JP2009229501A - 光学フィルムとその製造方法、偏光板及び表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、幅広、長尺であっても、透明性に優れ、フィルムの巻き取り工程における品質不良である馬の背状変形、貼り付き故障、ブロッキングの発生を防止することができる光学フィルムとその製造方法、及びそれを用いた偏光板、表示装置を提供することにある。
【解決手段】光学フィルムの製造方法において、巻き取り工程の前に、固形粒子を含有するインク液滴をインクジェット方式により吐出して透明基材フィルムの少なくとも一方の表面に前記固形粒子を付着させる塗布工程を有する。
【選択図】図8
【解決手段】光学フィルムの製造方法において、巻き取り工程の前に、固形粒子を含有するインク液滴をインクジェット方式により吐出して透明基材フィルムの少なくとも一方の表面に前記固形粒子を付着させる塗布工程を有する。
【選択図】図8
Description
本発明は、光学フィルムとその製造方法、及びそれを用いた偏光板、表示装置に関する。
CRTや液晶表示装置の高画質化に伴って、視認性を改善する為反射防止層のような光学機能層を設けた表示装置が求められており、例えば反射防止層が形成された光学フィルム等を表示装置前面に張り付けることが行われている。テレビのような大画面の表示装置では、直接、物が接触することがあり傷が付き易い。そこで、通常は傷つき防止の為にハードコート層を透明基材フィルム上に形成し、その上に反射防止層が形成されたハードコート層付き反射防止フィルムが用いられる。
反射防止フィルムとしては、特に最近、大画面化により1m以上、更に1.4m以上の幅広フィルムが必要となってきている。また、生産性の向上のため、製造時のフィルム原反は長尺化している。
しかし、フィルム原反の幅が広くなり、長尺化すると、基材フィルムを製造するときの巻き取る工程や、基材フィルム上にハードコート層、反射防止層を形成した後の基材フィルムを巻きとる工程において、馬の背状変形と呼ばれる品質不良が発生する。特に、フィルムロールの状態で長期間保存していると発生しやすくなる。図14(a)に馬の背状変形を発生したフィルムロールの斜視図を示し、図14(b)に側面図を示す。馬の背状変形とは、馬の背中のようにフィルムロールがU字型に変形し、端部の外径より、中央部付近に深さHの凹部ができる故障である。
馬の背状変形は、巻き取りの際にフィルムにかける張力が弱すぎたり、フィルムの滑りが悪い場合などに発生しやすい。フィルムを巻き取ったフィルムロールに、かかる問題が発生すると、フィルム自体が次第に変形してフィルムの平面性が悪化するという問題が起こる。
また、フィルム同士の密着性が高すぎる場合などには、巻き取りによってフイルム同士が密着し、剥がれにくくなるブロッキングと呼ばれる問題が発生する。ブロッキングが起こるとフィルムの滑りが悪くなるため、巻き取り工程における馬の背状変形といった品質不良が発生しやすくなると共に、フィルム表面にキズをつけやすくなる。
また、巻き取ったフィルムを温湿度の高い雰囲気下で保管する際に、フィルム同士の隙間に水分が入り込み、フィルム同士が貼り付いてしまう貼り付き故障と言われる故障が発生する。貼り付き故障が発生するとロール状に巻き取ったフィルムからの繰り出しが困難となるため、大きな問題となる。
これらの巻き取り工程で発生する品質不良を防止するため、いくつかの方法が提案されている。例えば、フィルムの原料となるセルロースエステル樹脂を溶媒に溶解した溶液に、二酸化ケイ素などの微粒子を添加して流延する方法(例えば、特許文献1参照。)、基材フィルムの表面の少なくとも一方の面にインク液滴を付着させて微細凸構造を形成する方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
特開2001−114907号公報
特開2006−3511号公報
特許文献1に記載された方法によれば、フィルムに含まれる二酸化ケイ素などの微粒子によって、フィルムの滑りを良くすることができるため、上記のような巻き取り工程で発生する品質不良をある程度低減させることができる。
しかし、微粒子として一次粒子の平均粒径が10nm程度の二酸化ケイ素を用いた場合であっても、これをセルロースエステル樹脂を溶媒に溶解した溶液に添加する際、添加のショックによって微粒子の凝集が起こりやすい。凝集した二次粒子の径は1000nmを超える場合もある。これを流延前に完全に除去することは困難であり、残った微粒子の凝集体がフィルムの異物による欠陥の原因となることがあった。特に、フィルムの幅が1.4m以上4m以下、長さが2000m以上4000m以下といった広幅、長尺のフィルムを製造する場合には、微粒子の添加量を増やす必要があり、異物による欠陥の問題がさらに顕著になるという問題があった。また、フィルム自体に微粒子を含有させているため、フィルムの透明度が低く、偏光板の光漏れの原因ともなっていた。
特許文献2に記載された、基材フィルムの表面の少なくとも一方の面にインク液滴を付着させて微細凸構造を形成する方法は、上記のような巻き取り工程で発生するブロッキングを防止する一定の効果がある。しかし、巻き取ったフィルムの自重によって微細凸構造が影響を受けるため、上記のような広幅、長尺のフィルムの製造には十分対応できず、馬の背状変形という問題が残っていた。馬の背状変形という問題があると、フィルムに変形が残ってしまうため、偏光板に加工すると表面が歪んで見えてしまい、問題である。
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、広幅、長尺のフィルムであっても、透明性に優れ、フィルムの巻き取り工程における品質不良である馬の背状変形、貼り付き故障、ブロッキングの発生を防止することができる光学フィルムとその製造方法、及びそれを用いた偏光板、表示装置を提供することである。
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
1.
透明基材フィルムを巻き取る巻き取り工程を有する光学フィルムの製造方法において、
前記巻き取り工程の前に、固形粒子を含有するインク液滴をインクジェット方式により吐出して前記透明基材フィルムの少なくとも一方の表面に前記固形粒子を付着させる塗布工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
透明基材フィルムを巻き取る巻き取り工程を有する光学フィルムの製造方法において、
前記巻き取り工程の前に、固形粒子を含有するインク液滴をインクジェット方式により吐出して前記透明基材フィルムの少なくとも一方の表面に前記固形粒子を付着させる塗布工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
2.
前記透明基材フィルムの幅方向における中央20%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度が、前記透明基材フィルムの幅方向における残りの80%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度よりも高いことを特徴とする1に記載の光学フィルムの製造方法。
前記透明基材フィルムの幅方向における中央20%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度が、前記透明基材フィルムの幅方向における残りの80%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度よりも高いことを特徴とする1に記載の光学フィルムの製造方法。
3.
前記インク液滴は、前記透明基材フィルムの幅方向に配置された複数のノズルから吐出され、
前記透明基材フィルムの幅方向における中央20%の領域に配置されたノズルから吐出する前記インク液滴の固形粒子の平均濃度が、前記透明基材フィルムの幅方向における残りの80%の領域に配置されたノズルから吐出される前記インク液滴の固形粒子の平均濃度より高いことを特徴とする1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
前記インク液滴は、前記透明基材フィルムの幅方向に配置された複数のノズルから吐出され、
前記透明基材フィルムの幅方向における中央20%の領域に配置されたノズルから吐出する前記インク液滴の固形粒子の平均濃度が、前記透明基材フィルムの幅方向における残りの80%の領域に配置されたノズルから吐出される前記インク液滴の固形粒子の平均濃度より高いことを特徴とする1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
4.
前記インク液滴が、熱可塑性樹脂、活性光線硬化型樹脂、または熱硬化性樹脂を含み、前記透明基材フィルム表面に前記固形粒子を含む微細凸構造を形成することを特徴とする2又は3に記載の光学フィルムの製造方法。
前記インク液滴が、熱可塑性樹脂、活性光線硬化型樹脂、または熱硬化性樹脂を含み、前記透明基材フィルム表面に前記固形粒子を含む微細凸構造を形成することを特徴とする2又は3に記載の光学フィルムの製造方法。
5.
前記透明基材フィルムの幅方向における中央部の前記微細凸構造の高さが、前記透明基材フィルムの幅方向における端部の前記微細凸構造の高さよりも高いことを特徴とする4に記載の光学フィルムの製造方法。
前記透明基材フィルムの幅方向における中央部の前記微細凸構造の高さが、前記透明基材フィルムの幅方向における端部の前記微細凸構造の高さよりも高いことを特徴とする4に記載の光学フィルムの製造方法。
6.
前記微細凸構造の高さをa、直径をbとしたとき、0.01≦a/b≦0.1であることを特徴とする4又は5に記載の光学フィルムの製造方法。
前記微細凸構造の高さをa、直径をbとしたとき、0.01≦a/b≦0.1であることを特徴とする4又は5に記載の光学フィルムの製造方法。
7.
巻き取られた状態での前記光学フィルムの幅が1.4m以上4m以下で、且つ、長さが2000m以上4000m以下であることを特徴とする1乃至6のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
巻き取られた状態での前記光学フィルムの幅が1.4m以上4m以下で、且つ、長さが2000m以上4000m以下であることを特徴とする1乃至6のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
8.
前記透明基材フィルムがセルロースエステル又はシクロオレフィンポリマーであることを特徴とする1乃至7のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
前記透明基材フィルムがセルロースエステル又はシクロオレフィンポリマーであることを特徴とする1乃至7のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
9.
1乃至8のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする光学フィルム。
1乃至8のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする光学フィルム。
10.
9に記載の光学フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を有することを特徴とする光学フィルム。
9に記載の光学フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を有することを特徴とする光学フィルム。
11.
前記ハードコート層の上に反射防止層を有することを特徴とする10に記載の光学フィルム。
前記ハードコート層の上に反射防止層を有することを特徴とする10に記載の光学フィルム。
12.
9乃至11のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
9乃至11のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
13.
