以下、本発明の樹脂フィルムの製造方法に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法は、透明性樹脂を溶解した樹脂溶液(ドープ)を、走行する支持体上に流延して流延膜を形成する流延工程と、前記流延膜を前記支持体から剥離する剥離工程と、剥離した流延膜を乾燥させる乾燥工程とを備えており、いわゆる溶液流延製膜法による製造方法である。例えば、図1に示すような溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置によって行われる。なお、樹脂フィルムの製造装置としては、図1に示すものに限定されず、他の構成のものであってもよく、他の製造装置の例示については、後述する。
図1は、無端ベルト支持体11を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置1の基本的な構成を示す概略図である。樹脂フィルムの製造装置1は、無端ベルト支持体11、流延ダイ12、剥離ローラ13、乾燥装置14、及び巻取ローラ15等を備える。流延ダイ12は、透明性樹脂を溶解した樹脂溶液16を無端ベルト支持体11の表面上に流延する。無端ベルト支持体11は、流延ダイ12から流延された樹脂溶液16からなる流延膜を形成し、搬送させながら乾燥させる。そして、剥離ローラ13は、流延膜を無端ベルト支持体11から剥離する。剥離された流延膜は、乾燥装置14によってさらに乾燥され、乾燥された流延膜を樹脂フィルムとして巻取ローラ15に巻き取る。
本実施形態で用いる樹脂溶液は、透明性樹脂と微粒子と溶媒とを含有する。そして、樹脂溶液の溶媒が、透明性樹脂に対する良溶媒と貧溶媒とを含有する。ここで良溶媒とは、使用する透明性樹脂を単独で溶解させることができる溶媒であり、具体的には、溶解度10g以上を実現できる溶媒である。また、貧溶媒とは、使用する透明性樹脂を単独で溶解させることができない溶媒であり、具体的には、溶解度が0.5g未満の溶媒である。また、貧溶媒には、使用する透明性樹脂を単独で膨潤させることができる溶媒を含む。
また、微粒子としては、良溶媒より貧溶媒に対して分散しやすいものを使用する。この分散のしやすさは、各溶媒に対する分散度等を測定することによってわかる。
貧溶媒の含有量は、樹脂溶液の溶媒に対して30〜80質量%であり、35〜60質量%であることが好ましい。貧溶媒の含有量が30質量%未満であると、少量の貧溶媒に微粒子が分散することになる。そうなると、一方の表面に近い領域にのみ微粒子が偏在することになり、微粒子密度分布が好適ではなくなる。すなわち、得られた樹脂フィルムの透光性が低くなる。また、貧溶媒の含有量が80質量%を超えると、多量の貧溶媒に微粒子が分散することになる。そうなると、微粒子が透明性樹脂中に広く分布され、微粒子密度分布が好適ではなくなる。すなわち、得られた樹脂フィルムが微粒子による機能性が好適に発揮できなくなる。
また、溶媒の含有量が、透明性樹脂に対して300〜500質量%であり、350〜450質量%であることが好ましい。溶媒の含有量が500質量%を超えると、貧溶媒の量が多くなり、微粒子が貧溶媒にのみに分散できるようになる。そうなると、一方の表面に近い領域にのみ微粒子が偏在することになり、微粒子密度分布が好適ではなくなる。すなわち、得られた樹脂フィルムの透光性が低くなる。また、乾燥工程で除去しなければならない溶媒量が多く、乾燥負荷が高く、好ましくない。また、溶媒の含有量が300質量%未満であると、溶媒量が少ないので、乾燥負荷が低くなるが、微粒子が、貧溶媒だけではなく、良溶媒にも分散されるようになり、透明性樹脂を溶解させた良溶媒と微粒子を分散させた貧溶媒とが相分離しにくくなる。そうなると、透明性樹脂と微粒子とが相分離した樹脂フィルムが得られず、微粒子が透明性樹脂中に広く分布され、微粒子密度分布が好適ではなくなる。すなわち、得られた樹脂フィルムが微粒子による機能性が好適に発揮できなくなる。
図2は、本実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法によって製造された樹脂フィルム2の断面構造を示す概略図である。樹脂フィルム2は、図2に示すように、微粒子21と透明性樹脂22とを含有し、透明性樹脂22に微粒子21が分散している。また、微粒子21の密度が、厚さ方向(図2の矢符方向)で順次異なる。
ここで、微粒子21の密度とは、樹脂フィルム2中に占める微粒子の占有率(体積%)である。微粒子21の密度の測定方法は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を使用し、樹脂フィルムの断面を倍率15000倍で観察し、樹脂フィルム中の単位面積あたりの微粒子の数を測定する。そして、測定した微粒子の数と使用した微粒子の平均粒径とから、上記微粒子21の密度を算出する。
樹脂フィルム2は、微粒子21の密度が、厚さ方向で順次異なるように微粒子21が含有されているので、微粒子21による機能を充分に発揮できる。すなわち、特に微粒子21の密度が高い領域で、微粒子が光を散乱するので、防眩性等を発揮できる。また、樹脂フィルム2の厚さに比べると、微粒子21の密度が高い領域が薄いので、透光性を確保しながら、上記機能を発揮し、さらに、樹脂フィルム2の形状を保持できる。なお、防眩性とは、樹脂フィルム表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって、反射像の視認性を低下させて、液晶表示装置等に使用したときに、反射像の映り込みを低減させる性能のことである。この防眩性は、樹脂フィルム内で光を散乱させることができるような微粒子を含有させることによっても発揮されるものである。
樹脂フィルム2は、光を散乱させるので、そのまま防眩フィルムや光散乱フィルムとして使用することが可能であり、液晶表示装置等の画像表示装置の画像表示領域に貼付させるフィルムとして使用できる。
また、樹脂フィルム2を偏光板用の透明保護フィルムとしても使用できる。すなわち、偏光板用の透明保護フィルムとして、本実施形態に係る樹脂フィルム2を使用した偏光板が得られる。このような偏光板は、具体的には、偏光素子と、前記偏光素子の表面上に配置された透明保護フィルムとを備え、前記透明保護フィルムが樹脂フィルム2である偏光板である。なお、偏光素子とは、入射光を偏光に変えて射出する光源素子である。
また、このような偏光板は、液晶表示装置の液晶セルを挟むように配置する偏光板として好適に使用できる。すなわち、本実施形態に係る樹脂フィルム2を備えた液晶表示装置が得られる。このような液晶表示装置は、具体的には、液晶セルと、前記液晶セルを挟むように配置された2枚の偏光板とを備え、前記2枚の偏光板のうち少なくとも一方が、本実施形態に係る樹脂フィルムを備えた偏光板である液晶表示装置である。なお、液晶セルとは、一対の電極間に液晶物質が充填されたものであり、この電極に電圧を印加することで、液晶の配向状態が変化され、透過光量が制御される。
これらの偏光板や液晶表示装置は、本実施形態に係る樹脂フィルム2が防眩性を発揮するので、防眩性等を発揮させるために、別途、防眩層等を設けなくてもよいので、薄型化が可能である。
また、従来、樹脂フィルムに防眩性を付与させるためには、例えば、表面を凹凸形状に加工したり、別途、防眩層等を設ける必要があったが、樹脂フィルム2は、防眩性を有しているので、このような操作が不要であり、工程の簡略化や生産効率の向上を図れる。
また、微粒子21の密度が20体積%未満である領域を第1領域24とし、微粒子21の密度が20体積%以上である領域を第2領域23とした場合に、第2領域23の厚み(Y)が、第1領域24及び第2領域23の合計厚み(X+Y)に対して、5%以上50%以下であることが好ましく、8%以上35%以下であることがより好ましい。第2領域23の厚み(Y)が薄すぎると、樹脂フィルム2の一方の表面に近い側の領域(ここでは第2領域23)に、微粒子21が偏在しすぎるので、樹脂フィルム2の透光性が低くなる傾向がある。また、第2領域23の厚み(Y)が厚すぎると、微粒子21が樹脂フィルム2中に広く分布されることになり、微粒子21による機能性、例えば、防眩性や光拡散性を充分に発揮できない傾向がある。
樹脂フィルムの幅は、大型の液晶表示装置への使用、偏光板加工時のフィルムの使用効率、生産効率の点から、1000〜2400mmであることが好ましい。
また、樹脂フィルムの膜厚は、液晶表示装置の薄型化、樹脂フィルムの生産安定化の観点等の点から、20〜70μmであることが好ましい。ここで膜厚とは、平均膜厚のことであり、株式会社ミツトヨ製の接触式膜厚計により、樹脂フィルムの幅方向に50mm間隔で膜厚を測定し、その測定値の平均値を膜厚として示す。
以下、本実施形態で使用する樹脂溶液の組成、及び樹脂フィルムの製造装置等について詳述する。
(透明性樹脂)
本実施形態で使用される透明性樹脂は、溶液流延製膜法等によって基板状に成形したときに透明性を有する樹脂であればよく、特に制限されないが、溶液流延製膜法等による製造が容易であること、ハードコート層等との接着性に優れていること、光学的に等方性であること等が好ましい。なお、ここで透明性とは、可視光の透過率が60%以上であることであり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。透明性樹脂は、具体的には、例えば、セルロースジアセテート樹脂、セルローストリアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂;ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、セロファン、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、シンジオタクティックポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等のビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルケトンイミド樹脂;ポリアミド系樹脂;フッ素系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、セルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系樹脂が好ましい。さらに、セルロースエステル系樹脂が好ましく、セルロースエステル系樹脂の中でも、セルロースアセテート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースブチレート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が好ましく、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が特に好ましい。
次に、前記セルロースエステル系樹脂について説明する。
セルロースエステル系樹脂は、アセチル基の置換度をX、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記式(I)及び(II)を満たすセルロースの混合脂肪酸エステルを有するセルロースエステル系樹脂が好ましい。
2.0≦X+Y≦2.6 (I)
0.1≦Y≦1.2 (II)
また、上記式(I)及び(II)に加えて、下記式(III)及び(IV)を満たすセルロースの混合脂肪酸エステルを有するセルロースエステル系樹脂(総アシル基置換度=X+Y)がより好ましい。
2.4≦X+Y≦2.6 (III)
1.4≦X≦2.3 (IV)
さらに、上記式(I)〜(IV)に加えて、下記式(V)及び(VI)を満たすセルロースアセテートプロピオネート樹脂又はセルロースアセテートブチレート樹脂(総アシル基置換度=X+Y)が特に好ましい。
1.7≦X≦2.3 (V)
0.1≦Y≦0.9 (VI)
また、アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらのセルロースエステル系樹脂は、公知の方法で合成することができる。アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
前記セルロースエステル系樹脂の原料であるセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステル系樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステル系樹脂は、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
前記アシル化剤が、酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)である場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法等を参考にして合成することができる。また、セルロースエステル系樹脂は、各置換度に合わせて上記アシル化剤量を調整して反応させたものであり、セルロースエステル系樹脂はこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)と言う。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0である)。
また、セルロースエステル系樹脂としては、前述のようにセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、及びセルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂のようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが好ましく用いられる。なお、プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネート樹脂は、耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして特に有用である。
セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、40000〜200000であることが、樹脂フィルムに成型した場合の機械的強度が強く、かつ、溶液流延製膜法において適度なドープ粘度となる点で好ましく、50000〜150000であることがより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が、1.4〜4.5の範囲であることが好ましい。
