JP5119683B2 - 樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

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本発明は、樹脂フィルムの製造方法、樹脂フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。
厚さが60μm以下の薄膜の樹脂フィルムを製膜する方法としては、溶液流延法、溶融押し出し法が知られている。溶液流延法は、原料の樹脂を溶媒に溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えて調製したドープを、水平式のエンドレスの金属ベルト又は回転するドラムなどの無端支持体の上に、ダイスより吐出し、流延した後、無端支持体上である程度まで溶媒を除去した後、無端支持体支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶媒を除去し製造する方法である。
溶融押し出し法は、樹脂を熱で溶融し、高温になった溶融樹脂をダイス(一般にTダイが使用されている)の押し出し口から溶融した樹脂を押し出して、冷却ロール上で製膜し、フィルムの温度を下げるための搬送工程を得てフィルムを巻き取ることで製造する方法である。
これらの方法で製造された薄膜の樹脂フィルムの用途の一つとして光学用フィルムが挙げられる。本発明では、液晶表示装置(LCD)に使用する偏光板の保護フィルム、液晶表示装置(LCD)等に用いられる位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム等の各種機能フィルム又有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム、プラスチック基板、写真用支持体、或いは動画用セルや光学フィルタ、更にはOHPフィルムを含め光学用フィルムと言う。
光学用フィルムは用途により求められる機能は異なるが、例えば、偏光板保護フィルムとしては、透明で優れた物理的、機械的性質を持ち、温湿度に対する寸度変化が小さいことが求められている。
光学用フィルムの用途の一つである液晶表示装置は、低電圧、低消費電力で、IC回路への直結が可能であり、特に薄型化が可能であることから、液晶TVやパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、携帯用端末、テレビジョン、更にはデジタルスチルカメラやムービーカメラ等の表示装置として広く採用されている。この液晶表示装置は、基本的な構成としては、例えば液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。
そして、液晶表示装置の品質の向上に合わせて、偏光板の品質向上が要求され、それと共に偏光板の保護フィルムも、より高品質であることが要望されている。更に、近年では液晶TVの大型化に伴い液晶画面が大きくなるに従って、ますます高品質であることが要望されている。
樹脂フィルムを光学用フィルムに用いる場合には、前述の諸特性が優れていることは当然必要であるが、更にフィルム全体の厚みの均一性が高いことが必要となる。即ち、フィルム全体の厚みに「ムラ」がある場合には、その「ムラ」の部分で光学的特性に「ムラ」が発生するため、光学用フィルムとしては問題となることが多い。
例えば、光学用フィルムとして使用するために製膜した樹脂フィルムの表面には、必要とする機能を付与するために、ハードコート処理、防眩処理、反射防止処理等が施される。例えば、ハードコート処理を施す場合、ハードコート層用の塗布液を塗布する際に、樹脂フィルムに厚みムラがあると、それに起因して塗布ムラが発生して、フィルムの機能性を阻害したり、外観価値を低下させがちである。
溶液流延法、溶融押し出し法により薄膜の樹脂フィルムを製膜する際、厚みムラに対してこれまでに対策が取られてきた。
例えば、樹脂溶液を流延ダイから支持体上に押し出された膜状の樹脂溶液の支持体に接触する側の表面を、バッファタンク及び/又は分岐管を設けた減圧チャンバで減圧吸引することで減圧吸引操作における圧力振動を抑制し、厚み精度の向上した膜を製造する溶液製膜方法が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
溶液キャスト(本発明の溶液流延法に該当する)法によりフィルムを製造する際、ドープの温度、粘度、ダイリップの表面粗さ(Ra値)、リップクリアランスを規定することで膜厚が安定したフィルムを製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
セルローストリアセテートのドープを流延ベルト上に流延する際、ドープの固形分濃度、流延速度、及びドープと流延ベルトとの間に形成されたビードの正面側の圧力と背面側の圧力との差圧を制御することでビードの長さを安定に形成し、薄手のフィルムを製膜する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、特許文献1〜3記載の方法は、何れも支持体(流延ベルト)上に流延ダイから吐出される膜状のドープを安定させることで、長手方向の膜厚が安定したフィルムを製造する方法である。これらの方法は、20〜60μmの薄膜のフィルムを生産するには十分な対策となっていない。薄膜のフィルムを溶液流延法で生産する際、流延されるドープが振動を受けたとしても膜厚の変動にならないようにするためには、ダイスからのドープ流出速度とベルト引き取り速度を近づけることによって生産することが一般的に知られている。例えば、40μmの薄膜フィルムを溶液流延製膜法で生産する場合、ダイスからのドープ流出速度とベルト引き取り速度を近づけるためには、予めダイスギャップとドープ吐出量とを従来の80μmのフィルムを製膜する場合の半分近くまで狭くすることにより達成されるが、そこに到達するまでの生産立ち上げステップにおいて、薄膜、且つ、低搬送速度では、ガイドロールの規制などが原因となってシワが発生し、安定性が問題となる。
又、薄膜に適したダイスギャップのまま、安定立ち上げのため80μmのような厚い膜となるようなドープ吐出流量で立ち上げようとすると、引き取り速度がドープ流出速度を下回り、ダイリップを汚し、故障の原因となる。
又、溶融押し出し法によりフィルムを製造する際、押出成形機から押し出されるシート状溶融樹脂を、高剛性の金属ロールにより構成される主ロールと、薄肉金属外筒と高剛性の金属内筒とからなる二重筒により構成される押さえロール間に導入して挟圧成形するシート・フィルムの成形用ロール装置が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、特許文献4に記載の方法は、溶融製膜においてキャストされた際に形成されたフィルムの凹凸を外部からの力により矯正するものであり、フィルム幅手方向に非常に高い機械精度が必要となる。このため、長期使用などによる機械精度の低下や、外乱による影響を非常に受け製品の品質安定化が懸念される。
これらの状況から、溶液流延法、溶融押し出し法により薄膜の樹脂フィルムを製膜する際、立ち上げ時の安定性を確保し、膜厚が安定し、品質が安定した薄膜の樹脂フィルムの製造方法、この方法により製造した樹脂フィルム、偏光板及び液晶表示装置の開発が望まれている。
特開2000−290388号公報 特開2002−273746号公報 特開2004−66545号公報 特開平11−235747号公報
本発明は、上記状況を鑑みなされたものであり、その目的は、薄膜の樹脂フィルムの生産立ち上げ時の安定性を確保し、膜厚が安定し、品質が安定した薄膜の樹脂フィルムの製造方法、この方法により製造した樹脂フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
1.原料の樹脂を溶媒に溶解したドープをダイスより無端支持体の上に流延しウェブを形成する流延工程と、前記ウェブを前記無端支持体より剥離した後、乾燥工程で溶媒を除去する乾燥工程と、巻き取り工程とを有する溶液流延製造装置により目的とする幅方向の平均膜厚を有する樹脂フィルムを製造する樹脂フィルムの製造方法において、前記ダイスは幅方向にダイスギャップ調整手段を有し、前記流延工程と巻き取り工程までの間の少なくとも1箇所に膜厚測定機を配置し、前記膜厚測定機により前記ウェブ又は前記樹脂フィルムの少なくともどちらか一方の幅方向の平均膜厚を測定し、その測定結果に基づき、前記ダイスギャップ調整手段により、前記ダイスのダイスギャップを、測定された平均膜厚に応じて変化させながら、前記ダイスの吐出口より前記無端支持体の上に、前記ドープを膜状に吐出し流延することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
2.原料の樹脂を加熱して溶融し、溶融した前記樹脂をTダイより押し出す溶融押し出し工程と、冷却引き取り機を有する冷却引き取り工程と、巻き取り工程とを有する溶融押し出し製造装置により目的とする幅方向の平均膜厚を有する樹脂フィルムを製造する樹脂フィルムの製造方法において、前記Tダイは幅方向にダイスギャップ調整手段を有し、前記冷却引き取り工程と巻き取り工程までの間の少なくとも1箇所に膜厚測定機を配置し、前記膜厚測定機により幅方向の平均膜厚を測定し、その測定結果に基づき、前記ダイスギャップ調整手段により、前記Tダイのダイスギャップを、測定された平均膜厚に応じて変化させながら、前記Tダイの吐出口より溶融した前記樹脂を膜状に吐出し、前記冷却引き取り機で冷却し、前記巻き取り工程で巻き取り、回収することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
3.前記ダイスギャップ調整手段がヒートボルトであることを特徴とする前記1又は2の何れか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
4.前記樹脂フィルムの幅が1200mm〜2200mmであることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
5.前記樹脂フィルムの膜厚が20μm〜60μmであることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
6.前記樹脂がセルロースエステル樹脂であることを特徴とする前記1又は2に記載の樹脂フィルムの製造方法。
7.前記樹脂がシクロオレフィン系樹脂であることを特徴とする前記1又は2に記載の樹脂フィルムの製造方法。
8.前記樹脂がポリカーボネ−ト系樹脂であることを特徴とする前記1又は2に記載の樹脂フィルムの製造方法。
9.前記1〜8の何れか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする樹脂フィルム。
10.前記樹脂フィルムが光学用フィルムであることを特徴とする前記9に記載の樹脂フィルム。
11.偏光子の少なくとも一方の面に、前記10に記載の樹脂フィルムを配置したことを特徴とする偏光板。
12.前記11に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
薄膜の樹脂フィルムの生産立ち上げ時の安定性を確保し、膜厚が安定し、品質が安定した薄膜の樹脂フィルムの製造方法、この方法により製造した樹脂フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することが出来、薄膜の樹脂フィルムの生産効率の向上、偏光板及び液晶表示装置の品質性能の向上が可能となった。
本発明の実施の形態を図1〜図9を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置の模式図である。図1(a)は流延後、テンター搬送し、その後乾燥工程で乾燥を行う場合の樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置の模式図である。図1(b)は流延後、乾燥工程で予備乾燥し、その後テンター搬送した後、乾燥工程で乾燥を行う場合の樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置の模式図である。図1(c)は流延後、乾燥工程で予備乾燥し、その後乾燥工程で乾燥を行う場合の溶液流延法の製造装置の模式図である。図1(d)は流延後、乾燥工程で乾燥を行う場合の溶液流延法の製造装置の模式図である。
図1(a)に示される樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置に付き説明する。図中、1aは樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置を示す。製造装置1aは、流延工程101と、延伸工程102と、乾燥工程103と、巻き取り工程104とを有している。
流延工程101は、エンドレスで走行(図中の矢印方向)する無端支持体の鏡面帯状金属流延ベルト(以下、ベルトという)101aと、樹脂を溶媒に溶解したドープ2を、ベルト101aに流延するダイス101bとを有している。3はベルト101aに流延されたドープが固化した状態のウェブを剥離する剥離点を示し、4は剥離されたウェブを示す。ダイス101bはダイスギャップ調整手段の調整ボルト101b8(図3を参照)を有している。尚、ダイスギャップをスリット間隙とも言う。