12に記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。
12に記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。
本発明によれば、幅広、長尺であっても、透明性に優れ、フィルムの巻き取り工程における品質不良である馬の背状変形、ブロッキング及び貼り付き故障の発生を防止することができる光学フィルムとその製造方法、及びそれを用いた偏光板、表示装置を提供することが出来る。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の光学フィルムは、透明基材フィルムを巻き取る巻き取り工程を有する光学フィルムの製造方法において、巻き取り工程の前に、固形粒子を含有するインク液滴をインクジェット方式により吐出して透明基材フィルムの少なくとも一方の表面に固形粒子を付着させる塗布工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法によって製造される。
図1に、透明基材フィルム1の表面に固形粒子2が付着している状態の模式図を示す。
このように、固形粒子を含有するインク液滴をインクジェット方式により吐出し、光学フィルムの少なくとも一方の表面に固形粒子を付着させることにより、フィルムの滑り性を向上させ、密着性を低下させることができ、馬の背状変形やブロッキング、貼り付き故障を抑制することができる。また、従来のようにフィルムの内部に固形粒子を多量に含有させる必要がないので、透明性に優れた光学フィルムを製造することができる。更に、特許文献2のように均一な微細凸構造の中に、幅方向に均一な量の微粒子を含む構造を持つものでは、フィルムの自重ににより、微細凸構造が変形し、中央部の滑り性が悪くなるが、本件においては、中央部の滑り性が悪くなることもなく、ブロッキングや馬の背変形が生じることもない。
本発明に係る固形粒子の大きさは、50〜500nmが好ましい。50nm未満だと貼り付き故障やブロッキング防止性の点で好ましくなく、500nmを越えると透明性の点で好ましくない。
また、固形粒子の付着数は、1.0μm2当たり1〜100個が好ましい。100個を越えると透明性の点で好ましくない。
本発明に係る透明基材フィルムの幅方向における中央20%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度が、透明基材フィルムの幅方向における残りの80%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度よりも高いことが好ましい。中央20%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度を高くすることにより、中央部分の滑り性を端部よりも良くすることで、より馬の背状変形や、貼り付き故障を抑制することができる。
本発明に係る透明基材フィルム上にインクジェット方式により吐出するインク液滴は、透明基材フィルムの幅方向に配置された複数のノズルから吐出し、透明基材フィルムの幅方向における中央20%の領域に配置されたノズルから吐出するインク液滴の固形粒子の平均濃度が、透明基材フィルムの幅方向における残りの80%の領域に配置されたノズルから吐出するインク液滴の固形粒子の平均濃度より高いことが、好ましい。
図2aに、透明基材フィルム1の幅方向に配置した5個のインクジェットヘッド部31〜35をフィルム幅方向に連結して1つのインクジェットヘッドとし、このインクジェットヘッドを用いて、固形粒子2をフィルム1上に付着させている状態の模式図を示す。各インクジェットヘッド部31〜35には、それぞれ固形粒子を分散したインクを供給する供給ノズル311、321、331、341、351が接続されている。また、各インクジェットヘッド部には、インク液滴を吐出する複数のノズルが配置されている。また、各インクジェットヘッド部のつなぎ部分は、ノズルの配置間隔が変化しないように接合されている。中央部のインクジェットヘッド部33に供給するインクの固形粒子の濃度を高くし、端部のヘッド部に供給するインクの固形粒子の濃度を低くしている。また、各インクジェットヘッドの幅は、透明基材フィルムの幅方向の20%をカバーするノズルを備えている。このようにして、各インクジェットヘッド部31〜35のノズルからインク液滴を透明基材フィルム上に吐出する。透明基材フィルム1の表面に固形粒子2が付着した状態の模式図を図3に示す。透明基材フィルム1上に付着している固形粒子の量は、中央20%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度が、透明基材フィルムの幅方向の残りの80%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度よりも高い。
また、図2bのように、各インクジェットヘッド部は、連結せずに、塗布位置をずらして配置しても良い。
このようにすることで、中央部でのフィルムの滑り性が増し、中央部での馬の背状変形がより改善される。よって、広幅、長尺であっても、馬の背状変形やブロッキングの発生、貼り付き故障を防止することができる。
本発明に係るインク液滴の組成物としては、樹脂成分が含有しないことが好ましい。樹脂成分が含有しないことにより、透明基材フィルムの表面に固形粒子を露出させることができるので、フィルムの滑り性を向上させ、密着性を低下させる面で、固形粒子の含有量をより少なくすることができる。よって、光学フィルムの透明性を更に良くすることができる。
また、本発明に係る透明基材フィルムの幅方向における中央20%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度が、前記透明基材フィルムの幅方向における残りの80%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度よりも高いようにしている場合には、インク液滴の組成物として、熱可塑性樹脂、活性光線硬化型樹脂、または熱硬化性樹脂を含有し、透明基材フィルムの表面に固形粒子を含む微細凸構造を形成するのが好ましい。このようにして透明基材フィルム1の表面に形成した微細凸構造4と、該微細凸構造4に含有される固形粒子2の分布状態の模式図を図4に示す。透明基材フィルム1上に付着している微細凸構造4は、ほぼ均一に付着しているが、微細凸構造4の固形粒子2の密度は、中央部が高く、両端部付近で低くなっている。このようにすることで、フィルム1の表面に形成された微細凸構造4の表面に露出する固形粒子2の数に分布を持たせることができ、巻き取り工程において、中央部でのフィルムの滑り性が増し、中央部での馬の背状変形がより改善される。即ち、特許文献2のように自重により、中央部の微細凸構造が変形しても、中央部の滑り性が悪くなることはない。よって、広幅、長尺であっても、フィルムの巻き取り工程で発生する品質不良である馬の背状変形やブロッキング、貼り付き故障の発生を防止することができる。
また、本発明に係る透明基材フィルムの表面に形成された微細凸構造の高さは、透明基材フィルムの幅方向の端部の微細凸構造の高さよりも中央部の高さのほうが高いことが好ましい。図5に、この時の微細凸構造4の形状をフィルムの幅方向の断面図として模式的に示す。また、図6に、フィルムに微細凸構造4が付着している斜視図を模式的に示す。中央部の微細凸構造4の高さを高くするには、例えば、透明基材フィルムの幅方向に配置された複数のノズルの内、中央部のノズルから吐出する個々の液滴の量を端部方向のノズルから吐出する個々の液滴の量より多くしたり、中央部の樹脂含有量を多くすることで形成することができる。また、中央部で微細凸構造の高さを高くすると、中央部のノズルピッチ(隣り合うノズルの間隔)を広くすることが好ましい。中央部と端部とのノズルピッチを同じにして、中央部の凸部の高さを高くすると、隣り合う液滴同士がくっついて、広がり、所定の高さを得られない場合がある。このような場合に、図2(a)や(b)の構造においては、中央部と端部とのインクジェットヘッド部のノズルピッチを自由に変更することができ、また、それぞれのノズル部を独立して駆動することができるので、最適なインク液滴を吐出させることができる。
このように透明基材フィルムの中央部の微細凸構造の高さを高くすることにより、中央部で発生しやすい馬の背状変形をより抑制することができる。
図7に微細凸構造4の断面を拡大した模式図を示す。
本発明に係る微細凸構造4は、高さaが0.01〜1.0μmである場合凸部を100μm2当たり1〜1000個の範囲有することが好ましい。高さaが0.01μm未満だと馬の背状変形や貼り付き故障の点で好ましくなく、1.0μmを越えると透明性の点で好ましくない。また、個数が1000個を越えると透明性の点で好ましくない。
また、透明基材フィルムの表面に形成された微細凸構造の高さをa、直径をbとしたとき、0.01≦a/b≦0.1であることが更に好ましい。
本発明で規定する微細凸構造の高さaとは、下地である透明基材フィルム1の表面を底部として、凸構造の頂部までの高さ(μm)と定義し、同様に直径bは基材フィルム1に接している凸部底の面積から求める平均直径(μm)と定義する。
a/bをこの範囲とすることで、透明性に優れた光学フィルムとなり、更に効果を発揮することができる。
ここで高さaは次のようにして求める。10000mm2の面積当たりのフィルム面を基準とした微細凸構造の凸部の高さが0.01μm〜1.0μmの範囲にある凸部の高さと数を計測し、1個当たりの平均高さを求め、この平均高さを該フィルムの任意の10箇所で測定してその平均値として求める。
また、直径bは、1000μm2の面積当たりのフィルム面と接触している微細凸構造の凸部の高さが0.01μm〜1.0μmの範囲にある凸部の底部接触面積と数を計測し、1個当たりの平均直径を求め、この平均直径を該フィルムの任意の10箇所で測定してその平均値として求める。フィルム表面の微細な凸部の形状は、市販の触針式表面粗さ測定機或いは市販の光学干渉式表面粗さ測定機等によって測定することが出来る。
また本発明に係る光学フィルムの製造方法において、インク液滴をインクジェット方式により透明基材フィルム上に吐出させる工程は、フィルム原料を熱により溶融または溶媒に溶解した状態の液体を支持体上に流延する工程から流延されたフィルムを乾燥させる工程の間で行うのが好ましく、より好ましくは、流延した支持体上でインク液滴を吐出し、塗布することが良い。このようにすることで、基材フィルムが乾燥する前に固形粒子又は、固形粒子を含む微細凸構造物が塗布されるので、フィルム表面に固形粒子又は、微細凸構造物が確実に固定され、フィルム巻き取り工程で発生する品質不良を効果的に防止することができる。特に、インク液滴に樹脂成分が含有されていない場合は、このようにすることで確実に固形粒子を透明基材フィルム表面に固定することができる。
図8に本発明に係る光学フィルムの製造工程の一例と、該製造工程中で、インク液滴をインクジェット方式により透明基板フィルム上に吐出させる工程の配置箇所の例と、好ましい配置箇所を示す。
図8において、11はエンドレスで走行する支持体を示す。支持体としては鏡面帯状金属が使用されている。12は透明基材形成樹脂を溶媒に溶解したドープを、支持体11に流延するダイスを示す。13は支持体11に流延されたドープが固化したフィルムを剥離する剥離ロールを示し、14は剥離されたフィルムを示す。5はテンター搬送・乾燥工程を示し、51は排気口を示し、52は乾燥風取り入れ口を示す。尚、排気口51と乾燥風取り入れ口52は逆であっても良い。16は張力カット手段を示す。張力カット手段としてはニップロール、サクションロール等が挙げられる。尚、張力カット手段は各工程間に設けてもかまわない。
8はロール搬送・乾燥工程を示し、81は乾燥箱を示し、82は排気口を示し、83は乾燥風取り入れ口を示す。尚、排気口82と乾燥風取り入れ口83は逆であっても良い。84は上部搬送用ロールを示し、85は下部搬送用ロールを示す。該搬送用ロール84、85は上下で一組で、複数組から構成されている。7は巻き取られたロール状のフィルムを示す。
本発明に係るインク液滴を吐出するインクジェットヘッド部10は、ドープ流延部(12〜13)、剥離〜テンター部入口間(13〜16)、テンター出口〜乾燥部入口間、乾燥箱内のいずれの位置に設置してもよく、具体的には図中、10A〜Hの位置に設けることが出来る。特にドープ流延部から乾燥箱手前までが好ましく、より好ましくは、ドープ流延部である。その際、フィルム面の片側、両側のどちらにインクジェットヘッド部を設けてもよい。インクジェットヘッド部10の設置数に特に制限はなく一つでも複数でもよいが、好ましくは複数のインクジェットヘッド部を設置することである。
図9は、本発明に係るインクジェット方法に用いることの出来るインクジェットヘッドの一例を示す断面図である。
図9(a)はインクジェットヘッドの断面図であり、図9(b)は図9(a)のA−A線矢視拡大図である。図中、110は基板、120は圧電素子、130は流路板、130aはインク流路、130bは壁部、140は共通液室構成部材、140aは共通液室、150はインク供給パイプ、160はノズルプレート、160aはノズル、170は駆動用回路プリント板(PCB)、180はリード部、190は駆動電極、200は溝、210は保護板、220は流体抵抗、230、240は電極、250は上部隔壁、260はヒータ、270はヒータ電源、280は伝熱部材、10はインクジェットヘッドである。
集積化されたインクジェットヘッド10において、電極230、240を有する積層された圧電素子120は、流路130aに対応して、該流路130a方向に溝加工が施され、溝200と駆動圧電素子120bと非駆動圧電素子120aに区分される。溝200には充填剤が封入されている。溝加工が施された圧電素子120には、上部隔壁250を介して流路板130が接合される。即ち、前記上部隔壁250は、非駆動圧電素子120aと隣接する流路を隔てる壁部130bとで支持される。駆動圧電素子120bの幅は流路130aの幅よりも僅かに狭く、駆動用回路プリント板(PCB)上の駆動回路により選択された駆動圧電素子120bはパルス状信号電圧を印加すると、該駆動圧電素子120bは厚み方向に変化し、上部隔壁250を介して流路130aの容積が変化し、その結果ノズルプレート160のノズル160aよりインク液滴を吐出する。
流路板130上には、伝熱部材280を介してヒータ260がそれぞれ接着されている。伝熱部材280はノズル面にまわり込んで設けられている。伝熱部材280は、ヒータ260からの熱を効率良く流路板130に伝え、かつ、ヒータ260からの熱をノズル面近傍に運びノズル面近傍の空気を温めることを目的としており、従って、熱伝導率の良い材料が用いられる。例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス等の金属、或いは、SiC、BeO、AlN等のセラミックス等が好ましい材料として挙げられる。
圧電素子を駆動すると、流路の長手方向に垂直な方向に変位し、流路の容積が変化し、その容積変化によりノズルからインク液滴となって噴射する。圧電素子には常時流路容積が縮小するように保持する信号を与え、選択された流路に対して流路容積を増大する向きに変位させた後、再び流路の容積が縮小する変位を与えるパルス信号を印加することにより、流路と対応するノズルよりインクがインク液滴となって噴射する。
図10は、本発明で用いることの出来るインクジェットヘッド部、ノズルプレートの一例を示す概略図である。
図10において、図10の(a)はヘッド部の断面図、図10の(b)はノズルプレートの平面図である。図中、1は透明基材フィルム、310はインク液滴、320はノズルである。ノズル320より噴射したインク液滴310は透明基材フィルム1方向に飛翔して付着する。透明基材フィルム1上に着弾したインク液滴は、乾燥によって凸部が形成される。
本発明においては、図10の(b)に記載のように、インクジェットヘッド部のノズルは、千鳥状に配置することが好ましく、また、透明基材1の搬送方向に並列に多段に設けることが好ましい。また、インク吐出の際にインクジェットヘッド部に微細な振動を与え、インク液滴がランダムに透明基材上に着弾するようにすることが好ましい。これによって、干渉縞の発生を抑制することが出来る。微細な振動は、高周波電圧、音波、超音波などによって与えることが出来るが、特にこれらに限定されない。また、インクジェット法により吐出されたインク液滴310が移動してくる透明基材1の周辺空気によって乱されて偏ったり、意図しないムラとならないように空気の流れを制御して行われる。
インクジェットヘッドとしては特開2004−58505記載の静電吐出型インクジェットヘッドを本発明のブロッキング防止加工に転用することも出来、特開2004−58532記載の液体吐出ヘッド、特開2004−54271記載のインクジェットパターニング装置を本発明のブロッキング防止加工に転用することも出来、特開2004−55520記載の噴射ヘッドを転用することも出来、登録3,5000,636号記載のインクジェットヘッドを転用することも出来、登録3,501,583号記載のインクジェット記録システムを本発明のブロッキング防止加工に転用することも出来る。
また、透明基板フィルム上にインクを吐出する前に、テスト吐出を実施してヘッドの目詰まりの有無を確認することが好ましく、目詰まりが確認された場合、或いは生産開始時には、ヘッドクリーニングを実施することが好ましい。ヘッドクリーニングは使用するインクで実施しても、溶媒を主体とするクリーニング液で実施してもよい。クリーニング液の溶媒はインクに使用出来るものが好ましく用いられる。必要に応じて界面活性剤(ノニオン系、フッ素系、シリコン系等)を0.01〜1%程度含有させてもよい。
インクジェットヘッドと透明基材フィルムとの距離は0.2〜100mmが好ましく、微細凸状構造を形成する場合は、凸の形状に応じて変更することが出来る。インク液滴とインク着弾面との接触角は0〜180°の範囲で適宜調整される。好ましくは5〜120°である。また、インク吐出速度を上げるなどにより吐出後のインク液滴を分裂させてインク液滴としてより小さな液滴を形成したり、吐出速度を抑制して大きめの液滴を形成することが出来る。インクジェット部のこれらの条件は、印刷用のインクジェットで用いられている条件を参考にして設定することが出来る。
インク吐出速度は、インク液滴先端の速度V1をピエゾ式のインクジェット装置のピエゾ素子に印加する電圧を増減させることにより一般に0.1〜20m/sの範囲で制御出来る。好ましくは1〜20m/sの範囲である。更に、上記インク液滴先端の速度V1の好ましい下限は5m/s、好ましい上限は12m/sである。インク液滴後端の速度V2はインク液滴先端の速度V1よりも小さく、一般には0.1〜10m/sである。上記インク液滴後端の速度V2は、インク液滴の分離状態、即ち、インクの表面張力や粘度により決まる。
吐出時間tは、ピエゾ素子に印加する電圧の制御条件に応じて3μs〜1msに設定される。ピエゾ素子に印加する電圧の制御条件は、安定的にインク液滴を吐出できるように、波形制御条件、インク液滴の表面張力や粘度等に応じて設定される。
液滴は後述するように柱状に吐出され、基板に着弾するまでに分裂しない場合と分裂する場合とがある。分裂しない場合であって、着弾するまでに空中で球状の液滴になる場合は、着弾時の液滴先端速度と後端速度はほぼ同じとなる。柱状の液滴が球状になっていくので着弾時の液滴速度は吐出時の液滴先端速度や後端速度と厳密には異なるが、その差は液滴速度に対して小さい。一方、数個の液滴に分裂する場合には、吐出時の液滴先端速度が着弾時の先頭液滴の速度となり、吐出時の液滴後端速度が着弾時の最後尾の液滴の速度となると考えられる。尚、通常は、液滴先端速度が3m/s以下の場合には液滴は分裂しないことが多く、液滴先端速度が3〜20m/sの場合には液滴は分裂することが多い。
本発明に用いられるインクジェットヘッドは、透明基材フィルムの幅手方向に配置し、透明基材フィルムを搬送しながらその表面に微細凸構造を形成する方法(ラインヘッド方式)や、インクジェットヘッドが副走査方向に移動しながらその表面に微細凸構造を形成する方法(シリアルヘッド方式)を用いることができるが、本発明においては、生産性の観点からラインヘッド方式が好ましい。
次いで、本発明に係るインク液滴に含有される固形粒子について説明する。
固形粒子としては、例えば、無機微粒子または有機微粒子を挙げることが出来る。
無機微粒子としては、例えば、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。これらは球状、平板状、無定形状等の形状の粒子が挙げられる。
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R972CF、R974、R812、50、200、200V、300、R202、OX50、TT600、MOX170(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
また、有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂微粒子、アクリルスチレン系樹脂微粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子、シリコン系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子、メラミン系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド系樹脂微粒子、ポリイミド系樹脂微粒子、またはポリ弗化エチレン系樹脂微粒子、セルロースエステル系樹脂等を挙げることが出来る。例えば、ポリメチルメタクリレート架橋粒子としてMS−300K、MS−300X(粒径0.1μm)、アクリル単分散粒子としてMP1451(いずれも綜研化学(株)製)が好ましく用いられる。また、微粒子は、複数の種類を混合して用いても良い。
次に、本発明に係るインク液滴に含有される熱可塑性樹脂、活性光線硬化型樹脂、または熱硬化性樹脂について説明する。
始めに、本発明に用いられる熱可塑性樹脂について説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、セルロースエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリビニルアルコールなどが好ましい例として挙げられるがこれらのみに限定されるものではない。
本発明のインクに用いる熱可塑性樹脂は、特にセルロースエステルを主成分とすることが好ましく、後述する透明基材フィルムに用いられるセルロースエステルが好ましく用いられる。即ち、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類が好ましく、特にセルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましい。総アシル基置換度2.0〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。透明基材フィルムにセルロースエステルを用いる場合は、該セルロースエステルと同じか、それよりも低い置換度のセルロースエステルが好ましく用いられる。特に凸部形成面をアルカリケン化処理して偏光子を貼合する場合は該セルロースエステルが好ましく用いられる。セルロースエステルは後述する有機溶媒に溶解させ、インク組成物として用いることが出来る。
次に、本発明に用いられる活性光線硬化型樹脂について説明する。
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、若しくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。
上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
本発明において使用し得る市販品の紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC700、RC750(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
