以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のハードコートフィルムは、総アシル基置換度2.6〜2.9、数平均分子量(Mn)80000〜200000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値が1.4〜3.0であるセルロースエステルを含有し、ポリエステル可塑剤、クエン酸エステル可塑剤、多価アルコールエステル可塑剤、フタル酸エステル可塑剤から選択される少なくとも1種の可塑剤の平均含有量が10〜25質量%である延伸セルロースエステルフィルム(単にセルロースエステルフィルムとも言う)を作製する際に、少なくとも一方の面の表面可塑剤含有量を3〜9質量%に調整し、該調整した面に該セルロースエステルを溶解又は膨潤する少なくとも2種の溶媒を含有する活性線硬化性樹脂組成物を塗布乾燥後、硬化させた活性線硬化性樹脂層を有し、該少なくとも2種の溶媒の沸点差Δbpが70〜120℃である溶媒であることを特徴とする。
即ち、本発明者らは上記課題を鋭意検討した結果、特定のセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルム基材上に、該セルロースエステルを溶解又は膨潤する少なくとも2種の沸点差Δbpが70〜120℃である溶媒を含有する活性線硬化性樹脂組成物を塗布乾燥して活性線硬化性樹脂層を設けることにより、密着性、耐傷性、干渉ムラに優れたハードコートフィルムが得られることを見出し、本発明を成すに至ったものである。
更に、上記活性線硬化性樹脂組成物を塗設した後の乾燥温度が低沸点側の溶媒の沸点+5℃以上〜高沸点側の溶媒の沸点−5℃未満の範囲の温度で行うことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法により、本発明の効果が安定に得られることを見出したものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
(活性線硬化性樹脂層に含まれる溶媒)
本発明に係る活性線硬化性樹脂層に含まれる少なくとも2種の溶媒は、セルロースエステルを溶解又は膨潤する溶媒であり、その沸点差Δbpが70〜120℃である溶媒であることを特徴とする。更に、沸点差Δbpは80〜120℃であることが好ましい。
本発明は、例えば下記に挙げる溶媒の中で、その沸点差Δbpが70〜120℃、好ましくは80〜120℃である溶媒を適宜選択して使用することが出来る。
本発明の活性線硬化性樹脂塗布組成物として使用出来る、基材を膨潤又は溶解し得る溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、安息香酸エチル、アセト酢酸メチル等のエステル類、ジオキソラン、ジオキサン、メチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル類、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート等の多価アルコールエステル類、テトラヒドロフラン、フルフラール等のフラン類、氷酢酸等の酸類、メチレンクロライド、エチレンジクロライド、テトラクロロエタン等のハロゲン炭化水素類、ニトロメタン、ニトロエタン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン等の窒素化合物、ジメチルスルホキサイド等のスルホン酸類等が好適に用いられる。塗布後の乾燥を考慮すると、揮発し易い溶剤が好ましく、沸点が200℃以下のものが好ましい。
また、上記少なくとも2種の溶媒が、沸点130〜170℃のセルロースエステルを溶解又は膨潤する高沸点側の溶媒と、沸点40〜70℃のセルロースエステルを溶解又は膨潤する低沸点側の溶媒を少なくとも1種づつ含有する。
上記高沸点側の溶媒として、例えば、シクロヘキサノン(bp155.65℃)、ジアセトンアルコール(bp169.2℃)、乳酸エチル(bp154.1℃)、ジメチルホルムアミド(bp153℃)、メチルセルソルブ(bp145℃)、ジオキサン(101.4℃)等が好ましく、シクロヘキサノン又はジアセトンアルコールであることが特に好ましい。
低沸点側の溶媒としては、例えば、アセトン(bp56.12℃)、酢酸メチル(bp56.87℃)等が好ましい。
本発明の場合、セルロースエステルを溶解又は膨潤しない溶媒を用いることが出来、その場合は上記セルロースエステルを溶解又は膨潤する高沸点側の溶媒の総含有比率が5〜45体積%であり、上記セルロースエステルを溶解又は膨潤する低沸点側の溶媒の総含有比率が95〜55体積%、であり、かつセルロースエステルを溶解又は膨潤しない溶媒の含有量が0〜40体積%であることが好ましい。
本発明では、基材を膨潤又は溶解しない溶剤を、前記の範囲で混合使用することが出来る。例えばメタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール類、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル(具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート))、水、その他の溶媒などが挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒が好ましく用いられ、中でも上記アルコール類の使用が好ましい。
(セルロースエステルフィルム)
本発明のハードコートフィルムに用いられるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものが用いられる。100000〜200000のものが更に好ましく、150000〜200000が特に好ましい。
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnは、1.4〜3.0の範囲であるが、好ましくは1.7〜2.2の範囲である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることも出来る。
セルローストリアセテートの場合には、総アシル基置換度(アセチル基置換度)2.6から2.9のものが好ましく用いられる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルである。
式(I) 2.6≦X+Y≦2.9
式(II) 0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することが出来る。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)、木材パルプから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
また、これらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて常法により反応させて得ることが出来る。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起り、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定出来る。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、かつ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの一つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることが出来る。
セルロースエステルの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液11質量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.75の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92000、Mwが156000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースエステルを合成することが出来る。
尚、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化又は低酢化の成分を濾過で取り除くことも好ましく行われる。
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法で反応して得ることが出来る。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物即ち、錯体を形成し易く、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行うことによって求めることが出来る。
(可塑剤の含有量)
本発明に係る延伸セルロースエステルフィルムは、可塑剤の平均含有量が10〜25質量%であり、少なくとも一方の面の表面可塑剤含有量が3〜9質量%に調整されていることが特徴である。ここで表面とはフィルムの最表面から深さ10μmまでの領域をいう。
フィルムの厚み方向で可塑剤含有量を調整する手段は特に限定はされないが、加熱処理、共流延法又は逐次流延法により行うことが好ましい。各方法について以下説明する。
〈加熱処理〉
セルロースエステルフィルムを100〜160℃の温度で加熱することで、フィルム厚み方向の可塑剤分布をつけることが出来る。
加熱温度は、110〜150℃の範囲であることが更に好ましい。また、加熱温度は、セルロースエステルフィルムの軟化点との関係で、軟化点±20℃の範囲内であることが好ましく、軟化点±10℃の範囲内であることが更に好ましい。セルロースエステルフィルムの加熱時間は、1秒〜60分の範囲内であることが好ましく、1分〜30分の範囲内であることが更に好ましく、5分〜20分の範囲内であることが最も好ましい。
加熱手段については、特に制限はなく、オーブンやホットプレートなどの様々な加熱手段を利用出来る。但し、一般に揮発性を有する可塑剤を除去するために加熱するのであるから、フィルムの表面が気相に開放された状態で加熱することが好ましい。加熱処理は、セルロースエステルフィルムを製造してから、その上に活性線硬化性樹脂層と塗布するまでの間に実施すればよい。好ましくは、加熱処理をセルロースエステルフィルムの製造の最後の工程として実施することである。
以上の加熱処理により、セルロースエステルフィルムの表面部分の可塑剤の量を選択的に減少させることが出来る。本発明の加熱処理により、表面部分の可塑剤の量を選択的に10〜65%程度減少させることが出来る。一方、セルロースエステルフィルムに含まれる可塑剤の総量は、1〜5%程度しか減少しない。
尚、フィルムの厚み方向の可塑剤量は、例えばナイフなどを用いてフィルムの表面から10μm程度削ってガスクロマトグラフィー等の方法によって定量出来る。
