておれば、良い。
本発明で用いる冷却ドラムは、表面に非晶質クロムメッキ被膜を設けた冷却ドラムであることが好ましい。長時間製膜後であっても、押され傷の発生がなく、延伸後のリタデーション均一性の良好な光学フィルムが得られるのである。
非晶質クロムメッキ被膜は、従来の硬質クロムメッキ被膜が規則的な原子配列、つまり、結晶から構成されているのに対して、規則的な原子配列が欠如した非晶質金属の状態にあり、その耐腐食性が大幅に向上している。非晶質クロムメッキについては、森河、横井,「最近のクロムめっき技術」(http://www.tri.pref.osaka.jp/group/surface)に詳しく報告されているように、X線回折によるクロムの(110)面からの回折強度が小さいことや示差走査熱量計(DSC)での測定によるその第一発熱ピークが大きいことからその非晶性が検出できる。また、非晶質クロムメッキは、シュウ酸浴やギ酸浴、あるいはクエン酸浴などから得ることができる。被膜中に1.4%以上、好ましくは2.0〜3.0%の炭素を含ませることで、被膜の硬度が高くでき、耐磨耗性が向上でき、好ましい。具体的にはオテック株式会社製クロアモール(登録商標)などが挙げられる。
冷却ドラム表面の20℃における表面エネルギーは70〜100mN/mであることが好ましい。冷却ドラム表面の表面エネルギーをこの範囲とすることで、リタデーションのばらつきが小さく、押され傷の少ない光学フィルムを得ることができる。表面エネルギーは、水、ニトロメタン及びヨウ化メチレンとの接触角を測定し、これらの値からヤング・フォークズの式を用いて算出したものである。
冷却ドラムの表面粗さRyは0.6μm以下であることが好ましい。ここにいう表面粗さRyは、JIS規格B0601により定義されている「最大高さRy」をいう。冷却ドラムの表面粗さRyを0.6μm以下とすることにより、冷却ドラムへの異物付着が防止できるのである。さらに表面粗さRyが0.4μm以下、特に0.2μm以下が好ましく、平滑であるほどよい。
冷却ドラム表面のビッカース硬度は800〜1800であることが好ましい。冷却ドラム表面のビッカース硬度をこの範囲とすることで、冷却ドラムに傷がつき難く、かつ異物付着を防止することができる。ビッカース硬度のより好ましい範囲は1000〜1500である。
本発明の光学フィルムの製造方法に用いる熱可塑性樹脂は、溶融流延製膜法により製膜可能であれば特に限定されない。例えば、ポリカーボネート、脂環式構造含有ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステルなどが挙げられる。中でも、光弾性係数が小さいことから、セルロースエステルや脂環式構造含有ポリマーが好ましい。
セルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましい。上記セルロースエステルのアセチル基の置換度は、少なくとも1.5以上であることが、得られるフィルムの寸法安定性に優れるので好ましい。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。セルロースエステルの分子量は、数平均分子量として50,000〜300,000、とくに60,000〜200,000であることが、得られるフィルムの機械的強度が強くできるので好ましい。
脂環式構造含有ポリマーとは、繰り返し単位中に、脂環式構造を有するポリマーであり、脂環式構造は主鎖、側鎖のいずれにあってもよい。脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、熱安定性に優れることからシクロアルカン構造が好ましい。
脂環式構造含有ポリマーは、ノルボルネン環構造を有するモノマー、モノ環状オレフィン、環状共役ジエン、ビニル芳香族化合物及びビニル脂環式炭化水素化合物等を含むモノマーを、メタセシス開環重合や付加重合などの公知の重合方法で重合し、必要に応じて炭素−炭素不飽和結合を水素添加することにより得ることができる。
本発明に用いる脂環式構造含有ポリマーは、シクロヘキサン溶液(ポリマーが溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、25,000〜50,000であることが好ましく、30,000〜45,000であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、1.2〜3.5であることが好ましく、さらに1.5〜3.0であることが好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)は、80〜170℃であることが好ましい。脂環式構造含有ポリマーの特性を上記の範囲にすることで、良好な耐熱性と成形加工性とを得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂中には、種々の目的で可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤、帯電防止剤、難燃剤、染料及び油剤などの添加剤を含有させることができる。