次に、前記シクロオレフィン系樹脂について説明する。
前記シクロオレフィン系樹脂は、脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。前記シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、環状オレフィンを重合又は共重合した樹脂シクロオレフィン系樹脂が好ましい。前記環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエン等の多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。前記環状オレフィンには、置換基として極性基を有していてもよい。前記極性基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基等が挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基、及びカルボン酸無水物基が好適である。
前記シクロオレフィン系樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等のα−オレフィン系モノマー;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等のジエン系モノマー等が挙げられる。
前記環状オレフィンは、付加重合反応、又はメタセシス開環重合反応によって得られる。前記重合は、触媒の存在下で行われる。付加重合反応用の触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒等が挙げられる。開環重合反応用の触媒として、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒等が挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cm2の重合圧力で重合させる。
前記シクロオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリ
イソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジ
クロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム
等の遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金等の不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナ等の金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒等が挙げられる。
また、前記シクロオレフィン系樹脂としては、上記のもの以外に、下記ノルボルネン系樹脂も挙げられる。前記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましい。その具体例としては、例えば、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−2108号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報、特開2001−277430号公報、特開2003−139950号公報、特開2003−14901号公報、特開2003−161832号公報、特開2003−195268号公報、特開2003−211588号公報、特開2003−211589号公報、特開2003−268187号公報、特開2004−133209号公報、特開2004−309979号公報、特開2005−121813号公報、特開2005−164632号公報、特開2006−72309号公報、特開2006−178191号公報、特開2006−215333号公報、特開2006−268065号公報、特開2006−299199号公報等に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
前記シクロオレフィン系樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量で、5000〜500000であることが好ましく、8000〜200000であることがより好ましく、10000〜100000であることがさらに好ましい。上記の範囲内である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
また、シクロオレフィン系樹脂100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.0
1〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止す
ることができる。
次に、前記ポリカーボネート系樹脂について説明する。
前記ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定なく種々のものが使用でき、化学的性質及び物性の点から芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、特にビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。その中でも、ビスフェノールAにベンゼン環、シクロヘキサン環、及び脂肪族炭化水素基等を導入したビスフェノールA誘導体を用いたものがより好ましい。さらに、ビスフェノールAの中央の炭素に対して、非対称に上記官能基が導入された誘導体を用いて得られた、単位分子内の異方性を減少させた構造のポリカーボネート樹脂が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、例えば、ビスフェノールAの中央の炭素の2個のメチル基をベンゼン環に置き換えたもの、ビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環の一の水素をメチル基やフェニル基などで中央炭素に対し非対称に置換したものを用いて得られるポリカーボネート樹脂が特に好ましい。具体的には、4,4′−ジヒドロキシジフェニルアルカン又はこれらのハロゲン置換体からホスゲン法又はエステル交換法によって得られるものであり、例えば、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルブタン等が挙げられる。また、この他にも例えば、特開2006−215465号公報、特開2006−91836号公報、特開2005−121813号公報、特開2003−167121号公報等に記載されているポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
前記ポリカーボネート樹脂は、ポリスチレン系樹脂、メチルメタクリレート系樹脂、及びセルロースアセテート系樹脂等の透明性樹脂と混合して使用してもよい。また、セルロースアセテート系樹脂を用いて形成した樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリカーボネート系樹脂を含有する樹脂層を積層してもよい。
前記ポリカーボネート系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が110℃以上であって、吸水率(23℃水中、24時間の条件で測定した値)が0.3%以下のものであることがこのましい。また、Tgが120℃以上であって、吸水率が0.2%以下のものがより好ましい。
また、前記透明性樹脂は、上記例示した透明性樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(微粒子)
本実施形態で使用される微粒子は、使用目的に応じて適宜選択されるが、透明性樹脂中に含有することによって、可視光を散乱させることができる微粒子である。前記微粒子としては、無機微粒子であってもよいし、有機微粒子であってもよい。
前記無機微粒子としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等の微粒子が挙げられる。この中でも、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の微粒子が好ましく用いられる。
前記二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジル株式会社製のAEROSIL−200、200V、300、R972、R972V、R974、R976、R976S、R202、R812,R805、OX50、TT600、RY50、RX50、NY50、NAX50、NA50H、NA50Y、NX90、RY200S、RY200、RX200、R8200、RA200H、RA200HS、NA200Y、R816、R104、RY300、RX300、R106等が挙げられる。これらのうち、分散性や粒径を制御する点では、AEROSIL−200V、R972Vが好ましい。
前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が挙げられる。
また、前記有機微粒子としては、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、及びポリフッ化エチレン系樹脂等からなる微粒子が挙げられる。この中でも、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)のアクリル系樹脂微粒子等が好ましく、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)のアクリル系樹脂微粒子が特に好ましい。前記シリコーン樹脂の微粒子は、三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が挙げられる。
また、前記微粒子は、上記例示した微粒子を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記微粒子の平均粒子径としては、0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜5μmであることがより好ましい。微粒子の平均粒子径が小さすぎると、微粒子による機能性を充分に発揮できない傾向がある。また、大きすぎると、微粒子による機能性を充分に発揮できないだけでなく、樹脂フィルムの透光性も低下する傾向がある。なお、微粒子の平均粒子径は、樹脂フィルムの断面をTEM観察することによっても測定できるが、レーザ回折式粒度分布測定装置等を用いて測定することもできる。
前記微粒子の含有量は、前記透明性樹脂に対して0.01〜35質量%であることが好ましく、0.05〜30質量%であることがより好ましい。微粒子の含有量が少なすぎると、微粒子による機能性を充分に発揮できない傾向がある。また、多すぎると、樹脂フィルムの透光性が低下する傾向がある。
また、微粒子の形状は、特に限定されず、球状、平板状、針状等が挙げられ、球状であることが好ましい。
(溶媒)
本実施形態で使用される溶媒は、上記のように、透明性樹脂に対する良溶媒と貧溶媒とを含有する。
前記良溶媒と貧溶媒とは、使用する透明性樹脂によって異なる。例えばセルロースエステル系樹脂の場合、セルロースエステルのアシル基置換度によって、良溶媒と貧溶媒とが変わり、例えばアセトンを溶媒として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶媒になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶媒となる。したがって、使用する透明性樹脂により、良溶媒及び貧溶媒が異なってくるので、一例としてセルロースエステル系樹脂の場合について説明する。
セルロースエステル系樹脂に対する良溶媒としては、例えば、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン誘導体、シクロヘキサノン、蟻酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等が挙げられる。これらの中でも、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい。これらの良溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、セルロースエステル系樹脂に対する貧溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらの貧溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記良溶媒及び貧溶媒は、前記微粒子が良溶媒より貧溶媒に対して分散しやすいものである必要があり、使用する微粒子に併せて、上記例示した溶媒から適宜選択する必要がある。
(添加剤)
本実施形態で使用される樹脂溶液は、本発明の効果を阻害しない範囲で、透明性樹脂、微粒子及び溶媒以外の他の成分(添加剤)を含有してもよい。前記添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤、導電性物質、難燃剤、滑剤、及びマット剤等が挙げられる。
前記可塑剤としては、特に限定なく使用できるが、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が挙げられる。前記リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。前記フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等が挙げられる。前記トリメリット酸系可塑剤としては、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等が挙げられる。前記ピロメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等が挙げられる。前記グリコール酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。前記クエン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等が挙げられる。前記ポリエステル系可塑剤としては、例えば、脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマー等が挙げられる。また、前記脂肪族二塩基酸としては、特に限定なく使用できるが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等が挙げられる。