〈共流延法、逐次流延法〉
セルロースエステルフィルムの厚み方向で可塑剤含有量の分布を有する一例として、セルロースエステルフィルムの製造工程において流延支持体側(B面側)の可塑剤含有量を支持体とは反対側である気相側(A面側)の可塑剤含有量より少なくする場合について説明する。
この場合、最も簡易な方法としては、セルロースエステルフィルムに可塑剤分布をつけるために、支持体側(B面側)に用いられるドープの可塑剤濃度が支持体とは反対側である気相側(A面側)のドープの可塑剤濃度より少ないドープを用いて流延製膜することである。ここで可塑剤濃度とは固形分あたりの可塑剤量をいう。
可塑剤分布を持たせる2種のドープを使用する場合、A面用とB面用に分けて使用し、B面ドープ可塑剤濃度をA面ドープ可塑剤濃度よりも低くすることによって達成出来る。
A面、B面ドープへの可塑剤含有量は、前記した様に可塑剤の平均含有量が10〜25質量%であり、少なくとも一方の面の表面可塑剤含有量が3〜9質量%に入るように調整されていれば特に制限はない。本発明では、B面側にハードコート層が設けられる構成になる。
B面のドープに可塑剤を添加しない場合であっても、支持体上に流延された際に、B面のドープに隣接して流延されたドープから可塑剤が拡散、移動するため、B面表面の平均可塑剤濃度は増加する傾向がある。その結果、実際の光学フィルムの表面に含まれる平均可塑剤濃度の差はドープに添加した可塑剤濃度の差より縮まる傾向がある為、その分を加味してドープ中の可塑剤濃度を設計する必要がある。
流延時の膜厚は任意に設定可能であるが、A面のドープ(A面表面を形成)とB面ドープ(B面表面を形成)の乾燥後の膜厚比は1対100〜100対1の範囲であることが好ましい。更に好ましくは1対20〜20対1であり、1対1とすることも出来る。一方のドープを薄く流延する場合は薄い方のウェット膜厚(hw)を0.5〜150μm、乾燥膜厚で0.1〜30μmとなるように流延することが好ましく、更に好ましくはウェット膜厚(hw)2.5〜125μm、乾燥膜厚で0.5〜25μm、更に好ましくはウェット膜厚(hw)25〜100μm、乾燥膜厚で5〜20μmとなるように流延することが好ましい。
3種のドープを使用する場合は、A面のドープ(主にA面表面を形成)とB面ドープ(主にB面表面を形成)、それに挟まれるフィルム内部(内部層ともいう)を形成するためのドープの乾燥後の膜厚比も任意に設定することが出来る。ここでフィルム内部層とはフィルムの表面以外の部分をいう。内部層とA面表面若しくはB面表面の乾燥後の膜厚比は1対100〜100対1の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1対20〜20対1であり、1対1とすることも出来る。フィルム内部と表面との膜厚比は1000対1〜1対10であることが好ましく、100対1〜1対1がより好ましく、更に好ましくは10対1〜2対1が好ましい。
また、表面の乾燥膜厚も任意に設定出来るが、0.5〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることが更に好ましい。また、A面表面とB面表面の膜厚は同じであっても違っていても良い。例えばA面表面を10μmとし、B面表面を20μmとすることも可能である。
4種以上のドープを使用して機能別に分離された積層構造のフィルムを製造することも出来る。
本発明において用いられる2種以上のドープを同時に支持体上に流延してもよいし、別々に支持体上に流延してもよい。別々に流延する逐次流延法の場合は、支持体側のドープを先に流延して支持体上である程度乾燥させた後に、その上に重ねて流延することが出来る。また、3種以上のドープを使用する場合、同時流延(共流延ともいう)と逐次流延を適宜組み合わせて流延し、積層構造のフィルムを作製することも出来る。共流延若しくは逐次流延によって製膜されるこれらの方法は、乾燥されたフィルム上に塗布する方法とは異なり、積層構造の各層の境界が不明確になり、断面の観察で積層構造が明確には分かれないことがあるという特徴があり、各層間の密着性を向上させる効果がある。
この方法で製造出来るフィルムの乾燥膜厚としては特に制限はないが40〜250μmのフィルムの製造で好ましく用いることが出来る。特に好ましくは40〜80μmであり、更に好ましくは40〜75μmで好ましく用いることが出来る。
フィルムの幅は1.4m以上が生産性の点から好ましい。より好ましくは1.4〜4mの範囲である。
このようにして、可塑剤を有するセルロースエステルフィルムにおいて、可塑剤の平均含有量が10〜25質量%であり、少なくとも一方の面の表面可塑剤含有量が3〜9質量%に調整されているフィルムを得ることが出来、このように作製したフィルムを偏光子の片側の面に積層することにより、本発明の偏光板を得ることが出来る。
〈可塑剤の種類〉
本発明の延伸セルロースエステルフィルムに用いることの出来る可塑剤としては、ポリエステル可塑剤、クエン酸エステル可塑剤、多価アルコールエステル可塑剤、フタル酸エステル可塑剤から選択される可塑剤を少なくとも1種であり、そのうち、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが特に好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に用いられる多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
一般式(1) R1−(OH)n
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/又はフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
本発明では、多価アルコールエステル系可塑剤は1〜12質量%含有することが好ましく、特に3〜11質量%含有することが好ましい。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤も好ましく用いることが出来る。具体的には特開2002−265639号公報の段落番号[0015]〜[0020]記載の多価カルボン酸エステルを可塑剤の一つとして添加することが好ましい。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤は特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するエステル系可塑剤を用いることが出来る。好ましいエステル系可塑剤としては、下記一般式(2)で表させるエステル系可塑剤が好ましく用いられる。
一般式(2) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは0以上の整数を表す。)
一般式(2)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
本発明で使用されるエステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することが出来る。
本発明に有用なエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
また、本発明の芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用出来る。
本発明に有用な芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。
本発明で使用されるエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは250〜2000、より好ましくは300〜1500の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものが好適である。
以下、芳香族末端エステル系可塑剤の合成例を示す。
〈サンプルNo.1(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、アジピン酸365部(2.5モル)、1,2−プロピレングリコール418部(5.5モル)、安息香酸610部(5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.30部を一括して仕込み窒素気流中で撹拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で1.33×104〜最終的に3.99×102Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);815
酸価 ;0.4
〈サンプルNo.2(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、アジピン酸365部(2.5モル)、安息香酸610部(5モル)、ジエチレングリコール583部(5.5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.45部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);90
酸価 ;0.05
〈サンプルNo.3(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器にアジピン酸365部(2.5モル)、安息香酸610部(5モル)、ジプロピレングリコール737部(5.5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.40部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステル系可塑剤を得た。
粘度(25℃、mPa・s);134
酸価 ;0.03
以上の各種可塑剤のセルロースエステルフィルム中の総含有量は、固形分総量に対して10〜25質量%の範囲に調整される。
(紫外線吸収剤)
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式(A)で示される化合物が好ましく用いられる。
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基又は5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
以下に本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
また本発明に有用な紫外線吸収剤の一つであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式(B)で表される化合物が好ましく用いられる。
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基又は−CO(NH)n−1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1又は2を表す。
