つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明による光学フィルムの製造方法を溶液流延製膜法によって行なう場合には、対象となる樹脂としては、セルロースエステル系樹脂が好ましく用いられ、セルロースエステル系樹脂としては、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが好ましく用いられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましい。
セルローエステルは、綿花リンターから合成されたセルローエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを、単独あるいは混合して用いることができる。
本発明において好ましく用いられるセルロースエステル系樹脂の具体的な製造方法については、例えば特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
セルロースエステルの数平均分子量は、低すぎると強度が低くなり、高すぎると溶液の粘度が高くなりすぎる場合があるので、70000〜300000が好ましく、さらに80000〜200000が好ましい。
エンドレスベルトやドラムよりなる回転駆動金属製支持体からの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産性効率が高く、好ましい。また、剥離性の効果が顕著になるためには、綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは85質量%以上、さらには、単独で使用することが最も好ましい。
特に、総アシル基置換度が2.85未満のセルロースエステルフィルムで、寸法変化を低減できるため好ましく、さらに総アシル基置換度が2.75未満のセルロースエステルフィルムであることが好ましく、特に2.70未満のセルロースエステルフィルムで著しい効果が認められる。
本発明において、セルロースエステル系樹脂フィルムよりなる光学フィルムには、液晶表示装置として屋外に置かれた場合の劣化防止の観点から紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものを好ましく用いることができる。例えば波長380nmにおける透過率が20%であることが好ましく、さらに、好ましくは10%未満であり、特に好ましくは5%未満である。
紫外線吸収剤としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、ドリアジン系化合物などを挙げることができるが、本発明は、これらに限定されない。
以下、紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明は、これらに限定されない。
UV−1:2(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2(2′−ヒドロキシ−3′tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール
UV−5:2(2′−ヒドロキシ−3′(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−クロルベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171:チバスペシャリティケミカルズ社製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと混合物(TINUVIN109:チバスペシャリティケミカルズ社製)
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明において、光学フィルムには、紫外線吸収剤として透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を好ましく用いることができ、中でも、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。紫外線吸収剤は、製膜工程でブリードアウトしたり、揮発しないものが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に、特開平6−148430号公報記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
本発明において、紫外線吸収剤は、樹脂成分に対し、0.1〜10質量%添加されることが好ましく、特に、0.5〜5質量%添加されることが好ましい。
また、本発明においては、これら紫外線吸収剤を単独で用いても良いし、異なる2種以上の混合で用いても良い。
紫外線吸収剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソシランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
また本発明において、光学フィルムには、必要に応じて、マット剤として二酸化ケイ素のような微粒子などを加えても支障はない。二酸化ケイ素のような微粒子は、有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため、好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなとが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果が大きく、平均粒径の小さい方が透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒状の平均粒径は、5〜50nmで、より好ましくは7〜14nmである。
本発明において、用いられる二酸化ケイ素の微粒子としては、アエロジル株式会社製のAEROSIL−200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600などが挙げられ、好ましくは、AEROSIL−200、200V、R972、R972V、R974、R202、R812などが挙げられる。
本発明において、上記微粒子は樹脂に対して、0.04〜0.4質量%、好ましくは、0.05〜0.3質量%、さらに好ましくは0.05〜0.2質量%添加して使用される。
本発明の方法において、樹脂の溶解に用いる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率を上げる点で好ましく、良溶剤が多いほど、樹脂の溶解性および微小な不溶解物によるフィルム異物を少なくする点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が30〜2質量%である。