前記グリコール系可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記ポリエステル系可塑剤の分子量は、重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロースエステルとの相溶性の点から好ましい。
前記可塑剤は、特に200℃における蒸気圧が1333Pa未満であることが好ましく、666Pa以下であることがより好ましく、1〜133Paであることがさらに好ましい。また、不揮発性を有する可塑剤は、特に限定されないが、例えば、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、上記ポリエステル可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記可塑剤を含有させる場合、その含有量は、寸法安定性、加工性の点を考慮すると、セルロースエステル系樹脂に対して、1〜40質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましく、4〜15質量%であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量が少なすぎると、スリット加工や打ち抜き加工した際、滑らかな切断面を得ることができず、切り屑の発生が多くなる傾向がある。すなわち、可塑剤を含有させる効果が充分に発揮できない。
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。また、酸化防止剤の含有量は、セルロースエステル樹脂に対して質量割合で1ppm〜1.0%であることが好ましく、10〜1000ppmであることがより好ましい。
本実施形態に係る製造方法によって製造された樹脂フィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板又は液晶表示用部材等に使用することが可能であり、この場合、偏光板又は液晶等の劣化防止のため、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
前記紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。具体的には380nmの透過率が10%未満であることが好ましく、特に5%未満であることがより好ましい。
前記紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物(ベンゾフェノン系紫外線吸収剤)、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。また、例えば、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤が好ましく用いられ、特開平6−148430号公報、特開平12−273437号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。また、特開平10−152568号公報に記載の紫外線吸収剤を加えてもよい。
前記紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤としての効果、透明性等を考慮し、0.1質量%〜2.5質量%であることが好ましく、0.8質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。
上記の紫外線吸収剤の中では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。以下に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートとの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等が挙げられる。
前記熱安定剤としては、例えば、カオリン、タルク、けい藻土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩等が挙げられる。
前記導電性物質としては、特に限定はされないが、例えば、イオン導電性物質、導電性微粒子及びセルロースエステル系樹脂と相溶性を有する帯電防止剤等が挙げられる。前記導電性物質を含有させることによって、好ましいインピーダンスを有する樹脂フィルムを得ることができる。ここでイオン導電性物質とは、電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例えば、イオン性高分子化合物を挙げることができる。なお、ここでの導電性物質は、光散乱性を有する上記微粒子とは異なり、光散乱性を発揮しないものである。また、光散乱性を有する上記微粒子に、導電性を有するものを用いても、インピーダンスを好適化する機能を発揮できる。
前記イオン性高分子化合物としては、例えば、特公昭49−23828号公報、特公昭49−23827号公報、特公昭47−28937号公報に記載のアニオン性高分子化合物、特公昭55−734号公報、特開昭50−54672号公報、特公昭59−14735号公報、特公昭57−18175号公報、特公昭57−18176号公報、特公昭57−56059号公報等に記載の、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー、特公昭53−13223号公報、特公昭57−15376号公報、特公昭53−45231号公報、特公昭55−145783号公報、特公昭55−65950号公報、特公昭55−67746号公報、特公昭57−11342号公報、特公昭57−19735号公報、特公昭58−56858号公報、特開昭61−27853号公報、特開昭62−9346号公報に記載の、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー等が挙げられる。
また、前記導電性微粒子としては、導電性を有する金属酸化物の微粒子が挙げられる。前記金属酸化物としては、例えば、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V2O5、又はこれらの複合酸化物等が好ましく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、又SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は、107Ωcm以下であることが好ましく、105Ωcm以下であることがより好ましい。また、一次粒子径が10nm以上0.2μm以下で、高次構造の長径が30nm以上6μm以下である特定の構造を有する粉体をフィルム内の少なくとも一部の領域に体積分率で0.01%以上20%以下含んでいることが好ましい。
特に、特開平9−203810号公報に記載されているアイオネン導電性ポリマー又は分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマー等を含有することが好ましい。
前記架橋型カチオン性導電性ポリマーの特徴は、得られる分散性粒状ポリマーにあり、粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度に持たせることが出来るため、優れた導電性を有しているばかりでなく、低相対湿度下においても導電性の劣化は見られず、粒子同志も分散状態ではよく分散されているにもかかわらず、塗布後造膜過程において粒子同志の接着性もよいため膜強度も強く、また他の物質、例えば基体にも優れた接着性を有し、耐薬品性に優れている。
架橋型のカチオン性導電性ポリマーである分散性粒状ポリマーは、一般に約0.01μm〜0.3μmの粒子サイズ範囲にあり、好ましくは0.05μm〜0.15μmの範囲の粒子サイズが用いられる。ここで用いている「分散性粒状ポリマー」の語は、視覚的観察によって透明又はわずかに濁った溶液に見えるが、電子顕微鏡の下では粒状分散物として見えるポリマーである。
(ドープの調製方法)
次にドープを調製する方法の一例として、透明性樹脂としてセルロースエステル系樹脂を用いた場合について説明する。まず、セルロースエステル系樹脂を溶媒に溶解させる。そして、その溶液に前記微粒子を分散させる。
(溶解方法)
ドープを調製する時の、セルロースエステル系樹脂の溶解方法としては、特に限定なく、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせることによって、常圧における溶媒の沸点以上に加熱できることを利用し、常圧における沸点以上で溶媒にセルロースエステル系樹脂を溶解させることが、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止する点から好ましい。また、セルロースエステル系樹脂を貧溶媒と混合して湿潤又は膨潤させた後、さらに良溶媒を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
前記加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、密閉容器に溶媒を加熱して、前記加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。前記加熱は、外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
セルロースエステル系樹脂を溶解させる時の溶媒の温度(加熱温度)は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度を高くしようとすると、前記加圧によって容器内の圧力を高くしなければならず、生産性が悪化する。よって、前記加熱温度は、45〜120℃であることが好ましく、60〜110℃であることがより好ましく、70〜105℃であることがさらに好ましい。また、前記圧力は、設定温度で溶媒が沸騰しないような圧力に調整される。もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にセルロースエステル系樹脂を溶解させることができる。
次に、得られたセルロースエステル系樹脂の溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。前記濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度が0.008mm以下の濾過材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾過材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾過材がさらに好ましい。
濾過材の材質は、特に制限はなく、通常の濾過材を使用することができる。例えば、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾過材や、ステンレススティール等の金属製の濾過材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステル系樹脂の溶液に含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
前記輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に樹脂フィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
濾過は、特に限定なく、通常の方法で行うことができるが、溶媒の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。前記温度としては、45〜120℃であることが好ましく、45〜70℃であることがより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
前記濾圧は、小さい方が好ましく、例えば、1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
前記各添加剤を含有させる場合は、例えば、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に前記添加剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。また、無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、添加剤とセルロースエステル系樹脂とをデゾルバーやサンドミルを使用して、セルロースエステル系樹脂中に添加剤を分散したものをドープに添加することが好ましい。
(分散方法)
得られたセルロースエステル系樹脂の溶液に前記微粒子を分散させる。分散させる方法(分散方法A)は、特に限定なく、例えば、以下のようにして行うことができる。例えば、まず、分散用溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。この微粒子分散液を上記セルロースエステル系樹脂の溶液に加えて撹拌する。
また、別の方法(分散方法B)としては、例えば、分散用溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別途、溶剤に少量のセルロースエステル系樹脂を加え、撹拌溶解させ、前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーで上記セルロースエステル系樹脂の溶液と十分混合する。なお、ここで添加するセルロースエステル系樹脂としては、透明性樹脂として用いるセルロースエステル系樹脂と同様のものであることが好ましく、セルロースエステル系樹脂を予め溶解させるための溶剤は、分散用溶媒と同様のものであることが好ましい。