上記において、アルキル基としては例えば、炭素数24までの直鎖又は分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えばクロール、ブロム、フッ素原子など、ヒドロキシ基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基又はハロゲン原子などを置換していてもよい)などが挙げられる。
以下に一般式(B)で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−8 :2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−9 :2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−10:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−11:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
また、特開2001−235621の一般式(I)で示されているトリアジン系化合物も本発明に係るセルロースエステルフィルムに好ましく用いられる。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは紫外線吸収剤を2種以上を含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることが出来、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜4.0質量%が好ましく、0.6〜2.0質量%が更に好ましい。
(微粒子)
本発明に係わるセルロースエステルフィルムには、微粒子を含有することが好ましい。
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmが好ましく、更に好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられるセルロースエステルフィルムにおいてはハードコート層の裏面側の動摩擦係数が1.0以下であることが好ましい。
〈染料〉
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムには、色味調整のため染料を添加することも出来る。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の任意の位置に任意の置換基を有することが出来る。好ましい置換基としてはアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、又は水素原子が挙げられる。特に特開2001−154017記載の青色染料、特にアントラキノン系染料を含有することが好ましい。
各種添加剤は製膜前のセルロースエステル含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部又は全量をインライン添加することが好ましい。
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましいセルロースエステルの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
(セルロースエステルフィルムの製造方法)
次に、本発明の延伸セルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
本発明のドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
好ましい溶媒組成としては、メチレンクロライド80〜95質量%、エタノール5〜20質量%、或いは酢酸メチル60〜95質量%、エタノール5〜40質量%の組み合わせが挙げられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることも好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来る。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることが出来る。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることが出来る。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。支持体温度は使用する溶媒によって異なるが、0〜70℃が好ましく、5〜40℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明のハードコートフィルム用の延伸セルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向(縦方向)に延伸し、更にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸(2軸延伸)を行うことが特に好ましい。縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍が特に好ましい。縦方向及び横方向延伸により面積が1.12倍〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15倍〜1.32倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることが出来る。縦方向と横方向の延伸倍率のいずれかが1.05倍未満ではハードコート層を形成する際の紫外線照射による平面性の劣化が大きく好ましくない。延伸倍率が1.3倍以内であると平面性に優れ、ヘイズも低いため好ましい。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことが出来るが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜150℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性をよくするため更に好ましい。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。特に10〜70μmの薄膜フィルムでは平面性と硬度に優れたハードコートフィルムを得ることが困難であったが、本発明によれば、平面性と硬度に優れた薄膜のハードコートフィルムが得られ、また生産性にも優れているため、セルロースエステルフィルムの膜厚は10〜70μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜60μmである。最も好ましくは35〜60μmである。
本発明のハードコートフィルムは、幅1〜4mのセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。
セルロースエステルフィルムの幅が広くなると紫外線硬化の際の照射光の照度ムラが無視出来なくなり、平面性が劣化するばかりか、硬度のムラも生じ、この上に反射防止層を形成した場合に反射ムラが顕著になるという問題があった。本発明のハードコートフィルムは少ない照射量で十分な硬度が得られるため、照射光の幅手方向に照射量のムラがあっても幅手方向の硬度ムラが少なく、平面性にも優れたハードコートフィルムが得られるため、広幅のセルロースエステルフィルムで著しい効果が認められる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.4〜2mである。4mを超えると搬送が困難となる。
また、長さ1000〜6000mの長尺フィルムが好ましく用いられる。また、幅手両端部には膜厚に対して0〜25%の高さのナーリング部が設けられていることが好ましい。
〈物性〉
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで850g/m2・24h以下であり、好ましくは20〜800g/m2・24hであり、20〜750g/m2・24hであることが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの面内レターデーション値(Ro)が0〜300nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは0〜150nmの範囲であリ、より好ましくは0〜100nm以下である。膜厚方向のレターデーション値(Rt)は、0〜400nmの範囲であることが好ましく、10〜200nmの範囲であることが好ましく、更に30〜150nmの範囲であることが好ましい。
レターデーション値(Ro)、(Rt)は以下の式によって求めることが出来る。
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはセルロースエステルフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
尚、レターデーション値(Ro)、(Rt)は自動複屈折率計を用いて測定することが出来る。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることが出来る。
また、遅相軸はフィルムの幅手方向±1°若しくは長尺方向±1°にあることが好ましい。
(活性線硬化性樹脂層)
本発明のハードコートフィルムの活性線硬化性樹脂層の製造方法について述べる。
本発明のハードコートフィルムにおいては、ハードコート層として活性線硬化性樹脂層が用いられる。更に活性線硬化性樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、前記したセルロースエステルを溶解又は膨潤する少なくとも2種の溶媒を用い、該少なくとも2種の溶媒の沸点差Δbpが70〜120℃である溶媒を用いることが本発明の効果を得る上で必要である。
活性線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これらの活性線硬化性樹脂層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は好ましくは、5〜200mJ/cm2であり、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
従来のハードコートフィルムではこのような低い照射量では4H以上の鉛筆硬度でかつ平面性に優れるハードコートフィルムは得られなかった。硬度がそれほど要求されないハードコートフィルムの場合は、照射量を更に少なく出来るため、紫外線照射部の能力によって制限されていた塗布速度をはるかに上回る速度でハードコートフィルムを製造することが出来、生産性が著しく改善される。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性優れたフィルムを得ることが出来る。