これらの活性線硬化樹脂は公知の方法で硬化することが出来る。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させるための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって効率よく形成することが出来る。
紫外線硬化樹脂を含有するインクに用いられる有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5質量%〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
この他に、インクにはフッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、或いはノニオン系界面活性剤等の界面活性剤を、0.01〜5.0%程度添加することが出来る。
次いで、本発明に用いられる熱硬化性樹脂について説明する。
本発明で用いることの出来る熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミドなどを挙げることが出来る。
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、オルソフタル酸系樹脂、イソフタル酸系樹脂、テレフタル酸系樹脂、ビスフェノール系樹脂、プロピレングリコール−マレイン酸系樹脂、ジシクロペンタジエンないしその誘導体を不飽和ポリエステル組成に導入して低分子量化した、或いは被膜形成性のワックスコンパウンドを添加した低スチレン揮発性樹脂、熱可塑性樹脂(ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリスチレン、飽和ポリエステルなど)を添加した低収縮性樹脂、不飽和ポリエステルを直接Br2でブロム化する、或いはヘット酸、ジブロムネオペンチルグリコールを共重合するなどした反応性タイプ、塩素化パラフィン、テトラブロムビスフェノール等のハロゲン化物と三酸化アンチモン、燐化合物の組み合わせや水酸化アルミニウムなどを添加剤として用いる添加タイプの難燃性樹脂、ポリウレタンやシリコーンとハイブリッド化、またはIPN化した強靭性(高強度、高弾性率、高伸び率)の強靭性樹脂等がある。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ノボラックフェノール型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型を含むグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系、グリシジルエステル系、環式脂肪系、複素環式エポキシ系を含む特殊エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
ビニルエステル樹脂としては、例えば、普通エポキシ樹脂とメタクリル酸等の不飽和一塩基酸とを開環付加反応して得られるオリゴマーをスチレン等のモノマーに溶解した物である。また、分子末端や側鎖にビニル基を持ちビニルモノマーを含有する等の特殊タイプもある。グリシジルエーテル系エポキシ樹脂のビニルエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノール系、ノボラック系、臭素化ビスフェノール系等があり、特殊ビニルエステル樹脂としてはビニルエステルウレタン系、イソシアヌル酸ビニル系、側鎖ビニルエステル系等がある。
フェノール樹脂は、フェノール類とフォルムアルデヒド類を原料として重縮合して得られ、レゾール型とノボラック型がある。
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えば、マレイン酸系ポリイミド、例えばポリマレイミドアミン、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミド・O,O′−ジアリルビスフェノール−A樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂等、またナジック酸変性ポリイミド、及びアセチレン末端ポリイミド等がある。
また、上述した活性光線硬化型樹脂の一部も、熱硬化性樹脂として用いることが出来る。
尚、本発明に係る熱硬化性樹脂からなるインクには、酸化防止剤や紫外線吸収剤を適宜用いてもよい。
本発明において、インクジェット方式により形成した凸部が熱硬化性樹脂を含む場合、加熱方法としては、インク液滴を透明基体上に着弾させた直後に、加熱処理を行うことが好ましい。
本発明でいうインク液滴を透明基体上に着弾させた直後とは、具体的にはインク液滴が着弾と同時または5秒以内に加熱が開始されることが好ましく、予め透明基材の温度を上げておくことが出来る。例えば、透明基材をヒートロール上に巻き付けて、これにインク液滴を着弾させることが出来、より好ましくは着弾と同時または2.0秒の間である。また、ノズル部と加熱部の距離が接近し過ぎて、熱がヘッド部に伝達すると、ノズル部での硬化によりノズル詰まりを起こすため注意が必要である。また、必要に応じて加熱間隔が5.0秒を超えることによって、着弾したインク液滴の流動、変形させなだらかな凸構造を得ることも出来る。
上記加熱時のノズル部への熱の伝達を防止するため、本発明のインクジェット方式においては、加熱部をインクジェットヘッドのノズル部に直接作用させない位置に配置することが好ましい。
加熱方法としては、特に制限はないが、ヒートプレート、ヒートロール、サーマルヘッド、或いは着弾したインク表面に熱風を吹き付ける等の方法を使用するのが好ましい。また、インクジェット吐出部の透明支持体を挟んで反対側に設けるバックロールを、ヒートロールとして、連続的に加熱を施してもよい。加熱温度としては、使用する熱硬化性樹脂の種類により一概には規定出来ないが、透明基材への熱変形等の影響を与えない温度範囲であることが好ましく、30〜200℃が好ましく、更に50〜120℃が好ましく、特に好ましくは70〜100℃である。
本発明に係るインクにおいては、組成物として、上述した熱可塑性樹脂、活性光線硬化型樹脂または熱硬化性樹脂のいずれも用いることが出来るが、好ましくは熱可塑性樹脂を用いることである。
また、本発明に係るインクジェット方式で用いるインクには、固形粒子を分散するためや、樹脂成分を溶解させるための溶媒を用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、水等が挙げられ、それらを単独または2種以上混合して使用することが出来る。また、分子内にエーテル結合をもつものが特に好ましく、グリコールエーテル類も好ましく用いられる。
グリコールエーテル類としては、具体的には下記の溶媒が挙げられるが、特にこれらに限定されない。プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルAc、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルAc、エチレングリコールジエチルエーテル等を挙げることが出来る、尚Acはアセテートを表す。本発明に係るインクにおいては、上記溶媒の中でも、沸点が100℃未満の溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒は、インクジェットヘッドから吐出された直後から揮発され、着弾後速やかに揮発、乾燥されることが望ましい。或いは揮発性の異なる溶媒を混合してその比率を変更するも出来る。また、微細凸構造を形成する場合には、蒸発速度を調整することにより、凸部の高さを所定の高さにすることができる。
インクに使用する溶媒は透明基材フィルムを溶解する溶媒と溶解しない溶媒とを混合して用いることが好ましく、混合比率は1:9〜9:1であることが好ましく、比率は適宜調整される。透明基材フィルムが乾燥している場合は、透明基材フィルムを溶解する溶媒により、その表面を少し溶解させた状態で、固形粒子を付着させることができて、好ましい。このようにすることで、透明基材フィルム表面に固形粒子を確実に付着、固定することができる。よって、本発明の目的である、馬の背状変形、貼り付き故障、ブロッキングの発生を防止し、安定した品質の高いロール状の光学フィルムを製造することができる。
次に、本発明に係る光学フィルムの透明基材フィルムについて説明する。
本発明においては光学フィルムの透明基材フィルムとして熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、セルロースエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリエステルなどが好ましい例として挙げられるがこれらのみに限定されるものではない。これらは溶液流延製膜で作製されたフィルムでも溶融流延で作製されたフィルムであっても好ましく用いられる。
例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC8UY、LC4UX、KC4UY、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UX−H(コニカミノルタオプト(株)製)等のセルロースエステルフィルムが用いられる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂フィルムは、セルロースエステルまたはシクロオレフィンポリマーを主成分とすることが好ましい。また、これらのフィルムは偏光板保護フィルム或いは位相差フィルムであることが好ましい。
〈セルロースエステル〉
本発明に用いられるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。尚、本発明においては、セルロースエステルフィルムが、材料として、Mw/Mnの値が1.4〜3.0であるセルロースエステルを含有すればよいが、フィルムに含まれるセルロースエステル(好ましくはセルローストリアセテートまたはセルロースアセテートプロピオネート)全体のMw/Mnの値は1.4〜3.0の範囲であることがより好ましい。セルロースエステルの合成過程で1.4未満とすることは困難であり、ゲル濾過などによって分画することで分子量の揃ったセルロースエステルを得ることは出来る。しかしながらこの方法はコストが著しくかかる。また、3.0以下であると平面性が維持されやすく好ましい。尚、より好ましくは1.7〜2.2である。
本発明に用いられるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。尚、本発明においては、セルロースエステルフィルムが、材料として、Mw/Mnの値が1.4〜3.0であるセルロースエステルを含有すればよいが、フィルムに含まれるセルロースエステル(好ましくはセルローストリアセテートまたはセルロースアセテートプロピオネート)全体のMw/Mnの値は1.4〜3.0の範囲であることがより好ましい。セルロースエステルの合成過程で1.4未満とすることは困難であり、ゲル濾過などによって分画することで分子量の揃ったセルロースエステルを得ることは出来る。しかしながらこの方法はコストが著しくかかる。また、3.0以下であると平面性が維持されやすく好ましい。尚、より好ましくは1.7〜2.2である。
本発明に用いられるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものを用いることが好ましい。100000〜200000のものが更に好ましく、150000〜200000が特に好ましい。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用。13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用。13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度の脂肪族カルボン酸エステルまたは芳香族カルボン酸エステル或いは脂肪族カルボン酸エステルと芳香族カルボン酸エステルの混合エステルが好ましく用いられ、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。具体的には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることも出来る。
セルローストリアセテートの場合には、総アシル基置換度(アセチル基置換度)2.6から2.9のものが好ましく用いられる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜22のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、炭素原子数3〜22のアシル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルである。
式(I) 2.6≦X+Y≦2.9
式(II) 0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦1.0のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。
式(II) 0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦1.0のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することが出来る。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)、木材パルプから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
また、これらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて常法により反応させて得ることが出来る。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定出来る。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、かつ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの一つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることが出来る。
セルロースエステルの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液11質量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.75の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92000、Mwが156000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースエステルを合成することが出来る。
尚、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化または低酢化度の成分を濾過で取り除くことも好ましく行われる。
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法で得ることが出来る。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成する事により不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物即ち、錯体を形成し易く、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行うことによって求めることが出来る。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムの屈折率は550nmで1.45〜1.60であるものが好ましく用いられる。フィルムの屈折率の測定方法は、アッベ屈折率計を使用し、日本工業規格JIS K 7105に基づき測定する。また後述する反射防止層の各層の屈折率は各層ごとに塗布した薄膜の5°正反射の反射スペクトルから算出する。セルロースエステルフィルムには可塑剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤等の添加剤を含有させることが出来る。
〈可塑剤〉
可塑剤は特に限定されないが、多価アルコールエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル、クエン酸エステル、脂肪酸エステル、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル等から選択される可塑剤を少なくとも1種含むことが好ましい。そのうち、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
可塑剤は特に限定されないが、多価アルコールエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル、クエン酸エステル、脂肪酸エステル、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル等から選択される可塑剤を少なくとも1種含むことが好ましい。そのうち、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に用いられる多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
一般式(1) R1−(OH)n
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤も好ましく用いることが出来る。具体的には特開2002−265639号公報の段落番号[0015]〜[0020]記載の多価カルボン酸エステルを可塑剤の一つとして添加することが好ましい。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは、少なくとも2種の可塑剤を含有することが好ましい。
2種以上の可塑剤を含有させることによって、可塑剤の溶出を少なくすることが出来る。その理由は明らかではないが、1種類当たりの添加量を減らすことが出来ることと、2種の可塑剤同志及びセルロースエステルとの相互作用によって溶出が抑制されるものと思われる。
セルロースエステルフィルム中の可塑剤の総含有量は、固形分総量に対し、5〜30質量%含有させることが好ましい。更に5〜20質量%が好ましく、6〜16質量%がより好ましく、特に好ましくは8〜13質量%である。また、2種の可塑剤の含有量は各々少なくとも1質量%以上であり、好ましくは各々2質量%以上含有することである。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に係るセルロースエステルフィルムは紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下となるように添加されていることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下となるように添加されていることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の市販品であり好ましく使用出来る。
例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式(1)で示される化合物が好ましく用いられる。
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
以下に本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
また本発明に有用な紫外線吸収剤の一つであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられる。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
また本発明に有用な紫外線吸収剤の一つであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられる。
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n−1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
上記において、アルキル基としては例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えばクロール、ブロム、フッ素原子など、ヒドロキシ基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子などを置換していてもよい)などが挙げられる。
以下に一般式(2)で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−8 :2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−9 :2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−10:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−11:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
更にトリアジン系紫外線吸収剤としては、1,3,5−トリアジン環を有する化合物が好ましく用いられる。
UV−8 :2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−9 :2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−10:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−11:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
更にトリアジン系紫外線吸収剤としては、1,3,5−トリアジン環を有する化合物が好ましく用いられる。
また、二種類以上の1,3,5−トリアジン環を有する化合物を併用してもよい。二種類以上の円盤状化合物(例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物とポルフィリン骨格を有する化合物)を併用してもよい。
これらの添加剤はセルロースエステルフィルムに対して0.2〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%含有することが好ましい。
また、特開2001−235621の一般式(I)で示されているトリアジン系化合物も本発明に係るセルロースエステルフィルムに好ましく用いられる。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは紫外線吸収剤を2種以上を含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることが出来、特に特開平6−148430号公報記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜4質量%が更に好ましく、0.6〜2質量%が特に好ましい。
〈微粒子〉
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには、微粒子を含有させることが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには、微粒子を含有させることが出来る。