また、さらに別の方法(分散方法C)としては、例えば、分散用溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解させ、微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーで上記セルロースエステル系樹脂の溶液と充分混合する。
分散方法Bは、微粒子の分散性に優れ、分散方法Cは、微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、分散方法Bは、微粒子の分散性と、微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい分散方法である。
前記分散用溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類が挙げられる。また、低級アルコール類に特に限定されないが、セルロースエステル系樹脂の溶液を調製する際に用いた溶媒と同様のものを用いることが好ましい。
前記分散機としては、特に限定なく使用でき、一般的な分散機を使用できる。分散機は、大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられるが、メディアレス分散機のほうかがヘイズが低くなる(透光性が高くなる)点から好ましい。前記メディア分散機としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ダイノミル等が挙げられる。また、前記メディアレス分散機としては、超音波型、遠心型、高圧型等が挙げられ、高圧型分散装置が好ましい。前記高圧分散装置とは、微粒子と溶媒とを混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。さらに好ましくは19.613MPa以上である。また、その際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが特に好ましい。
前記高圧分散装置としては、例えば、Microfluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)、ナノマイザ社製ナノマイザ等が挙げられ、他にマントンゴーリン型高圧分散装置等も挙げられる。また、マントンゴーリン型高圧分散装置としては、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)製UHN−01等が挙げられる。
(製造装置)
次に、本実施形態を実施するために用いられる樹脂フィルムの製造装置について説明する。以下に、樹脂フィルムの製造装置の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
図3は、無端ベルト支持体を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置の構成を示す概略図である。図3(a)は、流延後、第1乾燥装置102で予備乾燥し、その後、延伸装置103で搬送した後、第2乾燥装置104で本乾燥を行う無端ベルト支持体を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置1aの構成を示す。図3(b)は、流延後、第1延伸装置102′と第2延伸装置103とで搬送した後、第2乾燥装置104で本乾燥を行う無端ベルト支持体を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置1bの構成を示す。図3(c)は、第1延伸装置102′と第2延伸装置103との間に第1乾燥装置103′を設け、最後に第2乾燥装置104で本乾燥を行う無端ベルト支持体を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置1cの構成を示す。
まず、図3(a)に示す製造装置1aについて説明する。
製造装置1aは、流延装置101と、第1乾燥装置102と延伸装置103と、第2乾燥装置104と、巻取装置105とを備える。
流延装置101は、鏡面の無端ベルト支持体101aと、ドープ2を無端ベルト支持体101aに流延する流延ダイ101bと、加熱装置101cと、剥離ロール4とを備える。また、無端ベルト支持体101aは、ロール101a1とロール101a2とで回転(図中の矢印方向)可能に保持されている。剥離ロール4は、無端ベルト支持体101aのドープ2が流延される側の表面に接している。
流延ダイ101bから無端ベルト支持体101aにドープ2が流延されると、ドープ2が無端ベルト支持体101a上で、流延膜(ウェブ)3を形成する。そして、剥離ロール4によって、固化されたウェブを剥離する。ウェブ3の厚さは、巻取装置105で回収された樹脂フィルムの厚さが所定の膜厚になるように必要に応じて設定が可能となっている。なお、ウェブ3の厚さは、流延させるドープ2の量や無端ベルト支持体101aの回転速度等によって調整される。
加熱装置101cは、無端ベルト支持体101aの上に流延されたドープ2を無端ベルト支持体101aから剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。加熱装置101cは、乾燥箱101c1と、乾燥箱101c1に配設された第1加熱風供給装置101dと、第2加熱風供給装置101eと、排気管101fとを備える。第1加熱風供給装置101dは、加熱風供給管101d1とヘッダー101d2とを備える。第2加熱風供給装置101eは、加熱風供給管101e1とヘッダー101e2とを備える。
第1加熱風供給装置101d側の無端ベルト支持体101a上のウェブの温度及び第2加熱風供給装置101e側の無端ベルト支持体101a上のウェブの温度は、溶媒の蒸発時間に伴う搬送速度、微粒子の分散度合、生産性等を考慮し、−5℃〜70℃の範囲が好ましく、特に0℃〜60℃の範囲が好ましい。
第1加熱風供給装置101d及び第2加熱風供給装置101eから供給する加熱風の風圧は、溶媒蒸発の均一性、微粒子の分散度合等を考慮し、50Pa〜5000Paが好ましい。
第1加熱風供給装置101dによる無端ベルト支持体101a上のウェブ3へ供給する加熱風の温度は、一定の温度で乾燥してもよいし、無端ベルト支持体101aの移動方向で数段階の温度に分けて供給してもよい。また、第2加熱風供給装置101eによる無端ベルト支持体101a上のウェブ3へ供給する加熱風の供給も同様である。
図3(a)に示す加熱装置101cは、加熱風を使用した場合を示しているが、加熱手段としては特に限定はなく、この他に、例えば、無端ベルト支持体101a上のウェブを赤外線ヒータで加熱する方法、無端ベルト支持体101aの裏面に温風を吹き付け裏面側から加熱する方法等が挙げられ、必要に応じて適宜選択することが可能である。
無端ベルト支持体101aの上にドープを流延した後、無端ベルト支持体101aからウェブ3を剥離までの間での時間は、作製する樹脂フィルムの膜厚、使用溶媒によって異なるが、無端ベルト支持体101aからの剥離性を考慮し、0.5分〜5分の範囲が好ましい。
前記無端ベルト支持体101aとしては、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、例えば、鋳物で表面をメッキ仕上げした金属ベルトが好ましく用いられる。無端ベルト支持体101aの幅は、1700mm〜2700mmが好ましい。流延する幅は、無端ベルト支持体101aの幅に対して、80%〜99%とすることが好ましい。
ウェブ3を無端ベルト支持体101aより剥離する時のウェブ3の全残留溶媒量は、無端ベルト支持体からの剥離性、剥離時の残留溶媒量、剥離後の搬送性、搬送・乾燥後にできあがる樹脂フィルムの物理特性等を考慮し、30質量%〜200質量%が好ましい。
無端ベルト支持体101aより剥離した時から延伸装置102で延伸を開始する時までのウェブ3の残留溶媒量は、製品としての樹脂フィルムのカール、シワ等を考慮し、5質量%〜50質量%が好ましい。
無端ベルト支持体101aからウェブ3を剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブ3は、ウェブ3の搬送方向(Machine Direction:MD方向)に延伸するため、本実施形態においては無端ベルト支持体101aからウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力は50N/m〜400N/mにすることが好ましい。
第1乾燥装置102は、乾燥風取り入れ口102bと排出口102cとを有する乾燥箱102aと、ウェブ3を搬送する上部の搬送ロール102dと下部の搬送ロール102eとを備える。上部の搬送ロール102dと下部の搬送ロール102eとは上下一組で、複数組から構成されている。第1乾燥装置102によって、延伸装置103に入る前のウェブ3に含まれる溶媒量の調整が行うことが可能となっている。
乾燥温度は、延伸装置103に入る時のウェブ3の残留溶媒量によって、好適温度が異なるが、溶媒の蒸発に伴うウェブの表面への露結、残留溶媒量、伸縮率の調整、溶媒の発泡等を考慮し、20℃〜80℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
本図に示す製造装置1aの場合、無端ベルト支持体101aより剥離し、延伸装置103で延伸開始時までのウェブ3のMD方向の伸縮率は、できあがった樹脂フィルムの弾性率、光学特性等を考慮し、1%〜25%であることが好ましい。また、ウェブ3の搬送方向と直交する方向(Transverse Direction:TD方向)の伸縮率は、できあがった樹脂フィルムの弾性率、光学特性等を考慮し、−1%〜−25%であることが好ましい。
延伸装置103は、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとを有する外箱103aと、外箱103aの中に入れられたテンター延伸装置103dとを備える。テンター延伸装置103dに使用するテンターは、特に限定はなく、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。テンター延伸装置103dでは、ウェブ3をMD方向、及びTD方向に必要に応じて延伸することが可能となっている。延伸装置103で延伸開始時のウェブの全残留溶媒量は、スリキズ、収縮率、変形等を考慮し、10質量%〜30質量%にすることが好ましい。なお、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとは、逆であってもよい。延伸装置103における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、この他に、例えば赤外線ヒータで加熱する手段等が挙げられる。
第2乾燥装置104は、乾燥風取り入れ口104bと排出口104cとを有する乾燥箱104aと、ウェブ3を搬送する上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとを備える。上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとは上下一組で、複数組から構成されている。第2乾燥装置104に配設される搬送ロールの数は、乾燥条件、方法、製造される光学用フィルムの長さ等により異なり適宜設定している。上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとは駆動源によって回転駆動されない自由回転ロールとなっている。また、第2乾燥装置104から巻取装置105までの間には、全て自由回転する搬送ロールが用いられるわけではなく、通常、1本〜数本の搬送用駆動ロール(駆動源によって回転駆動するロール)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ロールは、その駆動で樹脂フィルムを搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアーの吸引)などにより、樹脂フィルムの搬送と、駆動ロールの回転とを同期させる機構が付いている。
第2乾燥装置104では、加熱空気、赤外線等を単独で用いて乾燥もよいし、加熱空気と赤外線とを併用して乾燥してもよい。簡便さの点から加熱空気を用いることが好ましい。なお、図3(a)本図は加熱空気を使用した場合を示している。乾燥温度は、乾燥工程に入る時のウェブの残留溶媒量により、好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、30℃〜180℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
第2乾燥装置104での乾燥処理後の樹脂フィルムの残留溶媒量は、乾燥工程の負荷、保存時の寸法安定性伸縮率等を考慮し、0.01質量%〜15質量%が好ましい。なお、本実施形態では、流延装置101で形成されたウェブ3が第2乾燥工程104で徐々に溶媒が除去され、全残留溶媒量が15質量%以下となったウェブを樹脂フィルムと言う。
巻取装置105は、第2乾燥装置104で、所定の残留溶媒量となった樹脂フィルム5を必要量の長さに巻き芯に巻き取る。樹脂フィルム105aは、巻き芯に巻き取られたロール状の樹脂フィルムを示す。なお、巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮によるスリキズ、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻き取り機は、特に限定なくしようでき、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。
巻取装置105で回収された樹脂フィルム5の伸縮率は、搬送・乾燥後にできあがる樹脂フィルムの物理特性等を考慮し、MD方向の伸縮率が0%〜20%で、TD方向の伸縮率が−3%〜20%であることが好ましい。
次に、図3(b)に示す製造装置1bについて説明する。
製造装置1bは、流延装置101と、第1延伸装置102′と、第2延伸装置103と、乾燥装置104と、巻取装置105とを備える。すなわち、第1乾燥装置102の代わりに第1延伸装置102′を備えたこと以外、上記製造装置1aと同様である。なお、第2延伸装置103は、製造装置1aの延伸装置103と同様であり、乾燥装置104は、製造装置1aの第2乾燥装置104と同様である。また、流延装置101、第2延伸装置103、乾燥装置104は、製造装置1aのものと同様であるので、説明を省略する。