ここで、本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用する樹脂を単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか、または溶解しないものを貧溶剤と定義している。
本発明に用いられる良溶剤としては、特に限定されないが、例えば樹脂がセルローストリアセテートの場合は、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、セルロースアセテートプロピオネートの場合はメチレンクロライド、アセトン、酢酸メチルなどが挙げられる。また、貧溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
溶液流延製膜法によるセルロースエステル系樹脂フィルムよりなる光学フィルムの製造方法は、例えば米国特許2,492,978号、同2,739,070号、同2,739,069号、同2,492,977号、同2,336,310号、同2,367,603号、同2,607,704号、英国特許64,071号、同735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号公報等に記載の方法を、参考にすることができる。
本発明の光学フィルムの製造方法において、機械的強度や寸法安定性等の点から、光学フィルムに可塑剤を添加することが好ましい。その添加量としては、例えば光学フィルムがセルロースエステルフィルムである場合、セルロースエステルフィルムあるいはセルロースをアセチル基および炭素原子数3〜4のアシル基でアシル化したセルロースエステルフィルムに対する質量%で、3〜30質量%にすることが好ましく、10〜30質量%が、より好ましく、15〜25質量%が特に好ましい。一般に、可塑剤添加量が増加すると寸法変化しやすくなるが、本発明の方法によれば、寸法変化率を著しく低減させることができる。
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができる。
ここで、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等を好ましく用いることができる。またフタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等を好ましく用いることができる。トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等を好ましく用いることができる。ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等を好ましく用いることができる。グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を好ましく用いることができる。クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。ポリエステル系可塑剤では、脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることができる。なお、グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、二種以上混合して用いても良い。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロース樹脂との相溶性の点から好ましい。
また、本発明の方法においては、特に200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、さらに好ましくは1〜133Paの可塑剤である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独あるいは2種以上併用して用いることができる。
本発明による光学フィルムの製造方法において、光学フィルムがセルロースエステルフィルムである場合、セルロースエステル溶液であるドープの固形分濃度は、通常10〜40質量%程度であり、流延工程における流延時のドープ粘度は1〜200ポイズの範囲で調製される。
ここで、まず、セルロースエステルの溶解は、溶解釜中での撹拌溶解方法、加熱溶解方法、超音波溶解方法等の手段が、通常用いられ、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、特開平9−95538号公報記載の冷却溶解方法、あるいはまた特開平11−21379号公報記載の高圧下で溶解する方法なども用いてもよい。
セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤、あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。このとき、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させる装置と、良溶剤と混合して溶解する装置を別々に分けても良い。
本発明において、セルロースエステルの溶解に用いる加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、その他、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易であるので、好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用する溶剤の沸点以上で、2種類以上の混合溶剤の場合は、沸点が低い方の溶剤の沸点以上の温度に加温しかつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましい。加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は20〜120℃であり、30〜100℃が、より好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。また圧力は、設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
セルロースエステルと溶剤の他に、必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
セルロースエステルの溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して、熱交換器などで冷却し、得られたセルロースエステルのドープを製膜に供するが、このときの冷却温度は、常温まで冷却してもよい。
