本発明を更に詳しく説明する。
アクリル系重合体は一般的に懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合などによって重合されている。本発明者等は、前記背景技術に記載した白濁の原因について解析を行い、溶液重合は重合度および重合速度が遅く、塊状重合は重合熱によって重合が不安定になり、懸濁重合や乳化重合では水溶性ポリマーや界面活性剤を添加するため高温高湿条件下で白濁(湿熱耐久性)するという事をつきとめた。懸濁重合や乳化重合において水溶性ポリマーや界面活性剤の添加量を減らすと湿熱耐久性は向上するが、液滴又はミセルが不安定になり、重合安定性が劣化することが分かった。検討の結果、反応性乳化剤を用いて懸濁重合またはソープフリー乳化重合によりアクリル系重合体を重合すると湿熱耐久性に優れ、重合安定性も良好なアクリル系重合体を得られる事を見出した。
以下、本発明とその構成要素、及び発明を実施するための最良の形態・態様等について詳細な説明をする。
<アクリル系重合体>
本発明のアクリル系重合体は、反応性乳化剤を用いた懸濁重合またはソープフリー乳化重合により単量体を重合して得られる。本発明における懸濁重合またはソープフリー乳化重合は、いずれも水を主成分とする媒体中で、乳化剤の濃度が臨界ミセル濃度以下である状態における重合であるが、単量体に可溶な開始剤を用いて行う重合を懸濁重合とし、水溶性開始剤を用いて行う重合をソープフリー乳化重合と定義する。
一般的な乳化剤を用いて臨界ミセル濃度以下で重合を行う場合、乳化剤の添加量を低くしなければならないため重合反応が不安定になり易い。本発明では反応性乳化剤を単量体と同時に滴下することで、反応性乳化剤がアクリル系重合体に取り込まれながら重合反応が進行するため、乳化剤の濃度が臨界ミセル濃度以下であっても安定した重合反応を行う事ができる。
また、反応性乳化剤を添加せずに懸濁重合またはソープフリー乳化重合によってシード粒子を作製してから、反応性乳化剤、単量体等を追加添加して、アクリル系重合体粒子を作製する方法を用いても良い。
懸濁重合またはソープフリー乳化重合に用いる事ができる水以外の媒体としては、例えばメタノール、エタノール等の水溶性の媒体を挙げる事が出来る。これらの媒体中における主成分としての水の含有量は、例えば、50質量%以上とすることが出来る。
このような懸濁重合またはソープフリー乳化重合としては、重合開始剤を含有する単量体を媒体に分散させ、適宜昇温して行う事ができる。分散液中の単量体の含有量としては、35質量%〜50質量%などとすることが出来る。
アクリル系重合体に用いられる単量体としては、特に制限は無いが、例えば、メチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリレートとはアクリレートまたはメタクリレートであることを表す)、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルコールの(メタ)アクリレート類、あるいはシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルコールの(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸−2−サクシノロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル等のカルボキシル基含有モノマー、アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有ポリマー、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどのカルボニル基含有(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート類、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリレート類、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、などのアクリルアミド類、ウレタン変性(メタ)アクリレート類、エポキシ変性アクリレート類、シリコーン変性アクリレート類、(メタ)アクリロニトリルなど、他にN−ビニルピロリドン、スチレン、4−ヒドロキシスチレン、酢酸ビニル、N−ビニルイミダゾールなどの、アクリルモノマーと共重合可能な単量体を挙げることができる。
これらの単量体の中では、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドンが好ましい。
これらの単量体は単独又は組み合わせて使用することが出来るが、メチル(メタ)アクリレートまたはn−ブチル(メタ)アクリレートのうち少なくとも一種を50〜95質量%、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドンのうち少なくとも一種を5〜50質量%含有することが好ましい。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドンの添加比率が多い方がセルロースエステルとの相溶性が向上するため好ましいが、添加比率が多すぎると水溶性が増すため、懸濁重合またはソープフリー乳化重合時の分子量制御が困難になり、また、出来上がったアクリル系重合体の湿熱耐性も劣化する。
本発明に用いられる反応性乳化剤とは分子内に単量体と付加反応できる反応性不飽和結合を有する乳化剤である。アクリル系重合体中に乳化剤がフリーで存在すると、フィルム内部に吸水性の物質が局在する事になり、フィルムの強度や湿熱耐性などのフィルム物性に悪影響を及ぼす。反応性乳化剤を用いることで乳化剤が局在する事を防ぐ事ができ、乳化剤が全体に存在する事によって、優れた湿熱耐性を付与する事ができる。
本発明に用いられる反応性乳化剤としては、例えば、スルホコハク酸アルキルアルケニルエステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレン−1−(アルキルオキシメチル)アルキル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアリルアルキルエーテルリン酸アンモニウム塩等を挙げることができる。このような反応性乳化剤としては、例えば日本乳化剤社製;アントックス MS60、MS−2N、ADEKA社製;アデカリアソープ SE10N、三洋化成社製;エレミノール JS2、RS30、花王社製;ラテムル PDシリーズ、ラテムル Sシリーズ等がある。
これらのうちスルホン酸塩の構造を持つものが、重合安定性の点から好ましい。更に、反応性乳化剤としては、分子内にポリオキシエチレン構造を含有しない方が、湿熱耐性の点から、特に好ましい。このような反応性乳化剤としては、スルホコハク酸アルキルアルケニルエステルナトリウム塩等を挙げる事が出来る。
反応性乳化剤を用いることで、出来上がった光学フィルムの湿熱耐久性が向上し、また、重合時の分子量制御が容易になり、重合安定性が向上する。
反応性乳化剤のアクリル系単量体混合物中の含有量としては、アクリル系単量体に対して0.1〜10質量%の範囲である事が好ましく、0.5〜5質量%である事が更に好ましい。反応性乳化剤の使用量がこの範囲であれば重合安定性を得る事ができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、非反応性乳化剤を添加しても良い。非反応性乳化剤の添加量は反応性乳化剤の添加量よりも少ない事が好ましい。
このような単量体を含有する分散液は、適宜分散助剤/電解質などを含有していても良い。
重合体粒子分散液中の固形分の量は、噴霧乾燥時の生産性の点から、35質量%以上が好ましく、42質量%以上がより好ましく、45質量%以上が特に好ましい。
上記懸濁重合またはソープフリー乳化重合により得られる重合体粒子の平均粒径としては、例えば、500nm以上2000nm未満などを挙げることが出来、重量平均分子量は1,000以上50,000以下である事が好ましい。重合体粒子の平均粒径と重量平均分子量をこの範囲にすることで、残留モノマー量が少なく、溶融工程での揮発や悪臭が抑えられ、セルロースエステルとの相溶性が良好なアクリル系重合体を得る事ができる。
本発明のアクリル系重合体を粉末として回収する工程においては、上記工程により得られたアクリル系重合体分散液を噴霧乾燥することが好ましい。アクリル系重合体分散液の噴霧乾燥の方法は特に制限されないが、噴霧乾燥機を用いて行う事ができ、重合体のガラス転移温度(Tg)+20℃以下の出口温度で噴霧乾燥する事が好ましい。この工程により得られるアクリル系重合体粉末の粒子径としては、例えば、10〜200μmを挙げる事が出来る。
<エーテルエステル化合物>
一般式−1において、R2、R3としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなどの直鎖あるいは分岐の基があげられ、アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチルなどがあげられ、アルキルアリール基としては、例えば、上記アルキル基によって置換されてなる上記アリール基などがあげられる。
R1としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレンなどの直鎖あるいは分岐の基があげられ、アリーレン基としては、例えば、フェニレン、ナフチレンなどの基があげられる。Aで表される炭素原子数2〜4のアルキレン基としてはエチレン、プロピレン、ブチレンなどの直鎖あるいは分岐の基があげられる。
また、エーテルエステル化合物としては、市販されているエーテルエステル化合物を使用するこの出来る。例えば、ADEKA(株)製のアデカサイザーRSシリーズのRS−107、RS−528、RS−550、RS−700、RS−735、RS−966、RS−1000などを上げる事が出来る。
本発明のセルロースエステル組成物にエーテルエステル化合物を添加することで、延伸後の物性劣化、特に引裂き強度の劣化を抑制する事ができる。
本発明においては、エーテルエステル化合物をセルロースエステルに対して0.1質量%〜5.0質量%含有させる事を特徴としている。添加量が0.1質量%よりも少ない場合は必要な効果が得られず、5.0質量%よりも多い場合はブリードアウトが発生する事がある。
<セルロースエステル>
本発明に用いるセルロースエステルには特に限定はないが、セルロースの炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであることが好ましく、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特にセルロースの炭素数2から6の低級脂肪酸エステルであることがより好ましい。
水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐していてもよく、また環を形成していてもよい。更に別の置換基が置換していてもよい。
好ましいセルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同08−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを挙げることができる。