流延工程101は、加熱装置(不図示)を有しており、ベルト101aの上に流延されたドープ2をベルト101aから剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。ドープ2の樹脂フィルム形成用の樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、樹脂フィルム形成用の樹脂の濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
加熱装置(不図示)に使用する加熱手段としては特に限定はなく、例えば、ベルトのドープ接触面に赤外線ヒータで加熱する方法、ベルトの裏面に温風を吹き付け裏面側から加熱する方法、ドープの表面に温風を吹き付ける方法、ベルトの裏面に温水や加熱オイルを接触し加熱する方法等が挙げられる。流延後、剥離までの間での時間は作製するセルロースエステルフィルムの膜厚、使用溶媒によって異なるが、ベルトからの剥離性、製膜効率、工程の長さ等を考慮し、0.5分〜5分の範囲が好ましい。
使用する無端支持体として、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。流延する幅は1〜4mとすることが出来る。流延工程の無端支持体の表面温度は−50℃〜溶媒が沸騰して発泡しない温度以下に設定することが好ましい。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい無端支持体の温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。無端支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、無端支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
ベルト101aは保持ロール101a1と保持ロール101a2とにより保持され、保持ロールの回転に伴い保持ロール101a1と保持ロール101a2の間を回転移動(図中の矢印方向)する様になっている。3はベルト101aに流延されたドープから溶媒が剥離出来る状態まで除去され固化したウェブを剥離する剥離点を示す。剥離点における温度は−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。4は剥離されたウェブを示す。ベルト101aからウェブ4を剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブは縦方向に延伸するため、本発明においてはベルトからウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力は50〜170N/m以下にすることが好ましい。
本図に示される製造装置の場合、剥離点3において剥離されたウェブ4は、次工程の延伸工程102に送られる。延伸工程102に送られる時のウェブ4に含まれる残留溶媒量はベルトから剥離する時の残留応力の均一性、延伸性、寸法安定性、乾燥時の収縮性等を考慮し、50質量%〜250質量%であり、好ましくは60〜120質量%である(図1(b)〜図1(d)の場合も同じである)。
延伸工程102は、乾燥風取り入れ口102aと排出口102bとを有する外箱102cと、外箱102cの中に入れられたテンター延伸装置102dとを有している。テンター延伸装置102dに使用するテンターは特に限定はなく、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。テンター延伸装置102dでは、ウェブ4の搬送方向(MD方向)、或いは搬送方向と直角方向(TD方向)に必要に応じて延伸することが可能となっている。
尚、乾燥風取り入れ口102aと排出口102bとは逆であってもよい。延伸工程102における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、この他に、例えば赤外線が挙げられる。延伸工程102で必要とする幅に延伸し、樹脂フィルムに含まれる溶媒量を、スリキズ、収縮率、変形等を考慮し、5質量%〜30質量%にすることが好ましく、より好ましくは6質量%〜25質量%である。乾燥温度は、延伸工程に入る時のウェブの残留溶媒量により異なるが、溶媒の蒸発に伴うウェブの表面への露結、残留溶媒量、伸縮率の調整、溶媒の発泡等を考慮し、30℃〜200℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよく、一定の温度で乾燥してもよいし、数段階の温度に分けて乾燥しても構わない。
乾燥工程103は、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとを有する乾燥箱103aと、ウェブ5を搬送する上部の搬送ロール103dと下部の搬送ロール103eとを有している。上部の搬送ロール103dと下部の搬送ロール103eとは上下で一組で、複数組から構成されている。乾燥工程103に配設される搬送ロールの数は、乾燥条件、方法、製造される位相差フィルムの長さ等により異なり適宜設定している。上部の搬送ロール103dと下部の搬送ロール103eとは駆動源によって回転駆動されない自由回転ロールとなっている。又、乾燥工程から巻き取り工程までの間には、全て自由回転する搬送ロールが用いられるわけではなく、通常、1本〜数本の搬送用駆動ロール(駆動源によって回転駆動するロール)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ロールは、その駆動で樹脂フィルムを搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアの吸引)などにより、樹脂フィルムの搬送と、駆動ロールの回転とを同期させる機構が付いている。
乾燥工程103では加熱空気、赤外線等単独又は加熱空気と赤外線乾燥を併用しても構わない。簡便さの点で加熱空気で行うのが好ましい。本図は加熱空気を使用した場合を示している。乾燥温度は、乾燥工程に入る時のウェブの残留溶媒量により異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、30℃〜180℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよく、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥しても構わない。乾燥工程103での乾燥処理後の樹脂フィルムの残留溶媒量は、乾燥工程の負荷、保存時の寸法安定性伸縮率等を考慮し、0.1質量%〜15質量%が好ましい。
6は膜厚測定装置を示す。膜厚測定装置6は、流延工程101と巻き取り工程104まで間の少なくとも1箇所に配置する必要がある。例えば、流延工程101と延伸工程102との間、延伸工程102と乾燥工程103との間、乾燥工程103と巻き取り工程104との間に配置することが可能である。勿論、流延工程101と延伸工程102との間及び乾燥工程103と巻き取り工程104との間の2箇所に配置することも可能である。本図は乾燥工程103と巻き取り工程104との間の1箇所に配置された場合を示している。乾燥工程103と巻き取り工程104との間に配置された場合は樹脂フィルムの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。流延工程101と延伸工程102との間に配置された場合は、ベルトから剥離したウェブの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。
巻き取り工程104は、巻き取り装置(不図示)を有し、乾燥終了した樹脂フィルム5を必要量の長さに巻き芯に巻き取る。104aは巻き芯に巻き取られたロール状の樹脂フィルムを示す。尚、巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮によるスリキズ、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。図1(b)〜図1(d)に示される光学フィルムの溶液流延製膜法の模式図の場合も同じである。使用する巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることが出来る。
図1(b)に示される樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置に付き説明する。図中、1bは樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置を示す。製造装置1bは、流延工程101と、第1乾燥工程105と、延伸工程102と、第2乾燥工程106と、巻き取り工程104とを有している。図1(a)に示される製造装置1aとの違いは、延伸工程102で延伸する前に、ベルト101aから剥離したウェブ4を、一旦、第1乾燥工程105で乾燥することである。他の工程は図1(a)に示される製造装置と同じである。第1乾燥工程105は、乾燥風取り入れ口105bと排出口105cとを有する乾燥箱105aと、ウェブ4を搬送する上部の搬送ロール105dと下部の搬送ロール105eとを有している。上部の搬送ロール105dと下部の搬送ロール105eとは上下で一組で、複数組から構成されている。第1乾燥工程105で延伸工程102(図1(a)の延伸工程と同じ)に入る前のウェブ4に含まれる溶媒量の調整が行うことが可能となっている。
第1乾燥工程105の乾燥処理後のウェブ4の残留溶媒量は、延伸工程102での乾燥負荷、延伸工程の延伸性等を考慮し、5質量%〜40質量%が好ましく、より好ましくは10〜35質量%である。後の延伸工程102終了後の残留溶媒量は図1(a)の場合と同じであり、第2乾燥工程106で乾燥終了後の残留溶媒量は図1(a)の乾燥工程103での乾燥終了時の場合と同じである。
第2乾燥工程106は、乾燥風取り入れ口106bと排出口106cとを有する乾燥箱106aと、ウェブ4を搬送する上部の搬送ロール106dと下部の搬送ロール106eとを有している。上部の搬送ロール106dと下部の搬送ロール106eとは上下で一組で、複数組から構成されている(図1(a)に示される乾燥工程305と同じ構成となっている)。他の符号は図1(a)と同じである。
本図に示す製造装置では、膜厚測定装置6は、流延工程101と巻き取り工程104まで間の少なくとも1箇所に配置する必要がある。例えば、流延工程101と第1乾燥工程105との間、第1乾燥工程105と延伸工程102との間、延伸工程102と第2乾燥工程106との間、第2乾燥工程106と巻き取り工程104との間に配置することが可能である。勿論、流延工程101と第1乾燥工程105との間及び第2乾燥工程106と巻き取り工程104との間の2箇所に配置することも可能である。本図は第2乾燥工程106と巻き取り工程104との間の1箇所に配置された場合を示している。流延工程101と第1乾燥工程105との間に配置された場合は、ベルトから剥離したウェブの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。第2乾燥工程106と巻き取り工程104との間に配置された場合は樹脂フィルムの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。
図1(c)に示される樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置に付き説明する。図中、1cは樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置を示す。製造装置1cは、流延工程101と、第1乾燥工程105と、第2乾燥工程107と、巻き取り工程104とを有している。第2乾燥工程107は、乾燥風取り入れ口107bと排出口107cとを有する乾燥箱107aと、ウェブ4を搬送する上部の搬送ロール107dと下部搬送ロール107eとを有している。上部の搬送ロール107dと下部の搬送ロール107eとは上下で一組で、複数組から構成されている(図1(a)に示される乾燥工程305と同じ構成となっている)。第1乾燥工程105の乾燥処理後のウェブ4の残留溶媒量は、図1(b)の場合と同じである。第2乾燥工程107で乾燥終了後の残留溶媒量は図1(a)の乾燥工程103での乾燥終了時の場合と同じである。
尚、第2乾燥工程107は図1(b)に示される延伸工程を有していないため、延伸工程で乾燥する分を第2乾燥工程107で行うため第2乾燥工程107が図1(b)に示される第2乾燥工程106よりも長くすることが好ましい。図1(b)に示される製造装置との違いは、延伸工程を有していないこと、ベルトから剥離したウェブ4は、第1乾燥工程105と第2乾燥工程107とで乾燥され樹脂フィルムとなり巻き取り工程104で巻き取られ回収される。他の符号は図1(a)、(b)と同じである。