セルロースエステル原料と溶媒の混合物は、撹拌機を有する溶解装置で溶解し、このとき、撹拌翼の周速は少なくとも0.5m/秒以上で、かつ30分以上撹拌して溶解することが好ましい。
本発明の方法において、セルロースエステルドープは、これを濾過することによって、異物、特に液晶表示装置において、画像と認識し間違う異物は、これを除去しなければならない。光学フィルムとしての品質は、この濾過によって決まるといってもよい。
濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行なわなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、本発明の方法において、セルロースエステルドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材がさらに好ましい。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく、好ましい。
本発明の方法において、セルロースエステルドープの濾過は通常の方法で行なうことができるが、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい濾過温度の範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下がより好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
原料のセルロースに、アシル基の未置換もしくは低置換度のセルロースエステルが含まれていると、異物故障(以下、輝点または輝点異物ということがある)が発生することがある。輝点は、直交状態(クロスニコル)の2枚の偏光板の間にセルロースエステルフィルムを置き、光を片側から照射して、その反対側から光学顕微鏡(50倍)で観察すると、正常なセルロースエステルフィルムであれば、光が遮断されていて、黒く、何も見えないが、異物があると、そこから光が漏れて、スポット状に光って見える現象である。輝点の直径が大きいほど、液晶表示装置とした場合に、実害が大きく、輝点の直径は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下が、より好ましく、さらに8μm以下が好ましい。なお、輝点の直径とは、輝点を真円に近似して測定する直径を意味する。
輝点異物は、上記の直径のものが400個/cm2以下であれば、実用上問題ないが、300個/cm2以下が好ましく、200個/cm2以下が、より好ましい。このような輝点異物の発生数、及び大きさを減少させるために、細かい異物を充分に濾過する必要がある。
なお、例えば特開2000−137115号公報に記載されるような、一度製膜したセルロースエステルフィルムの粉砕品を、ドープにある割合で再添加して、セルロースエステル及びその添加剤の原料とする方法は、輝点異物を低減することができるため、好ましく用いることができる。
つぎに、本発明の方法により、光学フィルムを製造するには、光学フィルムがセルロースエステル系樹脂フィルムである場合、まず、セルロースエステルを、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに上記の可塑剤や紫外線吸収剤を添加してセルロースエステル溶液(ドープ)を調製する。
製膜時のベルト温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で流延することができ、さらには5℃〜溶剤沸点−5℃の範囲で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。このとき、周囲の雰囲気湿度は露点以上に制御する必要がある。
また、ドープ粘度が1〜200ポイズになるように調整されたドープを、流延ダイから支持体上にほぼ均一な膜厚になるよう流延し、流延膜中の残留溶媒量が対固形分質量200%以上では、流延膜温度が溶剤沸点以下に、また200%以下〜剥離までは、溶剤沸点+20℃以下の範囲になるように、乾燥風により流延膜(ウェブ)を乾燥させる。
支持体上では、ウェブが支持体から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ウェブ中の残留溶媒量が150質量%以下まで乾燥させるのが好ましく、50〜120%が、より好ましい。
支持体からウェブを剥離するときのウェブ温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブは、支持体からの剥離直後に、支持体密着面側からの溶媒蒸発で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気など揮発性成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの質量である。
ウェブ(またはフィルム)の乾燥工程では、一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式またはクリップテンター方式でウェブを搬送しながら乾燥する方式が採られる。
剥離後のウェブは、例えば一次乾燥装置に導入する。一次乾燥装置内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロールによってウェブが蛇行せられ、その間にウェブは乾燥装置の天井より吹き込まれ、乾燥装置の底の部分より排出される温風によって乾燥される。
ついで、ウェブはテンター乾燥装置に導入する。そこで、ウェブの両側縁部をクリップで把持して延伸するとともに、ウェブを乾燥する。
液晶表示部材用としては、ウェブの両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンター方式が知られており、平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
特に、支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは幅方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法/テンター方式が好ましい。
テンターでの把持・延伸は、剥離直後の膜の残留溶媒量が50〜150質量%から巻き取り直前の実質的な残留溶媒量が0質量%の範囲のどこで行なうこともできるが、残留溶媒量が5〜30%の範囲で行なうのが好ましいのは、本発明の通りである。