本発明に好ましいセルロースエステルとしては、上記式(1)及び(2)を同時に満足するものが好ましい。
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基の置換度である。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの置換度をこの範囲にする事で、溶融粘度が低く、アクリル系重合体との相溶性と機械的強度に優れた光学フィルムを得る事ができる。
本発明に用いられるセルロースエステルの数平均分子量は、溶融粘度、機械的強度等の観点から、60,000〜300,000の範囲が好ましく、70,000〜200,000のものがより好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値が1.4〜3.0であることが好ましく、さらに好ましくは1.4〜2.2の範囲である。Mw/Mnをこの範囲にすることで、光学フィルムを延伸した時の白濁が起きにくくなり、弾性率が上昇し易くなる。Mw/Mnの値が小さい方が分子量の分布が小さいため、ポリマー分子が配向しやすく、また空隙の少ない均質な光学フィルムになり易いためと考えられる。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することができる。これらを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することができる。
高速液体クロマトグラフィーを用いた数平均分子量、重量平均分子量の測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。
本発明に係るセルロースエステルは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行われる。
アシル化剤が酸クロライドの場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。
セルロースエステルを構成するグルコース単位の6位には、2位及び3位と異なり、反応性の高い一級ヒドロキシル基が存在し、この一級ヒドロキシル基は、硫酸を触媒とするセルロースエステルの製造過程で硫酸エステルを優先的に形成する。
そのため、セルロースのエステル化反応において、触媒硫酸量を増加させることにより、通常のセルロースエステルに比べて、グルコース単位の6位よりも2位及び3位の平均置換度を高めることができる。
更に、必要に応じて、セルロースをトリチル化すると、グルコース単位の6位のヒドロキシル基を選択的に保護出来るため、トリチル化により6位のヒドロキシル基を保護し、エステル化した後、トリチル基(保護基)を脱離することにより、グルコース単位の6位よりも2位及び3位の平均置換度を高めることが出来る。具体的には、特開2005−281645号記載の方法で製造されたセルロースエステルも好ましく用いることができる。
尚、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化または低酢化度の成分を濾過で取り除いたりすることも好ましく行われる。
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法で得ることができる。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルのアルカリ土類金属含有量は、1〜50ppmの範囲であることが好ましい。アルカリ土類金属含有量が上記の範囲であればリップ付着物が軽減され、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティング部で破断を生じない。さらに1〜30ppmの範囲が好ましい。ここでいうアルカリ土類金属とはCa、Mgの総含有量のことであり、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。
本発明に用いられるセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が上記の範囲であると、熱溶融時のダイリップ部の付着物が軽減され、また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際の破断を生じない。さらに1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM−D817−96に規定の方法より測定することができる。
本発明に用いられるセルロースエステル中の遊離酸含有量は、1〜500ppmであることが好ましい。遊離酸含有量が上記の範囲であるとダイリップ部の付着物が軽減され、また、熱延伸時や熱延伸後のスリッティングの際の破断を生じない。さらに1〜100ppmの範囲であることが好ましく、特に1〜70ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM−D817−96に規定の方法より測定することができる。
<添加剤>
本発明は、セルロースエステルを含む溶融物をフィルム状に成形することを特徴とするが、溶融物には、可塑剤、酸化防止剤、色素、紫外線吸収剤、マット剤、などの各種添加剤を含有させても良い。
添加剤について以下に述べる。
《可塑剤》
本発明に係る光学フィルムの製造においては、フィルム形成材料中に少なくとも1種の可塑剤を2〜30質量%含有する事が好ましい。
可塑剤とは、一般的には高分子中に添加することによって脆弱性を改良したり、柔軟性を付与したりする効果のある添加剤であるが、本発明においては、セルロースエステルの溶融粘度の低下や、セルロースエステルの親水性を改善し、光学フィルムの平衡含水率を改善するためにも添加されるため疎水化剤としての機能も有する。
ガラス転移温度以上においては、熱量の吸収により弾性率あるいは粘度が低下し、流動性が発現される。しかしセルロースエステルは高温下では溶融と同時に熱分解によってセルロースエステルの分子量の低下が発生し、得られる光学フィルムの力学特性等に悪影響を及ぼすことがあるため、なるべく低い温度でセルロースエステルを溶融させる必要がある。
光学フィルム構成材料の溶融温度を低下させるためには、セルロースエステルのガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつ可塑剤を添加することで達成することができる。
本発明に用いることのできる可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、3価以上の芳香族多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、糖エステル系化合物、アクリル系ポリマーなどを用いることが出来る。特に好ましくは、多価アルコール系可塑剤である。また、リン酸エステル系可塑剤の添加量は偏光度の耐久性の観点から6質量%以下とすることが好ましい。
可塑剤は、1%減量温度(Td1)が250℃以上であることが好ましく、より好ましくは280℃以上であり、特に好ましくは300℃以上である。
多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられる多価アルコールは、次の一般式(1)で表される。
一般式(1):R1−(OH)l
式中、R1はl価の有機基、lは2以上の正の整数、OH基はアルコール性水酸基またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトールなどを挙げることができる。中でもグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると、透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を用いることが出来る。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を用いるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることが出来る。
好ましい脂環族モノカルボン酸としては炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、具体的にはシクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸などが挙げられる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸を挙げることができる。特に、安息香酸が好ましい。
これらの脂環族モノカルボン酸および芳香族モノカルボン酸は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい。)、フェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい。)、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8のアシル基、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のカルボニルオキシ基等が挙げられる。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、揮発性、相溶性等の観点から、分子量300〜1,500の範囲であることが好ましく、400〜1,000の範囲であることが更に好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
多価アルコールエステルは、公知の方法により合成できる。例えば、前記モノカルボン酸と前記多価アルコールを酸の存在下で縮合させエステル化する方法、有機酸を予め酸クロライドあるいは酸無水物としておき、多価アルコールと反応させる方法、有機酸のフェニルエステルと多価アルコールを反応させる方法等があり、目的とするエステル化合物により、適宜、収率のよい方法を選択することが好ましい。
ポリエステル系可塑剤としては、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤を用いることが好ましい。好ましいポリエステル系可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(i)で表させる。
一般式(i):B−(G−A1)n1−G−B
式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、A1は炭素数2〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またn1は1以上の整数を表す。
一般式(i)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ一種または二種以上の混合物として使用することができる。
ポリエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、一種または二種以上の混合物として使用される。
また、本発明において、芳香族末端エステルを可塑剤として使用できる。芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