可塑剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルホスフェート、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル系可塑剤、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート及びジ−2−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート及びブチルフタリルブチルグリコレート等のグリコール酸エステル系可塑剤、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸系可塑剤、ジプロピレングリコールベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、1,3−ジブチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート、トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパントリベンゾエート等の多価アルコールエステル系可塑剤、その他にトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)などを挙げることができる。必要に応じて上記のうち2種類以上の可塑剤を併用して用いてもよい。これらの添加量は、可塑剤の効果とブリードアウトの兼ね合いから、熱可塑性樹脂に対して1〜30重量%が好ましい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が適当であり、その具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。とくに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、その効果を得るために、熱可塑性樹脂に対し、重量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがとくに好ましい。
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不充分の場合があり、逆に多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
本発明では、フィルムの滑り性を付与するために微粒子を添加することが好ましい。本発明で用いられる微粒子としては、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物のどちらでもよく、例えば、無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。中でもヘイズを小さく抑えることができることから、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)等の商品名を有する市販品が好ましく使用できる。
本発明の光学フィルムは、溶融流延製膜法で製造される。溶融流延製膜法としては、Tダイを用いた方法やインフレーション法などの溶融押出し法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などがある。中でも、厚さムラが小さく、50〜500μm程度の厚さに加工しやすく、かつ、膜厚ムラやリタデーションのムラを小さくできるTダイを用いた方法が好ましい。Tダイを用いた押出し方法は、前述したポリマーを溶融可能な温度で溶融し、Tダイからフィルム状(シート状)に冷却ドラム上に押し出し、冷却固化して冷却ドラムから剥離する方法であり、得られるフィルムの厚み精度が優れており、本発明でも好ましく用いることができる。
溶融押出しの条件は他のポリエステルなどの熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行なうことができる。例えば、熱風や真空または減圧下で乾燥したセルロースエステルを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状(シート状)に流延し、冷却ドラム上で固化させる。供給ホッパーから押出し機へ導入する際は、減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行なうことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、ろ過精度を調整できる。ろ過精度を粗、密と連続的に複数回繰り返した多層体としたものが好ましい。また、ろ過精度を順次上げていく構成をとったり、ろ過精度の粗、密を繰り返す方法をとることで、フィルターのろ過寿命が延び、異物やゲルなどの補足精度も向上できるので好ましい。
ダイに傷や異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインと呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出し機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。ダイ周辺に樹脂から揮発成分が析出しダイラインの原因となる場合があるので、揮発成分を含んだ雰囲気は吸引することが好ましい。また、静電印加等の装置にも析出する場合があるので、交流を印加したり、他の加熱手段で析出を防止することが好ましい。
可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ドラムの温度は熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下が好ましい。冷却ドラムへ樹脂を密着させるために静電印加により密着させる方法、風圧により密着させる方法、全幅あるいは端部をニップして密着させる方法、減圧で密着させる方法などを用いることが好ましい。
また、本発明では、表面の微小な凹凸やダイラインなどが矯正されて表面の平滑な、厚みむらが少ない光学フィルムを得るために、下記に挙げる3つの方法も好ましく用いることができる。
1つ目は、押出し機から押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラムの2本の冷却ドラムの周に沿って順に通過させる方法である。この場合、第1冷却ドラムでの樹脂接触時間をt1(秒)、第1冷却ドラムを離れるときの溶融状体の熱可塑性樹脂の温度をT1(℃)、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたとき、t1×(T1−Tg)を、−50以上+20以下とすることが好ましい。