テンターをベースの走行方向にいくつかの温度ゾーンに分けることも一般によく行なわれる。延伸する際の温度は所望の物性や平面性が得られるような温度が選択されるが、テンター前後の乾燥ゾーンの温度はまた種々の理由により延伸の際の温度とは異なる温度が選択されることもある。例えば、テンター前の乾燥ゾーンの雰囲気温度がテンター内の温度と異なる場合は、テンター入り口に近いゾーンの温度を、テンター前の乾燥ゾーンの温度とテンター中央部の温度の中間的な温度に設定することが一般に行なわれている。テンター後とテンター内の温度が異なる場合にも同様にテンター出口に近いゾーンの温度をテンター後とテンター内の温度の中間的な温度に設定する。テンター前後の乾燥ゾーンの温度は一般に30〜120℃であり、好ましくは50〜100℃、テンター内延伸部の温度は50〜180℃、好ましくは80〜140℃であり、テンター入り口部あるいは出口部の温度はそれらの中間的な温度から適宜選択される。
また、フィルムの延伸倍率もまた所望の物性や平面性が得られるような倍率が選択される。例えばセルロースエステル系樹脂の場合は、0〜150%、好ましくは0〜50%である。
フィルムの延伸のパターン、すなわち把持クリップの軌跡は、温度同様に膜の光学物性や平面性から選択され、様々であるが、把持開始後しばらくは一定幅で、その後延伸され、延伸終了後再び一定幅で保持されるパターンが良く用いられる。テンター出口付近のクリップ把持終了する付近では、把持を開放することによるベース振動の抑制のために幅緩和を行なうことが一般に行なわれる。
延伸のパターンはまた延伸速度とも関連するが、延伸速度は一般的には10〜1000(%/min)好ましくは100〜500(%/min)である。この延伸速度はクリップの軌跡が曲線である場合には一定でなく、ベースの走行方向に徐々に変化する。
さらに、上記のテンター方式による乾燥後のウェブ(フィルム)は、ついで二次乾燥装置に導入する。二次乾燥装置内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロールによってウェブが蛇行せられ、その間にウェブは、二次乾燥装置の天井より吹き込まれ、かつ二次乾燥装置の底の部分より排出される温風によって乾燥され、セルロースエステルフィルムとして巻取り機に巻き取られる。
本発明のセルロースエステル系樹脂フィルムよりなる光学フィルムの製造方法において、ウェブを乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で乾燥するのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃が好ましく、80〜130℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
このように、ウェブの乾燥工程においては支持体より剥離したウェブをさらに乾燥し、最終的に、残留溶媒量を3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
なお、搬送乾燥工程を終えた光学フィルムに対し、巻取工程に導入する前段において、エンボス加工装置により、光学フィルムの両側縁部にエンボスを形成する加工を行なうのが好ましい。エンボス加工装置としては、例えば特開昭63−74850号公報に記載されている装置が利用できる。
本発明の方法において、光学フィルムの製造に係わる巻取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
本発明の方法において、巻き取り後の光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、本発明において使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に80μm以下、好ましくは20〜60μm、さらに好ましくは30〜50μmである。
本発明による光学フィルムの製造方法は、光学フィルムの製膜ライン中に搬送されるフィルムに、いわゆるねじり力を与えて配向角を制御する方法であり、適切な温度および搬送ロールのロールの軸調整を行なうこと、すなわち、溶液流延製膜法によるセルロースエステル系樹脂よりなる光学フィルムの製膜において、フィルム中の残留溶媒量が10〜70質量%の範囲で、出来上がりのフィルムの配向角の巾手平均値の正負に応じて、1本あるいは複数本の搬送ロールのロール軸の配置方向を、フィルム搬送方向と垂直な方向に対して0°より大きく5°以下の角度の範囲で調整するものである。この場合、フィルムが搬送乾燥される雰囲気温度が30〜140℃の範囲において実施するのが好ましい。
このような本発明によれば、溶液流延製膜法において、フィルム中の残留溶媒量の範囲とフィルム温度とを適切に選んで、ロール軸の調整を行なうことで、シワ等のトラブルなく、高精度のフィルムの配向角分布を達成することができ、フィルムの略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルムを製造し得る。
ここで、本発明でいう配向角とは、熱可塑性樹脂フィルムの面内における遅相軸の方向(流延製膜時の幅手方向に対する角度)を表わし、また配向角の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADHを用いて行なう。配向角の測定方法は、フィルム幅手方向に3〜10cm間隔で、例えば5点で測定を行ない、全ての配向角が±1.7°になっていることが好ましく、±1.5°以内がより好ましく、±1.0°以内がさらに好ましい。
具体的な制御の方法を図を用いて説明する。配向角は、フィルムの面内リターデーションの遅相軸の向きで定義される。図1に示すように、遅相軸の向きがフィルムの搬送方向に略直交する場合、搬送方向と垂直な方向を0°とし、逆時計回り方向を正の値と定義する。また、遅相軸の向きがフィルムの搬送方向に略平行する場合には、図2に示すように、搬送方向を0°とし、逆時計回りの方向を正と定義する。
出来上がったフィルムの幅手の配向角を上記定義に基づき複数点測定し、それらの平均値の正負に応じて、ロールの角度を変更することで、配向角を望ましい値である0°に近づけることが可能である。図3のようなロール配置において、フィルム上面(紙面上方)より測定した配向角の平均値が正の場合、図4のように配向角測定面から見て進行方向右側のフィルムのパス長が長くなるようにロールの軸の配置方向を変更することで、配向角の平均値を0に近づけることができる。変更するロール軸の配置方向としては、フィルムの同じ側のパス長が長くなるような構成であれば、図4のような水平方向以外にも、図5のような垂直方向あるいは、図6のような斜め方向などでもよいし、図示していないが複数本のロール軸配置方向を同時に変更しても良い。複数本のロール軸の配置方向を変更する場合は、連続するロールでもよいし、離れた位置にある複数のロール軸の配置方向を変更しても良い。