更に、芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ一種または二種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものが好適である。
3価以上の芳香族多価カルボン酸エステル系可塑剤としてはトリメシン酸エステル、トリメリット酸エステルまたはピロメリット酸エステルであることが好ましい。芳香族多価カルボン酸とエステルを形成するアルコールは炭素数1〜8のアルコールであることが好ましい。
特に好ましい3価以上の芳香族多価カルボン酸エステル系可塑剤の例としては、トリメシン酸トリブチル、トリメシン酸トリヘキシル、トリメシン酸トリ2−エチル−ヘキシル、トリメシン酸トリシクロヘキシル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリ2−エチル−ヘキシル、トリメリット酸トリシクロヘキシル、ピロメリット酸テトラブチル、ピロメリット酸テトラヘキシル、ピロメリット酸テトラ2−エチル−ヘキシル、ピロメリット酸テトラシクロヘキシル、などが上げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。
グリコレート系可塑剤としては、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等を用いることが出来る。この他、アセチルトリブチルシトレートなどのクエン酸エステル系可塑剤、エポキシ化オイル系可塑剤なども使用することができる。
糖エステル化合物としては、フラノース構造およびピラノース構造から選ばれる少なくとも一種の構造が1〜12個結合した糖化合物の水酸基をエステル化した糖エステル化合物を上げる事が出来る。
本発明の糖化合物としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースなどが挙げられるが、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有するものが好ましい。例としてはスクロースが挙げられる。
本発明の糖エステル化合物は、糖化合物の有する水酸基の一部または全部が酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸などのカルボン酸でエステル化されているものである。エステル化は一種類のカルボン酸で行っても良いし、二種以上の混合酸で行っても良い。
《酸化防止剤、熱劣化防止剤》
本発明では、酸化防止剤、熱劣化防止剤として、通常知られている劣化防止剤(酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミンなど)を使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。劣化防止剤については、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報に記載がある。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、チバ・ジャパン(株)から、Irganox1076、Irganox1010という商品名で市販されているものが好ましい。
上記リン系化合物は、例えば、住友化学(株)から、Sumilizer−GP、ADEKA(株)からADK STAB PEP−24G、ADK STAB PEP−36、ADK STAB 2112及びADK STAB 3010、チバ・ジャパン(株)からIRGAFOS P−EPQ、堺化学(株)からGSY−P101という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、チバ・ジャパン(株)から、Tinuvin144及びTinuvin770、ADEKA(株)からADK STAB LA−52という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学(株)から、Sumilizer TPL−R及びSumilizer TP−Dという商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学(株)から、Sumilizer−GM及びSumilizer−GSという商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、光学フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜5質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤、熱劣化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
《リターデーション調整剤》
本発明の光学フィルムにおいてリターデーションを調整するためにアクリル系重合体以外の化合物を含有させてもよい。
リターデーションを調整するために添加する化合物は、欧州特許第911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物を使用することが出来る。
また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物が特に好ましい。
《着色剤》
本発明においては、着色剤を使用することが好ましい。着色剤とは、通常、染料や顔料を意味するが、本発明では、光学フィルムの色調を青色調にする効果またはイエローインデックス(黄色度)を調整するものを指す。
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
《その他の添加剤》
本発明の光学フィルムには、前記化合物以外に、通常の光学フィルムに添加することのできる添加剤を含有させることができる。
これらの添加剤としては、紫外線吸収剤、微粒子等を挙げることができる。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明においては、特に波長380nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明の光学フィルムに添加される紫外線吸収剤は、分子内に芳香族環を2つ以上有する紫外線吸収剤が、特に好ましく用いられる。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例として、例えばチバ・ジャパン(株)製のTINUVIN109、TINUVIN171、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328、TINUVIN900、TINUVIN928、ADEKA(株)製のLA−31等を好ましく用いることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤は単独で用いても良いし、二種以上の混合物であっても良い。
紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、光学フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、光学フィルムに対して0.5〜4.0質量%が好ましく、0.6g〜3.5質量%がさらに好ましい。
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。また、マット剤微粒子は有機物によって表面処理されていることが、光学フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。
微粒子の平均径が大きい方がマット効果は大きく、平均径の小さい方は透明性に優れるため、本発明においては、微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。
光学フィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成の光学フィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、商品名がアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)などを使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972V、NAX50が光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
<溶融製膜方法>
本発明の光学フィルムは、溶融流延法によって形成されることを特徴とする。本発明において溶融流涎とは、セルロースエステル及び可塑剤などの添加剤を含む組成物を加熱溶融して、その溶融物を流延することと定義され、溶融押出し成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れる光学フィルムを得るためには、溶融押出し成形法が優れている。
以下、溶融押し出し成形法を例にとり、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。光学フィルムの製造方法において、溶融押し出しの条件は、他のポリエステル等の熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行うことができる。
《セルロースエステルと添加剤の溶融ペレット製造工程》
溶融押出に用いる複数の原材料は、通常あらかじめ溶融混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し一軸や二軸の押出機を用いて溶融混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることで出来る。
マット剤や紫外線吸収剤などは、高濃度のマスターペレットを作製して、光学フィルム製膜時に押出機中でメインのペレットと混合してもよい。
原材料は、押出しする前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特にセルロースエステルは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200ppm以下、更に100ppm以下にしておくことが好ましい。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
真空ナウターミキサーなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイスの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿した窒素ガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
また、押出機への供給ホッパー等は保温しておくことが吸湿防止できるので好ましい。
押出機はせん断力を抑えて加工することが好ましい。例えば、二軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。また、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能な範囲で、出来るだけ低温で加工することが好ましい。