2つ目は、押し出したフィルム状(シート状)の溶融樹脂を、熱可塑性樹脂の溶融温度より低い温度に温度調節した冷却ロールと、圧力制御された複数のロールで弛まないように張力をかけた無端ベルトとの間で、円弧状に狭圧しながら冷却する方法である。
3つ目は、Tダイから押し出されるフィルム状(シート状)の溶融樹脂を2つの冷却ドラムで挟み込んで冷却する方法である。2つの冷却ドラムのうち、一方が、表面が平滑な剛体性の金属ドラムであり、もう一方が、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルドラムであるのが特に好ましい。
シートの厚さは特に制限はなく、延伸後に所望の厚さになるように設定すればよく、50〜500μmが好ましい。もちろん厚さムラは小さいほど好ましく、全面において±5%以内、好ましくは±3%以内、より好ましくは±1%以内である。
このような溶融流延製膜法で成形された熱可塑性樹脂シートは、溶液流延製膜法で成形された樹脂シートと異なり、厚み方向リタデーション(Rt)が小さいとの特徴があり、このような熱可塑性樹脂シートを延伸することにより、面内方向リタデーション(Ro)を発現し易くできるとの特徴も有する。延伸倍率を大きくする必要がないので、白濁のない透明性に優れた熱可塑性樹脂からなる光学フィルムが得られるのである。
ついで、得られたシートを一軸方向に延伸する。延伸により分子が配向される。延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。延伸方向は長さ方向でも幅手方向でも任意の方向(斜め方向)でも可能であるが、延伸方向を幅手方向とすることにより、偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。幅手方向に延伸することにより、熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルムの遅相軸は幅手方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常幅手方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、シートを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると、所望のリタデーションが得られない場合があり、逆に大きすぎると、破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると、破断し、また高すぎると、所望のリタデーションが得られない場合がある。
上記の方法で作製した熱可塑性樹脂フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることにより、フィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、本発明において使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。膜厚は、所望の厚さになるように、押出し流量、ダイスの口金のスリット間隙、冷却ドラムの速度等をコントロールすることにより、調整できる。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
仕上がりのフィルムを巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており、製品として使用できないので切除されて、原料として再利用される。
以上のようにして得られた幅手方向に延伸された熱可塑性樹脂フィルムは、延伸により分子が配向されて、一定の大きさのリタデーションを持つ。通常、フィルムの面内リタデーション(Ro)は20〜200nm、厚み方向リタデーション(Rt)は90〜400nmであり、フィルムの面内リタデーション(Ro)が20〜100nm、厚み方向リタデーション(Rt)が90〜200nmであることが好ましい。
また、RtとRoの比Rt/Roは、0.5〜2.5が好ましく、特に1.0〜2.0が好ましい。
なお、フィルムの遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nz、フィルムの膜厚をd(nm)とすると、
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
として表わされる。
リタデーションのバラツキは小さいほど好ましく、通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±2nm以下である。
リタデーションの面内でのバラツキや厚さムラは、それらの小さな延伸前のシートを用いるほか、延伸時にシートに応力が均等にかかるようにすることにより、小さくすることができる。そのためには、均一な温度分布下、好ましくは±5℃以内、さらに好ましくは±2℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内に温度を制御した環境で延伸することが望ましい。
遅相軸方向の均一性も重要であり、フィルム幅手方向に対して、角度が−5〜+5°であることが好ましく、さらに−1〜+1°の範囲にあることが好ましく、特に−0.5〜+0.5°の範囲にあることが好ましい。
本発明の光学フィルムは幅手方向に遅相軸を有しているため、偏光フィルムと、裁断することなく長尺ロール同士で貼り合わすことができ、偏光板の生産性が飛躍的に向上する。
本発明の光学フィルムは、偏光フィルムの少なくとも片面に貼り合わせることにより、楕円偏光板とすることができる。
偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、充分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