本図に示す製造装置では、膜厚測定装置6は、流延工程101と巻き取り工程104まで間の少なくとも1箇所に配置する必要がある。例えば、流延工程101と第1乾燥工程105との間、第1乾燥工程105と第2乾燥工程107との間、第2乾燥工程107と巻き取り工程104との間に配置することが可能である。勿論、流延工程101と第1乾燥工程105との間及び第2乾燥工程107と巻き取り工程104との間の2箇所に配置することも可能である。本図は第2乾燥工程107と巻き取り工程104との間の1箇所に配置された場合を示している。流延工程101と第1乾燥工程105との間に配置された場合は、ベルトから剥離したウェブの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。第2乾燥工程107と巻き取り工程104との間に配置された場合は樹脂フィルムの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。
図1(d)に示される樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置に付き説明する。図中、1dは樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置を示す。製造装置1dは、流延工程101と、乾燥工程108と、巻き取り工程104とを有している。図1(c)に示される製造装置との違いは、第1乾燥工程を有していないことである。ベルト101aから剥離したウェブ4は、乾燥工程108で乾燥され巻き取り工程104で巻き取られ回収される。乾燥工程108は、乾燥風取り入れ口108bと排出口108cとを有する乾燥箱108aと、ウェブ4を搬送する上部の搬送ロール108dと下部の搬送ロール108eとを有している。上部の搬送ロール108dと下部の搬送ロール108eとは上下で一組で、複数組から構成されている(図1(a)に示される乾燥工程105と同じ構成となっているが、第1乾燥工程105(図1(b)を参照)の機能も有するため全体が長くなっている)。乾燥工程108での乾燥終了時の場合の樹脂フィルムの残留溶媒量は図1(a)の乾燥工程103での乾燥終了時の場合と同じである。他の符号は図1(a)と同じである。
本図に示す製造装置では、膜厚測定装置6は、流延工程101と巻き取り工程104まで間の少なくとも1箇所に配置する必要がある。例えば、流延工程101と乾燥工程108との間、乾燥工程108と巻き取り工程104との間に配置することが可能である。勿論、流延工程101と乾燥工程108との間及び乾燥工程108と巻き取り工程104との間の2箇所に配置することも可能である。本図は乾燥工程108と巻き取り工程104との間の1箇所に配置された場合を示している。流延工程101と乾燥工程108との間に配置された場合は、ベルトから剥離したウェブの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。乾燥工程108と巻き取り工程104との間に配置された場合は樹脂フィルムの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。
図1(a)〜図1(d)に示される膜厚測定装置6による幅方向の測定箇所は、1箇所〜2箇所が好ましく、製造する樹脂フィルムの幅により適宜決めることが好ましい。膜厚測定装置としては、特に限定はなく、例えば全赤外線方式やレーザー方式の厚み測定器等が挙げられ、必要に応じて適宜選択して使用することが可能である。本図は膜厚測定装置6がオンラインで組み込まれた場合を示しているが、オフラインとすることも可能である。又、本図に示すオンラインで組み込まれた膜厚測定機は常に樹脂フィルム(ウェブ)幅手方向の平均膜厚を監視し、樹脂フィルム(ウェブ)の平均膜厚変化や、何らかの突発的な運転条件の変化による樹脂フィルム(ウェブ)の平均膜厚変化に対応し、ダイスの幅方向のダイスギャップ調整手段に対してリアルタイムに制御を実施することも可能である。
本発明における残留溶媒量(質量%)の値は一定の大きさのウェブ(樹脂フィルム)を115℃で1時間乾燥した時のウェブ(樹脂フィルム)の質量をBとし、乾燥前のウェブ(樹脂フィルム)の質量をAとした時、((A−B)/B)×100=残留溶媒量(質量%)で求めた値である。
尚、図1(a)〜図1(d)に示される流延工程で形成されたウェブが乾燥工程等で徐々に溶媒が除去され、残留溶媒量が0.5質量%以下となったウェブを樹脂フィルムと言う。
図1(a)〜図1(d)に示す膜厚測定装置6の平均膜厚測定結果に基づき、ダイス101bに配設されているダイスギャップ調整手段101b8(図3を参照)により、ダイスギャップを幅方向に均一に調整することで目的とする平均膜厚の樹脂フィルムの製造が可能となっている。尚、膜厚測定装置6の幅方向の膜厚測定結果に従って膜厚分布が異常の箇所は、異常の箇所に相当するダイスのダイスギャップ調整手段により個別に修正が随時行われ生産が続けられる。又、使用するダイスのダイスギャップは予め幅方向の膜厚分布が均一になるように調整されたダイスが使用される。
図2は樹脂フィルムの溶融押し出し法の製造装置の模式図である。図2(a)は延伸工程を有する樹脂フィルムの溶融押し出し法の製造装置の模式図である。図2(b)は延伸工程を持たない樹脂フィルムの溶融押し出し法の製造装置の模式図である。
図2(a)に示される製造装置に付き説明する。図中、7aは溶融押し出し法の製造装置を示す。製造装置7aは、製膜工程701、延伸工程702と、熱処理工程703と、冷却工程704と、巻き取り工程705とを有している。製膜工程701は溶融押し出し機701aと、Tダイ701bと、冷却引き取り機701cとを有している。
溶融押し出し機701aは樹脂フィルム用の原料樹脂を供給するホッパー701a1と、溶融された樹脂をTダイ701bに安定に送るギヤポンプ701a2と、異物を除去するためのフィルタ701a3と、添加剤の混合を均一にするためのミキサー701a4と、Tダイ701bに溶融された樹脂を供給する供給管701a5とを有している。フィルタ701a3には、圧力損失、製膜の容易性、異物混入等を考慮し公称濾過精度が3〜10μmの焼結金属ファイバフィルタが使用することが好ましいとされている。
溶融押し出し機701aでの樹脂の溶融温度は使用する樹脂により適宜選択すればよく、その中でも溶融した樹脂の熱分解によるフィルム外観性の悪化を避けるため、樹脂を溶融させた後、Tダイから吐出されるまでの間を300℃以下に維持することが好ましく、290℃以下であることが特に好ましい。
溶融押し出し機701aのスクリュー回転数、Tダイ701bからの吐出量は、製造する樹脂フィルムの厚みや引き取り速度等に応じて適宜選択することが可能である。又、溶融樹脂の酸化による熱分解や黄変を抑制するため、ホッパー、押し出し機シリンダ内部等を窒素、アルゴン等の不活性ガスでパージ或いは真空にすることが好ましい。Tダイ701bは幅方向にダイスギャップ調整手段701b8(図4を参照)を有している。
冷却引き取り機701cはTダイ701bで膜状に押し出された樹脂を冷却ロール701c1に押し付ける押し付けロール701c2と、冷却ロール701c1により冷却固化された樹脂フィルム8を搬送する複数の搬送ロール701c3とを有している。
冷却引き取り機701cでの引き取り速度は、分子配向性、複屈折性を考慮し5m/分〜100m/分で行うことが好ましい。冷却ロール701c1の温度設定は、得られる光学フィルムの外観性や光学特性に与える影響の大きい重要な製造条件の1つであり、溶融フィルムの冷却ロールへの密着性及び離型性のバランスを考慮して最適化されるものであり、表面温度を示差走査熱量計(以下、DSCと言う。)により昇温速度10℃/minで測定した樹脂組成物のガラス転移温度に対して−40℃〜+20℃とすることが好ましく、特に−35℃〜+10℃とすることが好ましい。
延伸工程702は、冷却引き取り機701cから剥離され、得られた未延伸フィルムを延伸する延伸装置を有している。延伸装置としては搬送方向に延伸する縦延伸と、横方向に延伸する横延伸があり、それぞれ延伸する方向により延伸装置が異なっている。例えば、縦延伸の場合は複数のロール群及び/又は赤外線ヒータ等の加熱装置を有する縦延伸装置により非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段又は多段縦延伸することが好ましい。横延伸の場合は、横延伸装置としてのテンター延伸装置で延伸することが好ましい。
延伸工程702は、加熱風取り入れ口702aと排出口702bとを有する外箱702cと、外箱702cの中に入れられたテンター延伸装置702d又は縦延伸装置(不図示)とを有している。テンター延伸装置に使用するテンターは特に限定はなく、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。尚、加熱風取り入れ口702aと排出口702bとは逆であってもよい。延伸工程702で必要とする幅に延伸した後、テンター工程内の熱固定工程(不図示)に搬送され延伸した状態が固定される。横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると幅方向の物性の分布が更に低減出来好ましい。延伸後、必要であれば熱処理を実施する。
熱処理工程703は加熱風取り入れ口703a1と排出口703a2とを有する外箱703a3と複数の搬送ロール703a4とを有する熱固定装置703aを有している。熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却工程704で冷却される。
冷却工程704は熱固定されたフィルムを冷却する冷却風取り入れ口704a1と排出口704a2とを有する外箱704a3と複数の搬送ロール704a4とを有する冷却装置704aとを有している。冷却工程704で冷却する際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/又は縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。又冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとした時、(T1−Tg)/tで求めた値である。
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、使用する非晶性熱可塑性樹脂により異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
巻き取り工程705は冷却工程704からの樹脂フィルムを巻き取る巻き取り装置(不図示)を有している。705aは巻き芯に巻き取られ回収されたロール状の樹脂フィルムを示す。
9は膜厚測定装置を示す。膜厚測定装置9は、製膜工程701と巻き取り工程705まで間の少なくとも1箇所に配置する必要がある。例えば、冷却引き取り機701cと延伸工程702との間、延伸工程702と熱処理工程703との間、熱処理工程703と冷却工程704との間、冷却工程704と巻き取り工程705との間に配置することが可能である。勿論、冷却引き取り機701cと延伸工程702との間、冷却工程704と巻き取り工程705との間の2箇所に配置することも可能である。本図は冷却工程704と巻き取り工程705との間の1箇所に配置された場合を示している。膜厚測定装置9により樹脂フィルムの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することが可能に配設されている。
図2(b)に示される製造装置に付き説明する。図中、7bは溶融押し出し法の製造装置を示す。製造装置7bは、製膜工程701、巻き取り工程705とを有している。図2(a)に示される製造装置の違いは、図2(a)に示される延伸工程702と、熱処理工程703と、冷却工程704とを有していないことであり、製膜工程701、巻き取り工程705とは図2(b)に示されるものと同じである。膜厚測定装置9の配設する場所は、冷却引き取り機701cと巻き取り工程705との間で、樹脂フィルムの幅方向の平均膜厚が安定に測定出来ればどこでも構わない。尚、本発明において図2(a)、図2(b)に示される製造装置で樹脂フィルムを製造する際、冷却引き取り機701cで処理された以降を樹脂フィルムと言う。
図2(a)、図2(b)に示される膜厚測定装置9による樹脂フィルムの幅方向の測定箇所は、1箇所〜2箇所が好ましく、製造する樹脂フィルムの幅により適宜決めることが好ましい。膜厚測定装置としては、特に限定はなく、例えば全赤外線方式やレーザー方式の厚み測定器等が挙げられ、必要に応じて適宜選択して使用することが可能である。本図は膜厚測定装置9がオンラインで組み込まれた場合を示しているが、オフラインとすることも可能である。又、本図に示すオンラインで組み込まれた膜厚測定機は常に樹脂フィルム(ウェブ)幅手方向の膜厚を監視し、樹脂フィルム(ウェブ)の膜厚変化や、何らかの突発的な運転条件の変化による樹脂フィルム(ウェブ)の膜厚変化に対応し、ダイスのダイスギャップ調整手段に対してリアルタイムに制御を実施することも可能である。
図2(a)、図2(b)に示される膜厚測定装置9の平均膜厚測定結果に基づき、Tダイ701bに配設されているダイスギャップ調整手段の調整ボルト701b8(図4を参照)により、ダイスギャップを幅方向に均一に調整することで目的となる平均膜厚の樹脂フィルムの製造が可能となっている。尚、膜厚測定装置9の幅方向の膜厚測定結果に従って膜厚分布が異常の箇所は、異常の箇所に相当するTダイのダイスギャップ調整手段により個別に修正が随時行われ生産が続けられる。又、使用するTダイのダイスギャップは予め幅方向の膜厚分布が均一になるように調整されたダイスが使用される。