第1延伸装置102′は、乾燥風取り入れ口102′bと排出口102′cとを有する外箱102′aと、外箱102′aの中に入れられたテンター搬送装置102′dとを備える。テンター搬送装置102′dに使用するテンターは、第2延伸工程103に使用されるテンターと同じテンターの使用が可能である。テンター搬送装置102′dでは、ウェブ3の両端をテンターで保持して搬送するためMD方向の収縮を制御することが可能となっている。第1延伸工程102′によって、延伸工程103に入る前のウェブ3に含まれる溶媒量の調整が行うことが可能となっている。
図3(b)に示す製造装置の場合、無端ベルト支持体101aよりウェブ3を剥離する時のウェブ3の全残留溶媒量は、製造装置1aの場合と同様である。無端ベルト支持体より剥離し、第2延伸装置103で延伸開始時までのウェブ3のMD方向の伸縮率は、製造装置1aの場合と同様である。第1延伸装置102′における処理が終了し、第2延伸装置103での延伸が開始される時のウェブの全残留溶媒量は、製造装置1aの場合と同様である。無端ベルト支持体より剥離し、第2延伸装置103で延伸開始時までのウェブ3のMD方向の伸縮率及びTD方向の伸縮率は、製造装置1aの場合と同様である。巻取装置105で回収された樹脂フィルム5の伸縮率は、製造装置1aの場合と同様である。
次に、図3(c)に示す製造装置1cについて説明する。
製造装置1cは、流延装置101と、第1延伸装置102′と、第1乾燥装置103′と、第2延伸装置103と、第2乾燥装置104と、巻取装置105とを備える。すなわち、第1延伸装置102′と第2延伸装置103との間に第1乾燥装置103′を備えたこと以外、上記製造装置1bと同様である。なお、第1乾燥装置103′以外は、製造装置1bのものと同様であるので、説明を省略する。
第1乾燥装置103′は、加熱装置103′aと、加熱装置103′aを挟んで第1延伸装置102′側にフィードロール103′gと第2延伸装置103側にフィードロール103′hとを備える。第1乾燥装置103′は、ウェブ3を乾燥させるだけではなく、フィードロール103′bとフィードロール103′cとの周速度のバランスによりMD延伸率の調整が可能となっている。
加熱装置103′aは、乾燥風取り入れ口103′bと排出口103′cとを有する乾燥箱103′dと、ウェブ3を搬送する上部の搬送ロール103′eと下部の搬送ロール103′fとを備える。図3(c)に示す加熱装置103′aは、加熱風を使用した場合を示しているが、加熱手段としては特に限定はなく、この他に、赤外線ヒータで加熱する方法も挙げられ、必要に応じて適宜選択することが可能である。搬送ロールの数は、MD延伸率により適宜設定が可能となっている。第1乾燥装置103′では第2延伸工程103に入る前のウェブ3に含まれる溶媒量の調整が行うことも可能となっている。
加熱装置103′aでは加熱空気、赤外線等を単独で用いて乾燥してもよいし、加熱空気と赤外線とを併用して乾燥してもよい。簡便さの点から加熱空気を用いることが好ましい。なお、図3(c)は、加熱空気を使用した場合を示している。
加熱温度は、第1乾燥工程102′より搬送されてくるウェブの残留溶媒量、又は延伸工程に入る時のウェブの残留溶媒量により異なるが、溶媒の蒸発に伴うウェブの表面への露結、残留溶媒量、伸縮率の調整、溶媒の発泡等を考慮し、20℃〜80℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決め調整し加熱することが好ましい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、数段階の温度に分けて乾燥しても構わない。
図3(c)に示す製造装置の場合、無端ベルト支持体101aより剥離する時のウェブ3の残留溶媒量、及び残留溶媒量の幅手の分布は、製造装置1aの場合と同様である。無端ベルト支持体より剥離し、第2延伸装置103で延伸開始時までのウェブ3のMD方向の伸縮率は、製造装置1aの場合と同様である。第1延伸装置102′における処理が終了し、第2延伸工程103での延伸が開始される時のウェブの残留溶媒量の幅手の分布、及び全残留溶媒量は、製造装置1aの場合と同様である。無端ベルト支持体より剥離し、第2延伸装置103で延伸開始時までのウェブ3のMD方向の伸縮率及びTD方向の伸縮率は、製造装置1aの場合と同様である。巻取装置105で回収された樹脂フィルム5の伸縮率は、製造装置1aの場合と同様である。図3(a)〜図3(c)に示される製造装置に使用されるドープは同じものであり、上記樹脂溶液である。
図4は、無端ドラム支持体を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置の構成を示す概略図である。図4(a)は、流延後、第1乾燥装置102で予備乾燥し、その後、延伸装置103で搬送した後、第2乾燥装置104で本乾燥を行う無端ドラム支持体を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置11aの構成を示す。図4(b)は、流延後、第1延伸装置102′と第2延伸装置103とで搬送した後、第2乾燥装置104で本乾燥を行う無端ドラム支持体を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置11bの構成を示す。図4(c)は、第1延伸装置102′と第2延伸装置103との間に第1乾燥装置103′を設け、最後に第2乾燥装置104で本乾燥を行う無端ドラム支持体を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置11cの構成を示す。
まず、図4(a)に示す製造装置11aについて説明する。
製造装置11aは、流延装置101′と、第1乾燥装置102と延伸装置103と、第2乾燥装置104と、巻取装置105とを備える。すなわち、無端ベルト支持体を使用した流延装置101の代わりに、無端ドラム支持体を使用した流延装置101′を備えたこと以外、上記製造装置1aと同様である。なお、流延装置101′以外は、製造装置1aのものと同様であるので、説明を省略する。
流延装置101′は、鏡面の無端ドラム支持体101′aと、ドープ2を無端ドラム支持体101′aに流延する流延ダイ101′bと、加熱装置101′cと、剥離ロール4′とを備える。また、無端ドラム支持体101′aは、回転(図中の矢印方向)可能に、流延装置101′に軸支されている。剥離ロール4′は、無端ドラム支持体101′aのドープ2が流延される側の表面に接している。
流延ダイ101′bから無端ドラム支持体101′aにドープ2が流延されると、ドープ2が無端ドラム支持体101′a上で、流延膜(ウェブ)3を形成する。そして、剥離ロール4によって、固化されたウェブを剥離する。ウェブ3の厚さは、巻取装置105で回収された樹脂フィルムの厚さが所定の膜厚になるように必要に応じて設定が可能となっている。なお、ウェブ3の厚さは、流延させるドープ2の量や無端ドラム支持体101′aの回転速度等によって調整される。
加熱装置101′cは、無端ドラム支持体101′aの上に流延されたドープ2を無端ドラム支持体101′aから剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。加熱装置101′cは、乾燥箱101′c1と、乾燥箱101′c1に配設された加熱風供給装置101′dと、排気管101′fとを備える。加熱風供給装置101′dは、加熱風供給管101′d1とヘッダー101′d2とを備える。無端ドラム支持体101′a上のウェブの温度は、溶媒の蒸発時間に伴う搬送速度、微粒子の分散度合、生産性等を考慮し、−5〜70℃の範囲が好ましく、特に0〜60℃の範囲が好ましい。
加熱風供給装置101′dから供給する加熱風の風圧は、溶媒蒸発の均一性、微粒子の分散度合等を考慮し、50Pa〜5000Paが好ましい。加熱風供給装置101′dによる無端ベルト支持体101a上のウェブ3へ供給する加熱風の温度は、一定の温度で乾燥してもよいし、無端ドラム支持体101′aの回転方向で数段階の温度に分けて供給してもよい。
図4(a)に示す加熱装置101′cは、加熱風を使用した場合を示しているが、加熱手段としては特に限定はなく、この他に、例えば、無端ドラム支持体101′a上のウェブを赤外線ヒータで加熱する方法、無端ドラム支持体101′aの内側から加熱する方法等が挙げられ、必要に応じて適宜選択することが可能である。
無端ドラム支持体101′aの上にドープを流延した後、無端ドラム支持体101′aからウェブ3を剥離までの間での時間は、作製する樹脂フィルムの膜厚、使用溶媒によって異なるが、無端ドラム支持体101′aからの剥離性を考慮し、0.3〜5分間の範囲が好ましい。
前記無端ドラム支持体101′aとしては、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、例えば、表面を鏡面仕上げした金属ドラムが好ましく用いられる。無端ドラム支持体101′aの幅は、1000〜3000mmが好ましい。流延する幅は、無端ドラム支持体101′aの幅に対して、30〜95%とすることが好ましい。
ウェブ3を無端ドラム支持体101′aより剥離する時のウェブ3の全残留溶媒量は、無端ドラム支持体からの剥離性、剥離時の残留溶媒量、剥離後の搬送性、搬送・乾燥後にできあがる樹脂フィルムの物理特性等を考慮し、30〜200質量%が好ましい。
無端ドラム支持体101′aより剥離した時から延伸装置102で延伸を開始する時までのウェブ3の残留溶媒量は、製品としての樹脂フィルムのカール、シワ等を考慮し、5〜50質量%が好ましい。
無端ドラム支持体101′aからウェブ3を剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブ3は、ウェブ3の搬送方向(Machine Direction:MD方向)に延伸するため、本実施形態においては無端ドラム支持体101′aからウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力は50〜400N/mにすることが好ましい。
図4(a)に示す製造装置11aにおける、各工程における溶媒量や延伸率等は、上記製造装置1aと同様である。
次に、図4(b)に示す製造装置11bについて説明する。
製造装置11bは、流延装置101′と、第1延伸装置102′と、第2延伸装置103と、乾燥装置104と、巻取装置105とを備える。すなわち、無端ベルト支持体を使用した流延装置101の代わりに、無端ドラム支持体を使用した流延装置101′を備えたこと以外、上記製造装置1bと同様であり、無端ドラム支持体を使用した流延装置101′は、上記製造装置11aのものと同様である。よって、各装置の説明は省略する。また、図4(b)に示す製造装置11bにおける、各工程における溶媒量や延伸率等は、上記製造装置1bと同様である。
次に、図4(c)に示す製造装置11cについて説明する。
製造装置11cは、流延装置101′と、第1延伸装置102′と、第1乾燥装置103′と、第2延伸装置103と、第2乾燥装置104と、巻取装置105とを備える。すなわち、無端ベルト支持体を使用した流延装置101の代わりに、無端ドラム支持体を使用した流延装置101′を備えたこと以外、上記製造装置1cと同様であり、無端ドラム支持体を使用した流延装置101′は、上記製造装置11aのものと同様である。よって、各装置の説明は省略する。また、図4(c)に示す製造装置11cにおける、各工程における溶媒量や延伸率等は、上記製造装置1cと同様である。また、図4(a)〜図4(c)に示される製造装置に使用されるドープは同じものであり、上記樹脂溶液である。
図3、及び図4に示される溶液流延法による製造装置を使用し、樹脂フィルムを製造する際の残留溶媒量(質量%)の値は、一定の大きさのウェブ(光学用フィルム)を115℃で1時間乾燥した時のウェブ(光学用フィルム)の質量をBとし、乾燥前のウェブ(光学用フィルム)の質量をAとした時、((A−B)/B)×100=残留溶媒量(質量%)で求めた値である。
MD方向の伸縮率は、流延時の搬送速度に対する延伸開始時の搬送速度、又は流延時の搬送速度に対する巻き取り時の搬送速度により求めた値である。
また、TD方向の伸縮率は、流延時のウェブ幅に対する延伸開始時のウェブ幅、又は流延時のウェブ幅に対する巻き取り時の樹脂フィルム幅により求めた値である。
(積層フィルム)
本実施形態に係る製造方法によって製造された樹脂フィルムは、他の層、例えば、ハードコート層や反射防止層等を積層してもよい。このような他の層を積層した積層フィルムとしては、以下のようなものが挙げられる。
(ハードコートフィルム)
図5は、樹脂フィルム2上にハードコート層51を設けた防眩性を有する積層フィルム5の断面構造を示す概略図である。積層フィルム5は、上記樹脂フィルム2と、ハードコート層51とを備え、前記ハードコート層51が樹脂フィルム2の第2領域23側に積層されたものである。前記ハードコート層51は、樹脂フィルム2の少なくとも一方の表面上に積層されていればよく、例えば、図5に示すように、第2領域23側にのみ積層されたものであってもよいし、樹脂フィルム2の両面に積層されたものであってもよい。また、いずれか一方の表面にのみ積層する場合には、図5に示すように、第2領域23側に積層することが好ましい。積層フィルム5は、防眩性を有するハードコートフィルムとしての特徴を有し、液晶表示用部材として使用することが可能である。
前記ハードコート層51は、積層フィルム5の耐擦傷性を向上させるための層である。また、前記ハードコート層51としては、例えば、活性線硬化樹脂層であることが好ましい。活性線硬化樹脂層とは、紫外線や電子線のような活性線の照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂である活性線硬化樹脂を主たる成分とする層を言う。
活性線硬化樹脂としては、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させることができる樹脂であればよく、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましい。活性線硬化樹脂としては、紫外線を照射することによって硬化する紫外線硬化樹脂や電子線を照射することによって硬化する電子線硬化樹脂等が挙げられ、紫外線硬化樹脂が好ましい。
前記紫外線硬化樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のものが挙げられる。例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