また、紫外線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコーン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1,000〜100,000、好ましくは、2,000〜50,000が適当である。
シリコーン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。また、ドライ膜厚としては0.1〜10μm、好ましくは1〜10μmである。
より好ましくは、セルロースエステルフィルムの膜厚が10〜70μmであり、ハードコート層の膜厚(H)とセルロースエステルフィルムの膜厚(d)の比率(d/H)が4〜10である時、平面性と同時に硬度、耐傷性にも優れる。これはセルロースエステルの膜厚に比べハードコート層が薄い場合、硬度、耐傷性に劣り、セルロースエステルの膜厚に比べ、ハードコート層が厚い場合、平面性が劣化することによる。
紫外線硬化性樹脂組成物を塗布した後の乾燥温度に特に限定はないが、本発明の効果を安定に得るには低沸点側の溶媒の沸点+5℃以上〜高沸点側の溶媒の沸点−5℃未満の範囲の温度で行うことが好ましい。低沸点側の溶媒の沸点+5℃未満で乾燥すると密着性に劣り、高沸点側の溶媒の沸点−5℃以上で乾燥すると干渉ムラが劣化する為、上記範囲内で乾燥することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中又は後に、紫外線を照射するのがよく、前記の5〜200mJ/cm2という活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜5分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率又は作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止するため、また対擦り傷性等を高めるため、或いは防眩性を持たせるためまた屈折率を調整するために無機化合物或いは有機化合物の微粒子を加えることも出来る。
ハードコート層に使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどが好ましく用いられる。
また、有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
紫外線硬化樹脂層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜100nmのクリアハードコート層であるか、若しくはRaが0.1〜1μm程度の防眩層であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製RST/PLUSを用いて測定することが出来る。
(バックコート層)
本発明のハードコートフィルムのハードコート層を設けた側と反対側の面にはバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、塗布やCVDなどによって、ハードコート層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることが出来る。尚、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものがヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもでアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられるハードコートフィルムは、ハードコート層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層は、具体的にはセルロースエステルフィルム基材を膨潤又は溶解し得る溶剤を含む塗布組成物を塗設することによって行われる。用いる溶剤としては前述のセルロースエステル基材を膨潤又は溶解し得る溶剤と溶解しない溶剤を含む場合もあり、これらを基材のカール度合いや樹脂の種類によって適当な割合で混合した塗布組成物及び塗布量で行われる。
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶剤組成を基材を膨潤又は溶解し得る溶剤の比率を大きくし、膨潤又は溶解しない溶剤の比率を小さくすることが効果的である。基材を膨潤又は溶解し得る溶剤の塗布組成物溶剤に占める割合は、100〜10体積%であることが好ましい。また、基材を膨潤又は溶解しない溶剤を、上記溶剤と0〜90体積%の範囲で混合使用することが出来る。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。
バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体或いは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/又はアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することも出来る。
特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
バックコート層を塗設する順番はセルロースエステルフィルムの、バックコート層とは反対側の層(クリアハードコート層或いはその他の例えば帯電防止層等の層)を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。或いは2回以上に分けてバックコート層を重層塗布することも出来る。
(反射防止層)
本発明のハードコートフィルムは、塗布或いは、プラズマCVD法、大気圧プラズマ処理法等によって金属化合物層の薄膜を均一に形成するのに適しており、これらは反射防止層として有用である。特に塗布によって反射防止層を形成することが好ましい。
次いで、これらハードコート層上に形成する反射防止層について説明する。
本発明に用いることの出来る反射防止層の構成例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層//帯電防止層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
本発明はハードコート層上に上記のように反射防止層を積層し反射防止フィルムとすることが出来る。
また、光学干渉により反射率を低減出来るものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。例えば最表層に防汚層を設けても良いし、その他機能層を適宜設けても良い。
(中屈折率層、高屈折率層)
中屈折率層、高屈折率層は所定の屈折率層が得られれば構成成分に特に制限はないが、屈折率の高い金属酸化物微粒子、バインダ等よりなることが好ましい。その他に添加剤を含有しても良い。中屈折率層の屈折率は1.55〜1.75であることが好ましく、高屈折率層の屈折率は1.75〜2.20であることが好ましい。
〈金属酸化物微粒子〉
金属酸化物微粒子は特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、五酸化アンチモン、酸化インジウム−スズ(ITO)、酸化鉄、等を主成分として用いることが出来る。また、これらの混合物でもよい。二酸化チタンを用いる場合は二酸化チタンをコアとし、シェルとしてアルミナ、シリカ、ジルコニア、ATO、ITO、五酸化アンチモン等で被覆させたコア/シェル構造を持った金属酸化物粒子を用いることが光触媒活性の抑制の点で好ましい。
金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましく、1.90〜2.50であることが更に好ましい。金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は5nm〜200nmであるが、10〜150nmであることが更に好ましい。粒径が小さ過ぎると金属酸化物微粒子が凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが上昇し好ましくない。無機微粒子の形状は、米粒状、針状、球形状、立方体状、紡錘形状或いは不定形状であることが好ましい。
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が最も好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
金属酸化物の種類、添加比率を適切に選択することによって、所望の屈折率を有する高屈折率層、中屈折率層を得ることが出来る。
〈バインダ〉
バインダは塗膜の成膜性や物理特性の向上のために添加される。バインダとしては例えば、前述の電離放射線硬化型樹脂、アクリルアミド誘導体、多官能アクリレート、アクリル樹脂又はメタクリル樹脂などを用いることが出来る。
(金属化合物、シランカップリング剤)
その他の添加剤として金属化合物、シランカップリング剤などを添加しても良い。金属化合物、シランカップリング剤はバインダとして用いることも出来る。
金属化合物としては下記式(1)で表される化合物又はそのキレート化合物を用いることが出来る。
式(1):AnMBx−n
式中、Mは金属原子、Aは加水分解可能な官能基又は加水分解可能な官能基を有する炭化水素基、Bは金属原子Mに共有結合又はイオン結合した原子団を表す。xは金属原子Mの原子価、nは2以上でx以下の整数を表す。
加水分解可能な官能基Aとしては、例えば、アルコキシル基、クロル原子等のハロゲン、エステル基、アミド基等が挙げられる。上記式(1)に属する金属化合物には、金属原子に直接結合したアルコキシル基を2個以上有するアルコキシド、又は、そのキレート化合物が含まれる。好ましい金属化合物としては、屈折率や塗膜強度の補強効果、取り扱い易さ、材料コスト等の観点から、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、ケイ素アルコキシド又はそれらのキレート化合物を挙げることが出来る。チタンアルコキシドは反応速度が速くて屈折率が高く、取り扱いも容易であるが、光触媒作用があるため大量に添加すると耐光性が劣化する。ジルコニウムアルコキシドは屈折率が高いが白濁し易いため、塗布する際の露点管理等に注意しなければならない。ケイ素アルコキシドは反応速度が遅く、屈折率も低いが、取り扱いが容易で耐光性に優れる。シランカップリング剤は無機微粒子と有機ポリマーの両方と反応することが出来るため、強靱な塗膜を作ることが出来る。また、チタンアルコキシドは紫外線硬化樹脂、金属アルコキシドの反応を促進する効果があるため、少量添加するだけでも塗膜の物理的特性を向上させることが出来る。
チタンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
ケイ素アルコキシド及びシランカップリング剤は下記式(2)で表される化合物である。
式(2):RmSi(OR′)n
式中、Rはアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)、又は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、スルホニル基、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基等の反応性基を表し、R′はアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)を表し、m+nは4である。
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
遊離の金属化合物に配位させてキレート化合物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等であって分子量1万以下のものを挙げることが出来る。これらのキレート化剤を用いることにより、水分の混入等に対しても安定で、塗膜の補強効果にも優れるキレート化合物を形成出来る。
金属化合物の添加量は、中屈折率組成物では金属酸化物に換算して5質量%未満であることが好ましく、高屈折率組成物では金属酸化物に換算して20質量%未満であることが好ましい。
(低屈折率層形成用塗布液)
本発明に用いられる低屈折率層は、中空微粒子を含有することが好ましく、その他に珪素アルコキシド、シランカップリング剤、硬化剤等を含有することが更に好ましい。
〈中空微粒子〉
低屈折率層には下記の中空微粒子が含有されることが好ましい。
ここでいう中空微粒子は、(1)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、又は(2)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体又は多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層用塗布液には(1)複合粒子又は(2)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
尚、空洞粒子は、内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体又は多孔質物質等の内容物で充填されている。このような無機微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される無機微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さ又は空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
前記複合粒子の被覆層又は空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また複合粒子の被覆層又は空洞粒子の粒子壁には、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3などが挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgFなどからなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種又は2種以上を挙げることが出来る。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表した時のモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても導電性を発現しない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が小さく、かつ屈折率の低い粒子を得られないことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
尚、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような無機微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1〜第3工程から無機化合物粒子は製造される。
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、又は、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウム又は有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることが出来る。尚、アンモニウムのケイ酸塩又は有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料は、アルカリ可溶の前記導電性化合物が用いられる。
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度にはとくに制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al2O3、TiO2又はZrO2等の無機酸化物又はこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることが出来る。更に前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整したのち、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにして、シード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることが出来る。
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、或いは、シード粒子上に析出して粒子成長が起こる。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOx)に換算し、MOx/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積は殆ど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOx/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、或いは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
尚、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することが出来る。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られるケイ酸液或いは加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。尚シリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することが出来る。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することが出来る。尚、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持出来る範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多過ぎると、シリカ保護膜が厚くなり過ぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2又は3〕で表されるアルコキシシランを用いることが出来る。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリ又は酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることが出来る。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることが出来る。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、又は有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。尚、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に加水分解性の有機珪素化合物又はケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物又はケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2又は3〕で表されるアルコキシシランを用いることが出来る。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリ又は酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることが出来る。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることが出来る。
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、又は有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。尚、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物又はケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆出来る程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物又はケイ酸液は添加される。
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体又は多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞出来る程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化出来ないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率の効果が得られないことがある。
このようにして得られた無機微粒子の屈折率は、1.44未満と低い。このような無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