ニーダーディスクを用いると混錬性を向上できるが、せん断発熱に注意が必要である。必要に応じて、ベント孔から吸引しても良い。低温であれば揮発成分はほとんど発生しないのでベント孔なしでもよい。
ペレットの色は、黄味の指標であるb*値が−5〜10の範囲にあることが好ましく、−1〜8の範囲にあることがさらに好ましく、−1〜5の範囲にあることがより好ましい。b*値は分光測色計CM−3700d(コニカミノルタセンシング(株)製)で、光源はD65(色温度6504K)を用い、視野角10°で測定することができる。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行うことが好ましいが、ペレット化せずに、原材料の粉末をそのままフィーダーで押し出し機に供給してフィルム製膜することも可能である。また、一度製膜した光学フィルムを細かく砕いて、原料として再利用しても良い。
《セルロースエステルと添加剤の溶融物をダイから押し出す工程》
ペレットなどの材料は予め乾燥させておくことが好ましい。真空または減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機等で水分を200ppm以下、好ましくは100ppm以下に乾燥させることが望ましい。
除湿熱風や真空または減圧下で乾燥したポリマーを一軸や二軸タイプの押し出し機を用いて溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過して異物を除去した後、流涎ダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化させる。
押出し機は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも二軸押出し機でもよい。
供給ホッパーから押し出し機へ導入する部位、および押出し機内は窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが酸化分解を抑制する点で好ましい。
押出し機内の光学フィルム構成材料の溶融温度は、光学フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、150〜300℃が好ましく、180〜270℃がより好ましく、200〜260℃がさらに好ましい。温度が低すぎると溶解不良や溶融粘度の上昇が発生し、温度が高すぎると材料の熱分解が起こる。
押出し時の溶融粘度は、1〜10,000Pa・s、好ましくは10〜1,000Pa・sである。溶融粘度が高すぎると圧力の上昇によって、押出し機内での滞留時間が長くなる。押出し機内での光学フィルム構成材料の滞留時間は短い方が着色が少ないため好ましく、好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。
滞留時間は、押出し機の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
押出し機のスクリューの形状や回転数等は、光学フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本発明において押出し機でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
押出し機から押し出された溶融樹脂は、流延ダイに送られ、流延ダイのスリットからフィルム状に押し出される。
流延ダイの材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)等を溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨等の加工を施したもの等が挙げられる。流延ダイのリップ部の好ましい材質は、流延ダイと同様である。またリップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
この流延ダイのスリットは、そのギャップが調整可能なように構成されている。
流延ダイのスリットを形成する一対のリップのうち、一方は剛性の低い変形しやすいフレキシブルリップであり、他方は固定リップである。
そして、多数のヒートボルトが流延ダイの幅方向に一定ピッチで配列されている。各ヒートボルトには、埋め込み電気ヒーターと冷却媒体通路とを具えたブロックが設けられ、各ヒートボルトが各ブロックを縦に貫通している。
ヒートボルトの基部はダイ本体に固定され、先端はフレキシブルリップの外面に当接している。そしてブロックを常時空冷しながら、埋め込み電気ヒーターの入力を増減してブロックの温度を上下させ、これによりヒートボルトを熱伸縮させて、フレキシブルリップを変位させて光学フィルムの厚さを調整する。
ダイ後流の所要箇所に厚さ計を設け、これによって検出されたウェブ厚さ情報を制御装置にフィードバックし、この厚さ情報を制御装置で設定厚み情報と比較し、同装置から来る補正制御量の信号によってヒートボルトの発熱体の電力またはオン率を制御するようにすることもできる。
ヒートボルトは、好ましくは、長さ20〜40cm、直径7〜14mmを有し、複数、例えば数十本のヒートボルトが、好ましくはピッチ20〜40mmで配列されている。
ヒートボルトの代わりに、手動で軸方向に前後動させることによりスリットギャップを調節するボルトを主体とするギャップ調節部材を設けてもよい。
ギャップ調節部材によって調節されたスリットギャップは、通常200〜3000μm、好ましくは300〜2000μm、より好ましくは400〜1500μmである。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。
ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、ろ過精度を調整できる。
フィルターはろ過精度の異なるろ過材を組み合わせて多層体としたものが好ましい。また、ろ過精度を順次上げていく構成としたり、ろ過精度の粗密を繰り返したりする事で、フィルターのろ過寿命が延び、異物やゲルなどの補足精度も向上できるので好ましい。
ダイに傷や異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインと呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押し出し機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
押し出し機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押し出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
《冷却ロール》
本発明の冷却ロールには特に制限はないが、肉厚が20〜30mm程度のシームレスな鋼管製の金属ロールで、表面が鏡面に仕上げられ、内部に温度制御可能な熱媒体または冷媒体が流れるような構造を備えている事が好ましい。本発明の冷却ロールは少なくとも一つであり、二つ以上有しているのが好ましい。
冷却ロールの直径は、特に限定されないが、溶融押出された光学フィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常100mmから1m程度である。
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。更に表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキ、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキ、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られる光学フィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面は更に研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
冷却ロールの表面温度Tr(℃)は、Tg−50(℃)≦Tr≦Tgである事が好ましい。冷却ロールの表面温度がこの範囲であれば、光学フィルムの剥離不良、光学フィルムからの揮発物によるロール汚れ等が無く良好である。
光学フィルムと第1および第2冷却ロールとの接触時間は1.0秒以上、3.0秒以下が好ましい。なお、接触時間は、光学フィルムとローラとが接しはじめる接点と剥離されはじめる接点との円周の距離と、光学フィルムの搬送速度から算出した秒数で表した。
第2冷却ロールの周速度R2は第1冷却ロールの周速度R1よりも大きいと、2つのロール間の光学フィルムに張力が働き、光学フィルムと第1ロールとの密着性が高まるため好ましい。この周速度の比R2/R1は1.00〜1.05の範囲が好ましい。1.05を超えると光学フィルムが破断する危険性がある。同様に、第3以降のロール周速度がその直前の冷却ロールの周速度より大きいことが好ましい。
《弾性タッチロール》
冷却ロールに当接するタッチロールは、弾性タッチロールであることが好ましい。弾性タッチロールは表面が弾性を有するため、冷却ロールへの押圧力によって冷却ロールの表面に沿って変形し、冷却ロールとの間にニップを形成することができる。
本発明の弾性タッチロールとしては、特許第3194904号、特許第3422798号、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号公報、WO97−028950号明細書、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2002−36333号、特開2005−172940号や特開2005−280217号公報に記載されているような弾性タッチロールを使用することができる。
本発明で用いる弾性タッチロールは、金属製外筒と内筒との2重構造になっており、その間に冷却流体を流せるように空間を有しているものが好ましい。
更に、金属製外筒は弾性を有していることにより、タッチロール表面の温度を精度よく制御でき、かつ適度に弾性変形する性質を利用して、長手方向に光学フィルムを押圧する距離が稼げる等の効果を有することにより、液晶表示装置で画像を表示したときに、明暗のスジや斑点むらを無くす事が出来る。
金属製外筒の肉厚の範囲は、0.003≦(金属製外筒の肉厚)/(タッチロール半径)≦0.03であれば、適度な弾性となり好ましい。タッチロールの半径が大きければ金属外筒の肉厚が厚くても適度に撓むことが出来る。金属製外筒の肉厚があまり薄すぎると強度が不足し、破損の懸念がある。一方、厚すぎると、ロール質量が重くなりすぎ、回転むらの懸念がある。従って、金属外筒の肉厚は、0.1〜5mmであることが好ましい。
弾性タッチロールの直径は100mm〜600mm、ロール有効幅L=500〜1600mmで、r/L<1で横長の形状が好ましい。
金属外筒表面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られる光学フィルムの表面も平滑にできるためである。
金属外筒の材質は、平滑で、適度な弾性があり、耐久性があることが求められるため、炭素鋼、ステンレス、チタン、電鋳法で製造されたニッケルなどを好ましく用いる事が出来る。更にその表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキ、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキ、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。表面加工した表面は更に研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