ロール軸の配置方向の調整は、小さすぎると配向角を矯正する効果がなく、大きすぎると搬送されるフィルムのツレやシワが発生するため、適切な値の範囲がある。ロール軸の配置方向はフィルムの搬送方向と垂直な方向に対して、0°より大きく5°以下の範囲の角度に調整することが望ましい。
また、配向角の矯正効果を最大限に発揮するために、前記したように溶液流延の場合はフィルムの残留溶媒量が10〜70質量%であることが望ましい。残留溶媒量が小さすぎると配向角の矯正効果が小さく、残留溶媒量が大きすぎるとロール軸の配置方向を変更した際にフィルムにシワがよってしまう。
光学フィルムの製造において、製膜ラインにフィルムの搬送方向あるいは搬送方向と直角な方向に延伸するような延伸設備を設ける場合もあるが、本発明は延伸設備の有無に関わらず有効である。延伸設備がある場合は延伸設備の前のロール軸の配置方向を変更しても良いし、延伸設備の後のロール軸の配置方向を変更しても良い。さらに延伸設備の前および後のロール軸の配置方向を同時に変更しても良い。
つぎに、本発明の光学フィルムの製造方法は、溶融流延製膜法による場合がある。ここで、溶融流延製膜法としては、膜厚ムラやリタデーションのムラを小さくできるTダイを用いた方法が好ましい。Tダイを用いた押出し方法では、ポリマーを溶融可能な温度で溶融し、Tダイからフィルム状(シート状)の溶融樹脂を冷却ドラム(支持体)上に押し出す。引き続いて、冷却ドラムによってフィルム状(シート状)の溶融樹脂を冷却固化して、冷却ドラムから樹脂フィルムを剥離する。
つぎに、本発明による光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法によって行なう場合には、対象となる熱可塑性樹脂は、溶融流延製膜法により製膜可能であれば特に限定されない。
例えば、ポリカーボネート(ガラス転移温度Tg:約150℃)、脂環式構造含有ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステル系樹脂などが挙げられる。中でも、光弾性係数が小さいことから、セルロースエステルや脂環式構造含有ポリマーが好ましい。
セルロースエステル系樹脂としては、セルロースアセテートプロピオネート(ガラス転移温度Tg:約170℃)、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましい。上記セルロースエステルのアセチル基の置換度は、少なくとも1.5以上であることが、得られるフィルムの寸法安定性に優れるので好ましい。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。セルロースエステルの分子量は、数平均分子量として50000〜300000、とくに60000〜200000であることが、得られるフィルムの機械的強度が強くできるので好ましい。
脂環式構造含有ポリマーとは、繰り返し単位中に、脂環式構造を有するポリマーであり、脂環式構造は主鎖、側鎖のいずれにあってもよい。脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、熱安定性に優れることからシクロアルカン構造が好ましい。
脂環式構造含有ポリマーは、ノルボルネン環構造を有するモノマー、モノ環状オレフィン、環状共役ジエン、ビニル芳香族化合物及びビニル脂環式炭化水素化合物等を含むモノマーを、メタセシス開環重合や付加重合などの公知の重合方法で重合し、必要に応じて炭素−炭素不飽和結合を水素添加することにより得ることができる。
本発明に用いる脂環式構造含有ポリマーは、シクロヘキサン溶液(ポリマーが溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、25000〜50000であることが好ましく、30000〜45000であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、1.2〜3.5であることが好ましく、さらに1.5〜3.0であることが好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)は、80〜200℃であることが好ましい。脂環式構造含有ポリマーの特性を上記の範囲にすることで、良好な耐熱性と成形加工性とを得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂中には、種々の目的で可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤、帯電防止剤、難燃剤、染料及び油剤などの添加剤を含有させることができる。
可塑剤としては、前記の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いるものと、ほゞ同様のものを使用することができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が適当であり、その具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。とくに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、その効果を得るために、熱可塑性樹脂に対し、質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがとくに好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法が、溶融流延製膜法による場合において、使用し得る紫外線吸収剤としては、前記の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いるものと、ほゞ同様のものを使用することができる。
これらの紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂に対して、0.01〜10質量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5質量%が好ましい。使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不充分の場合があり、逆に多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
本発明では、フィルムの滑り性を付与するために微粒子を添加することが好ましい。本発明で用いられる微粒子としては、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物のどちらでもよく、例えば、無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。中でもヘイズを小さく抑えることができることから、二酸化珪素が特に好ましく用いられ、本発明の光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法にて実施する場合においても、前記の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いるものと、ほゞ同様のマット剤を使用することができる。