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、酸化アンチモン或いはこれらの複合酸化物、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均径は5nm〜1μmが好ましく、更に好ましいのは5〜50nmである。これらは主に粒径0.05〜1μm好ましくは0.05〜0.3μmの一次粒子若しくは2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.001〜1質量%であることが好ましく、特に0.01〜0.1質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表層にこれらの微粒子を含有することが好ましい。
本発明の方法で透明基材フィルムの表面に固形粒子又は微細凸構造を形成することでフィルム中に添加する微粒子の量を少なくすることが出来る。これによって透明性に優れかつ取り扱い性にも優れたフィルムを提供することが出来る。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、架橋アクリル樹脂及び架橋ポリスチレン樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられるセルロースエステルフィルムにおいては活性線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が1.0以下であることが好ましく、0.1〜0.8であることが更に好ましい。また、活性線硬化樹脂層を設ける面の動摩擦係数が1.0以下であることが好ましい。
〈染料〉
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムには、色味調整のため染料を添加することも出来る。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムには、色味調整のため染料を添加することも出来る。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の任意の位置に任意の置換基を有することが出来る。好ましい置換基としてはアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。特に特開2001−154017号公報の段落番号[0034]〜[0037]記載の青色染料、特にアントラキノン系染料を含有することが好ましい。また、赤外吸収染料を含有することが好ましく、特に特開2001−154017号公報のチオピリリウムスクアリリウム染料、チオピリリウムクロコニウム染料、ピリリウムスクアリリウム染料、ピリリウムクロコニウム染料の内のいずれかであることが好ましい。具体的には該公報の一般式(1)若しくは一般式(2)で示されている赤外吸収染料を好ましく添加することが出来る。
各種添加剤は製膜前のセルロースエステル含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましいセルロースエステルの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
〈セルロースエステルフィルムの製造方法〉
次に、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
次に、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状若しくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
本発明のドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。その為、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来る。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることが出来る。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。この為絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることが出来る。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
また、流延工程において、固形粒子を含むインク液滴をインクジェット方式によりインクジェットノズルから吐出させることが好ましい。この際、セルロースエステルフィルムが良好な平面性と、固形粒子を安定して表面に固定するためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明の光学フィルム用のセルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向に延伸し(MD延伸)、更にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが好ましい。縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍が更に好ましい。縦方向及び横方向延伸により面積が1.12倍〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15倍〜1.32倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることが出来る。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力及びその後の搬送張力によって延伸することが好ましい。例えば剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことが出来るが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は30〜180℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため更に好ましい。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。
セルロースエステルフィルムの膜厚の変動は幅方向、長手方向とも±3%以内が好ましく、更に好ましくは±2%以内であり、特に好ましくは±0.5%以内である。
本発明の光学フィルムは、幅1〜4mのものが好ましく用いられる。本発明によれば、特に幅1.4〜4mの広幅フィルムの取り扱い性を著しく改善することが出来る。
〈物性〉
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで850g/m2・24h以下であり、好ましくは20〜800g/m2・24hであり、20〜750g/m2・24hであることが特に好ましい。透湿度はJIS Z0208に記載の方法に従い測定することが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで850g/m2・24h以下であり、好ましくは20〜800g/m2・24hであり、20〜750g/m2・24hであることが特に好ましい。透湿度はJIS Z0208に記載の方法に従い測定することが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは下記測定による破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
(破断点伸度の測定)
任意の残留溶媒を含むフィルムを試料幅を10mm、長さ130mmに切り出し、23℃、55%RHで24時間保管した試料を、チャック間距離100mmにして引っ張り速度100mm/分で引っ張り試験を行い求めることが出来る。
任意の残留溶媒を含むフィルムを試料幅を10mm、長さ130mmに切り出し、23℃、55%RHで24時間保管した試料を、チャック間距離100mmにして引っ張り速度100mm/分で引っ張り試験を行い求めることが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの下記測定による可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
(透過率の測定)
透過率Tは、分光高度計U−3400(日立製作所(株))を用い、各試料を350〜700nmの波長領域で10nmおきに求めた分光透過率τ(λ)から、380、400、500nmの透過率を算出することが出来る。
透過率Tは、分光高度計U−3400(日立製作所(株))を用い、各試料を350〜700nmの波長領域で10nmおきに求めた分光透過率τ(λ)から、380、400、500nmの透過率を算出することが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの下記測定によるヘイズは1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることが更に好ましく、0〜0.1%であることが特に好ましい。可視光の透過率は90%以上が好ましく、より好ましく92%以上であり、更に94%以上であることが好ましい。
(ヘイズ値)
JIS K7105に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定し、透明性の指標とすることが出来る。
JIS K7105に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定し、透明性の指標とすることが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの面内レターデーション値(Ro)が0〜70nm以下であることが好ましい。より好ましくは0〜30nm以下であり、より好ましくは0〜10nm以下である。膜厚方向のレターデーション値(Rt)は、0〜400nmであることが好ましく、10〜200nmであることが好ましく、更に30〜150nmであることが好ましい。
レターデーション値(Ro)(Rt)は以下の式によって求めることが出来る。
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
尚、レターデーション値(Ro)、(Rt)、遅相軸角度は自動複屈折率計を用いて測定することが出来る。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることが出来る。
また、遅相軸はフィルムの幅手方向±1°若しくは長尺方向±1°にあることが好ましい。
本発明では、共流延または逐次流延若しくは塗布によって2層以上の多層構成とした熱可塑性樹脂フィルムを用いてもよい。
また、特開2000−352620号公報段落番号[0036]〜[0105]記載のセルロースエステルフィルムも好ましく用いることが出来る。或いは特開2004−29199号公報段落番号[0013]〜[0124]記載のセルロースエステルフィルムも好ましく用いられる。
〈シクロオレフィンポリマー〉
次に、本発明に好ましく用いられるシクロオレフィンポリマーフィルムについて説明する。
次に、本発明に好ましく用いられるシクロオレフィンポリマーフィルムについて説明する。
本発明に用いられるシクロオレフィンポリマーは脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
好ましいシクロオレフィンポリマーは、環状オレフィンを重合または共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。
好ましいシクロオレフィンポリマーは、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cm2の重合圧力で重合させる。
本発明に用いるシクロオレフィンポリマーは、環状オレフィンを重合または共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
或いは、シクロオレフィンポリマーとして、下記のノルボルネン系ポリマーも挙げられる。ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好ましく利用出来るが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)または(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
ここで、上記A、B、C及びDは特に限定されないが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、または、少なくとも2価の連結基を介して有機基が連結されてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、AまたはBとCまたはDは単環または多環構造を形成してもよい。ここで、上記少なくとも2価の連結基とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子に代表されるヘテロ原子を含み、例えばエーテル、エステル、カルボニル、ウレタン、アミド、チオエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記連結基を介し、上記有機基は更に置換されてもよい。
また、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1、4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
合成したポリマーの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
この他、本発明で用いられるシクロオレフィンポリマーとしては、特開平5−2108号公報段落番号[0014]〜[0019]記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂、特開2001−277430号公報段落番号[0015]〜[0031]記載の熱可塑性ノルボルネン系ポリマー、特開2003−14901号公報段落番号[0008]〜[0045]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−139950号公報段落番号[0014]〜[0028]記載のノルボルネン系樹脂組成物、特開2003−161832号公報段落番号[0029]〜[0037]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−195268号公報段落番号[0027]〜[0036]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−211589号公報段落番号[0009]〜[0023]脂環式構造含有重合体樹脂、特開2003−211588号公報段落番号[0008]〜[0024]記載のノルボルネン系重合体樹脂若しくはビニル脂環式炭化水素重合体樹脂などが挙げられる。
具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
本発明で使用されるシクロオレフィンポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
また、シクロオレフィンポリマー100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止することが出来る。
酸化防止剤としては、20℃における蒸気圧が10-5Pa以下、特に好ましくは10-8Pa以下の酸化防止剤が望ましい。蒸気圧が10-5Paより高い酸化防止剤は、押出成形する場合に発泡したり、また、高温にさらされた時に成形品の表面から酸化防止剤が揮散するという問題が起こる。
本発明で使用出来る酸化防止剤としては、例えば、次のようなものを挙げることが出来、これらの内の一種または数種を組み合わせて用いてもよい。
ヒンタードフェノール系:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−メトキシ−p−ジメチル−フェノール、2,4−ジ−t−アミルフェノール、t−ブチル−m−クレゾール、4−t−ブチルフェノール、スチレン化フェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、4,4′−ビスフェノール、4,4′−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−α−メチルシクロヘキシルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルナフトール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−メタ−クレゾール)、2,2′−チオ−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ジ−o−クレゾールスルフィド、2,2′−チオ−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス−(2,3−ジ−sec−アミルフェノール)、1,1′−チオ−ビス−(2−ナフトール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6,−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシジェニル)プロピオネート〕等。
アミノフェノール類:ノルマルブチル−p−アミノフェノール、ノルマルブチロイル−p−アミノフェノール、ノルマルペラゴノイル−p−アミノフェノール、ノルマルラウロイル−p−アミノフェノール、ノルマルステアロイル−p−アミノフェノール、2、6−ジ−t−ブチル−α−ジメチル、アミノ−p−クレゾール等。
ハイドロキノン系:ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ハイドロキノンメチルエーテル、ハイドロキノンモノベンジルエーテル等。
ホスファイト系トリホスファイト、トリス(3,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンフォスファナイト、2−エチルヘキシルオクチルフォスファイト等。
その他:2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、ジカテコールボレート−ジ−o−トリルグアニジン塩、ニッケル−ジメチルジチオカーバメイト、ニッケル−ペンタメチレンンジチオカルバネート、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩等。
シクロオレフィンポリマーフィルムは、必要に応じて、プラスチックフィルムに一般的に配合することが出来る添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、及び充填剤などが挙げられ、その含有量は本発明の目的を損ねない範囲で選択することが出来る。
シクロオレフィンポリマーフィルムの成形方法は格別な限定はなく、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも用いることが出来る。加熱溶融成形法は、更に詳細に、押し出し成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類出来るが、これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押し出し成形法、インフレーション成形法、及びプレス成形法が好ましく、押し出し成形法が最も好ましい。成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜設定される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、フィルムにヒケやひずみを生じ、樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるボイドやシルバーストリークが発生したり、フィルムが黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。フィルムの厚みは、通常5〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmの範囲である。厚みが薄過ぎる場合は、積層時の取り扱いが困難となり、厚過ぎる場合は、積層後の乾燥時間が長くなって生産性が低下する。
シクロオレフィンポリマーフィルムは、その表面の濡れ張力が、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上、更に好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が上記範囲にあると、フィルムと偏光膜との接着強度が向上する。表面の濡れ張力を調整するために、例えば、コロナ放電処理、オゾンの吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他公知の表面処理を施すことが出来る。
延伸前のシートは厚さが50〜500μm程度の厚さが必要であり、厚さムラは小さいほど好ましく、全面において±8%以内、好ましくは±6%以内、より好ましくは±4%以内である。
上記シクロオレフィンポリマーフィルムはセルロースエステルフィルムと同様に、シートを一軸方向に延伸することが出来、更にその方向と直交する方向に延伸する二軸延伸であってもよい。延伸するには前記テンター装置等を用いることが好ましい。
延伸倍率は1.1〜10倍、好ましくは1.3〜8倍である。
延伸は、通常、シートを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行われる。延伸温度が低過ぎると破断し、高過ぎると分子配向しない。
この様にして得たフィルムは、延伸により分子が配向されて、所望の大きさのリターデーションを持たせることが出来る。本発明において好ましいリターデーション値は、Rtが70〜400nm、Roが30〜300nmであり、更に好ましいRoは30〜70nmである。
〈ハードコート層〉
本発明は熱可塑性樹脂フィルムの固形粒子を付着させた面又は固形粒子を含む微細凸構造を設けた面の反対の面上にハードコート層を塗設することが好ましい。ハードコート層は、活性線硬化樹脂及び微粒子を含有するハードコート層であることが好ましい。
本発明は熱可塑性樹脂フィルムの固形粒子を付着させた面又は固形粒子を含む微細凸構造を設けた面の反対の面上にハードコート層を塗設することが好ましい。ハードコート層は、活性線硬化樹脂及び微粒子を含有するハードコート層であることが好ましい。
微粒子としては無機粒子及び有機粒子が挙げられる。本発明に使用することが出来る無機微粒子としては酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム或いはこれらの複合酸化物等を挙げることが出来る。
これらの内で、酸化珪素、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン或いはこれらの複合酸化物等が好ましく用いられる。
有機微粒子としては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、シリコン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、更にポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ弗化エチレン系樹脂等が使用出来る。特に好ましくは導電性微粒子を含有することである。
粒径は5nm〜10μmの微粒子が用いられるが、5nm〜5μmの粒子が好ましい。特にハードコート層の平均膜厚よりも直径の大きな粒子は防眩性ハードコート層を形成するのに有用である。防眩性を持たせない場合は、好ましくは5nm〜1μmの粒子を含有することである。異なる組成、粒径、屈折率の微粒子を組み合わせて用いることも出来る。例えば、酸化珪素と酸化ジルコニウム或いは酸化珪素とITO微粒子を組み合わせて用いることが出来る。