図2(a)、図2(b)に示される溶融押し出し機701aに使用しているフィルタ701a3としては、特に限定はなく、例えばスクリーンメッシュと呼ばれるステンレス等の合金からなる金網の単層体、ステンレス等の合金からなる金網を積層し、各層を焼結した焼結金属フィルタ、ステンレス鋼の微細繊維を複雑に編み込んだ金網にて繊維間の接点を焼結した焼結金属ファイバフィルタ、金属粉末を焼結した焼結金属フィルタ等が挙げられ、これらの中で特に焼結金属ファイバフィルタを使用することが好ましい。又、フィルタ701a3は、フィルタ701a3内で滞留に伴う過加熱が起こり難い様な構造であることが望ましい。
図2(a)、図2(b)に示されるTダイ701bとしては、コートハンガータイプとストレートマニホールドタイプとに分別されるが、本発明では特に限定はなく、使用する樹脂により適宜選択することが可能となっている。又、単層用でも多層用であっても構わない。
図2(a)、図2(b)に示される溶融押し出し機701aとしては、例えば単軸押し出し機、同方向回転二軸押し出し機、異方向回転二軸押し出し機、タンデム型押し出し機等が代表例として挙げられが、得られる樹脂フィルムの機械特性、光学用フィルム特性の点から、一軸押し出し機を用いることが好ましい。使用する樹脂、添加物等に水などの揮発性成分が含まれていると、押し出し時に樹脂フィルムの外観性が悪化するため、これら押し出し機は揮発性成分を除去するための真空ベント、ホッパドライヤー等が具備されたものが適宜使用される。又、シリンダ径、L/D、圧縮比、スクリューデザインは一般的に生産速度、フィルムの寸法などに応じて最適化すればよく、特に光学フィルムの製造の際には、吐出速度を安定化させるとともに、摩擦発熱の抑制や樹脂温度を分解温度以下に維持することを目的に最適化すればよい。
溶融押し出し時の溶融物の温度は、通常150〜300℃の範囲、好ましくは180〜270℃、更に好ましくは200〜250℃の範囲である。溶融物の温度は、接触式温度計を使用して測定した値である。
本発明は、図1に示す溶融流延法の製造装置及び図2に示す溶融押し出し法の製造装置により薄膜の樹脂フィルムを製造する時、製造開始時の立ち上げ安定性と最終生産条件での面品質を向上させるため、膜厚測定装置により平均膜厚を測定し、平均膜厚に基づいてダイス(Tダイ)のダイスギャップ調整手段により、幅方向に均一に調整することで目的とする平均膜厚を有する薄膜の樹脂フィルムの製造方法、この製造方法で製造された樹脂フィルム、この樹脂フィルムの内光学用フィルムを使用した偏光板、及びこの偏光板を使用した液晶表示装置に関するものである。
図3は図1のRで示される部分の拡大概略図である。図3(a)は図1のRで示される部分の拡大概略斜視図である。図3(b)は図3(a)のA−A′に沿った概略断面図である。
ダイス101bは2つのブロック101b1とブロック101b2とを有しており、ボルト(不図示)などで締結することで組み立てられている。101b3はダイス101bの幅方向に設けられたマニホールドと呼ばれるドープを一旦溜めるための部分であり、ブロック101b1とブロック101b2とで形成されている。101b5はダイス101bの幅方向に設けられたダイスギャップを示し、ブロック101b1とブロック101b2とで形成されている。
マニホールド101b3に供給管101b4を介して送り込まれ、塗布幅方向に溜められたドープはスリット101b5を通り塗布幅方向に均一な厚みとなり、スリット101b5の先端のドープ流出部101b6まで送られ、ベルト101aの上に膜状に流延される。101b7はブロック101b1とブロック101b2との先端部分のリップを示す。101b8はダイスギャップ調整手段の調整ボルトを示す。調整ボルト101b8はダイス101bの幅方向に複数個が配設されている。
調整ボルト101b8によりドープ流出部101b6のダイスギャップの調整が可能なっている。調整ボルト101b8によるドープ流出部101b6のダイスギャップの調整は、図1に示される膜厚測定装置6の平均膜厚の測定結果に基づいて幅方向に均一に行われる。ダイスギャップ調整手段としては、本図では調整ボルトの場合を示しているが、この他にヒートボルトが挙げられ、操作性、制御性等からヒートボルトが好ましい。尚、ヒートボルトを用いる場合は、加熱及び空気冷却機構の両方を備えておくことでドープ流出部101b6のダイスギャップの押し引き調整を高速で調整することが可能となることから好ましい。又、ヒートボルトは手動、自動どちらでも使用出来る様に配設することが好ましい。
調整ボルト、ヒートボルトは長さを変えることによりダイスギャップの調整範囲を変えることが可能であるため、使用する製造装置及び製造する樹脂フィルムの膜厚に合わせ決めることが好ましい。
又、ヒートボルトによるダイスギャップ調整の場合、ヒートボルトに印加する電圧の大きさや周波数、又は印加時間を制御することにより実施される。更にダイス幅手方向に配置されるヒートボルトの本数に制限はないが、隣り合うボルトの間隔は、制御したいボルトの隣まで影響、精度の高い制御等を考慮し、20μm〜60μmが好ましい。加えて、ダイスの先端部には、これとは関係なく個別に端部膜厚が制御出来るようヒートボルトを設置されることが望ましい。他の符号は図1と同義である。
図4は図2のSで示される部分の拡大概略図である。図4(a)は図2のSで示される部分の拡大概略斜視図である。図4(b)は図4(a)のB−B′に沿った概略断面図である。
Tダイ701bは2つのブロック701b1と、ブロック701b2とを有しており、ボルト(不図示)などで締結することで組み立てられている。701b3はTダイ7101bの幅方向に設けられたマニホールドと呼ばれる溶融した樹脂を一旦溜めるための部分であり、ブロック701b1とブロック701b2とで形成されている。701b5はダイス701bの幅方向に設けられたダイスギャップを示し、ブロック701b1とブロック701b2とで形成されている。
マニホールド701b3に供給管701b4を介して送り込まれ、塗布幅方向に溜められた溶融した樹脂はスリット701b5を通り塗布幅方向に均一な厚みとなり、スリット701b5の先端の溶融樹脂流出部701b6まで送られ、溶融樹脂流出部701b6から膜状となり冷却引き取り機701cの冷却ロール701c1上に落下させ、押し付ける押し付けロール701c2にて押し付けることで冷却固化し樹脂フィルムが形成される。
701b7はブロック701b1とブロック701b2との先端部分のリップを示す。701b8はダイスギャップ調整手段の調整ボルトを示す。調整ボルトはTダイ701bの幅方向に複数個が配設されている。調整ボルト701b8により溶融樹脂流出部701b6のダイスギャップの調整が可能なっている。調整ボルト701b8による溶融樹脂流出部701b6のダイスギャップの調整は、図2に示される膜厚測定装置9の平均膜厚の測定結果に基づいて幅手方向に均一に行われる。本図では調整ボルトの場合を示しているが、この他に図3に示されるヒートボルトが挙げられ、操作性、制御性等からヒートボルトが好ましい。
図5は図1(a)に示す製造装置で薄膜の樹脂フィルムを製造する状態を示す模式図である。図5(a)は流延開始時のダイスギャップで製造された樹脂フィルムの幅方向の平均膜厚の状態を示す模式図である。図5(b)は調整後のダイスギャップで製造された樹脂フィルムの幅方向の平均膜厚の状態を示す模式図である。
図5(a)に示される模式図に付き説明する。薄膜の樹脂フィルムを製造する場合、ダイスからのドープ流出速度とベルト引き取り速度とを近づけることによって生産することが必要である。このため、流延開始時に目的とする平均膜厚を得るためにダイスギャップを狭くし、ベルトの搬送速度を低速にした場合はガイドロールの規制などが原因となってシワが発生し、安定性が問題となる。又、薄膜に適したダイスギャップのまま、安定立ち上げのため80μmのような厚い膜となるようなドープ吐出流量で立ち上げようとすると、引き取り速度がドープ流出速度を下回り、ダイリップを汚し、故障の原因となる。
このため、流延開始時は立ち上げを安定にするため最適のダイスギャップよりも幅方向に均一に広げて流延を行うため、膜厚測定装置の平均膜厚の測定結果より目的とする平均膜厚よりも厚い樹脂フィルムとなることを示している。
図5(b)に示される模式図に付き説明する。図5(a)に示される樹脂フィルムの平均膜厚の結果に基づき、ダイスのダイスギャップ調整手段により目的の平均膜厚になるように幅方向に均一にダイスギャップを狭くすることで目的とする平均膜厚の樹脂フィルムと製造されることを示している。
本図に示す様に、本発明の樹脂フィルムの製造方法は、薄膜の樹脂フィルムの製造開始時に発生するダイス(Tダイ)のリップ部の汚れに伴う故障、フィルムのシワ等のトラブルをなくし、予め設定した平均膜厚の安定した品質の薄膜の樹脂フィルムを製造方法である。具体的には、製造開始時はダイス(Tダイ)のダイスギャップを最適な間隙より広げた状態で行い、その後膜厚測定装置により測定された樹脂フィルムの幅方向の平均膜厚の測定結果に従い、設定した幅方向の平均膜厚よりも厚い場合は、ダイスギャップを幅方向に均一に広く、平均膜厚よりも薄い場合は、ダイスギャップを幅方向に均一に狭くして薄膜の樹脂フィルムを製造する方法である。
本図に示す流延開始時のダイスギャップで流延を立上げた後、測定装置により樹脂フィルムの幅方向の平均膜厚を測定し、この平均膜厚測定結果に基づき、ダイスギャップ調整手段により、目的の平均膜厚になるように幅方向を均一に調整し薄膜の樹脂フィルムを製造する方法は、図2に示す溶融押し出し法の製造装置で薄膜の樹脂フィルムを製造する際にもTダイに対して全く同じ様に行うことが出来る。
図6は図1(a)に示す溶液流延法の製造装置を使用した樹脂フィルムの製造のフローである。
ステップ1では、設計されたダイスギャップ、リップ面を有するダイスが待機位置で準備される。
ステップ2では、待機位置で使用するドープの温度、粘度、製造する樹脂フィルムの幅方向の膜厚分布が一定になるように合わせたダイスギャップの調整、ドープ送液量の設定等のドープをベルト上に流延するのに必要なダイスの条件が設定される。又、無端支持体の搬送速度が設定される。搬送過程でシワの発生が生じにくいよう、平均膜厚を厚くするようドープ流量を多くするため、この段階ではダイスギャップは広げられる。
ステップ3では、ドープ流出部からドープが流出している状態で待機位置から無端支持体の上に流延する位置にダイスを移動し、ドープの流延が開始される。尚、ダイスの移動に合わせ無端支持体の駆動も開始される。無端支持体の上で加熱されることで無端支持体からウェブが剥離が可能となる範囲までる溶媒が除去される。
ステップ4では無端支持体から剥離したウェブが延伸工程で必要に応じてMD方向、TD方向に延伸が施される。
ステップ5では延伸されたウェブから、乾燥工程で残留溶媒が除かれ樹脂フィルムが形成される。
ステップ6では、膜厚測定装置による樹脂フィルムの幅手方向の平均膜厚の測定が行われる。測定する箇所は無端支持体からウェブが剥離される剥離点から巻き取り工程までの間の少なくとも1箇所で測定が行われることが好ましい。平均膜厚は残留溶媒が多い領域では残留溶媒の量に伴う膜厚への影響も懸念されるため、残留溶媒が25質量%〜0.001質量%の樹脂フィルムの状態で行うのが最も好ましい。
ステップ7では、膜厚測定装置による樹脂フィルムの幅手方向の平均膜厚の測定結果に基づきダイスギャップ調整手段により、ダイスの幅方向のドープ流出部のダイスギャップの調整が行われる。ダイスギャップの調整は、図5に示す如く樹脂フィルムの幅方向の平均膜厚の測定結果が設定した幅方向の平均膜厚より厚い場合は、目的の平均膜厚になるようにドープ流出部のダイスギャップを幅方向に均一に広くする様に行われる。平均膜厚よりも低い場合は、ドープ流出部のダイスギャップを幅方向に均一に狭くする様に行われる。
ダイスギャップ調整手段が調整ボルトの場合は、手動で行うことが装置を大きくしないことから好ましい。又、ヒートボルトの場合は手動、自動の何れも可能である。ダイスギャップの調整量は、予め調整量と平均膜厚との関係を実験で求めておき対応することが好ましい。尚、ダイスギャップを調整している間もドープの流延は続けられている。
ステップ8では、ダイスギャップの調整が終了した段階から製品用の薄膜の樹脂フィルムの製造(流延)が開始される。製品用の薄膜の樹脂フィルムの製造(流延)が開始された後も、絶えず膜厚測定装置による樹脂フィルムの幅手方向の膜厚及び平均膜厚の測定が行われ、測定結果に基づき、ダイスギャップ調整手段によるダイスギャップの調整を行いながら製造が続けられる。
ステップ9では、必要とする薄膜の樹脂フィルムの量が製造された段階で、ダイスからのドープの流出を停止し待機位置に戻し製造が終了する。
ステップ10では、巻き取り工程で薄膜の樹脂フィルムが巻き取られ回収される。
ステップ1〜ステップ10により薄膜の樹脂フィルムの製造を行うことで幅方向の平均膜厚が均一な薄膜の樹脂フィルムを製造することが可能となっている。
図7は図2(a)に示す溶融押し出し法の製造装置を使用した樹脂フィルムの製造のフローである。
ステップ1では、設計されたダイスギャップ、リップ面を有するTダイ(溶融押し出し機も含む)が待機位置で準備される。
ステップ2では、待機位置で使用する樹脂の溶融温度、製造する樹脂フィルムの幅方向の膜厚分布が一定になるように合わせたダイスギャップの調整、溶融した樹脂の押し出し量の設定等の冷却引き取り機の冷却ロール上に溶融した膜状の樹脂を供給するのに必要なTダイ(溶融押し出し機も含む)の条件が設定される。この段階ではダイスギャップは設定した流出量より多く溶融した樹脂が流出するように広げられる。