内筒は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの軽量で剛性のある金属製であることが好ましい。内筒の肉厚を外筒の2〜10倍として、内筒に十分な剛性を与える事で、ロールの回転ぶれを抑えることができる。
内筒には更にシリコーン、フッ素ゴムなどの樹脂製弾性材料が被覆されていてもよい。
冷却流体を流す空間の構造は、ロール表面の温度を均一に制御できるものであればよく、例えば、巾方向に行きと戻りが交互に流れるようにしたり、スパイラル状に流れるようにしたりする事で、ロール表面の温度分布の小さい温度制御ができる。
冷却流体は、特に制限はなく、使用する温度域に合わせて、水やオイルを使用できる。
弾性タッチロールの表面温度Tr0は、光学フィルムのガラス転移温度(Tg)より低いことが好ましい。Tgより高いと、光学フィルムとロールとの剥離性が劣る場合がある。Tg−50℃〜Tgであることが更に好ましい。
本発明で用いる弾性タッチロールは、巾方向の中央部が端部より径が大きいクラウンロールの形状とすることが好ましい。タッチロールは、その両端部を加圧して光学フィルムに押圧するのが一般的であるが、この場合、タッチロールが撓むため、端部にいくほど強く押圧されてしまう現象がある。ロールをクラウン形状にすることで高度に均一な押圧が可能となる。
本発明で用いる弾性タッチロールの幅を光学フィルム幅よりも広くすることで、光学フィルム全体を冷却ロールに密着できるので好ましい。また、ドロー比が大きくなると、光学フィルムの両端部がネックイン現象により耳高(端部の膜厚が厚くなる)になる場合がある。
この場合は、耳高部を逃げるように、金属製外筒の幅を光学フィルム幅より狭くしてもよい。あるいは、金属製外筒の外径を小さくして耳高部を逃がしてもよい。
弾性タッチロールの撓みを防止するため、冷却ロールに対してタッチロールの反対側にサポートロールを配してもよい。
弾性タッチロールの表面温度Tr0を更に均一にするため、タッチロールに温調ロールを接触させたり、温度制御された空気を吹き付けたり、液体などの熱媒体を接触させてもよい。
本発明では、更に弾性タッチロール押圧時のタッチロール線圧を9.8N/cm以上、147N/cm以下にすることが好ましい。線圧がこの範囲よりも小さいと、ダイラインを十分に解消することができなくなる。
線圧とは、弾性タッチロールが光学フィルムを押圧する力を押圧時の光学フィルム幅で除した値である。線圧を上記の範囲にする方法は、特に限定はなく、例えば、エアーシリンダーや油圧シリンダーなどでロール両端を押圧することができる。サポートロールにより弾性タッチロールを押圧することで、間接的に光学フィルムを押圧してもよい。
タッチロールによってダイラインを良好に解消するためには、タッチロールが光学フィルムを挟圧するときの光学フィルムの粘度が適切な範囲であることが重要となる。
光学フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、押出された光学フィルムがタッチロールに挟圧される直前のタッチロール側光学フィルム表面温度Ttを、Tg<Tt<Tg+110℃とすることが好ましい。タッチロールに挟圧される直前の光学フィルムの温度Ttが上記の範囲にすると、光学フィルムを挟圧するときの光学フィルムの粘度を適切な範囲に設定することができ、ダイラインの矯正が可能となり、また、光学フィルム表面とロールが均一に接着し、ダイラインの矯正が可能となる。好ましくはTg+10℃<Tt<Tg+90℃、さらに好ましくはTg+20℃<Tt<Tg+70℃である。
押圧時の光学フィルム温度を上記範囲にする方法は特に限定はないが、例えば、ダイと冷却ロール間の距離を近づけて、ダイと冷却ロール間での冷却を抑制する方法やダイと冷却ロール間を断熱材で囲って保温したり、あるいは熱風や赤外線ヒーターやマイクロ波加熱等により加温する方法が挙げられる。
光学フィルム表面温度およびロール表面温度は非接触式の赤外温度計で測定できる。具体的には、非接触ハンディ温度計(IT2−80、(株)キーエンス製)を用いて光学フィルムの幅手方向に10箇所を被測定物から0.5mの距離で測定する。
弾性タッチロール側光学フィルム表面温度Ttは、搬送されている光学フィルムをタッチロールをはずした状態でタッチロール側から非接触式の赤外温度計で測定した光学フィルム表面温度のことをさす。
《ダイから押し出された溶融物を冷却ロールと弾性タッチロールとの間に押圧しながら流延する工程》
本発明においては、流延ダイの開口部(リップ)から冷却ロールまでの部分を70kPa以下に減圧させることが好ましく、50〜70kPaである事がより好ましい。減圧をこの範囲にする事で、ダイラインの矯正効果がより大きく発現する。
流延ダイの開口部(リップ)から冷却ロールまでの部分の圧力を70kPa以下に保つ方法としては、特に制限はないが、流延ダイからロール周辺を耐圧部材で覆い、減圧する等の方法がある。
このとき、吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱する等の処置を施すことが好ましい。本発明では、吸引圧が小さすぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
本発明では、セルロースエステルを含む溶融物をダイからフィルム状に押出し、ドロー比7以上30以下として得られた光学フィルムを、弾性タッチロールで冷却ロールに押圧しながら搬送する。
ドロー比とは、ダイのリップクリアランスを冷却ロール上で固化した光学フィルムの平均膜厚で除した値である。ドロー比をこの範囲とすることで、液晶表示装置で画像を表示したときに、明暗のスジや斑点状むらがなく、生産性の良好な偏光板保護に用いることの出来る光学フィルムが得られる。
ドロー比は、ダイリップクリアランスと冷却ロールの引き取り速度により調整できる。ダイリップクリアランスは、900μm以上が好ましく、更に1mm以上2mm以下が好ましい。大きすぎても、小さすぎても斑点状むらが改善されない場合がある。
冷却ロールと弾性タッチロールで光学フィルムをニップする際のタッチロール側の光学フィルム温度を光学フィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることは、光学フィルム表面の写像性を調整するために好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
冷却ロールから光学フィルムを剥離する際は、張力を制御して光学フィルムの変形を防止することが好ましい。
《ロール清掃設備》
本発明の製造装置には、ドラムおよびロールを自動的に清掃する装置を付加させることが好ましい。清掃装置については特に限定はないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール、粘着ロール、ふき取りロール等をニップする方式、溶剤を浸透させた不織布などの部材をロールに押し当てる方法、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、液体中にロールを接触させる方法、コロナ放電やグロー放電などのプラズマ放電によりロール表面の汚れを揮発させる方法、レーザーによる焼却装置、或いはこれらの組み合わせなどがある。
清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
《延伸工程》
本発明では、上記のようにして得られた光学フィルムを少なくとも1方向に1.01〜3.0倍延伸することが好ましく、縦(フィルム搬送方向)、横(巾方向)両方向にそれぞれ1.1〜2.0倍延伸することが更に好ましい。延伸によりスジの改良などの面品質の向上、リターデーションの調整などを行うことができる。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを用いることができる。
本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして用いる場合は、温度、倍率を選ぶことで、所望のリターデーション特性を得る事ができる。
通常、延伸倍率は1.01〜3.0倍、好ましくは1.1〜2.0倍であり、延伸温度は、通常、光学フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行われる。延伸倍率、延伸温度をこの範囲にする事で、スジの改良による面品質の向上、光学フィルムの白濁や破断の防止、所望のリターデーション値への調整などをする事が出来る。
延伸は、幅手方向で均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とする光学フィルムに要求される特性を有するように適宜調整することができる。
光学フィルムの位相差と物性の制御は、上記延伸工程、熱固定処理を適宜選択して行われている。
上記の方法で作製した光学フィルムのリターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、光学フィルムを長手方向や幅手方向に収縮させてもよい。
長手方向に収縮するには、例えば、巾延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることにより光学フィルムを収縮させるという方法がある。
後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行うことが出来る。必要により任意の方向(斜め方向)の延伸と組み合わせてもよい。長手方向、巾手方向とも0.5%から10%収縮させることで光学フィルムの寸法変化率を小さくすることができる。
延伸によって光学フィルムの弾性率を上げることができるため、延伸は溶融製膜した光学フィルムの弾性率の低さを補う手段として有効である。また、延伸することで溶融製膜した光学フィルムの接触角が下がることが分かった。これは、延伸で光学フィルムが延ばされることによって体積あたりの表面積が増える結果、光学フィルム内部に潜り込んでいた極性基が表面に出てくるためと考えられる。
光学フィルムとして位相差フィルムを製造し、さらに偏光板保護フィルムの機能を複合させる場合、屈折率制御を行う必要があるが、その屈折率制御は延伸操作により行うことが出来る。
位相差フィルムの延伸工程において、光学フィルムの1方向に1.0〜2.0倍及び光学フィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで、必要とされるリターデーションRo及びRthを制御することができる。ここで、Roとは面内リターデーションを示し、Rthとは厚み方向リターデーションを示す。
ここで、光学フィルムの遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nz、光学フィルムの膜厚をd(nm)とすると、
Ro=(Nx−Ny)×d
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
として表される。(測定波長590nm)