本発明の光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法にて実施する場合、溶融流延製膜法としては、Tダイを用いた方法やインフレーション法などの溶融押出し法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などがある。中でも、厚さムラが小さく、50〜500μm程度の厚さに加工しやすく、かつ、膜厚ムラやリタデーションのムラを小さくできるTダイを用いた方法が好ましい。Tダイを用いた押出し方法は、前述したポリマーを溶融可能な温度で溶融し、Tダイからフィルム状(シート状)に冷却ドラム上に押し出し、冷却固化して冷却ドラムから剥離する方法であり、得られるフィルムの厚み精度が優れており、本発明でも好ましく用いることができる。
溶融押出しの条件は他のポリエステルなどの熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行なうことができる。例えば、熱風や真空または減圧下で乾燥したセルロースエステルを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状(シート状)に流延し、冷却ドラム上で固化させる。供給ホッパーから押出し機へ導入する際は、減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行なうことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、ろ過精度を調整できる。ろ過精度を粗、密と連続的に複数回繰り返した多層体としたものが好ましい。また、ろ過精度を順次上げていく構成をとったり、ろ過精度の粗、密を繰り返す方法をとることで、フィルターのろ過寿命が延び、異物やゲルなどの捕捉精度も向上できるので好ましい。
ダイに傷や異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインと呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出し機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。ダイ周辺に樹脂から揮発成分が析出しダイラインの原因となる場合があるので、揮発成分を含んだ雰囲気は吸引することが好ましい。また、静電印加等の装置にも析出する場合があるので、交流を印加したり、他の加熱手段で析出を防止することが好ましい。
可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ドラムの温度は熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下が好ましい。冷却ドラムへ樹脂を密着させるために静電印加により密着させる方法、風圧により密着させる方法、全幅あるいは端部をニップして密着させる方法、減圧で密着させる方法などを用いることが好ましい。
このような溶融流延製膜法で成形された熱可塑性樹脂シートは、溶液流延製膜法で成形された樹脂シートと異なり、厚み方向リタデーション(Rt)が小さいとの特徴があり、溶液流延製膜法とは異なる延伸条件が必要になる場合もある。所望の光学物性を得るためには、場合によっては、フィルムの進行方向の延伸とフィルム幅手方向の延伸の両者を同時あるいは逐次に行なうこともある。また、場合によっては、フィルム幅手方向の延伸のみの場合もある。この延伸操作によって分子が配向され、フィルムが必要なリタデーション値に調整される。
延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。延伸方向は長さ方向でも幅手方向でも任意の方向(斜め方向)でも可能であるが、延伸方向を幅手方向とすることにより、偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。幅手方向に延伸することにより、熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルムの遅相軸は幅手方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常幅手方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、シートを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)−50℃〜Tg+50℃、好ましくはTg−40℃〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると、所望のリタデーションが得られない場合があり、逆に大きすぎると、破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると、破断し、また高すぎると、所望のリタデーションが得られない場合がある。
上記の方法で作製した熱可塑性樹脂フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることにより、フィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。
延伸後、巻取りまでに平面性矯正、寸法安定性向上等の目的で熱処理ゾーンを設ける場合もある。例えば数十秒〜数十分の間、シートを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)−30℃〜Tgの温度になるように保ち、千鳥状配置されたロール間を搬送させるゾーンを設ける場合もある。
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、本発明において使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。膜厚は、所望の厚さになるように、押出し流量、ダイスの口金のスリット間隙、冷却ドラムの速度等をコントロールすることにより、調整できる。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
以上のようにして得られた幅手方向に延伸された熱可塑性樹脂フィルムは、延伸により分子が配向されて、一定のリタデーションを持つ。