ステップ3では、溶融樹脂流出部から樹脂が膜状に流出している状態で待機位置から冷却引き取り機の冷却ロールと押し付けロールとの間に、溶融樹脂流出部から流出している膜状の樹脂が供給される様にTダイ(溶融押し出し機も含む)を移動し、溶融した樹脂の冷却が開始される。尚、Tダイ(溶融押し出し機も含む)の移動に合わせ冷却引き取り機の駆動も開始される。
ステップ4では、冷却引き取り機で冷却され形成された樹脂フィルムが延伸工程で必要に応じてMD方向、TD方向に延伸される。
ステップ5では、延伸された樹脂フィルムの延伸率を固定するため熱処理工程で熱処理が行われる
ステップ6では、熱処理工程で加熱された樹脂フィルムを巻き取り工程で巻き取った時に冷却による樹脂フィルムの収縮に伴う故障を避けるための冷却が行われる。
ステップ7では、膜厚測定装置による樹脂フィルムの幅手方向の膜厚の測定が行われる。測定する箇所は無端支持体からウェブが剥離される剥離点から巻き取り工程までの間の少なくとも1箇所で測定が行われる。
ステップ8では、膜厚測定装置による樹脂フィルムの幅手方向の平均膜厚の測定結果に基づきダイスギャップ調整手段により、ダイスの幅方向の溶融樹脂流出部のダイスギャップの調整が行われる。ダイスギャップの調整は、図5に示す如く樹脂フィルムの幅方向の平均膜厚の測定結果が設定した幅方向の平均膜厚よりも厚い場合は、目的の平均膜厚になるようにドープ流出部のダイスギャップを幅方向に均一に広くする様に行われる。平均膜厚よりも薄い場合は、ドープ流出部のダイスギャップを幅方向に均一に狭くする様に行われる。ダイスギャップ調整手段が調整ボルトの場合は、手動で行うことが装置を大きくしないことから好ましい。又、ヒートボルトの場合は手動、自動の何れも可能である。ダイスギャップの調整量は、予め調整量と平均膜厚との関係を実験で求めておき対応することが好ましい。尚、ダイスギャップを調整している間も、製膜は続けられている。
ステップ9では、ダイスギャップの調整が終了した段階から製品用の薄膜の樹脂フィルムの製造(製膜)が開始される。製品用の薄膜の樹脂フィルムの製造(製膜)が開始された後も、絶えず膜厚測定装置による樹脂フィルムの幅手方向の膜厚及び平均膜厚の測定が行われ、測定結果に基づき、ダイスギャップ調整手段によるダイスギャップの調整を行いながら、製造(製膜)が続けられる。
ステップ10では、必要とする薄膜の樹脂フィルムが製造された段階で、ダイスからのドープの流出を停止し待機位置に戻し製造が終了する。
ステップ11では、巻き取り工程で薄膜の樹脂フィルムが巻き取られ回収される。
ステップ1〜ステップ11により薄膜樹脂フィルムの製造を行うことで幅方向の平均膜厚が均一な樹脂フィルムを製造することが可能となっている。
本発明の溶液流延法又は溶融押し出し法による樹脂フィルムの製造方法により製造される樹脂の幅は、大型TVのように液晶画面対応、偏光フィルムのロス低減等を考慮し、1200mm〜2200mmが好ましい。又、膜厚は、液晶パネルの軽量化、使用環境変動により発生するムラの低減等を考慮し、20μm〜60μmが好ましい。膜厚は平均膜厚を示す。
本発明の溶液流延法又は溶融押し出し法による樹脂フィルムの製造方法により次の効果が挙げられる。
1.膜厚の測定機器の導入で、薄膜の製膜においても安定した品質の薄膜の樹脂フィルムを製造することが可能となった。
2.ダイス(Tダイ)のスリットギャップの調整で、製造開始時のリップ部の汚れに伴う故障を予防し、コスト・時間の短縮につながった。
3.近年求められてきている幅の広い成膜に対しても、安定した品質の薄膜の樹脂フィルムを製造することが可能となった。
4.安定した品質の薄膜の樹脂フィルムの製造に伴い、これらの薄膜の樹脂フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置の品質の安定化が可能となった。
本発明の製造方法により作製される樹脂フィルムは特に限定はなく、例えば一般用及び産業用ハロゲン化銀感光材料、感熱材料、熱現像感光材料、フォトレジスト、LCDや有機EL等に代表される電機光学パネルのデバイス用に使用する光学材料が挙げられる。これらの中でも、特に高性能が要求されるLCDや有機EL等に代表される電機光学パネルのデバイス用に使用する機能層を有する光学材料である光学用フィルム、反射防止フィルムを製造するのに使用することが好ましい。
図8は本発明の製造方法で製造した光学用フィルムを保護フィルムとして用いて作製した偏光板の模式図である。
図中、10は偏光板を示す。偏光板10は偏光子10aの両側に保護フィルム10bを配置した構成を有している。本図に示す偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。保護フィルム10bの裏面側をアルカリ鹸化処理し、偏光子の両面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。本発明の偏光板は、TN、VA、OCB、HAN、IPS等の各種駆動方式を採用した液晶表示装置の視野角特性を最適化することが出来る。
図9は本発明で製造した光学用フィルムを用いて作製した偏光板を使用した液晶表示装置の模式分解構成図である。
図中、11は液晶表示装置を示す。液晶表示装置11は、液晶セル11aの両側に偏光板11bを有する構成となっている。偏光板11bは偏光子11b1の両側に保護フィルム11b2を有する構成となっている。本発明の偏光板を組み込んだ液晶表示装置は、画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の液晶表示装置でも、コントラストが高く、特に視角による色味変化を抑制し、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果がある。
次に、本発明の樹脂フィルムの製造方法に使用する材料に付き説明する。
(樹脂材料)
本発明の樹脂フィルムの製造方法に使用する樹脂は特に限定はなく、一般に溶液流延法及び溶融押し出し法で使用する樹脂の使用が可能である。これらの樹脂の中で、光学用フィルムを製造する樹脂材料に付き説明する。光学用フィルムを製造する樹脂材料としては、例えば偏光子との接着性がよいこと、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。可視光の透過率60%以上であることを言い、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有している樹脂フィルムを形成する樹脂であれば特に限定はなく、例えば、セルロースジアセテート樹脂、セルローストリアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、セロファン、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、シンジオタクティックポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂等を挙げることが出来る。中でも、セルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系樹脂が好ましく、本発明においては、特にセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート系樹脂が、製造上、コスト面、透明性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
本発明に係わるセルロースエステル系樹脂に付き説明する。セルロースエステル系樹脂は、セルロースアセテート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースブチレート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートフタレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が好ましく用いられる。
特にアセチル基の置換度をX、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有するセルロースエステル系樹脂が好ましく用いられる。
式(I) 2.0≦X+Y≦2.6
式(II) 0.1≦Y≦1.2
更に2.4≦X+Y≦2.6、1.4≦X≦2.3のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。中でも2.4≦X+Y≦2.6、1.7≦X≦2.3、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらのセルロースエステル系樹脂は公知の方法で合成することが出来る。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
本発明の位相差フィルムとして、セルロースエステル系樹脂を用いる場合、セルロースエステル系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。又それらから得られたセルロースエステル系樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステル系樹脂は、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることが出来る。
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C25COCl、C37COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することが出来る。又、本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂は各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステル系樹脂はこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)と言う。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂としては、前述のようにセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、又はセルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂のようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。尚、プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネート樹脂は耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、40000〜200000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、溶液流延法の場合は適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、50000〜150000である。又、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.4〜4.5の範囲であることが好ましい。
本発明に係わるシクロオレフィン樹脂について説明する。本発明に用いられるシクロオレフィン樹脂は脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基が好適である。
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cm2の重合圧力で重合させる。
本発明に係わるシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
或いは、シクロオレフィン樹脂として、下記のノルボルネン系樹脂も挙げられる。ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、例えば特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−2108号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報、特開2001−277430号公報、特開2003−139950号公報、特開2003−14901号公報、特開2003−161832号公報、特開2003−195268号公報、特開2003−211588号公報、特開2003−211589号公報、特開2003−268187号公報、特開2004−133209号公報、特開2004−309979号公報、特開2005−121813号公報、特開2005−164632号公報、特開2006−72309号公報、特開2006−178191号公報、特開2006−215333号公報、特開2006−268065号公報、特開2006−299199号公報等に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
本発明に係わるるシクロオレフィンポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