位相差機能を有する場合Roは20〜200nm、Rthは90〜400nmであり、RthとRoの比Rth/Roは、0.5〜4が好ましく、特に1〜3が好ましい。
リターデーションのバラツキは小さいほど好ましく、通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±2nm以下である。
遅相軸方向の均一性も重要であり、光学フィルム巾方向と遅相軸のなす角度(配向角θ1)が−1〜+1°の範囲にあることが好ましく、更に−0.5〜+0.5°の範囲にあることが好ましく、特に−0.1〜+0.1°の範囲にあることが好ましい。これらのばらつきは延伸条件を最適化することで達成できる。
配向角θ1の測定は、例えば、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用いて行うことができる。
配向角θ1が各々上記関係を満たすことは、光漏れを抑制または防止することに寄与し、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現に寄与する。
位相差フィルムの面内方向のリターデーションRo分布は、5%以下に調整することが好ましく、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。
また、光学フィルムの厚み方向のリターデーションRth分布を10%以下に調整することが好ましいが、さらに好ましくは、2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。
位相差フィルムにおいて、リターデーション値の分布変動が小さい方が好ましく、液晶表示装置に位相差フィルムを含む偏光板を用いるとき、該リターデーション分布変動が小さいことが色ムラ等を防止する観点で好ましい。
延伸は、例えば光学フィルムの長手方向及びそれと光学フィルム面内で直交する方向、即ち幅方向に対して、逐次または同時に行うことができる。
互いに直行する二軸方向に延伸することにより、得られる光学フィルムの膜厚変動が減少できる。位相差フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
光学フィルムの膜厚変動は、±3%、さらに±1%の範囲とすることが好ましい。以上のような目的において、互いに直交する二軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する二軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍に範囲で行うことが必要とされるリターデーション値を得るためにより好ましい。
《延伸後の工程》
延伸後、光学フィルムの端部をスリッターにより製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング及びバックロールよりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)を光学フィルム両端部に施し、巻取り機によって巻き取ることにより、光学フィルム(元巻き)中の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。
なお、光学フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、光学フィルム製品として使用できないので、切除して、原料として再利用される。
スリッターによってスリットされた光学フィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理を行った後、光学フィルム用原料として再利用してもよい。
次に、光学フィルムの巻取り工程は、円筒形巻き光学フィルムの外周面とこれの直前の移動式搬送ロールの外周面との間の最短距離を一定に保持しながら光学フィルムを巻取りロールに巻き取るものである。かつ巻取りロールの手前には、光学フィルムの表面電位を除去または低減する除電ブロア等の手段が設けられている。
本発明の光学フィルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。なお、光学フィルムの巻取り時の初期巻取り張力が90.2〜300.8N/mであるのが好ましい。
本発明の方法における光学フィルムの巻き取り工程では、温度20〜30℃、湿度20〜60%RHの環境条件にて、光学フィルムを巻き取ることが好ましい。
このように、光学フィルムの巻き取り工程での温度及び湿度を規定することにより、厚み方向リターデーション(Rth)の湿度変化の耐性が向上する。
巻き取り工程における温度が20〜30℃の範囲であれば、シワの発生がなく、光学フィルム巻の品質劣化もない。
また、光学フィルムの巻き取り工程における湿度が20〜60%RHであれば、帯電しにくく、光学フィルム巻品質劣化も削減され、巻品質に優れ、貼り付き故障もなく、搬送性の劣化もない。
光学フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、どのような材質のものであってもよいが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度にも耐える耐熱性プラスチックであればどのようなものであってもよく、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
またガラス繊維等の充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。例えば、中空プラスチックコア:FRP製の外径6インチ(以下、1インチは2.54cmである。)、内径5インチの巻きコアが用いられる。
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることがさらに好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましく、光学フィルム基材の幅は80cm以上であることが好ましく、1m以上であることが特に好ましい。
本発明の光学フィルムの製造において、ロール長さは、生産性と運搬性を考慮すると、長さは10〜5000mが好ましく、より好ましくは50〜4500mである。
このときの光学フィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することができるが、1.2〜4.0m、好ましくは1.4〜3.0mの幅で光学フィルムを製造してロール状に巻き取ることが好ましい。
《光学フィルム》
本願において、「光学フィルム」とは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種表示装置に用いられる機能フィルムのことであり、詳しくは液晶表示装置用の偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルム等である。
光学フィルムの膜厚は10〜200μmが好ましく、25〜90μmが更に好ましい。フィルムがこの範囲より薄すぎると強度が不足し、厚すぎると偏光板作製工程などで生産性が低下する。
位相差フィルムを、VAモードまたはTNモードの液晶セルの表示品質の向上に適したリターデーション値を有するように調整し、特にVAモードとして上記のマルチドメインに分割してMVAモードに好ましく用いられるようにするには、面内リターデーションRoを30nmよりも大きく、95nm以下に、かつ厚み方向リターデーションRthを70nmよりも大きく、400nm以下の値に調整することが求められる。
上記の面内リターデーションRoは、二枚の偏光板がクロスニコルに配置され、偏光板の間に液晶セルが配置された構成であるときに、表示面の法線方向から観察するときを基準にしてクロスニコル状態にあるとき、表示面の法線から斜めに観察したとき、偏光板のクロスニコル状態からのずれが生じ、これが要因となる光漏れを、主に補償する。
厚さ方向のリターデーションは、上記TNモードやVAモード、特にMVAモードにおいて液晶セルが黒表示状態であるときに、同様に斜めから見たときに認められる液晶セルの複屈折を主に補償するために寄与する。
液晶表示装置において、液晶セルの上下に偏光板が二枚配置された構成である場合、厚み方向リターデーションRthの配分を選択することができ、上記範囲を満たしかつ厚み方向リターデーションRthの両者の合計値が140nmよりも大きくかつ500nm以下にすることが好ましい。
液晶表示装置において、一方の偏光板に例えば市販の偏光板保護フィルムとして面内リターデーションRo=0〜4nm及び厚み方向リターデーションRth=20〜50nmで厚さ35〜85μmのTACフィルムが使用されている場合、他方の偏光板に配置される位相差フィルムは、面内リターデーションRoが30nmよりも大きく95nm以下であり、かつ厚み方向リターデーションRthが140nmよりも大きく400nm以下であるものを使用することにより、表示品質が向上し、かつ光学フィルムの生産面からも好ましい。
本発明の光学フィルムは、隣接する山の頂点から谷の底点までの高さが300nm以上であり、傾きが300nm/mm以上の長手方向に連続するスジがないことが好ましい。
スジの形状は、表面粗さ計を用いて測定したもので、具体的には、ミツトヨ製SV−3100S4を使用して、先端形状が円錐60°、先端曲率半径2μmの触針(ダイヤモンド針)に測定力0.75mNの加重をかけながら、測定速度1.0mm/secで光学フィルムの巾方向に走査し、Z軸(厚み方向)分解能0.001μmとして断面曲線を測定する。
この曲線から、スジの高さは、山の頂点から谷の底点までの垂直距離(H)を読み取る。スジの傾きは、山の頂点から谷の底点までの水平距離(L)を読み取り、垂直距離(H)を水平距離(L)で除して求める。
偏光板保護フィルム製造に際し、帯電防止層、ハードコート層、易滑性層、接着層、防眩層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースエステルを含む組成物を共押出しして、積層構造の光学フィルムを作製することもできる。
積層構造としては、例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成を上げる事が出来る。
例えば、マット剤は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることができ、コア層のみに入れてもよい。
また、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。
スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていてもよく、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度が低いことが好ましい。
また、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも低いことが、表面の平滑性の点で好ましい。
(偏光板)
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。
アルカリ鹸化処理した本発明の光学フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面にも本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明の光学フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは市販の光学フィルムを用いることができる。