本発明に用いられる低屈折率層には中空微粒子の他に、アルコキシ珪素化合物の加水分解物及びそれに続く縮合反応により形成される縮合物を含むことが好ましい。特に、下記一般式(3)及び/又は(4)で表されるアルコキシ珪素化合物又はその加水分解物を調整したSiO2ゾルを含有することが好ましい。
一般式(3) R1−Si(OR2)3
一般式(4) Si(OR2)4
(式中、R1はメチル基、エチル基、ビニル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基若しくはエポキシ基を含む有機基を、R2はメチル基又はエチル基を示す)
珪素アルコキシド、シランカップリング剤の加水分解は、珪素アルコキシド、シランカップリング剤を適当な溶媒中に溶解して行う。使用する溶媒としては、例えば、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールブタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、或いはこれらの混合物が挙げられる。
上記珪素アルコキシド又はシランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液に、加水分解に必要な量より若干多い量の水を加え、15〜35℃、好ましくは20℃〜30℃の温度で1〜48時間、好ましくは3〜36時間攪拌を行う。
上記加水分解においては、触媒を用いることが好ましく、このような触媒としては塩酸、硝酸、硫酸又は酢酸などの酸が好ましく用いられる。これらの酸は0.001N〜20.0N、好ましくは0.005〜5.0N程度の水溶液にして用いる。該触媒水溶液中の水分は加水分解用の水分とすることが出来る。
アルコキシ珪素化合物を所定の時間加水分解反応させ、調製されたアルコキシ珪素加水分解液を溶剤で希釈し、必要な他の添加剤等を混合して、低屈折率層用塗布液を調製し、これを基材例えばフィルム上に塗布、乾燥することで低屈折率層を基材上に形成することが出来る。
〈アルコキシ珪素化合物〉
本発明において低屈折率層塗布液の調製に用いられるアルコキシ珪素化合物(以後アルコキシシランともいう)としては、下記一般式(5)で表されるものが好ましい。
一般式(5) R4−nSi(OR′)n
前記一般式中、R′はアルキル基であり、Rは水素原子又は1価の置換基を表し、nは3又は4を表す。
R′で表されるアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の基が挙げられ、置換基を有していてもよく、置換基としてはアルコキシシランとしての性質を示すものであれば特に制限はなく、例えば、フッ素などのハロゲン原子、アルコキシ基等により置換されていてもよいが、より好ましくは非置換のアルキル基であり、特にメチル基、エチル基が好ましい。
Rで表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、シリル基等が挙げられる。中でも好ましいのは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基である。また、これらは更に置換されていてもよい。Rの置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アセトキシ基等が挙げられる。
前記一般式で表されるアルコキシシランの好ましい例として、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、
また、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、更に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、これらの化合物が部分的に縮合した多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような数量体のケイ素化合物でもよい。
前記アルコキシシランは、加水分解重縮合が可能な珪素アルコキシド基を有しているため、これらのアルコキシシランを加水分解、縮合によって、架橋して、高分子化合物のネットワーク構造が形成され、これを低屈折率層塗布液として用い、基材上に塗布して、乾燥させることで均一な酸化珪素を含有する層が基材上に形成される。
加水分解反応は、公知の方法により行うことが出来、疎水的なアルコキシシランと水が混和しやすいように、所定量の水とメタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒を共存させ溶解・混合したのち、加水分解触媒を添加して、アルコキシシランを加水分解、縮合させる。通常、10℃〜100℃で加水分解、縮合反応させることで、ヒドロキシル基を2個以上有する液状のシリケートオリゴマーが生成し加水分解液が形成される。加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することが出来る。
本発明においては、アルコキシシランに水と共に添加する溶媒としては、メタノール、エタノールが安価であること、得られる被膜の特性が優れ硬度が良好であることから好ましい。イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、オクタノール等も用いることが出来るが、得られた被膜の硬度が低くなる傾向にある。溶媒量は加水分解前のテトラアルコキシシラン100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜250質量部である。
このようにして加水分解液を調製し、これを溶剤によって希釈し、必要に応じて添加剤を添加して、低屈折率層塗布液を形成するに必要な成分と混合し、低屈折率層塗布液とする。
〈加水分解触媒〉
加水分解触媒としては、酸、アルカリ、有機金属、金属アルコキシド等を挙げることが出来るが、本発明においては硫酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、ホウ酸等の無機酸或いは有機酸が好ましく、特に硝酸、酢酸などのカルボン酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸等が好ましく、これらの内特に硝酸、酢酸、クエン酸又は酒石酸等が好ましく用いられる。上記クエン酸や酒石酸の他に、レブリン酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、メチルコハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2−オキソグルタル酸、グリコール酸、D−グリセリン酸、D−グルコン酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、イソクエン酸、乳酸等も好ましく用いられる。
この中で、乾燥時に酸が揮発して、膜中に残らないものが好ましく、沸点が低いものがよい。従って、酢酸、硝酸が特に好ましい。
添加量は、用いるアルコキシ珪素化合物(例えばテトラアルコキシシラン)100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.005〜5質量部がよい。また、水の添加量については部分加水分解物が理論上100%加水分解し得る量以上であればよく、100〜300%相当量、好ましくは100〜200%相当量を添加するのがよい。
上記アルコキシシランを加水分解する際には、下記無機微粒子を混合することが好ましい。
加水分解を開始してから所定の時間加水分解液を放置して加水分解の進行が所定の程度に達した後用いる。放置する時間は、上述の加水分解そして縮合による架橋が所望の膜特性を得るのに十分な程度進行する時間である。具体的には用いる酸触媒の種類にもよるが、例えば、酢酸では室温で15時間以上、硝酸では2時間以上が好ましい。熟成温度は熟成時間に影響を与え、一般に高温では熟成が早く進むが、100℃以上に加熱するとゲル化が起こるので、20〜60℃の加熱、保温が適切である。
このようにして加水分解、縮合により形成したシリケートオリゴマー溶液に下記無機微粒子、添加剤を加え、必要な希釈を行って、低屈折率層塗布液を調製し、これを後述する基材フィルム上に塗布して、乾燥することで、低屈折率層として優れた酸化珪素膜を含有する層を形成することが出来る。
また、本発明においては、上記のアルコキシシランの他に、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基等の官能基を有するシラン化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマー)等により変性した変性物であってもよく、単独で使用又は併用することも可能である。
〈フッ素化合物〉
本発明に係る低屈折率層は中空微粒子とフッ素化合物を含有することも好ましく、バインダーマトリックスとして、熱又は電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう)を含む。該含フッ素樹脂を含むことにより良好な防汚性反射防止フィルムを提供することが出来る。
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の相み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
また上記モノマー加えて、含フッ素ビニルモノマー及び架橋性基付与のためのモノマー以外のモノマーを併用して形成された含フッ素共重合体を架橋前の含フッ素樹脂として用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることが出来る。また、含フッ素共重合体中に、滑り性、防汚性付与のため、ポリオルガノシロキサン骨格や、パーフルオロポリエーテル骨格を導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと上記のモノマーとの重合、末端にラジカル発生基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルによる上記モノマーの重合、官能基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと、含フッ素共重合体との反応等によって得られる。
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
含フッ素共重合体は、これらモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合法等の手段により重合することにより得ることが出来る。
架橋前の含フッ素樹脂は、市販されており使用することが出来る。市販されている架橋前の含フッ素樹脂の例としては、サイトップ(旭硝子製)、テフロン(登録商標)AF(デュポン製)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子製)、オプスター(JSR製)等が挙げられる。