本発明の偏光板は、上記偏光板に本発明の光学フィルムを貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の光学フィルムを保護フィルムも兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。
さらに、長さ方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の光学フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
このようにして得られた本発明の偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
ノルボルネン系開環ポリマーの水素添加物 100重量部
(日本ゼオン株式会社製、商品名ゼオノア1420R、ガラス転移温度140℃)
トリフェニルホスフェート 10重量部
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール 0.005重量部
ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−
t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕 0.005重量部
図1を参照すると、乾燥したノルボルネン系開環ポリマーの水素添加物を含む上記材料の混合物を1軸押出し機を用いて、溶融温度265℃でTダイ1からフィルム状(シート状)に溶融押し出しし、フィルム状の樹脂溶融物2を直径150mmの第1冷却ドラム(温度135℃)3、直径200mmの第2冷却ドラム(温度125℃)4、直径200mmの第3冷却ドラム(温度80℃)5に順次密着させて搬送しながら冷却固化させた。冷却ドラムと溶融樹脂との接触時間は、いずれも3秒間とした。
なお、冷却ドラム3〜5には、表面エネルギー85mN/m、表面粗さRy0.6μm、ビッカース硬度800の硬化クロムメッキ被膜表面を有しているものそれぞれを使用した。清掃手段は、図2と図3に示す清掃手段を、第2冷却ドラム4に具備させて使用し、有機溶媒は、塩化メチレン/エタノール(50%/50%)の混合溶媒とした。
この条件で、1週間連続運転し、得られた樹脂シートをテンター(図示略)を用いて幅手方向に160℃で1.5倍幅手方向に延伸した。ついで、テンタークリップに把持したまま50℃まで冷却し、その後クリップから開放し、膜厚60μmの光学フィルムを得た。
得られた光学フィルムについて、下記のようにして、面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)、面内方向リタデーション(Ro)ムラ、厚み方向リタデーション(Rt)ムラ、押され傷の評価を行なった。得られた結果を、下記の表1に示した。
押され傷
得られたフィルムを目視で観察し、下記の基準(ランク)で評価した。
A:押され傷なし
B:50μm以上の大きさの押され傷なし、50μm未満の押され傷が1〜30個
C:50μm以上の大きさの押され傷1〜10個
D:50μm以上の大きさの押され傷11個以上
面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)、及びRoムラ、Rtムラ
得られたシートについて、長さ方向50mmごとに10か所について、下記のようにして、面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)を測定し、平均値を面内方向リタデーション(Ro),厚み方向リタデーション(Rt)とした。また、最大値と最小値の差を、それぞれRoムラ、Rtムラとした。
自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて23℃、湿度55%RHの雰囲気下で590nmの波長において3次元屈折率測定を行ない、遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nzを求める。厚み方向リタデーション(Rt)及び面内方向リタデーション(Ro)を下記の式から算出する。
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt={(Nx+Ny)/2−Nz}
ここで、フィルムの遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nz、フィルムの膜厚をd(nm)である。
比較例1
実施例1で清掃手段を使用しなかった以外は、実施例1の場合と同様にして行なった。
比較例2
実施例1で有機溶媒を塩化メチレン100%に変更した以外は、実施例1の場合と同様にして行なった。
比較例3
実施例1で有機溶媒を塩化メチレン/エタノール(30%/70%)の混合溶媒とした以外は、実施例1の場合と同様にして行なった。
実施例2
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基の置換度1.8、プロピオニル基の置換度
0.8、数平均分子量95,000)
トリフェニルフォスフェイト 10重量部
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール 0.005重量部
ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−
t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕 0.005重量部
60℃で24時間真空乾燥済の上記セルロースアセテートプロピオネートを含む材料の混合物を2軸式押出し機を用いて250℃で溶融混合し、ペレット化した。このペレットを用いて溶融温度250℃で、図1に示すTダイ1からフィルム状(シート状)に溶融押し出しし、フィルム状の樹脂溶融物2を30℃の冷却ドラム4上に密着させて搬送しながら冷却固化させ、セルロースエステル樹脂シートを得た。