例えば、市販の光学フィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(以上、コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
あるいは、さらにディスコチック液晶、棒状液晶、コレステリック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることも好ましい。例えば、特開2003−98348号公報記載の方法で光学異方性層を形成することができる。
あるいは、環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等の光学フィルムをもう一方の面の偏光板保護フィルムとして用いてもよい。
本発明の光学フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、同6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、ホウ素化合物などで耐久性処理を行ったものが一般的に用いられている。
偏光膜の膜厚は5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
該偏光膜の面上に、本発明の光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
偏光膜は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸と垂直方向(通常は幅方向)には伸びる。偏光板保護用フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光膜の延伸方向の収縮量が大きい。
通常、偏光膜の延伸方向は偏光板保護用フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板保護用フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明の光学フィルムは極めて寸法安定性に優れるため、このような偏光板保護フィルムとして好適に使用される。
即ち60℃90%RHの条件での耐久性試験によっても波打ち状のむらが増加することはなく、耐久性試験後に視野角特性が変動することなく良好な視認性を提供することができる。
(液晶表示装置)
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルム(位相差フィルムを兼ねる場合も含む)として含む偏光板は、通常の偏光板と比較して高い表示品質を発現させることができ、特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置への使用に適している。
本発明の偏光板は、MVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード、OCB(Optical Compensated Bend)モード、IPS(In Plane Switching)モード等に用いることができ、特定の液晶モード、偏光板の配置に限定されるものではない。
液晶表示装置は本発明により表示品質が改良され、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
本発明の偏光板を液晶表示装置に用いる場合は、液晶表示装置の偏光板の内の少なくとも一つの偏光板を、本発明の偏光板とすればよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらにより限定されるものではない。
実施例1
(アクリル系重合体粉末の作製)
・アクリル系重合体粉末(L1)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに、純水380gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、メチルメタクリレート20.2g、メチルアクリレート2.9g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.8gを入れ、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.25gを一度に添加し、乳化剤ミセルが存在しない状態において単量体を重合する工程を開始した。そのまま80℃にて攪拌を60分継続し、シード粒子を得た。
引き続きこのシード粒子分散液に対して反応性乳化剤を含む単量体混合物の乳化液(メチルメタクリレート175g、メチルアクリレート25g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート50g、スルホコハク酸アルキルアルケニルエステルナトリウム塩(花王(株)製反応性乳化剤、商品名:ラテムルS−180)5.0g、純水125.0gを混合攪拌して乳化したもの)を2時間かけて滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、数平均分子量6000のアクリル系重合体分散液を得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤーを用いて、入口温度170℃、出口温度75℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、アクリル系重合体粉末(L1)を得た。
・アクリル系重合体粉末(L2、L3、L4)の調製
乳化剤の種類と量を表1のように変更した以外はL1と同様の方法でL2、L3、L4を作製した。
尚、L2、L3、L4作製の際用いた乳化剤は以下の通り、
アクアロンKH−05:ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキル硫 酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬(株)製)
ペレックスO−TP:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製)
・アクリル系重合体粉末(L5、L6、L7)の調製
重合開始剤をアゾビスイソブチロニトリル0.25gに変更し、乳化剤を表1記載のようにした以外はL1と同様の方法でL5、L6、L7を作製した。
・アクリル系重合体粉末(L8)の調製
メチルメタクリレート140g、メチルアクリレート20g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート40g、アゾビスイソブチロニトリル20g、トルエン600gを四つ口フラスコ(投入口、温度計、還流冷却管、窒素導入口、撹拌機を装着)に投入し、徐々に80℃まで昇温し、攪拌しながら5時間重合し、重合終了後ポリマー溶液を多量のメタノールに投入して沈殿させ、更にメタノールで洗浄し、精製して乾燥し数平均分子量6000のアクリル系重合体粉末L8を得た。
・アクリル系重合体粉末(L9)の調製
撹拌機、窒素ガス導入管、温度計、投入口及び還流冷却管を備えたフラスコにメチルメタクリレート140g、メチルアクリレート20g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート40g、ルテノセン0.1gを導入しながら内容物を70℃に加熱した。次いで、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸12gを攪拌下フラスコ内に添加し、温度を70℃に維持して2時間重合を行った。更に、窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸12gを追加添加後、更に書く範疇の内容物を70℃に維持して重合を4時間行った。反応物の温度を室温に戻し、反応物に5質量%ベンゾキノンのテトラヒドロフラン溶液を40g添加して重合を停止させた。重合物をエバポレーターで減圧下80℃まで徐々に加熱しながらテトラヒドロフラン、残存モノマー及び残存チオール化合物を除去してから粉末化し、数平均分子量6000のアクリル系重合体粉末L9を得た。
(光学フィルムのサンプル1−01の作製)
下記方法に従って、溶液流延法により光学フィルムのサンプル1−01を作製した。
(ドープ液Aの調製)
下記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行って、セルロースアセテートプロピオネートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープ液Aを得た。
メチレンクロライド 313質量部
エタノール 27質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.3、分子量Mn=86,000、Mw/Mn=2.5) 76質量部
上記アクリル系重合体粉末(L1) 20質量部
ペンタエリスリトール・テトラベンゾエート 4質量部
IRGANOX−1010(チバ・ジャパン株式会社製) 0.5質量部
PEP−36(ADEKA(株)製) 0.1質量部
Sumilizer−GS(住友化学社株式会社製) 0.3質量部
TINUVIN928(チバ・ジャパン株式会社製) 1.5質量部
シーホスターKEP−30(株式会社日本触媒製) 0.1質量部
上記のように調製したドープ液Aを、30℃に保温した流延ダイを通して、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる30℃の支持体上に流延してウェブを形成し、支持体上で乾燥させ、ウェブの残留溶媒量が80質量%になるまで支持体上で乾燥させた後、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
ついで、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で70℃の乾燥風にて乾燥させ、続いてテンターでウェブ両端部を把持した後、155℃で幅方向に1.3倍に延伸した。
テンターでの延伸の後、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で120℃の乾燥風にて乾燥させ、残留溶媒量0.3質量%まで乾燥させて膜厚80μmの光学フィルムのサンプル1−01を得た。
添加するアクリル系重合体粉末を表1のように変更した以外は光学フィルムのサンプル1−01と同様にして、光学フィルムのサンプル1−02〜1−10を得た。ただし、光学フィルムのサンプル1−10はアクリル系重合体粉末を添加していないサンプルである。
得られた光学フィルムのサンプル1−01〜1−10を用いて、耐久試験前のヘイズ、耐久試験後のヘイズ、膜厚方向のリターデーションRth、について評価した。
上記評価結果を表1に示す。
《耐久試験前のヘイズ》
光学フィルムのサンプル1−01〜1−10をJIS K 7136に記載の方法に従ってヘイズを測定した。測定は日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を使用した。