架橋した含フッ素樹脂を構成成分とする低屈折率層は、動摩擦係数が0.03〜0.15の範囲、水に対する接触角が90〜120度の範囲にあることが好ましい。
〈添加剤〉
低屈折率層塗布液には更に必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤などの添加剤を含有させても良い。シランカップリング剤は前記式(2)で表される化合物である。
具体的には、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
硬化剤としては、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム等の有機酸金属塩が挙げられ、特に酢酸ナトリウムが好ましい。珪素アルコキシシラン加水分解溶液に対する添加量は、加水分解溶液中に存在する固形分100質量部に対して0.1〜1質量部程度の範囲が好ましい。
また、本発明の各層の塗布液には各種のレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の低表面張力物質を添加することが好ましい。具体的なシリコーンオイルとしては表1の化合物が挙げられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は添加量が多過ぎると塗布時にハジキの原因となるため、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
〈溶媒〉
低屈折率層を塗設する際の塗布液に使用する溶媒は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、水等が挙げられ、それらを単独又は2種以上混合して使用することが出来る。
〈塗布方法〉
低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層塗布液などの塗布方法としては、ディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、エアードクターコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート等の公知の塗布方法又は公知のインクジェット法を用いることが出来、連続塗布又は薄膜塗布が可能な塗布方法が好ましく用いられる。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは0.5〜15μmである。塗布速度は10〜80m/minが好ましい。
本発明の組成物を基材に塗布する際、塗布液中の固形分濃度や塗布量を調整することにより、層の膜厚及び塗布均一性等をコントロールすることが出来る。また、組成物の塗布性を向上させるために、塗布液中に微量の界面活性剤等を添加してもよい。
(偏光板)
本発明の偏光板について述べる。
偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明のハードコートフィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理したハードコートフィルムを、延伸したポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも該ハードコートフィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明のハードコートフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、30〜300nm、Rtが70〜400nmの位相差を有している位相差フィルムであることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957、特願2002−155395記載の方法で作製することが出来る。更に該位相差フィルムは溶融流延法で製造されたものであることが好ましく、後述する延伸された環状オレフィン系樹脂若しくはセルロース樹脂を主成分とする溶融流延法で製造された位相差フィルムであることがより好ましい。尚、セルロース樹脂は前記セルロースエステルフィルムの項で説明したセルロースエステルであることが好ましい。
更にディスコチック液晶などの液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることも好ましい。例えば、特開2003−98348記載の方法で光学異方性層を形成することが出来る。本発明のハードコートフィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることが出来る。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明のハードコートフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
本発明の偏光板においては、環状オレフィン系樹脂フィルムを用いる場合は、環状オレフィン系樹脂フィルムからなる保護フィルム側に粘着剤層を付与して、粘着剤付き偏光板とするのが好ましい。粘着剤としては、アクリル酸系、メタクリル酸系、ブチルゴム系、シリコーン系などのベースポリマーを用いたものが使用出来る。特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸系ベースポリマーや、これらの(メタ)アクリル酸エステルを二種以上用いた共重合系ベースポリマーが好適に用いられる。粘着剤は通常、これらのベースポリマー中に極性モノマーが共重合されており、かかる極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などを有するモノマーを挙げることが出来る。架橋剤については、2価又は多価金属イオンとカルボン酸金属塩を生成するもの、ポリイソシアネート化合物とアミド結合を形成するものなどが挙げられ、これらの化合物が架橋剤として1種又は2種以上、ベースポリマーに混合して用いられる。一般的な粘着剤層の厚みは2〜50μm程度である。粘着剤層を偏光板に付与する場合、状況によってコロナ処理などの表面処理を偏光板の保護フィルム表面に施してもよい。
本発明のハードコートフィルムやセルロース樹脂を主成分として含む位相差フィルムは、偏光子との貼合に先立って、表面をアルカリ水溶液でケン化しておくことが望ましい。これらセルロースエステルフィルムの厚みは、通常30〜200μm、好ましくは30〜120μm、更に好ましくは30〜80μmである。偏光フィルムとこちら側の保護フィルムとの貼合にも、通常は光学的に等方性の接着剤が用いられ、かかる接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などが挙げられる。
従来のハードコートフィルムを使用した偏光板は平面性に劣り、反射像を見ると細かい波打ち状のムラが認められ、鉛筆硬度も2H程度しか得られず、60℃、90%RHの条件での耐久性試験により、波打ち状のムラが増大したが、これに対して本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板は、平面性に優れ、鉛筆硬度も優れていた。また、60℃、90%RHの条件での耐久性試験によっても波打ち状のムラが増加することはなかった。
また、本発明のハードコートフィルムを用いて作製した偏光板は、硬度に優れるにもかかわらず断裁する際に端部で割れて切り屑が発生することが少なく、切り屑による故障の発生も低減される等加工性にも優れていた。
(環状オレフィン系樹脂フィルム)
ここで、本発明に係る偏光板の片面に貼合される、延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムについて説明する。
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
好ましい環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基が好適である。
好ましい環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cm2の重合圧力で重合させる。
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
或いは、環状オレフィン系樹脂として、下記のノルボルネン系ポリマーも挙げられる。ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好ましく利用出来るが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)又は(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
ここで、上記A、B、C及びDは特に限定されないが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、又は、少なくとも2価の連結基を介して有機基が連結されてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、A又はBとC又はDは単環又は多環構造を形成してもよい。ここで、上記少なくとも2価の連結基とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子に代表されるヘテロ原子を含み、例えばエーテル、エステル、カルボニル、ウレタン、アミド、チオエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記連結基を介し、上記有機基は更に置換されてもよい。
また、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1、4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
合成したポリマーの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
このほか、本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂としては、特開平5−2108号公報段落番号[0014]〜[0019]記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂、特開2001−277430号公報段落番号[0015]〜[0031]記載の熱可塑性ノルボルネン系ポリマー、特開2003−14901号公報段落番号[0008]〜[0045]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−139950号公報段落番号[0014]〜[0028]記載のノルボルネン系樹脂組成物、特開2003−161832号公報段落番号[0029]〜[0037]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−195268号公報段落番号[0027]〜[0036]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−211589号公報段落番号[0009]〜[0023]脂環式構造含有重合体樹脂、特開2003−211588号公報段落番号[0008]〜[0024]記載のノルボルネン系重合体樹脂若しくはビニル脂環式炭化水素重合体樹脂などが挙げられる。