なお、冷却ドラム3〜5は、表面エネルギー80mN/m、表面粗さRy0.4μm、ビッカース硬度1200の非晶質クロムメッキ被膜表面を有しているものを使用した。清掃手段は、図2と図3に示す清掃手段を使用し、有機溶媒は塩化メチレン/エタノール (50%/50%)の混合溶媒を用いた。
上記の条件で1週間運転し、得られた樹脂シートをテンターを用いて幅手方向に160℃で1.5倍幅手方向に延伸した。ついで、テンタークリップに把持したまま30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、膜厚60μmの位相差フィルムとしてのセルロースエステルフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)、面内方向リタデーション(Ro)ムラ、厚み方向リタデーション(Rt)ムラ、押され傷の評価を行なった。得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。
Figure 2006082261
実施例3
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素1重量部、ホウ酸4重量部を含む水溶液100重量部に浸漬し、50℃で4倍に縦延伸して偏光フィルムを作った。一方、保護フィルムとして80μmのコニカタック(コニカ製、セルローストリアセテートフィルム)を60℃、2mol/lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液中に2分間浸漬し水洗した後、100℃で10分間乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルローストリアセテートフィルムを作った。得られた偏光フィルムとセルローストリアセテートフィルムを完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液からなる接着剤を用いて貼り合わせ片面に保護フィルムを有する偏光フィルムを作製した。一方、本発明の実施例1で得られた光学フィルムとしての脂環式構造含有ポリマーフィルムを50dyn/cmの処理量でコロナ処理を行ない、完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として用いて上記保護フィルム付偏光フィルムの保護フィルムのない側に貼り合わせ、偏光板を作製した。なお、光学フィルムの幅手方向と偏光フィルムの透過軸(幅手方向)とのなす角度は、平行になるように貼り合わせた。
得られた偏光板を用いて下記のようにして視野角特性の評価を行なったところ、鮮明な画像が観察され、良好な視野角特性であった。
視野角特性
垂直配向型液晶セルについて下記の方法により、目視により評価した。
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(VL−1530S、富士通株式会社製)の偏光板を剥がし、その代わりに、実施例3で作製した偏光板を観察者側の偏光板の透過軸が上下方向、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように粘着剤で貼り合わせた液晶表示装置を用いて、画面の法線方向に対して80度傾けた方向から画像を観察した。
本発明の光学フィルムの製造方法を実施する溶融流延製膜装置の一例を示す概略フローシートである。 本発明の光学フィルムの製造方法において用いる可動式の清掃手段と冷却ドラムの具体例を示す要部拡大側面図である。 同要部拡大正面図である。
符号の説明
1:ダイス
2:溶融状態の熱可塑性樹脂
3:第1冷却ドラム
4:第2冷却ドラム
5:第3冷却ドラム
6:熱可塑性樹脂シート
20:清掃手段
21:有機溶媒付着用パッド
22:有機溶媒溜まり
23:拭く用パッド
24:可動台
25:レールを有する台

Claims (8)

  1. 溶融流延製膜法により製膜される光学フィルムの製造方法において、押出し機から溶融押し出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を冷却ドラムにより冷却するに際して、有機溶媒を冷却ドラムの表面に付着させ、ついで拭く手段により冷却ドラムの表面を拭いて有機溶媒と共に冷却ドラム表面の汚れを除去し、ついでこの拭き取り後の冷却ドラム表面部分に、押出し機から溶融押し出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を付着させて冷却することにより、光学フィルムを製造することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 有機溶媒が、光学フィルムを構成する樹脂を常温で膨潤するが、溶解しない有機溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 有機溶媒が、炭素数1〜6の低級アルコールを10〜50%含むことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 拭く手段が、不織布を具備するものであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 有機溶媒を付着させる手段が、有機溶媒を含んだ不織布を具備することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 冷却ドラムが、表面に非晶質クロムメッキ被膜を設けた冷却ドラムであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 熱可塑性樹脂が、セルロースエステルであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
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