又、シクロオレフィンポリマー100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止することが出来る。
本発明に係わるポリカーボネート系樹脂に付き説明する。ポリカーボネート系樹脂としては種々があり、化学的性質及び物性の点から芳香族ポリカーボネートが好ましく、特にビスフェノールA系ポリカーボネートが好ましい。その中でも更に好ましくはビスフェノールAにベンゼン環、シクロヘキサン環、叉は脂肪族炭化水素基などを導入したビスフェノールA誘導体を用いたものが挙げられるが、特に中央炭素に対して非対称にこれらの基が導入された誘導体を用いて得られた、単位分子内の異方性を減少させた構造のポリカーボネートが好ましい。例えばビスフェノールAの中央炭素の2個のメチル基をベンゼン環に置き換えたもの、ビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環の一の水素をメチル基やフェニル基などで中央炭素に対し非対称に置換したものを用いて得られるポリカーボネート樹脂が好ましい。具体的には、4,4′−ジヒドロキシジフェニルアルカン又はこれらのハロゲン置換体からホスゲン法又はエステル交換法によって得られるものであり、例えば4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルブタン等を挙げることが出来る。又、この他にも例えば、特開2006−215465号公報、特開2006−91836号公報、特開2005−121813号公報、特開2003−167121号公報等に記載されているポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂よりなる樹脂フィルムはポリスチレン系樹脂或いはメチルメタクリレート系樹脂或いはセルロースアセテート系樹脂等の透明樹脂と混合して使用してもよいし、又セルロースアセテート系フィルムの少なくとも一方の面にポリカーボネート樹脂を積層してもよい。
本発明において使用されるポリカーボネート系樹脂よりなる樹脂フィルムはガラス転移点(Tg)が110℃以上であって、吸水率(23℃水中、24時間の条件で測定した値)が0.3%以下のものを使用するのがよい。より好ましくはTgが120℃以上であって、吸水率が0.2%以下のものを使用するのがよい。
(ドープ)
溶液流延法に使用するドープを作製する際に使用される溶媒としては、上記樹脂を溶解出来る溶媒であれば何でもよく、又単独で溶解出来ない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解出来るものであれば使用することが出来る。一般的には良溶媒と、貧溶媒からなる混合溶媒が用いられている。尚、使用する樹脂を単独で溶解するものを良溶媒、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶媒と定義している。例えばセルロースエステル系樹脂の場合、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶媒、貧溶媒が変わり、例えばアセトンを溶媒として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶媒になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶媒となる。セルロースエステル系樹脂の場合、良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。
使用する樹脂により、良溶媒及び貧溶媒は異なってくるのでセルロースエステル系樹脂の場合に付き説明する。良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘクサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることが出来、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることが出来る。
次にセルロースエステル系樹脂を使用したドープを調製方法に付き述べる。ドープを調製する時の、セルロースエステル系樹脂の溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来る。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶媒の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。又、セルロースエステル系樹脂を貧溶媒と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶媒を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶媒を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。又、圧力は設定温度で溶媒が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステル系樹脂を溶解させることが出来る。
次に、このセルロースエステル系樹脂溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。又、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶媒の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
(可塑剤)
可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることが出来る。リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等が挙げられる。トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等が挙げられる。ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等が挙げられる。グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等が挙げられる。ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることが出来る。
グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロースエステルとの相溶性の点から好ましい。
又、本発明では特に200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、更に好ましくは1〜133Paの化合物である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、上記ポリエステル可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は単独或いは2種以上併用して用いることが出来る。
可塑剤の使用量は寸法安定性、加工性の点を考慮すると、セルロースエステル系樹脂に対して、1〜40質量%添加させることが出来、3〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、更に好ましくは4〜15質量%である。3質量%未満の場合は、スリット加工や打ち抜き加工した際、滑らかな切断面を得ることが出来ず、切り屑の発生が多くなる。
本発明の位相差フィルムには酸化防止剤や紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。又例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
又、この他、カオリン、タルク、けい藻土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
本発明の製造方法で製造された光学用フィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板又は液晶表示用部材等に使用することが可能であり、この場合、偏光板又は液晶等の劣化防止のため、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。具体的には380nmの透過率が10%未満であることが好ましく、特に5%未満であることがより好ましい。
好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。例えば、特開平10−182621号、特開平8−337574号、記載の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。又、特開平6−148430号、特開平12−273437号に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。或いは特開平10−152568号に記載されている紫外線吸収剤を加えてもよい。
これらの紫外線吸収剤の中では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい紫外線吸として挙げられる。以下にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
以下にベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
紫外線吸収剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とセルロースエステル系樹脂中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加することが好ましい。紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤としての効果、透明性等を考慮し、0.1質量%〜2.5質量%が好ましい。更に、好ましくは、0.8質量%〜2.0質量%%である。
又、セルロースエステル系樹脂フィルムには、フィルム同士の張り付きを防止したり、滑り性を付与したりして、ハンドリングしやすくするために、マット剤として微粒子を添加してもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子又は有機化合物の微粒子が挙げられる。無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、珪素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減出来るので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL−200、200V、300、R972、R972V、R974、R976、R976S、R202、R812,R805、OX50、TT600、RY50、RX50、NY50、NAX50、NA50H、NA50Y、NX90、RY200S、RY200、RX200、R8200、RA200H、RA200HS、NA200Y、R816、R104、RY300、RX300、R106などが挙げられる。これらの内、分散性や粒径を制御する点では、AEROSIL−200V、R972Vが好ましい。
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用出来る。
本発明に係る微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
微粒子の、見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、又、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることが出来る。又例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することが出来る。
尚、見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出した。
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)÷二酸化珪素の容積(リットル)
本発明に係る微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
《調製方法A》
溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
《調製方法B》
溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。ここで添加するセルロースエステルとして、本発明の固形物を添加することが特に好ましい。
これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
《調製方法C》
溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶媒などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶媒は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶媒を用いることが好ましい。