本発明による光学フィルムの製造方法は、光学フィルムの製膜ライン中に搬送されるフィルムに、いわゆるねじり力を与えて配向角を制御する方法であり、適切な温度および搬送ロールのロールの軸調整を行なうこと、すなわち、溶融流延製膜法によるセルロースエステル系樹脂よりなる光学フィルムの製膜において、溶融樹脂の流延、フィルムの剥離後、フィルム温度が、該フィルムのガラス転移温度(Tg)±30℃の範囲において、出来上がりのフィルムの配向角の巾手平均値の正負に応じて、1本あるいは複数本の搬送ロールのロール軸の配置方向を、フィルム搬送方向と垂直な方向に対して0°より大きく5°以下の角度の範囲で調整するものである。
溶融流延製膜法の場合は、フィルム温度がフィルムのガラス転移点±30℃の範囲であることが望ましい。フィルム温度が低すぎる場合は配向角の矯正効果が小さく、フィルム温度が高すぎる場合はロール軸の配置方向を変更した際にフィルムにシワがよってしまう。
なおここで、フィルムのガラス転移温度(Tg)とは、フィルムの主材である樹脂、添加剤、及び溶剤を含むフィルム組成物のガラス転移温度(Tg)を意味する。
ガラス転移温度(Tg)の測定は、一般に知られる、熱機械分析装置(TMA)、示差走査熱量計(DSC)、示差熱分析装置(DTA)、動的粘弾性測定装置(DMA)などを用いて測定可能である。
このような本発明によれば、溶融流延製膜法において、剥離後、搬送中フィルム温度の範囲を適切に選んで、搬送ロールのロール軸の調整を行なうことで、シワ等のトラブルなく、高精度のフィルムの配向角分布を達成することができ、フィルムの略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルムを製造し得るものである。
さらに、本発明では、上記のうちのいずれかの光学フィルムの製造方法による光学フィルムの製膜において、オンラインでフィルムの配向角を測定し、その結果により搬送ロールのロール軸の設置方向を調整するものである。
このような本発明によれば、オンラインでフィルムの製膜中に配向角を測定しながら、その情報に基づいて即時に配向角の調整を実施することができ、生産性に優れている。
本発明の方法により製造された光学フィルムは、偏光フィルムの少なくとも片面に貼り合わせることにより、楕円偏光板とすることができる。
偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、充分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
偏光板は、上記偏光フィルムに本発明による光学フィルムを貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の光学フィルムを保護フィルムも兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。
さらに、長さ方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の光学フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
このようにして得られた本発明の偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜9、比較例1〜8
本発明の方法により、溶液流延製膜法によるセルロースアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造した。
(ドープの調製)
まず、セルロースアセテートプロピオネートのドープを、以下のように調製した。
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
(アセチル基置換度1.95、プロピオニル基置換度0.7、)
トリフェニルホスフェート 10質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルロースアセテートプロピオネートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープを得た。
上記のように調製したドープを、30℃に保温した流延ダイを通して、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる30℃の支持体上に流延してウェブ(ドープ膜)を形成し、そして最終的に、ウェブ中の残留溶媒量が80質量%になるまで支持体上で乾燥させた後、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
ついで、ウェブを、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で乾燥させ、続いてテンターよりなる延伸機に導入して、ウェブ両端をクリップではさみ、残留溶媒が存在する条件下で、実質的に幅手方向に延伸し、乾燥風を当てて乾燥させた。
さらに、ウェブ(フィルム)を、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で乾燥させ、巻取り機により巻き取り、最終的に膜厚60μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
この実施例においては、延伸機前に温度60℃の加熱室を設置し、そこにロール軸の配置角度を調整できる搬送ロール2本を設置して、各搬送ロールのロール軸の配置角度を適宜調整して、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの延伸を行った。ここで、ロール軸の配置角度は図4のφで示される角度で、フィルムの搬送方向を0°とし、逆時計回りに増加する方向に測定した角度である。各搬送ロールのロール軸の配置角度を、90°−2°すなわち88°に調整しておき、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの延伸を行なった。
実施例1〜9では本発明の範囲内であるロール軸配置角度を85°以上90°未満とし、かつフィルムの残留溶媒量を10〜70%に変化させた。比較例1〜11ではロール軸配置角度および残留溶媒量を本発明の範囲外とした。
こうして、出来たセルロースアセテートプロピオネートフィルムの配向角を、王子計測器KOBRA−21ADHで幅手方向に5点測定した。得られた結果を、下記の表1に示した。
なお、表1には、つぎの基準で、フィルムの配向角の均一性を評価した。
A:平均配向角の絶対値が1.0°以下且つ最大配向角と最小配向角の差が1.5°以下であり、配向角特性が非常に優れており、位相差フィルムや視野角拡大フィルムとして非常に適していた。
B:平均配向角の絶対値が1.0°以下であるが、最大配向角と最小配向角の差が1.5°以上であり、配向角分布が大きいが、平均配向角が抑えられており、位相差フィルムや視野角拡大フィルムとして充分使用可能であった。