活性線硬化樹脂とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることが出来る。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。例えば、イルガキュア184、イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ社製)などの市販品が好ましく用いられる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)、DPHA(日本化薬(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
この他、屈折率調整のため、酸化ジルコニウム超微粒子分散物含有させたハードコート塗布液 デソライトZ−7041、デソライトZ−7042(JSR(株)製)なども単独で若しくは他の紫外線硬化樹脂などに添加混合して使用することが出来る。
本発明に用いられる活性線硬化性樹脂の硬化は、電子線または紫外線のような活性線照射によって硬化することが出来る。例えば、電子線硬化の場合にはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用出来る。
活性線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜40質量部となるように配合することが望ましい。
本発明に用いられるハードコート層の屈折率は、1.5〜2.0であり、より好ましくは1.6〜1.8である。透明支持体として用いられるセルロースエステルフィルムの屈折率は約1.5である。ハードコート層の屈折率が小さ過ぎると反射防止性が低下する。更に、これが大き過ぎると、光学フィルムの反射光の色味が強くなり、好ましくない。本発明に用いられるハードコート層の屈折率は、低反射性フィルムを得るための光学設計上から屈折率が1.60〜1.70の範囲にあることが特に好ましい。ハードコート層の屈折率は前記添加する微粒子の屈折率や含有量によって調製することが出来る。
本発明に用いられるハードコート層の膜厚とは、断層電子顕微鏡写真で観察した時のハードコート層の樹脂部分の膜厚10ケ所の平均を本発明の膜厚としており、十分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の膜厚は0.5μm〜10.0μmの範囲が好ましく、更に好ましくは、1.0μm〜5.0μmである。またハードコート層は2層以上から構成されていてもよい。
これらのハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、0.5J/cm2以下であり、好ましくは0.1J/cm2以下である。
活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜1分程度がよく、硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性優れたフィルムを得ることが出来る。
ハードコート層の塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
また、ハードコート層の塗布液には、特にシリコン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1000〜100000、好ましくは、2000〜50000が適当であり、数平均分子量が1000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
シリコン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
(反射防止層)
本発明に係る光学フィルムはハードコート層上に、更に反射防止層を設けることが好ましい。
本発明に係る光学フィルムはハードコート層上に、更に反射防止層を設けることが好ましい。
本発明では反射防止層を設ける方法は特に限定されず、スパッタ、大気圧プラズマ処理、塗布などが挙げられるが、塗布により形成することが好ましい。
反射防止層を塗布により形成する方法としては、溶剤に溶解したバインダー樹脂中に金属酸化物の粉末を分散し、塗布乾燥する方法、架橋構造を有するポリマーをバインダー樹脂として用いる方法、エチレン性不飽和モノマーと光重合開始剤を含有させ、活性線を照射することにより層を形成する方法等の方法を挙げることが出来る。
本発明においては、ハードコート層を付与した透明基材フィルムの上に反射防止層を設け、該反射防止層の少なくとも一層が低屈折率層である。
本発明に係る光学フィルムの構成を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
ここでハードコート層、防眩層とは、前述の活性線硬化樹脂層を意味する。尚、ここでは本発明の固形粒子を付着させた面又は固形粒子を含む微細凸構造を設けた面をバックコート層と表記した。
バックコート層/樹脂フィルム/ハードコート層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
また、中屈折率層若しくは高屈折率層が帯電防止層を兼ねてもよい。
バックコート層/樹脂フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
また、中屈折率層若しくは高屈折率層が帯電防止層を兼ねてもよい。
前記光学フィルムでは、最上層に低屈折率層を形成し、ハードコート層との間に高屈折率層の金属酸化物層を形成したり、更にハードコート層と高屈折率層との間に中屈折率層(金属酸化物の含有量或いは樹脂バインダーとの比率、金属の種類を変更して屈折率を調整した金属酸化物層)を設けることは、反射率の低減のために好ましい。
本発明の低屈折率層には中空微粒子が含有されることが好ましい。
ここでいう中空微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層には(I)複合粒子または(II)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
尚、空洞粒子は、内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質などの内容物で充填されている。この様な無機微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される無機微粒子の平均粒径は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層などの透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマーなどが容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
前記複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁には、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3などが挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgFなどからなるものが挙げられる。この内特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることが出来る。この様な多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表した時のモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても更に屈折率が低いものを得ることはない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が小さく、かつ屈折率の低い粒子を得られないことがある。
この様な多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
尚、この様な多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質などが挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒などが含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
この様な無機微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1〜第3工程から無機化合物粒子は製造される。
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を挙げることが出来る。尚、アンモニウムのケイ酸塩または有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物などを添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物を用いられる。具体的には、Al、B、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、Wなどから選ばれる元素のオキソ酸、該オキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることが出来る。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウムが適当である。
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度にはとくに制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al2O3、TiO2またはZrO2等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることが出来る。更に前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整したのち、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。この様にして、シード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることが出来る。
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオンなどのオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、或いは、シード粒子上に析出して粒子成長が起こる。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOx)に換算し、MOx/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積は殆ど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOx/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、或いは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、或いは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
尚、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。この様な多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することが出来る。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られるケイ酸液或いは加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。尚シリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
この様なシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することが出来る。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、この為細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することが出来る。尚、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持出来る範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多過ぎると、シリカ保護膜が厚くなり過ぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、一般式RnSi(OR’)4−n〔R、R’:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることが出来る。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることが出来る。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることが出来る。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。尚、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR’)4−n〔R、R’:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることが出来る。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることが出来る。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることが出来る。
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、または有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。尚、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆出来る程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物またはケイ酸液は添加される。
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞出来る程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化出来ないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率の効果が得られないことがある。
この様にして得られた無機微粒子の屈折率は、1.44未満と低い。この様な無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
低屈折率層のバインダーマトリックスとしては、熱または電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう)も好ましく用いられる。
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号公報、同10−147739号公報に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の組み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
また上記モノマーに加えて、含フッ素ビニルモノマー及び架橋性基付与のためのモノマー以外のモノマーを併用して形成された含フッ素共重合体を架橋前の含フッ素樹脂として用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることが出来る。また、含フッ素共重合体中に、滑り性、防汚性付与のため、ポリオルガノシロキサン骨格や、パーフルオロポリエーテル骨格を導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと上記のモノマーとの重合、末端にラジカル発生基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルによる上記モノマーの重合、官能基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと、含フッ素共重合体との反応等によって得られる。
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
含フッ素共重合体は、これらモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合法等の手段により重合することにより得ることが出来る。
架橋前の含フッ素樹脂は、市販されており使用することが出来る。市販されている架橋前の含フッ素樹脂の例としては、サイトップ(旭硝子製)、テフロン(登録商標)AF(デュポン製)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子製)、オプスター(JSR製)等が挙げられる。
架橋した含フッ素樹脂を構成成分とする低屈折率層は、動摩擦係数が0.03〜0.15の範囲、水に対する接触角が90〜120度の範囲にあることが好ましい。
架橋した含フッ素樹脂を構成成分とする低屈折率層は前述の無機粒子を含有する。
また、他の低屈折率層用のバインダーマトリックスとして、各種ゾルゲル素材を用いることも出来る。この様なゾルゲル素材としては、金属アルコレート(シラン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等のアルコレート)、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることが出来る。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。また、各種の官能基を有するオルガノアルコキシシラン(ビニルトリアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキジシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン等)、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等)、フルオロアルキルエーテル基含有シラン化合物を用いることも好ましい。特にフッ素含有のシラン化合物を用いることは、層の低屈折率化及び撥水・撥油性付与の点で好ましい。
低屈折率層は、5〜50質量%の量のポリマーを含むことが好ましい。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持出来るように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、或いは(3)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。(1)の表面処理剤に結合させるポリマーは、(2)のシェルポリマーまたは(3)のバインダーポリマーであることが好ましい。(2)のポリマーは、低屈折率層の塗布液の調製前に、微粒子の周囲に重合反応により形成することが好ましい。(3)のポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に、重合反応により形成することが好ましい。上記(1)〜(3)の内の二つまたは全てを組み合わせて実施することが好ましく、(1)と(3)の組み合わせ、または(1)〜(3)全ての組み合わせで実施することが特に好ましい。(1)表面処理、(2)シェル及び(3)バインダーについて順次説明する。
(1)表面処理
微粒子(特に無機微粒子)には、表面処理を実施して、ポリマーとの親和性を改善することが好ましい。表面処理は、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類出来る。化学的表面処理のみ、または物理的表面処理と化学的表面処理の組み合わせで実施することが好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。微粒子がSiO2からなる場合は、シランカップリング剤による表面処理が特に有効に実施出来る。具体的なシランカップリング剤の例としては、後述するシランカップリング剤が好ましく用いられる。
微粒子(特に無機微粒子)には、表面処理を実施して、ポリマーとの親和性を改善することが好ましい。表面処理は、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類出来る。化学的表面処理のみ、または物理的表面処理と化学的表面処理の組み合わせで実施することが好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。微粒子がSiO2からなる場合は、シランカップリング剤による表面処理が特に有効に実施出来る。具体的なシランカップリング剤の例としては、後述するシランカップリング剤が好ましく用いられる。
カップリング剤による表面処理は、微粒子の分散物に、カップリング剤を加え、室温から60℃までの温度で、数時間から10日間分散物を放置することにより実施出来る。表面処理反応を促進するため、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、オルトケイ酸、リン酸、炭酸)、有機酸(例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、フェノール、ポリグルタミン酸)、またはこれらの塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩)を、分散物に添加してもよい。
(2)シェル
シェルを形成するポリマーは、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが好ましい。フッ素原子を主鎖または側鎖に含むポリマーが好ましく、フッ素原子を側鎖に含むポリマーが更に好ましい。ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルが好ましく、フッ素置換アルコールとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸とのエステルが最も好ましい。シェルポリマーの屈折率は、ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い低下する。低屈折率層の屈折率を低下させるため、シェルポリマーは35〜80質量%のフッ素原子を含むことが好ましく、45〜75質量%のフッ素原子を含むことが更に好ましい。フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成することが好ましい。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例としては、フルオロオレフィン(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、フッ素化ビニルエーテル及びフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが挙げられる。