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。又その際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
又、これらの微粒子はフィルムの厚み方向で均一に分布していてもよいが、より好ましくは主に表面近傍に存在するように分布していることが好ましく、例えば、共流延法により、2種以上のドープを用いて、微粒子を主に表層側に配置されたドープに添加することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。好ましくは3種のドープを使用して表層側の2つのドープに主に微粒子を添加することが望ましい。
又、本発明のフィルムには導電性を有する物質を添加することで好ましいインピーダンスを有する光学フィルムを得ることも出来る。導電性物質としては特に限定はされないが、イオン導電性物質や導電性微粒子或いはセルロースエステルと相溶性を有する帯電防止剤などを用いることが出来る。
ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例えば、イオン性高分子化合物を挙げることが出来る。
イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号に見られるようなアニオン性高分子化合物、例えば特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号などに見られるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー、特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、同62−9346号に見られるような、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることが出来る。
又、導電性微粒子の例としては導電性を有する金属酸化物が挙げられる。金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、又SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
又、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ωcm以下特に105Ωcm以下であって、1次粒子径が10nm以上0.2μm以下で、高次構造の長径が30nm以上6μm以下である特定の構造を有する粉体をフィルム内の少なくとも一部の領域に体積分率で0.01%以上20%以下含んでいることが好ましい。
特に好ましくは、特開平9−203810号に記載されているアイオネン導電性ポリマー或いは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマーなどを含有することが望ましい。
架橋型カチオン性導電性ポリマーの特徴は、得られる分散性粒状ポリマーにあり、粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度に持たせることが出来るため、優れた導電性を有しているばかりでなく、低相対湿度下においても導電性の劣化は見られず、粒子同志も分散状態ではよく分散されているにもかかわらず、塗布後造膜過程において粒子同志の接着性もよいため膜強度も強く、又他の物質、例えば基体にも優れた接着性を有し、耐薬品性に優れている。
架橋型のカチオン性導電性ポリマーである分散性粒状ポリマーは一般に約0.01μm〜0.3μmの粒子サイズ範囲にあり、好ましくは0.05μm〜0.15μmの範囲の粒子サイズが用いられる。ここで用いている「分散性粒状ポリマー」の語は、視覚的観察によって透明又は僅かに濁った溶液に見えるが、電子顕微鏡の下では粒状分散物として見えるポリマーである。
帯電防止剤もしくはマット剤の添加は樹脂フィルムを光学用フィルムとして使用する場合は、光学用フィルムの表層部(表面から10μmの部分)に含まれていることが好ましく、共流延等の方法によってフィルムの表面に帯電防止剤及び/又はマット剤を含有させることが好ましい。具体的には、導電性物質及び/又はマット剤を含有するドープAと実質的にこれらを含有しないドープBを使用し、ドープBの少なくとも片側の面にドープAがあるように流延されることが好ましい。
必要に応じて、更に帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤、マット剤、その他添加剤を加えてもよい。
本発明の製造方法により製造された樹脂フィルムは液晶ディスプレイに使用する偏光板、液晶表示装置に用いることが可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
以下に示す方法によりセルロースエステルフィルムを製造した。
(ドープの調製)
〈微粒子分散液〉
微粒子(アエロジルR972V(日本アエロジル株式会社製)) 11質量部
(一次粒子の平均径16nm、見掛比重90g/リットル)
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに下記セルロースエステル樹脂を添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を十分に攪拌しながら、ここに上記微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度1.0、総アシル基置換度2.5) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
下記組成の主ドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶媒の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル樹脂を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、更に可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。
主ドープを100質量部と微粒子添加液5質量部となるように加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合しドープとした。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 390質量部
エタノール 80質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基
置換度1.0、総アシル基置換度2.5) 100質量部
可塑剤:芳香族末端エステルサンプルNo.4 5質量部
可塑剤:トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.5質量部
紫外線吸収剤:チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
紫外線吸収剤:チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
(セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造)
準備したドープを図1(b)に示す生産装置で図3に示すダイスを使用し、図6に示すフローに従って、膜厚50μm、幅2200mmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを5200m作製し試料No.101とした。尚、流延条件、搬送条件を以下に示す。
ダイスの準備
ドープ流出部の幅1900mm、流延開始時のダイスギャップ0.50mm、ダイスギャップ調整手段としてヒートボルトを使用し、ダイスの幅手方向に55mm間隔で35本配置した図3に示されるダイスを準備した。
流延開始の条件
図1(b)に示される製造装置で準備したダイスを使用し、準備したドープを温度30℃で、幅2000mm、長さ60m、温度22℃のベルトの上に1900mm幅で湿潤状態のドープ膜厚460μmで、引き取り速度60m/minで均一に流延した。その後、ベルト上で乾燥させ残留溶媒量が80%とした後、ベルトから剥離した。この後、80℃に維持された第1乾燥工程で1分間乾燥させた後、2軸延伸テンターを用いて、残留溶媒量3質量%〜10質量%である時に100℃の雰囲気下で長手方向に0.98倍、幅方向に1.25倍に延伸した後、125℃の第2乾燥工程で乾燥を終了させた後、室温まで冷却し巻き取り工程でロール状に巻き取った。
膜厚測定装置による膜厚測定
室温まで下げられたセルロースアセテートプロピオネートフィルムの幅手方向の膜厚を膜厚測定装置により膜厚測定を行い目的とする平均膜厚から1.0%厚い結果を得た。尚、膜厚測定装置としては、EGS(株)製 全赤外線方式厚み測定機を使用した。
ダイスの幅方向のダイスギャップの調整
幅方向の平均膜厚の測定の結果に基づいて、ダイスギャップをダイスギャップ調整手段により徐々に狭くしていった。具体的には、2軸テンター後に設置された膜厚計の測定結果とその時点での残留溶媒量の結果から、まずフィルムの乾燥後の膜厚を求める。更に調整した主ドープの固形分濃度から、ベルトに着地した時点のウェブの厚みを計算する。その厚みに対してダイスギャップが1.05〜1.10倍となるように制御した。ドープ流延開始から、その先頭部分が巻き取り工程に到着するまでの間は、ラインでのシワ発生させないために乾燥後の膜厚が90μmとなるようにドープ流量を調整した。フィルム先頭部分が巻き取り工程に到着した以降、徐々に搬送速度とドープ流量を最終生産条件に変えていく過程で、2軸テンター後に設置された膜厚計の測定結果とその時点での残留溶媒量の結果からダイスギャップを調整していった。
途中経過を具体的に示すと、乾燥後膜厚60μm時は、ダイスギャップ330μm、乾燥後膜厚50μm時は、ダイスギャップ275μmとした。尚、ダイスギャップの調整は、予め求めたヒートボルトの加熱値(電流値)とダイスギャップの変形量から、目的のダイスギャップとなるように各ヒートボルトの加熱値(電流値)を変えることで調整を行った。
比較試料として試料No.101と同じドープを使用し、流延開始時から予め最終製品膜厚に最適なダイスギャップに調整した(具体的には275μm)ダイスを使用した他は試料No.101を作製した条件でセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製し試料No.102とした。このとき、ドープの吐出速度より引き取り速度が遅くならないようドープ流量を調整した。
評価
作製した試料No.101、102に付き、生産安定性、膜厚安定性を以下に示す方法で測定し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。
生産安定性
流延開始から巻き取り工程までの搬送安定性を目視で観察した。
評価ランク
○:搬送途中でのシワ、ツレの発生もなく安定したフィルムの搬送が出来た
△:搬送途中で、僅かにシワ、ツレの発生したがフィルムの切断は発生なし
×:搬送途中でのシワ、ツレの発生し、フィルムの切断が発生
膜厚安定性
製造したセルロースアセテートプロピオネートフィルムの巻き終わりから、50m〜52m、2500m〜2502m、5150m〜5152mを取り出し、巾手中央部および製品フィルム端部から50mm内側の3箇所における長手方向の幅方向の膜厚のバラツキを以下に示す式から計算で求めた。表1には巾手3箇所の平均値を示す。
(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚×100=膜厚バラツキ
Figure 0005119683
尚、試料No.102は搬送途中でシワが発生し、フィルムが破断し生産条件まで到達出来なかった。本発明の有効性が確認された。
実施例2
以下に示す方法によりセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。
(ドープの調製)
実施例1と同じドープを調製した。
(セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造)
準備したドープを図1(b)に示す生産装置で図3に示すダイスを使用し、図6に示すフローに従って、膜厚20μm、幅1490mmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを3900m作製し試料No.201とした。尚、流延条件、搬送条件を以下に示す。
ダイスの準備
ドープ流出部の幅1550mm、流延開始時のダイスギャップ0.60mm、ダイスギャップ調整手段としてヒートボルトを使用し、ダイスの幅手方向に35mm間隔で45本配置した図3に示されるダイスを準備した。
流延開始の条件
図1(b)に示される製造装置で準備したダイスを使用し、準備したドープを温度25℃で、幅1950mm、長さ100m、温度25℃のベルトの上に1550mm幅で湿潤状態のドープ膜厚300μmで、引き取り速度120m/minで均一に流延した。その後、ベルト上で乾燥させ残留溶媒量が80%とした後、ベルトから剥離した。この後、80℃に維持された第1乾燥工程で1分間乾燥させた後、2軸延伸テンターを用いて、残留溶媒量3質量%〜10質量%である時に100℃の雰囲気下で長手方向に0.98倍、幅方向に1.4倍に延伸した後、125℃の第2乾燥工程で乾燥を終了させた後、室温まで冷却し巻き取り工程でロール状に巻き取った。