前記紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、ポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151112号公報に記載のものが挙げられる。
前記紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開平1−105738号公報に記載のものが挙げられる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
上記紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体等が挙げられる。また、光増感剤と共に使用してもよく、上記光反応開始剤も光増感剤として使用することもできる。前記紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂に対する光反応開始剤の使用の際には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の光増感剤を用いることができる。光反応開始剤又光増感剤の含有量は、活性線硬化樹脂層形成用塗布液100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
紫外線硬化性樹脂の硬化前の樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーが挙げられ、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また、不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等が挙げられる。
前記紫外線硬化樹脂の市販品としては、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等が挙げられる。
また、上記紫外線硬化樹脂の樹脂モノマーの具体的な化合物例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
活性線硬化樹脂層形成用塗布液の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル等のエステル類、グリコールエーテル類、アルキル基の炭素原子数として1〜4であるプロピレングリコールモノアルキルエーテル、及びアルキル基の炭素原子数として1〜4であるプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、活性線硬化樹脂層形成用塗布液には、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリコーン化合物、無機微粒子、及び有機粒子等を含有してもよい。
前記シリコーン化合物としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。前記ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1,000〜100,000であることが好ましく、2,000〜50,000であることがより好ましい。数平均分子量が低すぎると、塗膜の乾燥性が低下する傾向があり、また、数平均分子量が高すぎると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向がある。
前記シリコーン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられる。
前記シリコーン化合物は、樹脂フィルムへの塗布性を高める。また、積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐スリキズ性にも効果を発揮する。前記シリコーン化合物は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
こうして得られたハードコート(硬化樹脂)層に、ブロッキングを防止するため、対スリキズ性等を高めるため、及び硬化樹脂層の屈折率を調整するために無機微粒子または有機粒子を添加することもできる。
前記無機微粒子としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等の微粒子が挙げられる。この中でも、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の微粒子が好ましく用いられる。
前記有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、及びポリ弗化エチレン系樹脂粉末等が挙げられる。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
これらの微粒子の平均粒径としては、0.005〜5μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがより好ましい。これらの粒子の形状は特に限定されず、球状、平板状、針状の粒子が好ましく用いられる。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが好ましい。
ハードコート層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.001〜0.1μmのクリアハードコート層であるか、もしくはRaが0.1〜1μm程度の防眩層であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定
器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製RST/PLUSを用いて測定することができる。
前記活性線硬化樹脂層は、活性線硬化樹脂を有機溶媒に溶解した、活性線硬化樹脂層形成用塗布液を塗布した後、乾燥中、又は乾燥後に活性線を照射することで形成される。
前記活性線硬化樹脂層形成用塗布液の塗布方法としては、特に限定はなく、例えば、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することができる。塗布量は、ウェット膜厚として、0.1〜30μmであることが適当で、好ましくは、0.5〜25μmである。また、ドライ膜厚としては、0.1〜15μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
また、前記活性線の照射時間としては、例えば、0.1秒間〜5分間程度が好ましく、活性線硬化樹脂として紫外線硬化樹脂を用いた場合、硬化効率及び作業効率の観点から、0.1〜10秒がより好ましい。また、紫外線照射の照度は、50〜150mW/m2であることが好ましい。
紫外線硬化樹脂を光硬化反応により硬化させ、ハードコート層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。照射条件は、それぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、5〜200mJ/cm2であることが好ましく、20〜100mJ/cm2であることが好ましい。
(反射防止フィルム)
図6は、積層フィルム5上に反射防止層61を設けた反射防止性を有する積層フィルム6の断面構造を示す概略図である。積層フィルム6は、図6に示すように、ハードコート層51上に反射防止層61が積層されたものである。
前記反射防止層61は、入射光の反射を低減し、入射光の反射を抑制するための層である。前記反射防止層61としては、ハードコート層51よりも屈折率の低い低屈折率層を備える層であることが好ましい。また、ハードコート層51と低屈折率層との間に、前記ハードコート層51よりも屈折率の高い高屈折率層を備えることがより好ましい。ハードコート層51と高屈折率層との間に、前記低屈折率層よりも屈折率の高く、前記高屈折率層よりも屈折率の低い中屈折率層を備えることがさらに好ましい。また、低屈折率層、高屈折率層及び中屈折率層は、上記の順に限らない。なお、前記反射防止層61は、無機微粒子とバインダとを含む層であって、これらの比率や組成を変えることによって、屈折率を調整することができる。
反射防止層を設ける方法は、特に限定されず、例えば、塗布法、スパッタ、蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等が挙げられ、これらを組み合わせて形成してもよい。前記塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、エクストルージョンコート法及びインクジェット法により、塗布形成することができる。
前記反射防止層を塗布により形成する方法としては、例えば、溶剤に溶解したバインダ樹脂中に無機微粒子を分散した反射防止層形成用塗布液を塗布して乾燥させる方法、エチレン性不飽和モノマーと光重合開始剤を含有する反射防止層形成用塗布液を塗布した後、活性線を照射することにより層を形成する方法等の方法が挙げられ、前記バインダ樹脂として、架橋構造を有するポリマーを用いる方法等も挙げられる。
前記高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることがより好ましい。前記中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。また、前記低屈折率層の屈折率は、1.46以下であることが好ましく、1.3〜1.45であることがより好ましい。なお、前記ハードコート層の屈折率は、1.4〜1.6であることが好ましい。前記反射防止層の各層の厚さは、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることがより好ましく、30nm〜0.2μmであることがさらに好ましい。前期各膜厚は、各層の屈折率や層の数等の構成によって常法に従って決定される。高屈折率層(金属酸化物層)のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。金属酸化物層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で3H以上であることが好ましく、4H以上であることがより好ましい。金属酸化物層を塗布により形成する場合は、無機微粒子とバインダを含むことが好ましい。
前記反射防止層に用いる無機微粒子は、屈折率が1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることがより好ましい。前記無機微粒子の一次粒子の重量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、1〜80nmであることがさらに好ましい。層中での無機微粒子の重量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。前記無機微粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により測定され、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。前記無機微粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることがより好ましく、30〜150m2/gであることがさらに好ましい。
前記無機微粒子としては、金属酸化物から形成された粒子であることが好ましい。前記金属酸化物としては、例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造の二酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、二酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが好ましい。前記無機微粒子としては、これらの金属酸化物を主成分とし、さらに他の元素を含有してもよい。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。また、前記他の元素の例としては、例えば、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びS等が挙げられる。
また、前記無機微粒子は、表面処理されていることが好ましい。前記表面処理は、無機化合物又は有機化合物を用いて実施することができる。前記表面処理に用いる無機化合物としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム及び酸化鉄等が挙げられる。これらの中でも、アルミナ及びシリカが好ましい。表面処理に用いる有機化合物としては、例えば、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。上記化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記無機微粒子の形状としては、例えば、米粒状、球形状、立方体状、層状、紡錘形状及び不定形状のいずれであってもよい。また、前記無機微粒子は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記無機微粒子の含有量は、目的とする屈折率によって異なるが、反射防止層に対して5〜90体積%であることが好ましい。また、この含有量は、目的とする屈折率によって調整される。
前記バインダとしては、架橋構造を有するポリマー(以下、「架橋ポリマー」とも言う)が好ましい。前記架橋ポリマーとしては、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー(以下「ポリオレフィン」と総称する)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物がより好ましく、ポリオレフィンの架橋物がさらに好ましい。また、前記架橋ポリマーは、アニオン性基を有することが特に好ましい。前記アニオン性基は、無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋構造は、ポリマーに皮膜形成能を付与して皮膜を強化する機能を有する。上記アニオン性基は、ポリマー鎖に直接結合していてもよいし、連結基を介してポリマー鎖に結合していてもよいが、連結基を介して側鎖として主鎖に結合していることが好ましい。