シェルを形成するポリマーは、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが好ましい。フッ素原子を主鎖または側鎖に含むポリマーが好ましく、フッ素原子を側鎖に含むポリマーが更に好ましい。ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルが好ましく、フッ素置換アルコールとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸とのエステルが最も好ましい。シェルポリマーの屈折率は、ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い低下する。低屈折率層の屈折率を低下させるため、シェルポリマーは35〜80質量%のフッ素原子を含むことが好ましく、45〜75質量%のフッ素原子を含むことが更に好ましい。フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成することが好ましい。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例としては、フルオロオレフィン(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、フッ素化ビニルエーテル及びフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが挙げられる。
シェルを形成するポリマーは、フッ素原子を含む繰り返し単位とフッ素原子を含まない繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。フッ素原子を含まない繰り返し単位は、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの例としては、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート)、スチレン及びその誘導体(例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル)、アクリルアミド(例えば、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド及びアクリロニトリルが挙げられる。
後述する(3)のバインダーポリマーを併用する場合は、シェルポリマーに架橋性官能基を導入して、シェルポリマーとバインダーポリマーとを架橋により化学的に結合させてもよい。シェルポリマーは、結晶性を有していてもよい。シェルポリマーのガラス転移温度(Tg)が低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、低屈折率層内のミクロボイドの維持が容易である。但し、Tgが低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、微粒子が融着せず、低屈折率層が連続層として形成されない(その結果、強度が低下する)場合がある。その場合は、後述する(3)のバインダーポリマーを併用し、バインダーポリマーにより低屈折率層を連続層として形成することが望ましい。微粒子の周囲にポリマーシェルを形成して、コアシェル微粒子が得られる。コアシェル微粒子中に無機微粒子からなるコアが5〜90体積%含まれていることが好ましく、15〜80体積%含まれていることが更に好ましい。二種類以上のコアシェル微粒子を併用してもよい。また、シェルのない無機微粒子とコアシェル粒子とを併用してもよい。
(3)バインダー
バインダーポリマーは、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例としては、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が挙げられる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用出来る。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、架橋基は、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。バインダーポリマーの重合反応及び架橋反応に使用する重合開始剤は、熱重合開始剤や、光重合開始剤が用いられるが、光重合開始剤の方がより好ましい。光重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例としては、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが挙げられる。ベンゾイン類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが挙げられる。ベンゾフェノン類の例としては、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが挙げられる。ホスフィンオキシド類の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。
バインダーポリマーは、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例としては、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が挙げられる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用出来る。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、架橋基は、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。バインダーポリマーの重合反応及び架橋反応に使用する重合開始剤は、熱重合開始剤や、光重合開始剤が用いられるが、光重合開始剤の方がより好ましい。光重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例としては、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが挙げられる。ベンゾイン類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが挙げられる。ベンゾフェノン類の例としては、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが挙げられる。ホスフィンオキシド類の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。
バインダーポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に重合反応(必要ならば更に架橋反応)により形成することが好ましい。低屈折率層の塗布液に、少量のポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂)を添加してもよい。
また、本発明の低屈折率層或いは他の屈折率層には滑り剤を添加することが好ましく、滑り性を付与することによって耐傷性を改善することが出来る。滑り剤としては、シリコンオイルまたはワックス状物質が好ましく用いられる。例えば、下記一般式で表される化合物が好ましい。
一般式 R1COR2
式中、R1は炭素原子数が12以上の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。アルキル基またはアルケニル基が好ましく、更に炭素原子数が16以上のアルキル基またはアルケニル基が好ましい。R2は−OM1基(M1はNa、K等のアルカリ金属を表す)、−OH基、−NH2基、または−OR3基(R3は炭素原子数が12以上の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、好ましくはアルキル基またはアルケニル基を表す)を表し、R2としては−OH基、−NH2基または−OR3基が好ましい。具体的には、ベヘン酸、ステアリン酸アミド、ペンタコ酸等の高級脂肪酸またはその誘導体、天然物としてこれらの成分を多く含んでいるカルナバワックス、蜜蝋、モンタンワックスも好ましく使用出来る。特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4,275,146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号公報、英国特許第927,446号明細書または特開昭55−126238号公報及び同58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数が10〜24の脂肪酸と炭素数が10〜24のアルコールのエステル)、そして米国特許第3,933,516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩、特開昭51−37217号公報に開示されているような炭素数10までのジカルボン酸と脂肪族または環式脂肪族ジオールからなるポリエステル化合物、特開平7−13292号公報に開示されているジカルボン酸とジオールからのオリゴポリエステル等を挙げることが出来る。
式中、R1は炭素原子数が12以上の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。アルキル基またはアルケニル基が好ましく、更に炭素原子数が16以上のアルキル基またはアルケニル基が好ましい。R2は−OM1基(M1はNa、K等のアルカリ金属を表す)、−OH基、−NH2基、または−OR3基(R3は炭素原子数が12以上の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、好ましくはアルキル基またはアルケニル基を表す)を表し、R2としては−OH基、−NH2基または−OR3基が好ましい。具体的には、ベヘン酸、ステアリン酸アミド、ペンタコ酸等の高級脂肪酸またはその誘導体、天然物としてこれらの成分を多く含んでいるカルナバワックス、蜜蝋、モンタンワックスも好ましく使用出来る。特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4,275,146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号公報、英国特許第927,446号明細書または特開昭55−126238号公報及び同58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数が10〜24の脂肪酸と炭素数が10〜24のアルコールのエステル)、そして米国特許第3,933,516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩、特開昭51−37217号公報に開示されているような炭素数10までのジカルボン酸と脂肪族または環式脂肪族ジオールからなるポリエステル化合物、特開平7−13292号公報に開示されているジカルボン酸とジオールからのオリゴポリエステル等を挙げることが出来る。
例えば、低屈折率層に使用する滑り剤の添加量は0.01mg/m2〜10mg/m2が好ましい。
本発明においては、反射率の低減のために、活性線硬化樹脂層を付与した透明支持体と低屈折率層との間に、高屈折率層を設けることも好ましい。また、透明支持体と高屈折率層との間に中屈折率層を設けることは、反射率の低減のために更に好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、透明支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
本発明に用いられる中、高屈折率層は下記一般式で表される有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物を含有する塗布液を塗布し乾燥させて形成させた屈折率1.55〜2.5の層であることが好ましい。
一般式 Ti(OR1)4
式中、R1としては炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基がよいが、好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。また、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、アルコキシド基が加水分解を受けて−Ti−O−Ti−のように反応して架橋構造を作り、硬化した層を形成する。
式中、R1としては炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基がよいが、好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。また、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、アルコキシド基が加水分解を受けて−Ti−O−Ti−のように反応して架橋構造を作り、硬化した層を形成する。
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーとしては、Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(O−n−C3H7)4、Ti(O−i−C3H7)4、Ti(O−n−C4H9)4、Ti(O−n−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−i−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−n−C4H9)4の2〜10量体等が好ましい例として挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることが出来る。中でもTi(O−n−C3H7)4、Ti(O−i−C3H7)4、Ti(O−n−C4H9)4、Ti(O−n−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−n−C4H9)4の2〜10量体が特に好ましい。
本発明に用いられる中、高屈折率層用塗布液は、水と後述する有機溶媒が順次添加された溶液中に上記有機チタン化合物を添加することが好ましい。水を後から添加した場合は、加水分解/重合が均一に進行せず、白濁が発生したり、膜強度が低下する。水と有機溶媒は添加された後、良く混合させるために攪拌し混合溶解されていることが好ましい。
また、別法として有機チタン化合物と有機溶媒を混合させておき、この混合溶液を、上記水と有機溶媒の混合攪拌された溶液中に添加することも好ましい態様である。
また、水の量は有機チタン化合物1モルに対して、0.25〜3モルの範囲であることが好ましい。0.25モル未満であると、加水分解、重合の進行が不十分で膜強度が低下する。3モルを超えると加水分解、重合が進行し過ぎて、TiO2の粗大粒子が発生し白濁するため好ましくない。従って水の量は上記範囲で調整する必要がある。
また、水の含有率は塗布液総量に対して10質量%未満であることが好ましい。水の含有率を塗布液総量に対して10質量%以上にすると、塗布液の経時安定が劣り白濁を生じたりするため好ましくない。
ここで有機溶媒としては、水混和性の有機溶媒であることが好ましい。水混和性の有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられるが、特に、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類が好ましい。これらの有機溶媒の使用量は、前述したように、水の含有率が塗布液総量に対して10質量%未満であるように、水と有機溶媒のトータルの使用量を調整すればよい。
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、塗布液に含まれる固形分中の50.0質量%〜98.0質量%を占めていることが望ましい。固形分比率は50質量%〜90質量%がより好ましく、55質量%〜90質量%が更に好ましい。この他、塗布組成物には有機チタン化合物のポリマー(予め有機チタン化合物の加水分解を行って架橋したもの)或いは酸化チタン微粒子を添加することも好ましい。
本発明に用いられる高屈折率層及び中屈折率層は、微粒子として金属酸化物粒子を含み、更にバインダーポリマーを含むものも好ましく用いられる。
或いは、上記塗布液調製法で加水分解/重合した有機チタン化合物と金属酸化物粒子を組み合わせると、金属酸化物粒子と加水分解/重合した有機チタン化合物とが強固に接着し、粒子のもつ硬さと均一膜の柔軟性を兼ね備えた強い塗膜を得ることが出来る。
高屈折率層及び中屈折率層に用いる金属酸化物粒子は、屈折率が1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることが更に好ましい。金属酸化物粒子の1次粒子の質量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることが更に好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。層中での金属酸化物粒子の質量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが更に好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。金属酸化物粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることが更に好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
金属酸化物粒子の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物であり、具体的には二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化ジルコニウムが挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。金属酸化物粒子は、これらの金属の酸化物を主成分とし、更に他の元素を含むことが出来、導電性を付与した微粒子も好ましく用いられる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びS等が挙げられる。
金属酸化物粒子は表面処理されていることが好ましい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用いて実施することが出来る。表面処理に用いる無機化合物の例としては、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム及び酸化鉄が挙げられる。中でもアルミナ及びシリカが好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例としては、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が挙げられる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。
具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
これらの内、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、珪素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
2種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリング剤を用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例えば、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)及びその加水分解物が挙げられる。
カップリング剤による表面処理は、微粒子の分散物に、カップリング剤を加え、室温から60℃までの温度で、数時間から10日間分散物を放置することにより実施出来る。表面処理反応を促進するため、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、オルトケイ酸、リン酸、炭酸)、有機酸(例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、フェノール、ポリグルタミン酸)、またはこれらの塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩)を、分散物に添加してもよい。
これらシランカップリング剤は予め必要量の水で加水分解されていることが好ましい。シランカップリング剤が加水分解されていると、前述の有機チタン化合物及び金属酸化物粒子の表面が反応し易く、より強固な膜が形成される。また、加水分解されたシランカップリング剤を予め塗布液中に加えることも好ましい。この加水分解に用いた水も有機チタン化合物の加水分解/重合に用いることが出来る。
本発明では2種類以上の表面処理を組み合わせて処理されていても構わない。金属酸化物粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状或いは不定形状であることが好ましい。2種類以上の金属酸化物粒子を高屈折率層或いは中屈折率層に用いてもよい。
高屈折率層及び中屈折率層中の金属酸化物粒子の割合は、5〜65体積%であることが好ましく、より好ましくは10〜60体積%であり、更に好ましくは20〜55体積%である。
上記金属酸化物粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層及び中屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、ケトンアルコール(例、ジアセトンアルコール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
また金属酸化物粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することが出来る。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
本発明に用いられる高屈折率層及び中屈折率層は、架橋構造を有するポリマー(以下、架橋ポリマーともいう)をバインダーポリマーとして用いることが好ましい。架橋ポリマーの例として、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー(以下、ポリオレフィンと総称する)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。中でも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物が更に好ましく、ポリオレフィンの架橋物が最も好ましい。また、架橋ポリマーがアニオン性基を有することは更に好ましい。アニオン性基は無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋構造はポリマーに皮膜形成能を付与して皮膜を強化する機能を有する。上記アニオン性基は、ポリマー鎖に直接結合していてもよいし、連結基を介してポリマー鎖に結合していてもよいが、連結基を介して側鎖として主鎖に結合していることが好ましい。