ヘイズは値が小さい方が好ましく、0.5%以下であれば実用上問題ないが、特に0.35%以下であることが好ましい。
《耐久試験後のヘイズ》
光学フィルムのサンプル1−01〜1−10を80℃90%RHのサーモに300時間投入し、耐久試験を行った。耐久試験後の光学フィルムのサンプル1−01〜1−10をJIS K 7136に記載の方法に従ってヘイズを測定した。測定は日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を使用した。
ヘイズは値が小さい方が好ましく、0.5%以下であれば実用上問題ないが、特に0.35%以下であることが好ましい。
《Rth》
前述の方法に従い、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、光学フィルムのサンプル1−01〜1−10のRthを測定した。
位相差機能を有しない偏光板保護フィルムとして光学フィルムを用いる場合、Rthが35〜75nmの範囲であれば実用上問題ないが、45〜65nmである事が好ましい。
表1から明らかな通り、本発明に係るサンプルの耐久試験後のヘイズ値が比較例より小さく、湿熱耐性に優れている事が分かる。
実施例2
(光学フィルムのサンプル2−01の作製)
下記の組成物2を用いて、溶融流延法により光学フィルムのサンプル2−01を作製した。
組成物2
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.3、分子量Mn=86,000、Mw/Mn=2.5) 76質量部
上記アクリル系重合体粉末(L1) 20質量部
ペンタエリスリトール・テトラベンゾエート 4質量部
IRGANOX−1010(チバ・ジャパン株式会社製) 0.5質量部
PEP−36(ADEKA(株)製) 0.1質量部
Sumilizer−GS(住友化学株式会社製) 0.3質量部
TINUVIN928(チバ・ジャパン株式会社製) 1.5質量部
シーホスターKEP−30(株式会社日本触媒製) 0.1質量部
上記組成物を80℃で6時間乾燥して水分率200ppm以下にし、真空ナウターミキサーで80℃、1Torrで3時間混合しながら更に乾燥して水分率50ppmにした。
得られた混合物を二軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。この際、混錬時のせん断による発熱を抑えるためニーディングディスクは用いずオールスクリュータイプのスクリューを用いた。
また、ベント孔から真空引きを行い、混錬中に発生する揮発成分を吸引除去した。なお、押出機に供給するフィーダーやホッパー、押出機ダイから冷却槽間は、乾燥窒素ガス雰囲気として、樹脂への水分の吸湿の防止や酸素の除去を行った。
第1冷却ロール及び第2冷却ロールは直径40cmのステンレス製とし、表面にハードクロムメッキを施した。又、内部には温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて、ロール表面温度を130℃に制御した。
弾性タッチロールは、直径20cmとし、内筒と外筒はステンレス製とし、外筒の表面にはハードクロムメッキを施した。外筒の肉厚は2mmとし、内筒と外筒との間の空間に温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて弾性タッチロールの表面温度を130℃に制御した。
上記ペレットを用いて窒素雰囲気下、250℃にて溶融して流延ダイから第1冷却ロール上に押し出し、第1冷却ロールと弾性タッチロールとの間に押出した溶融物を挟圧して成形し、膜厚240μmの光学フィルムを得た。膜厚は押出量と引取り速度を調整することによって制御した。
この時の流涎幅は1.5mであった。
この際、Tダイのリップクリアランス1.5mm、リップ部平均表面粗さRa0.01μmのTダイを用いた。また、第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールを線圧10kg/cmで押圧した。
得られた膜厚240μmの光学フィルムを、ロール周速差を利用した延伸機によって155℃で搬送方向に1.7倍に延伸した。次に予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、巾方向に155℃で1.8倍延伸した後、巾方向に2%緩和しながら30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、光学フィルム幅2.5m、膜厚80μmの光学フィルムのサンプル2−01を得た。
添加するアクリル系重合体粉末を表2のように変更した以外は光学フィルムのサンプル2−01と同様にして、光学フィルムのサンプル2−02〜2−10を得た。ただし、光学フィルムのサンプル2−10はアクリル系重合体粉末を添加していないサンプルである。
得られた光学フィルムのサンプル2−01〜2−10を用いて、耐久試験前のヘイズ、耐久試験後のヘイズ、膜厚方向のリターデーションRth、について評価した。
上記評価結果を表2に示す。
表2から明らかな通り、本発明に係るサンプルの耐久試験後のヘイズ値が比較例より小さく、湿熱耐性に優れている事が分かる。
実施例3
アクリル系重合体粉末の添加量を表3のように変更した以外は光学フィルムのサンプル2−01と同様の方法で光学フィルムのサンプル3−01〜3−05を作製した。
得られた光学フィルムのサンプル3−01〜3−05を用いて、耐久試験前のヘイズ、耐久試験後のヘイズ、膜厚方向のリターデーションRth、について評価した。
尚、表3で用いたモノマーは以下の通り、
MMA:メチルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
上記評価結果を表3に示す。
表3から明らかな通り、本発明に係るサンプルのアクリル系重合体の添加量を調節することで、湿熱耐性をより改良できる事が分かる。
実施例4
・アクリル系重合体粉末(L10〜L13)の調製
アクリル系重合体の数平均分子量を表4のように変更した以外はL1と同様の方法でL10〜L13を作製した。数平均分子量は重合開始剤の添加量と重合時の攪拌条件などを調整する事で制御した。
アクリル系重合体粉末の種類を表4のように変更した以外は光学フィルムのサンプル2−01と同様の方法で光学フィルムのサンプル4−01〜4−05を作製した。
得られた光学フィルムのサンプル4−01〜4−05を用いて、耐久試験前のヘイズ、耐久試験後のヘイズについて評価した。
上記評価結果を表4に示す。
表4から明らかな通り、本発明に係るサンプルのアクリル系重合体の分子量を調節することで、湿熱耐性をより改良できる事が分かる。
実施例5
・アクリル系重合体粉末(L14〜L21)の調製
アクリル系重合体粉末の単量体組成を表5のように変更した以外はL1と同様の方法でL14〜L21を作製した。
アクリル系重合体粉末の種類を表5のように変更した以外は光学フィルムのサンプル2−01と同様の方法で光学フィルムのサンプル5−01〜5−09を作製した。
得られた光学フィルムのサンプル5−01〜5−09を用いて、耐久試験前のヘイズ、耐久試験後のヘイズについて評価した。
尚、表5で用いたモノマーは以下の通り、
ACMO:アクリロイルモルフォリン
VPd:N−ビニルピロリドン
上記評価結果を表5に示す。
表5から明らかな通り、本発明に係るサンプルのアクリル系重合体の単量体の組成を調節することで、湿熱耐性をより改良できる事が分かる。
実施例6
セルロースエステルの置換度を表6のように変更した以外は光学フィルムのサンプル2−01と同様の方法で光学フィルムのサンプル6−01〜6−08を作製した。
得られた光学フィルムのサンプル6−01〜6−08を用いて、耐久試験前のヘイズ、耐久試験後のヘイズ、膜厚方向のリターデーションRth、について評価した。
上記評価結果を表6に示す。
表6から明らかな通り、本発明に係るサンプルのセルロースエステルの置換度を調節することで、湿熱耐性をより改良できる事が分かる。
実施例7
組成物7
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換 度1.3、分子量Mn=86,000、Mw/Mn=2.5) 74質量部
上記アクリル系重合体粉末(L1) 20質量部
ペンタエリスリトール・テトラベンゾエート 4質量部
RS−735(ADEKA(株)製) 2質量部
IRGANOX−1010(チバ・ジャパン株式会社製) 0.5質量部
PEP−36(ADEKA(株)製) 0.1質量部
Sumilizer−GS(住友化学社株式会社製) 0.3質量部
TINUVIN928(チバ・ジャパン株式会社製) 2.2質量部
シーホスターKEP−30(株式会社日本触媒製) 0.1質量部
組成物7を用いて実施例2と同様の方法で膜厚120μmの光学フィルムを溶融製膜し、次いでロール周速差を利用した延伸機によって155℃で搬送方向に1.7倍に延伸した。次に予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、巾方向に155℃で1.8倍延伸した後、巾方向に2%緩和しながら30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、膜厚40μmの光学フィルムのサンプル7−01を得た。得られた光学フィルムの幅は2.5mであった。
エーテルエステル化合物の種類と量を表4のように変更した以外はサンプル光学フィルムの7−01と同様にして、光学フィルムのサンプル7−02〜7−07を得た。ただし、光学フィルムのサンプル7−07はエーテルエステル化合物を添加していないサンプルである。
得られた光学フィルムのサンプル7−01〜7−07を用いて、引裂き強度、ブリードアウトについて評価した。
《引裂き強度》
JIS K 7128−2にしたがってエルメンドルフ法の引裂き強度を測定した。測定は東洋精機製作所(株)製 軽荷重引裂試験機 型式 D を使用して行った。
引裂き強度は値が大きい方が光学フィルムが裂け難く、リワーク性が良好になる。液晶セルに偏光板を貼り付けた後に泡などの故障が見つかった場合、偏光板を液晶セルから剥がす工程があるが、光学フィルムが避け易いと液晶セルに偏光板の剥離残りが発生し、液晶セルを廃棄しなければならない。綺麗に剥離できれば液晶セルは再利用できる。この偏光板の剥がし易さをリワーク性と呼んでいる。リワーク性は大型ディスプレイになるほど重要性が増す。
引裂き強度は45mN以上であれば実用上問題ないが、60mN以上であることが好ましく、100mN以上であることが特に好ましい。
《ブリードアウト》
光学フィルムのサンプル7−01〜7−07を80℃90%RHのサーモに300時間投入した。また、それとは別に60℃90%RHのサーモに1000時間投入した。サーモから取り出したサンプルを目視でブリードアウトの有無を調べ、以下の基準でランク付けをした。
○:80℃90%RH、60℃90%RHともに発生無し。
△:60℃90%RHで発生無く、80℃90%RHで部分的に発生している。
×:60℃90%RHで発生、または80℃90%RHで前面に発生。
ブリードアウトは○レベルが好ましいが、△レベルであれば実用上問題ない。×レベルでは使用環境によっては表面汚れなどの問題が発生する可能性があり好ましくない。
上記評価結果を表7に示す。
表7から明らかな通り、本発明に係るサンプルにエーテルエステル化合物を適量添加することで、引裂き強度とブリードアウトに優れたサンプルを得る事ができる事が分かる。