前記反射防止層形成用塗布液は、前記無機微粒子を媒体に分散させた状態の塗布液である。この分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル等のエステル化合物、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等のアミド化合物、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン等のエーテル化合物、1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテルアルコール化合物等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
前記無機微粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することができる。前記分散機としては、例えば、ピン付きビーズミル等のサンドグラインダーミル、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミル等が挙げられる。これらの中でも、サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予め予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機としては、例えば、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダー等が挙げられる。
前記低屈折率層は、低屈折率層形成用塗布液に珪素アルコキシドを含有するものを用いて、ゾルゲル法によって低屈折率層を形成することができる。また、低屈折率層形成用塗布液にフッ素樹脂を含有するものを用いて、低屈折率層を形成することもできる。前記低屈折率層としては、例えば、熱硬化性又は電離放射線硬化型の含フッ素樹脂の硬化物と二酸化ケイ素の超微粒子とから構成される層であることが好ましい。
前記硬化物の動摩擦係数は、0.02〜0.2であることが好ましく、純水接触角は90〜130°であることが好ましい。前記硬化性の含フッ素樹脂としては、例えば、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン等のパーフルオロアルキル基含有シラン化合物や、架橋性基を有するモノマーと含フッ素モノマーを構成単位とする含フッ素共重合体等が挙げられる。含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えば、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライドパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール、フルオロエチレン等のフルオロオレフィン類、(メタ)アクリル酸のフッ素化アルキルエステル誘導体、フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸のフッ素化アルキルエステル誘導体としては、例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等等が挙げられる。架橋性基を有するモノマーとしては、グリシジルメタクリレートのように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーの他、カルボキシル基やアミノ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基等を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート等が挙げられる。これらは共重合の後から、架橋構造を導入できることが、特開平10−25388号公報及び特開平10−147739号公報に記載されている。
また、前記含フッ素樹脂は、上記含フッ素モノマーのみを構成単位とするポリマーだけでなく、フッ素原子を含有しないモノマーとの共重合体も用いることができる。併用可能なモノマー単位には、特に限定はなく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等のアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル等のオレフィン類、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
前記含フッ素樹脂には、耐傷性を改善するために酸化珪素微粒子を添加して用いるのが好ましい。その添加量は、屈折率と耐傷性との兼ね合いで調整される。前記酸化珪素微粒子は、市販の有機溶剤に分散されたシリカゾルをそのまま塗布組成物に添加することができる。また、市販の各種シリカ紛体を有機溶剤に分散して使用することもできる。
前記低屈折率層の形成用塗布組成物は、主に低沸点の溶媒を含むことが好ましい。具体的には、沸点が100℃以下の溶媒が全溶媒の50質量%以上であることが好ましい。これによって、例えば、防眩層のように凹凸を有する基材表面に塗布した場合でも、速やかに乾燥させることが出来、塗布液の流動による微細な膜厚ムラが低減され、反射率の増加が抑制される。また、沸点が100℃以上の溶媒が含まれていると乾燥ムラや白濁ムラが抑制されるため好ましく、沸点が100℃以上の溶媒が0.1〜50質量%含有していることが好ましい。
低屈折率層用の塗布組成物に用いられる低沸点の溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、メチルセロソルブ等のエーテルアルコール類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等が挙げられ、これらの中から、塗布組成物中に含まれる固形分の溶解性の高いものが好ましく用いられる。沸点が100℃を越える塗布溶媒としては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−イソブチルケトン等のケトン類、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類等が挙げられる。
本実施形態の製造方法で製造された樹脂フィルムを使用することで、樹脂フィルム上にハードコート層を塗布し、同時に反射防止層も塗布することで、防眩性を有した反射防止フィルムの作製が可能であり、生産性の向上が可能となる効果か挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。
[実施例A]
以下に示す方法により微粒子の密度が厚さ方向で順次異なる樹脂フィルムを製造した。実施例A(実施例1〜4及び比較例1,2)では、貧溶媒の含有量の影響について検討した。
(ドープの調製)
表1に示すような、全溶媒(良溶媒と貧溶媒との合計)に対する貧溶媒の含有量(質量%)、及び透明性樹脂(セルロースアセテートプロピオーネ樹脂)に対する全溶媒の含有量(質量%)を満たす各ドープを調製した。
まず、平均粒径4μmのポリメチルメタクリレート微粒子5質量部をエタノール(貧溶媒)に投入し、ディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行うことによって、微粒子分散液を得た。
そして、メチレンクロライド(良溶媒)を入れた溶解タンクに、透明性樹脂としてセルロースアセテートプロピオーネ樹脂(アセチル基置換度:1.5、プロピオニル基置換度:1.0、総アシル基置換度:2.5)100質量部を添加し、加熱して完全に溶解させ、可塑剤及び紫外線吸収剤を添加して溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースアセテートプロピオーネ樹脂溶液を充分に攪拌しながら、ここに上記微粒子分散液をゆっくりと添加した。ここでの可塑剤としては、トリメチロールプロパントリベンゾエート5.5質量部を添加し、紫外線吸収剤としては、チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)1質量部、チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)1質量部を添加した。
なお、良溶媒であるメチレンクロライド及び貧溶媒であるエタノールの含有量は、表1に示すような、全溶媒に対する貧溶媒の含有量(質量%)、及び透明性樹脂に対する全溶媒の含有量(質量%)を満たす含有量となるように調整した。また、ポリメチルメタクリレート微粒子は、良溶媒であるメチレンクロライドより貧溶媒であるエタノールに分散しやすい。
(セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造)
図3(a)に示す製造装置1aを使用し、得られた各ドープ2を温度20℃で長さ60m、幅2500mm、表面を鏡面仕上げしたステンレススティール製の無端ベルト支持体101aの上に流延速度30m/分で均一に流延し、剥離ローラ4でウェブを剥離(流延から剥離までの時間1.5分間)し、第1乾燥装置102、延伸装置103、第2乾燥装置104、巻取装置105を経て、幅1500mm、厚さ80μm、長さ30000m、MD方向の延伸率(伸縮率)が−10%、TD方向の延伸率(伸縮率)が−1.5%の断面形状が、図2に示す様なセルロースアセテートプロピオネートフィルムを以下に示す条件で作製し、実施例1〜4及び比較例1,2とした。なお、第1乾燥装置102は、ウェブを乾燥させる領域の全長を100mとし、第2乾燥装置104は、ウェブを乾燥させる領域の全長を1000mとした。延伸装置103は、ウェブを延伸させる領域の全長を40mとした。延伸装置103は、テンター延伸装置103dのテンターとしてクリップテンターを使用した。
ウェブの厚さは、キーエンス(株)製のレーザー変位計を使用し、ウェブの流延方向に10箇所、幅方向(ウェブの流延方向に直交する方向)に10箇所を測定し、平均値を計算で求めた値である。
製造条件を以下に示す。
(流延装置101における乾燥風の供給条件)
ステンレススティール製の無端ベルト支持体101a上のウェブを乾燥するため第1加熱風供給装置101dより、温度35℃、風圧500Pa(風速29m/秒)の乾燥風を供給した。第2加熱風供給装置101eより、温度35℃、風圧500Pa(風速29m/秒)で乾燥風を供給した。
(第1乾燥装置102における乾燥条件)
ステンレススティール製の無端ベルト支持体101aからの剥離張力は、150N/mの設定値で行い、第1乾燥装置102の乾燥温度50℃、時間2分、搬送速度30m/分とした。
ステンレススティール製の無端ベルト支持体101aから剥離したウェブの全残留溶媒量は100質量%とした。ステンレス無端ベルト支持体より剥離したウェブの残留溶媒量(質量%)の値は、一定の大きさのウェブを115℃で1時間乾燥した時のウェブの質量をBとし、乾燥前のウェブの質量をAとした時、((A−B)/B)×100=残留溶媒量(質量%)で求めた値である。
(延伸装置103における延伸条件)
延伸装置103は、巻取装置105で回収したセルロースアセテートプロピオネートフィルムのTD方向の延伸率(伸縮率)が−1.5%になるようにTD方向の延伸を行った。延伸装置103におけるウェブの温度を120℃とし、1分間、搬送速度30m/分とした。
延伸工程での延伸率は、以下に示す計算式より計算で求めた値を示す。
延伸率(%)=(延伸後のウェブの中央から端部までの幅/延伸前のウェブの中央から端部までの幅)×100
なお、ウェブの中央から端部までの幅はC型JIS1級の鋼製スケールで幅を測定した値を使用する。
(第2乾燥装置104におけるの乾燥条件)
第2乾燥装置104の乾燥温度110℃、時間30分間、搬送速度30m/分とした。
(巻取装置105における巻取条件)
巻取装置105は、定テンション法を使用し、張力200N/mで巻き取った。
上記のようにして得られた樹脂フィルム(実施例1〜4及び比較例1,2)を、以下のようにして、断面観察、光拡散性評価及び透光性評価を行い、その結果を、表1に示す。
(断面観察)
実施例1〜4及び比較例1,2の各樹脂フィルムの断面を、TEMを使用して倍率15000倍で観察し、微粒子の密度が20体積%未満である領域を第1領域とし、微粒子の密度が20体積%以上である領域を第2領域とした場合に、第1領域及び第2領域の合計厚みに対する第2領域の厚みの割合を算出した。なお、微粒子の密度は、樹脂フィルム中に占める微粒子の占有率(体積%)である。微粒子の密度は、TEMによって樹脂フィルム中の微粒子の数を測定し、使用した微粒子の平均粒径から、微粒子の密度を算出した。
(光散乱性評価)
村上色材研究所(株)製のゴニオフォトメータを用い、各樹脂フィルムの透過光強度分布を測定し、下記の基準で評価した。
◎:透過光強度が、0°のピーク強度に対して−30°〜+30°の範囲で±5%未満である。
○:透過光強度が、0°のピーク強度に対して−30°〜+30°の範囲で±5%以上±7%未満である。
△:透過光強度が、0°のピーク強度に対して−30°〜+30°の範囲で±7%以上±10%未満である。
×:透過光強度が、0°のピーク強度に対して−30°〜+30°の範囲で±10%以上である。
(透光率評価)
村上色材研究所(株)製のゴニオフォトメータを用い、各樹脂フィルムの透過光強度を測定した。一方、各樹脂フィルムを設置しない状態を、前記ゴニオフォトメータを用いて透過光強度を測定し、その値をブランクとした。そして、各樹脂フィルムの透過光強度の0°のピーク強度を、ブランクの透過光強度の0°のピーク強度で除した値を透光率とし、下記の基準で評価した。
◎:透光率が95%以上である。
○:透光率が90%以上95%未満である。
△:透光率が80%以上90%未満である。
×:透光率が80%未満である。
表1からわかるように、溶液流延製膜法において、使用する樹脂溶液が、透明性樹脂であるセルロースアセテートプロピオネートに対する良溶媒であるメチレンクロライドと貧溶媒であるエタノールとを溶媒として含有し、さらに、良溶媒より貧溶媒に対して分散しやすいポリメチルメタクリレート微粒子を微粒子として含有し、貧溶媒の含有量が、全溶媒に対して30〜80質量%であり、全溶媒の含有量が、透明性樹脂に対して300〜500質量%である場合(実施例1〜4)、得られた樹脂フィルムは、第2領域の厚みの割合が、合計厚みに対して5〜50%となった。これに対して、貧溶媒の含有量が、全溶媒に対して、80質量%を超える場合(比較例1)、得られた樹脂フィルムは、第2領域の厚みの割合が、合計厚みに対して50%を大きく超えた。また、貧溶媒の含有量が、全溶媒に対して、30質量%未満である場合(比較例2)、得られた樹脂フィルムは、第2領域の厚みの割合が、合計厚みに対して5%未満となった。