アニオン性基の例としては、カルボン酸基(カルボキシル)、スルホン酸基(スルホ)及びリン酸基(ホスホノ)が挙げられる。中でも、スルホン酸基及びリン酸基が好ましい。ここで、アニオン性基は、塩の状態であってもよい。アニオン性基と塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオンであることが好ましい。また、アニオン性基のプロトンは、解離していてもよい。アニオン性基とポリマー鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。好ましいバインダーポリマーである架橋ポリマーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。この場合、コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96質量%であることが好ましく、4〜94質量%であることが更に好ましく、6〜92質量%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、2以上のアニオン性基を有していてもよい。
アニオン性基を有する架橋ポリマーには、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋構造も有しない繰り返し単位)が含まれていてもよい。その他の繰り返し単位としては、アミノ基または4級アンモニウム基を有する繰り返し単位及びベンゼン環を有する繰り返し単位が好ましい。アミノ基または4級アンモニウム基は、アニオン性基と同様に、無機微粒子の分散状態を維持する機能を有する。ベンゼン環は、高屈折率層の屈折率を高くする機能を有する。尚、アミノ基、4級アンモニウム基及びベンゼン環は、アニオン性基を有する繰り返し単位或いは架橋構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
上記アミノ基または4級アンモニウム基を有する繰り返し単位を構成単位として含有する架橋ポリマーにおいて、アミノ基または4級アンモニウム基は、ポリマー鎖に直接結合していてもよいし、或いは連結基を介し側鎖としてポリマー鎖に結合していてもよいが、後者がより好ましい。アミノ基または4級アンモニウム基は、2級アミノ基、3級アミノ基または4級アンモニウム基であることが好ましく、3級アミノ基または4級アンモニウム基であることが更に好ましい。2級アミノ基、3級アミノ基または4級アンモニウム基の窒素原子に結合している基としては、アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。4級アンモニウム基の対イオンは、ハライドイオンであることが好ましい。アミノ基または4級アンモニウム基とポリマー鎖とを結合する連結基は、−CO−、−NH−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせから選ばれる2価の基であることが好ましい。架橋ポリマーが、アミノ基または4級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.06〜32質量%であることが好ましく、0.08〜30質量%であることが更に好ましく、0.1〜28質量%であることが最も好ましい。
架橋ポリマーは、架橋ポリマーを生成するためのモノマーを配合して高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布液を調製し、塗布液の塗布と同時または塗布後に、重合反応によって生成させることが好ましい。架橋ポリマーの生成と共に、各層が形成される。アニオン性基を有するモノマーは、塗布液中で無機微粒子の分散剤として機能する。アニオン性基を有するモノマーは、無機微粒子に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%使用される。また、アミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは、塗布液中で分散助剤として機能する。アミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは、アニオン性基を有するモノマーに対して、好ましくは3〜33質量%使用される。塗布液の塗布と同時または塗布後に、重合反応によって架橋ポリマーを生成する方法により、塗布液の塗布前にこれらのモノマーを有効に機能させることが出来る。
本発明に用いられるモノマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが最も好ましいが、その例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。アニオン性基を有するモノマー、及びアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは市販のモノマーを用いてもよい。好ましく用いられる市販のアニオン性基を有するモノマーとしては、KAYAMARPM−21、PM−2(日本化薬(株)製)、AntoxMS−60、MS−2N、MS−NH4(日本乳化剤(株)製)、アロニックスM−5000、M−6000、M−8000シリーズ(東亞合成化学工業(株)製)、ビスコート#2000シリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、ニューフロンティアGX−8289(第一工業製薬(株)製)、NKエステルCB−1、A−SA(新中村化学工業(株)製)、AR−100、MR−100、MR−200(第八化学工業(株)製)等が挙げられる。また、好ましく用いられる市販のアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーとしてはDMAA(大阪有機化学工業(株)製)、DMAEA,DMAPAA(興人(株)製)、ブレンマーQA(日本油脂(株)製)、ニューフロンティアC−1615(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
ポリマーの重合反応は、光重合反応または熱重合反応を用いることが出来る。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、ハードコート層のバインダーポリマーを形成するために用いられる後述する熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。塗布液(モノマーを含む無機微粒子の分散液)を加熱して、モノマー(またはオリゴマー)の重合を促進してもよい。また、塗布後の光重合反応の後に加熱して、形成されたポリマーの熱硬化反応を追加処理してもよい。
中屈折率層及び高屈折率層には、比較的屈折率が高いポリマーを用いることが好ましい。屈折率が高いポリマーの例としては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及び環状(脂環式または芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高く用いることが出来る。
反射防止層の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法やエクストルージョンコート法、スプレーコート法、インクジェット法により、塗布により形成することが出来る。
〈偏光板〉
本発明の偏光板について述べる。
本発明の偏光板について述べる。
偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の光学フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した光学フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも該光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。反対面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−1、KC8UCR−2、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UXW−H(コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。これらは同種のフィルムを偏光子の両面に用いて偏光板化することも出来、或いは異なる種類のフィルムを組み合わせて偏光板とすることも出来る。これらの偏光板は表示装置の表面若しくは裏面(バックライト側)に使用することが出来る。例えば、KC8UY/偏光子/KC12UR、KC8UX2M/偏光子/KC8UCR−3、KC8UXW−H/偏光子/KC8UCR4、KCUXW−H/偏光子/KCUCR−3等と組み合わせて用いることが出来る。本発明の光学フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有している光学補償フィルムであることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957号公報段落番号[0014]〜[0078]、特開2003−170492号公報段落番号[0064]〜[0252]記載の方法で作製することが出来る。或いは更にディスコチック液晶などの液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号公報段落番号[0033]〜[0053]記載の方法で光学異方性層を形成することが出来る。本発明の光学フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることが出来る。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明の光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
本発明の光学フィルムを使用した偏光板はカールも少なく平面性にも優れ、異物故障の発生もなく、更に光学補償フィルムを組み合わせることによる視野角拡大と併せて視認性の著しい向上をもたらすことが出来た。
〈表示装置〉
本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の表示装置を作製することが出来る。本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明の光学フィルムは反射防止層の反射光の色むらやぎらつきが著しく少なく、また、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、色むら、ぎらつきや波打ちむらが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の表示装置を作製することが出来る。本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明の光学フィルムは反射防止層の反射光の色むらやぎらつきが著しく少なく、また、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、色むら、ぎらつきや波打ちむらが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
〈セルロースエステルフィルムの作製〉
(インライン添加液の作製)
1,3,5トリアジン化合物(下記構造の化合物D) 12質量部
メチレンクロライド 100質量部
(実施例1)
〈セルロースエステルフィルムの作製〉
(インライン添加液の作製)
1,3,5トリアジン化合物(下記構造の化合物D) 12質量部
メチレンクロライド 100質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
その後、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)6質量部を攪拌しながら加えて、更に60分間攪拌した後、アドバンテック東洋(株)のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過し、インライン添加液を調製した。
(ドープ液の調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート)
100質量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1、アセチル基置換度2.9)
トリメチロールプロパントリベンゾエート(下記化合物) 5.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.5質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート)
100質量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1、アセチル基置換度2.9)
トリメチロールプロパントリベンゾエート(下記化合物) 5.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.5質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液を調製した。濾過したドープ液を100質量部に対し、前述のインライン添加液を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、1.8m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。
図8の10Bの位置に下記インクジェットヘッドを設置し、セルロースエステルフィルムのステンレスバンド支持体に接する面とは反対の面に、下記のインク液をインクジェット方式によりインク液滴として1plで吐出し、着弾後85℃で乾燥して、フィルム面に固形粒子を付着させた。固形粒子の付着状況は図1のように均一に付着していた。
〈インクジェット吐出方法〉
インクジェット吐出装置は、ラインヘッド方式(図10の(a))を使用し、ノズル径が3.5μmのノズルを所定数有するインクジェットヘッドを図11のように5基を準備した。インクジェットヘッドは図9に記載の構成のものを使用した。
インクジェット吐出装置は、ラインヘッド方式(図10の(a))を使用し、ノズル径が3.5μmのノズルを所定数有するインクジェットヘッドを図11のように5基を準備した。インクジェットヘッドは図9に記載の構成のものを使用した。
インク供給系は、インク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッド及び配管から構成されており、インク供給タンクからインクジェットヘッド部までは、断熱及び加温(40℃)し、吐出温度は40℃、駆動周波数は20kHzで行った。
〈インク液の組成〉
1−ブタノール 99.95質量部
超微粒子シリカアエロジルR972V(日本アエロジル(株)製)
0.05質量部
ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が120%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを40℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に120℃で1.1倍に延伸した。テンターで延伸を始めた時の残留溶剤量は25%であった。その後、110℃、120℃の加熱ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.4m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施して巻き取り、セルロースエステルフィルムを得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のMD方向(フィルムの搬送方向と同一方向)の延伸倍率は1.1倍であった。セルロースエステルフィルムの残留溶剤量は0.1%であり、平均膜厚は80μm、巻数は3000mであった。このようにして作成した光学フィルムを実施例1とする。
(実施例2)
実施例1において、インクジェットヘッドを10基設置し、フィルム搬送方向上流側の初めの5基のインクは、
1−ブタノール 99.97質量部
超微粒子シリカアエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.03質量部
の組成のものを用いて、フィルムの幅全体に塗布した。
1−ブタノール 99.95質量部
超微粒子シリカアエロジルR972V(日本アエロジル(株)製)
0.05質量部
ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が120%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを40℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に120℃で1.1倍に延伸した。テンターで延伸を始めた時の残留溶剤量は25%であった。その後、110℃、120℃の加熱ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.4m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施して巻き取り、セルロースエステルフィルムを得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のMD方向(フィルムの搬送方向と同一方向)の延伸倍率は1.1倍であった。セルロースエステルフィルムの残留溶剤量は0.1%であり、平均膜厚は80μm、巻数は3000mであった。このようにして作成した光学フィルムを実施例1とする。
(実施例2)
実施例1において、インクジェットヘッドを10基設置し、フィルム搬送方向上流側の初めの5基のインクは、
1−ブタノール 99.97質量部
超微粒子シリカアエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.03質量部
の組成のものを用いて、フィルムの幅全体に塗布した。
次の3基のインクには、
1−ブタノール 99.95質量部
超微粒子シリカアエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.05質量部
の組成のものを用いて、フィルムの中央部80cmの幅に塗布した。
1−ブタノール 99.95質量部
超微粒子シリカアエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.05質量部
の組成のものを用いて、フィルムの中央部80cmの幅に塗布した。
最後の2基のインクには、
1−ブタノール 99.93質量部
超微粒子シリカアエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.07質量部
の組成のものを用いて、フィルムの中央部30cmに塗布した。
1−ブタノール 99.93質量部
超微粒子シリカアエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.07質量部
の組成のものを用いて、フィルムの中央部30cmに塗布した。
上記以外は、実施例1と同様にして光学フィルムの表面に固形粒子を付着させた。固形粒子の付着状況は図3のように中央部が高密度に付着していた。この光学フィルムを実施例2とする。
(実施例3〜7)
実施例1において、1基のインクジェットヘッドを、図2(a)のようにフィルム幅方向に配置した5個のインクジェットヘッド部31〜35から構成し、中央のインクジェットヘッド部33の幅が30cm、その両側のインクジェットヘッド部32、34の幅が25cm、外側のインクジェットヘッド部31、35が残りの幅を塗布するように連結した。このインクジェットヘッドを実施例1と同様に5基配置した。配置箇所は、図8の10Gとした。各インクジェットヘッド部へ供給するインクの組成は、樹脂成分としてトリアセチルセルロースを含み、溶剤の1−ブタノール、メチレンクロライドと固形粒子R972と樹脂成分との組成比を表1のようにした。上記以外は、実施例1と同様にして光学フィルムの表面に固形粒子を含む微細凸構造を形成した。微細凸構造の付着状態は、図4のように、ほぼ均一な凸構造が形成され、その微細凸構造に含まれる固形粒子の量は、中央部の凸部により高密度に含有されている。このようにして作成した光学フィルムを実施例3〜7とする。各実施例3〜7の微細凸構造のa/bの測定値も表1に示す。
(実施例3〜7)
実施例1において、1基のインクジェットヘッドを、図2(a)のようにフィルム幅方向に配置した5個のインクジェットヘッド部31〜35から構成し、中央のインクジェットヘッド部33の幅が30cm、その両側のインクジェットヘッド部32、34の幅が25cm、外側のインクジェットヘッド部31、35が残りの幅を塗布するように連結した。このインクジェットヘッドを実施例1と同様に5基配置した。配置箇所は、図8の10Gとした。各インクジェットヘッド部へ供給するインクの組成は、樹脂成分としてトリアセチルセルロースを含み、溶剤の1−ブタノール、メチレンクロライドと固形粒子R972と樹脂成分との組成比を表1のようにした。上記以外は、実施例1と同様にして光学フィルムの表面に固形粒子を含む微細凸構造を形成した。微細凸構造の付着状態は、図4のように、ほぼ均一な凸構造が形成され、その微細凸構造に含まれる固形粒子の量は、中央部の凸部により高密度に含有されている。このようにして作成した光学フィルムを実施例3〜7とする。各実施例3〜7の微細凸構造のa/bの測定値も表1に示す。
(実施例8)
実施例7において、インクジェットヘッド部31、32、34、35に供給するインクの組成を表1のようにした他は、実施例7と同様して光学フィルムの表面に固形粒子を含む微細凸構造を形成した。微細凸構造の付着状態は、図5(断面図)、図6(斜視図)のように、フィルム幅方向の中央部の微細凸構造の高さが高く、フィルム幅方向端部の微細凸構造の高さが低く形成され、その微細凸構造に含まれる固形粒子の量は、中央部の凸部により高密度に含有されている。このようにして作成した光学フィルムを実施例8とする。
(比較例1)
実施例1において、インライン添加液の作製工程において、1,3,5トリアジン化合物を完全に溶解し、濾過した後、セルロースアセテートプロピオネートを加える前に、下記のように作成した2酸化珪素分散希釈液を36質量部、攪拌しながら加えて、30分間攪拌した。このようにしてインライン添加液を作製し、実施例1と同様に、濾過したドープ液100質量部に対し、インライン添加液を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、1.8m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。
実施例7において、インクジェットヘッド部31、32、34、35に供給するインクの組成を表1のようにした他は、実施例7と同様して光学フィルムの表面に固形粒子を含む微細凸構造を形成した。微細凸構造の付着状態は、図5(断面図)、図6(斜視図)のように、フィルム幅方向の中央部の微細凸構造の高さが高く、フィルム幅方向端部の微細凸構造の高さが低く形成され、その微細凸構造に含まれる固形粒子の量は、中央部の凸部により高密度に含有されている。このようにして作成した光学フィルムを実施例8とする。
(比較例1)
実施例1において、インライン添加液の作製工程において、1,3,5トリアジン化合物を完全に溶解し、濾過した後、セルロースアセテートプロピオネートを加える前に、下記のように作成した2酸化珪素分散希釈液を36質量部、攪拌しながら加えて、30分間攪拌した。このようにしてインライン添加液を作製し、実施例1と同様に、濾過したドープ液100質量部に対し、インライン添加液を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、1.8m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。
(二酸化珪素分散液)
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 12質量部