C:平均配向角の絶対値が1.0°以上であるが、最大配向角と最小配向角の差が1.5°以下であり、平均配向角が大きいが、配向角の分布は抑えられており、実用上は位相差フィルムや視野角拡大フィルムとして使用可能であった。
D:平均配向角の絶対値が1.0°以上であり、最大配向角と最小配向角の差が1.5°以上であり、平均配向角及び配向角分布が大きく、位相差フィルムや視野角拡大フィルムとして使用するのは困難であった。
E:製造時にしわが発生し配向角の測定が不可能であり、結果として得られたフィルムは、位相差フィルムや視野角拡大フィルムとしては使用不可能であった。
こうしてできたフィルムの配向角の測定結果と評価結果を表1に示す。
表1の結果より、本発明の実施例1〜9では、溶液流延製膜法によるセルロースアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムの製膜において、フィルム中の残留溶媒量を本発明の特定の範囲内とし、かつ特定温度の加熱室での搬送ロールのロール軸の設置角度を本発明の特定内に調整して、延伸することにより、優れた配向角特性を有するフィルムを達成することができた。こうして得られたセルロースアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムは、特に位相差フィルムや視野角拡大フィルムとして、充分に使用可能なものであった。
これに対し、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの延伸時の残留溶媒量、及び特定温度の加熱室での搬送ロールのロール軸の設置角度を、それぞれ本発明の範囲外とした比較例1〜4によるセルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、フィルム配向角の均一な分布が得られず、位相差フィルムや視野角拡大フィルムとしては、使用できないものであった。
実施例1〜9および比較例1〜8は、比較例1でわかるようにロール軸の配置角度φを従来技術と同様のフィルム搬送方向に直角(90°)にした場合に、配向角の平均値が正(+1.8°)であり、ロール軸の配置方向φを90°よりも小さくしたときに、良好な配向角の結果が得られた例である。一方、ロール軸の配置角度φが90°で、配向角の平均値が負の場合に、ロール軸の配置角度φを90°よりも大きく変化させた場合も同様に良好な結果が得られた。また、他の樹脂、ポリカーボネイトやシクロオレフィン、ポリイミド等を用いた場合にも同様な結果が得られた。
実施例10〜18、比較例9〜16
本発明の方法により、溶融流延製膜法によるセルロースアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造した。
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
(アセチル基置換度1.95、プロピオニル基置換度0.7、ガラス転移温度:約170℃)
可塑剤:ジブチルフタレート 10質量部
酸化防止剤:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール 0.07質量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1質量部
上記のセルロースアセテートプロピオネート樹脂を含む材料の混合物を、2軸式押出し機を用いて240℃で溶融混合し、金属フィルターで濾過後、ギアポンプでTダイからフィルム状(シート状)に押し出し、フィルム状樹脂を130℃の冷却ドラム上に密着させて搬送しながら固化させ、剥離ロールでフィルムを剥離した。このフィルムを140℃に過熱した延伸機で延伸しフィルムを作成した。延伸機の手前には、加熱室を設置し、そこにロール軸の配置角度を調整できる搬送ロール2本を設置した。この加熱室の雰囲気温度をセルロースアセテートプロピオネート樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg:約140℃)に対してに105℃から175℃に設定し、また各搬送ロールのロール軸の配置角度を90°から96°の範囲で変更し、実施例1〜9および比較例1〜8と同様の測定と評価を行った。
こうして、得られたセルロースアセテートプロピオネート樹脂フィルムの配向角を、上記実施例1の場合と同様に測定し、得られた結果を、下記の表2に示した。
表2の結果より、本発明の実施例10〜18では、溶融流延製膜法によるセルロースアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムの製膜において、溶融樹脂の流延、フィルムの剥離後、フィルム温度を本発明の特定の範囲内とし、かつ特定温度の加熱室での搬送ロールのロール軸の設置角度を本発明の特定内に調整して、延伸することにより、優れた配向角特性を有するフィルムを達成することができた。こうして得られたセルロースアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムは、特に位相差フィルムや視野角拡大フィルムとして、充分に使用可能なものであった。
実施例10〜18ではセルロースアセテートプロピオネート樹脂の溶融流延法による製膜を例示したが、他にも、セルロースエステル、ポリカーボネイト、シクロオレフィン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等、適当な融点を有する樹脂のどれも使用可能であり、それぞれの素材のガラス転移温度に対して本発明の温度範囲を選ぶことで、同様に良好な結果が得られた。
実施例19、比較例17
比較例1と同様の方法で溶液流延製膜法によるセルロースアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造したが、テンター延伸機の後、巻取り前にライン中のフィルムの位相差を測定する手段(王子計測機器株式会社製 KOBRA−WI)を設置し、搬送中のフィルムの位相差をオンラインで測定した。
実施例19ではオンラインで測定されたフィルムの配向角をもとにロール軸の配置方向を変更しながら3日間にわたり100本のフィルムロールを製造した。比較例17ではロール軸の配置方向は比較例1と同様90°に固定したままで同様に100本のフィルムロールを製造した。こうして製造したフィルムを用いて前記配向角の均一性の評価を行った。
その結果、100本のフィルムロールの評価では、実施例19は、A=98%、B=2%、C=D=E=0%であった。それに対して、比較例17はA=B=0%、C=3%、D=97%、E=0%であり、本発明の実施例では非常に良好な良品率が得られた。