膜厚測定装置による膜厚測定
ベルトから剥離したウェブの幅手方向の膜厚を膜厚測定装置により膜厚測定を行い目的とする平均膜厚から0.5%厚い結果を得た。尚、膜厚測定装置としては、EGS(株)製 全赤外線方式厚み測定機を使用した。
ダイスの幅方向のダイスギャップの調整
膜厚計の設置位置を巻き取り工程直前に変更した以外は実施例1と同様にして、ダイスギャップをダイスギャップ調整手段により徐々に狭くしていった。具体的には、途中経過を具体的に示すと、乾燥後膜厚50μm時は、ダイスギャップ310μm、乾燥後膜厚20μm時は、ダイスギャップ125μmとした。
比較試料としてはじめから最終条件までダイスギャップを0.6mmのままで実施した他は試料No.201を作製した条件でセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製し試料No.202とした。
評価
作製した試料No.201、202に付き、巻き終わりから、50〜52m、2000〜2002m、3850〜3852mを取り出し、生産安定性、膜厚安定性を実施例1と同様な方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。表2の中の膜厚安定性(膜厚バラツキ)の値は巾手3箇所の平均値を示す。
Figure 0005119683
本発明の有効性が確認された。
実施例3
以下に示す方法によりシクロオレフィン樹脂を製造した。
(セルロースアシレートフィルムの製造)
(ペレットの作製)
シクロオレフィン樹脂 100質量部
トリフェニルフォスフェイト 10質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.3質量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1質量部
酸化防止剤 0.01質量部
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
上記材料の混合物を、2軸式押し出し機を用いて230℃で溶融混合し、ペレット化した。
(セルロースアシレートフィルムの製造)
準備したペレットを、図2(a)に示される溶融押し出し法の製造装置で図4に示すTダイを使用し、図7に示すフローに従って、膜厚60μm、幅1200mmのセルロースアシレートフィルム1300m作製し試料No.301とした。尚、製膜条件を以下に示す。
Tダイの準備
溶融樹脂の流出部の幅1200mm、製膜開始時のダイスギャップ0.13mm、ダイスギャップ調整手段としてヒートボルトを使用し、Tダイの幅手方向に45mm間隔で27本配置した図4に示されるTダイを準備した。
製膜開始時の条件
図2(a)に示される溶融押し出し法の製造装置を使用し、準備したペレットを準備したTダイから溶融物をフィルム状に冷却ロール上に幅を1200mmで、溶融温度250℃で溶融押し出し、冷却固化させた後、剥離ロールによって剥離したセルロースアシレートフィルムを、連続して延伸工程に搬送しテンターで、幅手方向に160℃で1.5倍延伸した後、幅手方向に3%緩和しながら30℃まで冷却し、その後テンターから開放し、搬送速度40m/minで、熱処理工程と冷却工程を搬送した後、巻き取り張力150N/mの均一な張力で巻き取り装置によってロール状に巻き取った。尚、熱処理工程はセルロースアシレートフィルムのTg−10℃で3分間行い、冷却工程では25℃まで冷却した。
膜厚測定装置による膜厚測定
室温まで下げられたセルロースアシレートフィルムの幅手方向の膜厚を膜厚測定装置により膜厚測定を行い目的とする平均膜厚から0.5%厚い結果を得た。膜厚測定装置としては、EGS(株)製 全赤外線方式厚み測定機を使用した。
Tダイの幅方向のダイスギャップの調整
膜厚計の設置位置を延伸工程直前に変更した以外は実施例1と同様にして、ダイスギャップをダイスギャップ調整手段により徐々に狭くしていった。具体的には、途中経過を具体的に示すと、延伸前膜厚120μm時は、ダイスギャップ130μm、延伸前膜厚90μm時は、ダイスギャップ95μmとした。
比較試料として試料No.301と同じペレットを使用し、ダイスギャップを予め95μmにして製膜開始した。このとき、搬送途中でのシワ発生を回避するため、膜厚は延伸前で120μmとなるよう流量を調整し、試料No.302とした。この比較試料については、600m巻き取ったところでリップ汚れが生じ、スジ状の故障が発生により設備を停止したため、巻き終わりから1250〜1252m位置のデータは取れなかった。
評価
作製した試料No.301、302に付き、生産安定性に付き、実施例1と同じ評価ランクに従って評価し、膜厚安定性を以下に示す方法で測定し以下に示す式で計算で求めたた結果を表3に示す。
膜厚安定性
製造したセルロースアセテートプロピオネートフィルムの巻き終わりから、20m〜22m、500m〜502m、1250m〜1252mを取り出し、巾手中央部および製品フィルム端部から50mm内側の3箇所における長手方向の膜厚のバラツキを以下に示す式から計算で求めた。表3の中の膜厚安定性(膜厚バラツキ)の値は巾手3箇所の平均値を示す。
(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚×100=膜厚バラツキ
Figure 0005119683
比較試料302では、生産初期の膜厚安定性は試料No.301と同等レベルであったが、600m以降は溶融樹脂の吐出速度より引き取り速度が遅いためダイスリップ先端に液ダマリが発生した。その結果、リップ汚れが生じ、スジ状の故障が発生したため連続生産が不可能であった。本発明の有効性が確認された。
実施例4
液晶表示装置の作製
(偏光板の作製)
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と実施例2で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムNo.201、202とを貼り合わせて図8に示す構成の偏光板を作製しNo.4−1、4−2とした。
工程1:50℃の1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したセルロースアセテートプロピオネートフィルムを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、上下側に工程1で処理したセルロースアセテートプロピオネートフィルムを積層し、配置した。
工程4:工程3で積層したセルロースアセテートプロピオネートフィルムと偏光膜とを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した後、2分間乾燥し、偏光板を作製した。
この後、市販の液晶TV(シャープ製 アクオス32AD5)の偏光板を剥離し、作製した偏光板No.4−1、4−2をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合し、液晶表示装置を作製しNo.401、402とした。その際、上記作製した偏光板保護フィルムが液晶セル面側となるように、又偏光板の貼合の向きは予め貼合されていた偏光板と同一方向に吸収軸が向くように行った。
評価
作製した液晶表示装置No.401、402を23℃55%RHの環境で、作製した液晶表示装置の液晶TV表示装置のバックライトを点灯して30分そのまま放置してから以下に示す方法で視認性を目視で評価した結果を表4に示す。
画面の視認性の評価方法
作製した液晶表示装置を明るい部屋でバックライトを100時間連続点灯し、点灯初期の視認性と100時間後の視認性について目視評価した。
画面の視認性の評価ランク(正面からの画面の視認性)
○:黒がしまって見え、鮮明である
△:黒のしまりがなく、鮮明さがやや低い
×:黒のしまりがなく、鮮明さが低い
画面の視認性の評価ランク(斜め方向からの画面の視認性)
○:表示した文字に歪みが全くない
△:表示した文字にやや歪みがある
×:表示した文字に明らかに歪みが生じている
Figure 0005119683
本発明の有効性が確認された。
樹脂フィルムの溶液流延法の製造装置の模式図である。 樹脂フィルムの溶融押し出し法の製造装置の模式図である。 図1のRで示される部分の拡大概略図である。 図2のSで示される部分の拡大概略図である。 図1(a)に示す製造装置での膜厚測定装置により測定されたダイスギャップ調整前の樹脂フィルムの幅方向の膜厚測定結果の代表パターンを示す模式図である。 図1(a)に示す溶液流延法の製造装置を使用した樹脂フィルムの製造のフローである。 図2(a)に示す溶融押し出し法の製造装置を使用した樹脂フィルムの製造のフローである。 本発明の製造方法で製造した光学用フィルムを保護フィルムとして用いて作製した偏光板の模式図である。 本発明で製造した光学用フィルムを用いて作製した偏光板を使用した液晶表示装置の模式分解構成図である。
符号の説明
1a〜1d、7a、7b 製造装置
101 流延工程
101a 鏡面帯状金属流延ベルト
101b ダイス
101b8、701b8 調整ボルト
102、702 延伸工程
102d テンター延伸装置
103、108 乾燥工程
104、705 巻き取り工程
105 第1乾燥工程
106、107 第2乾燥工程
2 ドープ
4 ウェブ
6、9 膜厚測定装置
701 製膜工程
701a 溶融押し出し機
701b Tダイ
701c 冷却引き取り機
703 熱処理工程
704 冷却工程
10、11b 偏光板
10a、11b1 偏光子
10b、11b2 保護フィルム
11 液晶表示装置
11a 液晶セル

Claims (8)

  1. 原料の樹脂を溶媒に溶解したドープをダイスより無端支持体の上に流延しウェブを形成する流延工程と、前記ウェブを前記無端支持体より剥離した後、乾燥工程で溶媒を除去する乾燥工程と、巻き取り工程とを有する溶液流延製造装置により目的とする幅方向の平均膜厚を有する樹脂フィルムを製造する樹脂フィルムの製造方法において、
    製造開始時における前記ダイスのダイスギャップは、最終生産条件での製造時におけるダイスギャップよりも広く設定されていること、ならびに、
    前記ダイスは幅方向にダイスギャップ調整手段を有し、
    前記流延工程と巻き取り工程までの間の少なくとも1箇所に膜厚測定機を配置し、
    前記膜厚測定機により前記ウェブ又は前記樹脂フィルムの少なくともどちらか一方の幅方向の平均膜厚を測定し、その測定結果に基づき、
    前記ダイスギャップ調整手段により、前記ダイスギャップを、測定された平均膜厚に応じて変化させながら、
    前記ダイスの吐出口より前記無端支持体の上に、前記ドープを膜状に吐出し流延することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
  2. 原料の樹脂を加熱して溶融し、溶融した前記樹脂をTダイより押し出す溶融押し出し工程と、冷却引き取り機を有する冷却引き取り工程と、巻き取り工程とを有する溶融押し出し製造装置により目的とする幅方向の平均膜厚を有する樹脂フィルムを製造する樹脂フィルムの製造方法において、
    製造開始時における前記Tダイのダイスギャップは、最終生産条件での製造時におけるダイスギャップよりも広く設定されていること、ならびに、
    前記Tダイは幅方向にダイスギャップ調整手段を有し、
    前記冷却引き取り工程と巻き取り工程までの間の少なくとも1箇所に膜厚測定機を配置し、
    前記膜厚測定機により幅方向の平均膜厚を測定し、その測定結果に基づき、
    前記ダイスギャップ調整手段により、前記ダイスギャップを、測定された平均膜厚に応じて変化させながら、
    前記Tダイの吐出口より溶融した前記樹脂を膜状に吐出し、前記冷却引き取り機で冷却し、前記巻き取り工程で巻き取り、回収することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記ダイスギャップ調整手段がヒートボルトであることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記樹脂フィルムの幅が1200mm〜2200mmであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
  5. 前記樹脂フィルムの膜厚が20μm〜60μmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
  6. 前記樹脂がセルロースエステル樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルムの製造方法。
  7. 前記樹脂がシクロオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルムの製造方法。
  8. 前記樹脂がポリカーボネ−ト系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルムの製造方法。
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