(一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 88質量部
以上をディゾルバーで30分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液Aに88質量部のメチレンクロライドを攪拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間攪拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 12質量部
(一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 88質量部
以上をディゾルバーで30分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液Aに88質量部のメチレンクロライドを攪拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間攪拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。
また、インクジェットヘッドによる固形粒子の塗布は行わなかった。その他は、実施例1と同様にして、フィルム内部に固形粒子(2酸化珪素)を分散した光学フィルムを作製した。フィルム内の2酸化珪素の分散状態は、図12のようにほぼ均一に分散されていた。このようにして作成した光学フィルムを比較例1とする。
(比較例2)
実施例1において、インク組成を下記のものを用いた他は、実施例1と同様にして光学フィルムの表面に固形粒子を含む微細凸構造を形成した。微細凸構造の付着状態は、図13のように、ほぼ均一な凸構造が形成された。このようにして作成した光学フィルムを比較例2とする。
(比較例2)
実施例1において、インク組成を下記のものを用いた他は、実施例1と同様にして光学フィルムの表面に固形粒子を含む微細凸構造を形成した。微細凸構造の付着状態は、図13のように、ほぼ均一な凸構造が形成された。このようにして作成した光学フィルムを比較例2とする。
〈インク液の組成〉
1−ブタノール 47.47質量部
メチレンクロライド 47.47質量部
トリアセチルセルロース 5.00質量部
(評価)
作製した実施例1〜8、比較例1、2のフィルムの原反を巻き状態のまま、倉庫内で1ヶ月保管した後、ブロッキング性、馬の背状変形、貼り付き故障、透明性の評価を以下のように行った。
(ブロッキング性の評価)
実施例1〜8、比較例1、2のフィルムのフィルム表面と裏面間の動摩擦係数は、JIS−K−7125(1987)に準じ、フィルムの表裏面が接触するように切り出し、200gの重りを載せ、サンプル移動速度100mm/分、接触面積80mm×200mmの条件で重りを水平に引っ張り、重りが移動中の平均荷重(F)を測定し、下記式より動摩擦係数(μ)を求めた。動摩擦係数が小さい程、ブロッキングの発生が少ない。動摩擦係数が0.6以下を◎、0.6を越えて1.5以下を○、1.5越えを×とした。動摩擦係数が1.5を越えると、ブロッキングが発生し、フィルム表面に異物や傷が発生して、製品として用いることができない。
1−ブタノール 47.47質量部
メチレンクロライド 47.47質量部
トリアセチルセルロース 5.00質量部
(評価)
作製した実施例1〜8、比較例1、2のフィルムの原反を巻き状態のまま、倉庫内で1ヶ月保管した後、ブロッキング性、馬の背状変形、貼り付き故障、透明性の評価を以下のように行った。
(ブロッキング性の評価)
実施例1〜8、比較例1、2のフィルムのフィルム表面と裏面間の動摩擦係数は、JIS−K−7125(1987)に準じ、フィルムの表裏面が接触するように切り出し、200gの重りを載せ、サンプル移動速度100mm/分、接触面積80mm×200mmの条件で重りを水平に引っ張り、重りが移動中の平均荷重(F)を測定し、下記式より動摩擦係数(μ)を求めた。動摩擦係数が小さい程、ブロッキングの発生が少ない。動摩擦係数が0.6以下を◎、0.6を越えて1.5以下を○、1.5越えを×とした。動摩擦係数が1.5を越えると、ブロッキングが発生し、フィルム表面に異物や傷が発生して、製品として用いることができない。
動摩擦係数=F(g)/重りの重さ(g)
(馬の背状変形)
実施例1〜8、比較例1、2のフィルムの原反の中央部のへこみ量(図14のH)を測定した。Hが5mm以下を◎、5mmを越えて10mm未満を○、10mm以上を×とした。馬の背状変形が10mm以上になると、フィルムが変形し、製品として用いることができない。
(貼り付き故障)
実施例1〜8、比較例1、2のフィルムの原反を環境温度20及び20℃、湿度40〜70%RHの条件下で、6ヶ月間保持し、6ヶ月経過後の各フィルムの貼り付き故障を評価した。全く貼り付いていないものを○、目視評価で貼り付き故障が5箇所以下発生したとしたものを△、5箇所以上発生したものを×とした。貼り付き故障が多数発生したものは、フィルムが変形などを起こし、コントラスト低下など問題があり製品として用いることができない。
(透明性)
実施例1〜8、比較例1、2のフィルムを、JIS K7105に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いてヘイズ値を測定し、透明性の指標とした。ヘイズ値が0.6%以下を◎、0.6%を越えて1.0%以下を○、1.0%を越えるものを×、とした。
(馬の背状変形)
実施例1〜8、比較例1、2のフィルムの原反の中央部のへこみ量(図14のH)を測定した。Hが5mm以下を◎、5mmを越えて10mm未満を○、10mm以上を×とした。馬の背状変形が10mm以上になると、フィルムが変形し、製品として用いることができない。
(貼り付き故障)
実施例1〜8、比較例1、2のフィルムの原反を環境温度20及び20℃、湿度40〜70%RHの条件下で、6ヶ月間保持し、6ヶ月経過後の各フィルムの貼り付き故障を評価した。全く貼り付いていないものを○、目視評価で貼り付き故障が5箇所以下発生したとしたものを△、5箇所以上発生したものを×とした。貼り付き故障が多数発生したものは、フィルムが変形などを起こし、コントラスト低下など問題があり製品として用いることができない。
(透明性)
実施例1〜8、比較例1、2のフィルムを、JIS K7105に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いてヘイズ値を測定し、透明性の指標とした。ヘイズ値が0.6%以下を◎、0.6%を越えて1.0%以下を○、1.0%を越えるものを×、とした。
評価結果を表2に示す。
表2の評価結果より、比較例1、2と実施例1とを比較すると、総合評価として実施例1のようにインクジェット方式で表面に固形粒子を付着させるのが良いといえる。また、実施例1と実施例2とを比較すると、透明基材フィルムの幅方向の中央20%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度が、透明基材フィルムの幅方向の残りの80%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度よりも高いと、貼り付き故障が少なく、好ましいことが分かる。また、実施例2と実施例3とを比較すると、透明基材フィルムの幅方向の中央20%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度が、透明基材フィルムの幅方向の残りの80%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度よりも高いとき、インク液滴が熱可塑性樹脂を含み、微細凸構造を形成することが、よりブロッキング性の点で好ましいといえる。さらに、実施例3〜7を比較すると、微細凸構造の高さをa、直径をbとしたとき、0.01≦a/b≦0.1の範囲にあると、透明性により優れ、好ましいことが分かる。
(表示装置の作製)
(ハードコート層の塗設)
作製した実施例1〜8のフィルムの固形粒子又は固形粒子を含む微細凸構造を形成した面(表面)とは、反対の面(裏面)にハードコート層を下記のように塗設した。
(表示装置の作製)
(ハードコート層の塗設)
作製した実施例1〜8のフィルムの固形粒子又は固形粒子を含む微細凸構造を形成した面(表面)とは、反対の面(裏面)にハードコート層を下記のように塗設した。
前記フィルムの裏面に、均一な塗布層となるように下記のハードコート層塗布組成物をダイコーターで塗布し、熱風の温度、風速を徐々に強め最終的に85℃で乾燥し、続いて活性光線照射部より0.1J/cm2の照射強度で紫外線照射し、乾燥膜厚で5μmのハードコート層を設けた。
〈ハードコート層塗布組成物〉
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
光反応開始剤 4質量部
(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製))
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 75質量部
次いで、上記ハードコート層の上に下記反射防止層を設けた。
(反射防止層(低屈折率層)の作製)
下記の低屈折率層組成物1をダイコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、更に120℃で5分間熱硬化させ、更に紫外線を175mJ/cm2照射して硬化させ、厚さ95nmとなるように低屈折率層1を設けた。尚、この低屈折率層1の屈折率は1.45であった。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
光反応開始剤 4質量部
(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製))
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 75質量部
次いで、上記ハードコート層の上に下記反射防止層を設けた。
(反射防止層(低屈折率層)の作製)
下記の低屈折率層組成物1をダイコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、更に120℃で5分間熱硬化させ、更に紫外線を175mJ/cm2照射して硬化させ、厚さ95nmとなるように低屈折率層1を設けた。尚、この低屈折率層1の屈折率は1.45であった。
〈テトラエトキシシラン加水分解物の調製〉
テトラエトキシシラン580gとエタノール1144gを混合し、これに酢酸水溶液を添加した後に、室温(25℃)にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物を調製した。
テトラエトキシシラン580gとエタノール1144gを混合し、これに酢酸水溶液を添加した後に、室温(25℃)にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物を調製した。
〈低屈折率層組成物〉
プロピレングリコールモノメチルエーテル 303質量部
イソプロピルアルコール 305質量部
テトラエトキシシラン加水分解物 139質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学社製KBM503) 1.6質量部
10%FZ−2207、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液
(日本ユニカー社製) 1.3質量部
次いで、各々の反射防止フィルムを用いて偏光板を作製した。
(偏光板の作製)
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
プロピレングリコールモノメチルエーテル 303質量部
イソプロピルアルコール 305質量部
テトラエトキシシラン加水分解物 139質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学社製KBM503) 1.6質量部
10%FZ−2207、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液
(日本ユニカー社製) 1.3質量部
次いで、各々の反射防止フィルムを用いて偏光板を作製した。
(偏光板の作製)
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光膜と前記反射防止フィルム、裏面側のセルロースエステルフィルムを貼り合わせて偏光板を作製した。裏面側の偏光板保護フィルムには下記の方法で作製した位相差を有するセルロースエステルフィルムR(Ro=43nm、Rt=132nm)を用いてそれぞれ偏光板とした。
工程1:50℃の1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したセルロースエステルフィルムを得た。
工程2:前記偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースエステルフィルムの上にのせて、更に反射防止層が外側になるように積層し、配置した。
工程4:工程3で積層した反射防止フィルムと偏光膜とセルロースエステルフィルム試料を圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜とセルロースエステルフィルムと反射防止フィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板を作製した。尚、表示装置のバックライト側に用いられる偏光板には、偏光板保護フィルムとしてハードコート層付きセルロースエステルフィルム(KC8UXW−H、コニカミノルタオプト(株)製)と前記セルロースエステルフィルムRを用いて同様に作製した偏光板を使用した。
〈セルロースエステルフィルムRの作製〉
(ドープ液Eの調製)
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネートアセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8) 100質量部
(Mn=100000、Mw=220000、Mw/Mn=2.2)
トリフェニルフォスフェート 8質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 60質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液Eを調製した。
(ドープ液Eの調製)
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネートアセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8) 100質量部
(Mn=100000、Mw=220000、Mw/Mn=2.2)
トリフェニルフォスフェート 8質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 60質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液Eを調製した。
(二酸化珪素分散液E)
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 10質量部
エタノール 75質量部
以上をディゾルバーで30分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に75質量部のメチレンクロライドを攪拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間攪拌混合し、二酸化珪素分散希釈液Eを作製した。
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 10質量部
エタノール 75質量部
以上をディゾルバーで30分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に75質量部のメチレンクロライドを攪拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間攪拌混合し、二酸化珪素分散希釈液Eを作製した。
(インライン添加液Eの作製)
メチレンクロライド 100質量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 4質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 4質量部
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 2質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
メチレンクロライド 100質量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 4質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 4質量部
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 2質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
これに二酸化珪素分散希釈液Eを20質量部、攪拌しながら加えて、更に30分間攪拌した後、セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネートアセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)5質量部を攪拌しながら加えて、更に60分間攪拌した後、アドバンテック東洋(株)のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過し、インライン添加液Eを調製した。
濾過したドープ液Eを100質量部に対し、濾過したインライン添加液Eを4質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、1.8m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルフィルムのウェブを55℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に130℃で1.3倍に延伸した。このときテンターで延伸を始めた時の残留溶剤量は18%であった。その後、120℃、110℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.4m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施し、巻き取り、セルロースエステルフィルムRを得た。残留溶剤量は0.1%であり、平均膜厚は80μm、巻数は3000mであった。このセルロースエステルフィルムのRo=43nm、Rt=132nmであり、幅方向に遅相軸を有し、幅方向に対する遅相軸のズレ角は±0.6度以内であった。
液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
市販の32型液晶テレビ(MVA型セル)の予め貼合されていた表面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、光学補償フィルム(位相差フィルム)の面が、液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置を各々作製した。
実施例1〜8の光学フィルムを用いて作製した液晶表示装置は、光学フィルムの変形やキズに伴う色むらや、異物故障がなく、表示品質の高い液晶表示装置を提供できることが分かった。
1 透明基材フィルム
2 固形粒子
31、32、33、34、35 インクジェットヘッド部
311、321、331、341、351 供給ノズル
4 微細凸構造
5 テンター搬送・乾燥工程
7 ロール状のフィルム
8 ロール搬送・乾燥工程
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H インクジェットヘッド
11 支持体
12 流延ダイス
13 剥離ロール
310 インク液滴
320 ノズル
2 固形粒子
31、32、33、34、35 インクジェットヘッド部
311、321、331、341、351 供給ノズル
4 微細凸構造
5 テンター搬送・乾燥工程
7 ロール状のフィルム
8 ロール搬送・乾燥工程
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H インクジェットヘッド
11 支持体
12 流延ダイス
13 剥離ロール
310 インク液滴
320 ノズル
Claims (13)
- 透明基材フィルムを巻き取る巻き取り工程を有する光学フィルムの製造方法において、
前記巻き取り工程の前に、固形粒子を含有するインク液滴をインクジェット方式により吐出して前記透明基材フィルムの少なくとも一方の表面に前記固形粒子を付着させる塗布工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。 - 前記透明基材フィルムの幅方向における中央20%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度が、前記透明基材フィルムの幅方向における残りの80%の領域に付着した固形粒子の平均付着密度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記インク液滴は、前記透明基材フィルムの幅方向に配置された複数のノズルから吐出され、
前記透明基材フィルムの幅方向における中央20%の領域に配置されたノズルから吐出する前記インク液滴の固形粒子の平均濃度が、前記透明基材フィルムの幅方向における残りの80%の領域に配置されたノズルから吐出される前記インク液滴の固形粒子の平均濃度より高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。 - 前記インク液滴が、熱可塑性樹脂、活性光線硬化型樹脂、または熱硬化性樹脂を含み、前記透明基材フィルム表面に前記固形粒子を含む微細凸構造を形成することを特徴とする請求項2又は3に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記透明基材フィルムの幅方向における中央部の前記微細凸構造の高さが、前記透明基材フィルムの幅方向における端部の前記微細凸構造の高さよりも高いことを特徴とする請求項4に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記微細凸構造の高さをa、直径をbとしたとき、0.01≦a/b≦0.1であることを特徴とする請求項4又は5に記載の光学フィルムの製造方法。
- 巻き取られた状態での前記光学フィルムの幅が1.4m以上4m以下で、且つ、長さが2000m以上4000m以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記透明基材フィルムがセルロースエステル又はシクロオレフィンポリマーであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする光学フィルム。
- 請求項9に記載の光学フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を有することを特徴とする光学フィルム。
- 前記ハードコート層の上に反射防止層を有することを特徴とする請求項10に記載の光学フィルム。
- 請求項9乃至11のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
- 請求項12に記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。
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