具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
本発明で使用される環状オレフィン系樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
また、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止することが出来る。
酸化防止剤としては、20℃における蒸気圧が10-5Pa以下、特に好ましくは10-8Pa以下の酸化防止剤が望ましい。蒸気圧が10-5Paより高い酸化防止剤は、押出成形する場合に発泡したり、また、高温にさらされた時に成形品の表面から酸化防止剤が揮散するという問題が起こる。
本発明で使用出来る酸化防止剤としては、例えば、次のようなものを挙げることが出来、これらのうちの一種又は数種を組み合わせて用いてもよい。
ヒンタードフェノール系:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−メトキシ−p−ジメチル−フェノール、2,4−ジ−t−アミルフェノール、t−ブチル−m−クレゾール、4−t−ブチルフェノール、スチレン化フェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、4,4′−ビスフェノール、4,4′−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−α−メチルシクロヘキシルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルナフトール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−メタ−クレゾール)、2,2′−チオ−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ジ−o−クレゾールスルフィド、2,2′−チオ−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス−(2,3−ジ−sec−アミルフェノール)、1,1′−チオ−ビス−(2−ナフトール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6,−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシジェニル)プロピオネート〕等。
アミノフェノール類:ノルマルブチル−p−アミノフェノール、ノルマルブチロイル−p−アミノフェノール、ノルマルペラゴノイル−p−アミノフェノール、ノルマルラウロイル−p−アミノフェノール、ノルマルステアロイル−p−アミノフェノール、2、6−ジ−t−ブチル−α−ジメチル、アミノ−p−クレゾール等。
ハイドロキノン系:ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ハイドロキノンメチルエーテル、ハイドロキノンモノベンジルエーテル等。
ホスファイト系トリホスファイト、トリス(3,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンフォスファナイト、2−エチルヘキシルオクチルフォスファイト等。
その他:2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、ジカテコールボレート−ジ−o−トリルグアニジン塩、ニッケル−ジメチルジチオカーバメイト、ニッケル−ペンタメチレンンジチオカルバネート、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩等。
環状オレフィン系樹脂フィルムは、必要に応じて、プラスチックフィルムに一般的に配合することが出来る添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、及び充填剤などが挙げられ、その含有量は本発明の目的を損ねない範囲で選択することが出来る。
〈溶融流延法〉
環状オレフィン系樹脂若しくはセルロース樹脂を主成分とする位相差フィルムの成形方法は加熱溶融成形法を用いることが好ましい。加熱溶融成形法は、更に詳細に、押出し成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類出来るが、これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押出し成形法、インフレーション成形法、及びプレス成形法が好ましく、押出し成形法が最も好ましい。成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜設定される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、フィルムにヒケやひずみを生じ、樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるボイドやシルバーストリークが発生したり、フィルムが黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。フィルムの厚みは、通常5〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmの範囲である。厚みが薄過ぎる場合は、積層時の取り扱いが困難となり、厚過ぎる場合は、積層後の乾燥時間が長くなって生産性が低下する。
フィルムの幅は1.4m以上が生産性の点から好ましい。より好ましくは1.4〜4mの範囲である。
環状オレフィン系樹脂若しくはセルロース樹脂を主成分とする位相差フィルムは、その表面の濡れ張力が、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上、更に好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が上記範囲にあると、フィルムと偏光膜との接着強度が向上する。表面の濡れ張力を調整するために、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、オゾンの吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他公知の表面処理を施すことが出来る。
延伸前のシートは厚さが50〜500μm程度の厚さが必要であり、厚さムラは小さいほど好ましく、全面において±8%以内、好ましくは±6%以内、より好ましくは±4%以内である。
上記環状オレフィン系樹脂若しくはセルロース樹脂を主成分とする位相差フィルムを本発明に係る偏光板の保護フィルム(位相差フィルム)にするには、シートを少なくとも一軸方向に延伸することにより得られる。尚、実質的な一軸延伸、例えば、分子の配向に影響のない範囲で延伸した後、分子を配向させるべく一軸方向に延伸する二軸延伸であってもよい。好ましくは二軸延伸であり、延伸するには前記テンター装置等を用いることが好ましい。
延伸倍率は環状オレフィン系樹脂フィルムの場合は、1.1〜10倍、好ましくは1.3〜8倍であり、この範囲で所望のリターデーションとなるようにすればよい。
セルロース樹脂を主成分とする位相差フィルムの場合は、縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍が特に好ましい。
延伸倍率が低過ぎるとリターデーションの絶対値が上がらずに所定の値とならず、高過ぎると破断することもある。
延伸は、通常、シートを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行われる。延伸温度が低過ぎると破断し、高過ぎると分子配向しないため、所望の位相差フィルムが得ることが困難になる。
この様にして得たフィルムは、延伸により分子が配向されて、所望の大きさのリターデーションを持たせることが出来る。位相差フィルムとして用いる場合、本発明において好ましいリターデーション値は、前記したようにRtが70〜400nm、Roが30〜300nmであり、更に好ましいRoは30〜70nmである。
リターデーションは、延伸前のシートのリターデーションと延伸倍率、延伸温度、延伸配向フィルムの厚さにより制御することが出来る。延伸前のシートが一定の厚さの場合、延伸倍率が大きいフィルムほどリターデーションの絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望のリターデーションの位相差フィルムを得ることが出来る。
リターデーションのバラツキは小さいほど好ましく、位相差フィルムとしては、波長550nmのリターデーションのバラツキが通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±1nm以下の小さなものである。
リターデーションの面内でのバラツキや厚さムラは、それらの小さな延伸前のシートを用いる他、延伸時にシートに応力が均等にかかるようにすることにより、小さくすることが出来る。そのためには、均一な温度分布下、好ましくは±5℃以内、更に好ましくは±2℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内に温度を制御した環境で延伸することが望ましい。
〈表示装置〉
本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の表示装置を作製することが出来る。本発明のハードコートフィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(MVA型、PVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明のハードコートフィルムに反射防止層を形成した反射防止フィルムは反射防止層の反射光の色ムラが著しく少なく、また、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上の大画面の表示装置では、色ムラや波打ちムラによって、蛍光灯の反射像が歪んで見えていたものが、鏡の反射のように歪みがないため、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。