また、実施例1〜4に係る樹脂フィルムは、光拡散性及び透光性がともに優れていた。これに対して、貧溶媒の含有量が多すぎる比較例1に係る樹脂フィルムは、光拡散性が低下していた。このことは、第2領域の厚みが厚すぎて、微粒子が樹脂フィルム中に広く分布されることになり、微粒子による機能性を充分に発揮できないことによると考えられる。また、貧溶媒の含有量が少なすぎる比較例2に係る樹脂フィルムは、透光性が低下していた。このことは、第2領域の厚みが薄すぎて、樹脂フィルムの一方の表面に近い側の領域に、微粒子が偏在しすぎるので、樹脂フィルム2の透光性が低くなったと考えられる。
以上より、透光性を確保しながら、微粒子による機能性を充分に発揮させるためには、貧溶媒の含有量が、全溶媒に対して30〜80質量%であることが必要であることがわかる。
[実施例B]
ドープの組成を代えたこと以外、上記実施例Aと同様にして樹脂フィルムを製造した。実施例B(実施例5〜7及び比較例3,4)では、透明性樹脂に対する全溶媒の含有量の影響について検討した。
良溶媒であるメチレンクロライド及び貧溶媒であるエタノールの含有量を、表2に示すような、全溶媒に対する貧溶媒の含有量(質量%)、及び透明性樹脂に対する全溶媒の含有量(質量%)を満たす含有量となるように調整したこと以外、実施例Aと同様にして樹脂フィルムを製造した。そして、実施例Aと同様、断面観察、光拡散性評価及び透光性評価を行い、その結果を、表2に示す。
表2からわかるように、溶液流延製膜法において、使用する樹脂溶液が、透明性樹脂であるセルロースアセテートプロピオネートに対する良溶媒であるメチレンクロライドと貧溶媒であるエタノールとを溶媒として含有し、さらに、良溶媒より貧溶媒に対して分散しやすいポリメチルメタクリレート微粒子を微粒子として含有し、貧溶媒の含有量が、全溶媒に対して30〜80質量%であり、全溶媒の含有量が、透明性樹脂に対して300〜500質量%である場合(実施例5〜8)、得られた樹脂フィルムは、実施例1〜4と同様、第2領域の厚みの割合が、合計厚みに対して5〜50%となった。これに対して、全溶媒の含有量が、透明性樹脂に対して、300質量%未満である場合(比較例3)、得られた樹脂フィルムは、第2領域の厚みの割合が、合計厚みに対して50%を超えた。また、全溶媒の含有量が、透明性樹脂に対して、500質量%を超える場合(比較例4)、得られた樹脂フィルムは、第2領域の厚みの割合が、合計厚みに対して5%未満となった。
また、実施例5〜8に係る樹脂フィルムは、実施例1〜4に係る樹脂フィルムと同様、光拡散性及び透光性がともに優れていた。これに対して、全溶媒の含有量が少なすぎる比較例3に係る樹脂フィルムは、光拡散性が低下していた。このことは、第2領域の厚みが厚すぎて、微粒子が樹脂フィルム中に広く分布されることになり、微粒子による機能性を充分に発揮できないことによると考えられる。また、全溶媒の含有量が多すぎる比較例4に係る樹脂フィルムは、透光性が低下していた。このことは、第2領域の厚みが薄すぎて、樹脂フィルムの一方の表面に近い側の領域に、微粒子が偏在しすぎるので、樹脂フィルム2の透光性が低くなったと考えられる。
以上より、透光性を確保しながら、微粒子による機能性を充分に発揮させるためには、全溶媒の含有量が、透明性樹脂に対して300〜500質量%であることが必要であることがわかる。
[実施例C]
以下に示す方法により、実施例A(実施例1〜4及び比較例1,2)及び実施例B(実施例5〜7及び比較例3,4)で得られた樹脂フィルムを用いて、図5に示すような、ハードコート層を積層した積層フィルム(実施例8〜14及び比較例5〜8)を製造した。
(ハードコート層形成用塗布液の調製)
下記紫外線硬化樹脂層組成用塗布液材料を、下記含有量に従って、攪拌、溶解した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層(紫外線硬化樹脂層)形成用塗布液を調製した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 60質量部
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製 商品名U−4HA) 50質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 20質量部
イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 12質量部
ポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学社製 KF−351)0.8質量部
ポリオキシアルキルエーテル(花王社製 エマルゲン1108) 1.0質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 110質量部
酢酸エチル 110質量部
(紫外線硬化樹脂層形成用塗布液の塗布)
実施例1〜7及び比較例1〜4に係る樹脂フィルムの一方の表面上に、得られた紫外線硬化樹脂層形成用塗布液をマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥した後、紫外線ランプを用いて塗布層を硬化させた。その際、紫外線ランプとしては、照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.2J/cm2であるものを用いた。そうすることによって、ドライ膜厚10μmの紫外線硬化樹脂層(ハードコート層)を形成し、防眩性を有したハードコートフィルム(積層フィルム)を作製した。
上記のようにして得られた、ハードコート層を備えた積層フィルム(実施例8〜14及び比較例5〜8)を、以下のようにして、防眩性評価、ギラツキ評価、透過像鮮明度評価、白濁評価及び鉛筆強度評価を行い、その結果を、表3に示す。
(防眩性評価)
各積層フィルムの表面から30°をなす角度から蛍光灯の光をフィルム上に入射させ、その反射像を正反射する30°の位置から目視し、下記の基準で評価した。
◎:蛍光灯の像が全く見えない。
○:蛍光灯の像がぼやけて見える。
△:蛍光灯の像が結像するが、わずかにぼやけ、はっきりとは見えない。
×:蛍光灯の像がはっきり見える。
(ギラツキ評価)
各積層フィルムを、20inchのLCDモニター上に実装し、モニターを白表示させた。その時にフィルムから20cm離間した距離から目視し、下記の基準で評価した。なお、ギラツキとは、観察する場所によってディスプレイの輝度が変化するために画像がチラついて見える現象を言う。
○:ギラツキが全く見えない。
△:僅かにギラツキが見える。
×:ギラツキが見える。
(透過像鮮明度評価)
各積層フィルムを、20inchのLCDモニター上に実装し、モニターを白表示して、そこにフォントサイズ10の黒文字を表示させた。その時にフィルムから20cm離間した距離から目視し、下記の基準で評価した。
○:文字が全くぼやけない。
△:文字がわずかにぼやける。
×:文字がぼやけ、視認性に影響を及ぼす。
(白濁評価)
各積層フィルムを、20inchのLCDモニター上に実装し、ディスプレイを黒表示させた。その時にフィルムから20cm離間した距離から目視し、下記の基準で評価した。
○:ディスプレイの表示に白さを全く感じない。
△:ディスプレイの表示に白さをわずかに感じる。
×:ディスプレイの表示に白さを感じる。
(鉛筆硬度評価)
JIS S 6006に規定される試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400に規定される鉛筆硬度評価方法に従って測定した。
表3からわかるように、実施例1〜7に係る樹脂フィルムを用いた実施例8〜14に係る積層フィルムは、防眩性評価、ギラツキ評価、透過像鮮明度評価、及び白濁評価のすべての評価が優れており、ハードコート層が形成されているため、鉛筆強度も高かった。これに対して、第2領域の割合が、50%を超える比較例1,3を用いた比較例5,7に係る積層フィルムは、防眩性が低下した。さらに、第2領域の割合が、50%を大きく超える比較例1を用いた比較例5に係る積層フィルムは、ギラツキも発生した。また、第2領域の割合が、5%未満である比較例2,4を用いた比較例6,8に係る積層フィルムは、透過像鮮明度評価が悪く、積層フィルム白濁も発生した。
このことは、積層フィルムを積層する際に用いた樹脂フィルムが、実施例8〜14の場合、透光性を確保しながら、微粒子による機能性を充分に発揮されているものであったためであると考えられる。
[実施例D]
以下に示す方法により、実施例C(実施例8〜14及び比較例5〜8)で得られた積層フィルムを用いて、図6に示すような、反射防止層を積層した積層フィルム(実施例15〜21及び比較例9〜12)を製造した。具体的には、実施例8〜14及び比較例5〜8に係る各積層フィルムのハードコート層(紫外線硬化樹脂層)の上に高屈折率層、次いで、低屈折率層の順に積層して、反射防止層を形成させた。
(高屈折率層)
紫外線硬化樹脂層上に、下記高屈折率層塗布組成物を押し出しコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥させ、次いで紫外線を0.15J/cm2照射して硬化させ、厚さが78nmとなるように高屈折率層を設けた。なお、この高屈折率層の屈折率は、1.6であった。
(高屈折率層形成用塗布液の調製)
まず、メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業(株)製アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX−Z610M−F2)6.0kgにイソプロピルアルコール12.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、粒子分散液Aを調製した。そして、下記高屈折率層形成用塗布液材料を、下記含有量に従って、攪拌、溶解した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層形成用塗布液を調製した。
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 40質量部
イソプロピルアルコール 25質量部
メチルエチルケトン 25質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.9質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.0質量部
ウレタンアクリレート(商品名:U−4HA 新中村化学工業社製)0.6質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.4質量部
粒子分散液A 20質量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.2質量部
シリコーン系界面活性剤(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 0.4質量部
(低屈折率層)
前記高屈折率層上に、下記の高屈折率層塗布組成物を押し出しコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させ、次いで紫外線を0.15J/cm2照射して硬化させ、さらに120℃で5分間熱硬化させ、厚さが95nmとなるように低屈折率層を設けた。なお、この低屈折率層の屈折率は1.37であった。
(低屈折率層形成用塗布液の調製)
まず、テトラエトキシシラン230gとエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて18時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。そして、下記低屈折率層形成用塗布液材料を、下記含有量に従って、攪拌、溶解した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して低屈折率層形成用塗布液を調製した。
プロピレングリコールモノメチルエーテル 430質量部
イソプロピルアルコール 430質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A 120質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製) 4質量部
イソプロピルアルコール分散中空シリカ微粒子ゾル(固形分20%、触媒化成工業社製シリカゾル、商品名:ELCOM V−8209) 45質量部
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート 3質量部
シリコーン系界面活性剤(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 3質量部
酢酸 4質量部
上記のようにして得られた、反射防止層を積層した積層フィルム(実施例15〜21及び比較例9〜12)を、実施例Cと同様、防眩性評価、ギラツキ評価、透過像鮮明度評価、白濁評価及び鉛筆強度評価を行い、その結果を、表4に示す。
表4からわかるように、実施例8〜14に係る積層フィルムを用いた実施例15〜21に係る反射防止層を備えた積層フィルムは、防眩性評価、ギラツキ評価、透過像鮮明度評価、及び白濁評価のすべての評価が優れており、実施例8〜14に係る積層フィルムよりさらに防眩性が向上した。また、反射防止層がさらに形成されているため、実施例8〜14に係る積層フィルムより鉛筆強度もさらに向上した。これに対して、第2領域の割合が、50%を超える比較例9,11に係る積層フィルムは、実施例Cの場合と同様、防眩性が低下した。さらに、第2領域の割合が、50%を大きく超える比較例9に係る積層フィルムは、ギラツキも発生した。また、第2領域の割合が、5%未満である比較例10,12に係る積層フィルムは、実施例Cの場合と同様、透過像鮮明度評価が悪く、積層フィルム白濁も発生した。
このことは、実施例Cと同様、積層フィルムを積層する際に用いた樹脂フィルムが、実施例15〜21の場合、透光性を確保しながら、微粒子による機能性を充分に発揮されているものであったためであると考えられる。